晩発性皮膚ポルフィリン症の臨床および生化学的解析 近藤雅雄1)、堀江 裕2)、平田健司3)、古山和道4)、柘植光代1) 藤田博美3)、佐々 茂5)、浦田郡平6) 1) 独立行政法人国立健康・栄養研究所、2)島根県済生会江津総合病院、3)北海道大 学大学院医学研究科、4)東北大学大学院医学系研究科、5)ロックフェラー大学、 6) 元国立公衆衛生院 はじめに 晩発性皮膚ポルフィリン症 (Porphyria cutanea tarda, PCT) はウロポルフィリノゲン脱炭酸 酵素 (uroporphyrinogen decarboxylase, UROD) の活性低下に基づく代謝性疾患であり、遺伝性 と獲得性が知られ、光線過敏症と肝障害を合併する。遺伝性 (家族性、f-PCT) では UROD 遺伝 子異常が認められるが、獲得性 (s-PCT)のポルフィリン代謝および肝障害の発症機序については 未だに不明である。また、近年 PCT に高率でC型肝炎ウイルス感染が合併していることが明らか となり、さらに PCT 患者においては鉄の吸収促進による鉄沈着も指摘され、この鉄沈着について はヘモクロマトーシス因子 (HFE)との関係が注目されている。 本稿では、わが国において報告された PCT の全症例を臨床統計し、日本の現状と世界の現状お よび s-PCT の C 型肝炎合併症例の特徴について概説した。 キーワード:晩発性皮膚ポルフィリン症、臨床統計、C 型肝炎、ヘモクロマトーシス 1.晩発性皮膚ポルフィリン症の グリシン+サクシニルCoA ↓δ -アミノレブリン酸(ALA)合成酵素 定義と概念 ALA PCT はヘム合成系の 5 番目の反応を触 ↓ALA脱水酵素 ポルホビリノゲン(PBG) 媒する酵素、UROD の遺伝的あるいは後 ↓PBG脱アミノ酵素 天的障害によってポルフィリン代謝産物 す疾患群である 1-2)。UROD は細胞の cytosol 分画に局在し、8 個のカルボン酸側 鎖をもつウロポルフィリノゲンを順次脱 負のフィードバック調節 の過剰生産、組織内蓄積、排泄増加を起こ ヒドロキシメチルビラン ↓ウロポルフィリノゲンⅢ合成酵素 ウロポルフィリノゲンⅢ ↓ウロポルフィリノゲン脱炭酸酵素 コプロポルフィリノゲンⅢ ↓コプロポルフィリノゲンⅢ酸化酵素 プロトポルフィリノゲンⅨ 炭酸し、4個のカルボン酸側鎖をもつコプ ↓プロトポルフィリノゲンⅨ酸化酵素 ロポルフィリノゲンの生成を触媒する(図 プロトポルフィリンⅨ, Fe2+ 1) 3)。したがって、途中 7~5 個のカルボ ↓鉄導入酵素 ヘム 図1.肝ポルフィリン代謝とウロポルフィリノゲン脱炭酸酵素の作用 ン酸側鎖をもつ反応中間体 表1 UROD遺伝子およびその異常によるPCTの分類 が存在する。UROD 遺伝子 Ⅰ.UROD遺伝子 についてはすでに報告され、 cDNA 全長 1,197bp アミノ酸 367 ゲノムDNA 全長 3.4kb エクソン 10 本酵素の異常症として PCT と肝・骨髄性ポルフィリン症 染色体上の部位 1p 21 Ⅱ.PCTの分類 UROD活性(%) があり、PCT の場合にはさ 赤血球 肝臓 PCT type Ⅰ (sporadic PCT) 遺伝性なし 100 50 る(表 1)。これらの疾患では PCT type Ⅱ (familial PCT) 常染色体優性遺伝 50 50 共通して肝 UROD 活性の減 PCT type Ⅲ (familial) 確立されてない 100 6~15 少を認めるが、他の肝性ポル 肝・骨髄性ポルフィリン症 常染色体劣性遺伝 3~28 2 らに3つの type に分類され 遺伝様式 フィリン症やヘキサクロロベ ンゼン、 tetrachlorodibenzo- p-dioxin による中毒性 PCT と異なって肝δ-アミノレブリン酸(ALA) 合成酵素(ALAS)活性の著明な上昇は見られない。 1)発症頻度 ポルフィリン症は病態生化学的に 8 病型に分類され 1)、本邦では 1920 年に初めてポルフィリン 症が報告(先天性赤芽球性ポルフィリン症)4)されて以来、2002 年 12 月までに総計 827 例の報 告 5)を見るが、PCT では 1957 年にマラリアによって誘発された 27 歳、男性の第 1 例が報告 6) されて以来 303 例と、ポルフィリン症の中では最も頻度の高い病型(全ポルフィリン症の 37%) である。 年別報告数を図 2-a に示したが、1957 年~1985 年までは患者報告数が増加しているが、それ 以降、患者数が減少しているように見られる。これは患者数が減少しているのではなく、ポルフ ィリン症に興味を持つ医師が減少してきたことによる「未発見または未報告」の結果と推測され る。いずれにしても PCT 患者はポルフィリン症の中では最も多く、今後も増え続けることは確か であり、積極的な検査によ (a) 患者報告年数 (b) 年齢別発症頻度 160 Male Female 140 胞発 症率が報告さ れてい 例数 60 60 40 40 20 20 0 5 1 11 0 ~ 1 16 5 ~ 2 21 0 ~ 3 31 0 ~ 4 41 0 ~ 5 51 0 ~ 60 61 ~ 00 20 95 年 ~ ~ 19 85 19 ~ 19 75 0 ~ ーの 22.5% などと高い同 80 65 の 20~32.5% 、ハンガリ 80 19 イタリアの 40.6% 、北米 例数 の 51% 、スペインの 49% 、 100 100 ~ である。海外では、ドイツ 120 6~ とい う比較的身近 な疾患 120 0~ って は容易に見出 される 年齢(歳) 図2 わが国で報告されたPCT患者の年齢別発症頻度と報告年数 2 るが 7)、本邦では、すべて s-PCT のようである(わが国 表3 本邦PCTの臨床統計 では遺伝子診断された PCT は 1 例もない)。 臨床症状 PCT 頻度 (303例中)(%) 皮膚症状 日光過敏症 紅斑 水疱,びらん 2)年齢別・性別報告数 潰瘍 痂皮 男性の報告数が多い。 PCT の発症年齢は 30 歳代以上、 瘢痕 色素沈着 とくに 40~50 歳代に多い(図 2-b) 。これら理由として 脱失 肥厚・強皮症様瘢痕 長期飲酒などといった誘発因子が深く関係しているが、 脆弱性 多毛・剛毛 女性では月経によって鉄過剰が抑えられるために発症 脱毛 骨軟骨の欠損脱落 頻度が少ないものと推測される 8)。 (爪の変形,鼻・耳・指の欠損) 赤色歯牙 赤色尿 貧血 3)地理的分布 脾腫 肝 肝硬変 PCT は東京、長崎、神奈川に集中し、地域によって報 肝機能障害 糖代謝異常 告数に偏りが見られるが(表 2)、これは遺伝的分布や地 その他(消化器,神経症状など) 域的特徴の違いよりも、その都道府県でのポルフィリン 症に関心を持つ医師の有無が大きく影響しているもの と考えられる。 表2 PCT・HEP患者の地理的分布(報告数) 北海道 青森県 岩手県 宮城県 秋田県 山形県 福島県 茨城県 栃木県 群馬県 埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 新潟県 富山県 14 6 3 11 4 0 2 1 5 3 1 5 36 26 2 1 石川県 福井県 山梨県 長野県 岐阜県 静岡県 愛知県 三重県 滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県 鳥取県 島根県 6 1 3 8 0 2 5 16 0 7 12 12 3 2 7 0 岡山県 広島県 山口県 徳島県 香川県 愛媛県 高知県 福岡県 佐賀県 長崎県 熊本県 大分県 宮崎県 鹿児島県 沖縄県 総計 6 10 11 2 2 1 3 16 2 36 2 1 5 4 2 303 PCT発症の誘発因子 フェノバルビタール 解熱,鎮痛,鎮痙剤 妊娠,月経,分娩 ピ ル 眠 剤 アルコール 血液透析 その他 不明 PCTの治療内容 ステロイド β -カロテン ビタミン(主としてE) 皮膚外用薬 瀉血 クロロキン Ca-EDTA インターフェロン シメチジン PCTの予後 軽快 不変~悪化 死亡 不明数 66 184 60 93 162 182 43 17 82 39 3 5 22 61 20 31 53 60 14 6 27 13 1 2 0 50 7 6 12 214 17 9 0 17 2 2 4 71 6 3 PCT 頻度 (303例中) (%) 1 0 1 0 1 0 0 0 0 0 224 74 9 3 13 4 54 18 PCT 頻度 (303例中) (%) 6 2 1 0 21 7 23 8 61 20 4 1 11 4 13 4 4 1 PCT 頻度 (303例中) (%) 118 38.9 95 31.3 5 1.7 85 28 4)臨床的特徴(表 3) PCT の皮膚症状は他の皮膚型ポルフィリン症と比較して中等度であるが殆どの症例で肝機能 障害がみられ、PCT 患者の約 41%(303 例中 123 例) に肝生検が施行されている 5)。 皮膚障害としては表皮下水疱、真皮が不規則に水疱内に突出し、真皮上層の血管周囲に炎症性 の細胞浸潤を認める。 また、 真皮乳頭層の血管壁および基底膜に PAS 陽性物質の沈着を認める 9)。 3 1987 年に C 型肝炎ウィルス 表4 本邦PCT123例の肝生検病理組織学的診断 PCT 123例中 (HCV)の抗体検査が可能になっ % て以来、PCT 患者のC型肝炎 合併の報告が高率で見られ、本 邦においても 303 症例のうち 50 例 の PCT 患 者 に 対 し て HCV 抗体検査が行われ、この 内 43 例(86%) が陽性であった 5) 。肝がんや肝硬変を合併する HCV抗体(n=50)、n(%) 陽性例 陰性例 % % 肝硬変 慢性肝炎 活動型 非活動型 アルコール型 その他 肝がん 脂肪変性 詳細不明 合 計 15 12.2 0 0 0 0 24 12 9 26 12 18 25 123 19.5 9.8 7.8 21.1 9.8 14.6 20.3 100 14 2 4 0 1 0 22 43 32.6 4.6 9.3 0 2.3 0 51.2 86 0 0 0 1 2 3 1 7 0 0 0 14.3 28.6 42.9 14.3 14 症例も多い(表4) 。 海外でも PCT 患者のC型肝炎合併率が高率で発見されているが(表 5)10-21) 、国別によって頻度 の差が見られる。これは HCV 感染の多様性によるもので、いずれにしても HCV 抗体陽性率は 18~91%と高く、PCT の肝障害および HCV 感染合併の各々の発症機序について世界中で注目さ れている。 PCT の肝所見としては非特異的な脂肪変性から肝硬変、さらにがんに至る極めて多岐にわたる 肝障害を伴う。アルコール多飲者に見られる s-PCT ではアルコール性肝障害が殆ど常に併存して おり、PCT を引き起こす要因とも考えられる。組織像としては門脈域線維化、門脈域周囲鉄沈着、 小葉内巣状壊死、単状脂肪変性、肝細胞の腫脹などが見られる 22)が、PCT の臨床症状と肝障害の 程度とは必ずしも一致しない。PCT の肝微細構造の変化としてはミトコンドリアの変形およびマ トリックス内の 200mμに達する高電子密度、無構造顆粒の存在、滑面小胞体の増生などが報告 されている 22)。生検肝に長波長紫外線を照射すると赤色蛍光を見る。 5)診断と誤診 PCT は日光皮膚炎または肝障害として診断されることが多く、皮膚科領域での発見率が高い。 内科領域では本症が見逃されたまま肝障害、肝硬変としてフォローされているものが多い。 表5 PCTにおけるHCV抗体陽性率 6)発症・増悪の要因 (表 3) 国名 イタリア 報告者 Pipernoら Fargion ら PCT は長期大量飲酒を フランス Lacour ら Chibierら 誘因(303 例中 224 例、 スペイン De Castro ら Herrero ら 74%)とするものが多く、 オランダ Siersemaら ドイツ Ferriら PCT の病因論上アルコ オーストラリア Gibsonら -ルの占める役割が重要 スコットランド Hussainら アイルランド Murphyら 日本 Kondoら Tsukazakiら 報告年 1992 1992 1993 1995 1993 1993 1992 1993 1995 1996 1993 1997 1998 症例数 陽性者数 頻度% 12 74 13 12 34 95 38 23 112 12 20 26 20 7 61 10 7 21 75 7 21 26 11 2 22 17 58 82 77 58 62 79 18 91 23 91 10 85 85 文献 10 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 4 な課題となっている。その説明として、アルコールがヘム蛋白である cyt.450 isoenzyme 量を増 大させ、GSH 濃度を減少させる。GSH の減少は SH 酵素である ALA 脱水酵素、 UROD、 鉄導 入酵素などヘム合成系酵素活性を減少させ、その結果、ヘム減少による derepression 効果により ヘム合成の律速酵素である ALA S 活性が上昇するものと推測できるが、長期飲酒者のすべてが PCT を発症することはなく、発症には他に何らかの因子(遺伝的・複合的因子?)を必要とする。 表6 PCTとC型およびB型肝炎ウイルス関連マーカー(1975-2002) No. Name Age Sex 誘発因子 Blood* HCV HCV HBs HBs HBc C282Y H63D Ab RNA Ab Ag Ab 1 AS 53 M Alcohol FP + - ≧4+ - ≧5+ 2 TS 58 M Alcohol FP + 3 HK 47 M Alcohol FP + - ≧4+ 4 KA 49 M Alcohol FP + 4+ ≧4+ 5 NB 50 M Alcohol FP + 3+ nd 6 UT 55 M Unknown FP + 4+ - ≧4+ 7 IE 39 M Dialysis FP + - ≧4+ 8 SS 50 M Alcohol FP + 9 TT 58 M Alcohol FP + 10 IM 58 M Dialysisl FP + - ≧4+ 11 MA 51 M Alcohol FP + 12 NM 48 M Alcohol FP + 13 HS 66 F Unknown FP + - ≧4+ 14 IK 38 F Alcohol FP + 15 TM 49 M Alcohol FP + - ≧3+ 16 FM 56 F Alcohol FP 17 OI 48 M Alcohol FP 18 SH 42 M Alcohol FP + - ≧4+ 19 KM 67 M Alcohol FP + 20 MT 54 M Alcohol FS + 2+ 21 NT 57 M Alcohol FS + 2+ - ≧4+ + 22 HE 70 M Alcohol FS + 3+ 23 AT 53 M Alcohol FS + + - ≧3+ 24 KR 55 F Estrogen FP + 4+ ≧4+ - ≧3+ 25 HK 58 M Alcohol FP - ≧3+ 26 KT 52 M Alcohol FS + 2+ - ≧3+ 27 HT 66 M Alcohol FP + nd 28 HT 48 M Alcohol FP 29 MK 57 M Alcohol FP + - ≧4+ nd nd nd 30 MT 48 M Alcohol FP + 3+ nd nd nd 31 UT 64 M Alcohol FS + 3+ - ≧4+ nd nd *略語:FP;凍結血漿、FS;新鮮血清、nd;未検査 7)治療・管理・予防(表 3) 日本では PCT 患者の殆どが長期飲酒歴を持ち、また少数であるが更年期のエストロゲン療法 によって発症したことが報告されていることから、このような誘因があれば直ちに除去すること が重要である。軽症例ではこれらの誘因を除去するだけで治癒する例も多い。患者の殆どは肝組 5 織に鉄過剰を示すことから瀉血療法 23)が有効である。鉄キレート剤であるデフェロキサミンの投 与も有効である 23)。コレスチラミンは肝に蓄積したウロポルフィリン(URO)を除去するため肝 機能の改善に有効である 23)。また、近年 HCV との関与が示されるようになってからは、この 10 年間で 13 例にインターフェロン投与が行われている(表 3)。その内、 6 例に肝機能の改善と尿中 ポルフィリンの減少が報告され 23)、今後の新たな治療法として症例の集積が望まれる。 2.晩発性皮膚ポルフィリン症の C 型肝炎の合併症例の分子生物学的、生化学的解 析 近年、欧米では s-PCT の HFE 遺伝子異常(C282Y, H63D)が高頻度で認められ、PCT の発症要 因として注目されている 24-25)。そこで、本邦において臨床的および生化学的に PCT と診断した 日本人症例 64 名(男性 60 名、女性 4 名)、平均年齢 52.3 歳(30~77 歳) 、誘発因子は飲酒が 57 例(89%) 、透析が 4 例、エストロゲン1例、そして原因不明が 2 例について、分子生物学的お よび生化学的解析を行った。 1)PCT 患者の肝炎ウイルス抗体 64 例の PCT 患者の内、肝炎ウイルス抗体検査を試みた 31 例のうち 27 例(約 87%)に HCV 抗体陽性を見出した(表6)。このうち、HCV-RNA は、-80℃保存血漿では 25 例中 5 例のみに陽 性が見られたのに対して、新鮮血清では 6 例中の全てが陽性を示した。HBs 抗原は全例陰性で、 HBs 抗体は測定した 29 例中 8 例(28 %)、HBc 抗体は 27 例中 10 例(37%)に、各々陽性が見 られ、HBs または HBc のいずれかに陽性を示したのは 52%に相当する 16 例であった。したが って、31 例中 28 例にBまたはC型肝炎(90%)が確認された。PCT 患者の C 型肝炎合併症例にお いては、Tsukazaki ら 21)らが HCV genotype との相関性はないと報告している。 2)C 型肝炎の合併症例の分子生物学的解析 表6に示したように、HFE 遺伝子異常は 28 例について、PCR 産物に関しての解析を行ったと ころ、変異体の数は H63D が 1 例、C282Y は皆無であった 26)。唯一発見された H63D 変異はヘ テロ結合体であり、患者は、以前は HCV 陽性を示し、PCT 皮膚症状を呈していたが、インター フェロン治療によって症状は改善され、現在は HCV 陰性となり症状もない。このことは、日本 人健常者において、HFE 遺伝子変異が元来少ないという報告 27)と一致している。すなわち、PCT の鉄沈着は白人と異なり、HFE 遺伝子以外のメカニズムが考えられる。 6 表7 PCT患者のC型肝炎合併に対する有意差判定 肝炎なし n=36 C型肝炎合併 n=24 平均値 標準偏差 平均値 標準偏差 有意差 p値 尿ALA (μ g/g cr) 1389 917 1804 1320 ns. 尿PBG (μ g/g cr) 526 386 1114 79 0.0407 尿8 (μ g/g cr) 3174 6296 4777 3617 ns. 尿7 (μ g/g cr) 796 709 1927 814 0.0025 尿6 (μ g/g cr) 189 114 354 291 ns. 尿5 (μ g/g cr) 287 361 498 283 ns. 尿4 I (μ g/g cr) 65.1 42.1 99.0 45.9 ns. 尿4 III (μ g/g cr) 106.3 69.4 207.9 208.6 ns. 尿4 I/III 0.670 0.261 0.783 0.369 ns. 血液CP (μ g/dlRBC) 1.70 0.81 2.35 1.44 ns. 血液FP (μ g/dlRBC) 8.97 6.01 13.0 8.67 ns. 血液ZP (μ g/dlRBC) 37.4 17.7 46.9 25.4 ns. 糞8 (μ g/g) 2.57 1.93 11.9 14.9 ns. 糞7 (μ g/g) 4.01 5.64 2.14 1.85 ns. 糞6 (μ g/g) 15.2 26.4 20.2 24.5 ns. 糞5 (μ g/g) 13.4 20.4 20.1 29.9 ns. 糞4 I (μ g/g) 4.43 5.12 6.55 4.57 ns. 糞4 III (μ g/g) 1.66 2.05 2.23 2.70 ns. 糞PP (μ g/g) 14.1 14.9 2.66 1.43 0.0033 赤血球ALAD(μ mol/mlRBC) 1.99 0.84 1.66 0.80 ns. 赤血球PBGD(nmol/mlRBC) 32.4 9.9 30.1 10.5 ns. GOT (IU/L) 69.5 32.2 71.5 44.3 ns. GPT (IU/L) 93.7 39.5 79.7 55.5 ns. rGTP (IU/L) 140 96 202 130 ns. LDH (IU/L) 320 186 255 84 ns. ZTT (KU) 10 4.4 21.8 9.1 0.0048 血清鉄 (μ g/dl) 171 50 159 67 ns. TIBC (μ g/dl) 327 74 286 31 ns. 肝ALAD (nmol/mg/h) 7.11 2.94 7.08 2.20 ns. 肝PBGD (pmol/mg/h) 42 25 115 97 ns. 肝ALAS (pmol/mg/h) 451 385 259 205 略語:ALA; δ -アミノレブリン酸, PBG;ポルホビリノゲン, 8;ウロポルフィリン 7;ヘプタカルボキシルポルフィリン、6;ヘキサカルボキシルポルフィリン 5;ペンタカルボキシルポルフィリン、4とCP;コプロポルフィリン、PP;プロトポルフィリン ALAD;ALA脱水酵素、ALAS;ALA合成酵素、PBGD;PBG脱アミノ酵素 ZP;亜鉛プロトポルフィリン、FP;遊離プロトポルフィリン, cr;クレアチニン ns. 7 表8 PCT患者各種検査結果の相関関係 (ピアソンの相関係数; n=64) P<0.05 P<0.01 尿ALA 尿8 尿7 尿6 尿5 尿4I 尿4III 尿4 I/III 糞MP, 肝ALAS, rGTP ZTT 尿7, 糞7, 肝ALAS 尿8, 6, 5 尿7, 5, 4I 尿7, 6, 4I, 4III 尿6, 5, GOT 尿5、GOT 肝ALAD 糞8 糞7 糞6 糞5 糞4 I 糞4 III 糞4Ⅳ 糞Rt 18.5 糞HP 糞MP 糞PP 糞6, 4III , 血FP 糞4I, フェリチン、肝ALAD 糞8, 4I, 肝PBGD 肝PBGD 糞7, 6, MP, 18.5 糞MP, 8 血ALAD, WBC 糞4I, 血Hb 血ALAD、血FP/ZP 糞I, III, PP 糞MP,TIBC, 血Ht 糞5 GOT GPT rGTP LDH CPK ZTT 血清鉄 フェリチン TIBC 肝ALAD 肝PBGD 肝ALAS 尿4III、WBC, rGTP rGTP, 血清鉄、尿6, 5, 4I, 血ALAD, PBGD 肝ALAD、GOT, GPT、尿ALA, 4I/4III 肝ALAD, Pl 肝ALAD WBC, RBC, 血Ht, 血FP RBC, GPT 血FP/ZP、糞7 糞PP, 肝ALAS 糞7, rGTP, CPK, LDH 血CP, FP/ZP、糞5, 6、血ALAD TIBC, 尿ALA GPT,尿4I, 4III, Pl, PBGD GOT 肝ALAS、糞4Ⅳ CPK、血FP/ZP LDH、血FP/ZP 尿ALA 血Ht, Hb 肝ALAD, 肝PBGD WBC Pl RBC 血Ht 血Hb 血CP 血FP 血ZP 血FP/ZP 血ALAD 血PBGD 糞CPⅣ, GOT, ZTT LDH 糞PP, ZTT, 血清鉄 糞PP, ZTT 糞18.5 血FP, 血ALAD, 肝PBGD 血CP, FP/ZP, 糞8, 血ALAD, ZTT Pl GOT, WBC 血Ht, Hb, 糞HP 血Hb, RBC,血清鉄 血清鉄, 血Ht, RBC PBGD 血ZP, 肝PBGD 血FP LDH, CPK 尿4I, PBGD GPT 糞7, TP、血ALAD、GPT 糞MP, 尿7, GPT 尿4I/III, 血CP 尿4III, rGTP 糞HP, フェリチン、血FP、肝PBGD 肝PBGD, 血ALAD, 血CP、 糞HP GPT 糞5, 4III 糞4I, 4III, 8, 6 糞4III, 5 糞18.5, 6, 5, 4I rGTP 糞4III 血ALAD, RBC 尿4I/III, フェリチン 血FP, フェリチン 尿8、rGTP GOT, 血CP 略語および単位については表7参照、HP;ハルデロポルフィリン、MP;メゾポルフィリン 3)C 型肝炎の合併症例の生化学的解析 (1)ポルフィリン代謝への影響 PCT は URO 、ヘプタカルボキシルポルフィリン(HEPTA) の尿中排泄が著しく高く、確定診 断の根拠となる。URO の増量・蓄積はヒドロキシラジカルなどの活性酸素を発生し 28)、これが 8 PCT の皮膚および肝障害の原因となるのではないかと推測される。一方、 C 型肝炎合併例では 非感染者に比べ総ポルフィリン量が高い傾向を示す。とくにコプロポルフィリンのⅠとⅢ型の平 均値が約2倍上昇し(表 7)29)、肝障害の進展を示している。 糞便中では、全症例についてイソコプロポルフィリンが検出され、診断の根拠となるが、C 型 肝炎の有無に関しては、有意差は見られない 29)。一方、プロトポルフィリン(PROTO) は C 型肝 炎合併症例で排泄量が有意に低値を示す(表7)。また、血液中の UROD 活性については C 型肝炎 の有無で差が見られない(近藤:未報告)。 (2)ポルフィリン代謝産物と各種検査結果の相関関係 s-PCT 患者の各種検査項目についてピアソンの相関係数を求めると、ポルフィリン代謝関連物 質の多くに肝機能との有意な相関が見られる(表8) 。また、s-PCT 患者の C 型肝炎合併有無に 対する有意差検定では、尿中ポルホビリノゲン、HEPTA、糞中 PROTO、ZTT に、各々有意差が みられた(表 9) 。これらのことは、PCT の肝障害および肝炎の有無とポルフィリン代謝異常とが 密接に関連していることを示しているが、詳細は不明である。 表9 PCT患者の肝炎合併に対する有意差判定 (M±SD) 肝炎なし (n=36) 尿PBG 526a ± 386 尿7 796a ± 709 糞PROTO 14.1a ± 14.9 肝炎あり (n=25) B型肝炎(n=14) 946 ± 300 1812b ± 896 1743c ± 959 2.48b ± 1.47 10.0 ± 4.4 21.8 b ± 9.1 a 同じ記号間には有意差が認められた ZTT 913 ± 340 C型肝炎 (n=24) B+C肝炎 (n=13) 5群間の有意差 1114b ± 79 1148.7b ± 77 a,b 0.0407 1927d ± 814 a,c 0.0210 a,d 0.0025 a,e 0.0078 1934e ± 838 2.46c ± 1.65 2.66d ± 1.43 2.73e ± 1.62 a,b a,c a,d a,e 17.7 ± 6.5 21.8c ± 9.1 17.7 a,b 0.0048 a,c 0.0048 ± 6.5 0.0022 0.0050 0.0033 0.0084 4)PCT 患者の末梢血液中の微量元素濃度の変動 PCT の発症原因として、鉄過剰症としてのアプローチに注目が向けられているが、鉄以外のミ ネラルについての報告は未だにない。そこで、末梢血液中の 23 微量元素を ICP-MS、ICP-AES および原子吸光分光光度計を用いて検討した結果、健常者に比して s-PCT 患者では Mg, Ni, Se (p<0.05)および Rb(p<0.01)量の低値と Mo 量の高値(p<0.01)を見出した。さらに、 健常者とは異なった多くの元素変動および有意な元素間相互関係が認められた 30)。これら元素の 変動の意義については詳細な検討を必要とするが、 PCT 発症の原因に関与している可能性は高く、 今後の課題である。 9 おわりに PCT における C 型肝炎ウィルス感染の関与のメカニズムについては HCV が肝 UROD 活性に どの様に関与しているのかを明らかにする必要があるが、いずれにしても、PCT の発症に関して はアルコール、エストロゲン、鉄過剰、HCV 感染および未知の遺伝的因子などが重なって、肝細 胞の GSH 濃度の減少、薬物代謝酵素の変動、UROD 活性の抑制などが起こり、その結果、ポル フィリンや鉄の代謝異常による各種ラジカルの発生(酸化ストレス)や元素変動などの複合的な 因子が複雑に絡み合って発症するものと思われるが、今後の研究に期待される。本内容は第 11 回 日本消化器関連学会週間(DDW-Japan 2003, OSAKA)および第 40 回日本肝臓学会総会 2004(千 葉)において発表した。また、「消化器科」 (科学評論社)2004,12 に掲載したものを修正加筆した ものである。 謝 辞 本研究遂行に当たり、PCT 患者血液中の肝炎ウイルスおよび抗体量の測定とご指導を頂いた自 治医科大学名真弓 忠名誉教授および岡本宏明教授、東芝中央病院三代俊治先生に深謝する。また、 診断に際して患者の臨床材料をご提供いただいた全国の病院医師の諸先生に深謝する。 文 献 1) 近藤雅雄.ポルフィリン症.医学のあゆみ 1999; 190:1123. 2) Bonkovsky HL, Barnard GF. 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Although PCT (f-PCT) has UROD gene abnormalities, the pathogenesis of disorder of porphyrin metabolism and liver damage in sporadic PCT (s-PCT) is as yet unknown. The cause of the high incidence of infection by hepatitis C virus in PCT, recently revealed, is also unknown. Ferrugination in the liver due to increased iron absorption in patients with PCT has also been observed, in which a link with hemochromatosis factor has been noted. This paper summarizes all the PCT cases reported in Japan, and outlines the situation in Japan and worldwide as well as the characteristics of s-PCT patients complicated with hepatitis C. Key words: Porphyria cutanea tarda, Hepatitis C virus, Hemochromatosis * Laboratory of Nutritional Biochemistry, National Institute of Health and Nutrition, 1-23-1, Toyama Shinjuku-ku, Tokyo 162-8636, Japan, tel: 81-3-3203-5723; fax: 81-3- 3205- 9536 (e-mail:[email protected]) 12
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