トスカーナの休日

イタリア英語
映画タイトル
Under the Tuscan Sun(トスカーナの休日)
DVD 情報
日本で入手可/英語字幕あり (113 分)
小林めぐみ
製作年
2003 年 (アメリカ・イタリア)
監督
オードリー・ウェルズ
映画について
フランシス・ウェルズの同名小説(1996 年出版)をもとにした映画。
主要キャスト
ダイアン・レイン(フランシス役)
、サンドラ・オー(パティ役)
、リン
ゼイ・ダンカン(キャサリン役)
、ラウル・ボヴァ(マルチェロ役)
、リ
ヴィンセント・リオッタ(マルティニ役)、マリオ・モニチェリ(花を
ささげる老人役)ほか
あらすじ
他の作家の著作の批評を書くライターのフランシスはある日パーティ
ーで夫の浮気を知り、離婚でこれまで築き上げてきたものをすべて失っ
てしまう。そんなフランシスを見た友人のパティーは自分が行く予定だ
ったイタリアのトスカーナに気分転換の旅行に行かせる。フランシス
は、ツアーの途中で見かけた Bramasole という古いヴィラを衝動買いし
てしまう。そして地元の人たちやポーランドからの移民の力を借りて古
い家を修復しながら、いくつかの出会いを経験し、自分を取り戻してい
く。
英語の特徴
主人公のフランシス(ダイアン・レイン)はアメリカ英語を話しますが、
発音・文法・語
フランシスが出会うイタリア男性マルティニやマルチェロのセリフか
彙
らイタリア英語を聞くことができます。特にフランシスの最初の恋人と
なるマルチェロのセリフには、ノンネイティブらしい「間違い」も作り
こまれています。フランシスはシャンデリアを買うために訪れたローマ
をで男たちにつきまとわれ、困った末近くにいたマルチェロに話しかけ
て恋人同士を装い、男たちを追い払います。男たちが去っていくとマル
チェロは「用済み」になるのですが、マルチェロはフランセスの気を引
いて話し始めます。 “I know you think maybe I'm just trying to pull you up.”
(ぼくが君を引っ張ろうとしていると思っているかもしれないけど。
)
フランシスは、最初“pull you up”の意味がぴんと来なくて困惑しますが、
すぐに“pick you up”(ひっかけよう)の言い間違いであることに気づき、
微笑むのです。このように、ノンネイティブらしい言い間違いがフラン
シスの心を和ませる道具として使われています。音声面では、think が
thing のように聞こえますが、これは、/k/など軟口蓋子音の前に来る/n/
が[ŋ ] に鼻濁音化するイタリア語の影響と言えるでしょう。
(c) 世界の英語を映画で学ぶ研究会
http://eureka.kpu.ac.jp/~myama/worldenglishes/
次のマルチェロのセリフにもイタリア語の影響を受けた発音が出て
きます。“You're probably one of those crazy American women like "Charlie's
Angels," and you are going to kung-fu me in the head and steal my car. But I'm
willing to take the chance.” (君は『チャーリーズ・エンジェル』のような
クレイジーなアメリカ人女性で、ぼくの頭にカンフー蹴りをいれて車を
盗んでいくかもしれない。でも当たって砕けろと思って。)
まず強弱のストレスが弱く、一つ一つの音節がほぼ同じ長さで発音さ
れているのが全体的な印象です。そして like がライカのように母音を伴
って発音されています。このような母音挿入はよく見られる現象です
が、音節が母音で終わることの多いイタリア語の話者の英語にもこのよ
うな母音挿入がよく起こります。他には car の発音が呼気音を伴わない
[k]となっているなどの特徴が挙げられるでしょう。
なお、映画にはフランシスが購入した家の改修工事を請け負ったポー
ランド移民が 3 人出てきます。そのうち英語が話せるパヴェウ役を演じ
たパヴェウ・シャイダ(Pawel Szajda)は、アメリカ生まれですが、両親は
ポーランド出身。ポーランド訛りをうまく演じていると考えられます。
映画のみどこ
トスカーナ地方は花の都フィレンチェを始めとしてピサやシエナなど
ろ
多くの世界遺産のある観光地です。すばらしい自然の景観にも恵まれ、
トスカーナのヴィラといえば、多くのアメリカ人にとって理想のヴァカ
ンス先でしょう。また、マルチェロはまさにアメリカ人が抱く偶像化さ
れたイタリア人男性と言えます。マルチェロとフランシスの会話でも
“It's just that's exactly what American women think Italian men say.”(それっ
てアメリカ人女性の考えるイタリア人男性が言いそうなこと)。“That is
exactly the kind of thing we Italian men think American women say.”といった
セリフが出てきます。その他アメリカ人に対するステレオタイプも見受
けられます。例えばフランシスがヴィラを買い取ろうと Bramsole を訪
れた際、持ち主の老婦人は先に交渉に来ていたドイツ人夫妻との話を白
紙に戻し、最終的にフランシスに家を譲ることに決めるのですが、その
ときドイツ人夫妻はドイツ語で「欲張りででしゃばりなアメリカ人」と
フランシスを詰って去っていくのです。なお、老婦人がフランシスを選
んだのは、フランシスの頭に鳥の糞が落ちたことを天のお告げと考えた
からです。日本でも「ウン(運)がつく」と考えてよいことと捉えます
が、イタリアでも鳥の糞が頭に落ちたら幸運の印と捉えるそうです。以
上、ステレオタイプもありますが、外国人(アメリカ人)の目からイタ
リアの文化を学べるという点で興味深い映画と言えるでしょう。
イタリア英語
(c) 世界の英語を映画で学ぶ研究会
http://eureka.kpu.ac.jp/~myama/worldenglishes/
映画タイトル
Under the Tuscan Sun(トスカーナの休日)
DVD 情報
日本で入手可/英語字幕あり (113 分)
小林めぐみ
製作年
2003 年 (アメリカ・イタリア)
監督
オードリー・ウェルズ
映画について
フランシス・ウェルズの同名小説(1996 年出版)をもとにした映画。
主要キャスト
ダイアン・レイン(フランシス役)
、サンドラ・オー(パティ役)
、リン
ゼイ・ダンカン(キャサリン役)
、ラウル・ボヴァ(マルチェロ役)
、リ
ヴィンセント・リオッタ(マルティニ役)、マリオ・モニチェリ(花を
ささげる老人役)ほか
あらすじ
他の作家の著作の批評を書くライターのフランシスはある日パーティ
ーで夫の浮気を知り、離婚でこれまで築き上げてきたものをすべて失っ
てしまう。そんなフランシスを見た友人のパティーは自分が行く予定だ
ったイタリアのトスカーナに気分転換の旅行に行かせる。フランシス
は、ツアーの途中で見かけた Bramasole という古いヴィラを衝動買いし
てしまう。そして地元の人たちやポーランドからの移民の力を借りて古
い家を修復しながら、いくつかの出会いを経験し、自分を取り戻してい
く。
英語の特徴
主人公のフランシス(ダイアン・レイン)はアメリカ英語を話しますが、
発音・文法・語
フランシスが出会うイタリア男性マルティニやマルチェロのセリフか
彙
らイタリア英語を聞くことができます。特にフランシスの最初の恋人と
なるマルチェロのセリフには、ノンネイティブらしい「間違い」も作り
こまれています。フランシスはシャンデリアを買うために訪れたローマ
をで男たちにつきまとわれ、困った末近くにいたマルチェロに話しかけ
て恋人同士を装い、男たちを追い払います。男たちが去っていくとマル
チェロは「用済み」になるのですが、マルチェロはフランセスの気を引
いて話し始めます。 “I know you think maybe I'm just trying to pull you up.”
(ぼくが君を引っ張ろうとしていると思っているかもしれないけど。
)
フランシスは、最初“pull you up”の意味がぴんと来なくて困惑しますが、
すぐに“pick you up”(ひっかけよう)の言い間違いであることに気づき、
微笑むのです。このように、ノンネイティブらしい言い間違いがフラン
シスの心を和ませる道具として使われています。音声面では、think が
thing のように聞こえますが、これは、/k/など軟口蓋子音の前に来る/n/
が[ŋ ] に鼻濁音化するイタリア語の影響と言えるでしょう。
次のマルチェロのセリフにもイタリア語の影響を受けた発音が出て
きます。“You're probably one of those crazy American women like "Charlie's
(c) 世界の英語を映画で学ぶ研究会
http://eureka.kpu.ac.jp/~myama/worldenglishes/
Angels," and you are going to kung-fu me in the head and steal my car. But I'm
willing to take the chance.” (君は『チャーリーズ・エンジェル』のような
クレイジーなアメリカ人女性で、ぼくの頭にカンフー蹴りをいれて車を
盗んでいくかもしれない。でも当たって砕けろと思って。)
まず強弱のストレスが弱く、一つ一つの音節がほぼ同じ長さで発音さ
れているのが全体的な印象です。そして like がライカのように母音を伴
って発音されています。このような母音挿入はよく見られる現象です
が、音節が母音で終わることの多いイタリア語の話者の英語にもこのよ
うな母音挿入がよく起こります。他には car の発音が呼気音を伴わない
[k]となっているなどの特徴が挙げられるでしょう。
なお、映画にはフランシスが購入した家の改修工事を請け負ったポー
ランド移民が 3 人出てきます。そのうち英語が話せるパヴェウ役を演じ
たパヴェウ・シャイダ(Pawel Szajda)は、アメリカ生まれですが、両親は
ポーランド出身。ポーランド訛りをうまく演じていると考えられます。
映画のみどこ
トスカーナ地方は花の都フィレンチェを始めとしてピサやシエナなど
ろ
多くの世界遺産のある観光地です。すばらしい自然の景観にも恵まれ、
トスカーナのヴィラといえば、多くのアメリカ人にとって理想のヴァカ
ンス先でしょう。また、マルチェロはまさにアメリカ人が抱く偶像化さ
れたイタリア人男性と言えます。マルチェロとフランシスの会話でも
“It's just that's exactly what American women think Italian men say.”(それっ
てアメリカ人女性の考えるイタリア人男性が言いそうなこと)。“That is
exactly the kind of thing we Italian men think American women say.”といった
セリフが出てきます。その他アメリカ人に対するステレオタイプも見受
けられます。例えばフランシスがヴィラを買い取ろうと Bramsole を訪
れた際、持ち主の老婦人は先に交渉に来ていたドイツ人夫妻との話を白
紙に戻し、最終的にフランシスに家を譲ることに決めるのですが、その
ときドイツ人夫妻はドイツ語で「欲張りででしゃばりなアメリカ人」と
フランシスを詰って去っていくのです。なお、老婦人がフランシスを選
んだのは、フランシスの頭に鳥の糞が落ちたことを天のお告げと考えた
からです。日本でも「ウン(運)がつく」と考えてよいことと捉えます
が、イタリアでも鳥の糞が頭に落ちたら幸運の印と捉えるそうです。以
上、ステレオタイプもありますが、外国人(アメリカ人)の目からイタ
リアの文化を学べるという点で興味深い映画と言えるでしょう。
(c) 世界の英語を映画で学ぶ研究会
http://eureka.kpu.ac.jp/~myama/worldenglishes/