JACR Monograph No. 18 全国がん罹患モニタリング集計 Monitoring of Cancer Incidence in Japan(MCIJ)2007 松田 1. 彩子* 松田 智大 祖父江 柴田 友孝 3. はじめに 亜希子 西本 寛 結果 全国がん罹患モニタリング集計は、①対が 全部位の年齢調整罹患率は 2003 年来、横ば ん 10 カ年において設定した目標と基準の達 い傾向が観察されていたが、日本人口で調整し 成状況を、各地域の罹患データを確認するこ た 2007 年の年齢調整罹患率(男女計)は、323.6 とで「モニタリング」すること ②全国規模 で、2006 年値の 312.1 と比較すると、3.7%の でのがん罹患数・罹患率、生存率を定期的に 増加となった(図 1)。 推計することを目的としている。今回、平成 内訳を見ると、男性は 2006 年値 394.3 が 24 年 3 月に発行された全国がん罹患モニタ 2007 年値 405.3 に 2.8%増加し、女性では 2006 Monitoring of Cancer 年値 251.8 が 2007 年値 263.8 に 4.8%増加して リ ン グ 集 計 Incidence in Japan(MCIJ)2007 の結果に ついてまとめた。 いた。 部位別に年齢調整罹患率の近年の傾向をみる と、男性では肺、女性では肺、乳房、子宮、卵 2. 巣の増加傾向がみられた(図 2-1、図 2-2)。 方法 データ収集は、本研究班によって定められ 450.0 た標準的な方法に従い、33 地域がん登録より、 400.0 1993-2007 年の罹患データを「第 3 期モニタ (ICD-10 C00-C96)、男女合計について、 精度基準を満たす登録の罹患データを MCIJ2007 における全国推計に用い、 登録 率を死亡統計で補正する推計方法より推計値 を算出した。全部位、部位別、男女別の年齢 250.0 男 200.0 女 150.0 100.0 50.0 0.0 1975 1976 1977 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 管理と集計を実施した。2007 年単年の全部位 男女計 300.0 年齢調整罹患率(人口10万対) リング項目 14 項目」に従って収集し、品質 350.0 年 図 1 全部位の年齢調整罹患率 調整罹患率についての検討および MCIJ2007 の 推 計 値 と 世 界 各 国 の 推 計 値 (GLOBOCAN2008)を比較し検討した。 *国立がん研究センターがん対策情報センターがん統計研究部 地域がん登録室 〒104-0045 東京都中央区築地 5-1-1 JACR Monograph No. 18 400.0 前立腺がん 前立腺がん 年齢調整罹患率(人口10万対) 年齢調整罹患r率(人口10万対) 0 全部位 200.0 150.0 年齢調整罹患率(人口10万対) 20 40 60 80 100 日本(MCIJ2007) 男性 アジア 東アジア 中央アメリカ 北アメリカ 南アメリカ 北ヨーロッパ 南ヨローッパ 西ヨーロッパ オセアニア 胃 100.0 乳がん 乳がん 肺 日本(MCIJ2007) 女性 50.0 アジア 東アジア 中央アメリカ 北アメリカ 南アメリカ 北ヨーロッパ 南ヨローッパ 西ヨーロッパ オセアニア 肝 結腸 2007 2003 2001 1999 1997 1995 1993 1991 1989 1987 1985 1983 1981 1979 1977 1975 2005 直腸 前立腺 0.0 図 2-1.年齢調整罹患率の推移(男性) 図 3.がん罹患の国際比較 日本の部位別年齢調整罹患率(世界基準人口) 2007 年推計値:MCIJ2007 各国の部位別年齢調整罹患率(世界基準人口) 300.0 100.0 2008 年推計値: GLOBOCAN2008(http://globocan.iarc.fr/) 全部位 年齢調整罹患率(人口10万対) 150.0 乳房 (上皮内がん含む) 子宮 (上皮内がん含む) 4. 考察 値の変化については、がん罹患の変化の実態を 捉えているとするには問題が多く、各地域におけ 50.0 胃 るがん診療連携拠点病院の指定による院内がん 登録の整備、DPC 病院における地域医療指数に 地域がん登録への参画が記載されたことによる 届出数の増大も、変化の要因と考えられるため、 肺 直腸 解釈には注意が必要である。特に、部位別の変化 肝 卵巣 については推計利用登録県の違いも要因となり 2007 2005 2003 2001 1999 1997 1995 1993 1991 1989 1987 1985 1983 1981 1979 1977 1975 0.0 得、数値が安定していないので慎重を期さなくて はならない。また、精度基準を満たした推計利用 図 2-2.年齢調整罹患率の推移(女性) 罹患の国際比較では、胃がんは、アジアが世 地域間での精度のばらつきが罹患数、罹患率に影 響を与えていることも考慮する必要ある。 界の各国より高く、なかでも日本が最も高かっ た。一方で、前立腺はアジアの中では高いが、 アメリカ、ヨーロッパ、オセアニアと比較する と低かった。この傾向は乳がんでもみられた(図 3)。 謝辞 厚生労働科学研究費補助金 第 3 次対がん総 合戦略研究事業「がん罹患・死亡動向の実態把握 に関する研究」班へのデータ提供にご協力いただ いた 33 の地域に謝意を表します。
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