北海道教育大学旭川生活協同組合

教 授 大功雄 先生
准教授 海老名尚 先生
准教授 黒谷和志 先生
准教授 古屋光一 先生
北海道教育大学旭川生活協同組合
教員による書評誌
『教員による書評誌』第3号 掲載本一覧
推薦
教員
書 名
子どもの貧困−日本の不公平を考える
出版社名
価格
発行年
阿部 彩
岩波新書
819 2008年11月
苅谷剛彦
中公新書
882 2009年6月
エミール 上中下
ルソー
岩波文庫
945 2007年10月
君たちはどう生きるか
吉野源三郎
岩波文庫
798 1982年11月
雨森芳州 元禄享保の国際人
上垣外 憲一
講談社学術文庫
924 2005年2月
教育と平等
大
教育と平等
功
雄
先
生
著者名
苅谷剛彦
中公新書
882 2009年6月
海
老 歴史学ってなんだ?
名
小田中直樹
PHP新書
714 2004年2月
あなたの話はなぜ
「通じない」
のか
山田ズーニー
ちくま文庫
546 2006年12月
尚
先
生
梅原 猛の授業 仏教 梅原 猛
朝日文庫
630 2006年10月
私の個人主義
夏目漱石
講談社学術文庫
693 1978年8月
山びこ学校
無着成恭
岩波文庫
798 1995年7月
村を育てる学力
東井義雄
明治図書
パニックの子、閉じこもる子達の居場所づくり
山隆夫
学陽書房
希望を生み出す教室
山隆夫
旬報社
2009年2月
みんなで飛んだ−城北中学2年1組の記録
滝田よしひろ
小学館
1155 2001年10月
指名しなくても どの子も発言したくなる授業
今泉 博
学陽書房
1995 2005年4月
子どもの瞳が輝く 発見のある授業
今泉 博
学陽書房
1631 1996年5月
まちがいやや失敗で子どもは育つ
今泉 博
旬報社
1630 2003年3月
少年グッチと花マル先生
溝部清彦
高文研
1365 2002年9月
子どもとつくる対話の教育−生活指導と授業
鈴木和夫
山吹書店
2520 2005年8月
天動説の絵本−てんがうごいていたころのはなし
安野光雅
福音館書店
1575 1979年8月
神谷美恵子
みすず書房
1575 2005年1月
塩野七生
新潮文庫
420 2002年6月
倉田百三
新潮文庫
420 2003年7月
モンゴメリ
(村岡花子訳)
新潮文庫
660 2008年2月
黒
谷
和
志
先
生
古 こころの旅
屋
光 ローマ人の物語1.2
一
先
生 出家とその弟子
赤毛のアン
絶版
1680 2001年3月
この書評誌に対するご意見・ご感想がありましたら、左記のメール宛にお送り下さい。
その際は、
「書評誌について」とメールの件名に入れてください。
教員による書評誌
!
『教員による書評誌』発行にあたって
教授 伊藤一男 先生
北海道教育大学旭川生活協同組合 理事長
北海道教育大学旭川校 教授 今回、
「教員による書評誌」の発行を企画することになりました。学生が本を読まなくなったと言われだし
てから久しくなりますが、
「読まなくなった」
というより
「何を読んだらよくかわからない」
という声も聞かれます。
本誌は、学生に本を読んで欲しいという教員からのメッセージです。
今号は、6名の先生にご協力を頂いて、30冊の書評を載せることができました。気軽に手にできるように
と文庫・新書を中心に選定していただいていますので、生協の購買店で手に取ってみてください。
また、掲載している本の読書コメントを募集します。
生協理事会で優秀賞などを選考する予定ですので、
積極的にご参加ください。
(第1号の巻頭文より)
教員による書評誌
【教育学】教 授 大功雄 先生
子どもの貧困―日本の不公平を考える
阿部彩(著)
¥819 (税込) 岩波新書
学力、健康、親との交流。大人になっても続く、人生のスタートライン
の「不利」。OECD諸国の中で第2位という日本の貧困の現実を前に、
子どもの貧困の定義、測定方法、そして、さまざまな「不利」と貧困の
関係を、豊富なデータをもとに検証する。貧困の世代間連鎖を断つため
に本当に必要な「子ども対策」とは何か。
(出版社紹介文より)
教育と平等
苅谷剛彦(著)
¥882 (税込) 中公新書
戦後教育において「平等」はどのように考えられてきたのだろうか。本書
が注目するのは、義務教育費の配分と日本的な平等主義のプロセスであ
る。そのきわめて特異な背景には、戦前からの地方財政の逼迫と戦後の
人口動態、アメリカから流入した「新教育」思想とが複雑に絡まり合って
いた。セーフティネットとしての役割を維持してきたこの「戦後レジー
ム」がなぜ崩壊しつつあるのか、その原点を探る。 (出版社紹介文より)
書物には、時代を超えて読み継がれるものと、時代ゆえに読むべきものとがあろう。こ
こでは、今という時代の中で、当の今を読む新書2冊を取り上げ紹介したい。現職教師は
もちろん、教師を目指す学生としては喫緊に読むべき一書として。
前世紀90年代から語られ始めた「格差社会」は、数年前から、非正規雇用・ワーキング
プアの増大として私たちの前に出現した。そして、アメリカ発国際金融危機に直面した今
となると、誰にも実感される事態として進行している。だが、たんなる「格差」ではなく、
「社会として許すべきではない」
「貧困」
(貧乏)として、しかも「子どもの貧困」の問題とし
て、日本の今と近未来をとらえる目を私たちはもち得ているだろうか?
子どもの貧困、それはスタートラインにおける圧倒的「不利」を意味する。しかもこの「貧
困」は親から子へ、子から孫へと連鎖する(貧困の世代間連鎖)。著者である阿部彩は、多
数のデータを駆使して、多面的にこの問題に切り込み、日本の不公平を描き出している。特
に前世紀90年代から様相を変えてきた学校の困難(学力低下、学級崩壊、モラル崩壊、給
食費未納
.)の実質的背景を冷静に読み解くことを可能にする一書である。子どもの必
需品についての調査結果(日本では、たとえば、
「お誕生日のお祝い」や「クリスマスのプ
レゼント」などは子どもの必需品とみなされていないのだ!)から、なぜ日本では「教育
教員による書評誌
の平等」や「機会の平等」が支持されにくいのかが見えてくる。それは、当の私たち自身
の貧弱な「貧困観」をテストする物差しともなろう。
2冊目は、その「教育の平等」を支えてきた暗黙の前提、すなわち義務教育費の配分、
その中心である教員給与の配分システムの成立展開過程を明快に跡づけたものである。
1958年に成立した、いわゆる「義務教育標準法の世界」を描くことによって、格差をなく
す「日本的平等」
(今、これが崩されつつある)の、当の発案者も予想しなかった自然的成
立を巧みに描き出す。貧困地域の教師にも平等な給与が支給されるシステム(ちなみに、
アメリカでは学区により、生徒一人当たりの公立学校教育費や教員給与は、2倍以上の開
きがある)は、これから教師になろうとしている4年生にはぜひ知っていて欲しい。
エミール(上・中・下)
(第74刷)
ルソー(著)/今野一雄 (訳)
上¥945、中¥840、下¥840(税込)
岩波文庫
人間は立派な者として生まれるが、社会が彼を堕落させる、という根本
命題に立って人間形成における自然思想を展開した著作。理想的な家庭
教師がエミールという平凡な人間を、誕生から結婚まで、自然という偉
大な師に従っていかに導いてゆくかを、結婚相手となるソフィアの教育
をも加えて、小説形式で述べた教育思想史上不朽の古典。
(出版社紹介文より)
君たちはどう生きるか
吉野源三郎(著)
¥798(税込) 岩波文庫
著者がコペル少年の精神的成長に託して語り伝えようとしたものは何か。
それは、人生いかに生くべきかと問うとき、常にその問いが社会科学的
認識とは何かという問題と切り離すことなく問われねばならぬ、という
メッセージであった。著者の没後追悼の意をこめて書かれた「『君たちは
どう生きるか』をめぐる回想」
(丸山真男)を付載。(出版社紹介文より)
雨森芳洲 元禄享保の国際人
上垣外憲一(著)
¥924(税込) 講談社学術文庫
朝鮮語と中国語を自在に操る対馬藩の儒者に、朝鮮通信使は称賛の言葉を
惜しまなかった――。木下順庵に学び、新井白石・荻生徂徠との交友を通
して研鑽された芳洲の思想は、言語哲学に発し、偏見を排した文化・民族
の平等理念へと昇華する。江戸時代、日朝親善の先駆者となり今日的思索
を展開しながら、国学の擡頭により忘れさられた思想家が現代に甦る。
(出版社紹介文より)
教員による書評誌
【社会科教育】准教授 海老名尚 先生
私の個人主義
夏目漱石(著)
¥693(税込)
講談社学術文庫
文豪漱石は、座談や講演の名手としても定評があった。身近の事がらを
糸口に、深い識見や主張を盛り込み、やがて独創的な思想の高みへと導
く。その語り口は機知と諧謔に富み、聴者を決してあきさせない。漱石
の根本思想たる近代個人主義の考え方を論じた「私の個人主義」、先見に
富む優れた文明批評の「現代日本の開化」、他に「道楽と職業」
「中味と形
式」
「文芸と道徳」など魅力あふれる5つの講演を収録。
(出版社紹介文より)
「近頃自我とか自覚とか唱えていくら自分の勝手な真似をしても構わないという符徴に
使うようですが、その中にははなはだ怪しいのが沢山あります。彼らは自分の自我をあく
まで尊重するような事をいいながら、他人の自我に至っては毫も認めていないのです。い
やしくも公平の眼を具し正義の観念を有つ以上は、自分の幸福のために自分の個性を発展
して行くと同時に、その自由を他にも与えなければ済まん事だと私は信じて疑わないので
す。我々は他が自己の幸福のために、己れの個性を勝手に発展するのを、相当の理由なく
して妨害してはならないのであります。」
さて、この文章を読んで、皆さんはどのような感想を持ちましたか。言い回しや単語に
耳慣れないものもありますが、自らの自我(個性の発展)を尊重する者は、他人の自我も
尊重しなければならないと言っています。皆さんは、なんだ当たり前のことじゃないかと
思うかもしれません。でも、皆さんは、自分の個性の発展のために、他人の個性の発展を
妨害していないと、自信をもって言い切れますか。
実は、この一節は、1914年、夏目漱石が学習院で行った「私の個人主義」という講演か
ら引用したものです。漱石といえば、明治期の日本を代表する文豪です。皆さんも、学校
の課題図書として何冊か読まされたのではないでしょうか。私は、大学に入学してからこ
れまで、
「日本の近代とは何だったのか」という問題を色々と考えてきましたが、その出発
点になったのが『それから』という小説との出会いでした。それ以降、漱石の小説を読み
あさり、最後に行き着いたのが漱石の講演だったのです。
漱石の講演には、小説とは違った魅力があります。近代日本が抱える諸問題を的確にえぐり
だす手際のよさは、語りとともに読者を魅了してやみません。なかでも「現代日本の開化」は、
近代日本の矛盾を冷静に分析した珠玉の講演です。それも、
『私の個人主義』に収められていま
す。それらの講演を読み進めていくなかで、多くのことにハットさせられ、最後に今我々が抱
えている問題の多くは、漱石の生きた時代からの宿題であったことに気づかされるのです。
皆さんも、漱石の講演の世界から、自分や社会をもう一度見つめなおしてみるのもよい
のではないでしょうか。
教員による書評誌
教育と平等
苅谷剛彦(著)
¥882 (税込) 中公新書
戦後教育において「平等」はどのように考えられてきたのだろうか。
本書が注目するのは、義務教育費の配分と日本的な平等主義のプロセス
である。そのきわめて特異な背景には、戦前からの地方財政の逼迫と戦
後の人口動態、アメリカから流入した「新教育」思想とが複雑に絡まり合
っていた。セーフティネットとしての役割を維持してきたこの「戦後レ
ジーム」がなぜ崩壊しつつあるのか、その原点を探る。
(出版社紹介文より)
歴史学ってなんだ?
小田中直樹(著)
¥714(税込) PHP新書
歴史は何のために学ばなければならないのか? そもそも、社会や個人の
役に立つのだろうか?年号ばかり羅列する歴史教科書への疑念。一方で
相対主義や構造主義は、
“歴史学の使命は終わった”とばかりに批判を浴
びせる。しかし歴史学には、コミュニケーション改善のツールや、常識
を覆す魅力的な「知の技法」が隠されていたのだ!歴史小説と歴史書の
ちがいや従軍慰安婦論争などを例に、日常に根ざした存在意義を模索す
る。歴史家たちの仕事場を覗き「使える教養」の可能性を探る、素人の
ための歴史学入門講座。
(出版社紹介文より)
あなたの話はなぜ「通じない」のか
山田ズーニー (著)
¥546(税込) ちくま文庫
周りの人に等身大の自分を分かってもらいたい、相手と信頼関係を築き
たい、前提の通じない相手ともきちんと話し合いたい、聞き上手になり
たい、人を説得したい、相手の共感を得たい―。なかなか自分の「想い」
を人に伝えるのは難しいもの。コミュニケーション上手になるためには
どうすればいいのか?基礎のキソから懇切丁寧に教えます。究極のコミ
ュニケーション技術論。
(出版社紹介文より)
梅原猛の授業 仏教
梅原猛 (著)
¥630(税込) 朝日文庫
宗教教育に基づいた道徳を教えたい―著者のその願いは中学校で一学期
間授業をする形で叶った。その授業は、やさしい言葉で教える仏教の「い
ちばん大切なこと」。仏教を通して質の高い生き方を、中学生だけでな
く、すべての学生から熟年世代まで語りかける名著。
(出版社紹介文より)
教員による書評誌
【教育学】准教授 黒谷和志 先生
教育実践記録を読んだことはありますか。実践記録には、子どもたちに働きかける教師
の活動とその中で変容していく子どもたちの姿が描かれています。戦後日本の教育では、
『山びこ学校』
(無着成恭、1951年、青銅社)をはじめ、
『村を育てる学力』
(東井義雄、1957年、
明治図書)など、数々のすぐれた実践記録が刊行されてきました。一冊の本として刊行さ
れたものだけではなく、日常的な出来事を記録・報告した教師の研究資料的な記録を含め
れば、膨大な数の実践記録が存在します。
実践記録は、
「教師の生活記録」
(勝田守一)とも言われ、単なる読み物というよりは、教
師が自らの教育実践を総括していくために描かれてきました。実践記録を書くことは、そ
れを書く教師の視点から自らの実践を見つめなおしていく手だてになります。またその記
録は、他の教師とともに読みひらかれることによって、教育実践の新たな展望を模索して
いく手だてにもなりますし、教育の方法や捉え方を共有していく手だてにもなります。
実践記録を分析しながら読むことは、決して容易なことではありませんが、日々の実践
を綴り、それを介しながらさまざまな先生方とつながる教師になってほしいという願いも
込めて、近年のいくつかの実践記録を紹介したいと思います。
パニックの子、閉じこもる子達の居場所づくり
山隆夫(著)
¥1,680(税込)
学陽書房
この本は、2部構成になっています。特に第2部「パニックの子、
閉じこもる子たちの居場所づくり―受容と共感のある学級づくりで
彼らは甦った!」は、小学校教員としての山先生が、自己と共に
生きること、他者と共に生きることに不安を抱える子どもたちと向
かい合い、子どもたちが子どもらしく生きる世界を取り戻していく
学級づくりの記録となっています。わたしは、山先生の深い子ど
も理解に惹きつけられるようにこの実践記録を読みました。山先
生は『希望を生みだす教室』
(旬報社、2009年)という本も刊行され
ていますので、あわせて読んでみてください。
みんなで跳んだ―城北中学2年1組の記録
滝田よしひろ(文)/「みんなで跳んだ」編集委員会(編)
¥1,155(税込)
小学館
運動会の学級対抗種目は「大縄跳び」。
「先生、大縄跳びで、矢部ち
ゃんをはずして跳ぶのは、やっぱりいやなんです」。運動会前日、あ
る生徒が柏木先生のところにこう言ってきます。本番に向けてどん
なに練習をしてもうまく跳べない矢部ちゃんには応援係を頼むこと
になっているが、本当にそれでいいのだろうか?この生徒の訴えを
きっかけに、長時間に及ぶ学級討論がはじまります。この学級討論
の場面が読みごたえのある実践記録です。いっしょに跳ぶことが平
教員による書評誌
等なのか、外すことが思いやりなのか?中学生が対話・討論を通して、自分たちの「競争」
的な価値観を相対化しながら、
ともに生きる世界を教室の中に立ち上げていく実践記録です。
指名しなくてもどの子も発言したくなる授業
今泉博(著)
¥1,995(税込)
学陽書房
わたしの授業では、今泉先生の実践をよく紹介していますので、
ご存じの方もいらっしゃるかと思います。目の前の子どもの声を深
く聴きとりながら、教師が試行錯誤を重ね、創意工夫して授業はつ
くりあげられていくものだということを、この本は改めて実感させ
てくれます。そして、この実践記録には、もちろん具体的な教育の
方法・技術や活動が描かれており、そこから多くのことを学べます。
と同時に、教師がどのような子ども観や指導観、授業観や学習観を
もって授業づくりを行っていくことが求められているのかを深く考えさせられるところに、
この実践記録のおもしろさがあります。本書と対話し、自分の中のものの見方や考え方と
も対話しつつ読み進めてほしい本です。今泉先生の本にはその他に、
『子どもの瞳が輝く発
見のある授業』
(学陽書房、1996年)
『崩壊クラスの再建』
、
(学陽書房、1998年)
『まちがいや
、
失敗で子どもは育つ』
(旬報社、2003年)などがあります。こちらもあわせて手にとってみ
てください。
上記の本を含めて、この場を借りて何冊かの実践記録を紹介しましたが、この他にも、た
くさんの実践記録があります。ぜひこれを機に、さまざまな実践記録にふれてみて下さい。
少年グッチと花マル先生
溝部清彦(著)
¥1,365(税込)
高文研
頭を金髪に染め、首には安もののネックレスを光らせた小六のグッチ。
遅刻常習、ゲーセン通いの彼にも、人に言えない悲しみがあった。花マ
ル先生はグッチを包む友だち関係を編みだす中で、その冷えた心を溶か
してゆく。現代日本の豊かさと貧困の中で生きる子ども群像を、子ども
の目の高さで鮮やかに描き出した実践児童文学! (出版社紹介文より)
子どもとつくる対話の教育―生活指導と授業
鈴木和夫(著)
¥2,520(税込)
山吹書店
子どもの生きづらさと向かい合い、生きる力をはぐくむ教育実践を4つ
の実践記録と自らの解題であらわした好著。
*日本図書館協会選定図書
(出版社紹介文より)
教員による書評誌
【理科教育】准教授 古屋光一 先生
天動説の絵本 −てんがうごいていたころのはなし−
安野光雅(文・絵)
¥1,575(税込)
福音館書店
地球が全宇宙の中心だと信じていたころの人びとが考えていた世界と
は、いったいどんな世界だったのでしょう? 中世然とした作りの、ユ
ニークな科学絵本。
(出版社紹介文より)
この絵本に初めて出会ったのはずいぶん前のことだった。その時の印象は、
「日本の絵本
らしくない」というものだった。きっと外国の、それもヨーロッパのどこかに置くと似合
う、そう思った。
それから数年後の歳の暮れ、僕はディジョンにいた。クリスマスも終わったあとの、こ
のフランスの古い街は、まだ午後3時だというのに、薄暗く、寒く、歩く人もいない。ふ
と古い本屋さんが目に入った。閉まっているがショーウインドを見ると、いろいろな本が
ある。その中に、この絵本があった。表題はフランス語になっていて、間違いかと思った
がANNOと著者名がある。もちろん手に取ってみることはできなかったが、間違いない。
この絵本があるべきところにあると思った。それほどこの本の絵は、ヨーロッパ的なので
ある。
ところで3年前、学力問題のターゲットが大学から小中学生へと移った頃のことである。
かなり多くの小学生が「地球の周りを太陽が回っている」と考えていると、話題になった。
これは地動説を知らないということを問題にしているらしかった。でも、これについて本
当の納得は難しい。地球が動いているぐらいのことは、本当の納得はなくても書けるので
ある。だから、ちょっとした知識を身につけて、地動説を指摘できる子どもが多ければ問
題にならなかったことなのである。しかし知識とはそんな薄っぺらなものではない。この
ことを改めて認識させてくれた事件だった。
天動説から地動説へ移るとき、どれほど時間がかかったか、人々は新しい知識をどれほ
ど、恐れ、それを知って不安になったか。この絵本はこうした知識獲得のプロセスを見事
に描いてくれる。もちろん絵本として。そしてページが進むにつれて徐々に地動説の考え
が忍び寄る様子を、いくつも君は発見することになるだろう。見開きページのかわいいエ
ンジェルと最後のエンジェルの違いにも気がつくだろうか。科学史にもかなり忠実であ
る。小学校の先生から画家に転じた著者の、この絵本は、知識を伝えることを仕事とする
君にぜひ読んでほしい一冊である。
教員による書評誌
こころの旅
神谷美恵子(著)
¥1,575(税込)
みすず書房
人の一生をこころの旅としてとらえ、フロイド、ピアジェ、エリ
クソンという3人の心理学者を対比しながら人生の発達課題を示
す。淡々と語りながら人に対する暖かなまなざしを感じさせる本書
に励まされる人は多い。あわせて「生きがいについて」、
「遍歴」を読
まれることを薦める。
ローマ人の物語1,2 ローマは一日にして成らず
塩野七生(著)
1¥420、2¥460(税込)
新潮文庫
ローマ人は著者によると、知力ではギリシア人に劣り、体力では
ケルト(ガリア)人やゲルマン人に劣り、技術力ではエトルリア人
に劣り、経済力ではカルタゴ人に劣るという。これでは良いところ
が全然ないように思える。しかしこのローマが1000年に及ぶ帝国を
築き上げる理由が、ここにはある。私たち日本人への著者渾身のメ
ッセージ。
出家とその弟子
倉田百三 (著)
¥420 (税込) 新潮文庫
とかく宗教というと、
「○○がかないますように」などという利己
的な祈りを意味すると誤解される昨今。そのため怪しげなオーラ等
という言葉がごく日常に使われるようになってしまったのだと思
う。しかし本当の宗教とはこれとは少し(全然!)違うものだろう。
本書は歎異抄入門とでも言うべきものだが、若い時代に出会う色々
な問題に正面から取り組む主人公のすがたから学ぶことは多い。
赤毛のアン
ルーシー・モード・モンゴメリ (著)/村岡花子(訳)
¥660(税込) 新潮文庫、各社
アニメにもなっているので、題名は知っていても特に男子学生は
あまり読まないのではないかと思う。しかし物語のはじめで、孤児
院から間違って引き取られることになるアンと、彼女を育てるマシ
ュー、マリラという老兄妹との出会い、かれらの成長過程はまさに
教育の書。必見。
教員による書評誌
『教員による書評誌』第1号 掲載本一覧
推薦
教員
書 名
恐怖の存在 上 下
大
鹿
聖
公
先
生
籾
岡
宏
成
先
生
大
橋
賢
一
先
生
森
永
正
治
先
生
角
一
典
先
生
浅
川
哲
弥
先
生
著者名
マイクル・クライ
トン
出版社名
価格
早川文庫
987
ぼくはこんな本を読んできた―立花式読書論、
立花隆
読書術、書斎論
文春文庫
540
宇宙からの帰還
中公文庫
840
立花 隆
子供は無限に伸びる
「陰山学級」学力向上物語 陰山 英男
PHP文庫
520
われはロボッ
ト〔決定版〕アシモフのロボッ
ト傑作集
アイザック・アシモフ
早川文庫
987
ばくはアメリカを学んだ
鎌田 遵(著)
岩波ジュニア新書
819
深夜特急 1∼6巻
沢木耕太郎(著)
新潮文庫
420
眼の探索
辺見 庸(著)
角川文庫
540
英文翻訳術
安西徹雄(著)
ちくま学芸文庫
924
木のいのち 木のこころ
西岡常一、小川三夫、塩野
新潮文庫
米松(著)
夏草冬濤(上)
(下)
井上 靖(著)
新潮文庫
或る
「小倉日記」伝 改版
松本清張(著)
新潮文庫
700
発行年
900
(上)620(下)580 本と中国人と日本人と
高島俊男(著)
ちくま文庫
988
お伽草子 改版
太宰 治(著)
新潮文庫
540
母
三浦綾子(著)
角川文庫
483
ふしぎの国のアリス
(新書版)
キャロル
(著)
講談社青い鳥文庫
651
講談 英語の歴史
渡部昇一(著)
PHP新書 品切・重版未定
知的生活の方法
渡部昇一(著)
講談社新書
756
海の祭礼 新装版
吉村 昭(著)
文春文庫
660
美しい人に
渡辺 和子(著)
PHP文庫 品切・重版未定
晩年 改版
太宰 治(著)
新潮文庫
520
こころ 改版
夏目 漱石(著)
新潮文庫
380
ヘッセ詩集 改版
ヘルマンヘッセ
(著)
新潮文庫
420
ペスト 改版
アルベールカミュ
(著)
新潮文庫
780
終わりなき日常を生きろ
宮台真司(著)
ちくま文庫
609
化学 意表を突かれる身近な疑問
日本化学会(編)
講談社ブルーバックス
840
先生をもっと困らせた324の質問
マーチン・M・ゴールドウイン(著) ワニ文庫
飲酒の生理学- 大虎のメカニズム-
梅田 悦生(著)
100円ショップで大実験!
大山光晴(監修)、学研「科学」編 学習研究社
893
夏への扉
ロバート・A・ハインライン
(著) ハヤカワ文庫
672
裳華房
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1575
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教員
片
山
晴
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達
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540 2004年6月
家出のすすめ
寺山修司
角川文庫
500 2005年1月
幸福論
寺山修司
角川文庫
540 2005年2月
漱石を読みなおす
小森陽一
ちくま新書
777 1995年6月
出家とその弟子
倉田百三
新潮文庫
420 2003年6月
善の研究
西田幾多郎
岩波文庫
735 2008年4月
和食の力
小泉和子
平凡社新書
4年1組命の授業 金森学級の35人
NHK
「子ども」
プロジェクト
日本放送出版協会
1,260 2003年9月
教室はまちがうところだ
蒔田晋治、長谷川知子
子どもの未来社
1,575 2004年5月
傑作短編集(五)張込み
松本清張
新潮文庫
660 1982年8月
変わる家族 変わる食卓
岩村暢子
勁草書房
1,890 2003年4月
若き数学者のアメリカ
藤原正彦
新潮文庫
540 1981年6月
数学質問箱- なぜだろう?そこが知りたい!-
矢野健太郎
講談社ブルーバックス
903 1979年12月
知的好奇心
波多野誼余夫、稲垣佳世子 中公新書
756 1992年4月
臨機応答・変問自在
森 博嗣
集英社新書
714 2001年4月
博士の愛した数式
小川洋子
新潮文庫
460 2005年12月
大地の子 一∼四
山崎豊子
文春文庫
各610 1995年12月
夏の闇
開高 健
新潮文庫
460 1983年5月
雪沼とその周辺
堀江敏幸
新潮文庫
380 2007年8月
わしらは怪しい探検隊
椎名 誠
角川文庫
谷川俊太郎質問箱
谷川俊太郎
東京糸井重里事務所
ケータイを持ったサル
正高信男
中公新書
735 2003年9月
ケータイ世界のこどもたち
藤川大祐
講談社現代新書
756 2008年5月
尾木直樹
講談社+α新書
840 2007年1月
村
田 ウェブ汚染社会
育
からわが子を守る!
也 「学校裏サイト」
先 コンピュータが子供たちをダメにする
生
しゃべらない子どもたち・笑わない子どもたち・
遊べない子どもたち
756 2003年3月
441 1982年6月
1,500 2007年8月
安川雅史
中経出版中経の文庫
クリフォード・ストール
草思社
1,575 2001年11月
片岡直樹・山崎雅保
メタモル出版
1,470 2003年12月
580 2008年6月
教員による書評誌
書
名
叢書名
巻次・年次
著者名
本体価格 全国販売数
大学生のためのレポート・論文術
講談社現代新書
小笠原喜康
680
5,198
理科系の作文技術
中公新書
木下是雄
700
4,522
就活のバカヤロー
光文社新書
石渡嶺司
820
2,866
反貧困
岩波新書
湯浅誠
740
2,662
悩む力
集英社新書
姜尚中
680
2,645
ルポ貧困大国アメリカ
岩波新書
堤未果
700
1,762
生物と無生物のあいだ
講談社現代新書
福岡伸一
740
1,753
理系バカと文系バカ
PHP新書
竹内薫
720
1,142
日本の難点
幻冬舎新書
宮台真司
800
1,141
落下傘学長奮闘記
中公新書ラクレ
黒木登志夫
920
1,104
子どもの貧困
岩波新書
阿部彩
780
1,075
格差社会
岩波新書
橘木俊詔
700
1,041
「分かりやすい教え方」
の技術
ブルーバックス
藤沢晃治
800
1,030
憲法判例集
有斐閣新書
野中俊彦
1,000
997
現代語訳学問のすすめ
ちくま新書
福沢諭吉
760
986
大学の誕生 上
中公新書
天野郁夫
940
976
グローバル恐慌
岩波新書
浜矩子
700
959
アダム・スミス
中公新書
堂目卓生
880
932
日本の統治構造
中公新書
飯尾潤
800
872
断る力
文春新書
勝間和代
900
864
世界は分けてもわからない
講談社現代新書
福岡伸一
780
840
大学の誕生 下
中公新書
天野郁夫
980
831
大学生のためのレポート・論文術 インターネッ
ト完全活用編
講談社現代新書
小笠原喜康
740
795
化粧する脳
集英社新書
茂木健一郎
680
792
学歴分断社会
ちくま新書
吉川徹
740
779
ポスト戦後社会
岩波新書
吉見俊哉
780
757
なぜ日本人は学ばなくなったのか
講談社現代新書
斎藤孝
720
729
マーケティング
日経文庫
恩蔵直人
860
715
創造の方法学
講談社現代新書
高根正昭
700
714
戦後世界経済史
中公新書
猪木武徳
940
702
教育と平等
中公新書
苅谷剛彦
840
702
上
下
インターネッ
ト
完全活用編
教員による書評誌
書 名
文庫名
巻次・年次
著者名
本体価格 全国販売数
思考の整理学
ちくま文庫
外山滋比古
520
6,343
重力ピエロ
新潮文庫
伊坂幸太郎
629
5,213
夜は短し歩けよ乙女
角川文庫
森見登美彦
552
4,872
終末のフール
集英社文庫
伊坂幸太郎
629
4,046
ノルウェイの森 上
講談社文庫
村上春樹
514
3,466
大学時代しなければならない50のこと
PHP文庫
中谷彰宏
495
3,266
ノルウェイの森 下
講談社文庫
下
村上春樹
514
3,122
天使と悪魔 上
角川文庫
上
ダン・ブラウン
590
3,110
天使と悪魔 中
角川文庫
中
ダン・ブラウン
590
3,041
天使と悪魔 下
角川文庫
下
ダン・ブラウン
590
3,016
鴨川ホルモー
角川文庫
万城目学
514
2,828
グラスホッパー
角川文庫
伊坂幸太郎
590
2,622
名探偵の掟
講談社文庫
東野圭吾
590
2,461
魔王
講談社文庫
伊坂幸太郎
619
2,317
アヒルと鴨のコインロッカー
創元推理文庫
伊坂幸太郎
648
2,273
人間失格
新潮文庫
太宰治
286
2,242
レポートの組み立て方
ちくま学芸文庫
木下是雄
780
2,121
オーデュボンの祈り
新潮文庫
伊坂幸太郎
629
1,863
蜂蜜色の瞳
集英社文庫
村山由佳
400
1,854
死神の精度
文春文庫
伊坂幸太郎
524
1,784
海辺のカフカ 上巻
新潮文庫
村上春樹
705
1,712
ラッシュライフ
新潮文庫
伊坂幸太郎
629
1,706
向日葵の咲かない夏
新潮文庫
道尾秀介
629
1,683
大学3年になったらすぐ読む本
だいわ文庫
檜谷芳彦
619
1,668
頭のいい大学四年間の生き方
中経文庫
和田秀樹
495
1,647
知的複眼思考法
講談社+α文庫
苅谷剛彦
880
1,571
海辺のカフカ 下巻
新潮文庫
村上春樹
743
1,546
町長選挙
文春文庫
奥田英朗
505
1,506
容疑者Xの献身
文春文庫
東野圭吾
629
1,456
本がいままでの10倍速く読める法
知的生きかた文庫
栗田昌裕
533
1,456
上
上巻
下巻
2009年11月20日発行
発行人:北海道教育大学旭川生活協同組合 理事会 住 所:旭川市北門町9丁目 電話0166-51-6453