パラグアイ経済報告(2011年1月~2月) 1. 概要 (1) 年間貿易額の記録更新 2010年年間貿易統計が発表され,歴代最高記録であった2008年の記録を上回る貿易取引 額が発表された。右を可能にしたのは,農産品の生産量増加及び一次産品国際価格の上昇であ る。景気回復と農業投資拡大に伴う消費財及び資本財輸入の拡大により輸入額も高い水準を記 録した。景気の回復にともない,物価が上昇傾向となっているほか,投資関連の輸入財(セメント) などの不足が発生し始めている。 (2) 大豆の収穫開始 1月に入り各地で大豆収穫が始まったが,長雨と日照不足のため収穫が大幅に遅れることとな り,1月の大豆輸出量は大幅に減尐した。他方,2月に入り本格的に収穫が開始され,昨年と同 水準の生産量及び輸出が見込まれている。 (3) 為替・物価 2010年9月末より続く対ドルグァラニー高傾向は,昨年末に一時4,500グァラニー代前半を 記録した後は4,550~4,650グァラニーの範囲で安定推移した。 月間インフレ率は1,2月ともに食料及び燃料価格の高騰により,各1.5%上昇し,過去12ヶ月 間インフレ率は1月7.8%,2月9.5%となり,ターゲット(5±2.5%)を上回った。そのような状況 に対し,中央銀行は週2回のペースで金融調整手形(IRM)を発行したほか,平均利回りを引き上 げるなどして対応している。 2. 経済関係の主な動き (1) 財政・政策 ● 1月3日,大蔵省は2010年財政収支を発表。税収2,475百万ドル(前年比24%増),財政 執行率は前年比8.8%増となり,中央政府の財政収支は対 GDP 比1.0%の黒字となった。 ● 1月4日,商工省は,2010年に投資促進法(法60/90号)の適用が認められた投資案件 は122案件となり,総額467百万ドルに及ぶ見込みと発表。なお,部門別では食品製造,製 薬部門が中心であった。 ● 2月11日,中央銀行は昨年法案を準備しつつも一時保留としていた通貨のデノミネーション 計画を再び始める旨発表した。 (2) 2011年国家予算 ● 1月12日,政府は,2011年度国家予算法(法4,249/2011号)を公布した。なお,右は 昨年12月6日に上院にて承認されたもの。 ● 1月31日,政府は2011年度国家予算法の細則を定める政令6071/11号を発出。 ● 2月23日,大蔵省は2011年度国家予算法の執行計画を定める政令6,200/11号を発出。 右により予算法より支出額が3.2%削減された。 (3) 個人所得税導入延期法案の国会再審議 ● 1月,大蔵省関係者は,個人所得税の導入が 2013 年まで延期されたことを受けて,上院議 員が2011年中に作年国会承認された延期法案を破棄して新たに個人所得税導入を試みる 法案を作成中である旨明かした。同法案は今年の 7 月からの審議に向けて作成中であるとこ ろ,ボルダ蔵相は右に関し,昨年延期された際に障害となったと考えられる数箇所(資産公開 の義務など)に修正を加える方針である旨明かしている。 (4) 経済指標 ● 1月,プライスウォーターハウス・クーパーズ社は労働需要指数(IDL)を発表,12月の IDL は 前月比7.9%増となった。 (5) 景気予測 ● 1月8日,中銀は2011年年間インフレ予測を6.3%と発表した。 ● 1月18日,国連は南米諸国の経済見通しを発表。パラグアイの2011年経済成長率は5%と 予測された。 ● 2月23日,BBVA 銀行は2011年パラグアイ経済成長予測を4.4%,インフレ予測を8.8% と発表した。 (6) 金融政策(金融調整手形発行,為替介入など) ● 1月,中銀は総額1.7兆グァラニーの金融調整手形(IRM)を発行した。7日,中銀は1,940 億グァラニーの IRM を発行した。 ● 1月20日,中銀は外貨準備高が4,244百万ドルとなり,歴代最高額を記録した旨発表し た。 ● 2月,中銀は総額1.7兆グァラニーの金融調整手形(IRM)を発行した。 ● 2月11日,中銀は金融調整手形の短期利回りを1.5~2.0%の幅で引き上げる旨発表し た。 3. 対外部門 (1)輸出入 ● 1月,中銀は2010年貿易統計を発表。2010年年間輸出額は4,535百万ドル(前年比4 3%増),輸入額は9,400百万ドルとなった。輸出品目別では大豆(1,590百万ドル),食肉 (919百万ドル),穀物などが輸出を牽引した。輸入品目は,携帯電話機,デジタルテレビ,パ ソコンなどの電気機器類及び自動車などの輸入が大幅に増加した。 ● 1月の月間輸出額は255百万ドル(前年同期比13.3%増),輸入額は816百万ドル(同3 0%増)となった。なお,長雨と日照不足の影響で収穫が先延ばしにされたことで,大豆輸出 額は11.6百万ドルとなり,57.7百万ドルを記録した前年同月と比べ大幅減となった。同月, 税関局によって発表された輸出事業者ランキングでは穀物メジャー及び牛肉加工輸出事業 者(ADM パラグアイ33百万ドル,カーギル26百万ドル,コンセプシオン冷凍工場19百万ドル など)が独占した。 (2)アルゼンチン貿易規制措置関連報道 ● 1月,アルゼンチンが国内で製造及び生産可能な製品・農作物の輸入を禁じる方向で話を進 めている旨当地主要紙が報道。亜大統領府商務担当秘書官が,輸入団体及びスーパーマー ケットの会議所との会合の場で,非公式に同様の輸入規制を支持した旨報じられた。なお, 具体的な政策,導入時期は発表されていないが,パラグアイ側は,今後果物などまで同規制 措置が及ぶことを懸念している。 ● 2月,アルゼンチン政府が輸入認可手続き対象品目を拡大する旨発表したことに対し,パラグ アイ国内産業界よりは政府に対して何らかの措置を講じるよう要請が繰り返されたものの,パ ラグアイ政府から同措置に関する申し入れ等は行われていない。 (3)対メルコスール ● 1月,中銀は2010年対メルコスール諸国貿易統計を発表。対メルコスール輸入額は 3,088 百万ドル(前年比47%増,対ブラジル輸入2,280百万ドル),輸出額は2,195百万ドル(前 年比43%増,対ウルグアイ輸出996百万ドル)となり,1,685百万ドルの貿易赤字(前年比 53%増)となった。 ● 2月7日,デ・グフト欧州委員(貿易担当)はパラグアイを訪問し,ルゴ大統領及びラコニャタ外 相らと EU メルコスール FTA 交渉の進捗状況につき意見交換した。 (4)海外送金受取額 ● 1月15日,中銀は2010年10月末までの海外送金受取額(中央銀行記録)が223百万ドル (前年同期比34%増)となった旨発表した。 4. 国内部門 (1) 物価 ● 1月の月間インフレ率は1.5%となり,過去12ヶ月インフレ率 7.8%となった。物価上昇品目 は青果物,燃料費に加え各種サービス料金(主に公共サービス)など。 ● 2月の月間インフレ率は1.5%となり,累積インフレ率3.1%,過去12ヶ月インフレ率9.5% となった。主な物価上昇品目は,青果物,燃料費など。 ● 2月25日,ガソリン小売事業者組合は,ガソリン販売価格を1リットル当たり250グァラニー 値上げする旨発表した。 (2) 消費 ● 1月7日,新車輸入車協会(CADAM)は,2010年年間自動車輸入台数が74,650台(内新 車3割,中古車 7 割)となった旨発表。 ● 1月28日,投資輸出促進機構(Rediex)は,2010年年間乗用車輸入台数が55,355台 (新車,中古含む)となった旨発表。メーカー別輸入台数は,トヨタ自動車29,253台,日産自 動車8,892台,Kia 自動車3,304台など。 ● 1月18日,商工省は2010年年間石油消費が前年比17%増,ガソリン消費は26%となった 旨発表した。 (3) 農牧畜業 ● 1月24日,農牧省は2010/2011期の主要作物生産量予測を発表した。同予測では,当 初懸念されていたラニーニャ現象の影響は出ておらず,ほとんどの品目が前年とほぼ同水準 の生産量を達成する見込み。 ● 1月29日,パラグアイ穀物・油糧作物輸出協会(CAPECO)は,2010年大豆輸出事業者に 関する報告書を発表した。右によると,パラグアイから輸出される大豆全体の 85%が 6 社に よって独占されており(パラグアイ国内の大豆輸出業者は46社),内3社(カーギル,ADM パ ラグアイ,ブンゲ)が全体の65%を独占している由。 ● 2月4日,国立家畜品質・衛生事業団(SENACSA)は,パラグアイの口蹄疫ステータスがワク チン接種清浄国に指定された旨発表した。 (4) 商業・投資 ● 1月10日,政府は政令5,938/10号を発出し,リバス商工大臣をリオ・ティント・アルキャン 社とのアルミ工場設置計画にかかる交渉にかかるパラグアイ政府側代表に任命した。 ● 1月20日,パラグアイ投資輸出振興機構(Rediex)及び韓国パラグアイ商工会議所は両国の 商業投資関係強化に向けた合意文書に署名した。 ● 2月17日,パラグアイ国内への投資を検討しているリオ・ティント社は,同社がオマーン及び バーレーンに所有するアルミ製錬工場に,アレグレ公共事業通信大臣,リバス商工大臣ら政 府関係者を招待した。 (5) 金融 ● 2月6日,銀行監督機構(Superintendencia de Bancos)は2010年国内銀行の収益が1.0 7兆グァラニー(約231百万ドル,前年比21%増)に達した旨発表。銀行別では,Itau 銀行 (外資,伯資本)2,860億グァラニー,BBVA 銀行(外資,西資本)2,850億グァラニー,コン チネンタル銀行(国内資本)1,920億グァラニーとなり,同3行が全体の約7割を占めた。他 方,フィナンシエラ部門の収益は650億グァラニーとなり,前年比約2%減となった。 ● 2月7日,BBVA 銀行はパラグアイで操業する銀行としては初めての試みとなる,外国証券市 場での証券発行の開始について同社コミュニケを通じて発表。100百万ドルの債権をルクセ ンブルク証券市場にて発行する予定。 (6) 通信 ● 1月4日,電信公社(COPCACO)は決議1,601/2010号(パラグアイ国内における番号 ポータビリティー制度を承認する決議)を発出。同決議内で,携帯事業者は番号ポータビリテ ィー制度を330日以内に導入することが義務付けられている。 (7) エネルギー・インフラ ● 1月14日,ヤシレタ二国間公団は2010年発電量を発表。19,657GWh(前年比19%増) となり歴代最高値となった。なお,発電量全体の88.4%はアルゼンチン,11.6%がパラグ アイで消費された。 ● 1月15日,イタイプ二国間公団は2010年発電量を発表。85,970,318MWhとなり,年間 発電量世界一となった(中国の三峡ダムはピーク時の発電量で世界一)。 ● 2月,パラグアイ石油公社(Petropar)代表団はベネズエラを訪問し,同社がベネズエラ石油 公社(PDVSA)に対して抱える債務の削減交渉を行った。結果,PDVSA 側が設立した信託 基金を介して支払うことを条件に債務額を264.6百万ドルから195百万ドルに引き下げるこ ととし,約30%削減されることとなった。 ● 2月24日,パラグアイ電力公社(ANDE)は,ウルグアイへの電力販売に関し,翌週には契約 を交わし,4月からウルグアイへの売電を開始する旨発表した。 5. その他 ● 1月,センサス統計局は2009年貧困統計を発表,貧困率は35.1%(前年比▲2.8%),絶 対的貧困率は18.8%(同▲0.2%)となった。 ● 1月14日,ウォールストリートジャーナルにて,経済自由度指数ランキングが発表され,パラ グアイは183ヵ国中77位となった(前年は81位)。
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