オンラインHDFの臨床効果

オンラインHDFの臨床効果
2014年10月14日
第5回 区西南部腎不全医療研究会
西條クリニック鷹番 西條公勝
●当院の透析液清浄化システム
●HDから前希釈on-lineHDF変更後、
18ヶ月間の推移
●まとめ
当院の透析液清浄化システム
水処理システムフローチャート
細菌 LRV 3
ET
LRV 3
熱水消毒(週1回)
 微粒子濾過フィルタ(キャラクタ、
微ET)、エンドトキシン捕捉
フィルタ(ETRF)の併用
 熱水消毒を行なうことで薬液では届き
にくい液溜まり部など、
デットスペースがない洗浄方法の実施
塩素系消毒
細菌 LRV 8
ET
LRV 3
日本透析医学会が定める
オンライン補充液の数値目標を達成
細菌 LRV 7
ET
LRV 4
クエン酸熱水消毒
細菌 LRV 8
ET
LRV 3
●当院の水質管理&清浄化システム
●HDから前希釈on-lineHDF変更後、
18ヶ月間の推移
●まとめ
対象と方法①
サンプリングポイント
週3回、4時間以上施行している慢性維持血液透析患者 72名
を対象にHDから前希釈on-lineHDFに変更した。
・ 平均年齢: 68.2±11.3 歳
・ 平均透析歴: 8.8±6.5 年
・ 原疾患 : DMN 35名、CGN 7名、不明 18名、腎硬化症 5名、その他 7名
前希釈30L (72名)
前希釈30L (36名)
変更条件
①75歳未満
②血清アルブミン 3.5g/dL 以上
③除去率
α1-MG 30% 未満
対象と方法
対象と方法②
① 30Lから50L前希釈on-lineHDFに変更した症例(36例)
② 30L前希釈on-lineHDFを継続した症例(36例)
評価期間
18ヶ月間
評価項目
• 栄養状態(DW、GNRI、血清リン、血清アルブミン)の推移
• ESA製剤(エポエチンカッパ、ダルベポイエチン)使用量の推移
• β2-MG、α1-MG除去率
• 愛Pod調査シート(HD、on-lineHDF施行3ヶ月後および12ヶ月後)
統計学検定
栄養状態およびESA製剤使用量は、HDをベースラインとしてWilcoxonの
符号付き順位検定で比較し、愛Pod調査シートは、Kruskal-Wallis H 検定
を使用して、危険率5%未満を有意水準とした。
対象と方法
愛Pod調査シート
自己記入形式(家族またはスタッフによる聞き取りも可)
質問数20項目、各項目0~4の5段階評価のフェイススケール
点数が低い方が愁訴が少ない(合計最高点 0点 最低点 76点)
関節痛、かゆみ、いらいら、寝つき、睡眠、食
欲、
の6項目の質問で、愛Pod2点以上の患者に着目
政金生人
(2011年)「患者視点の新しい透析治療―わかりやすい計画から実際の処方」 より引用
新興医学出版社
HDから30L前希釈on-line HDF
さらに置換液量を50Lに増加した36名
各治療条件の設定平均値(n=36)
各治療条件の設定平均値(n=36)
膜種
QB [mL/min]
HD
30L
50L
P値
Ⅳ・ⅴ型
積層型透析器
MFX-S
MFX-S
-
243
±33
252
±25
253
N.S.
±0.25
N.S.
膜面積 [m2]
1.92±0.30
1.97
β2-MG 除去率
(%)
-
76.2
±4.1
78.0
±3.8
P<0.01
α1-MG 除去率
(%)
-
22.5
±4.0
27.5
±6.0
P<0.01
±0.25
1.98
±25
QDtotal
[mL/min]
500
-
透析液
カーボスターP
-
栄養状態の推移 (on-lineHDF変更後18ヶ月間)
**P<0.01
*P<0.05
mean±SD
DW(Kg)
GNRI (-)
30L
血清リン
(mg/dL)
*
50L
**
血清アルブミン
(g/dL)
30L
50L
週あたりのESA使用量
(on-lineHDF変更後18ヶ月間)
週あたりのESA使用量
(on-lineHDF変更後18ヶ月間)
*感染症や出血傾向が少ない患者
[ IU /週 ]
N=9
*P<0.05
mean±SD
エポエチンカッパ
Hb
*
[ g /dL ]
*
*
30L
50L
N=14
[ μg /週 ]
ダルべポイエチン
[ g /dL ]
Hb
30L
50L
愛Pod 2点以上の患者割合(%)
対象と方法
愛Pod調査シート結果
(愛Pod
2点以上の患者割合)
愛Pod調査シート結果(愛Pod
2点以上の患者割合)
Kruskal-Wallis H 検定( N.S. )
置換液量を30Lのままon-lineHDFを
継続した36例
各治療条件の設定平均値(n=36)
各治療条件の設定平均値(n=36)
膜種
QB [mL/min]
HD
30L
P値
Ⅳ・ⅴ型
積層型透析器
MFX-S
-
220
227
±32
±32
N.S.
±0.31
N.S.
膜面積 [m2]
1.70±0.35
1.76
β2-MG 除去率
(%)
-
74.8
±6.0
-
α1-MG 除去率
(%)
-
24.1
±7.2
-
QDtotal
[mL/min]
500
-
透析液
カーボスターP
-
対象と方法
栄養状態の推移栄養状態の推移(on栄養状態の推移
(on-lineHDF変更後18ヶ月間)
lineHDF変更後18ヶ月間(on-lineHDF変更後18ヶ
**P<0.01
DW(Kg) /
GNRI (-)
月間)
治療経過中に3名が
血清アルブミン
3.2g/dL以下に低下
した為、MFX-Mに
変更した。
30L
血清リン (mg/dL) /
血清アルブミン (g/dL)
mean±SD
**
30L
対象と方法
高齢透析患者(75歳以上)の GNRI推移
HDから30L前希釈on-lineHDFに変更した高齢透析患者を対象に
HD時、GNRI 91未満 (5名)とGNRI 91以上 (9名)で2群に分類し、
30L前希釈on-lineHDFでのGNRIの推移を観察した。
GNRI (-)
**P<0.01
mean±SD
**
30L
愛Pod 2点以上の患者割合(%)
愛Pod調査シート結果(愛Pod
2点以上の患者割合)
対象と方法
愛Pod調査シート結果
(愛Pod
2点以上の患者割合)
Kruskal-Wallis H 検定 ( N.S. )
**P<0.05
mean±SD
*
愛Pod調査シート結果 (全体での検討)
対象と方法
除去率
α1-MG 30%未満
N=49
愛Pod 2点以上の患者割合(%)
愛Pod 2点以上の患者割合(%)
Kruskal-Wallis H 検定
**P<0.05
mean±SD
除去率
α1-MG 30%以上
N=21
*
まとめ
置換液量
まとめ
30L から 50Lに増加した症例(36例)
β2-MGとα1-MGの除去率が向上し、かゆみの軽減とESA製剤使用量減少に
寄与した。置換液量増加による栄養状態への影響は認められなかった。
置換液量
30L を継続した症例(36例)
かゆみ等の愁訴の改善は認められなかった。
栄養状態はHD時と同等に推移したが、治療経過中に食欲不振やイベント発
症のため3名が血清アルブミン3.2g/dL以下に低下した為、ヘモダイアフィ
ルターをMFX-Mに変更した。
対象と方法
結語
①前希釈on-lineHDFは、置換液量増加に伴いβ2-MG
とα1-MGの除去率が増加し、ESA製剤使用量が低下
し、かゆみが軽減した。
②置換液量30Lではon-lineHDFの有用性は明かではな
かった。
③置換液量の増加が困難な高齢者や血清アルブミン
低値の症例での治療方法を今後検討する必要がある。