2009 年 7 月 13 日 ジーエーシティセミナー が印刷会館で開催された。 テーマは「普通の印刷会社では生き残れない、何か特徴を出そう Part 2 ☆☆☆ 高付加価値印 刷を探る ☆☆☆ 」で下記の 3 名の講師から公演が行われた。当日は定員 120 名のところ、150 名の申し込みがあり、かなり混み合ってしまったが、皆様熱心に聴講された。以下、要約をご紹介 いたします。 1.ご挨拶、『高付加価値印刷の事例紹介』 ジーエーシティ株式会社 代表取締役社長 萩原 和夫 2.『シルクスクリーン技法による高付加価値な加飾印刷』 福寿産業株式会社 部長 岩田 恭男 様 3.『3つの付加価値提案』 リョービイマジクス株式会社 ■■■ 2009 年 7 月 13 日 CS本部技術支援課 課長 ジーエーシティセミナー 藤澤 孝次 様 レビュー ■■■ 1.ご挨拶、『高付加価値印刷の事例紹介』ジーエーシティ株式会社 代表取締役社長 萩原 和夫 「付加価値印刷の実際」 ●枚葉印刷機の課題 今、印刷物は工業製品としてのスペックを持って、いつ、誰が、どの機械で印刷しても同じ品質 を安定して印刷されることが求められています。 この要望は特にオフ輪や枚葉両面機などの大量生産系に求められています。 しかし、印刷物に付加価値を付けて、クライアントや一般消費者がびっくりするような品質を追 求することも印刷産業には求められています。 また、そのような差別化ができないと枚葉印刷機を保有する印刷会社の死活問題でもあると思い ます。 ●「印刷見本帳」印刷学会出版部発行 高濃度印刷+300線 FM Screening FM Screening+7 色印刷 ヘキサクローム コロタイプ ダブルトーン 木目印刷(エンボス加工) 壁紙印刷 水性グラビア印刷 マイクロ文字印刷 ワープショット印刷(携帯電話とのリンク) Digital Press スクリーン印刷 UV デコレート印刷 FIXFilm CDROM 印刷 ●用紙の選択 一般的に、アート紙、コート紙、マットコート紙、上質紙などに区分けされますが、質感を重視 した用紙をファンシーペーパー、ファインペーパーと呼びます。 よく話題になるのがヴァンヌーボーで高級な印刷用紙の代表になっています。 株式会社竹尾様のホームページには「紙の知識」が載っております。 この中で 16 種類のカテゴリーで説明しています。 ・ラフ マーメイド、パミス、サーブル、パステルカバーなど 1 粗い質感でざっくりとしたラフな手触りのファインペーパー。柔らかさ、暖かみのある風合い、 実際に手に触れるものなどに最適です。 ・スムース NT ラシャ、ビオトーブGA-FS、ピーチケント、アラベールなど 表面に加工を施さないプレーンなファインペーパー。クセのないシンプルな風合いでさまざまな 用途でお選び頂けます。 ・ブレンド OKカイゼル、OK フェザーワルツ、ST カバー、グムンドナチュラルなど 目に見える混ぜものを模様として抄きこんだファインペーパー。自然で素朴なあたたかみのある 質感です。 ・レイド リ・シマメ、アングルカラー、ST カバー、ジャンフェルト、あらじまなど レイド=縞(しま)模様の入ったファインペーパー。特徴的な縞模様のものからや柔らかい模様 のものまで豊富に揃っています ・地模様(フロック) 羊皮紙、新局紙、ローマストーン、ML ファイバーなど 紙料を揺らして地合い(模様)を崩し、模様をつけたファインペーパー。高級感漂う地模様は色 物も豊富です。 ・エンボス レザックシリーズ、T-EOS シリーズ、ビルカラー、タントセレクトなど 抄紙段階または抄紙後に模様のついた金属ロールを押しつけた紙に模様のついたバラエティに 富んだファインペーパー。 ・和様 もみがみ、新だん紙、ぐびき、新大札紙、新鳥の子など 和風な模様、風合いを施したファインペーパーです。日本の伝統的な製紙技法を模したものや、 模様・質感、色合いが特徴的です。 ・ラフ・グロス(ラフ・グロスは竹尾の登録商標です) ヴァンヌーボシリーズ、Mr.B、OKミューズガリバーHG ラフな手触りでありながら、印刷面にグロスがでるこれまでになかっ た印刷用紙です。アート 紙、コート紙にはない温かみのある質感で表現の幅が広がります。 ・透明紙(トレーシンングペーパー)クラシコトレーシングーFS、クロマティコ、 透明に透けるトレーシングペーパーです。白物から色物、また厚さや模様も豊富に取り揃えてお ります。 ・ステーショナリー(書簡紙)ストラスモアライティングウーブN、サンバレーオニオンス ウォーターマーク(透かし模様)の入った筆記性に優れた書簡紙です 海外ではタイプライターや、エアメールの紙などとしても使われる ・鏡面/光沢 オフメタル、サンダースメタリック、ルミナカラー、トレジャリー 表面に鏡面加工・高沢感を与えたファインペーパーです。メタリックなものやパール系の輝きの ものまで豊富なラインナップ ・紙クロス ダイヤボード、クロスライク、モス、タスシリーズなど 紙に樹脂などを塗工・含浸し強度をもたせたファインペーパーです。多彩な柄と色のラインナッ プから用途に応じてお選びください。 ・かわった質感の紙 パチカ、桃はだ、カラペ、ヴィベール、GAコットンなど 果物の皮のような質感、毛羽立った紙、ぬめり感のある紙……など、触覚を刺激する特殊な質感 のファインペーパーです。 ・中性紙 抄紙時に硫酸バンドを使用せず中性化して作られた紙。 酸性紙に比べ、4~6倍も耐久性・保存性に優れています。 2 ・高級印刷用紙 オービーナスシリーズ、ジョブパリラックス、マットカラーHGなど 高度な印刷再現性を実現させた印刷用の白物ファインペーパーです。グロス・マット・ダルなど ご希望の印刷仕上がりに応じてお選び頂ます。 ・水に強い紙 ユポシリーズ、ビーチコート、アリンダ、パビエストなど 紙にさまざまな方法で耐水性を付与した「水に耐えうる紙」。また、合成紙やフィルムなども素 材の物性上、耐水性に富んでいる。 ●印刷インキの選択 Japan Color:標準オフセットインキ 高濃度印刷:高いベタ濃度かつ通常のドットゲイン 広演色インキ:Cyan、Magenta の濁りをとり、C、M、R、G、B の広い演色範囲を再現 Hexachrome:PANTONE 社の Hexawear6 色分解セットと濁りの取れた CMYRG+Black の 6色 HiFiColor(7 色印刷) :CMYK+RGB の 6 色で印刷 広演色インキ、Hexachrome、7 色印刷は通常の 4 色分解ではなく、それに合った ICCProfaile による色分解が必要 ●網点の選択 AM スクリーン 175 線/インチ~700線/インチ FM スクリーン Staccato、Randot X、Satin Screen、FairDot、Sublima、TAFFETA、 Concentric Screen ●FM スクリーン の魅力は ① モアレが出ない ② ロゼッタが出ない ③ 細かい描写が優れている ④ 色鮮やかに印刷される。 ⑤ インキ使用量が減少し、約 20%のインキ節約 ⑥ 乾燥時間の短縮と傷の防止 しかし、欠点は滑らかさが損なわれ、平網や肌がざらつく ●Concentric Screen EskoArtWork 社が開発、海外導入実績 200 社(内、80 社常用) 円形の AM ドットを細かい同心円状リングに分割 AM のハイライト部の滑らかさと FM の利点を合わせたスクリーニング技術 任意に、スクリーン線数、リング幅、スペース幅を組み合わせドットゲイン制御が可能 ●Concentric の特長 ① 印刷機上安定性が高い ② 高濃度印刷が可能 ③ 彩度の向上 3 ④ AM の持つハイライト部の滑らかさを再現 ⑤ ロゼッタ/モアレの低減 ⑥ 高精度なディテール再現 ⑦ インキ使用量削減 「高付加価値印刷の事例紹介①」 ●株式会社サンエムカラー様 1984 年現相談役松井勝美様が京都に創業され、京都ならではの美術品のレプリカ印刷など高度 な印刷技術が評判となり、写真家、デザイナー等から指名発注により多くの作品を印刷されてい る。相談役松井勝美様とプリンティングディレクターをご担当される専務取締役の谷口倍夫(マ スオ)様を取材いたしました。 ・相談役のポリシー 15 歳から活版印刷を行っているたたき上げの印刷技術者で、困難を克服して印刷技術の向上に生 きがいを感じておられる。昔と違って今は全ての機械、材料、テクノロジーの完成度が高くな っ ており、それらとアナログ技術の組み合わせによるコラボレーションが印刷品質の向上につなが る。印刷物を作る人、売る人、買う人の心がひとつになってお客様に飽きられないことが大切そ のために印刷の魅力を若い人に教えてあげたい。 ・レプリカ作成が原点 FM スクリーンの草創時に国宝のレプリカ作成を依頼され、その頃より FM スクリーンに取り組み、 現在に至っている。本物と見分けのつかない複製技術が評判となり、多くの受注につながってい る。 ・仕事内容 一般物と PD が介在する高級物の比率は1:1、一般物もお札を印刷するつもりで手を抜かない。 5 年前は高級物の比率は少なかった デザイナーや写真家がメールで問い合わせ 大手印刷会社に本作りのアドバイス 4 印刷会社が多い中、知恵を持ったグループ化が必要 ・素材の提供 顧客の注文どおりに印刷物を作ればよいのか? サンエムカラーでは日本画、油絵、写真などの芸術品を自ら保有して、クライアントに その素材を使った印刷物を提供している。 クライアントが何を作りたいか先に察知し、利便性を考えることが大切である。 ・新技術の利用 高色域のインキジェットプリンターを使って、絵画などの複製を行っている。 立体印刷物の作成 ・高級書籍の制作 書協/日印産連主催 造本装幀コンクール受賞「BIOSOPHIA of BIRDS」東京大学出版会 ・受注のポイント デザイナー、写真家がサンエムカラーを指名して頂くことにより受注が広がっている。 その仕事の方向性を打ち合わせすることが大切。 用紙の選択は最初のテスト校正で2~4種類の用紙で本機印刷して、プレゼンしている。 営業と顧客の間に Printing Director(PD)が入って間を取り持っている。 色校正は全て本機校正を行い、初校でOKがでるようにしている。それは社内で校正に対する厳 しいチェックを入れてから顧客に提出しているため ・製版現場 画像再現ポイント ⇒スキャナー分解、最近はデジタルデータよりもカラープリントが多くなっている。写真家がデ ータ渡しでなく、印画紙入稿が増え、最新スキャナーを特注し、RGBデータに変換している。 ⇒レタッチ もし、印刷立会いでクライアントの色が出ない時、印刷で調整をしない。すぐ、画 像の修正を行い、版を出しなおす。そのほうが高品質で早い。 現物、絵画等の入稿原稿はリバーサルフィルムで撮影するものの、あくまで現物を参照しながら 作業を進める。 DDCP(デジコンプレミアム)でチェック後、本機校正 CTP 出力は150~250線(用紙・内容により使い分けている)&FairDot ・印刷設備 ManRoland 700HiPrint6C Heidelberg XL‐105-5 Heidelberg XL‐105-5 Heidelberg XL‐75-5 Heidelberg CD-102-5 Heidelberg CD-102-4 5 ・印刷現場 機付け要員は 3.5 人と多いが、インキの交換、紙積み、版交換など、作業が早く精度が高くなる ことを優先 両面機は採用しない、片面印刷し、反転時に品質チェックし、翌日印刷する。 高濃度印刷のものについては 200 枚~300 枚で板取りし、スプレー量を減らしている。 用紙ごとに最適な効果がでるよう製版、印刷で工夫し、ベタ濃度は Japan Color より高い 2タイプの粘度のインキを用意して使い分け 特練が多い、大手インキメーカーは対応が悪い ・PD(Printing Director) 印刷物作り全般の知識が必要、製版出身が向いている? 製版現場、印刷現場から信頼されている 現場のコミュニケーションを円滑にする クライアントに自社の特徴を話して納得してもらう CMS が長けており、顧客のモニターの調整や標準光源の設置などをアドバイスする ・印刷会社の生き残る道 文字文化はすたれない 残る印刷物は手にとって捨てられないもの クライアントの求めているものを探す イベントの手伝い、販促物が付随している 博物館向けの仕事、図書館向け 人材育成。センスの良い人を選ぶ、その人の立場で考え、やってみさせて自信をつけさせ、楽し く、競争させて育てる。 見学希望は谷口専務様([email protected])へ 「高付加価値印刷の事例紹介②」 ●太成二葉産業株式会社様 1949 年に印刷物光沢加工業の昌栄ニス引所が前身で事業を拡大され、1995 年にハイデルベル グ印刷機を導入され、印刷から表面加工まで一貫生産を行っている。 クライアントの要望を表面加工と印刷技術両面で追及し、クライアントの信頼を得た印刷会社と して活躍中です。 営業とプリンティングディレクターをご担当される営業部課長の内藤正博様を取材いたしました。 ・業容の発展 関西では印刷物の表面加工(PP 貼り)では定評の会社である。印刷会社の下請けとして、表面加 工を行っていたが、ひとつの工場の中で一貫して印刷・後加工ができるメリットを印刷会社にアピ ールしている。 東京営業所を開設して、PAGE ショーや東京パックに出展し、下請け依存から直受けの仕事が多 6 くなっている。営業するに当たり印刷物に付加価値をつけるのでなく、顧客の拡販ツールに付加 価値を付け、結果今までと違う印刷物を作っていると言う自信を持っている。 ・6th Asian Print Awards 2008 金・銀・銅賞受賞 金賞(カテゴリー2:リーフレット、チラシ、パンフレット、折加工部門) ソニー音楽芸術振興会様が 2007 年 11 月 3 日に開催したコンサートのパンフレット 表紙:オフセット4C+effect ニス+UV グロス/オフセット4C+UV グロス 本文:フレキソパール+オフセット4C/フレキソパール+オフセット 4C 印刷機:Heidelberg CD-102 ・5th Asian Print Awards ドイツ国際カレンダー展 Duo Press にて表裏各 1 パス 金賞 金賞、全国カレンダー展(印刷産業連合会会長賞) 表紙:メタルコーティング+特色 2 色+雲竜 1 月 2 月:UV4C+マット PP+蒸着 PET 3月 4 月:UV4C+パール 25μ+シルク盛り上げ 5月 6 月:UV4C+パール 60μ+UV グロスニス 7月 8 月:UV4C+偏光パール青 9 月 10 月:UV4C+ホロ箔+シルバーニス 11 月 12 月:UV4C+偏光パール金 ・ISO12647-2 認定 2009 年 1 月取得「ISO12647-2」はオフセット印刷の標準化を規定したもので、用紙の種類、 プロセスカラーベタ部の基準、許容誤差、ドットゲイン量などのプロセスコントロールのための 目標規格値を定めたものです。印刷会社がこの規格を取得することにより、国際規格に準拠した プルーフ作成と印刷を行う技術を持った企業として国際的に認められ、日本だけでなく海外でも 自社の品質を証明することができます。 ・付加価値のある宣伝媒体を目指して 事例:カレンダーを毎月ユーザーに送る試みは新鮮な DM 作戦。表面加工の優れたカレンダーは 捨てずに飾る。広告面が少なくても企業アピール 印刷物と Web、TV、ラジオの違い⇒手にとって見る 顧客の売上を伸ばすことを考えている。これは印刷の延長ではなく表現方法が印刷なだけ 印刷機を入れた当初は一般物が多かった。今は表面加工の仕事が 9 割。印刷から後加工まで1工 場で一貫生産される強みが大きい。 ・顧客の要望にあった設備とテクニックの発展 パッケージ、カタログ、ポスター、書籍 e.t.c.多種多様な仕事を受注している。 顧客のニーズに合わせて、最適な設備を導入し、使いこなしている。 儲からない機械もあるが、顧客満足度を優先 メタリックペーパーを PP 貼りの要領で生産 ロータリーシルクスクリーンで盛り上げニス 7 圧着 DM にクライアントは興味を示す。 ・印刷・加工設備 Heidelberg Sppedmaster CD-102-5 Heidelberg Sppedmaster CD-102-6(2コーター付き) 「Duo」 Heidelberg Sppedmaster CD-102-7(コーター+1 色付) 「PLUS1」 ハママツ プレラミ用ラミネーター ハママツ ラミコート×5 桜井・スタイネマン シルクコーター×2 ハママツ 窓貼り機 広瀬鉄工 フレキソコーター GIETZ 箔押し機 ・不景気対応 ロットの減少傾向、特殊加工品の件数は減っていない クライアントは「量は少ないが効果のあるものを」 営業のウエイトが大きい。 コンサルタントできる営業が必要。客の信頼大、ライバルが居ない 一貫した生産設備、メタリックペーパーを自社生産印刷・後加工が同じ場所 ≪目先の効率追求やめよ≫ 青山学院大学教授 福岡伸一氏の日経 6 月 29 日朝刊のインタビュー領空侵犯 「効率を追求する機運が高まっていますが、その対極にあるオタクを今こそ評価すべきです。オ タクとはひとつのことを何十年も好きでいられる人のこと・・・・・・独創的なものを生み出す のは、口八丁手八丁の人ではなくオタク的人材なのです。」 「短期的成果が求められるのも仕方ありませんが、真の創造性がわかるには時間がかかりま す。 ・・・・・・」 印刷業界は生産性を追及し、標準化を進めています。これは大量生産の印刷物には適用しますが、 これからの小ロット、多品種の時代にはクライアントの希望に沿った印刷物作りが必要ではないで しょうか? 2. 『シルクスクリーン技法による高付加価値な加飾印刷』 福寿産業㈱ 部長 岩田 恭男 様 「オフセットでは表現できない、シルクスクリーンによる加飾印刷の事例紹介」 シルクスクリーン技法を用いて様々な加飾印刷を行っている福寿産業の岩田部長より、シルク スクリーン印刷の仕組みと、実際にシルクスクリーン印刷が使用された多くの実例が紹介された。 スクリーン印刷とは孔版印刷の一種で、 ①アルミやステンレスなどでできた版枠を印刷物のサイズに合わせて選択 ②紗(スクリーンメッシュ)を張り、感光性の乳剤を塗布 8 ③ポジフィルムを貼って露光後、水現像 という各工程を経て版を作成。その後版にインキを充填し、ウレタンゴムでできたスキージを用 いてパターン(穴)からインキを掻き出し被写体にインキを転写する。 特徴としては、塗布する乳剤の厚みをコントロールすることで圧膜印刷が可能なことや、空気と 水以外なら印刷できると言われるほど、様々な用途、素材、形状への印刷が可能であることなど が上げられる。 紙媒体に関しては、コミック誌の表紙やポスター、パンフレットなど、プロセスカラー印刷さ れた物の加飾に用いられることが多く、箔押しや圧膜印刷を利用した点字印刷などに利用される。 紙以外の媒体では、加飾フィルム(クリオライン)で自動車のシフトレバーや携帯電話、家電、パソ コンなどのパネルに利用されたり、タッチパネルに用いられる銅線フィルムなどの高精細印刷、 印刷されたものに電子部品としての機能を直接持たせる、プリンタブル・エレクトロニクスなど、 用途幅は広がっている。 講演内では、東洋インキ製造の 2007 年度のカレンダーを中心に、下記の代表的な加飾印刷に ついて実例が紹介された。 「見て感じるもの」 (ポスター、カタログ、パッケージ、パンフレット、ポストカードなど) 厚盛インキ 光沢感とボリュームのある高級感を引き出す リオトーン 金属光沢の素材でエッチング調のザラザラした質感を再現 ちじみ ちじみ塗装からきた言葉で独特な模様のテクスチャー 「光で見えるもの」 (シール、カード、キャラクターグッズなど) ラメインキ 印刷面がラメ調でキラキラ輝きを与える 蓄光インキ 太陽や蛍光灯の光を吸収蓄積し、暗いところで発光 パールインキ 真珠のようなソフトな色合いと光沢を持つ 「触りたくなるもの」 (ポスター、表紙カバー、スタンプ、POP など) 発泡インキ 一定温度を一定時間与えると発泡し盛り上がる フロッキー パイル状の毛を付着させ優しい触感を再現 香料 マイクロカプセルの香料で摩擦により香りを出す 示温 特定温度で反応して、変色、消色し、下地の色を見え隠れする 「かきたくなるもの」 (キャンペーン物、DM、付録、カードなど) サインパネル 鉛筆、ボールペン、印鑑など筆記性を良くする スクラッチ印刷 爪やコインで削ったりセロテープで剥すなど隠蔽力を確保する また福寿産業では社内にショールームを設け、加飾印刷が実際に利用された印刷物を多数展示 し、デザイナーや制作者のアイデア創造の場としても利用されているとのことなので、一度訪れ てみることをお勧めする。 3. 『3 つの付加価値提案』リョービイマジクス株式会社 CS 本部技術支援課長 藤澤 孝次 様 インライン化による付加価値化・生産性向上の付加価値化・環境の付加価値化という三つの視 点で、印刷機による付加価値化が提案された。本セミナーの“高付加価値印刷”というテーマに おいて、 『いかに印刷物に特殊な効果を加え、顧客の興味を引くものを提案するか』という視覚的 な意味だけでなく、 『いかにコストダウンという付加価値を提案するか』という隠れた付加価値に 9 ついても着目している。 まず、視覚効果による付加価値化の一例として、RYOBI 750 シリーズが紹介された。本機に は、ホログラム加工をインラインで行う、インライン UV キャスティングシステムを採用してい る。このシステムは、UV 二スコーティング後、印刷物に模様つきフィルムをかぶせ、フィルムの 上から UV を照射し、二スを型取る仕組みになっている。これにより、光の反射を利用したホロ グラム加工が可能になるのだ。通常の二ス加工と比べ、特定の色光だけが強調されて反射される ので、見る角度によって虹色に変化し、見る者の興味を引くことができる。 リョービでは、このような視覚効果型とは別に、 “隠れた付加価値化”の提案も積極的にしてい る。例えば、RYOBI 1050 シリーズでは、RYOBI PQS という、インライン印刷品質管理シス テムが搭載できる。このシステムは、印刷機上に CCD カメラを設置し、印刷物のカラーバーの濃 度を測定してインキキーを自動制御できるようになっている。また、欠陥検査機能が付属してお り、印刷箇所に欠陥があった場合、欠陥物と良好な印刷物を判別する仕組みだ。オペレーターの 手を介さず、このような処理を実現できる点は「人件費削減」・「時間削減」にも貢献でき魅力的 である。また、 「シェル可動式スケルトン渡し胴」という、システムを搭載しており、用紙の厚み によって、シェル型の渡し胴が開閉するようになっている。この仕組みにより、厚紙と薄紙を切 り換えて印刷することが可能になり、さらなる効率化を実現することができる。 また、菊全印刷機の使用印刷用紙サイズの約 80%が A 全紙であるということから、A 全ジャ ストサイズの印刷機にも注目しているという。A 全ジャストサイズの印刷機を使用することは、 印刷工程のコストダウンにもつながる。例えば、菊全の場合、一般的な版寸法は「1,030× 800mm」だが、RYOBI 920 シリーズでは、 「910×665mm」になり、27%/版のコストダウ ンが実現できてしまう。消費電力についても 37%/月 、設置スペースも 35%/㎡ 削減できる。 さらに、環境に対する負荷を低減するために、LED の使用も提案している。パナソニックとの 共同開発により、LED-UV システムをユーザー向けに開発したのだ。このシステムを導入するこ とによって、5 つのメリットを得ることができる。 ①:UV ランプと比較した場合、70~80%削減も電力を削減できる。また、点灯・消灯が瞬時 にできるので、UV ランプに必要なアイドリングタイムが無くなる。 ②:LED-UV システムではランプからの発熱が少なく、UV 特有の臭いが発生しないので、ダク ト設置スペースを取る必要が無い。 ③:LED ランプは赤外線を含まないので、印刷資材・印刷機への熱影響が抑えられる。熱が発生 しないので、紙が縮むこともなく、薄紙等、様々な印刷物に対応できる。 ④:LED-UV システムでは、コンパクトな UV 制御ボックスと冷却装置を採用しており、UV ラ ンプ方式と比較した場合、約 74%の設置スペースを削減できる。 ⑤:LED ランプは長寿命であるので、消耗交換頻度を大幅に軽減できる。従来の UV ランプと比 較した場合、約 15 倍も長持ちする。 印刷会社にとって、どの付加価値を自社の製品に加え、特徴化するかは多種多様にわたる。今 回紹介された 3 つの提案を実践するならば、製品を特長化するだけではなく、コストダウンにも つながるというのだから驚きである。今後も更なる提案に注目したい。 10
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