技術情報「畜技センター成果発表会・飼料稲活用・普及検討会」

技術
情報
H27 年度総合技術研究所畜産技術センター成果発表会
および広島県飼料稲活用・普及検討会 合同研修会
広島県立総合技術研究所 畜産技術センター 飼養技術研究部 研究員 末永 晋一氏
〈はじめに〉
H28 年 2 月 10
日 ( 水 ),みよしま
ちづくりセンター
で「H27 年度総合
技術研究所畜産技
術センター成果発
表会および広島県飼料稲活用・普及検討会 合同研修
会」が開催されました。今回はその内容を紹介します。
当センターからは,河野副部長による『飼料イネ「た
ちすずか」の効果的バンカーサイロ調製技術』,城田副
主任研究員による『乳用牛への WCS「たちすずか」の
微細断 TMR 給与技術』,福馬副主任研究員による『肥
育牛へのイネ WCS「たちすずか」TMR 給与による生産
への効果』の3講演を行いました。
飼料イネ「たちすずか」の効果的
バンカーサイロ調製技術
を乾物中 35%混合した TMR の給与では,消化率,子
実排泄量,乾物摂取量,泌乳成績に差はなく,微細断
WCS で大きな弊害は認められないという結果となり
ました。
また,微細断 (6 ㎜ )WCS を2ヵ月間,長期的に給与
した場合の影響についても試験を行いました。
結果としては,泌乳成績は良好であり,血液性状は
差がありましたが,食欲低下等明らかな異常はありま
せんでした。しかし,微細断 WCS 単独給与で第一胃
内での発酵が旺盛で PH が低下傾向であったため,チ
モシー乾草などの粗飼料との併用給与が望ましいこと
を紹介しました。
肥育牛へのイネ WCS「たちすずか」
TMR 給与による生産への効果
高品質牛肉生産を行う肥育牛の飼料として飼料イネ
WCS を給与する場合の課題は,β - カロテン含量が高
いことが挙げられます。β - カロテン含量を低減させ
る技術として,低温に暴露する(霜にあてる)立毛貯蔵
( 極遅刈り ) がありますが,高い耐倒伏性が必要となり
ます。「たちすずか」は優れた耐倒伏性があるので,収
穫調製を11月下旬~12月上旬に行い,給与試験を
行いました。
肥育牛用「たちすずか」WCS はイナワラに比べて栄
養価が高く,増体などの効果も期待できます。「たち
すずか」WCS を給与した区では,イナワラを給与し
た区と比べて,飼料摂取量が向上し,発育成績や枝肉
成績も良好になり,収益性が大きく向上したことを紹
介しました。
「たちすずか」+「微細断収穫」の技術を用いて,バ
ンカーサイロでの活用方法を紹介しました。バンカー
サイロの長所は,調製コストが安く,作業効率が良い
ことが挙げられますが,短所は,比較的気密性が低く
なること,好気的変敗リスクが大きいことが挙げられ
ます。
これらの短所を「たちすずか」+「微細断収穫」技術
により補うことが可能です。「たちすずか」の特徴であ
る,高い糖含量は発酵時のエネルギー源となり,「微
細断収穫」した材料は高密度の詰込を可能とし,サイ
レージの発酵品質が良好になります。また,バンカー
サイロを活用する場合,ヘテロ発酵型の乳酸菌添加を
することで,好気的変敗を抑制する効果が大きいこと
最後に
を明らかにしました。
こ れ ら の 技 術 を 活 用 す る こ と で,「 た ち す ず か 」 今回の成果発表会
WCS のバンカーサイロ調製は可能となることを紹介 に は 非 常 に 多 く の
方々が御来所され,
しています。
関心の高さが伺えま
乳用牛への WCS「たちすずか」の
した。
微細断 TMR 給与技術
現在,耕畜の連携
微細断 WCS(ホールクロップサイレージ)の乳牛へ により「たちすずか」
の給与で期待される効果としては,乾物摂取量の増加, の栽培面積は 430ha
コストの低減が挙げられます。一方,懸念される影響 (H27)に達しています。これらの技術を,できるだけ
として,消化率の低下,子実排泄の増加や健康への影 早く現場の農家の方々へ普及し,畜産農家の方々に貢
献したいと考えております。最後になりますが,今回
響が挙げられます。
これらの影響を調査するため,当センター,県内農 の発表会では,日本草地畜産種子協会 吉田宣夫ア
ドバイザーをはじめ,JA 全農ひろしま塩田信通課長,
家さんの協力を得て現地実証試験を行いました。
結果としては,切断長の異なる WCS(6,11,29 ㎜) その他多くの方々に協力を頂きお礼申し上げます。
広島
13
2016年
(平成 28年)3月
〔№ 264〕
〈訂正〉本誌 2 月号の 18 頁「技術情報」< 最後に > の段落中において、
一部訂正がありました。文中の「3.5%」は、正しくは「4.0 ポイント」
です。訂正をお願い致します。