浅草オペラから浅草レヴュ…への 変遷における舞踊性と身体性

浅 草 オ ペ ラか ら浅 草 レヴュ ーへの
ダ ンサ ー に は, エ ロエ ロ舞 踊 団 を 率 い る河 合 澄
子 とバ レエ を踊 った河 上 鈴子 らが い る。 しか し両
変 遷 に お け る 舞 踊 性 と身 体 性
-ダ
杉
I
者 は 露 出 度 の 高 い衣 裳 の着 用 とい う共 通 点 に よ り
同 一 視 され た ので あ る。
ン サ ー の 視 点 か ら-
山
千
鶴
(3) 浅 草 レヴ ュ ー
浅 草 レヴ ュ ーの 舞 踊 は, ス ピー デ ィな 展 開 の 中
で一 度 に大 勢 が 出 演 す る, ス ケ ール の大 きい もの
で あ り, ジ ャ ズ音 楽 に のせ た ジ ャズ ダ ンス は, 刺
研 究 目的
浅 草 オ ペ ラか ら浅 草 レヴ ュ ーへ の 変 遷 の 過 程 に
は, 映 画館 の ア トラ ク シ ョ ンが存 在 す る。 この 変
遷 にお い て, 舞 踊 は 常 に独 立 した一 演 目或 い は 劇
中 の一 場 面 と して 上 演 され た。 本 研 究 は, 舞 踊 が
この変 遷 に果 た す 役 割 (舞 踊 性), 身 体 性 と して
エ ロチ シ ズ ム に つ い て を, 作 品及 び ダ ンサ ー の 両
側 面 か ら考 察 し, 各 々 の 変 容 を 見 直す ものであ る。
皿
研究 方 法
激 ・麿 能 の他 に 爽 快 感 を も大 衆 に与 え た。
衣 裳 は 女性 の トップ の小 型 化 が 進 み, 衣 裳 に よ
る エ ロ チ シ ズ ム は一 層 刺激 的 に な った。
ダ ンサ ー に は, 自 称"エ ロの本 家 本 元"の 河 合
澄 子, 後 に川 端 康 成 に 引 き 抜 か れ る梅 園 龍 子 が い
たが, 浅 草 レ ヴ ュ ーに お い て は, ダ ン サ ー個 人 の
エ ロ チ シ ズ ム よ り も, 大群 舞 に よ り倍 増 した エ ロ
チ シ ズ ムが 感 じ られ た と考 え られ る。
関 係者 に よ る文 献, 1920年 代(本 研 究 で は1918
∼1932年 とす る1))に発 行 され た 新 聞 ・雑 誌 よ り舞
(4) 浅 草 オ ペ ラか ら浅 草 レヴ ュ ーへ の変 遷
踊 ・ダ ンサ ー個 人 に関 す る単 語 を 抽 出 し, (1)題材
(2) 運
動 ・変 化(3)構成(4)音楽(5)作品(6)ダ ンサ ー(7)衣
浅草 オ ペ ラか ら浅 草 レヴ ュ ーへ の変 遷 に お い て
衣 裳 の露 出度 の 高 ま り に比 例 して 身 体 の可 動 域 が
拡 大 し, 舞 踊 は 股 上 げ 踊 りか ら テ ンポ の速 い ジ ャ
ズ ダ ンスへ と変化 して い る。 そ して 浅 草 オ ペ ラで
裳 の各 要 素2)に 分 類 す る。 これ を もと に上 演 され
だ舞 踊 と舞 踊 性 を, さ らに人 物 の全 身 写 真 か ら,
衣 裳 によ るエ ロ チ シズ ム を考 察 す る。
は 目新 しい 身体 感 覚 だ った舞 踊 が, 映 画 館 の ア ト
ラ ク シ ョ ンで は視 覚 的刺 激 とな り, 浅 草 レヴ ュ ー
で は刺 激 と官 能 の 強調 に 到 る。 即 ち この 変 遷 にお
い て, 舞 踊 は新 しい身 体 感 覚 の 中 か ら特 に エ ロチ
シ ズ ムを 強 調 した ものへ と変 容 し, これ に伴 い 卑
III 結 果 及 び考 察
(1) 浅 草 オ ペ ラ
浅 草 オ ペ ラの 舞 踊 に は, 石 井 漠 ら 日本 の モ ダ ン
ダ ンスの パ イオ ニ ア に よ る"新 舞 踊"と"股
上げ
踊 り"が あ る。 観 客 (大 衆) に と って, 両者 は 同
じ目新 しい 西 洋 舞 踊 ・新 しい 身体 感 覚 だ った。 こ
の 時 点 で は モ ダ ンダ ンス は未 だ成 立 して お らず,
"新 舞 踊"は パ イオ ニ ア に よ る試 み と言 え る。
俗 化 も進 ん だ ので あ る。 この変 容 は, 衣 裳 に よ る
エ ロチ シズ ムの 間 接 的 か ら直 接 的 へ と い う変 容 を
要 因 と し, 女 性 の身 体 の 見 世 物 化 を促 した。
ダ ンサ ーは, 常 に刺 激 ・官 能 の 部 分 で 大 衆 に 支
持 され た。 浅 草 オ ペ ラで は未 熟 な技 術 を媚 び と愛
嬌 で 補 い, 浅 草 レヴ ュ ーで は エ ロ を売 り物 に し,
大 群 舞 に よ りエ ロチ シ ズ ムの 対 象 と化 した。
この よ う な変 容 は, 当 時 の エ ロ ・グ ロ ・ナ ンセ
ンス とい う風 潮 の み な らず, 大 衆 が 生 活 へ の不 安
と フ ァ シズ ム の 予 感 か らの 現実 逃 避 を 図 り, 退 廃
・享 楽 へ 走 った と い う背 景 に よ る。 そ の た め に
衣 裳 は 身体 の ラ イ ンを 強 調 す る もので あ り, 衣
裳 に よ るエ ロチ シズ ムは, 裸 体 に対 す る間 接 的 な
もの だ った。
ダ ンサ ー に は, ダ ンス ら しい ダ ンス を見 せ る と
い う沢 モ リノ, 観 客 に媚 び愛 嬌 を 振 撤 く河 合 澄 子
が お り, 東 京 歌 劇 座 の人 気 を 二 分 した。 換 言 す れ
ば, 大衆 は ダ ンサ ー に対 し芸 術 性 や 技 術 で は な く
刺 激 と官能 の み を 要 求 して い た ので あ る。
新 しい身 体 感 覚 の 担 い手 で あ った ダ ンサ ー は, 大
衆 の要 求 に 応 じて 衣 裳 の露 出度 を 高 め た た め に,
見 世 物 化 しエ ロチ シズ ム の対 象 となったので あ る。
(2) 映 画 館 の ア トラ ク シ ョ ン
1) 海野 弘 「モ ダ ン都 市東 京 」(中
映 画館 の ア トラ ク シ ョ ンの 舞 踊 に は, バ レエ な
どの 芸術 舞 踊 とエ ロ ダ ンス と が あ った。 大 衆 に と
って は 両者 は 同 じ映 画 観 賞 後 の骨 休 み と して の 視
央 公 論 社, 1983
年, P. 11)に よ る。
2) 松本 千 代栄 「舞 踊 の表 現 の構 造 と要 素 化 」(松
覚 的 刺 激 に す ぎな か った。
衣 裳 の露 出度 は 急 激 に 高 ま って い る が, これ は
エ ロ ・グ ロ ・ナ ンセ ンス の 風 潮 の 他, 限 られ た 時
本 編 「ダ ンス表 現 学 習 指 導 全 書 」 大 修 館 書 店
1980年, pp. 66-67)
に よ る。
間 内 に 印象 づ け るた め 視 覚 的 刺 激 が 必 要 なた め と
考 え られ る。 衣 裳 に よ るエ ロ チ シズ ム は, 眼 前 の
裸体 に対 す る 直接 的 な もの だ った。
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