第34回北海道麦作共励会審査報告 平成25年度の第34回北海道麦作共励会の出展者の麦づくりおよび審査結果の概要について審査 委員を代表して報告申し上げます。 平成25年産の秋まき小麦は、前年対比88%と昨年には及びませんでしたが、10a当たり収量447Ë で平年対比101%と平年並を確保することができました。 春まき小麦では、前年対比93%と秋まき小麦同様昨年には及びませんでしたが、10a当たり収 量319Ëで平年対比112%と平年を上回りました。全道の収穫量は、約49万トン、当初約58万トン の収穫量を見込んでいましたので計画対比84%となりました。作付面積は、約11万haでほぼ前年 並でした。 一方、品質面では秋まき小麦の1等麦比率が82%と過去4年間で2番目に高い成績となりまし た。また、春まき小麦でも赤かび病などの病害発生が少なく千粒重や製品歩留まりも良好で1等 麦比率は93%でした。 ランク区分の平均で「きたほなみ」は、容積重856g、蛋白11.1%、灰分1.39、FN値376秒。「春 よ恋」は、容積重859g、蛋白12.6%、灰分1.62、FN値412秒とすべての項目で基準値をクリアで きました。 昨年に及ばなかった要因としては、登熟期間が41日間(平年44日間)と平年より3日短くなっ たことと、全般に穂数が少なく一穂粒数も平年よりやや少なかったことによります。 また、十勝では7月24日から8日連続の降雨により収穫期が4日遅れ、倒伏もみられ品質が低 下したと考えられます。 次に、麦作共励会の経過について申し上げます。8月9日に第1回審査委員会を開き、8月13 日に地区協会に案内、関係機関・団体に共励会後援と積極的な参加推進をお願いしました。 振るわなかった作柄でしたが関係者の熱意で出展は8点を数えました。出展者の成績内容を見 ると、各人とも本年の成績が素晴らしかっただけでなく、天候不順で悪かった過去の年でも安定 した成績を上げており、改めて天候に左右されない確かな麦づくりをやっておられることを強く 感じた次第です。 8点の出展の内訳は、第1部(畑地における秋まき小麦)で個人3点、第2部(水田転換畑に おける秋まき小麦)個人2点、第3部(全道における春まき小麦)で個人3点でした。残念なが ら集団の部の出展はありませんでした。 11月14日に第2回審査委員会を開き、推薦調書を基に審査を行い、部門毎の賞を選考し、12月 2日、12月5日に現地調査を行い、正式に各賞を決定いたしました。 以下、各受賞者の麦づくりの概要について紹介いたします。 【畑地における秋まき小麦・個人】部門 最優秀賞を受賞された清里町の堀川哲男さんは、斜網地帯のほぼ中央地帯の町にあって畑作専 業経営を行っています。38haの畑地に小麦、てんさい、でん粉原料用ばれいしょと輪作体系を考 慮して春まき小麦、大豆、スイートコーンを作付けしています。いずれの作物とも高収益を上げ ています。小麦は秋まき小麦「きたほなみ」を作付し、764Ë/10aの高収量、品質も全量1等、 品質も申し分ない小麦でした。 高収量を上げている麦づくりの要因として、4年の輪作体系を極力守ろうとしていることがあ ります。特に、小麦の前作としては、でん粉用原料用ばれいしょの早堀の実施により播種が遅れ −5− ないよう努力しています。 土作りとしては、堆きゅう肥を小麦収穫後に4t/10a投入し小麦跡に緑肥作物も栽培して、地 力維持に努めています。 斉一な出芽揃いと作業効率とを併せて、パワーハロー+パッカーローラの組み合わせにより砕 土・整地・鎮圧を1回で行なって、播種床を堅めに仕上げています。 施肥管理では、小麦の茎数・葉色を観察しながら各生育期節(起生期、幼穂形成期、止葉期) に無理のない窒素施肥を行い、倒伏の軽減と製品歩留まりの向上に努めています。 地域にあっては、3年前から斜里郡3JA種子麦協議会の初代会長に就任し、地域全体の良質 種子生産に取り組んでいます。また、本人のほ場を研修場所に提供し、会員相互の栽培管理技術 向上にも尽力されています。 優秀賞を受賞された姉崎久信さんは、大樹町で畑作+肉牛の69haの複合経営を行っています。 特に、牧草、スイートコーン、小豆を取り入れた4年輪作をきっちり守っています。太平洋沿岸 地帯の厳しい気象条件(農耕期の海霧など)にありながら、自家生産の堆きゅう肥などを活用し 地力対策や透排水性改善に努めながら安定的な経営に励んでいます。 小麦単収は、519Ë/10aと十勝全体の中では決して高い収量ではありませんが、町平均収量を 大幅に上回っていますし、品質も全量1等でした。 同じく優秀賞を受賞された蘭越町の下條農産は、水田+畑作の39haの経営です。輪作体系の品 目を増やす狙いもあり3年前から小麦の栽培を始めました。大豆、ばれいしょ、小麦の3品目に よる輪作体系ですが、町外の出作地を所有している者同士で話し合いながら輪作体系を守ってい ます。小麦の単収は、628Ë/10a、全量1等でした。 融雪が遅いハンディーや土壌条件を克服するために、排水対策等に細心の注意を払いつつ堆肥 や緑肥による土作りに努力しています。 【水田転換畑における秋まき小麦・個人】部門 最優秀賞を受賞された富良野市の桑折弘三さんは、富良野市北大沼地区にあって、13haの水田 転換畑で、タマネギを中心に秋まき小麦、施設園芸(アスパラガス、きゅうり)の経営をしてい ます。 富良野市における先駆的な取り組みとして、タマネギ栽培に秋まき小麦を導入しています。こ のことにより病害虫や雑草発生の抑制となり除草剤の春施用を省略できるなど、コスト低減にも つながり相乗効果が現れています。 また、秋まき小麦後作のタマネギ栽培では、小麦の根による土壌亀裂が生じ排水改善にも役立 ち、収量・品質の向上にも一役買っています。 小麦単収は、726Ë/10aと地域にあっても驚くほど高く、品質も全量1等で申し分のない小麦 です。また、製品歩留まりは93%と高く、過去2カ年平均でも98.5%と驚異的な数字となってい ます。 優秀賞を受賞された南幌町の岡部陽助さんは、水田+畑作の54.5ha(内26.6ha借地)の大規模 経営をしています。水稲の他に、大豆、小豆、小麦を作付しており、連作を極力避けるため豆類 と麦の交互作をしています。特に、秋まき小麦の大豆間作栽培と間作栽培が難しい小豆では春ま き小麦を導入するなどの工夫をしています。 小麦単収は、544Ë/10aと町平均の1.5倍と高く、大規模ながら安定した収量を確保しています。 南幌町は泥炭地帯で地下水位が高いため、排水対策や表面排水の排除に特に力を注いでいます。 また、過繁茂による倒伏防止のため、播種量を少な目にしています。しかし、そのためには均一 な砕土・整地によるは種精度を高めることが重要な技術と位置づけています。 −6− 【全道における春播小麦・個人】部門 優秀賞を受賞された由仁町の浅川景徳さんは、水稲+畑作の69ha(内18ha借地)と大規模複 合経営で、畑作は畑地と水田転換畑で栽培を行っています。 畑作物は、ばれいしょ、春まき小麦、秋まき小麦、てんさい、大豆、小豆と6品目による4年 輪作に努めています。また、農地は3町に分散しており、ブロックローテーションによる効率的 な農地利用にも取り組んでいます。 春まき小麦の収量は468Ë/10aと高く、品質も全量1等で、製品歩留まりが3年とも90%以上 という素晴らしい成績を残しています。 安定した収量を確保するためには、播種を早めるために、融雪促進とスタブルカルチ、コンビ プラウの活用により早期播種を心がけています。また、倒伏防止のために、播種量を増やさず目 標穂数を600本/㎡として、生育状況を見ながら植物調整剤を利用しています。 地区内では、由仁町小麦乾燥調製施設の運営委員として、小麦の収穫から乾燥調製の重要な役 割を担っています。また、収穫機械の共同利用・共同作業を実施し、汎用コンバインによる水稲、 小麦、大豆、小豆を収穫し、効率的な機械利用を行っています。 優秀賞を受賞された江別市の橋本和司さんは、水田+畑作の24ha(内4.5ha借地)の複合経営 を行っています。畑作物は、小麦、てんさい、大豆、小豆、の4品目をバランス良く作付し連作 を避けています。春まき小麦は、「ハルユタカ」を初冬まき栽培、「春よ恋」を春まきにすること で、農作業の競合を緩和し、収穫期の穂発芽リスクの分散を図っています。「春よ恋」の収量は 549Ë/10aと高く、品質も全量1等で品質においても基準値内でAランクをクリアしています。 安定した収量を確保するために、ほ場観察を徹底し生育期節毎に肥切れを防ぐための葉面散布 をしています。 地区内では、小麦生産部の役員を担い、関係機関との連携を図りながら江別産小麦の高付加価 値化に努めています。 同じく優秀賞を受賞された黒松内町の佐藤英幸さんは、畑作地帯にあって48ha(内35ha借地) と規模の大きい経営です。近隣の酪農家と可能な限り交換耕作を行いながら輪作体系を守る努力 をしています。 雪解けの遅い地帯なので、透排水対策として明渠、暗渠を完備し、春まき小麦の作付予定地の 前年にはサブソイラによる心土破砕を行っています。また、耕盤層の形成防止と春作業を早める ために、パワーハロー1回のみの砕土・整地としています。とにかく、ほ場を乾かし早めに耕起 することが安定生産に繋がるとのことです。 「春よ恋」の収量は397Ë/10aで、全量1等です。 地区内では、JAようてい小麦生産組合において、独自の共励会を実施し自らの優良事例など を発表し栽培技術の向上を図るなど切磋琢磨しています。 以上のように、それぞれ受賞された皆さんは、輪作体系をきちんと守り、土づくりを基本に、 排水を良くして根張りの充分な小麦づくりに心がけています。また皆さんは地域の仲間を大切に、 地域のすばらしい牽引力となっております。これまでのご努力に敬意を表するとともに、この度 の受賞を心からお祝い申し上げたいと思います。 最後に本年度の麦作共励会に関係された皆さんに御礼申し上げるとともに、今後とも北海道の 麦作振興に尽力されることをご祈念申し上げて審査報告と致します。 第34回(平成25年度)北海道麦作共励会審査委員長 北海道農業研究センター寒地作物研究領域長 入 来 規 雄 −7−
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