社会科学習指導案(地理的分野)

社会科学習指導案(地理的分野)
平成23年10月6日(木)第5校時
2年2組 教室 指導者 角田 朊代
授業の視点
温帯に属する日本の気候に地域差が生じる原因について、予想して、個人で考え、グループで話し合い、自
分の言葉でまとめるという言語活動を取り入れ、その過程において生徒の学習状況に応じて助言を行ったこと
は、気候の特色を地理的条件や地形などと関連づけて考察させるために有効であったか。
1.単元名
1
世界と日本の自然環境 (第三編 世界から見た日本のすがた)
2.考察
(1)教材観
本単元は、学習指導要領に示された(3)
「世界と比べて見た日本」の「ア 様々な面からとらえた日本」
の中の「
(ア)自然環境から見た日本の地域的特色」を取り扱う。 ここでは、日本の地域的特色を、地形・
気候・災害などの自然環境の面から世界と比較し、関連付けて学習する。世界的視野から日本をひとつの
地域としてとらえることと、大まかな日本国内の地域差を追求することによって、国土の特色を理解させ
ていく。
世界的視野から日本の自然環境を見ると、次のようなことが分かる。一つ目は、世界には大地が不安定
な地域もあれば安定した地域もある中で、日本は環太平洋造山帯に属して地震や火山の多い不安定な大地
上に位置していることである。二つ目は、世界を気候や植生に着目してみると、熱帯から、寒帯、砂漠か
ら森林におおわれた地域まで見られる中で、日本の多くの地域は温帯に属し、降水量も多く、森林、樹木
が成長しやすい環境にあることである。三つ目は、日本の国土は海に囲まれ多くの島々から構成されてお
り、近海は海底に大陸棚が広がり、寒暖の海流が出会い世界的な漁場となっていることである。
国内の地形や気候の特色、防災への努力を取り上げると、次のようなことが分かる。一つ目は、地形的
にはフォッサ・マグナを境にして西南日本には東西の方向に、東北日本には南北の方向に背骨のように山
脈が走っていることである。二つ目は堆積平野の特色をもった規模の小さな平野が臨海部に点在している
ことである。
三つ目は海岸線では砂浜海岸や岩石海岸などから構成され多様な景観がみられることである。
四つ目は、気候的に見ると、南と北、太平洋側と日本海側、内陸部と臨海部とで、気温、降水量とその月
別の変化などに違いが見られ、それらを基にして各地の気候を比較するといくつかに気候区分できること
である。
五つ目に、
自然災害の面からみると地震や台風などの多様な自然災害の発生しやすい地域が多く、
そのために、人々は早くから防災対策に努めてきたことである。
これらを学ぶ中で、分布図、雨温図、写真、地形図、グラフなどの多種多様な資料に触れることになる。
資料の読み取りの過程の中で、課題や目的に応じて資料を読み取る力の育成を図ることができる。また、
読み取ったことを基に、地域間を比較したり、既習事項と関連付けたりすることで、地理的に考察する力
の育成を図ることができる。今年は、東日本大震災や、大きな台風の影響による豪雨・土砂災害など、大
きな自然災害が発生したため、それらを取り上げることで防災への関心を高めることになると考える。
本単元は、
「世界と日本の食文化」
、
「世界と日本資源と産業」
、
「さまざまな視野から見た日本」とも関連
が深い。本単元で日本の地形や気候の特色をつかむことにより、今後の学習でそれらと食文化や産業など
を結びつけて考えることができるだろう。
以上のことから、本単元は「世界的視野から見た日本の地域的特色と日本全体の視野から見た国内の諸
地域の特色を追求し、我が国の国土の特色を大観させるとともに、地域の規模に応じて、また、地域間を
比較し関連付けて、地域的特色を明らかにする視点や方法を身につけさせる」上で、重要であると考える。
(2)教材の系統
小学校第5学年
地理的学習
3
わたしたちの国土と環境
第1学年
第2学年
<世界と日本の地域構成>
<地域の規模に応じた調査>
・地球のすがた
・世界の国々の調査
第3学年
公民的分野
・世界のすがたとさまざまな地域
<世界から見た日本のすがた>
地球社会とわたしたち
・日本のすがたとさまざまな地域
さまざまな面から見た日本
<地域の規模に応じた調査>
・さまざまな視野から見た日本
・身近な地域の調査
・都道府県の調査
歴史的分野
3.指導方針(◎は言語活動の充実に関するもの)
○丁寧に資料を読み取り、資料を根拠にした授業展開に努めることで知識を暗記するだけの学習にならな
いようにする。
○グラフや統計資料を使う際には、それらの読み方を全体で確認してから、個人の活動に入ることで、資
料の読み取りに苦手意識をもっている生徒も安心して活動ができるようにする。
○ICT を活用し、写真などの資料を拡大表示することにより全体で確認しながら進めることができるよう
にする。
○地図に色をぬったり、実際にグラフを書いたりといった作業を積極的に取り入れることで、グラフや地
図に対する抵抗感を和らげることができるようにする。また、自分達で作った資料を使うことで、学習
への関心を高めることができるようにする。
○県内、市内で起きた自然災害を写真や新聞などで紹介することで、自分たちも被災する可能性があるこ
とを意識できるようにする。
◎既習事項や本単元の学習内容を相互に関連付けてまとめさせながら、因果関係を頭の中で結びつける展
開をすることで、推理したり予測したりする思考を促すことができるようにする。
◎話し合いをする際には、自分の意見をもつことができるようにグループになる前に個人で考える時間を
確保する。
◎意見を出す場面では、考えるヒントとなる資料を用意したり探させたりして、資料をもとに考えること
ができるようにする。
◎発表の際には、資料から読み取ったことと、そこから分かったことをわけて発表できるようにする。
◎新学習指導要領では「思考・判断・表現」が一つの評価の観点として示されている。思考・判断した過
程や結果を言語活動を通じて、生徒がどのように表出しているかという視点で、生徒がまとめた文章や
発言を捉えるようにする。
【授業中の生徒指導】
①多面的な生徒理解
机間指導をしながら、ワークシートへの記述などで学習状況を理解し、肯定的な言葉を投げかけたり、作
業が遅れている生徒にはヒントとなる声かけをしたりして、励ますように心掛ける。
②自己存在感や自己決定の場
発言・発表の場を多く設定したり、自分の意見に近いものに挙手をさせたりすることで全ての生徒が自分
の意見を表現できるようにする。
③共感的な理解
友達の意見をきちんと聞く態度を高めるとともに、教師は生徒の発言を肯定的に受け止め、その発言を生
かして授業を進められるようにする。
④人権教育への配慮
指名の際に「さん」
「くん」をつけて呼ぶ。
4.単元の目標
世界的視野から見た国内の地形や気候の特色、自然災害と防災の努力を取り上げ、日本の地形や気候
の特色、海洋に囲まれた日本の国土の特色を理解することができる。
5.評価規準
<社会的事象への関心・意欲・態度>
日本の地形や気候は、世界各国と比較して複雑であり、四季の変化などの地域差があることに関心をも
ち、災害による被害を尐なくするための方策について意欲的に追求している。
<社会的な思考・判断>
日本の自然環境の特色を世界的視野と日本全体の視野に立って多面的・多角的に追求するとともに、地
域間を比較し関連づけて考察している。
<資料活用の技能・表現>
地球儀、地図、主題図、統計資料などから、有用な情報を適切に選択し、世界と日本の地形や気候区の
分布とその成り立ちを読み取ったり、つかんだ特色を白地図や雨温図などにまとめたりしている。
<社会的事象についての知識・理解>
世界と比べた日本の地域的特色について世界的視野や日本全体の視野から見た自然環境を理解し、その
知識を身につけている。
6.学習計画及び評価計画(8時間予定 本時は7時間目)
時
学習活動
評価項目(方法)
間
下線部は主な言語活動
○はおおむね満足 ☆は十分満足
観点
関 思 技 知
1世界の地形のようす
○地震の震源地と火山が重なることに気づいてい
・世界が大きく分けて造山帯と平野からな 1
る。
っていること、日本が環太平洋造山帯に
☆地震の震源地と火山が重なることが分かり、世界
属していることを地図から読み取る。
には地震などが多く不安定な地域とそれらがな
・地震の震源と火山の分布図から分かるこ
い安定した地域があることに気づいている。
とを話し合う。
(ワークシート)
2日本の山地と海岸
○国土における山地・丘陵地の占める割合や、山
・日本の地形を世界の地形と関連させて捉
脈・山地火山の分布など日本の特色を理解してい
えるとともに地図をもとによみとった日
る。
1
本の地形について気が付いたことを話し
☆国土における山地・丘陵地の占める割合や、山脈
合い、特色を見出す。
山地火山の分布など日本の特色を理解し、代表的
・日本の周辺の海や海岸、海底の地形が様々
ないくつかの地名を身につけている。
であることを景観写真や図から読み取る。
(ワークシート)
3日本の川と平野
○教科書の図を使いながら、地形と土地利用の関係
・資料を参考に、日本の川、平野の特色を
について説明することができる。
考察する。
☆教科書の図を使いながら、地形と土地利用の関係
1
・川と平野の関連について着目し、平野に
について具体例を挙げて説明することができる。
は多様な地形が見られることをつかむ
(発表)
とともに、
地形と土地利用の関係につい
て理解し、図を使って説明する。
○
○
○
4世界の気候のようす
○五つの気候帯の特色について資料をもとに考え
○
・世界では、気温と降水量の違いから五つ
ている。
の気候帯に区分できることを理解する。 1 ☆五つの気候帯の特色について資料をもとに、気候
・気候区分図、雨温図、景観写真の読み取り
分布と地理的位置を結びつけて考えている。
をして、五つの気候帯のそれぞれの特色を
(ワークシート)
考察する。
5日本が属する温帯の特色
・三つの温帯の位置や雨温図、景観写真の
比較をして、
それぞれにみられる類似点
と相違点を話し合う。
・日本の気候は季節風の影響により四季の
変化が明瞭であるとともに、梅雨や台風
の影響を強く受けることをつかむ。
6日本の気候の地域差を見よう
・日本各地の気温と降水量の表から雨温図
を作成する。
・作成した雨温図から、気候の特色を読み
取り、言葉でまとめる。
○日本の気候に関心をもち、日本がどの温帯に属
し、どのような特徴をもっているのかを話し合っ
ている。
1
☆日本の気候に関心をもち、日本がどの温帯に属
し、どのような特徴をもっているのかを意欲的に
話し合っている。
(ワークシート・観察・発言)
○
○気温と降水量の表をもとに正確に雨温図を作成
することができる。
1
☆気温と降水量の表をもとに、正確に雨温図を作成
し、その特色をまとめることができる。
(雨温図・ワークシート)
○
・温帯に属する日本の地域が4つの気候区
○日本の気候に地域差が生じる原因について地理
分に分かれる理由を資料を使って調べ、
的条件や地形などと関連づけてまとめている。
1 ☆日本の気候に地域差が生じる原因について地理
ワークシートにまとめる。
(
本
時
)
7自然災害とその対策
・日本に見られる多様な災害を知る。
多くの自然災害に対しては、被害を尐な
くする努力がなされていることに気づ
く。
・自分たちの地域の防災について考えを発
表する。
1
的条件や地形などと関連づけるだけでなく、既習
事項とも結びつけて考えてまとめている。
(ワークシート・観察)
○防災に関心をもち、市が行っている防災や自分に
できる防災について考えている。
☆防災に関心をもち市が行っている防災や、自分に
できる防災について意欲的に考えている。
○
○
7.本時の学習
(1)本時の目標
温帯に属する4つの気候の特色を地理的条件や地形などと関連づけて考えることができる。
(2)中心となる言語活動
温帯に属する日本の気候が4つの気候区に分かれる原因を予想し、個人で考え、グループで話し合っ
たことをもとに、気候の特色と地理的条件や地形などと関連づけてまとめる。
(3)準備
教師:ワークシート 雨温図(釧路 金沢 松本 高松 高知 名瀬) テレビ デジタルカメラ
生徒:教科書 地図帳 資料集 用語集
(4)展開
時間 学習の支援及び留意事項
評価(評価方法
学習活動
1.課題をつかむ
5 ・温帯に属する4つの都市の気候の特色に着目さ
・前時をふりかえる。
分
ることで、同じ温帯でも気候が異なることに気が
①日本の気候は大きく三つに区分できる。
付くことができるようにする。
②温帯に属する金沢・松本・高知・高松の
・特に、降水量、気温が氷点下になるかという点に
気候が異なっている。
着目させ、共通点や相違点をはっきりさせること
で、それぞれの特色をつかむことができるように
する。
・板書を工夫することで既に分かっていること、こ
れから調べることが分かりやすいようにする。
本時の課題 なぜ温帯に属する4つの都市の気候に、地域差が生まれるのだろう。
その原因を調べたり考えたりしてまとめよう。
2.予想を立てる
<予想される生徒の反応>
地形 季節風 海抜高度 海流 台風
など
5 ・既習事項をもとに、どのような理由が考えられる
分
かを予想させることで説明を考える際のヒント
になるようにする。
・理由を考える際には地図帳や資料集で調べたり、
既習事項をもとに考えたりするとよいことを助
言する。
・予想意見がでなかった時は、世界の気候の気候区
分や、これまでに学習したことの中で気候に関係
がありそうなものを想起させる。
3.温帯に属する4つの都市の気候に地
35 ・グループになる前に個人で調べたり考えたりす
域差が生じる原因を調べたり考えた
分
る時間を十分確保することで、自分の意見をもつ ○日本の気候
りする。
ことができるようにする。
に地域差が生
・個人で調べる、考える。
・グループで話し合うことで、できなかった部分を じる原因につ
・グループで調べる、考える。
補足することができるようにする。
いて地理的条
<予想される生徒の反応>
・
<反応に対する支援>
件や地形など
☆温帯の気候について地理的位置や地形など ・
☆日本全体の視野から見て、気候の特色を考え
と関連づけて
と、関連づけ、既習事項を根拠として予想した ・
てまとめるように助言する。
まとめてい
り考えたりしてまとめている。
・
る。
○日本の気候に地域差が生じる原因について地 ・
○調べて分かったことだけでなく、それをもとに考
☆日本の気候
理的条件や地形などと関連づけてまとめてい ・ たことや推測したことも含めてまとめるよう助言
に地域差が生
る。
・ する。
じる原因につ
・日本の気候に地域差が生じる原因について地 ・
・予想を書いた黒板を参考にさせて、気候に影
いて地理的条
理的条件や地形などと関連づけてまとめること ・ 響をあたえそうなものを考えさせ、そのこと
件や地形など
ができていない。
・ から原因を考えるように助言する。
と関連づける
・
だけでなく、
・地図やワークシートなどをカメラでテレビに映し 既習事項とも
4.調べたことや考えたことを発表する。
出し、指しながら説明させることで より分かり 結びつけて考
やすい発表ができるようにする。
えてまとめて
・お互いの発表を聞き、更に気が付いたことや分か いる
ったことを出し合うことで、考えを深めることが 【思考・判断】
できるようにする。
(ワークシー
ト・観察)
5.温帯に属する4つの都市の気候に地
・話し合ったことをもとに、それぞれの地域の気候
域差が生じる原因をまとめる。
の特徴を自分の言葉でまとめさせることで学習
内容を確認することができるようにする。
6.本時のまとめをする。
5 ・生徒が調べたことをもとに、気候区の名称を整
分
理する。
・次時の予告をすることで、今後の学習の見通し
を持つことができるようにする。
(5)成果と課題
<成果>
○課題に対して、既習事項や調べたことをもとに考え、自分の言葉でまとめたことによって、ただの暗記
にならずに社会的事象や言語活動をふまえた知識になった。
○4つの気候の特色の根拠を地図や教科書の記述等を参考にしながら考えることができた。
○個人、グループ、全体と学習形態を変えながら話し合いの場を広げていくことで、自らの考えをより深
めることができた。
○ICT機器の活用により分かり易い発表になった。
②課題
○学習課題が多く、一通り答えを出すのが精一杯で、考えを深めるところまでいかなかったので、1つの
課題に絞り、じっくり話し合う必要があった。
○調べたことと、思考が混在してしまった
(6)ワークシート