3級、4級基準点測量 初心者のための基準点測量 (トータルステーション観測編) 基準点測量に使われる主な測量機器 ①トランシット又はセオドライト(経緯儀) ②目標板(ターゲット) ③鋼巻尺 ④電磁波測距儀 ⑤反射鏡(ミラー) ⑥トータルステーション(データコレクターを含む) ⑦三脚 ⑧錘球(下げ振り) ⑨メジャー(コンベックス) ⑩温度計 ⑪気圧計(3級、4級基準点測量においては不要) 水平角・鉛直角の観測法 1.水平角の観測 水平角は、観測図に基づき方向観測法で所定の対回数の観測を行います。 (1)方向観測法 ①方向観測法は、1観測点において特定の方向を基準にして、目標点を右回りに順次視準 しながら目盛りを測定していく観測法です。 ②基準方向には目標が明瞭に視準できることと、北方向に位置し(注1)、平均距離、平均高 度の測点を選ぶと良い。 この基準になる方向を零方向と言う。 注1) 逆光による影響を受けにくいので、従来から国土地理院において行われている。 (2)対回観測 対回観測の平均値を採用することによって、望遠鏡の機械的な誤差を消去できるので、 角度の観測は必ず対回単位で行います。 2対回以上の観測をする場合には、目盛誤差を小さくするために、目盛盤の位置を変え て観測します。ただし、目盛変更が不可能な機器は、1対回の繰り返し観測を行います。 【対回とは】 ① 角観測を望遠鏡正(r)での観測と反( )での観測を「1対回」とし、この対回を反 復してその平均角を求める観測手法です。(鉛直目盛盤の右側に望遠鏡が置かれた状態 を正または望遠鏡右と言う) ②対回観測では、各対回ごとに輪郭(目盛盤の位置)を変えます。TSの零点セットは目 盛盤を回転させて0°目盛付近にセットします。目盛を0°丁度に合わす必要はありませ ん。(内角は引き算で求めるため。) ③観測する対回数は作業規定のとおりです。2対回の場合は、0度と90度の輪郭を使い ます。 (3)対回と観測望遠鏡の位置 2対回観測の場合 輪 郭・・・0° 90° 目盛盤・・・正0°⇒反180° 観測開始角度 1対回目 正(0°)⇒反(180°)で終わります。 目盛盤の回転 2対回目 反(180°+90°=270°)⇒正(90°)で終わります。 ☆ 再測する場合は当該輪郭を現在の望遠鏡の位置から開始します。 鉛直目盛盤 2.鉛直角の観測 (1)鉛直角観測は望遠鏡正(r)と反( )での観測「1対回」を行います。 (2)観測の良否を判断するため、最低でも2方向の観測を行い高度定数を点検します。 3.器械高と目標高の測定 基準点標識上面からトランシットの望遠鏡までの高さ(器械高)と視準点の基準点標識 から目標板までの高さ(目標高)を mm 位まで測定し、記録しておきます。通常、基準点 測量においては、器械高(1.500m)と目標高(1.500m)を同じ高さにします。 ヒント・・・器械高を一定に据えるコツ! 一定の器械高に整置するためには、測点上に三脚を置いて上面をほぼ水平にします。次 に、錘球を使い測点の中心を確認しながら、3 本の脚を踏み込みます。適宜三脚上面までの 高さを測り、予定の高さになるよう三脚の固定ネジを緩めて、同じ寸法だけ伸縮させ調整 します。三脚上面が予定の高さになればトランシットを乗せて固定し、器械高を確認して 据付完了です。慣れれば簡単ですので試してください。 4.距離の測定 観測図に基づき1視準2読定を1セットとし、2セットの斜距離を測定します。許容範 囲は、1セット内の測定値の較差 2 ㎝、各セットの平均値の較差 2 ㎝です。距離測定に伴 う温度及び気圧の観測は、各点で行う。ただし、3∼4 級基準点測量においては、気圧の測 定を省略し、標準大気圧(1013.3 hPa)を用いて気象補正を行うことができます。 5.水平角の観測手順(一般的な上盤、下盤の2軸方式によるセオドライトの場合) ①目盛盤 0°(輪郭)をセットします。0°丁度にする必要はなく 0°1′0″近辺に目盛 を合わせ上盤の固定ネジ(クランプ)を締めます。次いで下盤の固定ネジがフリーな状態 で望遠鏡を第1方向に合わせ、固定ネジを締めてから下盤微動ネジで目標物を大まか視準 します。更に、上盤微動ネジにて第1方向(基準方向)の目標を十字線の中心に合わせ、 目盛盤の角度を読み取ります。その際に微動ネジは締め込む(右巻き)状態で合わせ、で ・ ・ ・ きれば接眼レンズと目の間に手の「こぶし」一つぶん空ける(注2)ようにします。 ②次に、望遠鏡を第2方向に向けて、目標を望遠鏡の視野に入れ、固定ネジを締め、微動 ネジにより目標を十字線の中心に合わせ、目盛盤の角度を読み取ります。 ③3方向以上ある場合は、この操作を繰り返します。 −−−−−以上の一連の観測を望遠鏡正の観測といい、rの記号で表します。−−−−− 最後の方向の観測が終われば、次は望遠鏡を反転して、最後に観測した方向から逆の順序 で同じように零方向まで観測します。 −−−−−以上の一連の観測を望遠鏡反の観測といい、 の記号で表します。−−−−− ここまでで1対回の観測が終了です。 引き続き2対回目に入ります。 ④目盛盤 90°(輪郭) をセットします。 1対回目の観測で望遠鏡が反の状態ですから 270° 1′0″近辺に目盛を合わせ、上盤の固定ネジを締めます。次いで下盤がフリーな状態で望 遠鏡を第1方向に合わせ、固定ネジを締めてから下盤微動ネジで目標物を大まか視準する。 更に、上盤微動ねじにて第1方向(基準方向)の目標を十字線の中心に合わせ、目盛盤の 角度を読み取ります。 ⑤次に、望遠鏡を第2方向に向けて、目標を望遠鏡の視野に入れ、固定ネジを締め、微動 ネジにより目標を十字線の中心に合わせ、目盛盤の角度を読み取ります。 ⑥この操作を繰り返します。 ⑦最後の方向の観測が終われば、次は望遠鏡を反転して、最後に観測した方向から逆の順 序で同じように零方向まで観測します。 ここまでで2対回の観測が終了です。 注2) 十字線ピント調整不足や、目標物のピントが合っていない状態で観測した場合、目の位置を動かす と目標物が揺れる現象が起き、片寄った観測値になりがちです。そこで、望遠鏡から少し目を離すと視野 が狭くなるため、目の位置が固定され視準線が安定します。 なお、十字線のピント調整は、観測前に十分おこない、観測中は触らないようにいたします。また、目 標物のピントについてもできるだけ触らずに観測できるようにしたいものです。 6.水平角の観測値を点検する。 水平角の観測を1対回以上行った場合には、観測値の較差等からその観測値の良否が点 検できます。 【観測差と倍角差とは】 望遠鏡正の観測値と反の観測値の差を較差といい、その和を倍角といいます。また、各 対回毎に計算された較差の差を観測差といい、倍角の差を倍角差といいます。4級基準点 測量の許容範囲は、倍角差 60″以内、観測差 40″以内というように制限値が定められてい ます。 このような観測値の点検は、観測終了後直ちに行います。制限を超えた場合は、再測し なければなりません。 気温を測る B=P=C て何だろ 斜距離です B=P=C て何だろう! B=P=Cの記号について説明します。Bは観測点、Cは標石、Pは目標点です。参考 書式の記号は、基準点標識の十字中心(標石)にトランシットを整置(観測点)し、この 点を他の観測点から視準する際にも目標板を標識中心に整置している事を表しています。 この記号は各観測点の手簿に必ず記載しなければなりません。 7.鉛直角の観測手順 ①トランシットを整置した後、望遠鏡(r)を第1方向に向けて、目標を望遠鏡の視野内 に入れ、固定ネジを締めて固定します。微動ネジにより目標板を望遠鏡の十字線の横線に 合わせると同時に指標標準用の気泡管微動ネジを回して気泡を水平にした後、目盛を読み 取ります。 なお、指標の自動整準装置が付いているトランシットでは、目標を視準後、すぐに目盛 を読み取ることができます。 ②次に、望遠鏡を反転( ③第2方向を望遠鏡( )して同一目標を同様に観測します。 )にて観測します。 ④望遠鏡を反転(r)して同一目標を同様に観測します。 2方向の鉛直角観測を終了します。 このように鉛直角の観測では、水平角の観測と同様に、望遠鏡正(r) 、反( )の観測 (これを1対回の観測という)を行い、その平均値を採用することによって機械誤差を消 去することができます。また、トータルステーションにおいては、電磁波測距儀と経緯儀 が一体となったもので、距離、水平角及び鉛直角が同時に測定できます。 8.鉛直角の観測値を点検する。 鉛直角の観測を1対回、2方向以上行った場合には、望遠鏡正、反の観測値の和をとる ことによって観測の良否を判定する高度定数を求めることができます。各方向の高度定数 は、すべて同じ値になるべきですが、観測誤差が含まれると差が生じることになり、各方 向の高度定数の較差によって観測の精粗の点検ができます。 高度定数の最大値最小値の較差は、4級基準点測量の許容範囲で較差 60″以内というよ うに制限値が定められています。 (三訂 絵で見る 基準点測量より抜粋 発行所:株式会社山海堂)
© Copyright 2024 Paperzz