LC-MSの原理と使い方 エムエス・ソリューションズ㈱ LC/MSとは 液体クロマトグラフィーと質量分析法を接続した機器分 析法 Liquid Chromatography – Mass Spectrometryの略語 分析手法を表す略語 装置を表す略語はLC-MSを推奨 類似用語と意味 Liquid Chromatography(Mass Spectrometry) 方法、学問 Liquid Chromatograph( Mass Spectrometer) 装置 Liquid Chromatogram(Mass Spectrum) チャート Liquid Chromatographer( Mass Spectrometrist) 人 LC/MSで何ができるか? LCによる混合物の分離+MSによる検出 LC分離:不揮発性、熱不安定性、高分子物質が対象 MS検出 定性目的:マススペクトルによる物質同定、MS/MS測 定による構造推定⇔MSの高選択性 定量目的:選択イオン検出法(SIM)、選択反応検出法 (SRM or MRM)⇔MSの高感度、高選択性 GC(GC/MS) GC分離:揮発性、熱安定性物質が対象 MS検出:ライブラリーサーチによる同定、SIM, SRMを用 いた定量分析 LC/MSでできないこと イオン化しない物質の分析 イオン化し難い物質の高感度分析 (イオン化し易くする方法はある(誘導体化やイオン化 助剤の添加など)) MSは高感度な分析装置 UVよりもレスポンスの低い物質は沢山ある MS装置の構成 分離装置 イオン源 (API) (LC) 大気圧 インターフェイス 分析部 低真空 中真空 検出部 制御部 高真空 LC-MSの構成 分離装置 イオン源 (GC) (EI) 大気圧 分析部 高真空 GC-MSの構成 検出部 制御部 LC(GC)/MSで得られるデータ 強度 Total Ion Current (TIC) Chromatogram 時間 Extracted Ion Chromatogram m/z Mass Spectra (Scan) Selected Ion Monitoring (SIM) (測定法) SIM Chromatogram イオン源の種類と原理 LC-MSインターフェイス (イオン源)の種類 役割:試料のイオン化 エレクトロスプレー(ESI) 大気圧化学イオン化(APCI) 大気圧光イオン化(APPI) サーモスプレー(TSP) パーティクルビーム(PB) フローFAB 大気圧 イオン化 真空中 イオン化 ESIの構造と原理 N2 LC溶出液 スプレイヤー 高電界による静電噴霧 → 帯電液滴の生成 → 加熱・ 脱溶媒 → イオン蒸発 高電圧 リングレンズ (1~2 kV) 脱溶媒室 適する移動相流量: 0.2 mL/min イオンガイド イオンが生成 する位置 オリフィス (コーン, キャピラ リ) ロータリーポンプ ターボ分子ポンプ ESIにおける液滴生成 テイラーコーン キャピラリー 液体の流れ -+ + + + + + + + + + - + + + + + + + + - -- - 帯電液滴 +++ + ++++ + + + + 対向電極 ESIにおけるイオン生成 大気圧中 レイリー・リミット 加熱 + + + 帯電液滴 + + + + + + + + + + + + + + + + + 脱溶媒 + + + + + クーロン反発 [M1+Na]+ [M1 +H]+ [M2+2H]2+ + ++ + + 液滴の分裂 [M3+2H]2+ イオンエバポレーション MS ESIのイオン化 帯電液滴からのイオン生成モデル 電荷残留モデル + + + + 液滴の分裂を繰り返す イオン蒸発モデル + + + + + + + + + + + + + 液滴表面からのイオン蒸発 APCIの構造と原理 N2 LC溶出液 スプレイヤー 気化管 リングレンズ 高圧ガスによる噴霧 → 加熱・ 気化 → コロナ放電 → 溶媒分 子イオンの生成 → 溶媒イオンと試料分子の衝 突 → 試料イオン生成 イオンが生成 イオンガイド する位置 適する移動相流量: 1 mL/min 放電電極 高電圧 (3~5 kV) オリフィス (コーン,キャ ピラリ) ロータリーポンプ ターボ分子ポンプ APPIの構造と原理 N2 LC溶出液 スプレイヤー 気化管 リングレンズ 高圧ガスによる噴霧 → 加熱・ 気化 → 光子エネルギーによる 試料分子の直接イオン化 試料分子のイオン化 電圧が光子のエネル ギー(10 eV)より低 い場合のみ イオンが生成 する位置 イオンガイド UVランプ 適する移動相流量: 0.2 mL/min オリフィス (コーン,キャ ピラリ) ロータリーポンプ ターボ分子ポンプ LC/MSで得られるイオン種 基本的に溶媒とのプロトン授受でイオンが生成 する。 正イオン検出:[M+H]+、負イオン検出:[M-H](呼び方:プロトン化分子、脱プロトン化分子) その他、溶媒中の不純物や溶媒分子の付加イオ ンが生成し易い。 [M+Na]+, [M+NH4]+, [M+H+Sol]+, [M+Cl]-など ☆ LC/MSで用いられているイオン化法は、イオン化のエネルギー が低いので、フラグメントイオンは殆ど生成しない。 分子量 APCIとESIの使い分け 100,000 アミノ酸、ペプチド、たんぱ く質 核酸、DNA 糖類 医薬品代謝物 脂質(リン脂質、糖脂質) 10,000 金属錯体 ESI など 1,000 APCI 低極性 中極性 分析対象物質の極性 高極性 分子量 APCIとESIの使い分け 100,000 ステロイド 脂肪酸(エステル) ポリフェノール 脂質(トリグリセリド) アミノ酸 10,000 糖類(低分子量) など ESI 1,000 APCI 低極性 中極性 分析対象物質の極性 高極性 質量分離部(分析計)の種類と原理 分析部について 分析部(質量分離部)には幾つかの種類があるた め、その機能や特徴を理解し、分析目的に応じ た種類を選択することが重要である。 分析目的に合わない分析部を採用している LC/MSでは、満足するデータが得られない可能 性が高い。 質量分離部(分析計)の種類 役割:イオンをm/z 値に応じて分離 四重極(Q)、三連四重極(QqQ) イオントラップ(IT) 飛行時間(TOF) 磁場型(Sector) フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴 (FTICR)、電場型FT ハイブリッドタンデム(MS/MS) Q-TOF, IT-TOF, Qトラップ, Q-FTICR 四重極質量分析計 (Q-MS) ロッドの印加電圧 ±(Vdc+Vac・cosωt) Vdc :直流電圧 Vac :高周波交流電圧 周期的にポールの極性を変えることに より、イオンはz軸上を振動しながら進 む m/z=k(Vac/r02f2) Vac : 高周波交流電圧[V] r0 : z軸と電極の距離[mm] f : 高周波数[MHz] 直流電圧と高周波電圧の比が一定となるように電圧を変化させる。 L 定分解能モード 定⊿mモード m3の安定振動領域 化学同人 これならわかるマススペクトロメトリー より抜粋 直流電圧と高周波電圧の比を連続走査⇒スキャン測定、マススペクトル:定性 直流電圧と高周波電圧の比を段階的に変化⇒SIM測定、SIMクロマトグラム:定量 三連四重極質量分析計 (QqQ-MS) MS2 MS1 M1 イオン M2 M3 M2 CID m1,m2,m3 イオン源 特定イオンを選択 イオンの分解 m1 m2 m3 検出器 生成イオンの分離・検出 イオントラップ質量分析計 (IT-MS) エンドキャップ電極 アース電位 高周波電圧を印加 リング電極 エンドキャップ電極 イオンは振動しながら電極内部の空間に留まる。 m/z=kVac Va : 高周波交流電圧[V] 高周波電圧のみを変化させることで、振動が不安定になったイオ ンがエンドキャップ電極の出口から外に飛び出す。 化学同人 これならわかるマススペクトロメトリー より抜粋 飛行時間質量分析計 m/z の大きなイオン m/z の小さなイオン イオン源 (TOF-MS) 自由飛行領域(L) 加速電圧 イオン検出器 強度 m/z マススペクトル リニア型TOF-MSの原理 TOF MSの原理 全てのイオンは同じ運動エネルギーで飛行する 1 ( M mu ) v 2 q e V 2 M: イオンの質量 [u] mu: 原子質量単位 (1.6605 x 10-27 [kg/u]) v: イオンの飛行速度 [m/s] q: イオンの価数 e: 単位電荷 (1.602 x 10-19 [C]) V: 加速電圧 [V] 飛行時間はイオンの m/z の平方根に反比例 L q tof M V Vreflector E リフレクタ 0V 第1自由空間 第2自由空間 イオン源 検出器 リフレクトロン型TOF-MSの原理 は同じm/z のイオン 直交加速(oa)技術 oa: orthogonal acceleration Focal Plane 2 (Spatial) Reflectron (Ion Mirror) Detector Field Free Region Vpush(+) 0 Push-out Plate Vpull(-) G1G2 Ion Source G4 G3 Orthogonal Focal Plane 1 Accelerator (Spatial) Vbeam(+) vY Vflight_tube(-) vX tan = (vY/vX) = ((-Vflight_tube + 1/2 Vpush) / Vbeam)1/2 Vreflectron(+) 磁場型質量分析計 (Sector-MS) 磁場 逆配置質量分析計 電場 電場 磁場 正配置質量分析計 磁場に入射するイオンは磁界に垂直の方向に力が働く イオンの流れに相当 フレミングの左手の法則 目的別LC-MS 主に定性分析に使われる装置 FT-ICRMS, LTQ-Orbitrap, Q-TOFMS ⇒高分解能タンデム質量分析計(R ≧ 30,000) ・プロテオミクス n MS/MS, MS , 精密質量情報 ・未知成分の 構造推定など Exactive, 高分解能TOFMS ⇒高分解能質量分析計(R ≧ 60,000) 精密質量情報 Iontrap 代謝物の構造確認など ⇒タンデム質量分析計(低分解能), MSn 主に定量分析に使われる装置 QqQ, QqLIT(QTRAP) SRMによる高選択的定量 MS/MS可能な装置 トリプルQMS 4-Sector MS ハイブリッド Tandem in Space Q-TOF, Qqリニアトラップ, QOrbitrap イオントラップ FT-ICR Tandem in Time
© Copyright 2024 Paperzz