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炭化物成形体の開発及び評価

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炭化物成形体の開発及び評価
脇坂政幸 * 1
樋口光夫 *2
花田耕三 *3
Development of a Charcoal Mold and It's Evaluation
MasayukiWakisaka,Mitsuo Higuchi, KouzouHanada
現在,建築廃材や樹木剪定枝,新聞,及び雑誌など,都市ゴミや産業廃棄物中の木質系物質の大部分は焼却処理
されており,これら資源の再利用を図る技術が求められている。当該研究では,木質資源から得られた炭化物と古
紙パルプを原料として,湿式フォーミング技術による成型ボードの作製技術の開発,並びに各種機能評価を実施し
た。JISによるボードしての物理的評価基準では,インシュレーションボード同等の物性値を示した。また,熱
伝導率については,既存の住宅内装用或いは家具用の材料に比べ,断熱性が優位であることが確認された。しかし,
吸音特性については,特に他材料との違いはうかがえなかった。
1
はじめに
人口の増加,生活レベルの向上に伴う資源の枯渇が
2−1−1
多孔性粉体接着用フェノール樹脂の開発
本研究では,多孔質で保水性を有するような材料(炭,
進む中で,自然環境の保護や有用資源の再利用が今後
故紙解繊パルプ等)に対し,これらに吸収されること
我々の推進すべき方向として掲げられており,これに
なく各々を接着することが可能な樹脂の開発を行った。
応える様々な技術の開発が求められている。その中で
即ち,高縮合度フェノールレゾールのアルカリ性水溶
も木質資源に関わる廃材の再利用は炭素固定,環境保
液は酸で中和すると粉末状になるため,この原理を利
全の点で大きく貢献できるものである。現在,都市ゴ
用し素材表面で接着性を発揮する成形用接着剤の開発
ミや産業廃棄物中の木質系物質の大部分は焼却処理さ
を行った1)。
れているが,これらを原料として炭を製造し,その炭
2−1−2
から建材および家具用ボード等を製造する事は,資源
リサイクル,或いは資源の有効利用上意義深い。
木炭粉末
当該事業では炭化物ボードの工業的製造条件の可能
性を図るため,使用原料から設備化までに亘り,コス
これを行うための方法としては,建築廃材や雑誌な
トを考慮に入れた条件模索を検討したところ,原料に
どの木質廃材炭化物を粉砕して微粉炭としたのち,古
関しては既存の炭化物製造メーカーが粗粉砕後に廃棄
紙パルプ等の繊維質廃棄物を配合後接着成形すること
する微粉炭を利用することとした。
により,軽量,断熱性,吸・放湿性,吸音性などの機
仕様: 100meshpass 品(熊本炭化工業協同組合製)
能を有するボードを開発していくことが考えられる。
2−1−3
本研究は九州大学農学研究院,及び段谷産業(株)
パルプ
成型体強度の保持と炭化物の固定化を目的に,繊維
と産学官共同でRSP可能性試験事業に着手し,特に
状物質として解繊故紙を配合した。
活用性の高い原料の選択,シート状にフォーミングす
(商品名:ネオファイバー
王子製紙株式会社製)
るための方法と条件,その際に適したバインダーの開
発及び難燃性,遮音性などの機能性付与と各種評価を
2−2
行い,用途提案及び商品化の可能性検討を行った。
2−2−1
2
実験方法
2−1
原料
*1 インテリア研究所,*2 九州大学大学院農学研究院
*3 段谷産業株式会社
炭化物ボードの試作と機能性付与
炭化物ボードの仕様
表-1
炭化物ボードの仕様
炭化物ボードの設定比重
0.3,0.4,0.5(g/m3 )
木炭/パルプ配合比率
90/10,70/30,50/50
炭化物ボードの樹脂率
20(wt%)
2−2−2
炭化物ボードの試作
①所定重量(乾燥重量)の木炭粉と解繊故紙パルプを水
目した用途に関して検討を行った。
なお,本稿ではインテリア研究所が主に担当した項
中にて混合し,木炭/パルプの占める重量比率が
目に絞り,熱的特性と防音効果について報告を行う。
数wt%になるようにスラリーを調整する。
(1)
炭化物ボードの遮音性能測定
②調整した木炭/故紙パルプスラリーに高縮合度アル
建築材料用途において求められる効果の一つに音の
カリ性フェノールレゾールを所定量加え,攪拌後,
遮蔽性能がある。現状,材料単体で十分な効果を発揮
中和する。
するものは少なく,材料の組み合わせによる多重構造
③中和,攪拌後のスラリーを成形用型枠の中に入れ炭
化により性能向上を図る方法が一般的である。そこで,
/パルプ湿潤マットを作製。その後,マットを熱風
炭化物ボード単体での音に対する特性を既存の材料と
循環型乾燥機を用いて一昼夜乾燥した。
比較し,材料としての展開可能性を把握するため調査
④乾燥マットを所定温度で数10分間ホットプレスによ
を行った。
り熱圧成形を行った。尚,同時に厚み一定化処理を
①測定:機械電子研究所無響室(写真-1;状況)。
施した。
②測定装置:雑音信号発生器
2−2−3
炭化物ボードの機能性付与
SF-05
リオン(株)
製検出器及び,記録計。
難燃性付与として初期原料にある不燃性粉末(100m
③試験体仕様:炭化物ボード(木炭/パルプ=50/
esh pass,200mesh pass)を所定量混合し,熱圧成形
50),合板,PB(パーティクルボード),MDF(中質繊維板)
後に硼砂処理を施した。
各12mm厚。市販GB(石膏ボード)12.5mm厚。各サイズは,
2−3
330×330×厚み(mm)。
評価
従来の建築部材にはない素材から成る本研究材料
(炭化物ボード)が,既存材料と比較した場合どのよ
④測定条件:発生させた雑音の種類はホワイトノイズ
(63Hz − 8kHz)のオールパスで行った。
うな特徴を有し,また,適用すべき用途設定が考えら
れるかを把握するため,ボードの比重とその構成因子
スピーカー
である木炭/パルプ配合比率等の条件を変化させ,基
ノイズ発生装置
本的物性を調査した。
2−2−1
物理的特性評価項目及び,試験方法
材料の基本的な性能を知るため,密度,含水率,
サンプル挿入部
曲げ強度/ヤング率, 剥離強度,体積膨張率(吸水
厚 さ 膨 張 率 試 験 ) , 木 ネ ジ 保 持 力 に つ い て は , JIS
A5905 繊維板の試験方法に準拠し実施した。
ノイズ測定装置
写真-1
また,圧縮強度,耐水性(二類浸せき剥離試験)寒
遮音性測定状況
熱繰返しA試験をJAS(日本農林規格)に従い実施
し,ホルムアルデヒド放出量測定はJIS A5908(パー
ティクルボードの試験方法)を用いた。
なお,ホルムアルデヒド放散量試験については,炭
化物ボード(木炭/パルプ= 50/50 )のみを試験した。
なお,その結果は 0.16 (mg/L)であった。
2−3−2
付加価値(機能性)評価
炭化物ボードの原料である木炭が有しているとされ
る性能(吸放湿性,遠赤外線効果,保温効果,遮音効
果,熱的特性,悪臭吸着能力,防黴特性試験等)に着
(2)
炭化物ボードの熱的特性
一般に居住環境を構成する部材に対しては「熱を伝
えやすいか伝えにくいか」が,住宅用部材として採用
されるための一つの指標になり得ると考えられる。
当該研究で試作した炭化物ボードが,木炭/パルプ
の配合比の違いや,不燃用添加剤の影響により,熱伝
導率がどのように変わるか,また既存の住宅用材料と
の間で,どの程度の差が見られるかを検討した。
①測定装置:Kemtherm
QTM-D3 迅速熱伝導
率計
その結果,下記にしめす特徴が得られた。
(京都電子工業(株)製)
①炭化物ボードの原料である木炭は,多孔質で,軽量,
平滑な試料表面に60秒間プローブを静置し,自動的
嵩密度が低く,この特徴を繁映させた低比重材料設
に対象試料の熱伝導率と測定温度を表示する。
計が可能。
②試験体仕様:
②木炭は木材と異なり,内部の空隙に水を吸収するが,
・炭化物ボード:木炭/パルプ=50/50,,比重0.53。
(
)
それによる体積膨張はほとんど無い為,吸湿,吸水
・炭化物ボードA;(木炭/パルプ=70/30,)。
による体積膨張率が低い(吸湿長さ膨張率はJIS
・炭化物ボードB;(木炭/パルプ=70/30,,硼砂
A
5905で規定する繊維板並み,吸水厚さ膨張率は合
処理品)。
板並みでPB,繊維板より優れる)。
・炭化物ボードC;(木炭/パルプ=70/30,硼砂処
③一類,二類浸せき剥離試験においても層間剥離が無
理+100mesh不燃粉末)。
く,接着剤として使用しているフェノール樹脂の接
・炭化物ボードD;(木炭/パルプ=70/30,硼砂処
着強度は十分で,耐水性に優れる。
理+200mesh不燃粉末)。
④ボードの強度面での物性は比重,樹脂率の影響を大
・合板(比重0.55)。
きく受けるが,比重0.4設定以上,木炭/パルプ配
・PB(比重0.70)。
合比率=70/30∼50/50において,曲げ強度(MO
・MDF(比重0.70)。
・石膏ボード
以上各12mm。
2
3
R)50∼150kgf/cm,ヤング率(MOE)6∼14×10kg
9.5mm
2
f/cmを達成した。
⑤木炭は酸素と接触すれば燃焼するが溶融温度が高く,
3
結果
3−1
他の木質系材料と比較して耐熱性が高い。
物理的特性
2−3−1項により実施した評価結果を表 -2 に 示 す 。
表-2
設定
炭:パルプ
炭化物ボード及び各種木質ボードの物理的特性評価結果
密度
含水率
3
( g/cm )
比重
2
( kgf/cm )
ヤング係数
2
( tf/cm )
圧縮強さ
2
(kgf/cm )
体積膨張率
剥離強度
吸水厚さ
吸湿長さ
(%)
(%)
2
(kgf/cm )
木ネジ保持力
一類浸漬剥離
( kgf ) 二類浸漬剥離
寒熱繰返しA
90 : 10
0.37
2.01
20.4
3.0
2.2
0.15
0.1
1.7
異 常 な し
化
70 : 30
0.34
3.23
22.6
2.6
2.7
0.33
0.1
4.1
異 常 な し
物
50 : 50
0.27
3.39
11.2
1.4
7.0
0.54
0.6
1.1
異 常 な し
90 : 10
0.49
2.18
37.3
6.4
1.1
0.22
0.3
3.0
異 常 な し
ー
70 : 30
0.52
3.39
54.2
7.4
4.2
0.41
0.3
3.2
異 常 な し
ド
50 : 50
0.43
3.00
56.8
6.0
3.5
0.38
1.0
4.5
異 常 な し
90 : 10
0.59
1.77
49.4
9.4
2.1
0.25
1.6
4.5
異 常 な し
70 : 30
0.60
2.75
96.5
11.2
3.5
0.38
1.3
6.7
異 常 な し
50 : 50
0.58
1.93
152.5
14.1
50
3.8
0.49
2.2
9.5
異 常 な し
5 ∼ 13
184 以 上
31 以 上
−
12.0 以 下
0.5 以 下
3.1 以 上
51 以 上
−
133 以 上
26 以 上
2.0 以 上
41 以 上
82 以 上
20 以 上
1.5 以 上
31 以 上
255 以 上
20 以 上
4.1 以 上
41 以 上
153 以 上
13 以 上
3.1 以 上
31 以 上
51 以 上
10 以 上
2.0 以 上
20 以 上
炭
ボ
0.3
(%)
曲げ強さ
0.4
0.5
P
18 タ イ プ
0.40 ∼
B
13 タ イ プ
0.90
8タイプ
M
25 タ イ プ
0.35 ∼
D
15 タ イ プ
0.80
F
5タイプ
5 ∼ 13
28
−
12.0 以 下
0.4 以 下
−
⑥剥離強度,木ネジ保持力については,他の木質系材
全体的には現在建築材料として用いられる石膏ボード
料と比べて著しく劣り,石膏ボードと同等であった。
と比べ,大きな違いは見られないものの,今後遮音材
その結果,炭化物ボードの一般物性は低密度繊維板
料としての性能を付与することによる材料の代替化の
(IB:インシュレーションボード )
と同等であり,更
可能性が考えられる。
に吸湿,吸水による体積膨張率が低く,耐水,耐熱性
3−3
に富む事が判明した。
熱的特性
2−3−2(2)において実施した結果を表-3に示す。
従って,RSP事業の中では,用途展開として,
表-3より炭化物ボードは他の材料に比べ熱伝導率が
IB に準じた天井材,畳床や各種芯材 (乙 種 防 火 戸 の 不
小さいことが分かる。特に当該方法では電気伝導度が
燃芯材を目標に検討する事とし,その機能性調査と
)
高い炭化物や金属が混在する場合,熱伝導率の値とし
して吸放湿性,遠赤外線効果,保温効果,防音効果,
ては高くなる傾向があるが,非導電体である木質材料
熱的特性,悪臭吸着能力,防黴特性試験を行った。
に比べて小さいことから,より低いことが推察され
3−2
る。更に,圧密化された表面に比べ内部は粗であるこ
遮音性能
2−3−2(1)の炭化物ボードの遮音性能測定において
とから,より熱伝導率が低いことが考えられる。
得られた測定結果を,図-1に示す。
従って,このことから,定常法による絶対的な測定
今回,試験に用いた炭化物ボードは,供試体である
による効果が期待されたため,建材試験センターにお
木質系材料や,市販石膏ボードと比べた場合,合板を
いて同材料を測定した。その結果を表-4に示す。ま
除き音響透過損失挙動に大きな差は見られなかった。
た,表-3,No.2の材料に定常法値として記載したも
生活環境において人の話す音域としてのレベル(中音
のが近傍の値である。
域:400−800Hz)の領域2) では,炭化物ボードはパー
表-3と表-4を比較する。表-3のNo.2では定常法
ティクルボードを除き,他のボードに対して優位性が
に比べてプローブ法は測定値が高くなる傾向を示す。
うかがえ,さらに,2kHz−4kHzの高音域3 ) においても
No2とNo3より硼砂処理による材表面の熱伝導率が低く
遮音効果に優位性が見られた。一方,一部の領域にお
なっており,顕微鏡観察行ったところ硼砂が炭化物表
いては合板は突出した遮音効果を持つことが分かった。
45.0
40.0
35.0
30.0
25.0
20.0
15.0
10.0
5.0
0.0
6300
5000
4000
3150
2500
2000
1600
1250
1000
800
630
500
400
CHボード
GB
MDF
PB
合板
N-ply(9mm)
315
TRANSMISSION LOSS (dB)
音響透過損失
FREQUENCY (Hz)
図-1
諸材料による音響透過損失
( CH ボード;炭化物ボード,GB ;石膏ボード,MDF ;中質繊維板,PB ;パーティクルボード,合板,N-ply ;積層合板)
面を覆っていることから,硼砂結晶は炭化物に比べ熱
を行ったものである。その結果,既存の木質系材料と
伝導性が低いことが推察される。また,No.3に比べNo.
比較し遠赤外線放射率,熱伝導率,吸放湿性,耐水性
4,No.5が高いのは設定不燃材料の熱伝導率が0.7∼0.
等において優位性がある事を見出し,このこと並びに
8であるためと云える 。当該データの比較により炭化
コスト的観点から,現在の用途の中で代替可能な対象
物ボードが,他の汎用木質系住宅材料に比較し断熱性
としては,防火トビラ用材,天井材,畳床などが考え
能が優位であると云える。
られる。
4
5
4)
まとめ
本研究では炭化物や繊維材料を液体に分散させ,こ
参考文献
1)樋口光夫,岡本大亮:廃木材炭化物からの軽量ボー
の中で粒状バインダーを生成することによる素材の機
ド,木材学会誌,Vol.44,No.3,p178-183(1998)
能保持を目指した新規の炭化物成形化技術に取り組み,
2)福田,奥田:騒音対策と消音設計,共立出版
これの特性把握を基に,工業的製造可能性,並びに製
3)日本建築学会編,遮音性能基準と設計指針
品の用途展開可能性を明確にするため種々の特性評価
4)岡野他,木材居住環境ハンドブック,㈱朝倉書店,
表-3
プローブ法による熱伝導率測定
No
熱伝導率
熱伝導率
文 献 値 *
(W / mk)
(kcal / m ・ hr ・ k)
(W / mk)
1
炭化物ボード(木炭/パルプ=50/50)
0.168
0.144
2
炭化物ボード(木炭/パルプ=70/30)
0.116
0.099 0 . 0 8 (定 常 法 値 )
3
炭化物ボード(木炭/パルプ=70/30)
0.105
0.090
0.125
0.108
0.119
0.102
0.210
0.181 0 . 1 1 ,
:硼 砂 処 理 品
4
炭化物ボード(木炭/パルプ=70/30)
硼砂+100mesh
5
炭化物ボード(木炭/パルプ=70/30)
硼砂+200mesh
6
pass不燃粉末混入処理
pass不燃粉末混入処理
MDF
0.13(湿潤60%)
7
パーティクルボード
0.204
0.175 0 . 1 5 ,
0.17(湿潤60%)
8
合板
0.194
0.167 0 . 1 5 ,
0.18(湿潤60%)
*
建築設計資料集成(日本建築学会編)
表-4
定常法による熱伝導率測定
平均温度(℃)
熱伝導率(W/m・k)
熱伝導率(kcal/m・hr・℃)
9.6
0.0761
0.0654
19.7
0.0791
0.0680
29.9
0.0817
0.0703
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