超臨界水酸化方式全有機炭素(TOC)分析計

セントラル科学株式会社技術資料
◇TOC計製品紹介ページはこちらをクリック願います。
当社サイト内 http://www.aqua-ckc.jp/product2/toc.html#top
CP03-200-05-005
アットライン TOC 測定により医薬品製造における洗浄確認および
製品切り替えのコストを92%削減
課題
化学療法の影響を最少にする生命を維持させるタンパク質の代表的なバイオ医薬メーカーが、洗浄バリデー
ションの課題に取り組みました。この企業のしっかりとバリデートされた生産設備には、そのプロセスが円滑・
安全に、かつコスト効果が高く稼働出来るように最新のテクノロジーが用いられておりました。例えば、洗浄
確認と製品切り替えのときに日常作業として行うスワブサンプル分析のために、非常に特異的な HPLC 法の
代わりに、非特異的な分析法である全有機炭素(TOC)分析を使うことによって相当なコスト節減ができること
をこの企業は既に理解しておりました。
この企業ではまた、その生産プロセスに使われているタンパク質の精製カラム上の 4 カ所でワーストケースに
おけるチャレンジ物質に対して TOC をバリデートするプロセスを進めているところでした。4 週間かけた試験的
なバリデーション検討によれば、洗浄確認(日常的な確認および製品切り替えに対して)をラボ分析のプロトコ
ルに従って行えば、洗浄確認のコストに 54,000 ドルが余分にかかると見積もられ、現状の運転を継続すれば、
洗浄確認のためのコストは年間 500,000 ドルを超えると見込まれました。
些細なプロセスではありませんが、ラボで洗浄サンプル水を取り扱うには、大変に非生産的で大きな労働力
を必要とする時間がかかります。しかしながら、洗浄確認のためのコストはラボ分析技術者の域を超えサンプ
リングのために製造エリアをまわり、サンプルを採取し、それをまたラボに持ち帰ることまで含みます。試験用
の分析計が利用できるとして、作業者はサンプルを分析計にかけ、分析が終了するまでのプロセスを待ちま
す。結果が得られたら、その結果をラボ及び生産機器のノートブックに記入しレポートを完成させるためにさら
なる時間が必要です。図 1 の左側に、この現状の手順が示されています。
この企業では、4 週間の間に、精製カラムの 4 カ所から得られる合計 371 サンプル(洗浄確認および製品切り
替えのために必要なサンプル)を試験するために 895 時間が必要であると計算しました。これらのサンプルの
ためのコストは 53,700 ドルと見積もられました。さらに、試験結果をラボから製造現場に持ち帰るには 48 時間
がかかり、これは製造スケジュールの大きな割合を占めます。この結果、ラボ分析を見直し、よりコストのかか
らない方法を模索することとなりました。
対策
色々な代替案が検討され、アットライン TOC 分析を行うことが決定されました。オンラインサンプリングと似て
いますが、アットラインサンプルはプロセスフローの近くで(しかしプロセスフローの中でないところで)取られ、
ポータブル分析計を使用して各スポットで分析が行われます。図 1 の右側はこのことを示しており、この方法
が TOC サンプリングプロセスにおいて、付加価値がなくコストのかかるステップを実質的に削除するものであ
ることを示しています。結果はちょうど 30 分で得られ、作業者は結果を製造記録に記録するだけです。
この企業は、GE アナリティカル・インスツルメンツ社製造の Sievers 900 ポータブル型 TOC 分析計を以下の3
つの理由から選択しました。
まず、TOC分析法(Sieversの湿式UV酸化+ガス透過膜式導電率測定法)が既に自社のラボでバリデート
されたものであったためこの分析技術を採用する方が、都合が良かったことです。またFDAはアットライン測
定を支持(1) していますので、文書化やレポーティングに対する要求は非常に手間を要しないこともこの分析
計の選択を促すものでした。製造チームがサンプルをとり、それを分析計にかけ、結果を速やかに文書化し
ます。品質管理(QC)グループが結果を伝え生産設備を承認するのを待つ必要がないわけです。アットライン
TOC測定は、サンプリング方法をラボから外に出し、製造フロアへと移動させます。
2 つめの理由は 900 ポータブル型の分析結果がラボ分析結果と同等以上に良かったということです。洗浄
1
1
セントラル科学株式会社技術資料
現状の TOC サンプリングマップ
アットライン TOC 測定実施後
製造部門
品質管理部門サンプル管理
洗 浄確 認
サンプル
数の決定
TOC サン
プル提出
様 式の 作
成
サンプリ
ング準備
(ラベル・
スワブ付)
製 造機 器
に原料投
入・製造
プロセス
製 造機 器
から製品
取り出し、
移送
サンプリ
ング準備
(ラベル・
スワブ付)
製 造機 器
運 転準 備
(ロット番
号割付)
製 造機 器
に原料投
入・製造
プロセス
製 造機 器
から製品
取り出し、
移送
製造機器
の洗浄
サンプリン
グ、分析、結
果確認のた
めに待機
製造部門
製 造機 器
運 転準 備
(ロット番
号割付)
製造機器
の洗浄
サンプリン
グ、分析、結
果確認のた
めに待機
SOP に従
って TOC
サンプル
収集
品質管理部門分析グループ
SOP に従
って TOC
サンプル
収集
TOC サン
プルを品
質 管理 部
門に送付
SOP に従
い TOC 分
析の実行
TOC 測定
結果待ち
合格
品質管理部門サンプル管理
サンプル
受取り、
サンプル
番号記録
SOP に従
い TOC 分
析の実行
不合格
TOC 試験
結 果の 記
録
合格
不適合事例
報告の作
成・品証部
への通知
結果の
承認
プラント品質保証
不 合格 原
因 の調 査
と対応実
行
不合格
製品品質への影響
評価、不合格製品
ロットの隔離また
は排除
最終洗浄サ
ンプルの承
認、生産へ
の機器の使
用許可
合格
TOC 試験
結 果の 記
録
不合格
最終ドキュメ
ントの承認と
レビュー
プラント品
質保証部
門へ通知
プラント
品質保証
不 合格 原
因 の調 査
と対応実
行
不合格
合格
製品品質へ
の影響評価、
不合格製品ロ
ットの隔離ま
たは排除
最終洗浄サン
プルの承認、
生産への機
器の使用許
可
最終承認
TOC サン
プルの承
認と記録
製 造部 門
へ の結 果
通知
最終ドキ
ュメントの
承認とレ
ビュー
図 1 サンプリングプロセスマップ
待ち時間 = 価値を
創出しない無駄時間
バリデーションサンプル水を測定する前に、標準化またはシステム適合性試験を実施して測定結果の検証が
ラボで行われました。都合よいことに、900 ポータブル型 TOC 分析計をアットラインで使用するときの手順は
同じであり、試験結果により TOC 測定法が同等であることが示されました。
3 つめの理由は分析計及び測定方法についての知識を製造現場スタッフに伝えることでした。しかしながら、
製造エリアの作業者が分析計に慣れ親しむ様になるにはわずか 60 分のトレーニングと技能認定の講習で十
分でしたので、このことは問題にはなりませんでした。
2
2
セントラル科学株式会社技術資料
結果
変更管理評価や文書化等の必要な作業を実施後、こ
の企業では 900 ポータブル型 TOC 分析計を認証後直
ちに大きなコスト削減効果を見ることができました。分
析計がポータブル型であるために、製造グループは製
造現場の多くの場所でサンプル分析を行うことができま
した。この分析計にとってのトータルコスト、すなわちバ
イアルやスワブ、標準液のコストと、装置のバリデーシ
ョンのための年間コストは、わずか 40,000 ドルであり、
これはラボ試験に対して見積もられた 50,000 ドルよりも
大きく下回るものでした。
この企業はラボベースの TOC 試験のコストと、これ
までにアットライン TOC 分析に対して集めたコストデー
タを比較しました。この結果、TOC 分析をラボから出し
て製造フロアに移動させることによって、洗浄確認およ
び製品切り替えのための年間のサンプリングコストを
92%も削減することができると見積もられました(図 2)。
さらに、QC グループや製造グループの人たちは時間を
もっと有効に使うことが出来ました。製造プロセスはだ ら
だらとした遅れを受けることもなくなり、作業者は分析結
果をリアルタイムに文書化することができ、高いレベルの
確信をもってバリデーションパッケージと製品切り替え記
録を迅速に受け入れることができる様になりました(図
3)。
この企業の戦略構想の一つは、製造プロセスを FDA が
推奨する Process Analytical Technology (PAT)を推進して
いくことです。PAT は最終製品の品質を保証する製造の
ための枠組みです。医薬品産業ではプロセス変更の管理
及び文書化は困難なことですが、この企業では、変更は
優れた取り組みの一つである、つまり最新かつ革新的で
あるための一つであるということが認識されています 。
FDA はその PAT 推進が医薬品産業にアットライン TOC
の様な新技術を構築し実行させることを促進していくもの
であると考えています。
文書作成・報告
(Hours)
測定準備、サンプ
ル採取及び分析
ラボ
アットライン
洗浄確認
ラボ
アットライン
製品切り替え
図 2 アットライン TOC で 92%のコスト削減
アットライン
TOC が 不 稼
動時間を削減
作業時間:
有付加価値
待機・浪費時間:
無付加価値
図 3 アットライン TOC でサイクルタイムが短縮
コストがかかり、無駄な時間を消費する人の動きに代
えてアットライン測定法により、この企業は洗浄確認のプロトコル変更を首尾良くかつ簡単にバリデートするこ
とができました。アットライン TOC 測定法は PAT の枠組みを実行していく上でコストのかからない方法である
ことが示されました。
(1) Federal Drug Administration, “Guidance for Industry PAT – A Framework
for Innovative Pharmaceutical Development, Manufacturing, and Quality
Assurance” 2004, http://www.fda.gov/cder/guidance/6419fnl.pdf
-製品についてのお問い合わせ-
セントラル科学株式会社
* Sievers は GE Analytical Instruments が製造・提供する全有機炭素(TOC)分析計の
〒113-0033 東京都文京区本郷 3-23-14 ショウエイビル
ブランド名です。
(原文タイトル”At-line TOC reduces cleaning verification and product changeover
costs by 92% for pharmaceutical Manufacturer” 翻訳及び文責:セントラル科学株式
会社、2009 年 1 月)
3
3
TEL 03-3812-9186 FAX 03-3814-7538
Eメール:[email protected]