9・秋の服 秋は衣替えの季節である。暑苦しさから自由になると同時に、寒さに備える。パジャマも 夏用から秋用にかえる。かける毛布も増える。パジャマを厚めにするとか、毛布を一枚増 やす。コートも用意しよう。レーンコートにするか、腰まであるジャンパーにするか。そ との用事の種類によるだろう。通勤が自家用車か通勤電車かで秋の衣がえも随分ちがうだ ろう。地方では自家用車がむしろ普及している。東京や関西は通勤電車も圧倒的に重要で ある。自家用車も不可欠ではある。それに職場でエアコンの普及で着ているものが変化し た。気温の変化に対応するのに加えて、個人のスタイルや好みをより反映する方向に変わ ってきていると思う。私の好みはひとことで言うと、平凡性である。いつも上下のスーツ である。昔と比べると、下着が2枚から1枚になり、しかも薄くなっている。子供の頃を 思い出してみると、冬に向って厚目の下着をかさねて、やはり厚目のセーターに身をくる んでいた。雨や雪が降ると、下駄や長靴である。学校は石炭ストーブが教室の片隅にあり、 自分の席が遠くだと寒かった。休みの時間にストーブを囲んで手の甲をさすりながらおし ゃべりをした。弁当をストーブのまわりの棚で温めていた。たくわんなどを入れている場 合など、温めたのを取りだした時、臭いは人にもよるのだろうが、苦手の人も少なくなか った。小学校中学校に通っていた時は雨がたくさん降ると洪水みたいに道路が冠水状態に なった。今と比べると、かなり野蛮な格好をして通学していた。寒かったり冷たかったり しても、よく我慢できたと思う。それが普通だったからだろう。寒くても暑くてもそのま ま受け入れていた。むしろ、季節のかわりを楽しむようなところがあったと思う。
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