中国の野菜・花卉事情 - 国際農業者交流協会

平成18年度留学派遣研修(海外)集団コース報告書
中国における普及事業及び対日輸出農産物(野菜、花卉)
の現状と日本農産物輸出の可能性
平成19年2月
社団法人 国際農業者交流協会
平成18年度留学派遣研修(海外)集団コース
中国における普及事業及び対日輸出農産物(野菜、花卉)
の現状と日本農産物輸出の可能性
◇研修期間:平成18年9月5日(火)∼平成18年9月16日(土)
〈研修報告者〉
茨城県農業総合センター坂東地域農業改良普及センター
山梨県総合農業技術センター農業技術普及部
沖縄県北部農業改良普及センター
沖縄県南部農業改良普及センター
1
中島 佳功
上原 大典
座喜味 利将
大城 和久
Ⅰ.研修の目的
日本にとって中国は、輸入野菜全体で最大の輸入国であり、近年急激にその実績を伸ば
している。これは、中国政府主導による対日輸出を目的とした輸送技術、保冷・冷凍技術
及び中国国内の輸出向け生産技術の向上や交通網整備の急速な進展などに起因していると
言われている。増大する中国からの低価格な輸入農産物は、日本農業に大きな影響を与え
脅威となっている。
一方で、中国産の農産物に対する残留農薬などの安全性が危惧され、中国における品質
管理体制が問われている。さらに、安心・安全な食品への関心が高まり、日本においては
食品の残留農薬を厳しく規制するポジティブリスト制度が去る5月29日より施行された。
そこで、飛躍的に成長を遂げる中国の日本向け農産物の生産・流通、安全管理などの現
状を現地視察から明らかにし、今後の各地域の販売や生産方針の参考にするとともに、普
及活動の資質向上に役立てる。
2
Ⅱ.研修員(派遣者)の構成
氏
名
勤務先・住所・TEL
〒306-0631
ナカジマ
中島
ヨシカツ
佳功
茨城県坂東市岩井5205-3
茨城県農業総合センター
坂東地域農業改良普及センター
TEL:0297-34-2134
〒407-0105
ウエハラ
上原
ダイスケ
大典
山梨県甲斐市下今井1100
山梨県総合農業技術センター
農業技術普及部
TEL:0551-28-2933
〒905-0019
ザ キ ミ
座喜味
トシユキ
利将
沖縄県名護市大北-16-15
沖縄県北部農業改良普及センター
TEL:098-52-2752
〒901-1115
オオシロ
大城
カズヒサ
和久
沖縄県島尻郡南風原町山川517
沖縄県南部農業改良普及センター
TEL:098-889-3515
(順不同・敬称略)
3
Ⅲ.日程(訪問先及び研修内容)
日次
1
月日(曜)
発着地/滞在地名
9月 5日(火) 成田空港
青島
発
着
現地時間
交通手段
09:35
11:50
午 後
JL783便
専用バス
19:00
2
3
9月 6日(水) 青島市
発
08:30
午 前
平度市
着
午
平度市
莱陽市
発
着
20:00
9月 7日(木) 莱陽市
発
08:30
午 前
煙台市
着
午
専用バス
後
専用バス
後
20:00
4
9月8日(金) 煙台市
滞
09:00
午 前
午
専用バス
後
18:00
5
6
9月9日(土) 煙台市
発
安丘市
着
08:00
午 前
午 後
維坊市
着
18:00
9月10日(日) 維坊市
発
壽光市
着
08:30
午 前
午 後
4
専用バス
専用バス
研修内容
国際線にて、青島へ移動
食品加工会社にて研修
(青島恒孚食品有限公司・膠州工場)
ホテル着
(青島 泊)
ホテル発
青島市検験検疫局にて研修
(青島出入境検験検疫局)
平度市へ移動し、野菜農家にて研修
(青島恒孚食品有限公司・莱西栽培基地)
莱陽市へ移動
ホテル着
(莱陽市 泊)
ホテル発
食品加工会社(龍大)にて研修
(龍大食品集団有限公司)
栖霞市経由で煙台市へ移動
野菜生産会社にて研修
(煙台青葉農園有限公司)
ホテル着
(煙台市 泊)
ホテル発
煙台市農技推廣中心にて研修
(煙台市農業技術推廣中心/農業技術普及
センター)
現地普及員(野菜)との情報交流会及び
現地圃場視察
(同上・試験圃場等)
ホテル着
(煙台市 泊)
ホテル発
安丘市へ移動
野菜農家(長葱、ゴボウ)にて研修
(安丘臨福食品有限公司)
維坊市へ移動
ホテル着
(維坊市 泊)
ホテル発
壽光市へ移動
壽光市場にて研修
(山東寿光蔬菜批発市場/野菜卸売市場)
7
壽光市
泰安市
発
着
9月11日(月) 泰安市
滞
泰安市へ移動
ホテル着
18:00
09:00
午 前
午
専用バス
後
18:00
8
9月 12日(火) 泰安市
滞
終
日
専用バス
9
9月 13日(水) 泰安市
済南市
済南
北京
発
着
発
着
08:00
午 前
12:15
13:05
午 後
専用バス
CA1155便
18:00
10
9月14日(木) 北京市
滞
08:00
終 日
専用バス
18:00
11
9月15日(金) 北京市
滞
08:00
午 前
午
専用バス
後
18:00
12
9月16日(土)
北京
成田
発
着
10:00
専用バス
14:50
19:15
JL782便
(泰安市
ホテル発
有機農産物加工会社にて研修
(泰安泰山亜細亜食品有限公司)
有機農場にて研修
(同上・栽培基地等)
ホテル着
(泰安市
研修取りまとめ
(泰安市
ホテル発
済南空港へ移動
国内線にて、北京へ移動
5
泊)
泊)
中国農業大学にて花卉事情について研修
(中国農業大学園芸学科)
ホテル着
(北京市 泊)
ホテル発
切花、鉢物、ラン類の生産農場にて研修
(北京順義三高科技農業示範区/農業ハイ
テク試験団地)
ホテル着
(北京市 泊)
ホテル発
莱太花卉交易市場にて研修
(莱太花卉交易市場/卸売市場)
スーパー等で日本農産物の市場調査
(伊藤洋華堂・十里堡店/イトーヨーカ堂
・北京1号店)
ホテル着
(北京市 泊)
ホテル発
空港へ移動
国際線にて、帰国の途へ
帰国報告会(VIPルームB-5)
終了後、解散
※利用航空便:JL:日本航空、CA:中国国際航空
泊)
Ⅳ.研修地域図
中華人民共和国全土
山
東
章丘
6
省
Ⅴ.訪問先別研修内容及び所感
1
食品加工会社について
研修日:平成18年9月5日(火)
研修先:青島恒孚食品有限公司・膠州工場
対応者:代表取締役 王 吉傑 氏
(1)会社の概要
○王氏個人の会社である。王社長は1990年に大学卒業後、国営貿易会社の冷凍食品課に 勤
務し、冷凍サトイモ、インゲン、カボチャを扱っていた。1996年に独立し、他の会社に
委託して生産を行い、1999年にタマネギが多いため工場を増やした。
○取扱品目は、生鮮野菜ではサトイモ、タマネギ、冷凍野菜ではサトイモ、ブロッコリー、
アスパラガス、ピーマン、セロリ、ニンジン等である。
○野菜の生産基地(農場)は、青島市内に10ヶ所ある。
○生産基地は自社基地(自社が管理)が20%、契約基地(会社指定の種子、肥料、農薬を
農家などに供給し管理してもらう)が80%。
○1999年から生鮮野菜の輸出を開始し、2004年冷凍・加工・漬物を開始。
○会社は、冷凍・生鮮野菜を生産し、100%を輸出する。
○経営は順調であり、生産が間に合わないほどである。
○加工食品は、海外ユーザーの要望に会わせて生産(例えば、5mm四方や9mm四方にカッ
トなど)
○従業員は96名(時期によって違う)。就業:月∼土曜日。7時∼12時、13時∼18時。
○賃金は月当たり1,000∼1,500元(日本円では15,000∼22,500円程度)。
3年前は月800∼1,000元。
(2)輸出の状況とポジティブリスト制度の影響
○ポジティブリスト制度の施行により、日本向けの輸出は残留農薬検査が非常に厳しくな
っている。
→①自主検査(中国政府の認定を受けている理研分析センターに委託)と検疫局の検査を
行う。
残留農薬の分析は、171項目を実施する場合もある。
残留リスクにより検査項目、頻度を変えて対応している。
(例:自社基地生産の野菜は、大ロットに1つの検査を行うが、契約農場生産の野菜は
こまめに行う)
検査料金は、1項目300元(日本円で4,500円)、171項目で4,000元(日本円で60,000円)。
→②日本向けは自信のあるものしか出さない。
(例:冷凍チンゲンサイ
自社基地で生産し、他から飛散の可能性がない場所で生産し
たもの)
○今後、安全性への技術力と自信を高め、数年後には、茎葉菜類も輸出する予定。
7
○一方で、欧米の残留農薬の基準値はゆるい(日本の基準値0.01ppmが欧米では0.1ppm)。
→日本への輸出は全体の90%であったが、現在では日本へ50%、欧米50%である
(主にアメリカ、カナダ、ドイツ、オランダ、イギリス)。
○輸出拡大として、欧米にターゲットをあてている。
(3)輸出向けの野菜価格について
・輸出向けの野菜価格は、現在上昇している。
原因:①人民元相場が上がっている。
②原料価格が上昇している。
③人件費が上がっている。
栽培管理記録表
最低−最高気温と管理作業内容を記録
栽培作目に対しての残留農薬の自主検査
分析の委託先からの報告書
(4)所感
日本のポジティブリスト制度の導入の影響によって、輸出を日本以外(欧米諸国)のタ
ーゲットにシフトしている状況がわかった。また、安全性については、日本には農薬使用
が少ない根菜類を中心に輸出しており、栽培における巡回、記帳の徹底や生産物の残留農
薬検査を徹底していることから、日本への輸出野菜は、以前に増してより安全なものとい
える。
(文責:中島
8
佳功)
2
検疫局について
研修日:平成18年9月6日(水)
研修先:青島出入境検験検疫局
対応者:植検処菜果科長 王 守国 氏
(1)中国(山東省)の検疫組織体制及び管轄
○検疫局の体制
検疫局の担当科長から聞き取り
国 家 質 量 技 術 監 督 検 試 総 局 ・ ・ (日 本 の 農 水 省 に あ た る )
↓
省 分 局 ・ ・ ・ (日 本 の 地 方 農 政 局 に あ た る )
↓
地区局(青島局)
↓
駐在事務局
(2)輸出野菜の検疫について
○申請には、栽培基地の農薬、肥料、管理などの栽培管理状況も必要。
○検査の方法:各企業の輸出品目単位にサンプリングし、分析している。
ホウレンソウなど、品目によっては予めサンプリングを実施。
○検査の所要期間:分析から結果通知まで約5日間で行っている。
○検査の内容:残留農薬検査を中心に行っている。日本側が特に注目している項目や管轄
地域での使用農薬をなどを考慮し臨機応変に対応。
○分析頻度:輸出会社の以前の栽培状況などの実績により増減。
○検査手数料:おおよそ出荷額の0.3∼0.4%である。
○2002年の残留農薬問題発生後、日本へ輸出する企業は、①輸出農産物の生産基地(農場)
100ムー(6.6ha)以上、②基地周辺に汚染源(工場や果樹園等)がないこと、③水質基
準を満たしているなどの制限が定められた。
(3)ポジティブリスト制度による影響について
○日本の残留基準値は非常に厳しく、日本向け野菜については検査を強化している。
キャベツは、他の省で残留基準値を超えた値が検出されたため、全コンテナを検査して
いる。
○日本向け輸出が減少し、逆に東南アジア、アメリカ、カナダ、メキシコなどで輸出が増
加している。
(4)所
感
2002年以降の残留農薬問題で中国側の検疫体制、農薬使用に関する法律などが強化され、
輸出企業の自助努力、中国・日本の両国で水際での検疫による取り組みが強化、実行され
ているのが理解できた。
(文責:大城
9
和久)
3
栽培基地(サトイモ農場)について
研修日:平成18年9月6日(水)
研修先:青島恒孚食品有限公司・菜西栽培基地
対応者:菜西栽培基地代表者 長 氏
(1)野菜生産基地の概要
○村に使用権がある土地と農家に使用権がある土地がある。村に使用権がある土地600ムー
(約40ha)の使用権を長氏が村から取得。その農地について青島恒孚食品有限公司と生
産基地契約を交わし、栽培管理をマネージメントしている。
以前、長氏は農家から野菜を買い付けていたが、2002年から生産基地を取り仕切る。儲
けは以前より良くなっている。
○肥料、農薬、栽培管理は会社の指示に従って行う。
○長氏は農家20戸(1戸3名)を雇用。
○会社が長氏から買う野菜の金額は、市場価格より3∼5%高く設定。
○買上げ金:会社→長氏→農家
(2)栽培状況について
○中国在来種のサトイモを生産。
○土壌病害を軽減するため、輪作を徹底している。
サトイモ − ニンニク − トウモロコシ(大豆)
○作業:
耕うん・畦立てはトラクターで行うが、その他は全て手作業(農薬散布は肩掛噴霧機)
○堆肥を3t/10a程度投入。堆肥の価格は20∼50元(300円∼750円)/t。
○サトイモは、10月下旬の初霜までに収穫。
○品質が高いものは生鮮とし、中程度は冷凍、低いものは自家用に仕向けられる。
○日本の商社、山吉産業、青島恒孚食品有限公司が1/3ずつ出資し、山吉産業のHB−
101を用いたサトイモ栽培を行い、有利販売を狙っている。
サトイモの契約基地(農場)の様子
日本の商社の指定の種子
10
(3)所感
輸出会社の条件として野菜生産基地最低100畝(約6.7ha)以上の取り決めがあるなか、
ブローカーとしての長氏は、以前農家から野菜を買い付けていたが、2002年から一定面
積
の生産基地を取り仕切っている形態に変化をしてきた。ブローカーとしての経営は
2002年以前より良くなっている。このようにブローカーの経営形態は変化している。
気象災害が無く恵まれた自然条件地や、サトイモ中国在来種の適地を選定し、トウモロ
コシとの輪作は徹底し、土づくりのため堆肥を投入するという基本を大切にした栽培が
行われ、栽培管理は、会社とブローカーによって徹底することでリスクを軽減しており、
栽培体制の進化が見られた。
(文責:中島
4
佳功)
食品加工会社について
研修日:平成18年9月7日(木)
研修先:龍大食品集団有限公司
対応者:龍大食品集団有限公司
営業本部
蔡 建正 氏
(1)会社の概要
○農産物加工を中心に輸出を行い、現在は27種類の合資、独資企業があり、社員数21,000
人である。
○中国でも有数の巨大企業で、日本の三菱商事、ノウスイ、伊藤忠商事等の合弁企業もあ
る。
○会社の前進はゴボウの取り扱いを行い、日本の企業では三菱商事との合弁により生鮮野
菜や加工野菜などに取り組み、現在では肉製品やレトルト食品、水産加工品まで多角経
営となっている。
(2)生産実績
○製品製造の割合は、生鮮野菜5%、冷凍野菜20%、調理野菜50%、乾燥野菜20%、その
他5%等。
○海外への輸出先は日本、韓国、東南アジア、アメリカ、ロシアなど13カ国に及ぶ。
○全体の売り上げのうち、輸出の割合は50%。うち95%が日本向け。
○2002年冷凍ほうれんそうから残留農薬問題が発生した時点では出荷量も700t台に落ち
込んだが、それ以降は順調に取扱量を伸ばしている。
(3)野菜生産について
○加工の原料調達は100%契約基地のものを使用。
○種子、農薬、肥料を会社から供給し栽培。
○有機栽培にも取り組む。
11
○契約基地(農場)は、周年安定して原料を調達するため中国全土に分布。総面積は666ha
に及ぶ。
○基地(農場)に駐在職員を配置。栽培マニュアルがあり、細かな指導、記録などを行っ
ている。
(4)農産物・加工品の安全管理について
○国から承認された研究センターを設置し検査を実施。
残留農薬、アレルゲン、重金属、抗生物質まで検査可能な機器を整備。
○管理体制としてISO9001、HACCPなどを取得している。
○JAS有機認証などを取得。しかし日本からの要望はあまり強くない。
○トレーサビリティー体制を構築。
(5)ポジティブリスト制度の影響について
○3年前(残留農薬問題が生じた頃)からその対応策はできあがっていたので、特に問題は
生じていない。むしろ、対応できなかった中小の輸出企業が淘汰される結果となった。
(6)現地の野菜基地にて
○栽培面積:13.8ha
○駐在員が農場管理を指揮する。生産資材は全て会社から供給し、管理記録は農場責任者
が行う。植え付け前に土壌分析を実施し、それに基づき施肥設計も行っている。
○耕うん・畝たてのみトラクターを用い、他の作業はほとんど手作業である。
(7)所
感
中国の一集団公司の底力をまざまざと見せつけられた。特に日本ユーザーの好みに応じ
た製品づくりは、原料確保から加工製造技術、販売流通まで一環した輸出戦略の基で実行
されており、今後とも日本市場に対して強力な商品開発・安定供給が行われると感じた。
最後に、昼食は公司内にあるレストランで済ますことになったが、料理は全て自社製の
春雨、おでん類、ゴボウの肉巻きなど、日本の幕の内弁当までもメニューとなっているこ
とに驚いた。日本でも中食・外食関連で、中国からの輸入農産加工品など多くが利用され
ているのを改めて実感することができた。
12
企業独自で農薬の検査室を運営する
外と隔離された生産基地の入り口
農場管理責任者から説明を受ける
一面、日本向けオクラ畑である
(文責:大城
5
和久)
野菜生産会社(しそ生産)について
研修日:平成18年9月7日(木)
研修先:煙台青葉農園有限公司(煙台市)
対応者:陳
宗光
社長
(1)会社の概要
○すべて日本向け輸出のしそ生産を行う企業。
○会社の前進は大豆を利用したサラダ油会社を経営。2002年に煙台市福山区が農業開発特
区となり、煙台市から支援(融資)を受け、日本側(㈲やまおか農園)と合弁企業を設立。
○施設面積11ha(ハウス40棟)
13
(2)生産・輸出の状況
○栽培体系について
播種(5月上旬)→定植(6月)→収穫(翌年1月まで)
○紫蘇葉で年間2億枚を輸出。
○1日おきに輸出(出荷)。
○収穫から小売・店頭までの日数:5日間
2日目
1日目
収穫
予冷・調整
3日目
4日目
税関(日本)
空輸(夜間)
出荷調整
5日目
店頭(日本)
(日本)
○管理社員を近隣地域から募集している。1200元/月程度。
○残留農薬の検査について:
煙台市の検疫局が検査。
2002年当時は出荷量も少なかったので、出荷毎に検査があった。
現在では、これまでの実績を評価してもらい1∼2ヶ月に1回程度実施となっている。
○今後は乾燥大葉(粉末)の要望もあり、拡大の余地あり。
○年々、コストが上昇。利益率は当初3∼4割であったが、現在は2割程度になっている
(人件費の上昇、人民元相場の上昇などによりコストが年々上昇したため)
(3)ポジティブリスト制度の影響について
○プレッシャーは感じるが、特に出荷量などについて影響なし。
(4)所
感
日本企業との合弁による対日本向け生鮮野菜のみを取り扱った事例を調査することがで
きた。特にポジティブリスト制施行後の日本への輸出対応に神経をとがらせていること、
新たな商品開発(粉末加工)による経営の拡大を模索していることなど、大いに参考になっ
た。
しその収穫風景
しそ生産のハウス群(40棟)
14
生産工場で使用しているトラクター
しそ生産に用いる有機質配合肥料
(文責:大城
6
和久)
農業技術普及センターについて
研修日:平成18年9月8日(金)
研修先:煙台市農業技術推廣中心
対応者:煙台市農業技術推廣中心
科長 干氏
(1)煙台市の農産物生産状況
〇食用作物は、主に小麦、とうもろこし、大豆、さつまいも、
らっかせいで、野菜については栽培品目が多く約5,828haのほ場
面積となっている。果実ではリンゴが29,140haである。
(2)普及指導体制について
○職場の体制(職員数100人、うち日本の助教授クラスが80人)
→a)普及部
f)蔬菜部
b)土壌肥料部
企画科
c)植物保護部
d)農業環境・観測部
e)農村エネルギー部
g)農業情報センター
調査科
指導科
(参考)中国農林部の組織体制
○全国農業技術普及センター(国)→ 山東省農業技術センター(県) →煙台市農業技術セン
ター→分署、駐在に分かれる。上位の組織が下位組織を指導している。
農家と直接接するのは、分署、駐在の部署で、回数はそれほど多くはない。
15
(3)普及センターの業務
○普及指導機関の重点課題は、国の施策として無公害野菜の生産振興に関わることを重点
課題として取り組んでおり、2002年から12種類の野菜について栽培指針(写真右)に基づ
き指導を行っている。
他に生産性の向上について取り組んでいる。
○農家への指導は、行政サービスで無料。
○普及員に対しての研修を毎年1、2回程度実施。
(4)その他
○基本給は国から支給される(3,000元/月
日本円で45,000円)。なお、自らの普及活動の
計画を出して、それが認められれば国から別に手当がでる(=能力給)。
○無公害野菜の生産で偽りの報告をした場合の罰則規定:
生産記録なし或いは記録を偽造した場合などは、2,000元以下の罰金等が科せられる。
(5)所
感
中国の普及事業は、日本のような機能分担方式が顕著に見受けられた。特に、調査を実
施した蔬菜部では、主に生産性向上のための指導及び無公害野菜の安全マニュアル作成に
基づく実践事業が行われている。
ただ、日本のような個別及び法人等への現地濃密型の普及活動ではなく、広大な中国国
土ゆえの対象を絞った(生産基地や輸出企業など)普及活動により農政に関する諸制度の周
知徹底を推進している感があった。
(文責:大城
7
現地普及員により現地圃場説明について
研修日:平成18年9月8日(金)
研修先:現地普及センター展示圃場
(1)生産基地の概況:
・緑色蔬菜基地として管理
・生産基地の面積:7ha
・栽培品目
地元の普及員から聞き取り調査
ショウガ、長ネギ
・普及センターが当基地において、ショウガの品種の比較試験を実施中。
(2)所
感
普及センターが関わっている現地(生産基地)に案内されたが、農薬の
適正管理及び品種比較展示ほの実施などであった。全体的に日本の普及
活動の内容(栽培技術指導或いは個別経営体管理指導など)と比較して
16
和久)
活動範囲が限られていると感じた。
ショウガの品種比較展示ほ
手作業による灌水作業
(文責:大城
8
和久)
安丘臨福食品有限公司(長ネギ、ゴボウ、ショウガなど)について
研修日:平成18年9月9日(土)
研修先:安丘臨福食品有限公司
対応者:総経理 潘 建河 氏、開発部経理 費 文義 氏
(1)会社の概要
〇2000年から日本向けに農産物輸出を開始し、現在、社員200名であり、生産した農産物の
すべてを輸出している。
(2)生産・輸出の状況
○野菜生産基地では、ユーロの認証を受けている。輸出商品については、自主検査、検疫
局サンプリング等を徹底している。
○輸出ネギの販売価格は、市場価格によって決める。もうけは少なくなってきている。多
く作りすぎているので、生鮮野菜は日持ちが悪いので、赤字でも輸出しなければならな
い場合がある。
○1996年日本の長ネギ品種を作って儲かった。
○日本への輸出が一番利益が高い。
中国内向け販売も考えているが、輸出と比べてパッケージが細かく必要などのコスト増
が問題である。
(3)ポジティブリスト制度の影響について
○昨年から話題になっており、検疫局から企業に対して野菜生産基地での生産管理徹底の
17
指導を受けている。
○維坊市検疫局では、管理が徹底できない規模の小さい企業については日本向けの輸出量
を減らすように規制している。
○日本への輸出野菜に基準値の違反が出たら、輸出資格停止になってしまう。
○輸出先を日本以外の東南アジア、韓国、ヨーロッパ等にシフトしている。
○昨年の日本向けの総輸出量は全体の70%。
今年
〃
50%以下。
○いくら基準値を守っても、他社で残留基準を超えた場合の影響が心配。
○茎葉菜類は農薬が残留しやすいので輸出を見合わせている。
根菜類は出にくいので輸出している。
○輸出の収入は、去年と比べて今年は低い。その理由は、野菜生産基地のコスト、残留農
薬の検査コストの増加(7月に維貿市検疫局で、基準値を超えた会社があり、検査する
頻度が多くなった)によるものである。
○検査費用は、1件当たり長ネギ35,000元 (525,000円)、サトイモ・ショウガ2,550元
(38,250円)であり、長ネギは、1コンテナ毎に、サトイモは2∼3コンテナ毎に検査
を行う。
(4)野菜生産基地の状況について
○野菜によって農薬の使用回数は異なり、サトイモ、タマネギは使用しない。
○会社で技術的資格がある人を雇っている。
○野菜生産基地は、全体で約266ha、内ショウガ66.6ha、サトイモ66.6ha、タマネギ66.6
ha、ニンジン33.3ha、ナガイモ33.3ha、ゴボウ33.3haである。
○野菜生産基地の経営形態は、
①自分で土地使用権を買って、労力雇用(1日30元:450 円、農繁期は45元:675円)の形
態が50%
②契約栽培で1年間品目によって契約(1畝666㎡当たり、タマネギ1,000元:15,000円、
長ネギ・ショウガ2,000元:30,000円)の形態が50%である。
○栽培歴の記帳は、会社の技術者である専門担当が行う。農薬の使用について、会社から
農家に責任問題を指導したり、政府からも農薬の管理、流通、取り締まりの指導がある。
(5)加工工場の状況について
○長ネギ
軟白部分30cm以上。10月以降収穫は30cm以下になる。
調整40人、加工60人(3人×20組)合計100人体制。
3人1組で5kg箱を70∼90CS、1日1人当たり労賃は、23元(345円)
1日30tの原料から加工品7.5tを作る。
○ショウガ
原料・製品とも13℃で保管。日本向けは、段ボールで出荷され、B品はネットでパキス
タンに輸出される。1日当たり労賃は、洗い係50∼60元(750∼900円)、選別係30元 (450円)
18
○タマネギ
収穫後2ヶ月乾燥、冷蔵。
1日当たり労賃は、30元(450円)
○サトイモ
洗浄、選別、出荷の流れ。1日当たり2人1組で150袋作る。1袋0.5元(75円)で、
1日当たり労賃は、37.5元(563円)
玉葱の外皮とり作業。手作業にて行う
サトイモの出荷調整。手作業にて根をとり、選別
ネギの栽培基地。耕うん以外は機械は使わないで
管理
ネギの出荷調整風景。すべて手作業
(6)所感
日本のポジティブリスト制度については、一定規模の生産基地を持つ会社は問題ないが、
その他の会社には影響が大きい。農薬使用を極力避けるとともに、輸出先を日本以外の東
南アジア、韓国、ヨーロッパ等にシフトしている。輸出の収入は、去年と比べて今年は低
い。その理由は、野菜生産基地のコスト、残留農薬の検査コストの増である。また、農民
や加工工場の労賃が安いことには驚いたが、徐々に労賃も高くなる傾向があり、会社の利
益は、薄まることが推察された。
(文責:中島
19
佳功)
9
野菜卸売市場について
研修日:平成18年9月10日(日)
研修先:山東寿光蔬菜批発市場
対応者:山東省寿光市兆坤蔬菜公司 張 兆坤 氏
(1)市場の概要
○管理:寿光蔬菜産業集団
○開場:1985年
○面積:35,000㎡
○仲卸業者数:68社
○取引量:310万t/年間
○営業時間:朝4時∼
○この市場は、他の地域への分荷・出荷機能を有する中継市場。
<生産者>
<地方市場>
生産物
生産物
↓
↓
卸売or仲卸業者
↓
山東寿光蔬菜批発市場
仲卸業者
↓
地方市場
↓
↓
加工業者
小売業者
など
○市場手続きの流れ:
登録(仲卸)→入場(生産物)→品質検査→売買ICカード申請→分別・包装→商談→軽
量→決算→積み込み→検証→出場(生産物)
○市場手数料は売り手側が売上金額の2.5%、買い手側が買上金額の0.6%。
(2)市場内の状況
○ネギを持ち込んだ業者の話
1kgあたり0.5元(7.5円)で生産者から買付け。
↓
1kgあたり0.64元(9.6円)で江蘇省(山東省の南隣の省)の業者に販売
○生産物は各地にトラック輸送される(保冷庫なしのトラック)。トラックには「緑色通
行証」の通行許可証があり、有料道路(高速道路を除く)の無料通行が許されている。
○「安心」、「安全」に配慮した野菜生産への意識の高まりから「無公害野菜・・・残留農薬
のない蔬菜」、「緑色野菜・・・無公害野菜の基準を満たし、減化学肥料、減農薬栽培で栽
20
培した蔬菜」として栽培された野菜も入荷されている。
○「無公害野菜」、「緑色野菜」は、市場において抜き打ち検査が実施される。もし、違
反がみられたら、廃棄、罰金が科せられる(検査についてはそれほど頻繁ではないそう
です)。
(3)ポジティブリスト制度の影響
○ポジティブリスト制度施行により、従来行っていた市場から日本向けへの直接の輸出は
なくなった。
(4)所感
〇中継市場的な役割を担っているため、中国国内各地から様々なナンバーのトラックが出
入りしていた。長距離輸送になるにも関わらず、冷蔵コンテナのトラックではなく、消
費者の新鮮さを求める意識はまだ低いものと思われる。
市場の外観
地方へトラック輸送される積荷
無公害野菜のパッケージに入った野菜
有料道路のトラック通行料金免除の許可証
(文責者
21
上原大典)
10
有機農産物加工会社について
研修日:平成18年9月11日(月)
研修先:泰安泰山亜細亜食品有限公司
対応者:貿易部日本部責任者
基地管理部副部長
崔 雷 氏
周 継強 氏
(1)会社の概要
○農産物を生産し海外へ輸出を主としているが、中国国内の伊勢丹にも出荷している(日
本と米国との輸出量の割合は1:1)。
○1994年からすべての農産物について、中国、日本、EU、米国の有機認証を重複して取
得している(中国国内でも有機認証を取得している農産物は少ない)。
○有機栽培をしているため取引金額は、普通の農作物よりも2割程度高く取引されている。
○農場面積は各地の合計で666ha。
○農場はすべて契約農場として管理(農業生産組合と直接契約。肥料、農薬、栽培管理に
ついて会社の指導どおりに栽培してもらい、収量に応じて管理料を支払う)。
○取り扱い品目:大豆、枝豆、里芋、ホウレンソウ、アスパラガス、インゲンなど。
○取引会社:日本15∼20社、日本以外30社。
(2)栽培基地について(ブロッコリー、里芋圃場)
○農場には会社で訓練を受けた駐在員がおり、栽培管理を指導している。
○駐在員は栽培管理を記録。
○有機認証で使用可能な肥料、農薬のみを使
用。
(肥料は有機質肥料、農薬は漢方薬、除虫菊、
BT剤など生物農薬を使用。里芋圃場は約
6t/10aの堆肥を施用)
○収量は肥料、農薬に制限があるので高くな
い。
○輪作体系をとり、土壌病害を軽減している。
(3)ポジティブリスト制度の影響について
有機認証のブロッコリー契約基地(農場)
○山東省全体の日本への輸出量は4割減と
なったが、この会社としては以前から有機認証を取得しているので輸出量は増加してい
る。
○日本の基準は厳しすぎると感じている。
(4)所感
〇日本でも有機認証を取得する生産者は少ないにも関わらず、この会社においては輸出国
の有機認証をすべて取得しており、有機栽培に対する意識の高さに驚いた。このように
22
海外輸出のために厳しい基準をクリアする企業が今後増えると見込まれ、日本の農産物
もそれなりの対応をしっかりしてかなくてはいけないと感じた。
(文責者
11
上原大典)
中国の花卉事情について
研修日:平成18年9月13日(水)
研修先:中国農業大学校園芸学科
対応者:髙俊平主任教授、郭教授
(1)郭教授による、中国における花卉生産の概要説明
○経済成長とともに、花卉生産面積が増えており、特に2000年以降急激に生産面積が増加
している。
○中国での花卉販売額の占める類別割合は、2004年統計で、観賞苗木が51%を占め、鮮切
花が10%、盆栽が13%を占めている
○北京では、10年前は月5千円の収入しかなかったが、今では月10万円にまでなっている。
○中国は、栽培面積はあるが、単収が少ない。
○中国の花輸出額は2001年で0.8億ドルであったが、2005年には約1.6億ドルとなる。
○中国の花需要は、年間15%∼20%の勢いで上がってきている。
○花需要額は430億元(6,450億円)となっている。
○切り花の年間販売量は2001年は約36億本であったが2005年には約95億本まで増加し、
金額では$26,700,000から$71,140,000に増加。
○切り花は2001年には11,072haであったが、2005年には約3倍の33,042haまで増加し
ている。
○切り葉は、2001年に1,158haであったが、2005年には4,926haまで増加。
○切り葉の販売本数は2001年に約2.5億本であったが、2005年には約12.7億本まで増加して
いる。
○花壇用ポット苗の生産個数は2001年で7億ポットであったのが、2005年には18億ポット
まで増加。
○鉢物類の生産個数は2001年に2.4億鉢であったのが、2005年には6.8億鉢と急増している。
○中国では食用花や染色用花類の生産も統計に含まれている。食用花とはキクやアマリリ
スを示す。
○中国で切り花の生産面積の大きい地域は、広東省6,125ha、雲南省5,990ha、遼寧省
5,536ha、福建省2,805haの順となっている。
○中国で切り葉の生産面積の大きい地域は、広東省2,073ha、河北省515ha浙江省417haの
順となっている。
○鉢物は広東省、江蘇省、湖南省の順に栽培面積が大きい。
○工業用花は黒龍江省が多く生産している。
○花木類は浙江省が多く生産する。
23
○花苗の生産は福建省、河南省が多く生産する。
○日本向けの切り花は、雲南省からキク、バラ、カーネーションが主に輸出されている。
(2)髙俊平主任教授による、花卉事情について説明
○中国から日本への花卉輸出量は、約15億本である。
○日本人が好む品種を選定し、日本人向きの花を日本へ輸出している。
○中国での花卉生産の60%近くは、個別農家による生産で、企業による大規模経営はまだ
少ない。
○中国では、カーネーション、ユリ、バラが人気があり、特に色ものを好む。
○中国では、輪菊などの需要はあまりない。
○中国での花の需要は、鉢物は祝日、お正月などの主に贈答用としてのものである。
切り花は、高級レストランや高級ホテルで使用が多い。
○花壇用花苗は、国の建国記念日など大きな国家行事等で主に使用されることが多い。
○花卉種苗は、日本から入ってくるが、種苗パテントを払わない農家が多い。
○鉢物類は、苗の時期は南地域で栽培し、大きくなったら、北部地域で鉢上げ、栽培し販
売を行うリレー栽培で生産販売を行っている。
○北京では、贈答用として高価な鉢物類が売れている。
○コチョウランも高値で売れていたが、台湾からの輸入物が増加して、安くなりつつある
現状である。
○農家への技術指導は、以前までは、公的指導機関による栽培指導が行われていたが、現
在は指導員体制が弱く、栽培指導は行われなくなっている。
(3)所
感
対応された髙教授、郭教授は日本語が堪能で、分かりやすく中国の花卉事情を説明し
ていただいた。中国の花卉産業は経済成長とともに急速に伸びており、今後さらに伸び
る産業分野であることが理解できた。
鉢物関係の需要が、花卉類販売高に占める割合の50%近くを占め、近年増加しており、
贈答用に使用されることが多いということであった。そのため、台湾からの輸入もの(コ
チョウラン)が多くなっており、価格が低下し始めているようである。
キクの需要についても、日本のような葬儀花としての需要はそれほどないようである。
中国の花卉生産量は確実に増えており、広い国土から年間通じて、場所を移動すること
により年間を通して生産出荷することが可能であることに脅威を感じる思いである。
24
中国農業大学正面風景
髙俊平主任教授との意見交換
(文責:座喜味
12
利将)
鉢物およびラン生産ハイテク技術農場視察
研修日:平成18年9月14日(木)
研修先:北京順義三高科技農業示範区/農業ハイテク試験団地
(1)視察場所について
○北京順義三高科技農業試験示範区は北京市から北方に約40kmの場所にある。
○北京市行政府によって設立された施設で、17haにおよぶ広大な施設面積である。
○施設内はハイテク農業技術のモデル展示施設や収穫体験圃場があり、農業試験場と観光
農園が一緒になったような施設である。
○1人あたり20元の入場料を支払う必要がある。
○施設は、ハイテク農業技術の普及および生産効率の向上を目指し、また一般の方々に農
業に理解をしていただくことを目的とした施設である。
(2)野菜水耕栽培施設視察
○水耕栽培によりサラダ菜が栽培されてお
り、ハウス奥行き約100mぐらいの面積で
野菜を栽培していた。サラダ菜の栽培期間
は約53日であると説明があった。施設内は
虫取り用の黄色粘着シートが10m間隔ぐ
らいに吊されて設置されていた。また施設
内温度を自動調整できるように送風ファ
ンが設置されるなど設備の整った施設で
サラダ菜の水耕栽培状況
25
あった。
(3)花卉鉢物生産施設視察
○アメリカの企業(企業名:フラットドラゴ
ン)によるアンスリウム鉢物の生産が行わ
れいた。当企業は温室専門の会社であり、
中国では独資企業である。
○年間30万鉢を生産し、その6割を北京市内
で販売し、残り4割は全国に出荷している。
アンスリウム鉢物の販売額は1鉢40元∼
60元で販売している。
○施設ではアンスリウムを含め約9種類の
アンスリウム生産ハウスの様子
サトイモ属科のものを生産している。
○培養苗を半年間育て、当ビニール施設内で出荷まで約一年半かけて栽培管理を行っている。
○アンスリウムの栽培適温が15℃∼30℃であるため、冬場は石炭を使って暖房を行い、夏
場の高温時には、水を活用した冷風機で温度を下げている。
○ハウス内に使用している資材は中国国内産のものを使用しているが、ビニールはイスラ
エル産のものを使用している。
○別棟においては、コチョウランの生産を行っており、培養苗を30元で仕入れ、8ヶ月∼
9ヶ月かけて、栽培管理を行い出荷を行っている。ほとんど国内へ出荷しており、輸出
は行っていない。1鉢8株寄植えで320元で販売している。
○需要期の正月頃に開花するように、温度調整を行い開花調整して出荷を行っている。
(4)所
感
当施設を視察して、中国においても、観光農園的発想があることに驚かされた。北京市
において、農地を持っていない人の方が多いようで、日本と同様農業から離れつつある生
活空間となっていっているようである。
施設見学を一般の人にも開放し、展示試験等を行いながら、同時収穫体験など観光農園
的経営を行っていることは、興味が持たれるものであった。
(文責:座喜味
13
花卉卸売市場視察
研修日:平成18年9月15日(金)
研修先:莱太花卉交易市場/卸売市場
26
利将)
(1)市場視察概要
○北京莱太花卉交易中心は北京市朝陽区東三環北路8号にあり、今回、莱太花卉商城と切
花の相対市場内を視察した。
○莱太花卉商城は花関係のデパートのような施設で、造花物、鉢物、切り花類を中心に、
多くの卸売り業者がテナントを設け、販売。
○売り場は、10通路で分けられており、第1∼第2通路は鉢物用の陶器資材、第3∼第4
通路は盆栽、花ポット苗の販売、第5∼第9通路は観葉鉢物類を、第10通路は切り花類
を中心に販売が行われていた。
○1店舗約20品種近くの品物があり、ほとんどが雲南省からの品物。
○北京市内のほとんどの花屋は、この市場を通して入荷しているようである。
○花の需要が高まる時期は、母の日、父の日、旧暦の祝日。
○セリ市場は莱太花卉商城と道路を挟んで向かいに位置し、91社の卸売業者。
取り引き時間帯は朝4時∼8時。
(2)切り花及び鉢物の取引価格(日本円:14円/元で計算)
鉢 物
・アンスリウム
380元(日本円 5,320円)
・シンビジューム
360元(日本円 5,040円)
・コチョウラン
380元(日本円 5,320円)
・グズマニア
480元(日本円 6,720円)
切り花
・バラ花束(大)
120元(日本円 1,680円)
・花束(平均)
60元(日本円
840円)
・スプレー菊10本
10元(日本円
140円)
・バラ1本
3元(日本円
42円)
・輪ギク(白・黄)1本
1.5元(日本円
21円)
・デンファレ(ビニール入り)
25元(日本円
25円)
(3)所
感
花の価格は、中国での1日当たり平均賃金30元とすると、一般の市民からすると高い
品物であり、特に鉢物においては、個人で購入するには、かなり厳しい感じである。
莱太花卉商城内のテナントの6∼7割近くは鉢物関係(観葉植物)で占めており、北
京での鉢物需用の高さが感じられた。花壇苗は僅かしか販売しておらず、種類もあまり
なかった。しかし切り花品質において、花傷みなどが目立ち品質はかなり悪いものであ
った。
27
莱太花卉交易市場
花市場内の店舗の様子1
観葉植物を取り扱った店舗が多い
花市場の店舗の様子2
胡蝶蘭は赤系の色が多く販売されていた
花市場の店舗の様子3
切花の売れ筋はバラとユリ
(文責:座喜味
14
利将)
スーパー等で日本農産物の市場調査
研修日:平成18年9月15日(金)
研修先:イトーヨーカ堂北京1号店
(1)デパート概要
○大手量販店イトーヨーカ堂は北京市内に5店舗開店を行っており、その中で売り上げ高
が高い北京1号店(1997年開店)を視察した。
○店内の構造は、日本国内の店とほとんど同じ様子で、地下が食品コーナー、1階が小物
・宝石販売、2階、3階が衣類、電化製品の販売となっている。
○店の雰囲気も明るく、若い客層が多く入店されていた。店の商品価格も、中間層∼富裕
層の客を対象にしたものとみられる。
28
(2)地下生鮮食品コーナー視察
○フルーツコーナーには、ドラゴンフルーツ、パパイヤ、バナナ、ナツメなど熱帯果実や
バンペイユ、モモ、スイカなど多くの品目が陳列されていた。
○その中に日本産リンゴ、ナシの陳列コーナーがあり、リンゴは青森県、ナシは福岡県か
ら出荷されたものであった。そのコーナーでは売り子が日本産の品物を宣伝していた。
青森産リンゴ(陸奥)の大で1,315円で、また福岡産ナシ大を651円で、贈答用として販
売していた。売り子の話では、まだ売れていないとのこと。ちなみに韓国産ナシは62円/
500gで販売していた。
○贈答用の籠入りフルーツ盛り合わせセットがあり、3,374円/籠で販売。
また、パック入りカットミックスフルーツ(ドラゴン、キュウイ、スイカ入り)が販売さ
れており、1パック101円で販売。カットメロンパック入りは1パック71円で販売され
ていた。
○ほとんどの生鮮野菜はラップに包まれて販売されており、キャベツ35.5円/kg、ニガウ
リ95.9円/kg、トマト88.5円/kg、ハクサイ103.3円/kg、中国産米107.5円/kgの価格で販
売されていた。また生卵8個入り1パックは86円の価格で販売。
(3)生鮮食品小売り価格
商品名
白ねぎ
キャベツ
とうがん
ブロッコリー
しょうが
山芋
にがうり
とまと
ナス
きゅうり
ピーマン
ニンジン
タマネギ
トウモロコシ
セロリ
カラーピーマン
ゴボウ
ニンニク
レタス
さつまいも
ダイコン
ハクサイ
パクチョイ
サラダナ
シイタケ
シュンギク
(4)所
価格(元)
5.98
2.40
3.58
9.98
11.98
15.98
6.48
5.98
5.98
9.98
5.48
4.58
5.38
6.58
5.38
13.68
17.98
19.98
11.28
4.98
2.98
3.98
6.98
14.98
11.6
12.98
日本円換算/kg換算)
88.5
35.5
53.0
147.7
177.3
236.5
95.9
88.5
88.5
147.7
81.1
67.8
79.6
97.4
79.6
202.5
266.1
295.7
166.9
73.7
44.1
58.9
103.3
221.7
171.7
192.1
商品名
ニラ
インゲン
エンサイ
ニンニクの芽
フェンネル
もやし
レンコン
じゃがいも
米
青森産りんご大
青森産りんご中
青森産りんご小
福岡産ナシ大
福岡産ナシ中
福岡産ナシ小
ナシ
スイカ
ぶどう
もも
ピタヤ
パパイヤ
バナナ
キュウイ
みかん
バンペイユ
ナツメ
価格(元)
6.98
9.98
6.98
9.98
9.98
3.98
9.28
4.58
21.8
88.9
22.0
16.0
44.0
38.0
25.0
2.00
1.99
9.50
9.90
5.50
4.40
7.70
4.80
15.80
2.80
3.80
日本円換算/kg換算)
103.3
147.7
103.3
147.7
147.7
58.9
137.3
67.8
107.5
1315(1個)
325(1個)
237(1個)
651(1個)
562(1個)
370(1個)
59.2
58.9
281.2
146.5
162.8
130.2
114.0
71.0
467.7
82.9
112.5
感
日本の販売農産物としてリンゴ、ナシが販売されていたが、価格がかなり高くなってお
り、日本国内で売られている価格より高めとなっている。青森産リンゴ大サイズで1個
1,315円の価格には、驚かされるものであった。他の果実に比較しても明らかに高価となっ
ており、北京市内の個人消費者にどれだけその価格に対して理解してもらえるかが、難し
29
いところであると感じられた。日本農産物を販売し始めたのは、最近からということで、
日本の高級ブランドイメージを浸透させていくには、これからという感じである。
中国産ナシの無公害野菜PR看板
青森産リンゴ、福岡産ナシの売り場の状況
(文責:座喜味
30
利将)
Ⅵ.参考資料(農林水産省)
中国における農林水産業の概況
改革開放政策を進める中で、80年代以降、急速な経済成長を遂げたが、一方でインフレ、
都市と農村との所得格差等の矛盾が露呈。農家1戸当たり経営耕地面積は0.5haと小規模で
あり、また、優良な耕地は沿岸部に多く、当該地域の急激な経済開発の進展に伴う耕地面
積の減少は農業の将来にとって懸念材料となっている。
農業近代化政策のもとで、農家生産請負制、農業基盤整備、自由市場の導入、農産物流
通改革、郷鎮企業の奨励等を推進することにより、農村経済の発展をはかり、農民の収入
増加を図っている。
2000年3月の第9期全国人民代表大会において「西部大開発」の基本構想が決定され、
西部地域においては天然林保護事業に力を入れ、傾斜地の耕地を計画的・段階的に森林・
草地に戻すこと、また、農業基盤を強化することとした。
第10次5カ年計画(2001∼05)では、農業の量から質への転換、農民収入の増加を基本方
針に、(1)農業のGDP比を13%程度に抑える、(2)農民一人当りの所得の伸び率を5%前後と
し農村の生活水準向上を図る、(3)畜産の農業総生産比を33%程度まで高める、(4)耕地面
積1億2800万haを確保する、(5)2005年までに農村の余剰労働力4000万人を都市へ移転させ、
農業就業者の割合を44%に引下げる等の具体的な目標を定めた。
2002年8月、農村土地請負法が成立した(2003年3月1日施行)。これにより、農民に長期
に保障された土地使用権(耕地請負権30年)や流動権(転貸、交換、譲渡、抵当等)が法的に
認められることとなった。今後は、土地請負経営権を流動化させ、段階的に農業経営の規
模拡大を図ることとしている。
WTO加盟(2001年12月)による国際競争力の強化の必要性など、農業・農村を取り巻く情勢
変化を踏まえ、2002年12月に農業法が全面改正された(2003年3月1日施行)。農民の収入
増加、高品質・高生産・高収益農業の実現、農産物の国際競争力の向上等の実現をはかる
ため、構造調整の促進、農業経営の近代化、農産品の安全性の向上等に改正の重点が置か
れている。また、農業のもつ多面的機能を効果的に発揮させるための保障措置の実施も明
記している。
2005年における中国の農水畜産物の対日本向け輸出状況を発表、輸出額は前年比7.2%増
の79億2,000万ドルと、引き続き堅調に推移している。
野菜の輸出をみると、前年比5.3%増の13億7,000万ドルとなっている。
地域別では、山東省からの対日輸出が引き続き第1位で同20.4%増の26億4,000万ドルと
なっており、主な輸出品目は水産加工品(6億3,000万ドル)、野菜(4億9,000万ドル)、
肉製品(4億6,000万ドル)である。
31
Ⅶ.所感
今回は山東省の日本向けに輸出している野菜生産・加工・輸出企業を中心に、野菜市場、
検疫局や、北京において中国の花事情の一端を視察した。
特に今回は、5月29日にポジティブリスト制度が施行されたことによる中国の野菜生産
・加工・輸出企業への影響に注目して視察を行った。
中国ではそれ以前の2002年の残留農薬野菜問題から、農産物の輸出はある一定以上の基
準(栽培農場面積、農場周辺環境、農場の水質など)を満たす企業のみしかできない規制
がある。
さらに今回のポジティブリスト制度により、日本への輸出の検査体制が強化され、今年
の輸出は昨年と比べ4割程度減少した。施行後の日本向け輸出は、根菜類など農薬が残留
しにくいものや、農薬をほとんど使っていないものなど、輸出企業が自信のある農作物し
か輸出しておらず、様子見の状況であった。しかし、今後、栽培技術及び加工・製造管理
技術に自信がつけば、順次、品目を増やしていくものと思われた。
日本のポジティブリスト制度の影響により中国の野菜生産・加工・輸出企業はさらに淘
汰が進んでいる。生き残っている企業の輸出用の農産物生産は、直接会社が肥料、農薬、
栽培管理を行い、栽培記録もきちんと記入し、会社によっては、有機農産物の認証を取得
するほどの徹底ぶりであった。
今回の研修では、「中国の野菜=危険な野菜」と言うイメージが崩されるほど、残留農
薬、水質などの安全性に気を使って生産管理を行っている中国企業の状況に驚いた。ポジ
ティブリスト制度の影響で一時的に日本への輸出量は減ったが、再び輸出量を回復し、さ
らに今以上の安全性を持った農産物として日本の脅威となるのも時間の問題と思われた。
今後、中国の日本向け輸出農産物の安全管理の徹底ぶりを肝に銘じて、更なる輸入農産
物への対抗策をとっていく必要性を感じた。
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Ⅷ.おわりに
中国研修において、山東省の日本向けに輸出している野菜生産・加工・輸出企業を中心
に、野菜市場、検疫局や、北京において中国の花事情の一端を視察し、5月29日にポジテ
ィブリスト制度が施行されたことによる中国の野菜生産・加工・輸出企業への影響を知る
ことができた。
今後、残留農薬、水質などの安全性に気を使って生産管理を行っている中国企業は、ポ
ジティブリスト制度の影響で一時的に日本への輸出量は減ったが、今以上の安全性を持っ
た農産物として日本の脅威となるのも時間の問題と思われた。
一方で、今回の研修により中国の普及活動は政治体制や経済政策など日本との違いがあ
るにせよ、我が国のような濃密的で効率的な現地活動に基づいた農業経営体の育成等や関
係機関との連携活動による農業・農村構造の改善などを推進している内容と比較すると、
そのギャップが感じられ、日本農業の底辺を支える普及事業の力づよさを改めて実感でき
る研修ともなった。
我々は、今後の普及活動において、中国の日本向け輸出農産物の安全管理の徹底ぶりを
肝に銘じて、農業経営体の育成を核とした地域農業の振興を図っていきたいと思う。
最後に、この研修を企画いただいた国際農業者交流協会様及び中国現地との調整や研修
に同行し、懇切丁寧な通訳や御指導などをいただいた中山真紀雄様に深く感謝を申し上げ、
研修報告のおわりとします。
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平成18年度留学派遣研修(海外)集団コース
報告書
平成19年2月発行
社団法人 国際農業者交流協会
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