CALPHAD 法における異なる侵入型副格子モデル間の

日本金属学会誌 第 78 巻 第 7 号(2014)274279
CALPHAD 法における異なる侵入型副格子モデル間の
パラメーター変換
阿 部 太 一1
橋 本 清2
1独立行政法人物質・材料研究機構元素戦略磁性材料研究拠点
2独立行政法人物質・材料研究機構理論計算科学ユニット
J. Japan Inst. Met. Mater. Vol. 78, No. 7 (2014), pp. 274
279
 2014 The Japan Institute of Metals and Materials
Parameter Conversions between Different Sublattice Configurations for Interstitial Solutions
Type Thermodynamic Assessments
in CALPHAD
Taichi Abe1 and Kiyoshi Hashimoto2
1Elements
Strategy Initiative Center for Magnetic Materials, National Institute for Materials Science, Tsukuba 3050047
2Computational
Materials Science Center, National Institute for Materials Science, Tsukuba 3050047
For interstitial solid solutions various sublattice configurations have been applied in CALPHADtype thermodynamic assessments. To construct a thermodynamic database for multicomponent systems from the assessed binary and ternary systems, one
difficulty is consistency of the thermodynamic models for the phases with sublattices. Previously, to combine parameters of the
different sublattice configurations for the same phase, the thermodynamic assessment would need to be repeated. In the present
work, we propose a simple method to convert parameters between the different sublattice configurations, and demonstrate that
the present parameter conversions work well for the TiO binary system. Although it is a simple conversion process utilizing the
known parameters, for the case where the valid composition range is limited, the thermodynamic database can be determined for
multicomponent systems. Furthermore, if a reassessment is required the obtained conversion can be used to estimate initial
values for the parameter optimization. [doi:10.2320/jinstmet.J2014003]
(Received January 23, 2014; Accepted April 21, 2014; Published July 1, 2014)
Keywords: interstitial solid solution, dilute solution, sublattice model, thermodynamic database, CALPHAD method
て,既知の熱力学アセスメントの結果を用いることができれ
1.
緒
言
ば,多元系熱力学データベース構築において大きな利点とな
るだろう.そのためには,異なる熱力学モデルのパラメー
1970 年代に CALPHAD 法が提案1)されて以来,現在まで
ター間の関係とその変換式の適用限界が明らかになっている
同手法による合金状態図の熱力学評価が積極的に進められて
必要があるが,これまでには特定の場合に対するパラメー
きた.Ni 基や Fe 基などの主要二元系合金状態図に限れば,
ターの変換式が報告されているのみである1,5).
その多くは既に熱力学解析が行われているといってよいだろ
本研究では,置換型副格子と侵入型副格子からなる二副格
う.そして,それらを基に多元系合金の熱力学データベース
子モデルによる侵入型固溶体を対象とし,複数の異なる副格
が構築・公開されている.多元系熱力学データベースを構築
子構成による熱力学解析の結果を統合するための関係式を導
するためには,まず二元系のギブスエネルギー関数を組み合
出することを目的とした.
わせる必要があるが,この時に問題となるのは熱力学モデル
の整合性である.すなわち,同じ相であっても,合金系によ
2.
侵入型固溶体に対する二副格子モデル
って使われている熱力学モデルが異なる場合がある.たとえ
ば, BCC 中の侵入型固溶元素である酸素を考えると,これ
までに 1 : 1(CuO2)),1 : 1.5(NdO3)),1 : 3(FeO4))など,
金属中では,原子半径が比較的小さい H, B, C, N, O など
の元素は,侵入型固溶として熱力学解析が行われている場合
複数の副格子構成がアセスメントに用いられている(四面体
が多い(B や O など置換型サイトを占める場合がある).A
位置を占める場合には 1 : 6 になるがこれまでに使われた例
B 二元系において,元素 B が元素 A 格子中に侵入型固溶す
はない).これらを 1 つの多元系データベースとして統合す
る場合には,侵入型サイトと置換型サイトの 2 つの副格子
るためには,同一副格子構成を用いた再アセスメントにより
からなる次の副格子構成が用いられる.
新たな熱力学モデルのパラメーターを決定する必要がある.
(A)p(B, Va)q
(1)
対象とする合金系の熱力学データを集めて,熱力学パラメー
ここで,左側から第一副格子,第二副格子と呼ぶ.それぞ
ターを最適化するには多くの労力が必要である.したがっ
れ,第一副格子が置換型位置,第二副格子が侵入型位置に対
第
7
号
275
CALPHAD 法における異なる侵入型副格子モデル間のパラメーター変換
応しており,右下の添え字 p,q は,その副格子上の原子サ
る.また xA + xB = 1 である.式( 2 )の記述には,空孔( Va )
イトのモル数である.この場合,置換型サイトは A 原子だ
が含まれているがモルフラクションには含まれない.k 副格
けが占有でき,添加された B 原子はすべて侵入型位置を占
子上の元素 i の濃度であるサイトフラクション y(i k) は,
める. B に占められていない侵入型サイトは空孔( Va )にな
る.ここで BCC 中の侵入型サイトとして八面体位置を考え
れば p : q=1 : 3,四面体サイトであれば 1 : 6 である.また,
FCC であればそれぞれ 1 : 1,1 : 2,HCP であれば共に 1 : 1
となる.式( 1 )の副格子構成の場合,それぞれの副格子を
単一成分が占めた場合の組合せ(これをエンドメンバーと呼
y(A1)=
NA
p
y(B2)=
NB
q
y(Va2)=
NVa
q
(4)
また,同じ副格子上のサイトフラクションの総和は y(B1) +
ぶ)は次の 2 つである.
y(Va2) = 1 .式( 3 )と式( 4 )からモルフラクションとサイトフ
(A ) p ( B ) q
(A)p(Va)q
ラクションの関係は,
(2)
ApBq は化合物, Ap は純 A に相当する.また, A B 二元系
y(B2)=
合金における元素 A のモルフラクション xA は,次式で定義
される.
x A=
pxB
q( 1- x B)
y(Va2)=1-
NA
N A +N B
(3)
pxB
q ( 1- x B)
(5)
式( 1 )の副格子構成に対するモルギブスエネルギーは,
こ こで NA, NB は系に含ま れる元素 A と B のモル 数であ
:q
:q
+y(A1)y(Va2)xAG pA:Va
+qxART
G pm:q=y(A1)y(B2)xAG pA:B
v
∑
j=B,Va
n)p:q
( y(B2)-y(Va2))n
y(j 2) ln( y(j 2))+xA y(B2)y(Va2) ∑ L(A:B,Va
(6)
n=0
:q
:q
は式( 2 )における 2 つのエンドメンバー( ApBq
G pA:B
, G pA:Va
第二副格子のモル数が異なる場合のパラメーター
変換
3.
と Ap)のギブスエネルギーである.添え字中のコロンは副格
子が異なることを示しており,カンマは同じ副格子を占める
成分の区切りである.右辺第四項は過剰ギブスエネルギー項
n)p:q
で, Redlich Kister ( R K )級数で与えられ, L(A:B,Va
は R K
ここでは次式の変換に必要な右辺と左辺のギブスエネル
級数のパラメーターである(第一副格子は A のみで占めら
ギー式におけるパラメーターの関係を導出する.
れ,第二副格子は B と Va が混合している).侵入型固溶体
(A)p1(B, Va)q⇒(A)p2(B, Va)
(7)
のモルギブスエネルギーは,Va を除いた元素 1 モル当たり
式( 7 )の左辺のモルギブスエネルギーは,式( 6 )を置換型
で与えられるため,侵入型固溶体のギブスエネルギーは置換
サイト 1 モルに対して書き直すと,
型固溶体に比べて xA だけ異なっている6).
v
x A p1 : q
xA
qxA
xA
n)p1:q
( y(B2)-y(Va2))n
G +y(1)y(2) G p1:q +
RT ∑ y(j 2) ln( y(j 2))+ y(B2)y(Va2)∑ L(A:B,Va
p1 A:B A Va p1 A:Va p1
p
1
j=B,Va
n =0
(1) (2)
q
G 1:
m = y A yB
(8)
同様に右辺のモルギブスエネルギーは,
(1) (2)
r
G 1:
m =y A y B
v
x A p2 : r
xA 2:r
rxA
xA
n)p2:r
+
( y (B2)-y(Va2))n
G A:B+y (A1)y (Va2) G pA:Va
RT ∑ y (j 2) ln ( y (j 2))+ y (B2)y(Va2)∑ L(A:B,Va
p2
p2
p2
p2
j=B,Va
n =o
(9)
純 A のギブスエネルギーは等しいので,置換型サイトのモ
次に,この変換においては式( 8 )と式( 9 )が等しくなれば
ル数の違いを考慮して,
よいので,式( 10 )を式( 9 )に代入して整理すると次式を得
2:r
=
G pA:Va
p 2 p1 : q
G
p1 A:Va
(
r 1:q
p2 r
2:r
= G pA:B
+
-
G pA:B
p1 q
q
+
(
1
p 1 xB
1-
q
qxA
)G
p1 : q
A:Va+xART
)∑L
v
n= 0
[ pq
∑
y (j 2)p1:q ln ( y (j 2)p1:q)-
1 j=B,Va
p x
1-
∑L
r(
rx )
1
(n)p1:q
A:B,Va-
2 B
A
また,式( 9 )と式( 10 )中のサイトフラクションは異なって
いるため,y(j 2)p:q
る.
(10)
は副格子モデル p : q における第二副格子上
の元素 j のモルフラクションとして区別している.固溶元素
v
n=0
r
∑ y (2)p2:r ln ( y (j 2)p2:r)
p2 j=B,Va j
]
(n)p2:r
A:B,Va
(11)
濃度が十分に低い場合(0<y (B2)≪1)には,
( )G
r 1:q
p2 r
2:r
= G pA:B
+
-
G pA:B
q
p1 q
p1:q
A:Va+rRT
ln
(pp qr)
1
2
276
第
日 本 金 属 学 会 誌(2014)
+
1 v (n)p1:q 1 v (n)p2:r
∑L - ∑L
q n=0 A:B,Va r n=0 A:B,Va
(12)
78
巻
DG form
Ap Br の実験データが得られている場合などには,推定値
2
form
と実測値の差を D(=DG form
Ap Br- rDG Ap Bq/ q )として式(13)に加
2
1
n)p2:r
n)p1:q
過剰ギブスエネルギー項を L(A:B,Va
=rL(A:B,Va
/q で与えれば,
えればよい.この場合,低 B 領域のギブスエネルギーも影
式(12)は,
響を受けるため,式( 9 )から,その補正として過剰ギブス
( )G
r 1:q
p2 r
2:r
= G pA:B
+
-
G pA:B
q
p1 q
p1:q
A:Va+rRT
ln
(pp qr)
1
(13)
エネルギーにおける n=0 項を次式で与える必要がある.
2
0 ) p2 : r
=
L(A:B,Va
これで,p1 : q の副格子構成から p2 : r の副格子構成へのパラ
r (0)p1:q
-D
L
q A:B,Va
(16)
メーターの変換を行うことができる.式( 8 )~式( 12 )の変
これにより,低 B 領域のギブスエネルギーと化合物のギブ
換で明らかなように,式( 11 )の右辺第一,第二項はエンド
スエネルギーを共に再現することが可能となる.
メンバーのギブスエネルギー差,第三項はエントロピー項の
1 : 1 ⇒ 1 : q ( q = 1, 1.5, 2, 3, 6 )変換におけるギブスエネル
差,第四第五項は過剰ギブスエネルギー項の差を表してい
ギーの組成依存性を Fig. 1 ( a )に示す.計算に用いたパラ
n)p2:r
=
る . ま ず , 過 剰 ギ ブ ス エ ネ ル ギ ー 項 の 変 換 ( L(A:B,Va
メーターは図中に示した.B 濃度が低い領域ではどの曲線も
n)p1:q
/ q )については,たとえば, BCC
rL(A:B,Va
相の 1 : 3 ⇔ 1 : 6 の
一致しているが, B 濃度が高くなるに伴って変換前の 1 : 1
変換であれば,八面体サイト上の元素 B を空孔の相互作用
のギブスエネルギーからの差が大きくなることがわかる.
と四面体サイト上の元素 B と空孔の関係に相当し,両者を
Fig. 1(b)に 1 : 1 と 1 : 6 の副格子構成の場合のギブスエネル
副格子サイトのモル数の差による補正だけで推定しているこ
ギーで規格化した変換後のギブスエネルギーを示す.変換後
とに相当する.またエンドメンバーのギブスエネルギーに注
の比が変換前の比よりも小さければ 1 よりも小さく(ギブス
目すると,p1 モルの純物質 A と q モルの純物質 B から 1 モ
エネルギーの絶対値が小さくなる),大きくなると 1 よりも
ルの化合物 Ap1Bq が生成する場合には,式( 8 )( 9 )中の化
大きく(ギブスエネルギーの絶対値が大きくなるためより安
合物のギブスエネルギーは,
定な相となる)なる.これによって,変換後の相が安定相と
form
1:q
0 B
= p 10G A
G pA:B
m+q G m+DG Ap1Bq
(14)
して現れてしまう場合があるだろう.これは,式( 15 )によ
0 A
DG form
Ap Bq はこの化合物の生成ギブスエネルギーである. G m
る変換後の化合物の生成ギブスエネルギー値が実際の値と大
と 0G Bm は純 A と純 B の 1 モル当たりのギブスエネルギー
きく異なっていることを示唆している.この問題を避けるた
で,添え字の 0 は純物質を表している.エンドメンバーの
めに D の導入が必要である.この点は実際の合金系を取り
ギブスエネルギー差だけを考え,式( 14 )を式( 13 )に代入,
上げて第 5 章で説明する.
1
整理すると次式を得る.
2: r
0 B
= p20 G A
G pA:B
m+r G m+
r
DG form
Ap Bq
q
(15)
4.
置換型元素から侵入型元素への変換
1
すなわちこのパラメーター変換では,既知のエンドメンバー
金属中では, B や O は置換型と侵入型固溶の両方の取り
のギブスエネルギーを用いて, p2 モルの純物質 A と r モル
扱いが報告されており,これらの熱力学関数をデータベース
の純物質 B から未知の化合物 Ap2Br が生成するときの生成ギ
として統合する場合には,副格子構成を侵入型かまたは置換
form
ブスエネルギー DG form
Ap Br を rDG Ap Bq/ q と推定していることに
型に揃えなければならない(または両サイト置換が考えられ
相当する.この推定値がよい近似になっていない場合や
るがここでは取り扱わない).すなわち,ここで行うのは次
2
1
Fig. 1 (a) Gibbs energy of the AB interstitial solution with different moles of the interstitial sublattice, q, and (b) ratio of the Gibbs
x
1:q
energies before and after parameter conversion, G 1:
A:B/G A:B.
第
7
号
277
CALPHAD 法における異なる侵入型副格子モデル間のパラメーター変換
は , 式 ( 16 ) と 同 様 に , 化 合 物 の 生 成 ギ ブ ス エ ネ ル ギ ー
のパラメーター変換である.
(A,B)p(Va)q⇒(A)p(B,Va)q
(17)
左辺は B が置換型サイトを占めた場合,右辺は B が侵入型
DG form
A1Bq を考慮する必要があるだろう.この場合,前節と同
様の取り扱いにより,過剰ギブスエネルギーの n=0 項を
(0)sub
0)1:q
=qLA,B:Va
-DG form
L(A:B,Va
A 1Bq
サイトを占めた場合に相当する.置換型サイトは通常 1 モ
(23)
ルであるため p= 1 とする.置換型固溶モデルである左辺の
と与えることで,低 B 領域のギブスエネルギーを変えるこ
ギブスエネルギー G sub
m は,
となく,化合物の生成ギブスエネルギーを取り入れることが
sub
sub
G sub
m =xAG A:Va+xBG B:Va+RT
できる.
∑ xj ln(xj)
以上が,置換型⇔侵入型の変換である.式(18)式(19)の
j=A,B
v
n)sub
+xAxB ∑ L(A,B:Va
( x A- x B) n
(18)
n=0
右辺第四項の括弧内は,アルファベット順になるため,元素
の組合せによっては,この変換に伴って奇数項の符号が逆に
侵入型固溶モデルである右辺のギブスエネルギーは式( 8 )
なる場合がある.たとえば,(A1,B)1(Va)3⇒(A1)1(B,Va)3
から,
の場合である.
( 1) ( 2)
( 1) ( 2)
1:q
1:q
q
G 1:
m =y A y B xAG A:B+y A y Va xAG A:Va
+qxART
∑
置換型モデル(Sub)⇒侵入型モデル(1 : 1.5, 1 : 3)変換にお
けるギブスエネルギーの組成依存性を Fig. 2(a)に示す.計
y(j 2) ln ( y (j 2))
j=B,Va
算に用いたパラメーターは図中に示した.B 濃度が低い領域
v
ではどの曲線も一致しているが,B 濃度が高くなるに伴って
n)1:q
+xA y (B2)y (Va2)∑ L(A:B,Va
( y (B2)-y (Va2))n
(19)
n =0
変換前のギブスエネルギーからの差が大きくなることがわか
る. Fig. 2 ( b )に G sub
m で規格化した変換後のギブスエネル
純 A のギブスエネルギーは等しいので
q
sub
G 1:
A:Va=G A:Va
(20)
ギーを示す.この変換の場合,変換前後のギブスエネルギー
もう一方のエンドメンバーに対しては,式( 18 ),式( 19 )か
比が 1 よりも小さいので,変換後に安定相として現れてし
ら,0<y(B2)≪1 の場合,
q
sub
sub
G 1:
A:B=G A:Va+qG B:Va+qRT
DG form
A1Bq を導入しなくてもよいかもしれないが,変換後の化
まうことはないだろう.したがって,状態図の外見上は
ln(q)
(21)
RK パラメーターに対しては,
n)1:q
n)sub
=qL(A,B:Va
L(A:B,Va
合物の生成ギブスエネルギーの実験値や第一原理計算からの
(22)
推定値がある場合には,それらを用いるべきである.
式( 22 )は,左辺が侵入型サイト上の A Va 間の相互作用,
右辺が置換型サイト上の AB 間の相互作用であり,本質的
5.
実際の適用例(Ti
O 二元系状態図)
に異なる相互作用を副格子のモル数の補正のみでつなげてい
ることに相当する.
ここでは,第 3 章の変換の適用例として,TiO 二元系状
また,エントロピー項を除いた式( 21 )の右辺第一,第二
態図を取り上げる.Cancarevic ら7)の熱力学解析では,BCC
項は,既知である純物質のギブスエネルギーから,未知の化
相の副格子構成として(Ti)1(O, Va)1 が用いられており,こ
合物 A1Bq のギブスエネルギーを推定していることに相当す
こで行う変換は式(24)で表することができる.
q
sub
sub
る( G 1:
A:B = G A:Va + qG B:Va ).すなわち,この場合,化合物の
生成ギブスエネルギーはゼロである.したがって,実際に
(Ti)1(O, Va)1⇒(Ti)1(O, Va)3
(24)
Fig. 3(a)は Canarevic らのアセスメントによる TiO 二元系
Fig. 2 (a) Gibbs energy of the AB interstitial and substitutional solutions, and (b) ratio of the Gibbs energies before and after
q
sub
parameter conversion, G 1:
A:B/G A:B.
278
日 本 金 属 学 会 誌(2014)
第
78
巻
状態図である.変換後のパラメーターを用いた Fig. 3(b)で
に変わったため xO = 0.75 までになる.これにより本来の安
は, BCC 相の領域が大きく広がり,変換前の状態図と大き
定相平衡である化合物とガス相のタイラインよりも TiO3 の
く異なっていることがわかる.この理由は,この変換の場
ギブスエネルギーが低くなり,Fig. 3(b)のように BCC 固溶
合,侵入型副格子のモル数が大きくなるため,変換後の
体が高 O 濃度領域に広く現れてしまう.変換後のエンドメ
BCC 相がより安定になることによる.これは,変換後のエ
ンバーである BCC TiO3 の実験的な報告はなく,この組成
ンドメンバー(化合物)の生成ギブスエネルギーが実際と大き
域ではガス相が安定相として現れると考えられる.したがっ
く異なっていることを示唆しており,D による補正を行った
て, TiO3 のギブスエネルギーは,この安定系平衡よりも大
状態図を Fig. 3(c)に示す.補正によって Fig. 3(a)とほぼ同
きくなければならない.これは式( 15 )によるエンドメン
じ形の状態図が得られていることがわかる.Fig. 3 に示した
バーのギブスエネルギーに補正項 D を加えて,安定平衡の
変換における各相のギブスエネルギーを Fig. 4 に示す.変
タイラインよりもギブスエネルギーを大きくすればよい.こ
換前のギブスエネルギーは BCC(1 : 1)であり,xO=0.5 まで
れにより, Fig. 3 ( c )に示すように,本来の状態図を再現す
の関数になっているが,変換後は副格子構成が BCC ( 1 : 3 )
ることが可能となる.
Fig. 3 The TiO binary phase diagrams: (a) before parameter conversion where the BCC is described as (Ti)1(O, Va)1, (b) the
BCC is converted to (Ti)1(O, Va)3 without the D term, and (c) converted with the D term of +137.5 kJ mol-1.
Fig. 4
Gibbs energy of the BCC, Gas and compound phases in the TiO binary phase diagram at 1000 K.
7
第
号
CALPHAD 法における異なる侵入型副格子モデル間のパラメーター変換
279
(0)sub
0)1:q
=qLA,B:Va
-DG form
L(A:B,Va
A 1Bq
また,詳細な比較をすれば,PureTi 近傍における相平衡
n)1:q
n)sub
=qL(A,B:Va
(n >0 )
L(A:B,Va
は,Fig. 3(a)と(c)でわずかに異なっている.したがって,
この変換はあくまでも近似である.この点を修正するために
これら変換式を TiO 二元系状態図に適用した結果,変換
は,熱力学アセスメントとパラメーターの最適化が必要であ
前後の状態図はよい一致を示した.しかし,ここで行ったパ
り,ここで導いた変換式はその時の初期値として用いるとよ
ラメーター変換は,欠陥形成エネルギーや化合物形成エネル
いだろう.
ギー,点欠陥との相互作用などを基に変換されたものではな
いため,変換後のエンドメンバーの生成ギブスエネルギーや
結
6.
論
過剰ギブスエネルギー項は,実際の値と大きく異なる場合が
あるだろう.その時には,再熱力学評価が必要となるが,こ
侵入型元素を含む固溶体相に広く用いられている二副格子
こで導いた変換式は,その時のよい初期値を与えるだろう.
モデルにおいて,複数の異なる副格子構成による熱力学解析
本研究の一部は, JSPS 科研費 23560850 ,文部科学省の
の結果を統合するために必要なパラメーター変換式を導出し
た.


委託事業である元素戦略磁性材料研究拠点の支援を受けたも
副格子のモル数が異なる場合((A)p1(B,Va)q⇒
のである.
(A)p2(B,Va)r)の変換式.
2: r
=
G pA:Va
2: r
=
GpA:B
文
p 2 p1 : q
G
p1 A:Va
(
r p 1: q
p2 r
-
G A:B+
p1 q
q
)G
p1 : q
A:Va+rRT
ln
( pp qr )+D
1
2
r
0 ) p2 : r
0)p1:q
= L(A:B,Va
-D
L(A:B,Va
q
n)p2:r
=
L(A:B,Va


r (n)p1:q
( n> 0)
L
q A:B,Va
元素の優先サイトが異なる場合((A,B)p(Va)q⇒
(A)p(B,Va)q)の変換式( p=1).
q
sub
G 1:
A:Va=G A:Va
q
sub
sub
form
G 1:
A:B=G A:Va+qG B:Va+qRT ln(q)+DG A1Bq
献
1) H. L. Lukas, S. G. Fries and B. Sundman: Computational
Thermodynamics, (Cambridge, 2007) pp. 16.
2) L. Schramm, G. Behr, W. L äoser and K. Wetzig: J. Phase Equil.
Diffusion 26(2005) 605612.
3) V. A. Lysenko: Russian J. Phys. Chem. 78(2004) 161165.
4) L. Kjellqvist and M. Selleby: J. Phase Equil. Diffusion 31(2010)
113134.
5) B. Hallstedt and D. Djurovic: CALPHAD 33(2009) 233236.
6) T. Nishizawa: Micro soshiki no netsurikigaku, (The Japan
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