平成 22 年度 PIANC-Japan 活動報告会

平成 22 年度
PIANC-Japan 活動報告会
平成 22 年 6 月 22 日
国 際 航 路 協 会 日 本 部 会
平成 22 年度 PIANC-Japan 活動報告会
平成 22 年 6 月 22 日
15:00~16:45
東海大学校友会館
1)
国際航路協会
年次総会・コングレス出席(リバプール)報告
(15:00~15:20)
柳生
2)
忠彦
寛
茂
セミナーセッション
鈴木
(15:20~15:45)
分割構造研究事務所
B 概要報告
セミナーセッション
上田
4)
事務局長
A 概要報告
セミナーセッション
佐藤
3)
PIANC-Japan
いであ(株)
C 概要報告
所長
(15:45~16:10)
技術顧問
(16:10~16:35)
高二朗
(独)港湾空港技術研究所 海洋環境情報研究チームリーダー
5)
セミナーセッション
高山
D
知司
概要報告
(16:35~17:00)
(財)沿岸技術研究センター
参与
PIANC
P A C AGA 2010
0 0、Congress
C g ess MMX Liverpool
v rpo l
PIANC AGA 2010
PIANC Congress MMX
Liverpool 報告
平成2
年6月22日
平成22年
22日
PIANC-J
A
-Japan
an
事務局長 柳生忠彦
忠彦
PIANC
I NC AGA
AG 2010、Co
20 0、Congress
ess MMX
X Liverpool
ive poo
PIANC
MMX
P A C AGA
GA 20100、Congress
C
r
X Liverpool
r
l
会場
リバプール市街図
PIANC AGA
A A 2010、C
20 0、Congress
s MMX
X Liverpool
Liv po
リバプールのシンボルとなっている建物
PIANC
PI C AGA
GA 2010
2 0 Liverpool
L r
l
プログラム : 2010年5月10日、 8:30~16:00
1.A
1.AGA
A ‘09 議事録承認
議事
2.会長、事務局長報告
2.会長 事
報告
3.財務報告
4.委員会委員長報告
4.委員
長報
5.承認事項
5.承認
会場ホール
1
PIANC AGA 2010
Liverpool
0
Live poo
PIANC
P ANC AGA 2010
010 Liverpool
iverpool
6.National
6.
a Section
S t on 表彰
7.De
7.De PaepePaepe-Willems 賞表彰
8.IAPH
8.
H 成瀬事務局長挨拶
事務
拶
9. 各国部会報告
各
告
10.今後の国際会議等
総会での会長挨拶
PIANC
I NC AGA 2010
20 0 Liverpool
Li po
PIANC
P A C AGA
GA 20100 Liverpool
verpool
2.会長、事務局長報告
2.会長 事
報告
・ 水運の重要性は益々高くなっている。
要性は益
なってい
・ 新会員(ロシア、アルジェリア、メキシコ、パナマ)
ェ
・ 会長公選;2011
年(立候補締切;2010
2010年
年9月)
会長公選;2011年(立候補締切;
・ 印刷物の電子化による費用の節減
・ Histo
History Bookの発刊
・ WG報告作成状況
・ プラチナ会員(イタリア(4/10
)、あと6枠あり)
プラチナ会員(イタリア(4/10)
・ 会費納入状況
状況
総会での日本代表団
PIANC
IANC AGA 2010
20 0 Liverpool
Liv p
PIANC
PI C AGA
GA 2010
2 0 Liverpool
L r
l
3.財務報告
3.財
4.委員会委員長報告
・ 2009年の財務状況は当初予想より14%UP
2
況は当
14%UP
・ 事務局長の常勤化(2013年以降)に向けた財政
事務局長の
201
) 向け
強化のためのため、来年の会費値上げ;
年の会費
個人:€
€ 900
→ € 955
団体:€
€ 450
5
→ € 475
7
政府:€
€ 1,800
,8 0 → € 1,900
1 0
・ Corporate
C
o te Funds;開発途上国の参加者への
n s;
国の参加
補助(オランダ、ベルギー、ポルトガル、イギリス)
オ
ダ
トガル、イ リ
・ InCom,MarCom,EnviCom,RecCom,
CoCom各委員長からのWG活動報告
・ マリーナデザイン賞はフロリダのマリーナに決定
5.承認事項
(1) 副会長の選任
Srivastava氏(
インド)が選任された。(その他の
S i stav
が選任
立候補;フランス、アメリカ)
立候 フ
アメ
2
PIANC AGA 2010
Liverpool
0
Live poo
(2)
Resolution
Liverpool
2) PIANC
I
R o ti
Li e o l 2010
10 採択
(3)
3) 規定改定
定
・ Congress
e の余剰金は開催国とPIANC本部で
開催国と I
PIANC
P A C AGA 2010
0 0 Liverpool
v rpool
6.National
6.N i al Section
S
o 表彰
・ ExComでの投票の結果ベルギーが受賞(その他
o
そ
の立候補は、オランダ、アメリカ)
の立
ン 、
リカ)
折半にする。
半に る
・ 会費額は変更に対応し易くする為、別表とする
る
(4)
)
4) 戦略計画(
画(2010~2013)
0 0
7.D
7.De Paepeaepe-Willems
W lle s 賞表彰
彰
・ ベルギー人の
ル
人 Reportが受賞
p tが受賞し、発表が行われた。
れた
賞金は€
5,000
賞金
,
・ 特に財務的な計画は承認
財務的な計
8.IAPH
8.I P 成瀬事務局長挨拶
成瀬事
挨拶
・ IAPHの現況と活動の状況について報告
A
活動の
つ て報告
PIANC
I NC AGA 2010
20 0 Liverpool
Li po
PIANC
P A C AGA
GA 20100 Liverpool
verpool
9. 各国部会報告
・ オーストリア、ドイツ、日本、オーストラリア、
リ
イ 、日本
ー
フランス、アメリカ、ベルギー、イタリア、イギリス
フラ ス、アメ カ
タリ
ギ ス
の順で、各国の活動状況を報告
の順
を
・ 日本から事務局長が我国の過去、現在の活動状
長が我国
活動状
況をPIANC
活動の普及、PIAN
況を
の普及、 I NC 125 nagoya
y
の準備について報告。
の準
つ て報告。
総会でのIAPH成瀬事務総長の挨拶
PIANC
IANC AGA 2010
20 0 Liverpool
Liv p
PIANC
PI C AGA
GA 2010
2 0 Liverpool
L r
l
10.今後の国際会議等
(1) MMX Liverpool ; 2010年
14日
日
2010年5月11日~
11日~14
(2) Nagoya
Nag a 125
1 5
; 2010年9月
11日~14日
0 0
1
・ 山田名古屋港管理組合副管理者からの
古屋港管
ら
プレゼンテーション
プ
ン
総会での柳生PIANC-Japan事務局長の活動報告
3
PIANC AGA 2010
Liverpool
0
Live poo
PIANC
P
C 125th
5 Anniversary
nni e y Celebration
el ra i in
i Asia
sa
Takashi Yamada
m d
Executive
e ut Vice
V e
President
Nagoyaa Port
Authority
A
t
10 May,, 2010
2
総会での山田名古屋港副管理者のPIANC 125 Nagoya紹介
Program
20
Venues
10 September
All day RecCom
e o Meeting
ee in
11 September
All day ExCom
Meeting
C
t
12 September
AM Opening Ceremony
• 125th Anniversary Celebration
Ceremony
PM International
Seminar
ne a
mn 1
13 September
AM International
I t
i n l Seminar
S
a 2
PM Council
Meeting
u
M
g
14 September
All day Technical and Cultural Tour
15- September
Optional
Tour
io
T r
Nagoya
a o a – Heart
e t of
o Japan
ap
Nagoya
The Westin Nagoya Castle
Location: Beside Nagoya Castle
Function: 125th Anniversary
Ceremony
International Seminar 1
Welcome Reception
Nagoya Harbor Hall
Location: The Port of Nagoya area
Function: International Seminar 2
Other Main PIANC Meeting
PIANC
PI C AGA
GA 2010
2 0 Liverpool
L r
l
(3)
11 Berlin;
2011年5月
15日~
( AGA ’1
rli
0 1
5
ドイツ(ベルリン)
ド
ベ
ン
(4) Mediterranean
2011年
日~3
30日
日
M
r e Days
D ys 2011;
2 1
2 1 年9月28日~
スペイン(バレンシア)
イ (
ン
(5) Smart River 2011;
16日
日
2011; 2011年
2011年9月13日~
13日~16
アメリカ(ニューオールリンズ)
(6)
VIII
( COPEDEC
P
V I 20122
(Coastal and Port Engineering in Developing Countries)
Coun ries)
Tokyo
Osaka
; 2012年
1 年3月
インド(チェンナイ)
4
PIANC
IA C MMX
MX Congress
C r s Liverpool
Lv
o
PIANC
P ANC MMX
X Congress Liverpool
Li p
・参加者:
参加国
PIANC MMX Liverpool
(Congress)
; 36カ国
参加人数 ; 520人
日本人参加者 ; 36人(同伴者6人を含む)
・論文:
全論文数 ; 182編 (応募数 230編)
日本論文 ;
13編 (応募数
30編)
2010年5月11日~14日
PIANC
MMX
I
MX Congress
C r s Liverpool
Lv r o
PIANC
MMX
Liverpool
PIA
X Congress
g
Li
・ 5月10日 19:30~21:30;歓迎レセプション
・ 5月11日 9:15~10:45;開会式
(PIANC-UK、リバプール市長、フレミッシュ政府、
運輸大臣、PIANC会長、IAPH会長、歴史書編纂
委員長)
11:15~12:30;パナマ運河特別講演
(パナマ運河庁)
14:00~17:00;セッション別論文発表
コングレスでの開会式、楽隊演奏
PIANC
PI C MMX
X Congress
C gr s Liverpool
v poo
コングレスでの挨拶
PIANC
P A C MMX
M X Congress
C ng ess Liverpool
Liv poo
コングレスでのパナマ運河についての講演
5
PIANC
IA C MMX
MX Congress
C r s Liverpool
Lv
o
・ 5月12日~
14日;
日;4
4カ所に分かれて、182
編の論文が
12日~14
カ所に分かれて、182編の論文が
PIANC
MMX
Liverpool
PIA
X Congress
C
Li
主要国別採用論文数とコングレス参加人数
38のテーマに分けられて発表15
分、
38のテーマに分けられて発表15分、
質問5
質問5分で実施された。
各論文には、3
各論文には、3~4の活発な質疑が
行われた。
行わ
。
セッションごとの論文発表の概要は
ッ
ンごとの論文
概要
次に報告して頂きます。
に
し 頂き
PIANC
MMX
I
MX Congress
C r s Liverpool
Lv r o
国名
採用
論文数
コングレス
参加人数
国名
採用
論文数
コングレス
参加人数
1
オランダ
31
55
12 アイスランド
3
10
2
ベルギー
24
38
13 南アフリカ
3
8
3
イギリス
22
55
14 イタリア
3
6
4
ドイツ
20
34
15 ノルウェー
2
16
5
フランス
16
28
16 オーストラリア
2
10
6
中国
14
19
17 インド
1
10
7
アメリカ
13
48
18 ポルトガル
0
16
8
日本
13
36
19 スウェーデン
0
6
9
スペイン
4
14
20 ヴェトナム
0
4
10 フィンランド
4
9
21 韓国
0
3
11 オーストリア
4
4
22 カンボジア
0
1
PIANC
MMX
Liverpool
PIA
X Congress
g
Li
・ その他の行事;
事; レセプション、テクニカルツアー、
セ ショ
ル
、
オプショナルイベント、晩餐会
オ
ナ イ ン
餐会
George‘s Hall
PIANC
PI C MMX
X Congress
C gr s Liverpool
v poo
George‘s Hall
PIANC
P A C MMX
M X Congress
C ng ess Liverpool
Liv poo
テクニカルツアー、ヨーロッパに多くみられる運河の一つ
6
PIANC
IA C MMX
MX Congress
C r s Liverpool
Lv
o
ヨーロッパ最初の約150年前のBoat Lift
PIANC
MMX
I
MX Congress
C r s Liverpool
Lv r o
ナイトクルーズでのリバプールの夜景
PIANC
PI C MMX
X Congress
C gr s Liverpool
v poo
晩餐会の様子
PIANC
P ANC MMX
X Congress Liverpool
Li p
大きな水槽ごと、30m下の運河に船を下ろす
PIANC
MMX
Liverpool
PIA
X Congress
g
Li
晩餐会の行われたLiverpool Cathedral
PIANC
P A C MMX
M X Congress
C ng ess Liverpool
Liv poo
晩餐会出席者の記念写真
7
PIANC
IA C MMX
MX Congress
C r s Liverpool
Lv
o
PIANC
MMX Liverpool
P ANC AGA
A A 2010、Congress
C
r
L
p
ご清聴
ありがとう
ございました
晩餐会出席者の記念写真
8
- 9 -
- 10 -
- 11 -
- 12 -
PIANC MMX 論文概要
(佐藤 寛)
141
過渡期にある国に対する国際海上貿易への潜在的
はじめに
世界の国々は貿易によって富を得ている。従って港湾の建設と運営を含む海上輸送へ連
携をとることが世界貿易に参画するために欠かせない重要なことである。それぞれの国で
生産される製品や産物を世界市場に導入する能力なしには、発展途上国は経済成長の牽引
力としての貿易を利用することから除外される。そこで、コンテナ海上輸送と発展の過渡
期にある国の貿易による経済発展における障壁との関係に注目し、海上輸送産業における
変化が発展途上国、特に世界の主要な海上輸送経路から外れた周辺国にどのようなインパ
クトを与えるのか検証するものとしている。
貨物量の増大
今世紀に入って完全に自給自足の国はなく、なにがしかは国際貿易に依存している。世界
貿易の 90%以上が海上輸送されているが、外洋を渡る貿易は 2009 年まで過去 40 年間で 3
倍以上になっている。一方世界経済は関税が下り資本の移動の制限は取り除かれて、生産
拠点は先進国から途上国への低い労働力を求めて移動した。中国だけでなく、ヴェトナム、
インドネシア、マレーシアやタイも生産拠点のアシアへの移転で生産量が伸びて潤うよう
になった。一方では南米西岸やサハラ砂漠の南にある国々には相対的には生産量は少ない。
貨物の動向
歴史的に見て貨物の輸送はノードとモードを中心に構成されてきた。それらのインフラ
を支える計画、建設、資本の投入は公共と民間との間で分かれていた。それぞれ別のビジ
ネスモデルの一部として自身のノードやモードに焦点を当て整備してきた。国際輸送貨物
の増大につれて、この責任の分離が輸送経路やモードの接点において非効率を生んでいる。
荷主は大量貨物による混乱による追加的な輸送コストを超競争マーケットにおいて許容し
難いがたいし、一般社会も環境の低下やその健康へのインパクトを受け入れなくなってい
る。システムの集約が重要であるし、サプラ・イチェーンの運営のツールを適用すること
が製品や産物の移送プロセスを変えてきている。世界的なサプラ・イチェーンは製品をタ
イムリーに配送することを競っており、港における貨物の積み下ろしに相当な圧力がかか
っている。
内陸の移送費用
コンテナナ専用ふ頭の必要性が浮上しているし、非コンテナ化貨物は他の施設へと移動
されている。埠頭から内陸部への移動は 3 段階に分かれて行われているが、内陸輸送費用
はヨーロッパでは上屋費用も含めた総費用の平均 18%であり、多くの場合はそれより高い。
「ピエールス」が 2006 年に行った結果によれば、米国の陸上配送費用は北米西岸では海上
輸送された貨物の総費用の 55%であり、北米東岸では 60%である。また、20%から 25%が
海上ターミナルでのハンドリング費用に充てられていると考えられた。
著者:トーマス。ウエイクマン、スチーブン技術研究所
:ウイリアム・ラヴェンタル、
A-1
教授
同
準教授
PIANC MMX 論文概要
(佐藤 寛)
海運の航路
世界の主要航路は地球の東西を軸に設定されている。就航している大きな船社グループ
のコンテナ船は 2500TEU から 6500TEU の船を航路条件に応じて運航されており、最大規模
の船形は 13,00TEU から 14,000TEU に達している。航路上にある港の機能はその国の国内経
済、地理的な位置とライバル港との近接性などの要素によって違っている。世界の主要港
は大きな生産地と消費センターのゲートウエイ港として機能し、北米とヨーロッパと中国
の港がその輸出輸入の窓口となっている。トランスシップ港は主要貿易航路に沿って位置
し、コンテナ輸送網内における集荷と配送機能を担っている。
港湾への投資
港湾施設の投資を取り巻く環境は、ここ数十年の間に、政府の役割が再評価されてイデ
オロギーのシフトがあり民間部門に経済に対してより大きな責任を要請するようになった。
すなわち世界的なサプラ・イチェーンの勃興と兵站機能への移行によって政府の役割が縮
小されてきたのである。港湾の競争力はサプラ・イチェーンの要請にいかに適合するかに
よって、はるかに影響されるのであると既に 2002 年に「ロビンソン」は言っている。コン
テナの取り扱い装置や背後地へ配送モードに加えて、ターミナルの管理運営は港湾の競争
力に強い影響を持っている.たとえ船の速度や搬送モードが改善され、サプラ・イチェー
ンにコンテナが注目されたとしても、港湾における渋滞や遅延に操作ミスは以前よりも大
きな障害になる。政府機関はダイナミックに変化する条件に対応していくのに支障があり、
民間部門に港湾の責任を移行しようと当てにするようになった。一方民間部門は、政府の
投資が短期長期的に対してなされるのではなく、港湾への投資が経済リスクを限定するよ
う要求される。投資に対してリターンを最大にするために、より大きくより効率的なコン
テナターミナルを通じて経済の規模を確立しなければという圧力が働く。会社はコンテナ
ふ頭のコストを現状の取引の流れからの収益によって埋め合わせがつく港湾に一層投資を
するようになる。つまり、政府と民間会社との違いは、港湾のインフラへの評価に用いら
れる時間フレームがキイとなる。
民間部門の投資
多くの港湾において民間会社がターミナル全体を支配するようになった。あるコンテナ
ターミナルオペレーターはひとつの港湾における資産を支配し、一方で別のオペレーター
は国際ターミナル網を世界に拡大している。例えば、ハチソン(香港)、PSA(シンガポー
ル)や DPW(ドバイ)などは世界に拡張しそれぞれが 25 以上のコンテナターミナルをコントロ
ールし使っている。これらの会社は装備の購入や運賃レートや管理経営のトレーニングに
おいて経済の規模の確立を可能としている。また、違った型の専門化が外洋船キャリアー
で起こっている。コンテナターミナルだけでなく、時として鉄道輸送やトラック運行会社
に投資をし、荷主のロジスティク活動を単純化することにより、業務の数を縮小して費用
を下げている。マースクの子会社である「APM ターミナル」は 35 を超えるコンテナターミ
ナル運営し、船の運航をより善くすると共に、顧客により信頼あるより早い積み換え時間
A-2
PIANC MMX 論文概要
(佐藤 寛)
とよりよきサービスを提供し、より高い利潤をあげている。
コンテナふ頭整備の障壁:
さて、輸送における地形や距離の影響はグローバル化した世界では減少している。通信
機能や海運における革新によって、国際経済への参加が貧しい国々にとっていままで以上
に手の届く範囲にあるように見えている。しかし、かなりの魅力が外国の投資家を引き付
けたにもかかわらず、過渡期にある国にとって世界経済への参画になお幾つかの障壁に直
面する状況がる。ドゥ・ラーゲンとパッリス(2007)は港湾への参入障壁について港湾サー
ビス自由化の状況から検証している。港湾産業おいて企業レベルでの参入の障壁を明らか
にするために採用されたフレームは海事産業における港湾のレベルで適用された。このフ
レームワークを用いて 3 つの障壁が考えられた;それらは港湾の「位置」であり、「経済
の規模」であり、「蓄積された公共投資」である。これらの障壁はグローバル化する経済
と、コンテナ化と輸送手段の多様化、それに港湾開発に対する新しい資金調達などの変化
の結果となっている。これらの裏返しが、途上国の港の発展の障壁となっている。
1) 位置:
かつて消費地に近いことがロジスティック費用の重要な要素であったが、グローバ
ル経済の形成にあってはその近接性はもはや意味ある役割を果たすとはいえなくな
ってきた。サプラ・イチェーンは生長して複合的になり、中間製品の取引は急増し、
その供給者と最終組み立て者との近接性は決定的な要素ではなくなったのである。
これらの位置関係の重要性はアジアにおける多国による生産の集中によって際立っ
ているが、低賃金の利点や政治的経済的要素は部分的な関与しかしていない。
膨大な海運活動が世界の東西軸に沿ってあるため、このグローバルな海運ハイウ
エイに沿ってある港はより良いサービスを選択することによってコストの利点を受
けることができる。東西軸にある航路は一般的にアジアからヨーロッパないしは北
米にあり、この航路への最小限のトランシップによる移動によって積み荷をすると
コストを縮小できる。近距離の目的地への輸送に積み換えしているとそのコストが
輸送距離にかかわるコストを超えるため、ヨーロッパへの輸送費でいえば、アフリ
カ西岸からよりもヴぇトナムからのコストが安くなる。主要航路からの位置による
障壁がある。
一方、東西貿易の主要航路からから見れば周辺地域にある国はその位置とその距
離輸送体系から隔絶していることにある。
2)経済規模:
船形の大きさが海運産業の経済規模の利点をもたらしている。それに伴い世界のコ
ンテナターミナルもより深い水深のバースやクレーン、ヤードを持つようになって
いる。クレーンは大型化し、その生産性は改善されている。また港湾がサービスを
提供するマーケットの規模も重要な決定要素である。マーケットの規模は GDP、輸出
入の貨物量とその地域の人口によって計られるが、将来の港湾規模や資金調達に膨
A-3
PIANC MMX 論文概要
(佐藤 寛)
大なインパクトを与える。このような規模により更に発展を見込める国の港湾とは
逆に、消費地や生産センターから離れている地域は距離の隔絶性と相まって海運業
や港湾開発により経済の規模を達成する機会が限られてさらにその格差が広がる悪
循環にある。
3)公的投資
港湾は貨物の積み下ろしの拠点であるだけでなく、世界に広がったサプラ・イチェ
ーン内のモード間の接続機能を提供する拠点としての役割を果たしているが、港湾
における内陸輸送インフラとの接続はその費用の大きな部分を占めている。港湾整
備における政府の役割は弱くなってきたが、新しい港は公共によるインフラへの投
資の特性から便益を受けていない。過去の多くの世紀では、政府は長期的な経済成
長を刺激するため港のインフラに投資をしたが、政府は必ずしも投資した費用を回
収しようとはしなかった。先進国の政府は、近年では、それほど多く予算を費やす
ことができない。また過渡的な状態にある国の政府も、財政の不足や寄付者や貸し
付けている政府機関による制約おあんじ様な投資をすることができなくなっている。
それは現状の経済条件と政府の政策、あるいは政治主導の行動を潜在的に限定して
いるからである。
不十分な経済規模と公的資金の不足を理由として、過渡期にある多くの国々、特
にグローバル化の周辺地域にある国は国際的に競争力のある港湾インフラを建設す
るために必要な資源を引き寄せることは難しい。このような資源なくしては、世界
的な貿易システムへ参入することは困難になっている。
障壁の克服、
戦略的な論義としては3つある。
1)トランシップ航路を通じて世界の主要海運航路による接続網を整備することである。
トランシップ網による改善は規模の小さいフィーダー港をその国のゲートウエイへと転換
させて追加的な投資をし易くすることである。このような港をアフリカ大陸に設けることは、
この議論の集約として、おそらく大西洋岸とインド洋の沿岸の両方に設けることになるだろ
う。南米に対しては、ブラジルかコロンビア又はパナマにおけるハブとなる港を整備するこ
とが貨物の集積を可能にして、経済規模を生みだすことになる。しかし、貨物の積み出し港
のトランシップの費用は積み下ろし費用、トランシップ費用如何によって変動することを含
めて考えなければならないであろう。また、より小さな国は国内的な港のプロジェクトを考
えずに、隣国の港に依存度を高めることに用心深くしなければならない。
2)いま一つの代替的ないしは補完的なアプローチは途上国地域間の協同と、輸送手段
と輸送網の集積を図り、近代的な競争力のあるコンテナイオウに必要な経済の規模と創出
する。しかし、このような政策を実施することは、控え目に言って問題的である。緊急的
な安全保障に関することが多くの地域における安定性を脅かし、世界的に見ても地域間の
協同が成功した歴史は限られている。どの政府も隣国のインフラに依存することを受け入
A-4
PIANC MMX 論文概要
(佐藤 寛)
れるよう要請されても信頼を発展させてはこなかった。道路、水や鉄道の連携はサプラ・
イチェーンが国境を超えるために改善されねばならないだろう。輸送モードに関する国家
間共通の施策や規則が必要となろう。国境を超えるスムースな貨物流動を確かなものにす
ることを国家間で認め合う必要があろう。
3)国際機関が途上国における港湾とロジスティク産業に対する知識を共有するよう改
善する努力を行うことができる。UNCTAD はしばしば海事産業についてのレポートや要約版
を発刊したけれども、途上国の港湾プラナーへのハンドブックはおよそ25年間改定され
ていない。国際機関が最新の海事情報を発展過渡期の国へ流布し、港湾運営を最善に実施
できるマニュアルやハンドブックを持って勧告する役割を担うことである。
結論:
海事産業がいかに発展途上国にインパクトを与えているかについて検証した。もし、コ
ンテナ化された貿易がマーケットに対する要求が途上国の港湾に対する障壁を齎すもので
あるなら、グロ―バル経済のもたらす便益は現存する適切な港湾インフラをもたない地域
に対して等しく行き渡ることが少なくなる。この港湾整備の障壁になっているものを克服
するためには、途上国は地域フィーダー網を整備することを奨励する政策を実施可能とす
ることである。フィーダー網とは経済の規模をとらえるハブ港湾として位置付けて使用で
きるものである。体台的には、地域間の協同と集積がマーケットの規模を拡大し海運のゲ
ートウエイを通じた貿易の機械を増大させつコンテナ港湾の整備を容易にすることである。
A-5
PIANC MMX 論文概要
(佐藤 寛)
38 南ヴェトナムにおけるコンテナふ頭の整備
概要
2005 年にホーチーミン市の南の海岸地域の開発が政府決定された 791 号の布告により開
始された。ブンタオ地域全域を対象として、八万トンのコンテナ船を受け入れるターミナ
ルを導入するためにものである。そしてホーチーミン市の開発に寄与するためにすべての
港湾施設がこの地域に移設することが意図されている。新しいコンテナふ頭の施設には外
資の導入が図られている。現在、6つのプロジェクトがチーバイ河に沿って建設中である。
埠頭の数としてはさらに多くの施設の整備が期待されている。今現在、6億28万ドルが
投資さている。
ブンタオ地域におけるコンテナふ頭の特徴
河川沿いに計画されている各種埠頭の多くはゲンジ建設中であり 2011 年から 2012 年な
でに完成する予定。完成後のヒンターランドとの接続はホーチーミン篠工業地域との連携
か、または頃―バルな配送システムの連携するコンテナハブとして機能することになる。
技術的は特徴としては、
① 軟弱な下層土のもとに実施されるのでその土質の改良が実施される。工法としてはドレ
ーン工法と新空港邦画も散られる
② 工事は海側からのアクセスのみで行われる。
③ バースは、地震条件に対応して 60mの鋼管杭を基礎とした設計である。
④ ス伊佐線が羽と陸上側からと並行的に工事が進行する。
バースの構造はデタッチド桟橋で、バース境界ごとに連絡橋が配置されている設計となっ
ている。
この地域の条件のもとに設計された技術の全貌が発表された。
124
プレキャスト化コンクリート岩壁・護岸構造
概要
本構造物は岸壁や護岸に用いられる重力式構造である L 型ブロック部の製作過程を改善
し、合わせて製作、据え付け時の安全度を増すものとすることができる。そのため L 字型
のブロックを分割した。そして分割したプレキャストの部材を様々な接合法を用いて組み
立てる形で、最終的に護岸や岸壁としての構造とするものである。
特徴:
分割して部材化を図る結果としてそれぞれの部材は高々3m の高さとなり、ヤードにおい
て或いは工場において品質管理を行き届かせて、正確な型枠を用いて普通の鉄筋コンクリ
A-6
PIANC MMX 論文概要
(佐藤 寛)
ートの部材を製作するように作業を進めることができる。L 型ブロックとして一体的に製作
すると、その高さは通常5mから 8m近くに及び、高い足場を用いることから作業員の落下
の危険性が高いが、この危険を回避できる。平らなヤードにおいて製作するのでコンクリ
ートの品質管理がし易いだけでなく、正確で、その寸法もむらがなく均一な製品を作るこ
とができる。
背後の土圧を最終的に受ける構造は、底版に建てられる前壁(フロントピラー)とこれ
をさらに固定する控え(バットレスフレーム)によって構成され、これを基本構造と呼ぶ。
この基本構造を構成する主要な部品の接合は PC ロッドを用い緊結が可能であり、かつ PC
ロッドの防水対策も十分なものにすることができる。L 型ブロックのように一体的に製作す
ることに比較して、全体の工期を短くすることができる。
図1に見られるように土留め
壁は半円形をしており、土圧を全
壁に伝えられて、しっかりと組み
Upper Deck Slab
たてられた基本構造によって支
えられる構造であるといえるが、
土留め壁の会場から、その前面に
Buttress Frame
空間を生み出すことができる。こ
e
の空間の効果として、土留め壁の
背後に裏込めを入れて完成した
時、全体の重心が陸側の方向に移
動するため底版の端趾圧が小さ
Wave-diss pating plate
Wa
くなり、地盤が弱い場合の改良範
囲が少なくなり、全体工費の節減
Basement
に貢献する。
また、この空間と消波版とを組
み合わせ釣ることにより波力の
Arch-shaped Retainning wall
Arch-shaped Retainning wall
Front Pillar
nt
Front Pillar
低減効果を得ることが期待でき
図1
る。
構造の形状と部材名
さ ら に 上 床 版 ( Upper Deck
Slab)は、その自重を適切にすれば、基本構造の上に置くだけの簡単な作業で済むと同時
に、剛舷材や車止めなど、あるいは係船柱でさえ予めとりつけておくことによって現場の
作業が省略することが可能になる。特に防舷材の取り付けは通常は潮待ち工事になり、し
っかりとした取り付けがしばしば得られないことが多いことへの改善ともなる。これらの
プロセスも工期の短縮に寄与することになろう。
いま一つの施工上の利点として、L 型ブロックやケーソンは現地に設置した後しばらくは
波浪の来襲によって本体がスライドや転倒の恐れがあるが、本工法は基本構造の設置時点
A-7
PIANC MMX 論文概要
(佐藤 寛)
では、すべての土留め壁がはめ込まれていないためはろうによるスライドに対して安全で
あることも特徴であると同時に利点であるといえるのである。
さらに、前面の空間に適当な大きさの岩や石を敷きつめると魚介類など海底生物の蝟集
効果を創出し得るのも特徴である。
現場施工の留意点
裏込めは一義的にはガット船による裏込め石の投入で行うことを考えるが、バットレス
フレームに落下石が当たることが予想される。バットレスフレームの位置は水面に出てい
る上部から判断できるので、細心の注意は必要であるが、その付近は石のサイズを小さい
ものに変更することが対策として考えられる。またバットレスフレームの上面にパネル等
の保護材を当てておくことも対策になる。またネットに岩を詰めたものをクレーンで下ろ
すなど丁寧な対処をとることも選択肢に挙げられるところである。
工費比較
同じ重量式構造とであるケーソン、L 型ブロック途方被比較を行った。パラメターとして
は自身係数を 0.22 と 0.15 の2つの場合に、全面水深を 7.5m、10mと 14mの 3 ケースで
総計 6 ケースの費用を算出して比較した。震度が 0.22 の場合はケーソンが高く、プレキャ
スト化した本ブロック構造は推進に関係なく経済的な工法であり、進度が 0.15 の場合は
水深が約 9m以上となれば最も安価な工法となる。しかも水深が大きくなるほどケーソンと
の工費の差が大きくなったのは今までの常識とは反対の結果を示している。ケーソン構造
をがんとりクレーンを載せるコンテナふ頭に用いる場合に対抗することが可能であること
を示唆している。
適用例:
新設の施設としては、岸壁、埋立護岸、防波堤(背面に係留施設を合わせて生み出すこ
とができる)があり、既存の施設の改良や維持補修への適用としては、既存岸壁や桟橋の
延長が他の工法より短期に辞しできることが挙げられる。また、岸壁の水深を深くするこ
とも法線を前に出せる場合に容易である。裏込めは必要としないことを前提に設計するこ
とができるからである。
まとめ
一つの構造を分割することによって、製作費用を低減し、施工段階において様々な対応
工夫を生み出せることができる。そして、トータルとして工期の短縮と工費の節減につな
げることができる。またはめ込みや単純な組み立てだけの工夫を含めることができ、将来
的に拡張を見越した取り外しや移設や再使用が可能となる機能を適用することが展望され
る。環境に配慮した工法であり、既存の生物への配慮も可能となることなども応用の機会
が多くなる利点を備えている
A-8
PIANC MMX 論文概要
(佐藤 寛)
259 チェンナイ港におけるメガ・ターミナルの開発
概要
チェンナイ港はインド半島の南東海岸にあり、2 つの防波堤に護られた人工港である。
1876 年の創始以来取り扱い貨物量が伸び、近年の経済発展を支えるインフラの整備と位置
付けている。そして、世界の主要東西航路に近接することから現在の港内水域を新たな防
波堤を築いて拡張し、水深を深くして主要航路に就航する最新世代のコンテナ船 15,000TEU
から 18,000TEU の船の迎え入れを可能とするための計画を進めている。
現在の港域の北側水域を新たな防波堤によって囲み、延長 2 ㎞の法線上に 4 バースのコ
ンテナふ頭を新設することを目指している。この防波堤の背地を巡って 2 つの課題が提出
されていた。インドの南東海岸には世界でも最も多量の漂砂を含む北向きの沿岸流があり、
防波堤の出現が隣接する海岸線に及ぼす懸念があった。現在の二つの防波堤に囲まれた港
の建設がマリナ・ビーチといわれる長い海岸線を形成したし、他方北側は厳しい浸食に見
舞われた。旧東防波堤からさらに北東へ 2.75km 延長される新設防波堤が将来どのような影
響をもたらすのかが一つの課題となっていると思われる。いま一つの防波堤は現在の港湾
から約 3 ㎞離れた位置にある漁港の東防波堤から東方向へ 1.73km 新設される。
今回の報告は主として新たな水域に侵入する波浪による静穏度と大型コンテナ船の操船の
関係に対する評価と新設防波堤の構造に焦点が当てられていた。静穏度については数値モ
デルを用いて検討された。沿岸線の変化についても数値的に予測された。
港湾施設:
1)
防波堤
延長 2.75km(東)、1.73km(北)、設置域の水深-20m、被覆石の勾配 1:1.5 天端高
+5.6 天端幅 8m、設計波高 9m(100 年確率波高)
2)
水域
新しい港域の広さは 345 ヘクタールあり、その水深はフェーズ1で平均-18mに浚
渫され、最終的には-22m まで増深される。侵入航路幅は 250mから 50m 拡張して 300
mになる。船回し場の半径は 950mが提案されている。
3)
埋立地
約 80 ヘクタール、埋立は、浚渫土を受け入れて実施された。
4)
コンテナふ頭
4 バース、天端高+5m、水深-18m、バース長 500m、バース幅 33m、対象コンテナ船
(マラッカマックス):船長 400m、船幅 40m(15,00TEU から 18,000TEU), ヤードの
スタック 4 段積、岸壁構造 1.2m 幅の隔壁で背後に 4 列の穴あきの現場製作した RCC パ
イルで、直径は 1.2m、ボラード 250 トン、150 トン バックアップ・エリア 90hr
5)
年間の稼働日数
波浪解析等から得られる安全な操船可能日数は年間当たり 94%、すなわち年間約 20
日は安全が保障されないという結果を得ている。
A-9
PIANC MMX 論文概要
(細川
恭史)
Working with Nature 関連3セッションの概要
細川恭史
1.開催日時・場所:2010 年5月 11 日(火)午後
12 日(水)午後
2Aセッション(下記①~④論文)
6C(⑤~⑧)、7C(⑨~⑫)
2.概要:
1)PIANC のポジションペーパー Working with Nature のもと、基調報告と 11 の事例報告
2)基調報告は、2A セッション冒頭・Ms.J.Brooke による。WG やポジションペーパーの説明。
3)事例報告は、港湾の計画やプロジェクト報告から、小さな観測の実施まで様々。
3.主要な議論: ()内数字は論文番号=要旨集頁・詳細は論文もしくは要旨参照のこと
①基調報告(223):Working with Nature は、従来と異なる発想を導入する。整備計画
を所与として影響予測や影響最小化を図るのではなく、プロジェクトの目的そのものを生態系
の中で考え、win-win 型解決を図る。機能からでなく対象地の自然から目的を発想し、生態
系を制御するのではなく管理し、総合的視点で水運と自然との両者に益となるようにする。
結局、社会的合意が得られやすく、余分な時間やコストが縮減され、水運事業が持続的な
ものとなる。
②事例報告(273):フィンランドの汚染泥の処理処分法に改善についての報告。バルティッ
ク海汚染に繋がる TBT などに汚染された底泥対策のため、環境部局や科学者との協力体制
が構築され、ロンドン条約や欧州規定に対応する法令が整備された。二段階濃度基準が適
応され、底泥の毒性評価に反映。
③事例報告(13):ドイツ連邦水文研究所が開発した生態系モデルの紹介。ドイツ内陸水
運の建設や維持管理に伴い、水路周辺の自然に影響が生じたときには、ドイツ水路水運局
は法により補償措置をしなければならない。後で余分なコストが生じる前に、適切な計画
ができるように ArcGIS を拡張した氾濫域生息地モデルを開発した。水運の主要な応力とし
て航跡波などの要因を考慮し、エルベ川護岸の浸食と動植物の生息状況の変化を予測。
④事例報告(264):デンマーク・アーヘン大学の水理研究所と環境研究所は、内陸水路
の氾濫期に再浮遊した底泥が、生息生物へ与える影響を調べた。なるべく自然に近い条件
での水水理実験を実施。円筒回転水槽で再浮遊状況を観察し、さらに水槽内に魚を入れて
の状況を観察。PAH など微量有機毒物と底泥・魚の相互作用を様々な水理条件で比較しよ
うとした。
⑤事例報告(116 要旨未提出):オランダ・デルフト水理研究所の後継組織デルターレスと工
科大運輸公共事業省の共同発表。オランダの水害防護施設が老朽化し始めている。多額の
更新費用が想定。そこで、水利施設の機能(防災と水運)価値を、リスクインベントリー
を策定し簡易なシナリオ解析のもとに評価。外部制約として将来貨物量を考慮。更に、将
来(2100 年想定)の政策の方向も検討。
⑥事例報告(303):オランダの現実世界での working w/ nature 実践を目指し、建設業
A-10
PIANC MMX 論文概要
(細川
恭史)
者の寄与も考慮に大規模養浜の検討例を報告。eco-dynamic な工法検討に、Delft3D モデル
を用い、養浜地形の形成を自然の力に任せる2千万 m3 規模の検討例を提示。土砂採取跡地
の修復を考慮した施行法検討例も提示。
⑦事例報告(39):フィンランド Kotka 港における浚土処分地の跡地利用や旧港再開発
による環境効率の報告。港湾拡張の社会要請の中で、従来型の開発ではなく、環境共生型
のアプローチの導入を試みた例。情報公開、初期からの関係者関与など。各段階で Eco 的
な努力。ゴミ埋め立て地跡地を軽量覆土で自動車の貯蔵ヤードに、照明に風力発電、など。
⑧事例報告(246):浚渫業の世界でも、一歩を踏み出したとの報告。環境配慮型・浚渫
効率向上型の技術開発が進んでいる。オランダの浚渫業界は「エコシェイプ:環境共生型
建設(Building with nature)プログラムを始めた。環境と浚渫とのせめぎ合いから技術革新
(省エネ(省エネハイブリッド・排気ガス・低騒音)、濁りのでない(高密度・高精度・余
水設計)、プロセス最適化、市民認知)が進み、グリーンな浚渫がビジネスチャンスとなる。
⑨事例報告(61):「⑨以下は内陸運河の護岸対策」ベルギー・ゲント大学らの研究。
内陸運河の航跡波による護岸侵食の機構解明と、多自然型の護岸における侵食防止の工法
開発。リン川における検討。堅い施設と組み合わせた植栽による防護。水路屈曲に際し、
力の集中地域の予測判別。モニタリングを始めたところとの報告。
⑩事例報告(71):デルフト工科大学の研究。浅い水域での低天端幅広防波堤での法先の
安定研究。従来の構造物の構築用の公式範囲からはずれてしまう(浅い水域の場合)。斜面
傾斜も配慮して、実験で移動限界を確かめた。
⑪事例報告(74):ドイツの内陸運河の護岸被覆は(一部の運河床版も)、従来連邦水路技
術研究所のマニュアルに従って作成・設置され、航跡波に対する安定などから水理的に決
められてきた。これの見直しと適用範囲拡大のため、10 年近くの観測を整理し、力学解析
をした。ドルトムントーエムス運河での記録を例に報告をする。
⑫事例報告(97):沿岸の護岸構築のため、泥を中に詰めたジオテキスタイルチューブの
使用例の報告。中国上海での透水性のある袋の使用事例など。現地底泥を袋詰めし、護岸
構築物として利用。水抜きの工夫・上載耐力の確認などをしつつ。
基調報告(論文番号 223)での発表資料
基調報告を行った Ms.J.Brooke(英国 EnvCom 代表)
A-11
(上田
PIANC MMX 論文概要
茂)
セッション B
このセッションでは,超大型コンテナ船,LNG 船,係留施設の建設,設計法の改善,港
湾計画,航路,係留施設の新システム,Maasvlakte,防波堤などの分野の論文発表が行わ
れた.ここでは以下のセッションを中心に報告する.
B-1
B-2
B-3
B-4
B-8
B-12
担当セッション
Impact of ultra-large container ships
Container LNG terminal
Maritime Qauys and terminal
Innovations in port design
Modern mooring system
Breakwaters
開催日時
PM
5月11日
PM
5月11日
AM
5月12日
AM
5月12日
AM
5月13日
AM
5月14日
前半
後半
前半
中半
前半
後半
Bー1 Impact of ultra-large container ships
4 ULCS in Bremerhaven/Germany-Technical demands and experiences
I.Kramer,Senete Department for Economic Affairs and Ports, Bremen
C.Hein,bremenports GmbH & Co.KG,Bremerhaven
J.Jansenn,bremenports GmbH & Co.KG,Bremerhaven
ブレメルハーヘン港は 1968 年からコンテナ船用バースの建設を進めてきて,1994~2003
年に掛けて CTⅢを建設したが,2006 年の Emma Maersk(170,974GT)の就航に合わせ
て CT4 の4バースのうち一つを,
2008 年 12 月に全バース(420*4
=1681m)を完成させた.ブレメ
ルハーヘン港は,ロッテルダム,
アントワープ,ハンブルグに次ぐ
欧州第 4 位のコンテナ港である.
入港船舶数と,コンテナ積載数
をみると,8000TEU クラ
スの船舶の入港が大幅に増
加している.
cf, Emma Maersk
156,907DWT,LOA=397.71m
LPP=376.0m,B=56.4,D=30.0m,
d=15.5m
11,000TEU
河口航路の航行,回頭水
域,接岸と荷役などの課題
がある.
ヴェーゼ(Weser)河口水路は航路幅が 300mから 200mに狭くなり,CT4 前面では航路
幅 200m,水深 13.4m(MSL では 16.02m)である.ヴェーゼ航路は連邦所管の感潮航路
B - 1
(上田
PIANC MMX 論文概要
であるので,満載の超大型コンテナ
船は潮位をみて航行していて,これ
までは喫水を 13~14m にしている.
干潮時の 喫水は 12.8m(Panamax
class),または 12.7m
(Post Panamax),満潮時では 14.5
mである.したがって,超大型コン
テナ船の定期便就航は難しい.その
ため,以下の対策が講じられようと
している.
☆ 航路の拡幅;km99~km130 の間
を 幅 300 m ~ 380 m に 拡 幅 .
Km99 から km110 の間を水深が
深い西側に 240m迂回する.屈折
部の拡幅 70m
☆ ヴェーゼ川の増深 2010 年秋から開
始.浚渫土量は 470 万m3,工期は 9
ヶ月.
☆ 回頭水域;緊急回頭水域(750×450
m)-14mCDLが大型船の回頭に
用いられているが,南側に 875×525
mの新たな回頭水域と,北側に 1000
×600mの回頭水域が計画され た.
2006 に浚渫がなされ,土量は
200 万m3 であった.
☆ 現在,総延長 5000m,水深-19.5mMSL
☆ 矢板岸壁の構造照査
☆ ガントリークレーン:船幅 56m, 22
列;自重の増加:基礎の構造設計
☆ 防衝工:35 間隔に設置,上部に円筒形フ
ェンダー,下部にφ200mm のフロー
テイングフェンダー:1,110kNm
☆ 2008 年の取扱量 540 万 TEU.63%は
フィーダーまたはトランスシップ.
200 万 TUE が内陸へ輸送:トラック
(54.6%),鉄道(42.8%),船(2.6%)
B - 2
茂)
(上田
PIANC MMX 論文概要
Bー1 Impact of ultra-large container ships
6 Port of Le Harve facing the challenge of
gigantism of container vessels
☆船型の大型化に対応(2009~2013)
☆長期計画
☆13,000TEU;LOA=400m
B= 55m,d=16m
☆ 17,000TEU;LOA=440~450m
B=60m,d=17m
B - 3
茂)
(上田
PIANC MMX 論文概要
茂)
Bー1 Impact of ultra-large container ships
188 Synergy of theory and practice for ultra large containerships at Antwerp
K.Eloot,Verwilligen,Vantorre; FHR Ghent University,Belgium
FHR ではアントワープ港への SMC に就航に際して,港湾管理者,水先人,港運(タグ),
商船会社関係者と共同して Table1 の船舶に対してリアルタイムシミュレーションがなされ
た.当時,船長 340m以上の船舶は Schldt 川の航行は許可されていながった.これはもと
もと同規模のバルク船に対する規制であったものをすべての船舶に適用していたものであ
るが,コンテナ船はエンジン馬力,操舵性がバルク船に勝ることから,見直しが求められ
ていた.検討の目的は,浅海域の制限水域における大型コンテナ船操船に係わる知見を得
るもので,14,000TEU コンテナ船の Schldt 川の航行可能性,Berendrecht ロック及び
Delwaide ロックの操船性の検討であった.その結果,2009 年の MSC を受け入れることに
なったが,半年余に及ぶ旧基準のもとでの評価期間を経て,新基準が検討されている.
検討においては,超大型コンテナ船の浅海域における船体周りの流圧力,アンダーキー
ルクリアランスの影響,船舶相互の影響(航走波),護
岸への影響,船体沈下(スコート)などが,理論解析
と曳航水槽実験によって検討された.理論解析では,
潮流及び波浪影響も考慮されている(ELOOT
et al
2007).操船シミュレーションは 75 番ブイ付近の屈折
部(MLLWS および引き潮で流速 0.95kt,航速 12kt,
船間距離少なくとも 1 船幅)における操船性を検討す
るため,およそ 1 年間にわたって行われた.対向船と
の遭遇シミュレーションも行われ,流体力,操船の適切さ,
2 船間のコミュニケーションなどの重要性が認識された.ま
た引き続き BATH 屈折部,78 番ブイ,91 番ブイにおいて,
224 ケースのシミュレーションが Fig1 の船舶に対して行わ
れ,風,上げ潮および引き潮時の流速などの影響が検討され
ている.またブリッジの配置の影響も考慮している.その結
果,船長の増大が操船に及ぼす影響は小さいと結論し,新規
則の策定の必要性,操船シミュレータによる研修を勧めてい
る.
B - 4
(上田
PIANC MMX 論文概要
B - 5
茂)
(上田
PIANC MMX 論文概要
B - 6
茂)
(上田
PIANC MMX 論文概要
B - 7
茂)
(上田
PIANC MMX 論文概要
B - 8
茂)
(上田
PIANC MMX 論文概要
Bー2 Container and LNG Terminal
132 JadeWeser Port deep water container terminal Wilhelmshaven Germany
E.Schmidt; Knabe Beratend Ingenieure GmbH, Germany
J.Ollere; Knabe Beratend Ingenieure GmbH, Germany
A.Kluth; JadeWeserPortRealisierungsgesellschaft mbH
ジェーデヴェーゼポートは,ド
イツ唯一の大水深港湾で,MSC
受け入れ港として北海から
20km 遡ったジェーデ川左岸(西
側)沿いに整備されている.ウィ
ルヘルムスハーヘンの市街地の
北西 9km に位置する.コンテナ
バースは水深 16.5m,延長 430m
である.建設工事は埋立,護岸工
事,岸壁築造,埋立による水理学
的影響,バースアクセス,航路標
識,臨港道路,臨港鉄道などであ
る.
埋立地はコンテナターミナル
120ha,工業用地 170ha,護岸
70ha の合計 360ha である.土砂
は航路浚渫およびこのバースの
南北に将来建設予定のバース前
面の浚渫によって供給された.
航路の移設に伴い,岸壁と航路
の離間距離が 450m になり,航路
幅が 300m に減少する.そのため,
中段の図のように操船シミュレーション
を実施して操船性を検討した.
このほか,臨港交通,施設構造,浚渫,
埋立,建設工事などについて記述されて
いる.右図はコンテナ埠頭の断面図であ
る.
B - 9
茂)
(上田
PIANC MMX 論文概要
Bー3 Maritime Quays and Terminals
168 Hydraulic fills manual
J.van’t Hoff; Vant’ Hoff Consultancy,J.G/DE; TU Delft
A.H.Nooy van de Kolff; Royal Bosklis Westminster,
J.E.Cools; DHV, D.C. Rijks; DHV
この論文は埋立に係わるマニ
ュアルに関して記述されている.
水流による埋立は,空港,港湾,
道路など様々な分野で用いられ
ているが,非常に多岐である.し
たがって,浚渫方法,輸送方法な
どの仕様が求められている.
近年,数多くの埋立事業が進め
られているが,将来計画が示されない
こと,境界条件や新技術の適用が示さ
れないことなどの,技術的仕様書の不
備が指摘されている.そのため,事業
者は水流による埋立のマニュアル作成
を決定し,2010 年末に刊行の予定であ
る.
この論文はその事前公開である.論
文では,不適格な仕様書の事例,マニ
ュアルの項目,浚渫工法,埋立地の設
計,埋立土の試験方法などが記述され
ている.
B - 10
茂)
(上田
PIANC MMX 論文概要
茂)
Bー3 Maritime Quays and Terminals
197 Study on land reclamation project in the southwest water of Shatuozi in Dallian
New Port
Wu Peng; China Communications Planning and Design Institute for Transportation
Cail Cuisu; PDIWT, Tang Min; PDIWT
大連港は石油,LNG 拠点港と
して発展している.2004 年に
Shatuozi の南に 0#石油バース
と,南西 2km に 250,000DWT
石炭バースが建設されている.ま
た LNG バース 300,000DWT(#
22 バース)が建設された(Fig.2).
しかしながら,Shatuozi の埋
立に伴い,潮流が大幅に変化し
(Fig4,5),接岸操船に支障が生
じたため,埋立計画を見直した
(下の左図)
.下右の表は,埋立
計画と予想される潮流との関係である.その
結果,第 2 案を選定した.このほか,埋立に
よる波浪条件の変化も検討している.
B - 11
(上田
PIANC MMX 論文概要
茂)
Bー3 Maritime Quays and Terminals
23 Design of hydraulic fill-GATE terminal in Rotterdam
J.G. de Gijt; University Delft and Public Works Rotterdam, The Netherlands
H.E. Brassinga; Public Works Rotterdam, The Netherlands
E.J>Broos;
Rotterdam
Port
Authority
この論文は,ロッテルダム港,
Maasvlakte 地区,GATE ターミ
ナルの LNG プラントの埋立と護
岸の安定性について述べている.
Maaksvlakte2 が 1960ー1970 に
建設されたときには,この地域は,
埋立地の予定ではなく,砂の採取
場所であり,また海洋施設の試験
を行う水域,土捨て場でもあった.
在来の良質な砂が採取され,シル
ト質砂が投棄された.したがって,
海底面には起伏がある.ロッテル
ダ ム 港 務 局 ( RPA ) は ,
Maasvlakte2 に連結するため,
護岸傾斜を深度 25m まで 1:3
にするよう求めた.しかも,RPA
は Euromax 前面の浚渫土を使用
するよう求めた.しかし,砂の質
が悪いので,1:10 から 1:15
にしかならない.そこで,鉄鋼
スラグを用いることとし,その
結果 1:2.5 を確保した.設計
においては,フォールトツリー
を作り,破壊モードごとに確率
的設計を試みた.LNG タンク
の破壊確率は 50 年間で 10ー6
である.設計の過程で,この施設は 0.04g の地震加速度に対する安定性しか持たないので,
-32m までバイブロフローテーションによる締め固めが必要であると述べている.
B - 12
(上田
PIANC MMX 論文概要
茂)
Bー3 Maritime Quays and Terminals
270 Rapid-improvement technology on surface layer of ultra-soft ground
Zhililang Dong; CCCC Forth Harbour Engineering China
本論文は,埋立土表層
の早期締め固め法につい
て述べている.この工法
の原理は真空圧をかける
ことにより,間隙水を除
去し,土の骨格強度を発
揮させる.この方法を用
いて,2007 年に Xiamen
湾の Haicang で試験を行
った.表は現地盤の土質試験結果である.
締め固め区間に隣接する区間からの土砂の流入を防ぐため,図に示す鋼管,鋼板,プラ
スチックボードからなる仕切り壁が設けられている.バキューム効果を上げるため,non-
woven fabric が用いられている.
B - 13
PIANC MMX 論文概要
Bー4
MarCom-Innovation in Por Design
(大内
久夫)
174 New PIANC Guidelines for berthing structures, related thrusters
(スラスターに関連した,係留施設の新ガイドライン)
発表者
Sea Marc (Chairman of WG48)
1.WG22 の報告書「桟橋下の斜面被覆石の設計ガイドライン」は,プロペラにより発生
する流れの作用する斜面の石のサイズを決めるための方法を示したものである.しかし,
バウスラスターの使用頻度が多くなり,パワーも大きくなっているので,新たなガイド
ラインの策定を行っている.設計のガイドラインと勧告を含んでいる.
2.調査項目
1)バウスラスター作用時の港湾構造物の被害と,船舶,防護工,構造物のタイプ等の
情報
2)問題の特定
3)バウスラスターによって生ずる流速域
4)係留施設前面の洗掘,被災部位,係留施設構造物の安定に関する危険度
5)構造部材への被害(氷の影響を含む)
6)斜面と底面保護の設計基準
7)港湾構造物への勧告(設計ガイドライン)
2.被害の可能性を検討するために検討した構造形式は重力式,矢板式,桟橋式
また,既設構造物の増深のケースについても検討した.
3.検討したスラスターのタイプと出力,流速等
1)スラスターのタイプ
バウスラスター,従来型スラスター,高速フェリー,
ウォータージェットスラスター
2)出力,流速等
サイクロイドプロペラの場合の速度
v=4~20m/sec
船幅と出力の関係
D=0.1636P0.3656
将来
例:コンテナ船
メインパワー:100,000kw
スラスター:4,000kw
4.洗掘量,範囲の測定
5.接岸操船方法(接岸時のパワー,速度に関する各機関の勧告値を含む)
6.流れの場の計算方法
プロペラやジェットの吐出口からの広がりの想定(ドイツとオランダの方法を検討)
吹き出し流速度,広がり部での流れの速度等
係留施設への影響の検討
矢板や,桟橋下部の斜面での広がり,杭周りの洗掘等
7.設計哲学
洗掘を認める方法と洗掘を防ぐ方法
対策工としては,被覆石,マットレス(アスファルト)等
B - 14
PIANC MMX 論文概要
Bー4
MarCom-Innvation in Por Design
(大内
久夫)
MarCom Innovation in Port Design(港湾設計の革新)
発表者
MarCom Chairman
MarCom の活動状況全般についての報告が行われた.
1.最初に報告された「スラスターに関連した係留施設の新ガイドライン」を鋭意作成し
ている.
2.「革新と活動(Innovations and activities)」に取り組んでいる.
3.WG43 が,「航路の水平・垂直諸元」を見直している.
4.「防波堤のデータベース」の整備を行っている.
5.その他の活動
ライフサイクルマネジメントに取り組んでおり,1991 年,1998 年に成果を出している.
2008 年から「ライフサイクルマネジメントの実践(勧告)」をまとめている.
同じく 2008 年に特別な壁構造物による港内シルテーションを最小限に抑える対策につ
いて検討している.
2010 年は,港内の津波被害軽減対策を取りまとめる.
6.主要なワーキンググループ活動は以下の通りである.
WG47
防波堤のタイプ選定基準
WG49
水路の水平・垂直諸元
WG51
水噴射による浚渫
WG52
コンテナ船の荷役基準
WG54
安全な港湾へのアクセスを最適化するための水理/気象情報の利用
WG55
石油タンカー・ガスタンカーの接岸操作の安全的側面
WG56
海岸保護におけるジオテキスタイルの適用
WG57
パターンを取り入れた護岸要素の安定性
WG144
海洋での浚渫のための土と岩の分類
WG145
接岸速度と防舷材の設計
WG146
固形バルク貨物用フローティングターミナル
WG152
クルーズターミナルのガイドライン
7.プレハブ部材のカタログ作成などの特別な活動も行っている.
8.他の委員会(EnviCom,RecCom,InCom 等)との共同作業も行っている.
9.接岸速度のデータの収集を行いたいので協力をお願いしたい.
10.出版については,以下のものを計画している
・港内の津波被害軽減対策
・防波堤のタイプ選定基準
・水噴射による浚渫
・ スラスターに関連した係留施設の新ガイドライン
B - 15
PIANC MMX 論文概要
Bー4
MarCom-Innvation in Por Design
(大内
久夫)
325 PIANC Working Group: Horizontal and Vertical Channel Dimensions
(航路の水平・垂直諸元)
発表者:Mark McBride, Chairman, Marcom WG 49
1.歴史的背景
1972 年国際石油タンカー委員会 WG2 が最初に作成し,数年後に見直しが行われた.
PIANCーIAPH 合同の WG:PYCーll30 が IMPA,IALA と共同で作業を行い 1997 年に
「進入航路ー設計ガイド」を公表した.
2004 年に MarCom がこのガイドラインの見直しを決定し,この業務を実施するため
に 2005 年に WG49 が設立された.ここでも IMPA,IALA と合同で作業を進めることと
なった.
2.目的
・上記「進入航路ー設計ガイド」の見直し,更新,及び必要に応じて拡大する.
・シミュレーションその他の設計手法の発展を考慮する.
・新世代船舶の大きさや操船特性を考慮する.
3.メンバー
20 名(IAPH,IALA を含む)
4.検討内容
報告書案には,以下の項目が盛り込まれることとなっている.
・水平特性と垂直特性
・設計方法
・航路容量の評価
・冬期の航行/氷の問題
・船舶諸元と次世代船舶
・タグの使用
・許容危険レベルと実現可能性
・その他航路使用に関する制約事項
新たなガイドラインでは,前回の WG30 が行った水平・垂直諸元のための「概念設計
ガイドライン」を最新のものにするとともに,作業の中心を確率設計や危険の性状等の
「詳細設計ガイドライン」の作成に置いてきた.
航路水深に関しては,水位の変動要因+船舶関係要因+底質要因を考慮し,航路幅に
関しては,両辺の余裕幅+航行幅+中央余裕幅等を検討している.質疑では,フロアー
から水中の諸元だけでなく,エアクリアランス(空中確保空間)についても留意すべき
との意見が出された.
5.今後の予定
完成がずれ込んできているが,2011 年には完成予定である.
B - 16
PIANC MMX 論文概要
Bー4
MarCom-Innvation in Por Design
(大内
久夫)
MarCom Activityis Survey Results and MarCom Future Topics
A Database of Major Breakwaters around the World(世界の主要な防波堤のデータベー
ス)& Questionaire on Our Report(我々の報告書に対するアンケート)
発表者
Ir.Henk Jan Verhangen
データベース
1.世界の防波堤のデータを 280 例以上収集している.
2.分類は,傾斜堤,直立堤,混成堤,その他となっている.
3.記載事項
1)国名,港名,防波堤の分類
2)防波堤のデータ:延長,幅,建設期間,建設開始時期,完成時期,建設費
3)設計データ:波高,周期,断面の諸元,使用ブロック等
4)所有者,施工者,コンサルタント,水理実験所,注釈
5)参照事項
6)写真と断面図
4.このデータベースは,データの更新や追加等のメンテナンスがほとんど行われていな
いことが問題である.
ちなみに,日本について調べると 16 例が載っているが,いずれも 1979ー1981 年に完
成したもの,あるいは完成年の記載のないもので,港も日本海側の港湾を除き主要なも
のがほとんどはいっていない.
5.www.breakwaters.nl で接続が可能
アンケート
1.2002 年と 2010 年に実施したが,回答はあまり多くない.
英国の 162 件が最高で,日本からはゼロ.
2.報告書に対する評価
1)品質:手頃が最大.
2)対象:良が最大.以下,部分的に良,不良.
3)サイズ:手頃が最大.以下,CD→有料でより大きく→無料でより大きく
一般的に厚いのは好まれない.
4)料金:会員無料が最大.以下無料と続く.
5)参加:なしが最大
6)最も人気のある報告
56%:1997 年の「進入航路」
45%:2002 年の「防舷材」
B - 17
(上田
PIANC MMX 論文概要
B - 18
茂)
(上田
PIANC MMX 論文概要
B - 19
茂)
(上田
PIANC MMX 論文概要
B - 20
茂)
(上田
PIANC MMX 論文概要
B - 21
茂)
(上田
PIANC MMX 論文概要
Bー9
茂)
Navigation Channels
126 Risk mitigation through DUKC-Case study port of Melbourne
William Terrance O7brien; OMC International, Australia
Peter Wiliam O’brien; OMC International, Australia
この論文は船舶のアンダーキールクリアランス(UKC)を探知するシステム(DUKC)
について書かれている.DUKC は船舶の諸条件,海象条件から船体動揺や船体沈下を計算
し UKC を求めている.近年,ポータブル計測器(PPU)が開発されている.メルボルン港
では,南から有義波高 5m もの長周期波が,7kt の潮流と共に作用する.この計測値の信頼
性を高めるために実船観測が行われ,DGPS の記録と比較して精度を確認している.
Figure1 の WaMos および Triaxys はブイによる波高と潮流の観測地点である.Figure 2 は
その記録である.下図は実船観測と DUKC による船体動揺の許容値との関係である.
B - 22
(上田
PIANC MMX 論文概要
Bー9
茂)
Navigation Channels
256 Comparisons of PIANC and CADET ship squat prediction
M.J.Briggs; Coastal Hydraulics Laboratory, USA
P.J.Koop; Naval Surface Warfar Center, Carderock Division, USA
A.Silver; Naval Surface Warfar Center, Carderock Division, USA
I.Mathis; Insitute for Water Resouces, USA
スコートは船
体沈下であるが,
制限水路では
UKC を確保する
ためきわめて重
要である.
PIANC では過
去数多くのスコートの推定式を
提示しているが,これらは使い勝
手はよいものの,在来船に関する
実験などに基づいて提案された
ものであるので,大型コンテナ船
への適用には課題がある.CADET は米海軍の実船観測データを統計解析した結果に基づい
てスコートを推定するもので CHL において開発された.ここでは PIANC の 5 つの提案式
と CADET の推定式による計算値を比較している.下図はその一例である.
B - 23
(上田
PIANC MMX 論文概要
茂)
Bー9 Navigation Channels
129 Evaluation of Flow fields for their Impact on Manouevring
M.H.A.Kaarsemaker; Witteveen+Bos, The Netherlands
O.M.Weiler; Delft Hydraulics; The Netherlands
G.Kant;Port of Rotterdam, The Netherland, H.J.Verheiji; Delft University of Technology
航路に直行する流れは操船上やっかいなものである.ここでは,流れが操船に及ぼす影
響を検討している.Figure1 はロッテルダム港外の航行船舶の航跡波を示したもので,流速
の相違が明瞭に確認できる.Figure2 は流速と舵角の関係を示したもので,両者の相関性が
よくわかる.論文には理論が詳しく記述されている.
計算例として,Maasvlakte2 の建設前後の航路周辺の
流れと操船への影響を示している.
B - 24
(上田
PIANC MMX 論文概要
B - 25
茂)
(平石
PIANC MMX 論文概要
B-12
哲也)
Breakwater
146 Designing A New Low-Reflectivity Quay wall Caisson
(低反射型ケーソン式岸壁の設計)
M.Martinez, J.Manual, D.Yague, Cyes Construction Company
J.M.Garrido, D.Ponce de Leon, A. Berruguete, Iberport Consulting
J.A. GonzalezーEscriva and J.R.Medina, Universidad Politecnica de Valencia
港湾の荷役稼働率を上げるためには岸壁からの反射波を抑止する必要がある.最も広く
使われている手法はスリットケーソン式(直立消波式)岸壁で,空気室の長さが波長の 1/4
のときに大きな効果を有する.しかし,波の周期が長くなると効果が小さくなる.そこで,
長周期の波に効果を有するセル構造組み合わせケーソンを提案した.これは,直立の前壁
に穴をあけ,その背後に隣接するセルとの間に通水孔を有するセル集団を設置した構造で,
セル間での水の移動は距離が長くなるために長周期の波に有効となる.実験の結果,新し
い構造は長周期の波の反射率低減に効果があることが判明した.そして,現在バレンシア
港において実施工を行っている.
(新ケーソンの構造(b).
(a)は,比較のために用いた JARLAN タイプ)
*実験の結果をみると,目的とする 8s から 15s の周期帯では,M3 タイプの反射率は約
0.5 になっており,長周期の波に対して効果を有していることが示されていた.
B - 26
(平石
PIANC MMX 論文概要
B-12
哲也)
Breakwater
156 Harbour of Ostend: Layout of Breakwaters and Seawall inside the Harbour
(オステンド港における防波堤と護岸のレイアウト)
P.DeWolf, S.Gysens, J.Goemaere, K.Trouw, Flander Co.
ベルギー国の Ostend 港は,施設利用が進むにつれて,越波の問題が生じ,港内の擾乱
も顕在化するようになった.そこで,最近なされた防波堤の新設と拡張について概要を示
す.
特に防波堤の越波による港内への擾乱伝播に対して,そこで,港内の護岸については,
越波対策として,直立壁の背後に越波貯留地を設けた構造を採用している.波の計算には
ブシネスク方程式モデルを用いている.
対策以前の港内の様子
新設の防波堤と改良護岸の位置
(越波を一時的に受ける空間)
新しい護岸の断面
*越波許容型の護岸形式の実用化であり,我が国でも活用できる.
B - 27
(平石
PIANC MMX 論文概要
B-12
哲也)
Breakwater
240 Landeyjahofn Ferry Harbour at the South Coast of Iceland
(アイスランドの南海岸でのフェリーターミナルの建設)
Gisli Viggosson, Sigurdur Gretarsson, Icelandic Maritime Administration
アイスランドの南海岸に新しいフェリーターミナルを建設する計画がある.これは,沖
合の Westmann 島へ渡る経路を短くし,輸送時間を 30 分短縮することができる.ここ
では,波浪条件の検討結果と計画の概要を示す.
波浪条件は,世界でも最も厳しく,16m の波高が記録されている.計画では,750m の
捨石型防波堤を 2 本建設し,港口部を幅 90m,深さ 8m とする.岸壁の水深は 5m から
8m で,航路水深は 7m とした.フェリーターミナルは現在建設中で,2010 年夏に開港
する.
下図は,港周辺の地形と実験状況を示す.
*計画では飛砂を止めるために,植栽を作る計画である.波の計算だけでなく,港口部も
含めた
漂砂移動計算も行っており,精度の高い検討がなされている.
B - 28
(平石
PIANC MMX 論文概要
B-12
哲也)
Breakwater
257 Manifa (Saudi Arabia) Large Scale Experiences with Breakwaters
(Manifa 港における防波堤の大規模実験)
P.De Pooter, Jan Del Nul, M.de Man, Jan Del Nul, E.Van Melkebeek, Jan Del Nul
W.Van Alboom, SECO
Manifa 地区において石油掘削用の小島を結ぶ 41km の長大道路が検討されている.道
路の両側は捨石傾斜層で被覆され,石の質が重要である.この問題は建設当初からのモ
ニタリングで解決を試みる.
なお,石の性質については資料によってばらつきが大きく,模型実験による破壊限界の
設定や越波の検討なども重要である.下の図は現場での石の形状がばらつく状態を示し
ている.
被覆石の安定性は,2 次元および 3 次元実験で調べているが.論文中では結果を示されて
いない.
B - 29
(平石
PIANC MMX 論文概要
B-12
哲也)
Breakwater
267 A Database of Major Breakwaters around the World
(世界の主要な防波堤に関するデータベース)
N.W.H.Allsop, S. Cork, H Verhagen,HR Wallingford
1970 年代に防波堤構造に関するデータベースを作成した.その際の考えを用いて,新た
なデーやベースを作成した.構造は 4 つに分かれており,データベースの使用法も示した.
データベース作成にあたって,各データが不完全であったり,更新されていなかったり,
保存されていなかったという問題点があったが,幅広い国際協力のおかげで完成すること
ができた.
下図はデータベースの表示例である.
防波堤の種類は以下の 4 つに区分されている;
1) 石で被覆された捨石堤
2) 商品化された波消しブロック等で被覆された急傾斜の捨石堤
3) バーム防波堤(沖合の砂投下で作った砂州状の防波堤で,天端は海面以下である)
4) ケーソン型防波堤(日本に多い)
B - 30
(鈴木
高二朗)
論文番号:52
著者:鈴木高二朗
(鈴木高二朗・中村由行・下迫健一郎・西村大司)
題名:Long term water quality monitoring at the mouth of Tokyo and Ise bays
using ferry(フェリーを用いた東京湾口と伊勢湾口の長期水質観測)
概要:2003 年から東京湾口と伊勢湾口で実施されているフェリーを用いた水質と流況の連
続観測について、その計測手法と計測結果について述べている。東京湾口では 6 年以上の
観測データが蓄積されており、その結果、海水交換日数が春と秋に約 20 日、冬に 40 日で
あった。これまで夏の海水交換日数が小さいと言われていたが、実際には密度成層の発達
によりエスチュアリー循環が弱められ、夏季の海水交換が小さくなっていることが分かっ
た。一方、伊勢湾口は東京湾口と比較して、湾口幅が小さく、大潮の際に混合した海水が
伊勢湾の中に流入しやすいことが明らかになった。
Internet
GPS
ADSL
Wireless LAN
Toba
Irago
Isewan Ferry “Ise-Maru”
8trips/day
55min/trip
90m
Current measured by ADCP
Salinity, Water Temperature
Irago
Pass
18km
図1
東京湾口のフェリー観測
図2
伊勢湾口のフェリー観測
Residence time of river water (day)
-2
10
水深
(m) 30
-2
0
8 6
水深
(m) 30
2
50
-2
-2
90
5.0
25
(km) 10
7.5
-
-2
-2
0
8 6
70
2007年
90
70
75
-
-2
40
2006年
(km) 10
30
(cm/s)
130
0
25
5.0
7.5
(km) 10
-2
20
0
6
20
プラスが東京湾へ流入
-2
10
マイナスは流出
0
50
7.5
(km) 10
(cm/s)
130
0
2.5
50
75
2005
2008
2006
Average
0
110
2.5
2004
2007
2008年
(cm/s)
130
0
0
110
5.0
2.5
10
50
110
2
(cm/s)
0
50
6
90
2005年
130
0
水深
(m) 30
0
90
-2
-2
70
2
50
-
50
0
(cm/s)
130
0
10
水深
(m) 30
110
110
水深
(m) 30
0
0
90
200 年
10
2
70
0
-2
8 6
50
0
70
-
10
1
(km) 10
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
Month
図1
東京湾口の年平均残差流分布
図2
C -1
東京湾口の月別の海水交換日数
12
(鈴木
高二朗)
論文番号:185
著者:S. Zappala, C. Mulvey, Dr. D. Clarke, J. Gallo, D. Davis, and J. Van den Sype
題名:Suspended Sediment Plumes Associated with Navigation Dredging in NY/NJ
Harbor (NY/NJ 港における航路浚渫による浮遊底質の拡がり(プリューム)について)
概要:US 陸軍工兵隊(US Army Corps of Engineer)のニューヨーク支部は、ニューヨーク
港とニュージャージー港の浚渫工事を実施している。州と連邦の規制局は浚渫中の底質の
再浮遊が生態系に最も影響を与えるものと特定した。そこで、浚渫による底質の巻き上が
り量を調べるためのモニタリングが実施された。モニタリングは、光学センサー(OBS)と超
音波センサー(ADCP)の両方を用いて実施された。ADCP を用いたところ、発生源から
620m 離れた位置でも、10mg/l 以下の濁度の浮遊底質を捉えていた。また,浚渫の頻度や
底質の違いで、濁度に違いが出ることが分かった。この調査結果は、浚渫事業の工程を管
理する上で役立つとともに、今後の生態系の資源管理にも役立つものである。
調査方法は、定点に係留された OBS と調査船に設置された ADCP(図1)を用いて実施
し、海水のサンプルを採取して(図 2)、TSS(全浮遊粒子)を計測することで ADCP の超音
波によるリモートセンシングと TSS 量を結びつけた。ADCP の計測は満潮、干潮、および
バージの位置、バケットの位置、およびバケットの開閉など様々な条件で計測を行った。
図3、4は ADCP で 2008 年 11 月 19 日の下げ潮時に計測された ADCP による濁度分布
であり、浚渫時に発生した濁度の拡がり(プリューム)が、徐々に下流に広がっていく様
子が分かる。浚渫地点では 300mg/L 程度の濃度が、150m ほど下流に流されると、濁度が
100mg/L を下回り、かなり減衰することが分かる。
Newark 湾では、カレイの移住、越冬、産卵の時期における浚渫のインパクトを避けるた
め、資源管理の部局(NYSDEC,NJDEP)が、2 月~5 月までの期間の浚渫を禁止している。
しかしながら、今回の調査では、浚渫による浮泥の濃度は洪水時に比較すると小さく、必
ずしも浚渫だけが悪影響を及ぼしていない可能性を指摘している。
今後、本研究の調査などから、より検討を深めていくとしている。
図1
ADCP を積んだ船舶による計測
図2
C -2
自動採水装置
(鈴木
図3
図4
浚渫による濁度の断面分布(上流から下流)
浚渫による濁度の拡がり
C -3
黒点が浚渫地点
高二朗)
(鈴木
高二朗)
論文番号:185
著者:A.C. Birchenough (英国 Cefas), S.G. Bolam (Cefas), G.M.Bowles(英国 MFA),
B.Hawkins(MFA)
題名:Monitoring of dredged material disposal sites at sea and how it links to licensing
decisions (浚渫土砂投棄地点のモニタリングとそのライセンス発行との関係について)
概要:England と Wales には、150 を超える浚渫土砂の投棄地点がある。これらの地点で
は、2500~4000 万 ton の浚渫土砂毎年投棄されている。将来の国家的、国際的な政策に反
映させるため、これらの場所での海洋環境をモニタリングし、情報を集約することが必要
とされている。
規制局(Regulatory Agency)が浚渫土砂投棄のライセンスを出すか出さないか、また、
ライセンスの修正をほどこすかといった判断をするために、統一的なモニタリング方法が
実施されている。
Cefas(イギリスの環境・水産・水資源センター)では、MFA(Marine & Fisheries Agency
浚渫のライセンスを出す団体)を代表して、毎年モニタリングを実施している。ただし、
全ての箇所について実施するのは困難なため、代表的な地点(地域にとっての重要性が高
い地域)においてモニタリングを実施している。
この際、モニタリング箇所を 3 段階に分けて決定しており、それぞれの段階に分けて、
モニタリングの項目を規定している。本論文では、3 段階のモニタリング手法について発表
している。
C -4
(鈴木
高二朗)
論文番号:232
著者:B. de Bruyn and Ph. Rochette (フランス海洋・河川技術センター)
題名:IMPROVE THE QUALITY OF ENVIRONMENTAL STUDIES FOR INLAND
WATERWAYS PROJECTS (内陸海運の環境調査の質の向上について)
概要:フランスでは、大きな公共事業を実施する際に、環境調査が必須となっている。し
かし、これまでの調査は、生物種の保護に注視しすぎ、市民の生活へ寄与する生態系サー
ビス全体の評価には必ずしも結びついていない。そこで、この研究では、水路の環境機能
を様々な時間・空間スケールで抽出し、評価する方法を提示している。調査地域は、図1、
図2のように水路や堤防の冠水・干出部などに分けられ、それぞれに対していくつかの指
標を求める方法をとっている。Occupancy banks index, Shoreline type index など、10 個
ほどの指標が定義されている。ここで提案されている方法はより広い分野に対応している。
図 1 調査地域の分類
図2
調査地域の分類(平面図)
C -5
PIANC MMX 論文概要
(平石
セッション
哲也)
Poster Session 5c
Dredging and Coastal Engineering
開催日
5 月 12 日
12:00-12:30
・ポスターセッションは,2F フロアにおいて 6 分間の概要発表が行われるとともに,展示場にお
いて,会期間中ポスターが掲示された.本セッションでの発表は,以下の 3 編である;
1. 論文番号89
著者:A . Nybakk, NGI, Norway, M.Kvennas, NGI, Norway, R.S. Grini, NGI, Norway
表題:Risk assessment of the sediments in the Harstad harbor, Norway
(ノルウェー国ハルステッド港の底質汚染について)
概要:
ノルウェー汚染管理委員会の指示により Harstad 湾の土壌汚染について調査を行った.これま
での調査において,高レベルの有機物汚染が認められ,湾内で取れる魚介類の消費が禁止されて
いる.Harstad 湾は,ノルウェー沿岸の湾内土壌浄化が必要とされる 17 地域のひとつである.今
回は,より詳細な調査を行い,リスクアナリシスを実施した.
調査では,汚染物質の供給源を特定し,それぞれがどの程度土壌に堆積していくかを細分化し
た区域ごとに明らかにした.対象物質は,PAHs(炭化水素),Bp(ベンゼン),PCB,
TBT,
Cu(銅),
鉛(Pb), 水銀(Hg)である.
本文では,例として Cu の供給源毎の含有量が示されている.造船所からの個体廃棄物に最も
多く含まれており,主要な汚染原因となっていることが分かる.
本調査の結果,湾内の底質の大部分は浚渫等によって除去する必要があり,それに要する費用
は約 28million Euro(約 30 億円)と見積もられた.
ポスター会場での掲示
2. 論文番号215
C-6
PIANC MMX 論文概要
(平石
哲也)
著 者 : David Morellato, CETMEF, DELCE, France, Michel Benoit, Saint-Venant
Laboratory for Hydraulics, University Paris Est
表題:Constitution of a numerical wave data-base along the French Mediterranean coasts
through hindcast simulations over 1979-2008
(1979-2008 年の波浪推算によるフランス地中海沿岸での波浪データベース)
概要:
近年,CETMEF,
EDF,R&D LNHE は波浪推算モデルの確立に協力してきた.対象海
域は,北大西洋,イギリス海峡,北海,地中海である.データベースは,1979 から 2002 年
までをカバーしている.データベースは ANEMOC と名づけられ,Web サイトで利用できる.
本論文では,西地中海における計算例を示す.
計算は,前記のように 30 年間にわたって行われ,1 時間ごとに波高を求めた.計算格子は
8770 で,分解能はフランス沿岸で 2~3km,スペイン沿岸で 6~10km である.推算データの
検証は,1992~2008 年における沿岸でのレーダー観測と 27 の波浪ブイ観測値である.本モ
デルを用いることにより,年平均の波浪条件や異常時の波浪条件を求めることができる.
ポスターの掲示
3. 論文番号309
C-7
PIANC MMX 論文概要
(平石
哲也)
著者: T. Hiraishi (former member of Port and Airport Research Institute)
表題:Effect of coastal vegetation for reducing tsunami force in 2007 Solomon Island
Earthquake Tsunami
(2007 年ソロモン地震津波における海岸林の津波力低減効果)
概要:
2004 年のインド洋地震津波においては,沿岸の海岸林が津波の力を弱め,背後の家屋を守った
例があった.海岸林の津波防御効果は,防波堤などの対策がとれない南太平洋の島嶼国等におい
て津波防災技術として活用が期待できる.数値計算等ではこれまでにも効果が確認されているが,
現地調査による効果の検証例は少ない.本論文では,2007 年のソロモン諸島における地震津波の
被災地(ギゾ島)において現地調査を実施し,海岸林の防災効果を調べた.調査では,同じ地区
で流された家屋と残った家屋の前面地形と植生を調べ,作用力の差を調べた.
その結果,津波後に残った家屋の前面には直径 1m の大木が群生しており,その遮蔽効果によ
り津波力が 20%減衰されることが判った.また,地表の粗度を考慮すると減衰率は 40%になる
ことが分かった.
質問:破壊された家屋と残った家屋の前面海浜は同じか?
両者は,同じ海岸に隣り合って位置しており,海底勾配等は一様と仮定している.
ポスターの掲示
C-8
(篠原
正治)
Session 11C “Dredging and Sediments”の論文発表概要
1.一般的な土砂堆積管理システムの応用における近年の動向
Robert Kirby, Chairman of PIANC Working Group 43 “Minimizing Harbour Siltation”
国際海運・港湾の発展につれて、さまざまな船種の大型化が進み、これとともに陸上側(landside)
の荷役取り扱い効率、中でもコンテナ貨物の取り扱いに関する効率性は格段に高まってきた。その
一方で、水上側(waterside)の流れと土砂堆積に関する技術進歩は大きな遅れをとっており、多く
の港湾で船型の大型化と陸上施設の発展を制約している要因となっている。このような問題に対処
するため、Working Group 43 は特に泥状堆積物の処理方法に焦点を当てた研究を行ってきた。今回
の発表はその概要を報告するものである。
泥状堆積物に対する対処方策はいくつかの方法でグループに分類できる。一つの方法は、堆積が
問題となっている港湾の形態(ドック、閘門、泊地、航路等)による分類であり、もう一つの方法
は、対処方策の自然な分類として、①堆積物を除去する(KSO)
、②堆積物を流動させる(KSM)
、
③堆積物があっても航行可能とする(KSN)の3種類に分けられる。
これらの方法の他に、流れと堆積を制御できる斬新な対処方策も存在し、その方策は基本的には
水底の堆積物を浚渫するのではなく、水中の懸濁物質に対する方策である。この堆積管理システム
(SMS)は堆積物をシステムの中に保つ方法であり、Keep Sediment In the System(KSIS)と呼ば
れる。WGは過去170年間にも遡って、多くの手法をレビューした結果、22の手法に整理でき
たが、これらのうちで特に本質的な手法として次の五つを取り上げる。
① 自働流出 Auto-flushing(KSM)
いくつかの異なった適用事例があるが、ドイツの Leer 港のケースではドックの底面に 1000 分の
1の勾配をつけて最深部に水中ポンプを設置し、堆積泥土を排出管から外海に放出させており、
この方式を採用することにより、維持浚渫はほとんど不要となった。
② 港口部の流れの最適化システム Entrance Flow Optimization System(KSO)
ハンブルク港の Kohlfleet 地区の事例では、河川沿いの泊地の入り口に流向屈折壁(Current
Deflecting Wall)を設置して、泊地内のシルト堆積量を45%削減することに成功した。
③ 受動航行水深 Passive Nautical Depth(KSN)
この方式は比較的密度の薄い流体泥土におおわれた航路・泊地の実用的水深を測定する手法であ
る。通常の音響測深器で測定される水深を航路・泊地の水深と認定せずに、さらに深い水深まで
を船舶航行可能な水深と認定するものである。
④ 能動航行水深 Active Nautical Depth(KSN)
この方式は近年開発されたもので、海洋物理化学と海洋微生物学の知見を活用したものである。
ドイツの Emden 港では、流体泥土を水中ポンプにより吸い上げ凝縮しつつある泥土の分子間結合
を破壊してから再びもとの場所に戻すものである。この方式のよりそれまで年間400万トンで
あった浚渫量がほぼ不要となった。
⑤ 現場調節 In-situ Conditioning(KSN)
泥土をポンプによりホッパーに吸い上げ、粘性の層流を作りエアレーションにより好気性細菌の
C-9
(篠原
正治)
活動を活発化させて土粒子の沈降・堆積プロセスを停止させるものである。Emden 港の事例では
能動航行水深との組み合わせにより、航路・泊地の維持管理費が年間 1250 万ユーロから 400 万
ユーロに削減された。
2.フランスにおける浚渫
-
その発展
Philippe Raujouan, Centre d’Etudes Techniques, Maritimes et Fluviales
フランス政府はフランス国内及び海外領土における港湾の浚渫の状況を毎年調査している。この論
文はその概要と浚渫土の処分が海洋環境に与える影響についてとりまとめたものである。
過去5年間におけるフランスの港湾における維持浚渫土量は 3,550~3,850 万m3とほぼ一定であ
り、その内七つの大港湾(Grand Ports Maritimes)における土量が約8割を占めている。また、浚
渫土量の 50%以上は河口港から発生している。七大港における浚渫の工法としては、Hydraulic が
58%、Water Injection が 16%、Mixed(混合)が 26%、Mechanical が 0.1%となっている。浚渫土
の処分方法としては、七大港においてはすべて海洋投棄がなされている。七大港においては浚渫土
の汚染レベルが低いため、海洋投棄が行われているが、それ以外の一部の港湾において汚染レベル
が基準値を超えている場合は、陸上処分を行うこともある。浚渫土の海洋投棄の汚染基準は金属と
PCB と TBT について、レベル1とレベル2が定められており、レベル1以下であれば海洋投棄が許さ
れ、1以上2以下であれば通常は陸上処分され、レベル2以上の土については高濃度汚染土として
特に慎重な取り扱いが要請される。このレベル1と2の基準値は 10 年間に及ぶ研究の上で設定され
た。
3.沖合の珊瑚礁域における大規模航路の整備
Qi Xiu-lian, Shanghai Tongsheng Investment Group & Ding Jiang, Shanghai Waterway Institute
上海羊山港における大規模航路の整備に関しては、広大な珊瑚礁の存在、激しい潮流、複雑な流れ
のパターン、揚子江からの流下土砂による埋没などの多くの困難な課題を克服する必要があった。
羊山港への入港航路を設定するにあたり、北側航路と南側航路の二つの代替案の比較検討を行った。
航路の屈曲度合、主潮流の方向、珊瑚礁の分布等を考慮した結果、北側航路を採用することに決定
した。外港部の有効航路幅は航行船舶(当面は10万トン、将来は15万トン)の大きさを考慮し
て670mとした。入港船舶のシミュレーションによれば、12万トンから15万トンの大きさの
コンテナ船の入港頻度は一日当たり0.8隻となり、これは全体の入港船舶数の3%以下である。
羊山港の整備に合わせて段階的に航路を整備していくこととし、それぞれの段階における船舶の
航行密度と自然条件を検討して、航路の位置と断面形状を決定した。増深工事を行う必要がない部
分については10万トンの船舶が行き会うことのできる航路とし、浚渫を行う必要がある部分につ
いては当初は一方向航路として、将来は往復航路とすることとした。
航行船舶の船種と船型の分
布、風の状況、操船シミュレーション、専門家へのヒアリング等を考慮して、羊山港への主航路は
往復航路幅を550m、一方向航路幅を300m、航路水深を16.5m、航路法面の勾配を1:
1.5と設定した。
C-10
(篠原
正治)
主航路の長さは約11kmに及び、現有水深はほぼすべての区域で16.5m未満であるため、
大量の浚渫を必要とした。浚渫後の土砂堆積を予測するため、季節毎の堆積の状況と流れに含まれ
る漂砂量を観測するとともに、定期的に海底地形断面図を作成した。さらに、潮流実験、固定床堆
積実験、潮流数値シミュレーション等をさまざまなケースについて実施した。その結果、主航路の
浚渫後の土砂堆積量は年間1.1mと予測された。海底の土質は主に泥土であり、浚渫は容易でポ
ンプ式浚渫船を用いることとした。浚渫土量は第1期で1400万m3、第三期で790万m3とな
る。
航路における航行安全を確保するため、数多くの先進的な航行援助施設を設置した。それらは、
二つの灯台、13の光ビーコン、一つの灯台船、27の光ブイ等である。さらに灯台にはレーダー
とAIS応答装置が備えられ、光ブイにはレーダー反射器が設置され、灯台船にはレーダー応答装
置、AIS応答装置、霧鐘が備えられた。またすべての灯台船と光ブイにはLED照明によるネー
ムプレートを付けた。これらの装置の電源としては、太陽光パネルとメインテナンスフリーの蓄電
池を用いた。
4.英国における汚染浚渫土の管理
K. S. Black, Technical Director, Partrac Ltd.
英国における産業化の課程で、沿岸部と港湾内における水底土砂の汚染が進み、そのため環境上
及び社会的なリスクを抱えている。これらの汚染された堆積土砂は港湾の開発と海運の進展に伴い、
浚渫されることとなる。英国政府は汚染浚渫土の管理に関わる新たなフレームワークを策定するた
めの研究を3年前から進めており、今年がそのとりまとめの年となっている。このフレームワーク
は関係者に対して、汚染された海洋堆積土の管理に関するガイドラインとなるものであり、英国内
における関係データ、責任原則に関する問題点、現行及び今後の法制度の影響、現在生じている汚
染を防除するための方策、汚染土の新たな処分方法の検討等についてとりまとめているところであ
る。
5.土砂堆積を考慮した港湾の平面計画の確率論的最適化
J. Headland, Sr. Vice President, Moffat & Nichol
本論文は土砂堆積を考慮した港湾開発計画の経済的な最適化手法についての提案を行うものであ
り、アプローチとしては、港湾の建設コストと維持管理コストを対比させて検討する。沿岸部に新
たな港湾を建設する場合、一般的に言って港湾施設が海岸線から沖合に遠ざかるにつれて浚渫コス
トは減少するが、その一方で防波堤、埠頭等の建設コストと埋め立てコストは増大する。また、沖
合に向かうに従って、年間の維持浚渫のコストは減少する。最も経済的な港湾開発計画を選択する
ためには、次ページに示す Figure3 において Total Costs の極小値となる施設配置計画とする必要
がある。
C-11
(篠原
正治)
この検討を行うに当たって、下図に示すモデル港湾を考え、航路(幅400m、水深14m)
、防
波堤、埋め立て用地、埠頭(延長 3000m)の諸元を図に示すように設定した。
Option 1
Option 4
左図(Option 1)は最も沖合に設置したものであり、逆に最も内陸部に設置する Option4 は右図の
ようになる。これらの中間のケースを Option 2 と Option 3 とする。これらの4つのケースについ
て耐用年数を50年とし、6%の割引率を想定し、モンテカルロ法によるコストの確率分布も考慮
して、それぞれのケースの建設コストと維持浚渫コストを比較したものを次ページの図に示す。こ
のモデルケースでは Option 3 のケースが最もトータルコストが安くなる。
C-12
(篠原
正治)
6.沿岸漂砂が卓越する海岸でのバイパス港湾
Karsten Mangor, Chief Engineer, Shoreline Management
沿岸漂砂が卓越する海岸における港口部の水深を維持することは、多くの港湾特に砂浜海岸に位
置する小さな漁港にとっては大きな課題である。本論文は沿岸漂砂帯幅と港湾の大きさとの関係を
踏まえて、港口部の水深確保と維持浚渫について考察するものである。
漂砂海岸における港湾への堆積量は当該海岸の漂砂量すなわち波浪状況に依存しており、特に漂
砂帯の幅と比較した港湾施設(防波堤等)の相対的な突出度合いに影響を受ける。砂浜海岸におけ
る港湾の最適配置形状は多くの場合いわゆる“バイパス港湾(bypass harbour)
”と呼ばれる、外郭
施設がなめらかで均整がとれており、港口部が海側に直接突き出している形状である。外郭施設を
このような形状にすることにより、漂砂が港湾の中に入り込まず、反対側へバイパスされることが
容易になる。漂砂帯の幅と港湾の外郭施設の相対的大きさを考慮し、外郭施設の形状を工夫するこ
とにより港湾内への堆積土量をある程度コントロールすることが可能となる。
具体的な事例としてデンマークの Thorsminde Harbour を取り上げる。次ページの図の上段は実際
の測量結果であり左が pre-storm で、右が post-storm である。下段の左図は防波堤の形状を変えた
場合の漂砂シミュレーションであり、左が pre-storm で、右が post-storm である。これを見ると、
港口部において3.5mの水深が post-storm でも確保されており漂砂による堆積がほとんど生じて
いないことがわかる。
C-13
(篠原
C-14
正治)
(加藤
広之)
入善漁港海岸の高波災害について
1. 目的
富山県入善漁港海岸では,平成20 年2 月23 日~24 日の低気圧に起因する高波浪により,
日本海側特有の「寄り回り波」と呼ばれる通常よりも周期の長いうねり性波浪が発生し,緩
傾斜護岸や離岸堤・潜堤の海岸保全施設だけでなく,護岸からの越波・越流により背後集
落においても甚大な被害が発生した.本研究は,うねり性の高波による海岸保全施設の被
災要因を明らかにすることであり,さらに今後想定を超える高波浪により越波・越流が発
生した場合に備え,背後集落への2次災害を最小限に留めるフェールセーフの観点から副
堤(胸壁)作用する波力及び越波流量を検討したものである.
2. 内容
(1)被災要因の推定
被災時の気象・海象条件や富山湾の地形的特徴を整理し,入善漁港海岸周辺については
ブシネスク方程式による詳細な波浪変形計算を行い,被災波浪および被災要因を推定した.
(2) 2次災害防止の副堤の検討
今回の被災を引き起こした「寄り回り波」の予測は現状では困難であることから,再び来襲
した場合の被害を最小限に留めるフェールセーフの観点から海岸護岸と背後集落の間の副
堤を検討した.これらを精度良く推定するために数値波動水槽による数値計算を実施し,
越波流量および作用波力の検討を行った.
3.結論
ブシネスク方程式により、図-1 に示すように被災した各施設の背後で80cm を越える水
位上昇が見られ,一部の潜堤や副離岸堤前面で7m を越える波高となった.さらに,入善漁
港海岸の背後地は海岸から陸域に進むにつれて標高が低くなっており,護岸を超えた水塊
が集落へ流れ込んだため被害が拡大したことが明らかとなった.
副堤に作用する波圧分布は台形分布となり,大量の越波水が流入する場合,波としての
挙動に近いことが認められた.さらに,緩傾斜護岸背後の護岸越波状況(図-2)を検討し
た.図-3 には緩傾斜護岸法先位置における水位変動,60s 間移動平均水位,および越波流
量の時系列を示した.数分間隔の水位の長周期変動が見られ,長周期水位のピーク付近で
越波が発生したものと推定された.
図-2
護岸の越波状況
図-3
護岸法先の水位、移動平均水位、越波流量
C-15
(179) Master Plan for Waterways Maintenance (水路の維持管理マスタープラン)
Henri Allender, (フランス水路局:VNF)
水路の維持管理マスタープランは、維持管理政策およびその戦略とサービスの質を明確に描く
ことである。ここでは、安全性、有用性、信頼性の 3 項目のフランス水路局(VNF)管理目標に
基づき、水路ネットワークと施設の性能レベルを規定している。また、実現のための最適な方法、
資金規模および組織を示している。特に、目標性能の達成には、予防保全手法を開発し適用する。
このマスタープランの作業工程は、インフラ管理者の基本的作業そのものである。すなわち、
1.維持管理する施設は?→一覧表
2.施設の状態は?→現状の検査
3.適正状態への補修方法と維持方法?→管理戦略
4.優先順位は?→ランキング
マスタープランを各地域へ適用するには、組織の維持管理機能の再編を伴う。今日、維持管理
は、一般業務歳出とみなされている。一般に、資金(特に、人的資源)は、益々窮屈になってお
り、維持管理資金も同様である。維持・管理が水路ネットワークの機能に直接的・不可欠な役割
を果たしており、VNF は持続的な改良を進め近代的な維持管理方法を整備する。
人的資源の重要性は、この計画の全ての局面に関わるもので、疑いなく、最も信頼できる実施手
段である。
Ⅰ.施設一覧表(基本的データベース)
総施設数 4300 以上:閘門(1800)、横断施設(960:暗渠 700、運河橋 28、トンネル 28 を含
む)、放水工(640)、航行堰(400)、補助システム(390:貯水ダム 52 を含む)
Ⅱ.施設の現存価値の確認検査
フランス初の検査(個別施設は100%、一様断面施設は10%)
破壊モード、効果および限界解析法(FMECA)
:①各構造物の機能分析と予備的機能解析の実施、
②破壊モードの解析(機能不全、操作不全、サービス不全などの予兆)に続く施設全体の役割の
系統的解析、③専門家の判断に基づく限界性基準の適用および各シナリオに対する破壊モードの
ランキング
施設の基本的機能の種類(安全性、水深確保、航行性、環境保護、長期間継続性)、施設の総合
健全性指標(各パーツの健全度・老朽度と重要度との積和)
Ⅲ.管理戦略としての施設補修と維持管理
① 補修の判断(各パーツの劣化程度、標準単価等から)②建替えの判断(各パーツの再建費用/
耐用年数の和)(各パーツの故障確率、理論的稼動寿命等から)③通常の維持管理の判断(主
要施設に必要な維持管理作業量に種々の補正を加える)
Ⅳ.補修作業のランキング
① 水路系統の重要性の評価(商業水運、水管理、ツーリズム)、②危険度解析(前記3要素+人
命・財産の安全性を考慮)
Ⅴ.利用者へのサービスに及ぼす維持管理戦略の影響度
ネットワークのサービス度指標の導入(有効性:構造物が稼動しない実際の日数、安全性:構
造物の欠陥箇所数、理論的有効性:構造物が稼動しない理論的日数)
Ⅵ.結論
本論は、フランスの水路ネットワークに対する維持管理政策および戦略を支える第一歩であり、
約1500人の維持管理要員に匹敵する途方も無い可能性を持っている。
維持管理戦略を実施するには、未だ多くの作業が残っている。必要総資金は13億ユーロと見
積もられ、リスク解析やリスク許容レベルの導入などによる微調整もある。補修工事、改良、新
規開発(セーヌー北ヨーロッパ運河は含まない)の年間必要資金は概算で3億ユーロである。
この戦略の遂行には、以下に示す継続的改善(PDCA サイクル)が必要である:一覧表の更新、
定期的再検査、施設の維持管理計画の見直し、建替えの判断基準の見直し、操作・性能指標やコ
ンピュータ支援維持管理(CAM)などの活用。
(51)Strategic Asset Management at the Port of Melbourne (メルボルン港の戦略的資産管理)D. Lo
Bianco and B. Giddings(メルボルン港湾公社)
Ⅰ.メルボルン港の運営と資産
メルボルン港はオーストラリアのビクトリア州南岸に位置する。メルボルン港公社(PoMC)
はビクトリア州政府の直轄会社であり、年間コンテナ取扱量は国内 36%、230 万 TEU である。
主要施設の総量は、2232 施設、18 億 1100 万 AU ドルである。
Ⅱ.戦略的資産管理政策の概略(2008 年、PoMC 策定)
① 資産管理政策(持続的且つ投資に見合う収益を挙げる施設管理を行い、出資者・顧客に責任
を果たすこと)主要な項目として:
・ 全インフラ施設の資産管理のコンピューター化 ・資産・財政・文書管理および地理情報シ
ステム(GIS)との連携 ・資産状態のしっかりした評価方法の維持
・ 維持管理計画の修正を報告できる機構の維持 ・資産の価格と変遷、適正な単価
・ インフラを目的適合状態に維持・・・・等など
② 資産管理戦略(主要理念)
・ 政策と一体化した組織的目標の設定と資産の性能に関する責任の明確化 ・組織の主要業務
として資産管理を位置付ける ・不透明な資産管理を止め、企業内で調和
・ 資産性能の測定法の改良と明確化 ・ライフサイクル計画と価格算定の方法の標準化
・ サービスのアウトカムと組織目標に合致する主要資産の管理計画の開発・・・等など
Ⅲ.実施計画
① 既往の手法(専門会社による主要施設の検査プログラムに基づく)
② 戦略的方法と内容(PoMCは資産管理の方法の進化状況を示す成熟度モデルピラミッドを開発。
これによると、2006 年の基礎的レベルから堅実に進歩し、2010 年後半には最上の戦略レベル
に達すると予想される)
③ 戦略的資産管理の基本(基礎レベルと戦略レベルの違いは、入力中心ではなく出力中心であ
る点)
(戦略的資産管理の成功を測る目安は:・長期更新計画となっているか ・更新決定に
既往のデータが活用されているか ・施設の破壊予測と事前対策の可能性があるか ・施設
危険度管理は政策決定に繰込まれているか ・更新案の決定は投資にみあう現在価値に基づ
いているか ・インフラの計画過程はトータルコストに基づいているか)
④ 更新モデル(上屋、軌道、航路施設、建物の主要4施設について 30 年間の施設更新プロフィ
ールを示す。図には、更新費用の現在価格と新資産案を併記している。これより、事業推進
における望ましい資産更新の債務額の一次レベルの判断に役立つ。種々の検討を繰返してス
パイク状を平滑化し、実施の可能性を高める。
)
⑤ 危険度管理(不良施設による危険度を把握いておくことは重要である。このため、施設の更
新と施設危険度のプロフィールの関係を明示する。)
⑥ 最適な更新決定法(2010 年末までに開発。対策案毎に時価による純利益カーブを示し、適切
な実施時期を決定できる。)
⑦ ライフサイクル計画(個々のシナリオについてトータルコストを比較。より安い資産シナリ
オがより高額な年間運転費・維持管理費となることがしばしば起こる。)
⑧ データ管理・支援技術(GIS、航行管理にコンピューターの活用、施設の履歴管理など)
⑨ 業務過程の見直し(職員教育、30 年更新モデルの改良、トータルコストアウトカムの修正な
ど)
Ⅳ.結論
本計画は3年間に及び、多くの新技術が駆使されたが、2010 年末の計画完了までにはかなりの
作業が残っている。尚、本作業は、外部コンサルタント GHD Pty Ltd と Odysseus-inc Pty Ltd
の支援の下に PoMC が実施した。
(76)A Maintenance System for Waterway Infrastructures(水路施設の維持管理システム)
K. Kuehni(連邦水路工学研究所:BAW、ドイツ)
連邦政府は連邦水路および閘門、堰、カルバート、運河橋、灯台等の施設を所有管理しており、
そのネットワークの資産総額は 382 億ユーロである。資産管理に、IT に基づく資産管理システム:
EMS が開発されている。このシステムは、定期検査データと数値モデルにより、重要な意思決定
情報をもたらす。メリットは、
・ 予防保全作業の信頼できる予測
・ 経費削減、透明性および計画の安全性
・ 投資の持続性および航行安全性の増大
この管理システムは、現在、連邦水路工学研究所(BAW)によって試行されている。
Ⅰ.検査プログラム
ドイツ行政規則では、基本検査と監視の 2 段階の検査がある。
①基本検査(6年毎、手の届く範囲で主に簡易な計測・目視と触覚検査)
②監視(基本検査後 3 年目、公認土木技術者が基本検査データを基に行う)
構造物、検査および管理データはデータベース化(WSVPruf)され、EMS で処理管理される。
そのためのマニュアルも整備されている(2009 年)。
Ⅱ.予測方法
ドイツにおける劣化予測は、EMS のデータに基づき数値モデル(確率的手法:マルコフ過程お
よび残存解析)が用いられる。2モデルの結果はパラメータの精度に依存するが、現存構造物か
らは必ずしも十分な情報が得られていないので、別の専門家がインタビューとデルファイ法でデ
ータを得ている。
Ⅲ.結論および今後の対応
水路構造物に対する EMS の開発は、増加する交通の安全性、投資の持続性および予防保全の
信頼できる予測のためであった。定期検査、WSVPruf、研修方法、技術的予測法は、現地に適用
され、実データによるフィードバックがなされている。
連続的な交通安全を確保するため、信頼できる予防保全システムが不可欠である。これは、戦
略的資金および資産計画にも大きな利点をもたらす。今後の対応として EMS は、関連資産につ
いて欠陥予測と必要対策、費用と影響度を数量化する。その結果、
「適正時期に適正工事」の引金
となる。
(322)British Waterways’ Asset Management Model(英国水路公社の資産管理モデル)
G. Holland(英国水路公社)
Ⅰ.英国水路ネットワークの歴史
総延長 6800kmに及ぶ英国の運河と関連施設のほとんどは、1761 年~1830 年の「運河マニア」
期間に私企業によって建設された。年間 3000 万トンの荷役があったが、1830 年代の鉄道の出現
により、運河の利用は衰退していった。しかし、近年のレジャー・観光目的の運河ルネッサンス
に伴い、運河資産の管理戦略は重要な課題となっている。
Ⅱ.英国の水路
1962 年設立の英国水路公社は、延長 3200kmの水路に、閘門 1648、橋梁 3081、水路 412、
航路トンネル 54、大型アースダム 93、管理操作ビル 1500 以上、文化遺産 2600、古代遺跡 42、
重要動植物の数千の生息地を管轄している。ほとんどの施設は 200 年も前に建設され、いまだに
稼動しているが、その性能を必ずしも保証できない。Standedge トンネルや Falkirk Wheel リフ
トなど、幾つかの施設が近代的に再建されている。年 2 億ポンドの歳出は、政府資金が一部で、
ほとんどは BW の自己収入で賄われている。
Ⅲ.文化遺産価値
文化遺産なので、みだりに移設することは許されない。例えば、馬車用に設計された橋梁を荷
重 40 トンに耐えるよう近代技術で修復しなければならない。
Ⅳ.BW 資産管理の進化
BW の資産管理は 1970 年代後半から進展した。それまでは資産管理に対する知識も資金も乏し
かった。1980 年代に入り、緊急な維持補修や年間工事資金などを扱う初歩的な資産管理システム
が生まれた。1980 年半ばには、橋梁、ダム、トンネルなどの高い危険度施設に対する検査方法が
確立した。1997 年、総合的資産管理方法(AIP97)が導入され、BW 初の資産管理マネージャー
が指名された。BW の現在の定期的検査体系は、1990 年代後半に発展した。資産と資金データを
結合する必要性が高まり、2003 年には GIS システムと IT システムの結合と可視化、戦略的資金
シナリオのモデル化が実現した。
Ⅴ.資産検査
① 全長検査(ネットワーク上の施設の変化を、経験豊かな現地職員が毎月実施)
② 年次検査(水路技術者と全長検査官が共同で実施)
③ 主要検査(公認土木、地質、構造技術者や M&E 技術者による。資産の種類と 3~20 年間の
危険度に応じたサイクルで実施。重要変化に着目し他検査との比較基準に用いる)
Ⅵ.資産品質プロフィール
① 状態の分類:A(Very Good、新品同様)、B(Good)、C(Fair)、D(Poor)、E(Bad)
② 施設破壊による安全性を考慮した分類:1(軽微な損傷が 1 人)、2(複数の軽微な損傷)
、
3(重大な損傷が 3 人以下)、4(死者 1 人か複数の損傷)
、5(複数の死者)
Ⅶ.維持管理の遅れ
BW の目標は、分類 D と E の合計が 15%である。現在は約 20%、1990 年代後半は 30%だった
ので、かなり改善している。
Ⅷ.財源と BW 資産管理戦略(政府資金の減少、「水の包括的規制」による経費の増大などによ
り、懸念が増大している。水路の年間定常管理費は 8000 万ポンド、浚渫・修理・更新に 400 万
ポンドを必要とするが、対策遅れの費用は 1 億ポンドに上る。)
Ⅸ.優先順位(社会、政治、文化、環境を考慮したランキング)
Ⅹ.定常状態モデル(主要な定常支出を計算)
ⅩⅠ.調達と配布メカニズム(オムニバス方式、プロジェクトロードマップ方式)
ⅩⅡ.管理成績(アウトカムの数値的表示)
ⅩⅢ.基準化と PAS-55(BW 基準は他組織に比べ優れる。PAS-55: ISO 基準の方向へ)
ⅩⅣ.今後(政府資金の減少、新たなビジネスモデルの構築など、状況の変化にダーウィン流に
進化し、最良の資産管理に努める。
)
PIANC MMX 論文概要
セッション
Session 7d
CoCom Ports and Tsunamis
5 月 12 日
開催日
15:30-17:00
・Tsunami セッションは,2N フロアにおいて 20 分間の研究発表が行われた.発表者は,全員日
本人であったが 30 名の出席者を数え,インド気象庁の Rao 博士の司会で熱心な討議がなされた.
発表論文は 4 編である;
1.
論文番号308
著者:T. Hiraishi, (former member of Port and Airport Research Institute)
表題:Field survey on harbor disaster in Yangon Port due to Cyclone Nargis
(サイクロン NARGIS によるヤンゴン港内被災の現地調査)
概要:
サイクロン NARGIS は 2008 年 5 月 2 日にインド洋からミャンマー西海岸へ上陸し,イラワジ
デルタを中心に大きな浸水被害を与えた.ミャンマーの中心都市ヤンゴンでは,港内の浮桟橋が
壊滅し,船舶も多くが港内に沈んだ.ヤンゴン港の機能復活は緊急の課題であり,被災原因を調
べるために現地調査を行った.
桟橋の被災個所は,主に本体,連絡橋,小型ポンツーン(橋脚支持用),大型ポンツーン(船舶
係留用)に分けられる.それぞれの被災原因は以下のとおりである.
① 桟橋本体:固縛用チェーンによる引っ張り破壊(これについては,発表後,フロアの柳生氏
より船舶の衝突によるのではないかを指摘を受けた)
② 連絡橋:小型ポンツーンとの連結部が水平軸周りのローラーであり,水平方向の変位に対応
できず落下いた(ポンツーンが先に沈没したことも要因であろう)
③ 小型ポンツーン:係留チェーンの切断と冠水
④ 大型ポンツーン:係留チェーンの切断と冠水
質疑:
・サイクロンの経験はなかったのか?
1939 年に大きなサイクロン被害を受けているが,最高水
位は今回のナルギスが最大である.
・桟橋の高さを変える予定か?
変える予定はないと解答したが,柳生氏より現在の JICA プロ
ジェクトでは,ナルギスの潮位を参考にして,+7.5m で新しい桟橋を設計していることを教示い
ただいた.
・警報等の考えは?
現在は,ハザードマップの作製を優先している.
被害の事例
PIANC MMX 論文概要
2.
論文番号91
著者:S. Sakakibara, The Yokohama Rubber Co., E.Kobayashi, Kobe Unibersity, Y.Otake,
MO Marine Co., M.Kubo, Oshima National College of Maitime Technology
表題:Tsunami Effects on Ship Motions and Mooring Loads
(船体の動揺と係留力に対する津波の効果)
概要:
日本では東海・東南海地震の 30 年以内に生じる確率は 40~50%と言われており,警戒を強め
なければならない.地震に伴い津波が生じ,その津波は港湾に係留中の船舶にも大きな影響を与
える.港内船舶の上下動はそれほど大きくないが,水平方向のサージおよびスウェイ運動は津波
の流れや共振の影響により非常に大きくなる.本論文では,数値計算によって津波による係留船
舶の運動を明らかにし,フェンダーシステムの改善による対策法を提案している.
計算では,50000GT コンテナ船と 10000GT,1000GT 貨物船を対象にした.計算の結果,以
下のことが判明した;
・船舶の上下動は津波波形に一致する.
・津波の作用方向が線軸に対して横方向になると,スウェイ,ロール,ヨー方向の運動が大き
くなる.
・空気式防舷材を用いることによってロールとスウェイの運動を抑えることができる可能性が
ある.
質疑:空気式(pneumatic)と通常型(solid)防舷材の相違はなぜ現れるのか?
榊原氏の発表
反力特性が異なる.
PIANC MMX 論文概要
3.
論文番号210
著者:T. Arikawa, Port and Airport Research Institute, S. Takahashi, PARI, K.Shimosako,
Kanto RDB, MLIT, M.Miutani, PARI
表題:Large Tsunami Experiments(大型津波実験について)
概要:
2004 年のインド洋地震津波によって沿岸の家屋が大きな被災を受けた.津波による波力の設
定は沿岸域の防災に重要であり,港湾空港技術研究所では,長さ 150mの大規模波動地盤水路
を用いて数々の実験を行ってきた.本論文では,壁面に作用する波力実験を中心に紹介する.
(会場では,チリ地震津波の現地調査結果を緊急に紹介し,特にロビンソンクルーソー島での
被災者の家屋の位置について地図を用いて説明した.津波のよる被害者は海岸から逃げ遅れた
人や流された後に脱出できなかった人で,高齢者,子供,女性が多いことを示した.)
実験の紹介では,コンクリート壁が壊される際の衝撃的な力の発生が説明された.衝撃力は,
地表面が最大になる三角形に近い分布を示し,実験式が導かれている.また,コンテナの衝突
実験,被験者による避難時の安全性に関する実験映像が紹介された.
質疑:
・チリ地震津波では,前面にブロックがあった家屋が残存していたようであるが,検討され
ているのか?
今年度の実験で調べる予定である.
・カオラックでは海水浴の家族が津波から逃げ切れた例もあり,警報が重要であろう.
有川氏の発表風景
PIANC MMX 論文概要
4.
論文番号305
著 者 : T. Takayama, Coastal Development Institute of Technology, T.Arikawa, PARI,
D.Nishimura, Chubu Regional Development Bureau, M.Hirasawa, Kinki RDB, MLIT
表題:Development of Urgently Emerging Tsunami Breakwater
- Buoyancy-Driven Vertical Piling System –
(緊急時浮上式防波堤の開発-浮力浮上式鉛直鋼管システムー)
概要:
地球温暖化の影響による台風の強大化や海面上昇,さらに津波に対する対策が緊急の課題とな
っている.ここで紹介する直立浮上式防波堤は,海底から急速に円筒が浮上する構造を有し,港
湾の入り口付近で波浪や津波を遮蔽するものである.ここでは,基本的な概念,模型実験による
遮蔽効果の検討,現地試験による安定性・腐食・生物付着の状況等を報告する.
図-1 にイメージ図を示す.防波堤は海中部に沈められた外鋼管に収納された内鋼管を空気で浮
上させるものである.1/5縮尺の模型を用いた大型水路における実験では,津波の遮蔽効果と円
筒部に作用する波力,さらに隣接する円筒間のすき間での流速を調べた.
現地試験は,静岡県沼津港で実施し,内筒(upper part)が短時間で浮上・沈降することを確
認した.また,1 年間の設置後に鋼管の腐食と生物付着状況を調べ,防波堤の機能には支障がな
いことを確認し,現地での適用性が高いことが分かった.今後,和歌山県海南港で設置を予定し
ている.
質疑:浮上に要する時間は?
漂砂の問題はあるのか?
建設費は?
5 分以内である.
円筒上部にはカバーがあり,現地では問題は生じていない.
プロジェクトの規模や設置条件による.
イギリスやロシアで小型であるが同様のものが実用化されている.参考にされたい.
図-1 直立浮上式防波堤のイメージ
高山氏による講演
PIANC MMX 論文概要
(有川
太郎)
タイトル:33. Maritime Navigation and Information Services
代表著者:Cas Willems, et. al.
MarNIS (Maritime Navigation and Information Services)は,ヨーロッパにおける 13
の国の 49 の団体からなるプロジェクトであり,船舶の航行の安全性や効率をよくするため
のプロジェクトである.
現状は,図 1 のように複雑になっている情報およびその伝達システムを,図 2 のように
することが目的であり,そのための課題解決に向けた論文である.
図 1 現在の情報のやりとりを示す(かなり複雑)
図 2 MarNIS プロジェクトによって整理された情報伝達イメージ
D-9
PIANC MMX 論文概要
(有川
太郎)
タイトル:239. KNOWLEGDE SHARING ALONG THE RIVER ¬
E-LEARNING PLATFORMS AS AN ADEQUATE INSTRUMENT TO ACHIEVE
DEVELOPMENTS IN INLAND WATERWAY TRANSPORT
代表著者:D. Leopold
熟練した労働の不足はヨーロッパでの内陸航行の今後の仕事に重大な問題を引き起こすと考え
られ,その問題を解消するために,インターネットを用いた学習方法の活用を検討している.こ
のプロジェクトは,EWITA(European Web Platforms and Training Concepts for Intermodal
Inland Waterway Transport)と呼ばれるプロジェクトのなかで行われている.このプロジェク
トは,オランダ,ベルギー,ドイツ,ルーマニア,オーストリアにある9つの団体がサポートし
ている.本論文では,2つの学習プラットフォームを紹介している.
図 1 ターゲットグループと基本的なアプローチ
図 2 トピックと基本的なアプローチ
D-10
PIANC MMX 論文概要
(有川
太郎)
タイトル:272. Navigation Safety Management on Finnish Waters
代表著者:Olli Holm, et. al.
フィンランド海運局での航行における安全性のマネージメントについて記述されている.
情報伝達のなめらかさや信頼性はオペレーションシステムによって決まるとし,その紹介
をしている.
図 1 航行警報までの流れ
図 2 限界水深観測における流れ
D-11
PIANC MMX 論文概要
(有川
太郎)
タイトル:152. The Rohone Navigation Management Center
代表著者:Pierre-Emmanuel Pareau
24 時間のナビゲーションセンターの紹介がなされた.川に沿ってポイントがたくさんあ
るなかで,効率的なビデオシステムにより効果的に運用する方法を示したものであった.
図 1 ナビゲーションシステムの紹介写真
図2
図 1 のナビゲーションシステムの説明
D-12
PIANC MMX 論文概要
(有川
太郎)
タイトル:233. River information services for logistics users
代表著者:Juergen Troegl et.al.
RIS(River Information Services)は,調和のとれた情報サービスを扱っており,それにより
航行のマネージメントをサポートする.ここでは,RIS および付随する TLS(Transport
logistic Service)を紹介している.そしてより高度な RIS サービスと TLS との関係の将来性
について議論している.eFleet,ePort,eLock が考えられている.
図 1 RIS-TLS の概観
D-13
PIANC MMX 論文概要
(有川
太郎)
タイトル:298. River Information Services in Germany
代表著者:Jan Reche et. al.
90 年代初頭に Rhine 川において航行のための River Information Service がスタートした.
そのあたりからドイツの RIS システムの歴史を紹介し,変化に応じて定期的に開発されて
きた情報システムを説明する.また,今後,ほかの場所に対してドイツのシステムが友好
的に活用される可能性について言及している.
写真 1 VTS-センターOberwesel のオペレータ
図 1 ナビゲーションの方法の紹介
D-14