*妊娠さんの臨床検査について** 主な臨床検査 妊娠中の定期健診では、より安全な出産のために臨床検査が行われます が、その検査の目的と、その結果からどのようなリスクが考えられるかなどを まとめてみました。 また、検査データーは妊娠の周期により値が変化しますので注意が必要です。 *尿検査* 尿一般検査 毎回の健診で検査 目的 陽性の時に考えられること 尿糖 糖尿病のスクリーニング 妊娠中の生理的尿糖増加によって正常妊婦でも高率に尿糖陽性を 示すため偽陽性率が高い検査。血糖検査の結果の方が重要となり ます。 尿たん白 腎臓疾患、妊娠高血圧症 のスクリーニング 尿路感染症や腎機能障害などで「陽性」となるため、尿沈査、尿たん 白定量、腎機能検査等の追加検査での確認が必要となります。 *血液型関連検査* 検査項目名 ABO・Rh式血液型 不規則性抗体スクリーニング 目的 検査の時期 血液型不適合妊娠に備えるため、まれ な血液型やRh(−)、不規則性抗体を 有してないかをあらかじめ検査します。 また血液型不適合妊娠による胎児新 生児溶血疾患の予見や出産時の大量 出血の際に安全な輸血を行うため検 査します。 初回健診 まれな血液型やRh(−)の場合は定 期的に不規則性スクリーニング検査 が必要です。 表1参照 妊娠前期と後期が望ましい。 抗体陽性の場合は、抗体の同定と力 価の測定を定期的に行う。 母親血と胎児血は胎盤によって閉ざされていますが、ほとんどの妊婦さんで少量の胎児母体間出血があり、妊娠初 期と分娩時に特に増加します。 この出血によって、母親が持っていない父親由来の抗原を持った胎児の赤血球が、 母親の血液に混入すると、母親はこの赤血球(抗原)を異物と認識し、抗体を産生してしまうのです(不規則性抗体)。 胎児・新生児溶血疾患とは、母親の抗体が、胎児の赤血球(抗原)を攻撃、破壊し、胎児・新生児溶血疾患を起こしてし まうことです。 表1 妊婦と胎児・新生児の輸血関連検査 MEDICALTECHNOLOGYVol.38No11「3母子間不適合妊娠」図2「周産期における妊婦と胎児・新生児の輸血関連検査のタイミング安田 広康から一部変更して引用しました すべての妊婦にABO式、Rh(D)、不規則抗体スクリーニング(Sc)を実施 妊娠初期 (∼15週) D(+)Sc(−) D(−)Sc(−) スクリーニング(Sc) (−) 28週 父親の抗原 検査を行う (+) Sc抗体価(4週ごと) 父親が同定された抗体の 抗原陽性の場合 スクリーニング(Sc) (−) 36週 分娩後 (新生児) D(+):Rh(+) D(−):Rh(−) D(+)Sc(+) スクリーニング陽性の抗体を同定 父親がD (+)の場合 20週 D(−)Sc(+) (+) スクリーニング(Sc) (−) 特に検査不要 (+) ABO、Rh(D) Sc抗体価(2∼4週) 抗体価上昇(1∼2週) ABO、Rh(D) 直接抗グロブリン試験 →陽性の場合は抗体解離 *血糖検査* 目 的 検査方法 スクリーニング検査は初期と中期が望ましい 妊娠中の母の糖代謝は非妊時とは異なります。具体的には、非妊時に比べ食後の血糖値が上昇し たり、空腹時血糖値が低下したりします。こうした糖代謝生理的変化を背景にして、もともと糖尿病が ある場合(妊娠前糖尿病)は、妊娠により糖代謝は増悪します。また、妊娠による耐糖能負荷によっ て高血糖状態を発症することがあります。(妊娠糖尿病) スクリーニング検査にて妊娠前糖尿病を早期に発見し、早期治療することは、重篤な周産期合併症 を予防することが可能となるため、検査の意義は大きいとされています。 妊婦糖尿病スクリーニングは「ユニバーサルスクリーニング法」が推奨されています。(下記参照) 全妊婦を対象としたユニバーサルスクリーニング法 妊娠初期 食事時間にかかわ らず血糖を測定する 妊娠中期 随時血糖法 グルコースチャレンジ試験 ≧95mg/dl ≧140mg/dl 食事時間にかかわ らず、随時にトレーラン G50gを飲んで1時間後 に血糖を測定する スクリーニング陽性 空腹時にトレーランG 75gを飲んでそれぞれ の時間に血糖を測定する 75gOGTT法での診断検査 ●新国際標準診断基準(2010) 血糖値(mg/dl) *末血一般検査* 空腹時 ≧92 1時間 ≧180 2時間 ≧153 一つでもあてはまれば、 「妊娠糖尿病」と診断 毎回の健診で検査 検査項目名 検査の意義 赤血球数 ヘモグロビン(血色 素)、MCV、MCH、 MCHC 貧血の有無の検査。 妊娠中は鉄の需要が増すため、鉄欠 乏性貧血となることが多いことから、 貧血の有無は常にチェックが必要です。 Hb11.0g/dl未満、Ht33%未満であ れば治療対象となるようでが、周期に よって変動があります⇒参照 正常妊娠の中期から、後期にかけて母体の生理 的変化として生理的貧血(赤血球量の増加より 血漿量がたくさん増加するためおこる血液希釈) が認められます。これは、出産にむけての生理 的変化と考えらてれおります。この時期の貧血の 確認はHbの値だけでなく、MCVが85u㎥以下が 目安となります。 血小板、白血球数 数に異常がないかの検査。 個人差はありますが、白血球数は妊娠中少しづ つ増加するため、明らかな感染を疑うのは15,0 00/㎕程度以上の上昇が見られた時とされてい ます。血小板は数の有意な変化はないようです が、妊娠中は凝固系の活性が起き大きさと体積 は増加することが多いようです。 参照文献:MEDICALTECHNOLOGY2010Vol.38No.11「周産期医療と輸血検査」3.母子間不適合妊娠、臨床検査2009Vol53No.4「妊婦と臨床検査」妊娠と輸血関連検査 妊娠と 糖代謝異常スクリーニング 妊娠時に行われる検査、検査と技術Vol38No.12「妊娠と糖尿病」
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