「全国舞台照明デザイン会議」参加レポート 『「変革の時代」 故きを温ねて新しきを知る』 1階、大会議室の天井と照明 廊下に飾られている過去の緞帳 日に日に寒さが増してくる師走の空の下、 「全国舞台照明デザイン会議」 が大阪は淀屋橋近くの中央公会堂という、ネオ・ 入口で受付を済ませ、 小冊子や資料などをもらいました。 その苦労があるからこそ、昨今の学生を鑑みては、憂 ルネッサンス様式を基調とした大正時代建設の大変趣きのある建物にて行われました。 受付横の机には、今年 7 月 3 〜 5 日にかけてパシフィコ横 い半分呆れ半分で見ていらっしゃる胸中を吐露していまし 今回の会議のテーマは 『 「変革の時代」故きを温ねて新しきを知る』 。大正、昭和そして平成。激動の時代を生きぬいてき 浜にて行われる予定の 「ワールドライティングフェア」 の広 た。同時に学生だけではなく、手本となる教師が道を究め た建物に敬意を表するかのようなテーマです。 告が置いてありました。また千葉県の幕張メッセで毎年行 ようと挑戦していないから、その教え子もまた然りである これから様々な変革に立ち向かわなければならない N.G.C. メンバー。その中の一人である野口が会議に参加した感想 われている「国際放送機器展(Inter BEE) 」では、昨年から と手厳しい批判も。 を、駄文ではありますが報告させて頂きます。どうぞご笑覧下さい。 照明ブースが出来たので、2008 年は大規模な照明機材の展 生徒は難問をどんどん教師や先輩などにぶつけて大いに 示会が 2 度もあるかと思うと、今から楽しみです。 困らせ、知識や興味を掘り下げ、踠きながら遣り遂げる意 2007 年 12 月 6 日早朝に東京駅を出発して、正午過ぎに の店」があるそうです。勧められたのですが今回は時間の 大会議場の中に足を踏み入れると、眼前にはオペラハウ 欲を掴み取っていかなければいけないと、突き放つだけで は会場最寄りの地下鉄 「淀屋橋」 駅に到着。出口を出てすぐ 都合で足を運べませんでした。さて、会議場がある「中央 スのような大変高い天井と素晴しい装飾のプロセニアム、 はない、温かい助言も下さりました。 に大きな 「淀屋橋」 と立派な 「大阪市役所」 が目に入る。知人 公会堂」 は市役所の裏に建っていました。 陽光が差し込む大きな窓と石の円柱が立ち並ぶ石造りの廊 この自分の立場をつかみ取ろうとする意識、意欲の低下 下、腰をかけると適度に弾力のある上品な造りの客席の椅 は学生だけではなく、藤本さんが長年親しんできたテレビ 子。昔、絵本を読んでは空想をしていたフランダースの犬 や舞台の照明スタッフにも見られると話は展開する。権利 に出てくる教会に居るような錯覚を起こしてしまう、とて のための闘争ではないのですが、自分を律することと譲れ も素敵な会場でした。と、同時に公会堂管理の方々は、歴 ない気持ちなど自分の意識のあり方や守るべき立場を熱く 史あるこの建物の維持に大変なご苦労があるのではないだ 語り、とても 2 時間では収まりきれない濃い内容でした。 ろうかと、勝手な想像をしてしまいました。 スタッフのことを親身に思って下さるからこそ「タレン 廊下の奥には、失われた劇場の写真や照明機材の変遷の トやキャスターだけが給金あがって、阿呆なことしか言わ パネルを展示。日本照明家協会の前身である「日本照明協 ない。それを支えて真面目に働く多くのスタッフはあがっ 議会」創刊号の会報が展示され、ただ会議に来ただけでは ていない。こんな馬鹿げたことなどない。 」 と、声高らかに もったいないだろうと、飽きさせない企画が多々ありまし 言い放ち、臆病者の私としては、びくびくする思いでした。 から聞いたのですが、淀屋橋近くには「きつねうどん発祥 た。 さて、会議は谷川会長の挨拶で開幕し、すぐに藤本義一 基調講演後は分科会で、N.G.C. 関西企画「受賞者に聞く さんによる基調講演が始まりました。 全国版」 と題し、 照明デザインで数々の賞を受賞していらっ 藤本義一さんのお名前を聞くと、一定年齢以上の方(特 しゃる勝柴次朗氏を講師としてお迎えしての講演会。女性 に男性)は「シャバダバ、シャバダバ~♪」というオープニ セミナー 「オペラを学ぼう」 では、新進気鋭のオペラ歌手の ングミュージックで始まるテレビ番組「11PM」の司会者 だったことを想起するのではないでしょうか。 その藤本さんは 「わが道を語りたい」 ということで、半生 を顧みて戦中・戦後の混乱の中、戦災で家財を無くした両 親の代わりに闇市で働き、家にお金や医療費を入れていた 少年時代。青年時代には、学生ながらラジオ・テレビドラ マの脚本や舞台脚本を手掛け、その懸賞金や原稿料で自分 の学費だけではなく両親を養っていたことを語っていまし 中央公会堂 (正面) 30 Journal of Lighting Designers & Engineers Association of Japan た。 講演中の勝柴氏と西川氏 Journal of Lighting Designers & Engineers Association of Japan 31 その度に 「打~ちましょ。も一つセ~。祝って三度」 と手 を打つ 「大阪三本締め」 を要求してご迷惑をおかけしていま した。次の日に予定されているアフターコンベンションの 「串物ツアー」 にも東京支部事務局長と参加する約束をして 大阪の夜を楽しみました。 (何しに行ったのだというお叱 りは平にご容赦を) 次の日は早く目が覚めたので宿泊所近くを散策し、手塚 治虫の祖先や福沢諭吉が通っていた 「適塾」 や松尾芭蕉終焉 の地の石碑を見に行ったり、更に足を伸ばして近松門左衛 門の世話浄瑠璃 「曾根崎心中」 の舞台となった、曽根崎やお 準備中の鈴木健司氏 中央公会堂周辺のライトアップ スマートボールで楽しいひととき 初・徳兵衛を祀ったお初天神まで出かけ集合時間までの時 間を十分に過ごしました。移動するために地下鉄の切符売 将棋や囲碁を打てるお店や店頭の水槽でスッポンが泳い 鈴木健司氏とピアニストの山田真由美氏を講師にお迎えし の三階で行われるレセプションの開場時間まで散策してみ り場に行くと、駅の案内板には人形浄瑠璃や歌舞伎に多く でいたりと、ディープなお店が軒を連ねていたジャンジャ てオペラの歴史を勉強。そして「照明家協会発足 50 周年記 ては如何でしょうか?」と、司会の濱野さんに勧められた 登場する地名が多く見られて、 一人興奮してしまいました。 ン横丁でしたが、現在工事中の建物の囲いには通天閣タ 念」講演として「劇場よもやま話」と題し、協会発足当時の ので散策してみることに。LED での寒々しいライトアッ さて、 動物園前駅に集合して関西支部事務局の皆さんに、 ワーの建設当初から広告街灯がどのように変遷していった 昭和 32 年から全国組織となる昭和 45 年当時の経緯を知っ プが多い昨今に反し、ムギ球の温かい色で街路樹が染まっ 通天閣タワーと周辺の新世界やジャンジャン横丁を案内し かという写真があったりと、ただの飲み屋街ではないとい ていらっしゃる大先輩方をパネラーとしてお迎えしての座 ていました。戻ってきても 「劇場よもやま話」 は終わってい ていただきました。通常のお昼時間より早めに 「串カツ屋」 うことを示していました。 談会。全部に参加したかったのですが、分科会ですので東 ない。大先輩達の協会発足時からの煮えたぎっている情熱 に入るので不思議に思っていたら、ツアー客や修学旅行生 何故か店頭でアヒルが客寄せをしている小さな販売店の 京支部から参加していた私を含めた 3 人がうまく分かれて をきちんと受け継いで、これから照明業界に足を踏み入れ がどんどん入ってきて、 あっと言う間に店内が満席状態に。 前で解散してそれぞれ帰路につきました。 聴講することに。 るさらなる次世代に、きちんとバトンタッチをしなければ 少量だから足りないかと思ったのですが、どんどん出てき 私はその後の予定も特になかったので、ここで東京支 いけないと痛感しました。 て油で直ぐにお腹がいっぱいに。さらに牛スジを串に刺し 部の皆さんと別れてもう少し大阪の史跡とハードロックカ て味噌仕立ての “どて焼き” が出てきて、さすがにお腹がも フェを満喫してから東京に帰りました。 私は女性セミナーに参加。女性セミナーは女性のための セミナーではなく、女性陣による企画のセミナーです。 レセプション会場に移動すると、仮面舞踏会が行われて たれてきたので、さっぱりした物が食べたくなりトマトを 知り合いの照明家は、インターネット上で女性照明家の いてもおかしくなさそうな、華やかな社交場のような空 注文したらトマトも揚げて出てきたときには閉口してしま 今私が同じような会議を企画したときに、たぶん会議 ためのホームページを運営していますし、過去の WLF の 間が広がっていました。美味しいお料理とお酒に囲まれ いました。 の議題を考えるだけであって、せっかく関東までお越し頂 セミナーでは 「アメリカ照明界の女性達」 というセミナーが ておしゃべりを楽しみました。九州支部から現在放映中の 食後の運動として通天閣タワーを上り大阪の街を一望し いたのにお持て成しのことまでは気が回らないと思いま 行われ、その時の講演内容が冊子になっています。東京支 NHK 大河ドラマ「篤姫」にちなんだ、 “いも焼酎 篤姫”の ようしましたが、あいにくの曇天。それでも近くの動物園 す。そういう意味では実に細かいところまで行き届いた会 部や全国各支部で同じように女性陣による企画セミナーの 差入れもあり美味しく頂きました。宴酣には全国津々浦々 やその近隣にある 「摂州合邦辻」 に関係する天王寺や閻魔堂 議だったと思います。普段の会議はあまり企画しない、参 動きがあっても面白いのではないかと思うのですが、如何 から来ている各支部の紹介がありました。また、せっかく が望遠鏡を通して見ることが出来て楽しかったです。それ 加しない立場ですので、今回感じたことを自分の職場や東 でしょうか? の機会と言うことで全国の N.G.C. 同士で集まって集合写 と忘れてはいけない “ビリケンさん” も見てきました。展望 京支部の N.G.C. メンバーの定例会に役立てて後進の育成 真を撮ったりして、情報交換も行いました。その後、東京 台に鎮座しているのですが、そこへ移動するエレベーター に反映していきたいと思います。今の東京支部 N.G.C. メ 閑話休題。オペラの歴史と魅力を短時間で勉強しようと 支部の勝又支部長による手締めで閉会したわけですが、個 の天井には照明が消えると大きな“ビリケンさん”が星座 ンバーは、テレビやコンサートに演劇、日本舞踊にベリー 言う講義で、 講師の鈴木さんが朗々と歌いあげる、 モーツァ 人的には昨年福岡で行われた会議では 「博多手一本」 で締め として浮かび上がりました。 ダンスと様々な演目を担当する人間や専門学校の先生が集 ルトのオペラ 「魔笛」 より第二幕冒頭のザラストロのアリア たので、今回もそうなるかと思っていました。個人的な意 タワーを降りると、朝の連続テレビ小説 「ふたりっ子」 に まって会議をしています。様々なジャンルの情報交換は出 「この清い殿堂に」 で始まり私たちの緊張を解してくれまし 見ですが、いささか残念でした。私はその後、二次会では 出てきた 「通天閣歌謡劇場」 がありましたが、休館日だった 来るのですが、どうしても同じメンバーのため、マンネリ た。映像とピアノ伴奏を使って楽曲の紹介をしながら、イ 大阪支部の事務局の方々と、三次会では N.G.C. 関西の方々 ためバックステージツアーは出来ませんでした。その劇場 化した企画になりつつあるのではないかと危惧しておりま タリアオペラとドイツ・オーストリア、フランスそして日 と酒杯をかさねました。 入り口横には、村田英雄が歌った 「王将」 の歌碑がありまし す。それでも、より良い物を提供できるように精進してい 本での変遷と講義は進んでいくのですが、やはり短時間で た。その向かい側に餃子の王将が店を構えていたのは、洒 きたいです。そして、 「劇場よもやま話」の大先輩方に笑わ 収まる物ではなかったのが残念です。 落がきいていると思いました。 れないように、自分が疑問に思っていることをどんどん勉 それと、個人的には実際にオペラの照明デザインをして 強できるような、 自分が参加したいと思えるような企画 (わ いる照明家が、どの様なアプローチでデザインしていくか 話は変わりますが、スマートボールという縁日のピン がまま)をしていきたいです。その為には、一緒に企画や という、実演者とデザイナーが同席した形でお話を聞いて ボールの様な物に興じ、北海道支部支部長の大野さんも多 活動をしてくださる N.G.C メンバーを随時募集していま みたかったです。以前聞いた講義では、ゲーテの色彩論な く玉を出していましたが、パチンコ同様止め時をあやまり すので、是非是非参加してみては如何でしょうか。心より どから当時の色彩論に近い考え方をイメージして作ってい 結局全部のまれてしまいました。 お待ち申し上げております。 くという照明家もいらしたので、様々なアプローチの仕方 を聞いてみたかったと思います。 後日上司に報告するときに、会議のこと半分と曽根崎心中や新版歌祭文に関連する史跡とハードロックカフェ2 店舗に 定時に終わると、流石に周りは暗くなってきました。淀 屋橋がある中之島のライトアップは有名らしく、 「同会場 32 Journal of Lighting Designers & Engineers Association of Japan 社交界の趣き溢れるレセプション会場 行ったことを真面目に報告して呆れられた、N.G.C. コアメンバーの、のぐちが報告させて頂きました。 Journal of Lighting Designers & Engineers Association of Japan 33
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