全国がん罹患モニタリング集計 (MCIJ)2011年罹患数・率報告 国立がん研究センター がん対策情報センター がん統計研究部 松田 智大 国立がん研究センタ ー がん対策情報センタ ー National Cancer Center Center for Cancer Control and Information Services MCIJ2011報告 1 地域がん登録とは? Population-based Cancer Registry ①国や地方自治体を単位と、がん診療施設などから協力を得 て、対象地域の居住者を対象に、②がんの診断・治療を受け た全てのがん患者の診療情報を収集・整理し、③人口動態死 亡から死亡情報を得て、登録漏れの補完、予後(生死)の把 握して、④がんの実態把握に必要な各種がん統計を整備する 当該地域のがん罹患率を求める – 一定期間に新たに発生した「がん」の大きさ – がん対策の企画・立案・評価に不可欠 当該地域のがん患者の生存率を求める – 早期発見と医療水準(均てん化)の指標 がん患者の有病数を求める – ある一時点における「がん患者」の大きさ – がんの医療計画に役立つ MCIJ2011報告 これらを実現す る唯一の仕組み 2 MCIJ2011がん罹患データ収集につい ておよび公表について 本年度、がん政策研究事業「全国集計と資料活 用によるがん動向把握」班(研究代表者:松田 智大)が実施した「全国がん罹患率モニタリン グ集計2011年罹患数・率」の集計値を利用し、 国立がん研究センター がん対策情報センター が、MCIJ2011報告書を編集、刊行。 http://ganjoho.jp/professional/statistics/monita.html MCIJ2011変更点 – – – – 収集対象:過去最多40地域 提出項目:MCIJ2010 14項目 ⇒ MCIJ2011 30項目 精度基準:国際基準Aと従来国内基準Bの2段階 集計表:全国がん登録での採用予定の集計表 MCIJ2011報告 3 全国がん罹患モニタリング集計 (MCIJ)参加地域の変遷 提出地域 (合計罹患数) B基準 達成県※ (合計罹患数) 推計対象 地域精度 平均値 MCIJ2009 MCIJ2010 MCIJ2011 37県(480,488) 30県(410,944) 40県(542,525) 32県 (403,821) DCN:20.1% DCO:13.4% I/M:2.20 27県 (372,060) DCN:18.1% DCO:11.8% I/M:2.23 39県(403,821) 北海道 青森 岩手 秋田 山形 福島 茨城 栃木 群 馬 千葉 神奈川 新潟 富 山 石川 福井 山梨 岐阜 長野 愛知 三重 滋賀 京 都 兵庫 奈良 和歌山 鳥 取 島根 岡山 広島 山口 徳島 香川 愛媛 高知 佐 賀 長崎 熊本 大分 沖縄 DCN:11.9% DCO:5.3% I/M:2.31 DCN: 死亡情報で初めて把握されたもの DCO: 死亡票のみで登録されているもの IM比: 罹患数と死亡数との比 ※ DCO<25%またはDCN<30% かつ I/M≧1.5 ピンク色はA基準達成14県 DCO<10%かつDCN<20%かつI/M≧2.0 MCIJ2011報告 4 MCIJ2011でのデータ精度分布 A基準(国際水準) B基準(従来国内水準) 基準未満・不参加 2011年未集計 数 人口カバー(%) 14 25 6 2 22.2% 43.9% 22.6% 11.2% MCIJ2003 A基準3県 B基準10県 MCIJ2011報告 39県で全人口の 66.1%をカバー MCIJ2011 5 MCIJ2011でのデータ精度の推移 13 14 12 15 21 25 32 27 14 22.8 23.6 20.1 20.8 20.6 20.2 20.1 18.1 11.9 2.01 1.96 2.02 2.05 2.06 2.13 2.20 2.23 2.31 平均 DCO 割合 10 5 0 % 2.5 適切 16.8 17.1 14.9 13.4 14.6 13.6 13.4 11.8 5.3 15 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 数 DCN 割合 20 良好 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 IM比 推計対 象地域 IM 比 2 1.5 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 患年 25 精度指標† DCN DCO 割合 割合 (%) (%) 平均 平均 †精度指標および診断精度は、2003~2006年は上皮内がんを含む全部位の値、2007年以降は上皮内がんを除く全部位の値、 2011は推計対象地域精度基準変更 MCIJ2011報告 6 MCIJ2011推計罹患数・率 推計 罹患数 年齢調整 罹患率 (全部位)※ MCIJ2010(27県) MCIJ2011(14県) 466,502 336,130 431.6 291.6 496,304 355,233 449.0 305.5 男性 女性 男性 女性 男性 ① ② ③ ④ ⑤ 胃 86,728 肺 73,727 大腸 68,055 前立腺 64,934 肝 31,244 ① ② ③ ④ ⑤ 胃 90,083 前立腺 78,728 肺 75,433 大腸 72,101 肝 29,192 女性 ① ② ③ ④ ⑤ 乳房 68,071 大腸 50,924 胃 39,002 肺 33,514 子宮 23,367 ① ② ③ ④ ⑤ 乳房 72,472 大腸 52,820 胃 41,950 肺 36,425 子宮 26,741 上位5部位 の推計 罹患数 ※ 1985年日本モデル人口で年齢調整 男女計 85.2万人 順位変動 あるが、 推計利用 県の違い に注意 人口10万対 MCIJ2011報告 7 MCIJ2011年齢調整罹患率(部位別) 大腸(結腸・直腸) 67.2 前立腺 66.8 腎・尿路(膀胱除く) 膵臓 29.5 胃 25.9 肺 12.3 甲状腺 18.2 食道 32.7 子宮 26.1 肝および肝内胆管 38.3 大腸(結腸・直腸) 64.6 肺 82.2 乳房 80.4 胃 卵巣 15.5 10.6 膵臓 10.0 15.3 悪性リンパ腫 9.2 9.0 悪性リンパ腫 13.9 肝および肝内胆管 膀胱 12.9 胆のう・胆管 6.0 口腔・咽頭 10.9 皮膚 5.5 胆のう・胆管 10.0 白血病 5.3 白血病 8.0 皮膚 7.8 甲状腺 4.2 喉頭 3.7 多発性骨髄腫 3.0 脳・中枢神経系 2.9 0.0 男性 腎・尿路(膀胱除く) 5.2 口腔・咽頭 3.9 膀胱 2.8 食道 2.6 多発性骨髄腫 2.4 女性 脳・中枢神経系 2.3 喉頭 0.3 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 年齢調整罹患率(人口10万対) 年齢調整罹患率(人口10万対) MCIJ2011報告 8 全国推計値 年齢調整罹患率の推移 全部位(C00-C96)1985年日本モデル人口で年齢調整 がん登録精度向上の 影響が大。リスクの 急増ではないだろう。 1975-2002:3年平均推計値 2003-2011:単年推計値 MCIJ2011報告 9 全部位 全部位 肺 乳房 子宮 胃 (上皮内がん含む) (上皮内がん含む) 50 肝 結腸 胃 10 前立腺 直腸 結腸 男性 卵巣 肺 直腸 肝 女性 1 年齢調整罹患率(人口10万対) 200 400 100 300 年齢調整がん罹患率の推移 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2011 2011 MCIJ2011報告 10 標準化罹患比・死亡比 標準化の間接法で、年齢構成の異なる集団間の 罹患数・死亡数の比較に用いられる。 標準とする人口集団(全国、ある一地域、な ど)と同じがん罹患率であるとしたら、その集 団で何人のがん患者が発生するかを予測し(期 待値)、実際の罹患数(死亡数)をその期待値 で割ったものが、標準化罹患(死亡)比 (standardized incidence or mortality ratio, SIR or SMR)。 本報告では、下記のように定義して、各県の比 を算出している。 – 罹患:全国推計値=100 – 死亡:全国値=100 MCIJ2011報告 11 都道府県での罹患と死亡との比較 によるがんの実態把握 罹患と死亡との比較で、都道府県の、がん予防、発見、 治療の実態把握ができる – 依然として罹患データ精度の都道府県格差があるので、現時点 では大まかな傾向判断のみ ⇒ ランキングは危険 – 横断面と経時変化の両方を判断材料に 解釈の一例 ※以下だけではなく、複合的な要因により様々な解釈があります。 – 罹患↑ 死亡↑ :がん罹患リスクが高い、診断時に臨床進行度 が高い、予後の悪い組織型等、無意味ながん検診 – 罹患↑ 死亡↓ :有効ながん検診、高い診断技術 – 罹患↓ 死亡↑ :医療提供状況の不備(病院配置等)、治療を 含めた複合的な悪い要因 – 罹患↓ 死亡↓ :がん罹患リスクが低い、早期発見、治療を含 めた複合的な良い要因 MCIJ2011報告 12 標準化罹患比と標準化死亡比の比較 男性 全部位 罹患 死亡 標準化罹患比・死亡比(全国=100) 110以上 100~110未満 90 ~100未満 90 未満 比較不可または未提出 罹患と死亡の差から、都道 府県の、がん予防、発見、 治療の実態把握の可能性。 MCIJ2011報告 13 標準化罹患比(胃) 男性 女性 標準化罹患比(全国=100) 110以上 100~110未満 90 ~100未満 90 未満 比較不可または未提出 標準化罹患比(全国=100) 110以上 100~110未満 90 ~100未満 90 未満 比較不可または未提出 日本海側 で多い MCIJ2011報告 14 標準化罹患比(大腸) 男性 女性 標準化罹患比(全国=100) 110以上 100~110未満 90 ~100未満 90 未満 比較不可または未提出 標準化罹患比(全国=100) 110以上 100~110未満 90 ~100未満 90 未満 比較不可または未提出 MCIJ2011報告 15 標準化罹患比(肝) 男性 女性 標準化罹患比(全国=100) 120以上 100~120未満 80~100未満 80未満 比較不可または未提出 標準化罹患比(全国=100) 120以上 100~120未満 80~100未満 80未満 比較不可または未提出 西日本で 多い MCIJ2011報告 16 標準化罹患比(肺) 男性 女性 標準化罹患比(全国=100) 110以上 100~110未満 90 ~100未満 90 未満 比較不可または未提出 標準化罹患比(全国=100) 110以上 100~110未満 90 ~100未満 90 未満 比較不可または未提出 北海道、西 日本で多い MCIJ2011報告 17 標準化罹患比(乳房・子宮) 女性 乳房 北関東、中 四国で多い 子宮 MCIJ2011報告 標準化罹患比(全国=100) 110以上 100~110未満 90 ~100未満 90 未満 比較不可または未提出 18 標準化罹患比(前立腺) 男性 標準化罹患比(全国=100) 110以上 100~110未満 90 ~100未満 90 未満 比較不可または未提出 MCIJ2011報告 19 900.0 700.0 600.0 300.0 200.0 年齢 男性 胃 大腸(結腸・直腸) 350.0 肺 300.0 肝および肝内胆管 前立腺 500.0 400.0 50代後半 から増加 100.0 50.0 0.0 0.0 年齢 MCIJ2011報告 0-4 5-9 10-14 15-19 20-24 25-29 30-34 35-39 40-44 45-49 50-54 55-59 60-64 65-69 70-74 75-79 80-84 85+ 800.0 0-4 5-9 10-14 15-19 20-24 25-29 30-34 35-39 40-44 45-49 50-54 55-59 60-64 65-69 70-74 75-79 80-84 85+ 罹患率(人口10万対) 年齢階級別罹患率 400.0 女性 胃 大腸(結腸・直腸) 肺 乳房 250.0 子宮 200.0 乳房・子 宮は若年 150.0 100.0 20 発見経緯(主要部位 A基準14県) 0% 50% 15.5 全部位 胃 20.8 大腸 (結腸・直腸) 16.1 17.4 肺 肝および肝内胆管 3.5 27.0 乳房(女性のみ) 24.2 子宮頸部 子宮体部 前立腺 100% 8.2 31.8 がん検診・健診・人間ドッグ その他(症状受診を含む)、不明 MCIJ2011報告 21 臨床進行度(主要部位 0% 20% A基準14県) 40% 60% 80% 100% 全部位 胃 大腸 (結腸・直腸) 肝および肝内胆管 肺 乳房(女性のみ) 子宮頸部 子宮体部 前立腺 限局 所属リンパ節 転移 隣接臓器 浸潤 早期 遠隔転移 不明 進行 MCIJ2011報告 22 受療内容(A基準14県 外科・体腔鏡 内視鏡的治療 放射線療法 複数回答) 化学・免疫・ 内分泌療法 特異療法なしまたは 治療方法不明 % 100.0 90.0 代表的な治療法の効 果の評価等。院内が ん登録も要参照。 80.0 70.0 60.0 50.0 40.0 30.0 20.0 10.0 全部位 口腔・咽頭 食道 胃 大腸 肝臓 胆嚢・胆管 膵臓 喉頭 肺 皮膚 MCIJ2011報告 0.0 23 受療内容(A基準14県 外科・体腔鏡 内視鏡的治療 放射線療法 複数回答) 化学・免疫・ 内分泌療法 特異療法なしまたは 治療方法不明 % 90.0 80.0 70.0 60.0 50.0 40.0 30.0 20.0 10.0 乳房(女性 のみ) 子宮 卵巣 前立腺 膀胱 腎・その他 尿路 脳・中枢神 経系 甲状腺 悪性リンパ 腫 多発性骨髄 腫 白血病 MCIJ2011報告 0.0 24 MCIJ今後の予定 呼称 生存率 がん政策研究事業 MCIJ2011 MCIJ2012 収集・確定予定年月 2014/9 (2年9か月後) 2006-08年 生存率報告 2015/9 (2年9か月後) MCIJ2013 2016/9 (2年9か月後) MCIJ2014 2017/9 (2年9か月後) MCIJ2015 2009-11年 生存率報告 2018/9(2年9か月後) 全国がん登録 2016年罹患集計 2018/12(2年後) 2017年罹患集計 2018年罹患集計 2019年罹患集計 2019/12 2020/12 2021/12 2012-15年 2020年罹患集計 生存率報告 ⋮ ⋮ 47都道府県 データ揃う 2022/12 ⋮ MCIJ2011報告 全国がん登録開始 全国がん 初集計 研究班での 集計終了 25 全国がん登録の特色 病院等 5 A拠点病院 患者 届出義務 ガイドラインに 基づく手順 1 2 共通DBへの オンライン入力 省令による項目 C病院 都道府県がん登録 他県病院 も受診 死亡者情報票 厚生労働省 都道府県 都道府県がん登録 院内がん登録 B診療所 (指定) 受診 予後情報の提供 県をまたいだ 患者の照合 4 死因付全死亡 電子データ の入手と一括照合 3 6 全国がん登録システム MCIJ2011報告 NCC 7 積極的 データ利用 と提供 厳格な情報保護 26
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