iPOP2014で展示・デモの解説 ふく い まさ き NTTアドバンステクノロジ株式会社 応用NIビジネスユニット ビジネスユニット長 福井 将樹 NTTコミュニケーションズ株式会社 技術開発部 担当部長 佐藤 陽一 さ とう つりたに 株式会社KDDI研究所 光トランスポートネットワークグループ グループリーダ 1.はじめに よういち たけひろ 釣谷 剛宏 Profile(MPLS-TP)等パケットトランスポート機器や iPOP2014は記念すべき10回目の開催ということもあり、 100Gb/s級の光伝送機器の展示が多く見られた。2011年頃 展示出展数は過去最大の21を数え、多くの企業・団体に参 からは、Software Defined Networking(SDN)やOpenFlow 加いただき、大変盛況であった。図1は第1回目からの展示 をトランスポート機器へ実装検討する取組が進められ、展示 出展社数を示す。第1回目の2005年以降、出展社数は若干 でも各社の取組が紹介された。 減少傾向にあったが、昨年は微増し、今年は大幅に増加し 2014年は、NTT武蔵野R&Dセンターのコンベンションホ た。出展企業・団体の占める海外企業数は、例年3∼6を数 ールにて、図2に示すように21の展示ブースと一つのショーケ え、国際会議の展示会として花を添えている。また、展示の ースブースを設け、展示会を開催した。参加企業・団体を キーワードは、その年の技術トレンドに合わせて変化し、こ 表1に記載する。出展内容については、上記に示すとおり、 こ数年は大きく変化した。開催初期はIPと光の連携の全盛 トランスポート機器におけるSDN/OpenFlow技術が大半を 期の時代であり、トランスポート機器間をGeneralized 占めており、以下、SDN関連の展示内容を三つのトピック Multi-Protocol Label Switching(GMPLS)技術を用いて ス分けて紹介する。 相互接続するデモンストレーションやUser-Network Inter表1.出展社名(順不同) face(UNI)によるIPルータと光との連携などがメインであ った。中期ではMulti-Protocol Label Switching-Transport ISOCORE Infinera QualiSystems 東京大学 25 展示出展数 20 日本・海外企業団体 海外企業団体 慶應大学 三菱電機 OA研究所 ixia 富士通 沖電気工業 東陽テクニカ O3プロジェクト 古河電気工業 情報通信研究 日本電気 機構(NICT) 15 10 5 0 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 iPOP開催年 超高速フォトニッ クネットワーク開発 推進協議会 (PIF) Coriant けいはんな情報 日本電信電話 通信オープン (NTT) ラボ研究推進 協議会 KDDI研究所 図1.展示出展社数推移 NTTコミュニ ケーションズ 図2.各社参加企業のブース配置構成とその風景(写真) ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 23 特 集 iPOP 2014 た。これらの異なるタイプの装置を、SDN/ OpenFlowベー 2.展示トピック1:SDN(1)-ショーケース iPOPのショーケースでは過去3年続けてSoftware Defined スの統合制御装置(㈱KDDI研究所)にて一元的に制御し、 模擬データセンターからのリクエスト(帯域要求)に応じて、 Transport Network(SDTN)に関する相互接続性検証デ 個々に仮想光ネットワークを構築することに成功した。コ モンストレーションを実施した。2012年最初のデモでは、世 ア・メトロ・アクセスの各光ネットワークにはそれぞれネッ 界初のSDTNデモと題し、6社で五つのネットワークドメイン トワーク制御装置があり、自らが管理する物理ネットワーク を構築し、各ドメインを構成する異種レイヤのネットワーク を簡易的な論理ネットワークとして統合制御装置(SDNコ 機器をSDNコントローラで制御するデモを実施した。今年も ントローラ)に情報提供することで、毎秒100ギガビット級 引き続きSDTNをキーワードに、データセンター(模擬)間 トランスポートネットワークを含む大規模光ネットワークの の100ギガビット級のコア・メトロ・アクセス光ネットワーク 制御を可能としている。ショーケース参加各社は、実機を展 を6社で構築し、SDTN技術を用いて一元的に相互接続する 示会場に持ち込み、各社ブースを構成しそれぞれの成果を展 デモンストレーションを展示した。図3に相互接続検証の構 示した。なお、本技術はデータセンター間をつなぎ、広域ク 成及びその様子(写真)を示す。データセンター間を接続す ラウドを構成する大容量通信ネットワーク技術への応用が期 る光ネットワークは、毎秒100ギガビットの波長多重光伝送 待できる。 装置(三菱電機㈱)と毎秒100ギガビット級の光パケット・ 光パス統合スイッチング装置((独)情報通信研究機構)をメ 3.展示トピック2:SDN(2)-O3プロジェクト トロコア光ネットワークとして、また、模擬データセンター 広域ネットワーク(以降、NW)に必要なSDN技術の研 (イクシア、東陽テクニカ提供)とつながるアクセス部分は、 エラスティック性を有する次世代光アグリゲーションネット 究開発に取り組むO3(Open Organic Optima)プロジェク ワークのプロトタイプ機器(慶應義塾大学提供)にて構築し トからは、抽象NWモデルを用いた広域異種NWの統合的可 コアNW (三菱電機) 毎秒100ギガビット 波長多重光伝送装置 ネットワーク 統合制御装置 (KDDI研) 10ギガビットイーサネット (※) メトロNW (NICT) 10ギガビットイーサネット 毎秒100ギガビット級 光パケット・光パス統合 スイッチング装置ネットワーク 10ギガビットイーサネット アクセスNW (慶應大学) 10ギガビットイーサネット 仮想L2スイッチ データセンター (ixia、東陽テクニカ) 光加入者線 終端装置 アクティブ光分配網 回線終端装置 1ギガビットイーサネット (※) イーサネットは、富士ゼロックス株式会社の登録商標です。 ixia 東陽テクニカ 三菱電機 NICT 慶應大学 KDDI研 図3.100Gb/s級光ネットワーク装置を用いたSDTN相互接続性検証構成と参加各社ブース風景(写真) 24 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 視化技術及び、パケット・光トランスポートから成るマルチ し、要求を満たす資源を下位レイヤのリソースプールから探 レイヤNWの一元管理技術を展示した。 索して上位レイヤのトラヒックに割り当てるためのリソース 広域NWを対象としたSDN技術では、広域NWを構成す 管理制御を行なう。また、光カットスルー技術では、ユーザ る多様なNWの相違をいかに吸収するかが鍵となる。O3プロ 要件に応じてパケット及び光コアNWのパスを使い分け、必 ジェクトでは、個々のNWをオブジェクト指向のデータモデ 要に応じて光ダイレクトパスをEnd-to-Endで設定することに ルで抽象化表現し、オブジェクトを処理するオペレータ機能 より、ユーザへ低レイテンシーな通信品質を提供する。 をユーザの特性に合わせて拡張することで、その解決を目指 これらの技術は、ビジネスセッションでのプレゼンテーシ している。今回展示した統合的可視化技術では、NWの形状 ョンにて概要を説明し、O3ブースではパネル及びビデオ映像 をノード/ポート/リンクというグラフで表現し、その上で各 を用いたデモンストレーションとして展示を行なった。 NWにおける通信や経路に関する情報(OpenFlowのフロー 情報、MPLS/光パス、オーバレイトンネルなど)をフロー情 報として抽象化している。さらに、これら抽象NWモデルを 4.展示トピック3:SDN(3)-海外ベンダ、他 用いて仮想化や階層化などのNW間制御を行うため、Aggre- ショーケース参加団体及びO3プロジェクト参加企業以外 gator(NW全体を一つの仮想ノードに集約) 、Slicer(NW では、海外の伝送システムベンダのCoriant社やInfinera社が を複数の仮想NWに分割) 、Federator(複数のNWを一つに 参加し、それぞれ“Packet Optical SDN” 、 “SDN for Multi- 統合) 、Layerizer(複数階層のNWを一階層に縮約)などの Layer Core Networking”と題してSDNの取組を紹介した。 制御モデルを定義している。 さらに、海外のソフトウェアベンダであるQualiSystems社も マルチレイヤNWの一元管理技術では、パケットトランス 参加し、 “Automation for Agile Infrastructure”と題して、 SDNやクラウドなどAgileなネットワークやそのテスト環境を 御技術及び光カットスルー技術を展示した。マルチレイヤ管 自動化するためのソフトウェアの紹介を行った。また、東京 理制御技術では、アプリケーションからのNW資源要求に対 大学からは“FLARE” (Deeply Programmable Network Divide Flow Space Slicer Flow→Link Link‐ layerizer ポートNW及び光コアNWを対象としたマルチレイヤ管理制 Aggregator Federator 図4.統合化されたNW制御モデルの例と展示風景(写真) 抽象ネットワークモデル 全ての下位レイヤがリンク化 された抽象化ネットワーク システム全体構成 光コア関連 Pkt. Trans. 関連 L0123 ユーザアプリ (GUI) L2仮想化 下位レイヤのトポロジ 隠蔽/リンク化 L012 L3(IP) L1仮想化 L01 L1(LOODU) レイヤ のリソースを制御 L0仮想化 L0(OCh) L1(ODU) ネットワークコンポーネント (制御対象オブジェクト) 情報モデルは 標準準拠 SDN制御対象引渡 (物理データ) 光NW 管理制御 L2(LSP) レイヤの リソースを制御 光コアNW リソース管理 抽象NW関連 マルチレイヤ管理制御 PTN リソース管理 L2(LSP) ユーザにNW 資源を提供 OpenFlowの 回線交換拡張 OpenFlow/TL1 変換 SDN対応 光コアノード 既存EMS パケットトランスポート ドライバ パケットトランスポートノード L2 NW(MPLS-TP) L1 NW(OTN) L0 NW(WDM) PTN: Packet Transport Network MPL-TP: Multi-Protocol Label Switching-Transport Profile ODU: Optical Data Unit LOODU: Low Order Optical Data Unit OTN: Optical Transport Network OCh: Optical Channel EMS: Element Management System TL1: Transaction Language 1 NW: Network 図5.マルチレイヤNW(パケット・光トランスポート)一元管理技術の例 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 25 特 集 iPOP 2014 図6.各社ブースの様子(左写真:右から東大、Infinera、Coriantブース、右写真:QualiSystemsブース) Nodeアーキテクチャ)上にSoftware DefinedなOpenFlow とが期待される。 ver1.3を実装し、実機による高速処理のデモなどが実施され D-PlaneとC-Planeを分離したOpenFlowの考え方はハード た。他、沖電気工業や古河電気工業から、それぞれ“SDN ウェア、ソフトウェアそれぞれの得意分野に対して独自の進 access area network for fixed and mobile services with vir- 歩ができるような考え方を提供したと考えられる。今後はそ tualized PON” 、 “Wavelength Selective Switch”と題して れぞれの技術分野に関して、独自の進化が期待できる。 展示が行われた。図6に主なブースの様子を掲載する。 例えば、インターネットに代表される増大するトラヒック に効率よく対応するために、400Gbps光伝送や、400Gbpsパ ケットトランスポート等の伝送技術の更なる大容量化は主に 5.むすび 本稿では、iPOP2014における展示・デモの解説を行った。 ハードウェア技術の進歩によるところが大きい。それに対し て、多様化するサービスに柔軟に素早く対応するために、ソ 10年の歴史を刻んだiPOPのテーマは光とIPの連携から始ま フトウェアで定義されるデータプレーンやネットワーク機能 り、GMPLSによる制御、MPLS-TPや100Gbps光伝送等の を、コモディティ化されたスイッチ、サーバで実現する データプレーン、更にはSDNによるネットワーク制御へと使 SDN/NFV技術は、クラウド技術で培われたソフトウェア技 われる手段が変遷してきた。使われる技術は変われど、デー 術を取り込み更なる高度化が期待される。 タプレーンとコントロール/マネジメントプレーンの連携によ るネットワークの高度化は今後も継続的に技術開発されるこ 26 ITUジャーナル Vol. 44 No. 11(2014, 11) 10年の節目を迎えたiPOPは次の10年に向けて新しいネッ トワーク技術の発展を牽引していくものと期待する。
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