公務員試験 ジャーナル - 教材 NAVI【実務教育出版】

発行所●
特 集
公務員試験
ジャーナル
東京都新宿区新宿1-1-12
電話●
(03) 3355–1801
第37巻 臨増1号
平成 27 年 6 月 1 日発行
受験指導を始める前に知っておきたい
公務員の基礎知識
うえで、次のような服務上の規定がなされている
公務員の性格
一口に「公務員」といっても、その職務はさま
ざまである。国家公務員と地方公務員、一般職と
のである。
①労働基本権の制限
公務員の場合、使用者は国民全体であり、その
特別職といった分け方をされることもあるが、憲
職務の公共性、地位の特殊性から、ストライキな
者であつて、一部の奉仕者ではない。
」と規定さ
務員であっても、その種類によって制約される内
法第 15 条 2 項で「すべて公務員は、全体の奉仕
れているように、「公務員」を一言で表すと「全
体の奉仕者」であると言えるだろう。
公務員の仕事は、国民(住民)の利益に直接影
響を及ぼす。したがって、公務員には民間企業の
社員以上に高い倫理観が要求されるのは当然とい
わねばならない。こうした「公務員」としての性
格から、公務員は、憲法の保障する基本的人権に
どの争議行為が禁止されている。ただし、同じ公
容は異なる(資料 1 参照)。このように、公務員
の労働基本権は少なからず制約を受けることにな
るが、人事院や人事委員会の勧告制度などの代替
措置により、必要な水準の勤務条件や職員の身分
が法律によって手厚く保障されている。
②政治的行為の制限
公務員は政治的には中立な立場でいなければな
大きな制限を受けている。国家公務員法第 96 条、
らない。これは偏らない行政の運営、公共の利益
ては、全力を挙げてこれに専念しなければならな
③私企業からの隔離
地方公務員法第 30 条には「職務の遂行に当たっ
い」とあり、これが服務の根本基準となる。この
を保障するために必要である。
②と同じく行政の公平性ということから、国家
資料 1 ●公務員の労働基本権の制限
団結権
団体交渉権
民間企業の労働者
○
○
警察職員、海上保安庁または刑
事施設で勤務する職員、防衛省
などの国家公務員
警察職員、消防職員などの地方
公務員
×
×
上記以外の一般職・非現業の国
家公務員・地方公務員(含教育
職員)、裁判所職員、国会職員
○
(職員団体)
争議権
○
(ただし、一部公益性の強
い特殊な企業などを除く)
△
(団体交渉の対象事項の範囲制
限あり、団体協約締結権なし)
○
現業職員、特定独立行政法人、
○
(労働協約締結は可能。ただし、
地方公営企業の職員、技能労務 (労働組合。ユニオンショッ
効力の制限および団体交渉の対
プは禁止)
職員(地方)
象事項の範囲制限あり)
×
×
×
公務員● 1
公務員法第 103 条 1 項には「職員は、商業、工
国家公務員は国家規模のスケールの大きな仕事を
下営利企業という。
)を営むことを目的とする会
果を身近に感じにくい場合もあるのに対し、地方
業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以
社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職
を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。
」
と規定されている。同様の規制は地方公務員にも
課せられている(地方公務員法第 38 条)
。このほ
か、国家公務員法では、在職中の地位や職権を濫
用して、営利企業と私的な関係を結び当該企業に
就職する弊害を防止するため、離職後の営利企業
への就職に関しても規制が設けられている。
ただし、就職は憲法で保障されている職業選択
する機会がある一方、巨大な組織の中で仕事の成
公務員はその地域に限定された仕事ではあるが、
地域住民の生活に密着した仕事であるため成果を
実感する機会が多いと言える。また、国家公務員
はいったん採用されると他官庁への異動がほとん
どなく、その官庁の仕事のみに従事するが、地方
公務員はその地方公共団体の内部の組織における
異動が多く、性質の異なる職務に広く携わるよう
になる。
転勤という観点では、国家公務員は全国的組織
の自由、勤労の権利等にもかかわることであるた
内にあるので、全国各地に転勤を命じられる可能
権者の承認を得て、就職が認められる。
の転勤は、原則として採用された人事院地方事務
め、公共の利益に反しない場合は、人事院や任命
国家公務員と地方公務員
公務員は国家公務員と地方公務員に大別でき
る。
国家公務員は国の公務を担当し、国によって選
性がある(ただし、国家一般職高卒からの採用者
局〈所〉の管轄地域内に限られる)
。地方公務員は
原則としてその地方公共団体の区域内に限られる。
国家公務員の種類
国家公務員は、特別職と一般職とに分けられ、
任され、国から給与を支給される。各府省庁(そ
国家公務員法第 2 条 3 項に掲げられている職の公
どに勤務する職員である。
家公務員法の適用はなく、給与、服務などの制度
の地方機関や付属機関を含む)や国会、裁判所な
地方公務員は、地方公共団体の公務を担当し、
地方公共団体によって選任され、給与を支給され
る。都道府県庁や市役所、町村役場などに勤務す
る職員のほか、警察官や消防士なども地方公務員
である(ただし警察官は、警視正の階級の者以上
は国家公務員となる)
。採用試験はそれぞれの地
務員が特別職公務員となっている。特別職には国
も別に定められている。また、特別職公務員への
任用は、それぞれ個別に試験や選考が行われてい
る。職種はさまざまだが、たとえば、政治を担当
する大臣、大使、公使、宮内庁長官、裁判官、裁
判所職員、国会議員、国会職員などが挙げられる。
特別職以外は一般職であり、一般的に人事院が
方公共団体が独自の計画・方法に基づいて実施し
行っている公務員採用試験によって採用される国
国家公務員と地方公務員は職種により共通する
採用総合職/一般職試験で採用される防衛省の職
ている。
部分も多い。しかし、その違いを大まかに言うと、
資料 2 ●国家公務員の種類と数
特定独立行政法人職員
65,000
検察官
3,000
国家公務員
約641,000
家公務員は一般職に当たる(ただし、国家公務員
員は特別職である)。一般職の職務内容もさまざ
大臣、副大臣、大臣政務官、大使、公使等
400
裁判官、裁判所職員 26,000
国会職員
4,000
特定独立行政法人役員
40
防衛省職員
268,000
非現業公務員
275,000
一般職
約342,000
特別職
約299,000
(平成 26 年度末の予算定員。特定独立行政法人は 26 年 1 月 1 日現在の数。各数字は約~人)
公務員● 2
まであるが(資料 2)
、ここでは非現業職員を種
類別に紹介する。
行政職(一)
給与法の適用を受ける国家公務員の半数が行政
職(一)の職員である。府省およびその付属機関
で事務や技術の仕事に従事する職員は大体ここに
含まれる。
行政職(二)
公用車の運転手、ボイラー技師など機器の運転・
操作、庁舎の監視その他の庁務に従事する者。
専門行政職
航空管制官、特許庁の審査官・審判官、家畜防
病院、療養所、診療所などに勤務する医師、歯
科医師(一)、薬剤師、栄養士など(二)、保健師、
助産師、看護師、准看護師など(三)。
福祉職
国の身体障害者更生援護施設、児童福祉施設等
に勤務する指導員、保育士、介護員など。
専門スタッフ職
特定の分野についての調査、研究、情報分析な
どを行い、政策の企画・立案等を支援する職員。
指定職
事務次官、外局の長、試験所・研究所長、病院・
療養所の長など。
疫官、植物防疫官など、特定の専門行政の分野で
特定任期付職員
者。
用して遂行することが特に必要とされる業務に従
専門的な知識・技術を必要とする業務に従事する
税務職
国税庁に所属し、租税の賦課・徴収に関する事
務を行う職種で、国税専門官試験(大卒程度試験)
から採用される国税調査官、国税徴収官、国税査
察官が含まれる。高卒程度試験である税務職員採
高度の専門的な知識や優れた識見を一定期間活
事する職員。
任期付研究員(第一号)(第二号)
国の試験研究機関において研究業務に従事する
一般職の職員で、一定の任期を付して採用された
者。
用試験からの採用者もこの職種になるが、税務大
地方公務員の種類
学校在学中の 1 年間は行政職(一)の俸給表が適
用される。
公安職(一)
(二)
警察官、皇宮護衛官、入国警備官、刑務官など
刑務所等に勤務する職員が(一)
、検察庁、公安
調査庁、少年院、海上保安庁などに勤務する職員
が(二)
。
海事職(一)
(二)
海上保安庁などの船舶に乗り組む職種で、遠洋
区域・近海区域を航行区域とする船舶その他人事
院の指定する船舶に乗り組む船長、航海士、機関
長、機関士などは(一)
、その他は(二)
。
教育職(一)
(二)
行政機関に置かれる大学校など大学に準じる教
育施設に勤務し、学生の教育・研究指導、および
研究に係る業務に携わる職員等は(一)
、医療施
設等に置かれる看護師の養成所など高等専門学校
に準じる教育施設に勤務し、職業に必要な技術を
指導する職員等は(二)
。
研究職
各官庁の付属機関または独立行政法人である試
験所や研究所などに勤務し、試験研究や調査研究
業務に従事する職種。
医療職(一)
(二)
(三)
地方公務員も、国家公務員と同じく一般職と特
別職に分けられる。特別職公務員は、その職が臨
時的なものや非常勤的な性格のものである場合、
任命ないし就任が選挙または議決・同意などに
よって行われ、公開競争試験の原則によりにくい
ものの場合である。
特別職以外の公務員が一般職であり、国家と共
通する職種も多い。また、地方公務員においても、
一般的な事務、技術職が相当数を占めている。加
えて、地域住民の社会生活に密接に結びつく教員
や保育士、医療職、福祉関係の資格職など、社会
福祉関係の職員の多さが地方公務員の特色といえ
る。
さらに、警察や消防も、ほとんどが地方公務員
である。前述の通り、巡査~警視の警察官は道府
県(東京都は警視庁)、消防士は市町村または広
域消防組合(東京都は東京消防庁)の職員である。
公務員の給与と昇任
公務員の給与は俸給と諸手当からなる。俸給は
民間企業の「基本給」に相当するものである。民
間企業と違い、公務員の給与は、特に問題なく普
通に勤務すれば、毎年 1 号俸ずつ着実に上がると
公務員● 3
いえる。初任給は、学校卒業後直ちに採用された
よび一部の市では国を上回っている場合がある。
ど、ケースによって異なる。国家公務員の新規高
やや下回る。
場合と、何年かの経歴のある者を採用する場合な
卒者の場合、その基本給を一例として見てみると
その他の市では国と同水準、町村では国並みか、
昇任は、役職の名称や段階の数、方法について
次のようになる(平成 27 年度受験案内による。国
は国家と地方においてやや違いがみられる。年齢
判所一般職は東京特別区内の例)
。この額に諸手当
人の希望で昇任を決める昇任試験に挑戦すること
家一般職、皇宮護衛官、刑務官、入国警備官、裁
が加算される。
国家一般職高卒:167,678 円
要件を満たしつつ、一定のキャリアを積めば、本
ができる。また、昇任を選考で決める場合もある。
国家一般職高卒採用者の場合、係長への昇任は
刑務官・入国警備官・皇宮護衛官高卒:193,284 円
平均で 33 ~ 34 歳、課長補佐が 40 歳過ぎ。最終
海上保安大学校・海上保安学校学生:142,100 円
昇任するのが一般的といわれている。
税務職員:159,152 円
航空保安大学校・気象大学校学生:150,626 円
的に、本府省の課長補佐、地方機関の課長までに
地方公務員の場合は、それぞれの地方公共団体
衆議院一般職高卒・参議院一般職高卒・裁判所一般職高卒:167,678 円
によって異なるが、都道府県採用の場合を例にと
地方公務員の初任給額は各地方公共団体によっ
昇任するまでの期間が長く、40 歳前後で係長と
衆議院衛視・参議院専門職(衛視)
:193,992 円
て異なっているが、大まかにみると、都道府県で
は国と同じ水準のところが多く、政令指定都市お
ると、一般的に国家公務員の場合より係長相当に
いう場合が多い。
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公務員の魅力
⑤能力向上、自己啓発の機会に恵まれている
①公平な受験機会
各試験の受験資格に合致すればだれでも受験
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研修の機会に恵まれており、直接仕事に関係
することだけでなく、国内・国外の最新の知識
できる。
国家公務員一般職高卒の場合、受験資格は高
等学校卒業見込み、および卒業後2年以内の者
や技術を得る機会も多く与えられている。
⑥勤務条件が整備されている
平日の勤務時間は比較的一定している。しか
となっている。
②採用は実力本位、昇進も成績主義
採用試験は競争・公開・平等によって、実力
し、実際の勤務時間については、その職務の性
質・特殊性から、変則勤務や超過勤務もあり、
さえあれば誰にでも合格のチャンスがある。任
必ずしも一様ではない。交代制勤務の例として
用後も公平な選考などによって昇進する。
は、国家公務員では航空管制官、税関職員、気
③公共の仕事で、やりがいがある
象台職員など、地方公務員では警察官や消防士
公共の利益・福祉の増進のために、社会的価
値のある創造に携わるので、仕事の成果は後世
などが挙げられる。
⑦休暇制度の整備
交替制職員など特別の勤務に従事する職員を
に残っていく。
除き、完全週休 2 日制が導入されている。また、
④多種多様な職種
事務系職種と一口にいっても、一般事務をは
じめ、学校事務、警察事務もある。また、技術
育児休暇制度、介護休暇制度も施行されている。
⑧福利厚生面の施設・環境が充実している
系職種も多くの専門分野があるほか、公安系職
職場環境が整備されているほか、住宅・医療
種には警察官、消防士のほかに刑務官、入国警
施設が完備している。公務員住宅も勤務地や近
備官、皇宮護衛官などもある。
辺にあり、独身寮もある。
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『公務員試験ジャーナル』
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公務員● 4
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高等学校の TOP ページ(http://www.jitsumu-kyouzai.com/highschool/)より、
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