月刊PDF 12月号 - 日本貿易関係手続簡易化協会

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2014- 12
今月号の内容
記事1.◇連載◇ 貿易の実務と理論
(4)…………………………………………………… 1
早稲田大学名誉教授 椿 弘次
記事2.第24回国連CEFACTフォーラム 出席報告書 …………………………………… 9
記事3.貿易簡易化と電子ビジネスのためのアジア太平洋協議会
第32回 Plenaryミーティング報告 ………………………………………………… 20
記事4.国連CEFACTからのお知らせ ……………………………………………………… 28
記事5.
『ばいざういんどせいらー』
日本列島船の旅
〔船旅は国境を越えて〕 ………………………………………… 35
=JASTPRO広報誌電子版のご案内=
裏表紙にJASTPRO広報誌電子版のご案内を掲載しておりますので、ご参照下さい。
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◇連載◇
記事1. 貿易の実務と理論
(4)
早稲田大学名誉教授 椿 弘次
コンテナ運送が国際運送の革新をもたらしたことは、次のような点に顕著に現れている。
A)複 合 運 送 の 普 及により、Point of receipt to point of delivery へ 運 送 サービスが 拡 張したこと
→ Himalaya 約款と至上約款(Clause Paramount)
の重要性が高まった。
B)運送サービスの基礎が、個品から標準コンテナ単位になり、それに満たない取引量をコンテナ単位に取り
まとめ混載するサービスが重要になっていること→サービス・コントラクトの普及と運賃率の低下がみられる。
C)コンテナ船自体の大型化による規模の経済性の追求は、定期国際運送サービス市場の企業間提携を促
し、寡占化していること
(海運同盟が崩れたことの自然の成り行きか?)→ハブ港とフィーダー港の2 極化を
生んでいる。
D)運送責任体系の見直しが求められていること→複合一貫運送責任の在り方が B/Lの標準約款に委ねら
れる。
E)迅速、正確な運送情報に応じるため、各種業者間の電子情報ネットワーク化が進んでいること→安全性
確保と積荷情報の迅速な交換が求められる。
一方、B)及び C)の影響もあって、国際運送費用が取引される製品価格に占める比率が大幅に下がり、ま
た生産立地が世界的に拡大し、世界各地の一人当たりの国民所得(例えば、The Economist, November
29, 2014, p.54 参照)が上がっている。また、企業グループ内取引が増え、本社が日本にあっても、貿易取引
における物流は日本を経由しない取引も一般的になってきている。
このような環境の中で、取引相手国の港と本邦の港の間で、船荷証券による積地(出荷地)渡し契約が大き
く変容したことは、夙に説明してきたとおりである。それを、明確に明文化したのが、Incoterms® 2010 である。
本稿でも、引き続き、以上のような点に関連して、代表的な事例をアメリカの海事判例に求め、海商ベースの
貿易実務の参考に資するよう説明したい。
1.TheRega
l−Be
l
o
i
t事件 1
この事例は、前号までに触れたThe Kirby 事件 2と対をなすと思われるアメリカとの間での国際複合一貫運
送の代表的事例で、アメリカの最高裁判所の判断を求めた係争である。
中国からアメリカ中西部の各地向けに出荷された商品の運送を、日本の川崎汽船(以下、K Lineという)が
担当し、海上運送以外の運送、とりわけアメリカの鉄道を含む海陸の運送が一枚の通し船荷証券(through
B/L)で証明される一つの契約(a single transaction)で履行されることになった。
このK L
i
ne発行のB/Lには重要な約款が含まれていた。履行補助者に対する運送人の責任制限を拡大適
用するHimalaya 約款が挿入されていたが、コンテナ運送が複合運送に特色を発揮するため、その約款のい
わゆる射程範囲(range)が door-to-doorに広まると同時に、主たる運送人に契約運送の履行に必要な下請
1 Kawasaki Kisen Kaisha Ltd. v. Regal-Beloit Corp., 561 U.S. 89, 2010 AMC 1521(2010)、以下 Regal-Beroitと略す。
2 Norfolk Southern Ry. Co. v. James Kirby, Pty Ltd., 543 U.S.14,2004 AMC 2705(2004)、以下、Kirbyと略す。
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け運送に対する広範な裁量を認める文言になっていた(Himalaya 約款の射程の拡大については、日本のある
海運会社の約款では、Sub-contracting and Indemnityと題され、space charter or slot charterにも対応
できるような文言になっている(MOL Combined B/L 第 4 条 ))。従来の約款でsub-con
t
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actorに含まれてい
なかった思われる定期陸上運送業者が、その約款の適用対象に含められ、具体的文言で適用対象(例、
forwarder, stevedores, agents, servantsなど)を明示すべきとされていた 3 が、複合一貫運送の履行に必
要な者としてB/Lを発行する運送人が選任する業者と言う総括的な表現に変わっている。The Rotterdam
Rules Arts.18-19は、一種のHimalaya 約款に等しく、B/Lなどにより表示された複合一貫運送契約上のa
performing partyと認められると、同 Rulesの責任制限の利益を享受できる趣旨の規定である4。そして、こ
のa maritime performing partyには、運送契約に基づき運送人が引き受ける義務のいずれかを履行する、
または履行を請け負う当事者が含まれる。注2のKirby 事件のアメリカ最高裁による判決は、それを先取りして
いると思われる5。
さらに、日本の国際海上物品運送法(COGSA)が準拠法とされ、いわゆる三国間運送であっても、日本法
(具体的には、Hague-Visby Rules)が適用される旨の約款の有効性が問われることにもなった(日本の国際
海上物品運送法は、船積港または陸揚港が本邦以外にある運送を対象にしているから、B/L 約款により三国
間運送に日本法が適用できるか否かという課題である)。この約款は東京地方裁判所を管轄裁判所に指定し
ているので、その効力も争点となった。
KL
i
neは、
「アメリカ国内の陸路運送区間」
(the land leg of the combined transport)を下請け運送とし
て、Intermodal Transportation Agreement(複合運送協定書で、陸運業者と定期海運業者の間で締結
されている)によりUnion Pacific Railroad Co.(UP.と略する)に委託した。太平洋の航海は平穏に進んだと
思われ、カリフォルニア州 Long Beachに入港したK Lineの船舶から運送品を受け取り、UPは最終仕向地ま
で、鉄道運送することになった。しかしながら、途中、オクラホマ州で列車は脱線し、運送品が相当な損傷を
被った。
紛議は、連邦カリフォルニア州中部地区裁判所に係ったが、K L
i
neは裁判管轄約款に基づき訴えを却下
すべきことを申し立てた。同地区裁判所はこの申し立てを認めたが、連邦第 9 巡回区控訴裁判所は、これを認
めず、さらに、国際一貫運送のアメリカ内陸部分にアメリカ法(The Carmack Amendment)の適用があ
ることを判示し、B/Lの合意管轄約款の効力を否定した。これは、他の多くの連邦巡回控訴裁判所の判決と
一致しなかった(具体的には、第 4,6,7,11 巡回区は、本件と同様の事案にThe Carmack Amendment
は適用されないとしたが、ニューヨーク州を管轄する第 2 巡回区控訴裁判所は、カリフォルニア州を管轄する第
9 巡回区控訴裁判所と同様に、同法の適用があると、Sompo Japan Ins. Co. of America v.Union Pacific
R.R. 事件において判示していた 6)。
3 Robert C. Herd & Co. v. Krawill Machinery Corp., 359 U.S.297, 1959 AMC 879(1959) 参照
4 Michael F.Sturley et al., The Rotterdam Rules , Sweet & Maxwell, 2010, Para. 5-186 参照
5 Carlo Corcione, The evolution of third parties protection in carriage of goods by sea. From the Himalaya clause to
the Himalaya protection , 2014 Eur.Transp.L.271も参照
6 456 F.3d 54, 2006 AMC 1817(2d Cir.2006). 本件は、その後、注1および2のアメリカ最高裁の判決を受けて破棄され、改めて
最高裁の示した原則に基づき再審判決が出た
(2014 AMC 1817(2d Cir.2014). 2006 年から8 年の長きにわたって係争が続いたこと
になる。それだけ、コンテナ革命の象徴である複合一貫運送の効率性を目指したB/L 約款に基づく取引慣行の法的効力の判断が
とても重要だったことを示すものである。
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事案は、最高裁に移され、The Carmack Amendmentの国際一貫運送契約の内陸区間への適用の可
否が審理された。
The Carmack Amendmentは、かつての州 際 交 通 員 会(The Interstate Commerce Commission;
ICC)管轄の陸上運送を規律する州際交通法(The Interstate Commerce Act)の改正法(最近のものは、
1995 年改正であるが、規定の読みやすさのための改正であって根本的な改正ではない。the Carmack
Amendmentの 運 送 責 任 の 原 則は、 一 部 の 法 定 免 責 事 由による損 害を除いて実 損(actual loss or
damage)賠償の厳格責任である)であり、Surface Transportation Board(STB;連邦陸運局)が ICCの
管轄を引き継いでいる。STBの管轄は、アメリカ国内に始終点のある陸上運送およびそれらの地点と陸接国の
カナダ、メキシコ間の陸上運送である(前掲のRegal-Beroit 事件(2010 AMC 1521),1536 頁参照)。
国際海上物品運送法(COGSA)は、日米ともに、裁判管轄約款をB/Lに入れることを制限していないし、
更には、注2のThe Kirby 事件のアメリカ最高裁の判決によっても、契約(具体的にはB/L 約款、さらには
The Himalaya 約款)により、陸上区間を含む全運送区間を一括して複合一貫運送 B/Lによる契約運送区間
とすることが認められた(なお、アメリカの場合、国際海上運送業者は、連邦海事委員会(Federal Maritime
Commission; FMC)の管轄に服することは周知のとおりである)。
STBの管轄下にあって、鉄道運送を行う業者は、荷主から運送のために物品を受け取り、運送証券(a
bill of lading)
を発行する業者(the receiving rail carrier)
と荷受人に物品を引き渡す業者(the delivering
carrier)の他に、連絡運送業者(the connecting carrier)が含まれる7。これらの業者には、the Carmack
Amendment が適用され、主としてthe receiving carrier が、第二次的にthe delivering carrrier が荷主
(荷送人、荷受人)に対して責任を負担するが、K L
i
neは、この類型に属する業者ではない。
一般海法(general maritime law)の統一性を維持するためにも、国際一貫運送 B/Lでカバーされる相当
部分が海上運送である契約に、アメリカ連邦海法を適用することが、海商の有効性を高めることにつながる。
これが、The Kirby 事件の原則である8。この原則は、K L
i
ne発行のCOGSAに準拠した国際一貫運送 B/L
についても妥当し、The Carmack Amendmentの本件への適用はなく、UP が担当した鉄道運送についても、
COGSA で一貫して規律されるべきものであるとK Line とUPの双方により主張された。
事故が発生し、損傷が生じたのはアメリカの鉄道運送区間であるから、いわゆる発生区間不明の損傷では
ない。したがって、発生区間の責任原則が、運送約款によっては貨物損傷クレームの処理の原則となる可能
性はある。しかしながら、前述のとおり、K Line はThe Carmack Amendmentにより、アメリカのSTBの管
轄に服するいわゆるthe receiving rail carrier ではなく、UPは運送のために物品を荷送人からアメリカ国内で
受け取った当事者でもない。また、その物品の国内運送に対し、別途に運送書類の発行をUPは法的に求め
られていない。実際には、K 10LineのB/Lによる一貫運送を完成させるために、UPが継続する(on-carriage)
内容で、別途、鉄道運送証券を発行していなかった。したがって、UPはThe Carmack Amendmentの適
用対象外の業者であり、同法は本件の一貫運送に適用されない 9。
この点は、重要である。K L
i
neは、UPから見れば運送依頼人であるが、売主である荷送人を代理してい
ると解され、UPが国内運送のために独自に受取証を含む運送書類を物品の売主である荷送人宛に発行し、
7 49 U.S.C.§11706(a).
8 Regal-Beloit, 2010 AMC 1521, pp.1528-1529,1537.
9 Regal-Beloit, 2010 AMC 1521, 1533. 本件は、海外からの複合一貫運送による輸入物流であるが、海外へのアメリカからの複合
一貫運送による輸出物流については、後程、触れたい。
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別途の運送契約が締結されているとみなされると、the Carmack Amendment が適用される可能性は高い 10。
言い換えれば、K L
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neの複合一貫運送 B/Lの想定する運送が一体のもの(a single transaction)で、分割
可能ではないものとして設計され、一体性を維持するために、その運送の一部をK L
i
ne から受託する鉄道
運送人が下請け運送人(sub-contractor)の地位に立っていることが主張された(この点に、Himalaya 約款
の存在意義が認められる)11。両社の間は複合運送業務協定(Intermodal Transportation Agreement)
で規律されていた。
なお、この点を裏返すと、アメリカの国内地点からスタートする国際一貫運送(export ship-ment)が、NV
OCCまたはVOCが発行する複合一貫運送 B/L でカバーされ、出荷地で鉄道運送人が国内運送用の運送書
類を別途発行せず、B/Lによる一貫運送責任(through and single responsibility)で規律されている場合に
も、the Carmack Amendmentの適用を免れるとの立論が成り立ちうるが、本件の審理対象外で、当然のこ
とながらその点には詳しく言及していない。しかし、傍論としてこの立論の論理性が、Regal-Beroit 事件の判
例集(130 S.Ct. 2433, pp.2447-49, 2010 AMC 1521, p.1539)において言及されている。
連邦第 2 巡回控訴裁判所管内では、アメリカからの輸出取引において、複合一貫運送のアメリカ国内での
第一段階の運送(the initial inland leg)に、the Carmack Amendmentを適用した事案が見られるが、ア
メリカ国内の陸上運送をSTBの規制に服するthe receiving carrier が運送書類を発行していたので、複合
一貫運送に該当しないと思われる12。もちろん、アメリカの隣接国、カナダ、メキシコ向けの陸上運送の場合に
は、別途の考慮が必要である。
The Carmack Amendmentは、貨物の損傷に関する紛議の管轄は、受取鉄道運送人を相手方とすると
きは、その運送の始点(point of origin)が位置するアメリカの裁判所に帰属すると規定している(§11706(d)
(2)
(A)
,
(i)。K Lineの複合一貫運送にthe Carmack Amedmentの適用があるとなれば、この点が B/L
の東京地方裁判所を管轄裁判所とする裁判管轄約款と衝突する。
日本の海運会社発行の船荷証券には、準拠法として日本のCOGSA が指定され、管轄裁判所は東京地方
裁判所とされている。また、至上約款(Paramount Clause)により、アメリカとの間のB/Lによる運送(定期海
上 運 送 )には、アメリカのCOGSAを適 用 することが 規 定されている(アメリカ至 上 約 款=US Clause
Paramountと呼ぶ)。船荷証券でカバーされる海上運送に、Hague Rules, Hague-Visby Rulesなどの国際
統一条約が適用されることは、締約国との間での運送では言わずもがなのことである13。しかし、責任制限額
などが異なるため、そのような規定が設けられている。とりわけ、アメリカは依然としてUS$500 per package or
unitを責任制限額としていて、相対的に低い水準にある14。本件のようにB/Lの準拠法と至上約款が併存す
るとき、両者の棲み分けの論理が必要になり、両者が一致していない部分に関し、至上約款によりアメリカの
COGSA が適用される構成になっている(MOL Combined Transport Art.29 参照)。
10 Mexican Light & Power Co. v. Texas Mexican R. Co., 331 U.S. 731(1947).
11 Altadis USA, Inc. v. Sea Star Line, LLC, 458 F.3d 1288, 2006 AMC 1846(11thCir.2006), Am. Rd.Serv. Co. v. Consol. Rail
Corp., 348 F. 3d 565(6th Cir.2003). 12 Am. Home Assurance Co.v. Panalpina, Inc.,2011AMC 733, 2011 WL 666388(SDNY, 2011). STBの規制に服さない国際海
運会社が発行する複合一貫運送書類にカバーされて、アメリカの国内地点を起点とする輸出物流が行われるときは、the Carmack
Amendmentの適用はない、と第6巡回区控訴裁判所で、最近、判決されている
(CNA Insurance et al. v. Hyundai Merchant
Marine Co., Ltd. , 2014 AMC 609(6th Cir. 2014).
13 WilliamTetley(日本海運集会所訳 『
) 海上貨物クレーム』
日本海運集会所、1983、pp.7-8 参照。
14 主要海運国の責任制限額の一覧は、やや古いが、Tetley, 前掲書、pp.698-699 参照。
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本件では、この点に関しても、The Carmack Amendmentの適用を認めると、アメリカの法定の専属裁判
管轄とB/L 約款が相違し、結果的に二重の運送責任制度の適用の可否の課題を引き起こし、また、発生区
間不明の事故による損害賠償について因果関係の立証などの課題が生じることが指摘された。本件の場合に
は、脱線事故で貨物の損傷の発生区間が明らかであるが、そうでない場合には、コンテナの内容品の状態を
点検するために、例えば、Long Beach 港(接続地点)でコンテナを開扉して、点検することが必要になること
もあろう。これは、コンテナによる複合一貫運送の効率、円滑化を著しく阻害するだろう。それは、貿易関係者
の望むところではない。
基本的に海事契約(maritime contract)に、条文上も沿革的にも陸上運送を規律対象とするThe Carmack
Amendmentを適用することは、国際海商の自律性の幅を狭めるもので、当事者自治と契約の自由を認める法
の趣旨に合わない 15。したがって、B/Lの合意裁判管轄約款に従い、東京地方裁判所で審理されるべきだと
判示された(少数意見を述べた3 判事を代表して、Sotomayor 最高裁判事が反対意見を述べている)。反対
意見の主眼は、運送人対荷主の関係で議論しすぎて、B/Lを発行した主宰運送人(primary carrier)対複
合運送の参加運送人の間の関係を十分審理していないことにあると思われる16。
また、事故と損傷の発生区間が明らかな損害に対して、保険代位により運送人の責任を追及しようとする保
険者の観点からは、運送人の責任原則において、COGSAとThe Carmack Amendmentとの間にある差異
の大きさに注目せざるを得ないだろう。その差異を無視しても、優先されるべき海事契約の国際統一性、履行
の効率性は、特に発生区間が明らかな損害に対して、どのような説得力を持つのかが十分に説明されていな
いことにSotomayor 判事は異議を唱えているものと思われる。
2.この判例から見えてくること
NVOCCによる契約運送とコンテナ海運会社のアライアンスのメンバーによるslot charter(あるいはspace
charter)による契約運送は、貿易当事者から見れば同じものに見える。荷為替が決済条件として選択され、
B/L が必要なとき、VOCのB/LもNVOCCのB/Lも運送条件に、運賃は別にして、差はないと言える。すな
わち、複合一貫運送において、国際複合運送取引の統一的取扱いのために、主宰海運会社(複合一貫運
送サービスを、各種の運送事業者と連携して協定を結び、SCM型物流のニーズの充足に中心的な役割を果
たす企業。海運企業に限定する必要はないが、現在のところ国際コンテナ海運事業の担い手は海運会社が
占めている)の標準 B/L 約款で契約条件が統一されている。このため、契約交渉の迅速性が促され、参加
運送人間の円滑な内部調整を確保し、貨物クレームの処理においても主宰運送人が窓口になるので、運送効
率面でも望ましい。したがって、貿易の物流面を担当する者は特に、このB/Lの標準約款について十分に理
解を深めて、国際定期貨物運送の実務を執り行うことが重要になる。とりわけ、Himalaya 約款と至上約款(も
しくは、準拠法の指定)について、点検しておくべきである。NVOCCのB/Lを用いるときは、VOC(actual
carrier)のB/Lと齟齬していないことに留意する。大きな齟齬があると、複合一貫運送としての性格を損なう恐
れが出るからである。その上で、運送書類面に、複合運送区間と経路を明示しておけば、その範囲内で主宰
運送人の適正な判断により、下請運送人(sub-contractor)
、履行補助者、使用人などが選任されると期待
15 前 掲 注 12、CNA v. Hyundai Merchant Marine, 2014 AMC 609, p.1539, 同じく前 掲 注 6, Sompo Japan v. Norfolk
Southern 事件、2014 AMC 1817, pp.1838-39 参照。
16 Regal-Beroit, 2010 AMC 1521, 1563.
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できるからである。Operating carrierとNVOCC, slot chartererの内部関係は、B/Lなどの運送書類から
は十分窺い知れることではなく、一応、貿易取引には関係が薄い。ただ、SCMの観点から、特定の国際複
合一貫運送のサービスについて、事業者間連携についての実態を調査しておく必要はあるだろう。
前号でも触れたとおり、国際複合一貫運送が、海事契約性を維持していることが重要である。複合一貫運
送区間を明示し、コンテナによる海上運送が主体で、陸上運送区間は主宰運送人が引き受けた複合一貫運
送の完成のために必要な範囲に限定されることが明らかになっていなければならない。それが、当事者から見
て適切な(fitした)運送経路でなければならない。そうすれば、アメリカの国内陸上運送規制を回避できるが、
それによりアメリカ国内では国際複合一貫運送の陸上運送区間(the land leg of international through
transport)のthe Carmack Amendmentによる規制が排除されることになり、国際複合運送の一部(one or
several legs)を構成する国内運送は、through B/Lに準拠することになる。他方、Regal-Beloit 事件は、ア
メリカへの輸入貿易に関するものであるが、均衡を図る意味でも、アメリカからの輸出貿易の物流が海事性を強
く帯びているとき、前述のように、この事件の原則が適用される事例が見られる(注 12 参照)。
少し前の判例であるが、このことに関して参考になる事案を簡潔に紹介しておきたい。それは、American
Home Assurance Co. v. Hapag Lloyd Container Linie, GMB, et al. 事件である 17。この事件では、
Caterpillar 社のイリノイ工場からSingaporeの同社の関係会社宛ての機械類のコンテナ運送に関して、荷送
人は、フレート・フォワーダーを介して運送予約し、フォワーダーは工場からChicagoまでのトラック輸送を手配し、
Hapag LloydはLong Beach 港経由、Chicago-Singapore 間の運送を担当することになり、Matson Intermodal
Systemsを介してLong Beach 港までの鉄道運送を取り決めた。鉄道会社BNSFの列車が Chicago から
Long Beach 港向けて走行中に脱線し、貨物に相当な損傷が生じた。BNSFが Matson 社とBNSFの複合一
貫運送取り決めに基づき責任制限を主張し、2 台のエンジンに対する責任は、US$500×2=US$1,000 であると
述べた。運送人が依拠したB/Lに含まれていたHimalaya 約款をBNSFに対して適用することが認められた。
この事件では、the Carmack Amendmentに言及していないが、VOC が複合一貫運送を引き受け、その履
行のためにBNSFを複合運送人が雇い入れたとの理由で、Himalaya 約款の適用があると判断された。すな
わち、アメリカからの輸 出 貿易における複 合 一 貫 運 送の取り決めとB/LのHimalaya 約 款により、The
Carmack Amendmentの適用ではなく、US COGSAの責任制限の適用を裁判所は認めた。なお、Royal
& Sun Alliance Insurance, PLC v. Service Transfer, Inc. 事件 18 でも、ケンタッキー州からオーストリアの
ウィーンまでの一貫運送を引き受けたAPL社の運送状(Waybill)に挿入されていた至上約款とHimalaya 約款
について、STBにいう自動車運送人で、ケンタッキー州からヴァージニア州 Norfolkまでの運送を担当した被告
に、それらの約款に基づく責任制限が認められた。Hapag Lloyd 事件の判決と同趣旨だろう。後者の事件で
は、Regal-Beroit 事件および Kirby 事件に明確に言及し、国際複合運送の一部を構成する国内運送と純粋
に国内陸上運送を分けて規律すべきことを強調している。
後 述 のCammarano 弁 護 士 は、アメリカからの 複 合 一 貫 運 送 の 輸 出 物 流 に 対 するthe Carmack
Amendmentの適用除外には、同じ陸上運送に国内運送と国際複合一貫運送の一部を成す国内運送と言う
2 種に分けて規律することに懐疑的だが、アメリカ海事判例の今後の動向に注目したい。
17 2006 AMC 1239(2d Cir.2006)
18 2013 AMC 345(SDNY, 2012).
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−Be
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i
t事件においては、アメリカの国内鉄道運送に関する国内法の適用問題の他に、運送人の側
からB/Lの合意裁判管轄約款の適用が提起された。これに対し、当事者の合意を尊重するとの考え方に則り、
その拘束力が承認された(外国裁判管轄の合意の執行力を承認したSky Reefer 事件(Vimar Seguros y
Resaguros, S.A. v. M/V Sky Reefer, 515 U.S.528;1995 AMC 1817(1995)参照)。したがって、法律的な
解決は、日本側に委ねられた形になった。国際海上運送契約に関する訴訟は、どの国の荷主関係者であれ、
経費と時間の面だけでも容易ならざる課題である(注 6 参照)。しかし、日本の裁判所もこれに応えなければなら
ない時代であることを、この事例は改めて示している(なお、輸入貿易に関する訴訟の輸出として、この事件の
判決を批判する見解が海法における有力な法律専門誌に表明されている19)。
訴訟の輸出というやや厳しい表現ではなく、クレームの対象物の所在地、運送品の損害に対する証拠の利
用、損害の因果関係の立証などの訴訟の経済性を考えたとき、合意管轄約款を尊重するという契約の自由と
当事者自治の原則以外に、敢えて東京地方裁判所に事件の審理を移すべき理由は何なのかについても説明
が必要であったと思われる。
3.小括
貿易取引の基本の一つは、契約品の引渡と経費の管理である。そして、Incoterms で公式化された貿易
条件の選択により、管理する当事者が決まる。貿易企業内では、このことを主管するのは営業部の他に受渡
部や物流管理部などであろう。これまでの説明からも理解されるように、
「コンテナ革命」は多様な意義を含んで
いる。物流サービスが、いわゆる資産保有型のVOCの他に、利用運送型のNVOCCを含むようになり、更に
は、コンテナ船の大型化が VOCsの緊密な連携を生み、space charterによるVOCのNVOCC 兼営化となっ
ている。売買契約における契約品の引渡義務の履行を支援してくれる物流サービス事業者の慎重な選択が望
まれる。
本稿で見たように、地球上の海の広さから世界の貿易流通の大部分が海上運送によって担われ、そのこと
が VOCやNVOCCの連携を介して、定期海上運送の新展開が Himalaya 約款により 陸上運送に強い影響
を及ぼしている20。貿易関係者が、海商の実態に注目し、Operating carrierとアライアンス・メンバー企業間
の運送情報システムの統一(少なくとも、始点ターミナルから仕向地ターミナルまでの電子情報システムの互換性・
inter-operability の確保)
、迅速な荷役のための埠頭 operationの電子化の要請(Shipnets, Polinet から
NACCSの守備範囲拡大)
、コンテナの有効利用のための情報連携の必要性(コンテナの往復利用によるコン
テナ扱い費用の節減など)
、積荷情報のentry pointとしてのforwarder, NVOの重要性などに広く関心を持
つことなどが、安全かつ安定したSCMにつながり、その法的な展開にも関心を持つべきことを、本稿から読み
取ってもらいたい。とりわけ、日米間の直接の貿易量は減少しても、海外に展開する日系企業の対米貿易は盛
んであり、日本の国際物流サービス会社(損害保険会社を含む)を巻き込んだ国際複合運送に関する商事紛
争に対する注目は高まっている。
19 Dennis A. Cammarano, Impact of the Supreme Court Decision in Regal Beloit: Exporting Import Litigation , 85 Tul.
L.Rev.1207(2011)を参照。
20 Marva J. Wyatt, Contract Terms in Intermodal Transport; COGSA Comes Ashore, 16 Tul. Mar. L.J. 177(1991).
また、The Rotterdam Rulesの名称とa maritime performing partyに関する規定にも注目すべきだろう。
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<訂正とお詫び>
前号(No.434)に、次のような誤記や誤りがありました。矢印(→)のように訂正してお詫び申し上げます。
2 頁
注 4 (中央経済社)→(国際商業会議所日本委員会)
同
注 5 『コンテナン物流の理論と実際』→『コンテナ運送の理論と実際』
3 頁
注6
Schimitthoff → Schmitthoff
同
注8
判例名の後に(Q.B.)
と追記
8 頁
注 17 Kawasaki Kisen Kaisha, Ltd., et al., 2014 AMC 438(N.D.Il 2013)→
Kawasaki Kisen Kaisha, Ltd., et al., v. Plano Molding Co., 2014 AMC 438(N.D.Il
2013)
のように被告名を追記
以上
̶8̶
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記事2. 第24回国連CEFACTフォーラム 出席報告書
ビューロメンバー及び事務局(Opening Session)
2014 年 10月27日
(月)
∼ 31日
(金)
FCCI Federation House ニューデリー・インド
第 24 回国連 CEFACTフォーラムがニューデリー・インドにて開催されました。
以下概要をご報告致します。
1. 会議の概要
1.1 会 期 2014 年 10月27日
(月)
∼ 31日
(金)
1.2 会議場 FCCI Federation House ニューデリー・インド
1.3 会議日程
●
Opening session
10月27日
(月)AM
●
各ドメインにて会議
同日 PM
●
同
10月28日
(火)終日
「ペーパーレスを支えるセキュリティ及び認証」に関するワークショップ
●
10月29日
(水)終日 ●
各ドメインにて会議
10月30日
(木)終日 ●
Closing Session
10月31日
(金)AM
̶9̶
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1.4 参加者 1.4.1 全体参加者数:約 200 名 参加総数については、フォーラムの3日目にWorkshopを開催し一般の参加者が多かったこともあり200
名となりました。なお、主催国のインドの参加者を除いた各国からの専門家としての参加は、開催前に
登録した参加者名簿によると総勢 58 名となっています。 前回フォーラム
(第 23 回ジュネーブ・スイス)
の151 名はもとより、前々回のフォーラム
(第 22 回サルディニア・イタリア)
の81 名と比較しても少なく、後
述するように、各ドメインをリードするコーディネーターの欠席も目立ちました。
1.4.2 参加者出身国数:16 ヶ国 前々回第 22 回は21 ヶ国、前回第 23 回は29ヵ国でしたが、今次は大幅に減少し、16ヵ国となりました。
このうちアジア地域は日本、韓国、中国、インド、タイ、スリランカの6カ国、アフリカ地区からはナイジェ
リア1 ヶ国の参加となりました。
1.4.3 国際組織:4 組織 事務局でもあるUNECEはもとより、GS1、WCO、ISO が参加しました。
1.5 ビューロメンバー
国連 CEFACTビューロからは議長並びに6 名の副議長全員が出席しました。
1.6 日本からの参加者 以下 4 名が参加しました。 ●
菅又久直氏(国連 CEFACT日本委員会運営委員会委員長・
サプライチェーン情報基盤研究会(SIPS)事務局長) ●
鈴木耀夫氏(国連 CEFACT 標準促進委員会委員・NPO 法人観光情報流通機構専務理事)
●
遠城秀和氏(国連 CEFACT 標準促進委員会委員・NTTデータシステム技術株式会社)
●
石垣 充(JASTPRO 業務部業務1部長)
なお、前回第 23 回フォーラムは、第 20 回国連 CEFACT 総会と同時期に開催されたことがあり、総勢
9 名が参加しました。
2. 各 PDA の作業状況
2.1 PDA #1『貿易手続き』
2.1.1 担当副議長:Lance Thompson 氏
(米国)
同(副) :Estelle Igwe 氏(ナイジェリア) 2.1.2 関係ドメインとそのコーディネータ
国際貿易手続き
(ITPD) Lance Thompson 氏(米国)
これまで本 PDAに所属していた輸送&ロジスティクスドメインは、2014 年度からサプライチェーンPDAに
所属しています。
2.1.3 継続案件『新勧告第 40 号 Consultation Approaches Best Practices in Trade and Government
consultation on Trade Facilitation Matters(会議の方法:貿易円滑化関連事項についての貿易業
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界と行政との間の協議)』
プロジェクトにて策定したドラフトが、2014 年 7月に60日間のパブリックレビューとして公示され、提出され
たコメントについての討議を経て一部修正の上、ビューロに提出されました。2015 年 2月、ジュネーブ・
スイスで開催予定の国連 CEFACT 第 21 回総会に提出、承認の上、公表される予定です。
2.1.4 新規案件『現行勧告第 4 号「National Trade Facilitation Body(各国貿易円滑化機関)
」及び
そのガイドラインの改訂』
2001 年に発行された勧告第 4 号及び 2000 年に発行されたガイドラインは、発行から時間も経過している
こと、その間に於いてWTOのバリ閣僚会議で合意された貿易円滑化協定を反映する必要性や、既に
複数の貿易円滑化関連組織が各国で立ち上がっていること、更に地域レベルでの貿易円滑化の相互
協力のアプローチ等を考慮して貿易円滑化機関についての定義も改訂する必要があるとの認識のもと、
その改訂版策定のため、今次フォーラムにて新規プロジェクトとして立ち上げることとなりました。
2.1.5 継続作業中の案件:
『勧告第 36 号 シングルウィンドウの相互運用性の確立(SWI)』
シングルウィンドウについては2005 年から2010 年の間に以下の3 件の勧告が公開され、多くの国々に於
けるシングルウィンドウの推進を促してきました。
①勧告第 33 号 「シングルウィンドウの設置に関する勧告とガイドライン」 ②勧告第 34 号 「シングルウィンドウのデータ整合化に関する勧告とガイドライン」
③勧告第 35 号 「国際貿易におけるシングルウィンドウのための法的枠組み」
本件勧告第 36 号は、各国でそれぞれのニーズに即して開発してきたシングルウィンドウを相互に接続す
る為の相互運用性(Single Window Interoperability(SWI))の確立を目指すものです。
2014 年 6月25日、パリにて開催されたITPDの個別会合(我が国は不参加。)
にて以下のステップを踏
むことが合意されました。
①以下 4 つのそれぞれのタスクに分かれて検討を進め、10月中旬を目標にDiscussion ペーパーをドラ
フトする。
・ビジネスニーズ
・意味情報(Semantics)の相互運用性
・ガバナンス環境
・リーガル環境
② 2015 年 2月、シングルウィンドウ導入経験者等が参画するSWIに関するWork Shipを開催し、上
述のDiscussion ペーパーを更に更新する。
③ 2015 年秋にSWIに関するシンポジウムを開催する。 今次フォーラムの開催直前に、上記 4タスクからこのDiscussion ペーパーのドラフトが提示されましたが、
フォーラムでは細部についての議論はなく、以下のとおりの概況の報告のみがありました。
ドラフトについての意見等はフォーラム終了後に直接各タスクのリーダ宛てコメントすることとなりました。
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【ビジネスニーズ 検討タスク】
●
貿易関係業界と行政府のそれぞれに於いてSWIプロジェクトに関するニーズについて纏める。
●
B2G 及び G2Gに於ける法令上要求されるデータや情報をNational Single Window 間にて交換す
るケースについて、複数のSW 間のInterconnectivity(接続性)
のメカニズムをカバーする。
●
相互運用性の必要性、SWI 確立の為の前提条件、SWI 実施の障害事項、多様なモデルの
SWI、全体的なビジネス・持続性の解析、SWIを行う関係者のビジネスニーズの解析をそれぞれ行う。
【意味情報(Semantics)相互運用性検討タスク】
Semantic 並びにSyntaxとの関係、相互運用性に係る多種のツール、相互運用性の異なるレベル
等について検討を行う。
【ガバナンス環境検討タスク】
ガバナンスについては、集中型ガバナンスモデルとネットワーク型ガバナンスモデルが考えられるが、本
件では両方のケースとも検討の対象とする。
【リーガル環境検討タスク】
基本的には勧告第35号「貿易に於けるシングルウィンドウの為の法的枠組み」
を前提に、更にクロス
ボーダー間に於ける法令の相互運用性(フォーマット、犯罪関連法令、認証関係等)
を考慮した検討を
行う。
2.1.6 継続検討中の案件:
『Public-Private Partnership(PPP)
プロジェクト』
Maurice Diamond 氏、Paloma Bernal 氏がリーダとして情報収集を行い、2014 年 12月初旬を目標に
ドラフトを策定する予定とのことでしたが両氏とも欠席の為、代行してLance Thompson 氏より検討状況
の報告がありました。
2.2 PDA #2 「サプライチェーン」
2.2.1 担当副議長 Raffaele Fantetti 氏
(イタリア)
(出席)
2.2.2 関係ドメインとそのコーディネータ
①調達・購買
Bernard Longhi 氏(欠席)
②サプライ管理
Karina Duvinger 氏(GS1)
(欠席)
Edmund Gray 氏(欠席)
③金融
Liliana Fratini Passi 氏(イタリア)
(出席)
④政府
Ray Pisani 氏 (欠席)
⑤運輸
Dominique Vankemmel 氏(フランス) (欠席)
2.2.3 新規案件『Remittance Advice 拡張提案』
菅又 SIPS 事務局長より、SIPSの金流商流情報連携タスクフォースで進めている金融 EDI 実証実験と、
そこで必要とするRemittance Adviceメッセージの拡張要件につき、以下の内容を説明しました。その
結果、本件は既存標準の保守ということではなく、新規のプロジェクト案件となり、2014 年 11月開催の
AFACT(貿易円滑化と電子ビジネスのためのアジア・太平洋協議会)
のPlenaryにて参加各国に説明
し、引き続き、AFACT 参加各国の中からプロジェクト支援国を確保して行く方針です。
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①プロジェクトの目的
● 取引当事者の入金消込業務を改善する。
● 商取引情報を金融セクターと共有する。
● 日本、アジア、世界の商取引慣行に適合させる。 ② Remittance Advice 主要拡張点
● 月次支払慣行への適用 ➔「締日」の設定
● 関連課税情報の追加 ➔ 税込か否か、及び税額の確定
● 複数の支払手段の適用 ➔ 振込と電子債権の併用
● 相殺機能の追加 ➔ 相殺明細の電子化
● 関連商取引情報の追加 ➔ 取引製品、価格、数量の追加
㻼㻻㻯㻌㼒㼛㼞㻌㻾㼑㼙㼕㼠㼠㼍㼚㼏㼑㻌㻭㼐㼢㼕㼏㼑㻌㻱㼤㼠㼑㼚㼟㼕㼛㼚㻌㼕㼚㻌㻶㼍㼜㼍㼚㻌
Financial
Network
Debtor
Bank
EDI
TransacƟon ID
Payment
InstracƟon
RemiƩance
Advice
Commercial
Network
EDI
TransacƟon ID
DB
Creditor
Bank
Cash
Management
ᵮᵭᵡᴾᵮᶊᵿᶒᶄᶍᶐᶋ
Conversion
Payment
InstrucƟon
Zengin
System
Conversion
RemiƩance
Advice
RemiƩance
Advice
Cash
RemiƩance
Management
Advice
Buyer
Seller
1. To proof the improvement of reconciliaƟon works of Buyer / Seller.
2. To analyze the data in Plaƞorm DB for the new business opportunity.
2.2.4 継続案件『Purchase Order Financing Request Project』
2014 年 10月27日付にてプロジェクト発足と参加者募集の公示がなされました。
趣意書に述べるプロジェクトの目的は以下のとおりです。
『本プロジェクトの目的はPOファイナンス
(POF)
の為の国連 CEFACT 標準の開発である。
POFはサプライヤー
(例 製造業者)
に支払う資金がない貿易者や前金が必要な販売者のためのファイ
ナンスオプションである。この前提に於いて、バイヤーに拡張的な支払条件を提供することになる。一旦、
POにサインをしたバイヤーから代金を収受したあと、POFを行う会社は発生費用とフィーの返済を受け
る。POFは、インボイスを基本にした債券買い取りの一つのバリエーションである。』
『実際の市場や、会社のビジネスの上では、都度料金の交渉をすることなしに、必要なときに調達できる
ような継続的な資本を持つことが重要である。
POF サービスは、会社の財政・資金管理の最適化を支援するもので、それは有益な貿易を失敗させな
いよう資金不足を避けることにある。より広い視点に立てばこのサービスは会社内部の効率化や効率性
改善のための支援も可能となる。』
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『POF サービスは、会社にPOを生きた資金へと変更する機会を提供する。実際のところ、それは会社
をして、例えばサプライヤーへの支払に必要な資金も提供することになる。
当プロジェクトは、要求された仕様の生成を含むもので、すなわち、ビジネス要求仕様
(BRS)
や要求仕
様マッピング
(RSM)
である。POFのプロセスは、関連するビジネスメッセージや取引とともに記述される。
成果物は、貿易関係者相互間のビジネス取引を支援するためのXMLガイドラインを取得するために活用
される。プロジェクトの成果物は消費者企業、銀行その他ファイナンシャル企業や業者の利益となろう。』
本プロジェクトでは、BRS(Business Requirement Specification)/RSM(Requirement Specification
Mapping)
の策定と、以下の3 つのメッセージ設計が進められています。
● PO Financing Request
● PO Financing Request Technical Report
● PO Financing Request Business Status Report
本プロジェクトはEUのCBI(Center for the promotion of imports from developing countries)
か
ら提案され、イタリア、スウェーデンおよびドイツの支持を得ています。
2.2.5 新規案件『Trade Finance / Supply Chain Finance』
今回、新たにTrade Finance / Supply Chain Financeプロジェクトが提案されました。当案件は、
国連 ESCAP / ADB 主催のAPTFF(Asia Pacific Trade Facilitation Forum)
でもテーマになった
課題であり、BPO: Bank Payment Obligationなどが検討対象になるものと思われます。
趣意書に述べるプロジェクトの目的は以下のとおりです。
『プロジェクトの目的は、貿易金融とサプライチェーン金融(以下貿易サプライチェーン金融と呼ぶ。)
を貿
易円滑化に係る枠組みとプラクティスに於いて連携・包含するよう推奨することである。貿易サプライ
チェーン金融は今日、世界の貿易における広い範囲で大多数の貿易を支えています。研究者の見積も
りによると貿易の流れの80∼90%は流動性やリスク軽減に関係した貿易金融の形を要請している。シン
グルウィンドウ構築推進者を含む貿易円滑化計画やプラクティスは、官民の多様な必須の要素に集中し
てきた。それは教育からロジスティック、インフラから法令整備、その他多数であるが、金融の役割は、
いろいろな理由から歴史的に視野の外であった。』
『世界貿易のフロー及び経済的な価値の創造において、SMEの役割はいまや広く知れ渡っている。また、
SMEがタイムリーで調達可能な金融(貿易金融を含む)
について極めて必要度が高いことも知られてい
る。同時に、危機以降のマーケットのダイナミクスと法令規制の圧力は貿易金融業者が彼らのビジネスを
更にオープンにするよう働きかけることになっている。彼らはまた、新たな投資元やグローバルなシステム
における貿易金融の適正な供給を確実にする投資を積極的に希求している。これらの要素等は貿易サ
プライチェーン金融を貿易円滑のプラクティス及び貿易活動に関係した開発も明確・システマティックに包
含するためには最適なタイミングであることを示している。』
『世界的な経済危機の直接的な結果としての貿易金融は、政策担当者やビジネスリーダに空前のレベ
ルの注目を得ることとなった。なぜならば、リーダたちは経済を回復させるにはしっかりした世界貿易が大
きなメカニズムであることを知ったことによる。また彼らは、必要となる貿易のフローを可能ならしめる貿易
金融の顕著な重要性は、
貿易金融やサプライチェーン金融の主題が世界のリーダにより議論の対象と
̶ 14 ̶
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され、IMF、WTOやG20、B20の会合のAgendaとして取り上げられたことを認識した。』
『グローバル貿易金融及びサプライチェーン金融の改革に関係した明確なトップレベルのビジョンは必須
であり、キイとなる利害関係者を特定・集合させ、中期的な実行計画を監視することや、適正に配置さ
れた信頼の置ける実行者が緊急に必要とされている。中期的な実行計画とは、貿易円滑化並びに貿
易に関係する国を跨った開発に於ける確立したプラクティスと訓練に明確に連携された、貿易金融とサ
プライチェーン金融に適合した世界レベルのシステムに支えられたすべての重要な世界貿易を実現する
のに資するものである。』
2.3 PDA #3 「行政」 3.3.1 2.3.1 担当副議長 Harm-Jan Van Burg 氏
(蘭)
(出席)
2.3.2 関係ドメインとそのコーディネータ
①税関
S. P. Sahu 氏(WCO)
(出席)
②会計・監査
Benoit Marchal 氏(フランス)
(出席)
③環境(未定)
④ガバメント(未定)
本ドメインは他のPDAと連携して活動しました。
2.4 PDA #4 「産業分野特化」
2.4.1 担当副議長 Harm-Jan Van Burg 氏
(オランダ)
(出席)
2.4.2 関係ドメインとそのコーディネータ
①旅行・観光
鈴木耀夫氏 (日本)
(出席)
②農業
Frans Van Diepen 氏(オランダ)
(出席)
③エネルギー
Cornelis (Kees) Sparreboom 氏(オランダ)
(欠席)
阪口信吾氏(日本)
(欠席)
④保険
Andreas Schultz 氏(ドイツ)
(欠席)
2.4.3 旅行・観光 ドメイン
2.4.3.1 継続案件「小規模宿泊施設(SLH)Small scaled Lodging House 関連プロジェクト・実証実験
プロジェクト」
これまでプロジェクトを進めてきた日本、韓国、中華台北、タイ、イランに加え、初めてインドより専門家
が参画しました。
鈴木コーディネータより、AFACT 第一期国際実証実験の推進と4月から9月までに遭遇した課題の
説明を行いました。
また、今後インドも参画した第二期実証実験の推進についての要望が出されました。
SLHの国際的な使用を進めるため、新しい技術、すなわちCloud 環境でOpen Sourceを使って開
発しMobile 端末を実用化することにつき、新しい事業環境の中でどのような事業性を持って商用に供
するかを検討することになりました。またインドも新技術活用の分野で提案を準備し、また、開発にも
協力することとなりました。
̶ 15 ̶
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2.4.3.2 継続作業案件:
『地域観光情報(DTI: Destination Travel Information Process)』
開発したビジネス要求仕様(BRS)
は、2014 年 11月16日までの60日間のパブリックレビューに付されて
います。既に数件の意見が届いており今後検討するとのことです。またDTI 情報の階層を3 段階に
することを考えており、この区分は各国に任せるとのことです。韓国の考え方は2014 年 11月開催の
AFACT 会合にて明示することとなりました。
2.4.3.3 今後 2 年間を意図した活動計画の検討
担当副議長であるHarm-Jan Van Burg 氏を交えて今後 2 年間の国連 CEFACTフォーラムに於け
る活動計画について意見交換が行なわれました。インドの出席者から、これからの人間社会の在り方
から説き起こした位置づけのSLH、DTI 他の地域観光促進の重要性の話題が出されました。
2.4.4 農業(農業・水産業・食の安全等の分野)
ドメイン
今次フォーラムではフランスの専門家の出席がなく、コーディネータのFrans Van DIepen 氏並びにオラ
ンダ、ベルギー、EC 等の専門家数名が参加し、これまでのプロジェクトについてBRSの作成等を継続
̶ 16 ̶
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しました。
(継続作業中の案件)
『食物・飼料に関する緊急警戒システムRapid Alert System for Food and Feed(RASFF)』
●
『ANIMAL & Fish Traceability Exchange』
●
『漁獲モニタリング並びに報告の枠組み
(FLUX)』 等
●
2.5 PDA #5 「手法及び技術」
2.5.1 担当副議長 Anders Grangard 氏
(GS1)
(出席)
2.5.2 継続案件『Conformance and Interoperability』
本プロジェクトは、昨年の秋のフォーラムにおいて提起されたプロジェクトです。フォーラム2日目である28
日の昼、プロジェクトリーダーのJostein Fromyr 氏(ノルウェー)
によるプレゼンテーションが行われました。
a. Conformanceは準拠と訳しますが、
「準拠」はその他の用語「Compliant」、
「Consistent」等の訳語
にも適用されます。以下の図では左サイド
(青表示)が依拠する標準、右サイド
(クリーム色表示)が
導入しようとする基準にて、相互の関係を表示しています。
因みにSIPS で定義する業界横断共通辞書は国連 CEFACTのコア構成辞書のサブセットという位
置づけですので上段の「Compliant」に該当します。 b. 本プロジェクトでは以下 2 点の作業を進める予定です。
b-1 Confirmance Statement のレジストリーを作成する。
●
国連 CEFACTのマネージメントグループによる活用:
国連 CEFACT 標準について誰が活用しているのかを把握する。
●
国連 CEFACTプロジェクト/ PDAによる活用:
標準の保守や拡張において現標準のConformance Statementを正確に把握する。
●
国連 CEFACT 以外のSDO(標準開発組織)
による活用:
自組織の標準が国連 CEFACT 標準に準拠(Conform)
しているか否かを判断し、その結果を公
表する。
̶ 17 ̶
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●
ソフトウェア開発企業による活用:
自社のソフトウェアが国連 CEFACT 標準に準拠(Conform)
しているか否かを判断し、その結果
を公表する。
●
エンドユーザーによる活用:
自身のソフトウェアが国連 CEFACT 標準に準拠(Conform)
しているのかどうかを把握する。
b-2 勧告の開発
以下の趣旨を盛り込んだ勧告を開発します。
①国連 CEFACTは、正確で一貫性のある良く知られた用語を使用すべきである。
②本プロジェクトチームは、TOGAF( The Open Group Architecture Framework )の定義
を推奨する。
③国連 CEFACTは、全ての標準と技術仕様に明確なConformance Clauseを記載すべきである
(例えば、BRS/RSMにもXML/NDR 同様の記載を)。
④正確なConformance Clauseは、ユーザーが標準実装におけるConformanceを宣言するため
の前提条件である。
⑤国連 CEFACTは、ユーザー・コミュニティ
(実装ユーザーおよび SDO)のConformance 宣言
の使用を推進すべきである。
⑥これは、標準がどのように実装され使用されているかを議論するためのツールとなる。
⑦国連 CEFACTは、できれば他の組織と協力して、SDOや実装ユーザーのConformance自己
宣言を可視化するConformanceレジストリを構築すべきである。
⑧ Conformanceの可視化は相互運用性を促進するものと信ずる。
c. 今後の予定
審議中に指摘された事項を調整後、業務要求仕様(BRS)
を完成し、2014 年末までにてプロジェクト
は終了の予定です。本 BRSに基づく、コンフォーマンスに関わる課題解決(Conformanceレジストリな
ど)
については、2015-2016 度の活動計画(Programme Of Work)
に含まれることが期待されます。
2.5.3 新規案件『ライブラリーの見直し』
プロジェクト
本プロジェクトは、Bureauの要請に基づき、Christian Huemers 氏のリーダより、Library Review
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Project が開始され、国連 CEFACT が管理する各種ライブラリー
(CCL、UN/EDIFACT Directory、
BRS、RSM、XML Schema、Code List 等)
のあり方と登録・保守手順の見直しを目的としています。
プロジェクトは、①当面の課題解決に向けた作業の改善を提案、②長期的に、本来のあるべき姿にす
るための方針と戦略の二つのテーマで進めることになりました。 本フォーラムでは、あるべきLibraryのあり方を探るため、ドメイン代表者(プロジェクト
・
リーダ、地域ラポー
タを含む)
に以下の項目についての質問状を送付することとなりました。
● コア構成要素
● ビジネス情報項目
● EDIFACT/XMLメッセージ
● ライブラリーの公開
2.6 BPS(ビューロプログラム支援(グループ))活動
Validation 担当:遠城秀和氏(日本)
(出席)
EDIFACT 担当:Gait Boxman 氏(欠席)
コア構成要素ライブラリー担当:Cris Hassler 氏(奥)
(欠席)
Mary Kay Blantz(米国)
(欠席)
スキーマ担当:Sue Probert 氏(英国)
(欠席)
UN/EDIFACT D14B, CCL 14Aを2014 年 8月に発行しました。
(スキーマは含まず。)等の作業実績につ
いて報告がありました。
3. その他の話題
フォーラム期間中の10月29日
(水)
に「ペーパーレスを支えるセキュリティ及び認証」に関するワークショップが
開催されました。インド各地から多数の一般参加者を得て、盛況に開催されました。 4. 次回第 25 回国連 CEFACTフォーラム開催予定
開催時期:2015 年 4月20日(月)
∼ 24日(金)
開催場所:国連欧州本部 ジュネーブ・スイス
以上
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記事3. 貿易簡易化と電子ビジネスのためのアジア太平洋協議会
≪Asia Pacific Council for Trade Facilitation and Electronic Business≫
第32回 Plenaryミーティング報告
2014 年 11月25日(火)∼ 28日(金)の4日間、タイ バンコックにて開催されました第 32 回 AFACT 総会に
ついて下記のとおり概要を報告します。
*AFACT 概要につきましては http://www.jastpro.org/un/afact.html をご参照ください。
会場からみたバンコック市街の風景
1.会議全体の構成
【会 場】 Pullman G Hotel, Bangkok
【会議日程】 AFACT 運営委員会
11月25日(火)AM
AFACT 作業部会
同日PM ∼ 11月26日(水)終日
AFACT 総会
11月27日(木)終日 EDICOM
11月28日(金)終日
(ITCや電子ビジネスに関する一般講演会) 2.出席者
(1)AFACT 総会は6ヶ国から総数 37 名が参加し、国別には韓国(7)
、中華台北(13)
、日本(4)
、タイ
(10)
、
イラン
(2)
、インド
(1)
となっている。また国際団体としてPAA(1)
、UNESCAP(1)
の2 組織からの参加
がありました。
(2)2013 年 11月、ベトナム・ホーチミンにて開催された第 31 回 AFACT 総会には9 ヶ国 57 名とUNESCAP
1 名の計 58 名の参加者があったことをみると第 32 回の参加者は大きく減少しました。
これは組織再編等により主催国のタイの事務局(ETDA)
の業務多忙によるもので、総会開催案内が直
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前になったことが大きな要因です。この影響により海外からの参加者が昨年を大きく割り込む結果となり、
今後の開催に向けた課題として参加者が共有することとなりました。
ただし最終日のEDICOMは150 名を越える一般の参加者を得て盛況のうちに開催されました。
3.日本からの出席者 4 名
(敬称略) 石垣 充 (一財)
:
JASTPRO 業務部業務一部長(日本団長)
菅又久直 : 国連 CEFACT日本委員会サプライチェーン情報基盤研究会事務局
(Technology & Methodology Committee(以下 TMC)議長)
鈴木耀夫 : NPO 法人 観光情報流通機構(以下 JTREC)専務理事
(Travel, Tourism & Leisure Working Group(以下 TT&L W/G)
リーダー)
林 武司:株式会社TAP営業部課長(TT&L W/G) 総会出席者による記念撮影
4.総会に於ける審議事項
総会に於いては以下の課題等が審議されました。
なお、総会に於けるプレゼンテーション資料等は順次 AFACTの公式ページに掲示されます。
http://www.afact.org/2012/wordpress/
4.1 国連 CEFACTアジア・太平洋地区ラポータの候補者の選任
現アジア・太平洋地区ラポータは、国連 CEFACT 第 20 回総会(2013 年 6月開催)
にてAFACT が推薦
したJASTPRO 石垣業務一部長(AFACT ではJapan HOD)が選任され、以降 2 年間の任期にて活動
を展開しました。2015 年 2月開催予定の国連 CEFACT 第 21 回総会に於いては、アフリカ地区ラポータと
ともに改選が予定されており、今次会合にて石垣氏を引き続きラポータとして推薦することが承認されました。
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4.2 2015 年度、2016 年度及び 2017 年度のホストメンバー国の選定
2015 年度のホスト国については他のメンバー国の立候補がない中、イランがホスト国を務めることが確認さ
れました。また、2016 年度の開催については、前回 2013 年 11月の総会にて本件が話し合われた際には、
カンボジア等の他のメンバー国への働きかけを行なうとの方針が出されましたが、メンバー国からの立候補
がない場合には、韓国が、また、2017 年度については中華台北がそれぞれホスト国として受ける予定で
あると両国 HODの発言がありました。ASEAN 各国に於いては、2015 年後半に予定されるASEAN 経
済共同体が立ち上がったあと暫くの間各国とも多忙となるとのことで、このことを考慮すると、ASEAN 各
国がホスト国となるのは2017 年以降になろうとのこと、2016 年度のホスト国は恐らく韓国となるであろうこと
が確認されました。 4.3 AFACTに対する国連経済社会理事会
(ECOSOC)
によるNGOとしての参加資格の認定
NGOの認定については、ECOSOC では前提として常駐事務所を置いて2ヵ年稼働実績があることが前
提となります。2012 年イランに同事務所を設営したことを受け、認定に向けて申請したものの、ECOSOC
の定例会議での審議に当たっての申請に数か月不足していたことから2014 年度はNGOの認定が出来な
かった旨、事務局から報告されました。本件は2015 年度に改めてECOSOCに申請することとなりました。
4.4 各委員会に跨る案件の検討
AFACTには下記 3 つの委員会(Executive Committee: EC)
が設定されています。
① Business Domain Committee(略称 BDC)
② Technology and Methodology Committee(略称 TMC)
③ Communication Service Committee(略称 CSC)
CSCのChair であるDr.Eva 氏(中華台北)
より各 Committeeに跨る案件について、プロジェクトによって
は特定のCommitteeで専門に扱うのではなく横断的に複数の委員会の支援を受ける必要のある場合があ
り、Committee 間の運用要領について摺合せが必要ではないかとの課題提起がありました。また菅又氏
からは現行のCommitteeの中のどこが主体となって対応するか、プロジェクトとして既存 Committee から
独立した活動とし、それをCommittee が支援するのか、もしくはその他の方法が考えられるか等、より深
い議論が必要であるとの意見が出されました。本件は引き続き次年度の運営委員会(StC)
にて意思統一
を図って行くこととなりました。 5. 総会に於ける報告事項
主な報告事項は以下のとおりです。
5.1 韓国 Jasmine Chang 氏よりBDC の Chairとして担当の eCOO(電子原産地証明)W/G 及び Sharp
(Secured,Authenticated, Accountable interchange Platform)W/G の活動について報告がありました。
5.1.1 Open Source Softwareを基盤とした
「e-Document Platform System」
韓国 National IT Industry Agency(NIPA)
は信頼できる
(Trusted)通信のため、同システムを開発
しており、2014 年 12月完成を目指しているとのことです。
同システムの開発担当者のSeongpil Kong 氏より詳細説明がありました。同氏のプレゼンテーション
slidesは近々 AFACTのWebsiteに「e-Document shared platform(AFACT)」
として掲載されま
̶ 22 ̶
J AS T P RO
すのでご参照ください。NIPAは本 Platformを用意しMoU 締結を前提に、無償にてAFACTメンバー
に利用を許可する予定とのことにて、2015 年 3月ないし4月には詳細をアナウンスするとのことです。
以下は同資料より抜粋しました。 5.1.2 Trusted Mobile e-Document Framework for Logistics 韓国のYoungkon Lee 氏より目下検討中案件として、題記タイトルにて説明がありました。プレゼンテー
ション資料は残念ながら非公開とのことですので概略のみ報告します。
●
ロジスティクスはITを活用したものに移りつつある。
●
e-BOD(Bill of Delivery)
によってグローバルなロジスティクスの情報フローをデジタル化することを検
討している
(対象となる関係者はロジスティクスシステム及び SCMのプロバイダー及び開発者)。
●
Consignor、Forwarder、Warehouse、Mediator( 仲介業者)
、Delivery store、Consigneeの
実務の流れに対応し、各ポイントにてMobileを活用しデータを取得する。
●
Mobileを取り巻く不確実な要素を払拭するべくTrusted mobile e-Doc framework(TMED)
を構
想する。 ̶ 23 ̶
J AS T P RO
●
期待する効果としては、以下のとおり。
ロジスティクスの可視化
Mobile e-Doc systemの相互運用性
輸送ロスの削減
不正確なロジスティクス情報の可能性の削減
悪意のConsigneeやTransportの詐欺を排除
デリバリー費用の削減
本検討は2014 年 10月に開催された国連 CEFACT 第 24 回フォーラムのサプライチェーンプログラム開
発領域(PDA)
のセッションにて、同氏よりプレゼンテーションが行なわれました。また国連 CEFACTの
新 規プロジェクトとして2014 年 10月27日付にて参 加 募 集が公 示された"Multi Modal Transport
Reference Data Model"(マルチモーダル輸送参照データモデル)
プロジェクトへの参加の過程で展開
したいとのことです。 5.2 AFACT クラウドコンピューティングW/G
同 W/Gは、2014 年 5月開催のAFACT 中間会議に於ける運営委員会にてTMC Chairの菅又氏より新
規 WG 設立の提案がなされ、席上承認されたものです。改めてリーダのZon-Yin Shae 氏(中華台北)
か
ら内容について説明がありました。同氏のプレゼンテーションslidesは近々 AFACTのWebsiteに「Cloud
introduction」
として掲載されますのでご参照ください。
5.2.1 W/G の目的
●
国際標準(例 DMTF、OASIS)
を活用してアプリケーションやサービスをクラウドもしくはクラウド間の
移行を行う為のベストプラクティスを設定する。
●
アプリケーションやサービスをクラウドついて、業者を限定せずに運用するメカニズムニズムを標準化する。
●
クラウドアプリケーション及びサービスのための
‘AppStore’
をイントラ及びインタークラウドConnected
ecosystem をサポートするために利用可能とする。 5.2.2 W/G の作業項目
●
クラウドに移行するアプリケーションセットを特定する。
●
アプリケーションのためのOVFを定義する。 ●
アプリケーションを特定のクラウドインフラ環境に移行する。
●
クラウドに於ける特定のアプリケーションとecosystemのための連携標準を定義する。
●
OVFを活用するためのガイドラインを作成する。
5.2.3 候補とするアプリケーション
●
TEDA timing stamp server(タイ)
●
Smart Tourism application(中華台北)
●
Small Lodging House(TT&L 日本) 次回 AFACT 中間会議までに、タイムスタンプのためのオブジェクトコードの定義、ツーリズムのクロスボー
ダーのシナリオの定義、シナリオを支援するAPIの定義及び ALHを支援するAPIの定義を予定してい
ます。 ̶ 24 ̶
J AS T P RO
5.3 旅行・ツーリズム&観光ワーキンググループ
(TT&L W/G)
の鈴木リーダより報告がありました。
5.3.1 リーダの交代
次会合以降、鈴木氏からGiljun Ko 氏(韓国)
がリーダを引き継ぐこととなりました。
5.3.2 小規模宿泊施設
(Small Lodging House : SLH)
プロジェクト
(1)実証実験の第一ステップが終了しレビューしました。
(2)第二ステップ
●
6 か国が参加予定です。
●
専門家グループにて合意された新しいアーキテックチャーを基本とする。
●
Open Source Softwareを使ってでき限りにおいてクラウド及び Mobile 技術を活用する。
●
完了予定 2015 年 9月を目標とする。 5.3.3 Destination Travel Information(DTI)
プロジェクト
これまで開発された仕様の説明が行なわれ、それをもとに参加各国で検討が行なわれることとなりました。
また実証実験を新規プロジェクトとして開始する方向となりました。
5.3.4 他の W/Gとの連携
前述のとおりクラウドコンピューティングW/Gと連携することとなりました。 5.4 TMC Chair の菅又氏より以下について説明がありました。
5.4.1 アジアに於けるコア構成要素ライブラリー
(CCL)
の活用
(1)
アジアにおけるCCLの実証実験 ●
日本のオートパーツ業界のバンコックにおける実証実験の模様について説明がありました。
●
次のステップとしてタイにおけるTax Invoiceの税務署への接続の導入を予定しています。
(2)業界横断データライブラリー
(Cross Industry Data Library: CIDL)
の導入
●
日本側では6 領域のドメインメッセージが定義済です。
●
レジストリー Data Model 及び Procedure が定義されました。
●
国連 CEFACTに対してDMR(変更要求)
を行なう準備が出来ました。 (3)国連の標準に沿って各国で作成されるLocal CCLはCSCにより公示されます。
なお、参照対象のLocal CCLをAFACTのサイトに保存するか、各国のサイトにリンクを貼る方式
とするかが今後の検討課題です。
5.4.2 国連 CEFACT Cross Industry Remittance Advice の一部拡張
日本は、2014 年 10月に開催された国連 CEFACTフォーラムのサプライチェーンPDAの場に於いて本
件の趣旨を説明しました。本件について出席者の理解は得られたものの、現行仕様の修正として処理
するのではなく、新規プロジェクトとして扱うものとされました。その結果、日本を含む3 か国の支持を要
することとなり、AFACTメンバーなかで2 か国の支持を確保する必要があります。
本件の趣旨である、貿易業者に於ける消込業務の合理化、融資会社との間に於ける取引情報の共有、
日本、アジアそして世界の商習慣への適応について出席者に概略説明し、2015 年 1月までに菅又氏よ
り更に詳細な提案書を提示することの説明がありました。
̶ 25 ̶
J AS T P RO
5.5 国連 CEFACT 第 24 回フォーラム
(2014 年 10月インド・ニューデリーにて開催)
の概要報告
国連 CEFACT アジア・太平洋地区ラポータである石垣業務一部長から報告を行ないました。説明は主
に貿易手続領域(ITPD)
の案件である、勧告第 40 号草案(Consultation Approach)
、今後改訂が予
定される勧告第 4 号(各国貿易円滑化機関)
ならびにシングルウィンドウ相互運用性について詳述し、更に
菅又 TMCリーダよりその他の案件(Conformanceプロジェクト、ライブラリー管理プロジェクト)
の概要につ
いて説明がありました。
5.6 UNESCAPによる報告
貿易投資部のSangwon Lim 氏からESCAPの活動内容について概略の説明がありました。
(1)ESCAP Resolution 68/3の決議に基づくRegional Arrangement for the Facilitation of Crossborder Paperless Trade
●
バンコックにてAd Hocの各国政府レベルの会議が 2014 年 4月22日∼ 24日開催されました。同会
議では現在のテキストに各国政府との合意条項やロードマップ等を追加することが合意されたとのこ
とです。進捗は適宜 ESCAPのWebpageに掲載されます。
http://unnext.unescap.org/reso683.asp ●
PAAに於いては同会合にて本件を支援する旨宣言がなされたとのことです。
(2)Trade and Transport Facilitation Monitoring Mechanism(TTFMM)
近々、ネパール、バングラディッシュ、ブータンへの実際の導入がアジア開発銀行の共催で開始される
予定とのことです。
(3)2014-2015 年 ESCAP 活動計画
●
次回第 7 回アジア太平洋貿易円滑化フォーラム
(APTFF)
開催することは予定されていますが、開催時期・場所は現時点で未定とのことです。また、その他
の会合の予定についても説明がありました。
5.7 PAAによる報告
PAAメンバーであるタイのCAT 社 Prapad Jalkwang 氏よりPAAの成立経緯、推進中のプロジェクト、
特に2015 年にスタート予定の新規プロジェクト
「Pan Asia Exchange」等について説明がありました。
̶ 26 ̶
J AS T P RO
5.8 AFACT 常駐事務局
(イラン)
の報告
General Secretariat の Mahmood Zargar 氏より以下について報告がありました。
5.8.1 AFACT 2014 year book(年報)
毎年、AFACT 参加メンバー国は貿易円滑化の状況を事務局に報告し、これをAFACT 事務局がま
とめて年報として作成しています。
本年は、日本、韓国、中華台北、インド、イラン、タイの6 ヶ国及び PAAならびにUNESCAP が報告
を行ないました。報告書はJASTPROのホームページ
(2014 年 12月9日付けのお知らせ欄)
に掲示しま
したのでご詳覧ください。
http://www.jastpro.org/topics/index.html
5.8.2 AFACT Website 改善
過去の中間会議、Plenaryにおける議事録等の資料及びこれまで作成された提案やプレゼンテーション
資料をカテゴリー別に収容し直した旨、説明がありました。
メンバーからは、本当のAFACTの成果物(Deliverables)
にあたるものと単なる参考資料が未分化の
まま収容されており、更に改善の検討を要するとの指摘がありました。 <次回開催予定>
ホスト国は2014 年度のタイから2015 年度のイラン
にバトンタッチされました。
次回第 33 回 AFACT 中間会議のイランに於ける
開催地は未定ですがテヘランの可能性がありま
す。また開催時期は2015 年 5月∼ 6月となろうと
思われます。
以上
朝市でにぎわう会場近くのSilom 地区
̶ 27 ̶
J AS T P RO
記事4. 国連CEFACTからのお知らせ
4-1 December 2014:
The UN/EDIFACT directory version D.14B has been approved by BPS Validation Team
and is now available on the UN/EDIFACT website. The files can be downloaded from UN/
EDIFACT Directory.
2014 年 12月4日
国連 EDIFACTディレクトリー versionD.14Bはビューロプログラム支援バリデーションチームによって承認さ
れ、現在国連 EDIFACTウェブサイトで利用可能です。ファイルは国連 EDIFACTのディレクトリーからダウ
ンロードすることができます。
4-2 27 November 2014:
Call for Participation on Project "Integrating Trade Finance & Supply Chain Finance into
Trade Facilitation". Following approval of the project on "Integrating Trade Finance &
Supply Chain Finance into Trade Facilitation" this is to announce a call for participation.
The purpose of this project is to recommend that current frameworks and practices related
to trade facilitation explicitly integrate and include trade finance and supply chain finance.
To register interest in participating or for more information please contacts Mr. Harm-Jan
van Burg(h.j.m.burg(at)minfin.nl).
本件は、このプロジェクトの概要を早く皆様に周知したく当協会にて直訳したものであります。従いまし
て、全体として分かりづらい箇所もありますのでご容赦いただけましたら幸いです。なお、ご意見等が
ございましたら当協会にご教示いただけたら幸いです。
2014 年 11月27日
「貿易金融とサプライチェーン金融の連携による貿易円滑化」プロジェクトの参加者を募集します。本件は
ビューロの承認を得ております。このプロジェクトの目的は、貿易円滑化に関する現行の枠組み及びプラクティ
スに貿易金融とサプライチェーン金融を明確に連携・包含するよう勧告することにあります。ご興味のある方
はHarm-Jan van Burg 氏に連 絡をお願 いします。
( 訳 者 注:同 氏 はオランダNational Servcice for
Enterprisesの所属にて、国連 CEFACTのビューロ副議長のなかで重鎮の方です。)
プロジェクト趣意書
(抜粋)
1.プロジェクトの目的
The purpose of this project is to recommend the explicit integration and inclusion of Trade
Finance and Supply Chain Finance(for the sake of simplicity defined hereon as Trade and
Supply Chain Finance)into current frameworks and practices related to Trade Facilitation.
̶ 28 ̶
J AS T P RO
プロジェクトの目的は貿易金融とサプライチェーン金融(以下貿易サプライチェーン金融と呼びます。)
を貿
易円滑化に係る現在の枠組みとプラクティスに連携・包含するよう推奨することです。
Trade and Supply Chain Finance supports the vast majority of world trade today, some
estimates suggesting that 80 - 90% of trade flows require some form of trade finance-related
liquidity or risk mitigation support.
貿易サプライチェーン金融は今日世界の貿易における大多数の分野を支えています。研究者の見積もり
によると貿易の流れの80 ∼ 90%は流動性やリスク軽減に関係した貿易金融の形を要請しています。
Trade Facilitation programs and practices, including Single Window initiatives, have
concentrated on a variety of“mission-critical”elements in both public sector and private
sector, from education to logistics, infrastructure to regulatory considerations and many
more, however, the role of financing has historically been viewed as“out of scope”for a
variety of reasons.
シングルウィンドウ構築推進者を含む貿易円滑化計画やプラクティスは官民の多様な必須の要素に集中
してきました。それは教育からロジスティック、インフラから法令整備、その他多数ですが、金融の役割は、
いろいろな理由から歴史的に視野の外でした。
The role of small-medium enterprises(SMEs)in global trade flows and economic valuecreation is now widely acknowledged, as is the critical need of SMEs for access to timely
and affordable financing ‒ including trade financing. At the same time, post-crisis market
dynamics and increasing regulatory pressures have combined to motivate trade financiers
to be far more open about their business, even actively seeking new sources of capital and
investment to ensure adequate supplies of trade finance in the global system.
世界貿易のフロー及び経済的な価値の創造においてSMEの役割はいまや広く知れ渡っています。また、
SMEがタイムリーで調達可能な金融(貿易金融を含む)
を極めて必要度が高いことも知られています。同
時に、危機以降のマーケットのダイナミクスと法令規制の圧力は貿易金融業者が彼らのビジネスを更に
オープンにするよう働きかけることになっています。彼らはまた、新たな投資元やグローバルなシステムに
おける貿易金融の適正な供給を確実にする投資を積極的に希求しています
These factors and others combine to suggest that the timing is excellent, for the explicit
and systematic inclusion of Trade and Supply Chain Finance into the practices of trade
facilitation and development-related international trade activity.
これらの要素等は貿易サプライチェーン金融を貿易円滑のプラクティス及び貿易活動に関係した開発も
明確・システマティックに包含するためには最適なタイミングであることを示しています。
̶ 29 ̶
J AS T P RO
The financing of international trade has, as a direct result of the global economic crisis,
gained an unprecedented level of profile and visibility among political and business leaders,
as those leaders came to see robust global trade as one of the major mechanisms to enable
economic recovery. Those same leaders also realized the critical importance of trade
finance in enabling the required trade flows, to the extent that the subject of Trade Finance
and Supply Chain Finance has been discussed by several world leaders and has made it
onto the agenda at IMF, WTO and G-20/B-20 meetings.
世界的な経済危機の直接的結果としての貿易金融は、政策担当者やビジネスリーダに空前のレベルの
注目を得ることとなった。なぜならば、リーダたちは経済を回復させるにはしっかりした世界貿易が大きな
メカニズムであることを知ったことによる。また彼らは、必要となる貿易のフローを可能ならしめる貿易金融
の顕著な重要性は、貿易金融やサプライチェーン金融の主題が世界のリーダにより議論の対象とされ、
IMF, WTOやG20、B20の会合のAgendaとして取り上げられたことを認識した。
There is an imperative for a clearly articulated top-level vision related to the evolution of
global Trade Finance and Supply Chain Finance, and there is an urgent need for a wellplaced, trusted facilitator to identify and gather key stakeholders and to oversee the
execution of a medium-term program aimed at helping ensure that all-important
international commerce can be supported and enabled through a well-matched global
system of Trade Finance and Supply Chain Finance, explicitly integrated into established
practices and disciplines in trade facilitation and trade-related international development.
グローバル貿易金融及びサプライチェーン金融の改革に関係した明確なトップレベルのビジョンは必須で
あり、キイとなる利害関係者達を特定・集合させ、中期的な実行計画を監視する、適正に配置された
信頼の於ける実行者が緊急に必要とされています。中期的な実行計画とは、貿易円滑化並びに貿易
に関係する国を跨った開発に於ける確立したプラクティスと訓練に明確に連携された、貿易金融とサプ
ライチェーン金融の適正に適合した世界レベルのシステムに支えられたすべての重要な世界貿易を実現
するのに資するものです。
2.プロジェクトの対象範囲
It is proposed that international institutions, regulators, regional and national governments
and other stakeholders collaborate to build on the momentum established over the course
of the global crisis to help ensure a robust, sustainable and innovative global architecture
for Trade Finance and Supply Chain Finance. This architecture must be aimed at enabling
increased trade, increased international development and the creation of economic value
through support of real economy commercial activity that is inclusive of developing
markets and allows SMEs to engage successfully in international markets.
貿易金融及びサプライチェーン金融のための明確な持続可能なイノベーティブやグローバルなアーキテク
チャーを確実なものとするために、世界危機を乗り越える起動力を構築するために世界の組織、法令整
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J AS T P RO
備者、地域・各国政府及びその他の利害関係者が相互に協力することを提案します。このアーキテク
チャーは、拡大する市場とSMEが国際市場への参画に成功となるよう、現実の経済・商業活動を支
援することを通じて、増加する貿易、増加する国を跨る開発や経済的な価値の創造を可能とすることを
目標にしなければなりません。
• Taking steps to actively and explicitly integrate Trade Finance and Supply Chain Finance
into well-established disciplines and practices around trade development and facilitation,
including inclusion of access to Trade and Supply Chain Finance as part of the“Single
Window”model of trade facilitation
• 積極的・明確に貿易金融とサプライチェーン金融を、貿易円滑化の「シングルウィンドウ」モデルの一部
となる貿易及びサプライチェーン金融への参画を含めた貿易開発と円滑化をめぐる、しっかりと確立し
た訓練とプラクティスに連携するためのステップをとる。
• Explicitly adding a Trade and Supply Chain Finance dimension to(selected)existing
programs aimed at facilitating and enabling enhanced trade flows.
• 円滑化及びレベルアップした貿易フローの実現をねらった現行の
(精選した)
プログラムに対して貿易・
サプライチェーン金融の明確な定義を追加します。
• Devise a global program, in collaboration with IFIs and industry associations, aimed at
raising awareness and technical competencies in Trade Finance and Supply Chain
Finance in light of a looming shortage of this skill set, and as a complement to existing
technical assistance programs in this area
• IFIや産業界の協会と協調するなかで、グローバルプログラムを考案します。そのプログラムにて、貿
易金融とサプライチェーン金融に於ける、知識と技術的な能力についてそれが不足しているということ
と、この領域における既存の技術支援プログラムの補完として、その向上を狙います。
• Design and facilitate a process to assess the adverse/unintended consequences of
regulatory requirements on trade-related liquidity, ensuring that the economic cost of
such consequences is objectively measured and that political authorities are engaged to
achieve an appropriate balance between prudential regulation and the ability to conduct
legitimate business
• 流動性に関係した貿易に関する法規制要求について意図しない結果について評価するプロセスをデ
ザインし導入します。その評価の際には、その結果に係る経済的な費用が対象として計測でき、政
策責任者が、法令の意図と適正なビジネスを管理する可能性の間の適切なバランスを達成することが
必要です。
̶ 31 ̶
J AS T P RO
• Identify and deploy an international and cross-functional working group to assess and
make recommendations relative to the impact of the global trade finance gap, on
international development and trade-based poverty reduction. This initiative can include
assessment of the applicability of innovations such as the ICC/SWIFT Bank Payment
Obligation, to finance, trade and development
• 国際的・機能横断的な作業グループを特定して配備します。そのグループは評価作業を行い、国際
的な開発及び貿易を基盤とした窮乏軽減のため、グローバルな貿易金融のギャップの影響に関係し
た勧告を作成します。この組織は、ICC/SWIFTのBPOのごときイノベーションを金融、貿易、開発
に適用できるかの評価作業も作業に含めることができます。
• Identify opportunities for UN and other international agencies to contribute to industry
efforts aimed at attracting additional financial capacity to the business of Trade and
Supply Chain Finance, through information, education and legal and regulatory changes
that would allow additional capital to flow into trade finance activity
• 国連及びその他国際機関に産業界の努力に貢献できる可能性を特定します。産業界の狙いは、情
報提供、教育や、更なる資本を貿易金融活動の流れに誘導するような法令の改変を通して、貿易・
サプライチェーン金融のビジネスについて新たな金融面での可能性に魅力を与えることです。
The scope of Phase I of the broader project is limited to the development of a roadmap
aimed at integrating Trade Finance and Supply Chain Finance into the practices around
trade facilitation,, given that access to financing can be a critical enabler for businesses of
all sizes seeking to enter new international markets. The broader scope of activity will be
articulated and explored in a subsequent phase of the project, based on results achieved
and support secured following the completion of Phase I.
更に広いプロジェクトのフェーズ1のスコープ
(範囲)
は貿易・サプライチェーン金融を貿易円滑化に関係
するプラクティスに連携する目的のロードマップの開発に限定されます。その際には金融へのアクセスは
新規の国際市場への参画を求めるあらゆるサイズの企業にとって必須の条件となります。活動について
更に広いスコープはプロジェクトの後続のフェーズにおいて、フェーズ1の完了に伴う達成結果および確
保できた支援を基本に、明確にし、探究されます。
UNECE and UN/CEFACT in particular is perhaps uniquely positioned to act as facilitator
of a project with such global reach and implications, given the organization’
s extensive
experience in trade facilitation and its key role in developing, articulating and expanding
the notion of“Single Window”strategies to facilitate efficient market access to innovative
instruments of trade and supply chain finance.
特にUNECE 及び国連 CEFACTは恐らく、斯様なグローバルな範囲及び関与するプロジェクトの提供
̶ 32 ̶
J AS T P RO
者としての特化した役割を演ずるでしょう。両組織は貿易円滑化における広い経験と、貿易・サプライ
チェーン金融の革新的なツールにアクセスする効果的なマーケットの円滑化に寄与するシングルウィンドウ
戦略の観念の開発、明確化及び拡大という主要な役割を持っています。
UN/CEFACT is well-placed to access and engage key stakeholders in international
development and trade facilitation as well as trade and supply chain finance, given its network
and ability to access domain experts across the universe of activities that will link together in
the proposed project. Additionally, the recent and long-overdue shift in trade and supply chain
finance to electronic, data-driven business models and transaction flows(admittedly still in
infancy)tie in very well with the electronic business dimension of UN/CEFACT’
s remit.
Collaboration and/or information-sharing with other projects that may overlap or link in some
way, will be proactively pursued as an element of project strategy and execution.
国連 CEFACTは貿易・サプライチェーン金融のみでなく、国際的な開発や貿易円滑化におけるキイと
なる利害関係者にコンタクトをとる最適な場所です。国連 CEFACTは本提案プロジェクトに参画する、
世界中の専門家にコンタクトできるネットワークを保持しています。更にいえば、貿易・サプライチェーン
金融における電子化、データドリブンのビジネスモデルや取引フロー
(依然揺籃期にありますが)への、
最近の
(遅すぎる)
シフトは国連 CEFACT が担当する電子ビジネスの範囲に関係しています。 ある範
囲の重複や関連をもつ他のプロジェクトとの作業連携や情報共有は本プロジェクトの戦略と実行の必須
要素として積極的に希求致します。 Leadership of the proposed initiative by UNECE will enable the engagement of or
consultation with key stakeholders, including:
UNECEによるリーダシップにより以下のキイ利害関係者との会議が可能となります。
• UN Agencies and entities across the globe
• The World Trade Organization
• The International Trade Centre
• The International Chamber of Commerce
• International Financial Institutions including the IFC, ADB and others
• The World Economic Forum
• The Fung Global Institute
Additionally, private sector specialists from banks, non-bank providers of trade finance,
domain experts and consultants and others may be contacted to assist in framing and/or
delivering the proposed project.
更に、銀行、貿易金融のノンバンク提供者、当該領域の専門家、コンサルタント等とは、本プロジェク
トの骨格づくり及び提供を支援するために契約する可能性があります。
̶ 33 ̶
J AS T P RO
3.プロジェクトの成果物
The project deliverables are:
a)Background Paper on Trade Finance and Supply Chain Finance
b)Paper identifying“touch points”and potential linkages for financing within existing
trade facilitation and single window practices and processes
c)Roadmap for integration of Trade Finance and Supply Chain Finance into trade
facilitation activities
d)Sample case study based on an agreed exemplar market
本プロジェクトの成果物は以下のとおりです。
a)貿易金融とサプライチェーン金融のバックグラウンドペーパー
b)既存の貿易円滑化とシングルウィンドウ プラクティス・プロセスの範囲に於ける金融に関する関連
ポイントと潜在的な関係を特定するペーパー
c)貿易・サプライチェーン金融を貿易円滑化活動に連携させるためのロードマップ
d)合意されたマーケット事例をもとにしたサンプルケーススタディ
4.参考情報
• APTFF Trade Finance Background Paper
• ICC Banking Commission“Rethinking Trade & Trade Finance”, 2014 Edition
• Euro Banking Association Market Guide on Supply Chain Finance, 2014 edition
以上
̶ 34 ̶
J AS T P RO
記事5.『ばいざういんどせいらー』
日本列島船の旅〔船旅は国境を越えて〕
○国際航路
国際航路と言えば戦前まだ航空機が発達していない時代には、各船会社が挙って今のクルーズ船とは違う
客船・貨客船を欧米・大陸・豪州等世界各国に投入していた。戦後は現在、横浜山下公園に「博物館船」
として保存されている「氷川丸」
(ひかわまる)が 1960 年を最後にシアトルバンクーバー航路から引退している。
最盛期は活況を呈した所謂「南米移民船」も1971 年の「ぶらじる丸」による航海を最後に撤退。あまり知られて
いない航路だが、
1973 年に貨物船を改造し254 名までの乗客を収容出来る貨客船「トロピカルレインボー」がグァ
ム・パプア・ニューギニア航路に就航したがこれも1 年余りで終航を迎える・・・・・・。
それでは今、日本から海外への定期船はないのであろうか? 正解は「ある」である。
それはどこかと言えば、世界地図を広げたら自ずと答えが出る。日本を囲む3 つの国である、即ち、中国、
韓国、ロシアである。尤も、これらの国への距離は戦前の欧米航路と比べたら航海日数も短く、どちらかと言え
ば大型カーフェリーに乗客を収容するような形であるが 2014 年 12月現在では阪神∼中国上海、下関∼中国青
島、下関∼韓国釜山、博多∼韓国釜山、大阪∼韓国釜山、対馬∼韓国釜山、稚内∼サハリン、境港∼韓
国東海∼ウラジヲストックと8 航路に9 隻の船舶が投入されている。この9 隻以外に、さらに近距離の博多∼釜
山、対馬∼釜山には高速船である「ジェットフォイル」が投入され前者では3 時間、後者では1 時間足らずで「日
本と外国」を繋ぎ立派な国際航路としての役割を担っている。
○大阪∼中国上海「蘇州號」
筆者が先日体験したのは大阪と中国上海を約 46 時間で結ぶ「蘇州號」
(14410トン・乗客定員 272 名)であ
る。乗客の他にコンテナ240 本(20FEET 換算)の収容能力を持っている。即ち、日本のカ―フェリーではトラッ
ク・トレーラー・乗用車を積載する車両甲板にはフォークリフトによりコンテナが 2 段積みで積載される。それでは、
コンテナ船の方が効率的では?という意見も出そうであるが、日本から積載される建築用の重車両や消防車など、
重量が重く嵩高な貨物はコンテナ船では陸上の荷役機器すなわち「ガントリークレーン」の吊り上げ重量で制限
され、分割させて積載しても長い長尺物は積載出来ないこともあり、仮に積載出来ても広大なスペースを占有す
ることで運賃も嵩む。この点 「蘇州號」は重量 50トンまでの「自走車」ならば楽々走行して積載することも可能で
ありさらに約 6mの高さの車両甲板があるので高さの高い重車両の積載も可能と言うことである。貨物は上海か
らは衣料品等が多く、満船となる事も珍しくないそうである。
現在は大阪南港を金曜日の正午に出港して、上海港には3日目日曜日の09 時∼ 15 時に入港し(上海港は
潮の干満の関係で若干変わる)
、上り便は上海港を火曜日の11 時に出港し、大阪港には木曜日の09 時の入
港である。また、阪神∼上海間はもう1 社も運航しており都合 2 隻で週に2 往復していることになる。
船内を見てみよう、最高ランクの貴賓室の下に特別室 A, B, Cと続く、特 Aと特 Bはアウトサイドキャビンであ
り、縦長の大きな窓の明るい船室である。特別室 Bなどは2 段ベッドの4 名室であり家族連れにはもってこいで
ある。特 Cはインサイドながらも面積が 15㎡もある個室で1 名定員、その下に1 等(4 ∼ 5 名部屋)2 等 A(4 ∼
5 名部屋)2 等 B(大部屋雑居室)
とある。展望風呂があるのも日本人乗客に対しての特別なはからいであろう
か? 通常のレストラン以外にシックな内装の豪華な「スペシャルレストラン&バー」があり、ここは夜のみ「バーコー
ナー」となり営業する。また、船首前方には展望ラウンジがあり昼間にここから瀬戸内海の景色を見ながらの船
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旅は格別である。
2 等と1 等の運賃格差が少ない事、運賃には朝食が込まれている事が特記すべき事であろうが、とにかく、
乗り込むともうそこは「中国」なのである。中国人の乗組員が「你好」と愛想良く迎えてくれ、国際航路ならでは
の免税のビールも嬉しく値段を見ると350ccの缶ビールが 150 円であった。また、国際航路に従事する旅客船に
義務つけられている「避難訓練」も乗客を対象に行われるのである。
「蘇州號」上海港にて
大きな窓から瀬戸内の景観が望める家族連れに最適な
シャワートイレ付き
「特別室 B」
インサイドながら15㎡という広いシャワートイレ付きの個室
「特別室 C」
最前方に位置する
「展望ラウンジ」
(写真右に前方を見渡す大きな窓がある)
○大阪∼上海の船旅
大阪国際フェリーターミナルを正午に出港した船はそのまま西に針路を採る。つまり瀬戸内海を昼間に航海す
るのである。忘れていた!
!
!1月号で「五島列島のクルージング」を記載した際に、瀬戸内海を昼間航海する長
距離ルートは皆無である旨記載したが、意外な処に落とし穴があった。しかし、乗客としては大いに気持ちが
良い。乗客だけではなく「瀬戸内を通る」ことで燃費も下がり、ひいては放出するCO2 の削減にも繋がるのであ
る。以下、ざっと説明する。大阪∼上海は外洋経由(所謂「四国沖」)では818 海里(1,515km)
、一方、瀬
戸内経由では5%少ない775 海里(1,435km)である。仮に同じ速力で航海すれば燃料の消費は瀬戸内経由
では5%削減となる。次に航海時間を見てみよう、同じ航海時間で瀬戸内を通ればスピードは5%削減される(距
離が 5% 短いため)
、さてここで二乗則というのがある「距離が一定ならば燃料の消費は速力の二乗に比例す
る」つまり瀬戸内経由では0.95X0.95=0.90 で四国沖と同じ距離を仮に航海してもその速力により10%の燃費節
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減、さらに距離が短い為の節減が 5%、TOTAL で0.90X0.95=0.85となんと15%も環境に優しくなっている。
乗客は瀬戸内の絶景を堪能できる。敢えて言うならば苦労は峡水道を航海するにつけ神経を使う乗組員だけで
あるか?
大阪を出港して1 時間余、本船はまず左手に淡路島が迫り、右手後部に神戸の街並みを臨みながら本四
架橋の一つ目「明石海峡大橋」をくぐる。その後 4 時間余りの17 時過ぎに「瀬戸大橋」をくぐる。その後の「しま
なみ街道」の一つ本四架橋の3 つ目である「来島海峡大橋」をくぐるのが 19 時 20 分頃である。因みに、この橋
の近郊都市である松山港の日没は2014 年を例にとると、7月1日は19 時 25 分頃であり、更に30 分程度の「薄
明時間」
もあるので季節を選べば 3 つの本四架橋の雄姿を見ることが出来るのである。加えて「関門海峡大橋」
は翌未明の通過となり3日目早朝には船は揚子江に入り上海に向かい大河を航行するのである。
航路図(通常は瀬戸内海を経由する)
出港して1 時間余、船は「明石海峡大橋」
をくぐる
多島海である「瀬戸内」を行く
(後ろは「瀬戸大橋」)
3日目の朝「上海港」
を目前とする。
○食在「蘇州號」
「食在広州」という言葉があるらしい、食は広東省の広州が一番であるという意味なのであろう。さて筆者は
この「外国航路」の旅客船の食事事情に特別の関心を持っていた。日本のカ―フェリーの7 割の食事の提供は
「バイキングスタイル」である。これは言うまでもなくサービス要員の効率の良い労働と食材の無駄を省くことを考
えれば大いに頷けるのである。残りは食券を買って各自セルフサービスで食事を採りテーブルに運ぶ、一部は8
月号に紹介した船の様な「フルコースサ―ビス」や各自好きな食材を選び最後に金額をTOTALして支払う
「カ
フェテリア方式」である。大型カーフェリーが就航し始めた1970 年中盤頃はウエイターあるいはウエイトレスがメ
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ニューを運び、乗客が思い思いにメニューから選び食事をするという優雅な船旅があったのだが今は皆無であ
る。人件費の抑制や食材の無駄を考えた末の決定なのであろうか。
本船「蘇州號」はサービス要員に余裕があるのか或いは「食の国」中国船籍だからなのかは解らないがウエ
イターがメニューをテーブルまで持って来て注文を取るスタイルである。メニューは中華の冷菜が 8 種類、温菜
17、スープ 5、麺・点心・飯・デザート類で12、他洋食や和食で29 種類の合計 71 種類である。尤も高価な「清
蒸鮭魚」や仕入れが難しい刺身や、生ものの和食のつまみ等は繁忙期のみの季節料理だろうか、注文をして
みたが切らしているとのこと。それにしても多種、多彩なメニューであり特別なものを除けば一品 500 円程度でラ
イスは50 円、町中の中華料理屋より安いのは8 割近い乗船客の中国人の本国での物価に合わせているのであ
ろう。家族や船で出会った他の乗客 4 ∼ 5 名で7 ∼ 8 品を注文して腹いっぱい食べても一人 1000 円止まりであ
ろう。
「菠夢䏈肉」
「回鍋肉」
「鉄板玉葱焼肉」
「水餃子」
「炒面」
「蒜泥黄瓜」
・・・・・四川料理は辛く、また
上海料理は香辛料をふんだんに使った料理ではなく、日本人の口に合っているのか、
「蘇州號」の料理が数少
ない日本人乗客向けに出来ているのか、あるいは筆者が高級な中華料理を食した経験がないのか解らないが、
味は非常に良く、美味しい感じがした。2日目の夕食に筆者は「外国船」の和食がどんなものかと、和食を注文
したが「鯖の塩焼き」の付け合わせの「胡瓜」の綺麗なデコレーションされた模様には日本食の筋金入りの調理
師が乗船しているのかと勘違いさせられる思いであり、塩もみしたその味も忘れ難い。また、そのうち誌面を借り
てご紹介するが、本格的な海外クルーズ船の食事は朝食、昼食、夕食、夜食及び早朝のお茶から午後のお
茶迄、多ければ一日の7 回の飲み食いが全て運賃込みであり、24 時間どこかの飲食設備が開店している船も
登場している。
明るいレストラン
多彩なメニューの一部
初日昼食「菠夢䏈肉」
「蒜泥黄瓜」
「西瓜」
「白飯」¥850
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2日目和食 ¥850
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○船内の交流も国境を越えて
この日の乗客は日本人 8 名、アメリカ人 2 名、中国人 39 名の49 名であった。船内で知り合った、中国の南
通に在住の日本人のA 氏は中国の「技能研修生」の育成事業の仕事をされ 19 年がたつと言われた。
「技能研
修生」とは中国で日本語の勉強を3 ヶ月の間受講し渡日し日本の企業に就き3 年間もの間、研修を受けながら
技能を磨き仕事をして得た賃金を本国に送るのである。主に、裁縫や工場等の文字通りの「技能職」が多いら
しい。彼等は中国から日本に来る際には必ずと言っていいほど船を使い復路は航空機が多いようだ。何故なら
ば、彼等は3 年間もの間日本で過ごす為の日用品や食糧をも含む消耗品を持ってくる、現地(日本)調達ではコ
スト高になるのであろう。復路はこれらがなくなり家族親戚類への比較的軽い土産物を持って航空機に搭乗す
る。エコノミークラスの無料積載重量が確か 15kgまでなので往路に航空機を利用したら追加料金で大変な事
になってしまう。A 氏の話だと「技能研修生」が数十人単位となれば荷物も中途半端ではなく大阪に到着すれば
トラックを仕立てて荷物を纏めて研修地宛て輸送するらしい。
偶々、この航海では中国人の半数程度がこの「技能研修生」であった。日本で稼いだ給料で購入した高級
なデジカメで瀬戸大橋を撮っている彼らの表情は3 年振りの母国への帰国の感情とともに相乗効果を醸し出し幾
分高揚している様にも見られた。A 氏が見ず知らずの「技能研修生」に言葉を交わす。
「また、日本においでよ」
「また働きたいか?」こぞって彼等は首を縦に振っていた。船内の免税売店の営業時間になると数人の女性の
「技能研修生」がやって来て数本の日本酒を購入、聞けば家族以外にもこの渡航に関してはお世話になった親
戚筋も居ると言う、彼らへのお土産なのだろう。その他中国人でありながら日本が好きで日本に帰化し大阪に住
んでいると言う、船には滅法弱いB 氏。46 時間共有した時間、国籍も違う、老若男女を問わず誰もが友達と
なる、これも船旅のだいご味と言えるのであろう。
上海にて下船を待っていると30 歳を過ぎたばかりと思われる立派な青年が日本語で話しかけてきた。日本の
某国立大学で博士課程を取得して現在は医師及び講師として上海にある母校で活躍されているとの事。長男
を連れて中国の両親に会いに行くところらしい。奥さんもまた日本の国立大学で博士号を取得すべく頑張ってお
られるとの事でこの長男は普段は日本に母親と同居との事である。船を選んだ理由としては瀬戸内海の景色を
海の上から見せたかったらしい。
「上海でご滞在中にお困りの事があればご連絡下さい」と青年は名刺を残し下
船した。私も流石に「明日の朝の航空機で帰ります」
とは言い難かったのは察して頂きたい。上海でタラップを降
りたのは予定より早い現地時刻の09 時、46 時間の船旅が幕を閉じた。
翌日朝 10 時 15 分上海浦東空港発のボーイング
787 機は無事に離陸し、台風の影響か直ぐに暗雲
の中に入り成田迄の2 時間半は雲上飛行であった。
上海での実滞在時間は25 時間余り。ボーイング機
は80% 程度の消席率(往路フェリーは18%)であっ
た。横には恰幅の良い男性が座ったが彼が中国人
であるのか、帰化した日本人であるのか、あるいは
日本人であるのかは知るすべも話すすべもなかった。
以上
「技能研修生」の手荷物(上海発時)
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JASTPRO 第40巻 第9号 通巻第435号
・禁無断転載
平成26年12月24日発行 JASTPRO刊14-09
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