2014/11/21 Wrist coil 感度領域の検討 この研究発表の内容に関する利益相反事項は、 ☑ ありません 医療法人 埼玉成恵会病院 山田達也 背景 目的と使用機器 MRI装置のupdateを本年4月に行った。 手関節専用コイルを新規追加し、使用してみると手関節専用だけに形 状や撮像範囲から手関節しか利用ができないようであるが、性能評価 をおこなうことによって他への使い方ができないか検証を行った。 目的と検討方法 1. 円筒形や球形以外のファントムにてNEMAの評価方法が使用でき るか検証を行うために手関節専用コイルのファントム作成を行う。 2. コイルの性能評価を行うにあたり、専用ファントムでなくてもよ いというメーカーの回答を検証する。 3. 手関節専用コイルの感度領域を検討し、手関節以外の応用を初期 検討する。 使用機器 ■ MRI System General Electric company Signa Excite 1.5T-HDxt Version23 ■ RF Coil ・Invivo Corporation 1.5T HD 8ch wrist array coil Fig.2 wrist coil Fig.1 wrist coil 目的1~3に対して個別に方法と考察をスライド作成いたしました。 方法1 ファントム作成 コイル形状から専用ファントムが必要であると考え、付属されていなかっ たので作成することにした。 手関節専用コイルにあった形状にする。 できる限りコイルにフィットするようにする。 形状よりボトルファントムは自身のみでは作成できないと判断した。 液体ファントムも容器の選定上、作成困難と判断した。 以上のことをふまえ、ガドリニウム希釈溶液主成分とし、寒天にて固め、 防腐剤を適量混ぜたものを作成した。 自作ファントムにて性能評価を行う 結果 自作ファントム T1値測定 撮像条件 SpinEcho FOV:12cm Slice :5.0mm TR:2500ms TE:15ms matrix:256×256 NEX:1.0 BW:15.63 TI:100~3200 Fig.3 T1 corrected SI T2値測定 Fig.4 T1 T1 value=999.8 撮像条件 SpinEcho FOV:12cm Slice :5.0mm TR:2500ms TE:20~120ms matrix:256×256 NEX:1.0 BW:15.63 円形ではないため性能評価方法に苦難したが、現在において基準とされて いるNEMAの評価方法を利用し、検証する。その際に測定方法を細かく区 分けし矩形におけるSNRや均一性測定よりコイルの評価をおこなう。 均一性の評価には、グレースケールマップの作成もし、矩形や異形での評 価を簡易化できるか検討をおこなう。 T2 value=124.98 Fig.5 Fig.6 1 2014/11/21 結果 結果 均一性測定 スパン(⊿)=(Smax-Smin)/2 中央値(𝑆)=(Smax+Smin)/2 不均一度(N)=100×⊿/𝑆=100×(Smax-Smin)/(Smax+Smin) 差分法によるSNR測定 SNR=Mean/(Std.Dev/√2) Sag1 Sag2 Sag3 Table1 Scan Slice SNR Trs1 90.558 Trs2 110.643 Trs2 Trs3 124.694 Trs3 Sag1 Sag2 均一度(U)=100-N Trs1 Scan Slice 99.793 77.116 Sag3 90.474 Cor 78.293 Fig.7 Cor Fig.8 Sag1 Sag2 Sag3 Table2 original phantom uniformity N ⊿ 𝑺 U Trs1 Trs2 Trs1 45514.906 45991.344 98.964 1.036 Trs2 30957.094 46550.969 66.502 33.498 Trs3 35290.407 76105.219 46.371 53.629 Sag1 48918.031 49523.031 98.778 1.22 Sag2 35781.969 36182.781 98.89 1.108 Sag3 45881.688 46252.25 99.199 0.801 Cor 49568.407 50059.969 49.509 50.491 結果 Trs3 Fig.9 Cor Fig.10 結果 均一性測定における均一性の値が小さいことについて 感度領域の狭さとコイル形状にあると考えている。 信号値が小さくとも目視できる限りは、ROIを設定する必要がある とおもう。 ⇒では、グレースケールでの表示はどうか? ⇒では、グレースケールでの表示はどうか? 非常に良く、均一性が目視できるとおもう。 また、計測の必要性がないため方法が容易である。 円筒形、球形以外の場合の均一性評価はグレースケールマップが最適か? Table 3 Scan Slice U Trs1 1.036 Trs2 33.498 Trs3 53.629 Sag1 1.22 Sag2 1.108 Sag3 0.801 Cor 50.491 Fig.11 Sag2 Fig.15 Trs1 Fig.12 Trs1 ROI内に明らかに信号の低い場所が入ってきている これでは本当の均一性の評価はできないと思う。 Fig.13 Cor Fig.14 Sag2 グレースケールマップで 均一性の評価をしてもよいのか? グレースケールマップでの評価 考察1 グレースケールマップとは、画像中心にROIを設定し、平均値を測定する。平均値か らの信号差により5段階のスケールに割り振り、グレースケールマップを作成する。 ファントム作成と性能評価について ファントム作成 逆凸型でのファントム作成は、一見簡単に見えるが意外と難しかっ た。その形状より型の作成も時間を要した。液体ファントムが容器の 関係上作成できないために、今後は性能評価等を行う際はファントム の作成をしていきたいと思う。 性能評価 円筒形ではないため、NEMAの方法が使用できるかという問題が あった。検証の結果、SNR測定では使用できると考える。しかし、均 一性の評価になると、感度領域の狭さが測定の正確さを妨げることが わかった。よって、均一性の評価はグレースケールでの評価が適して いるとおもう。それはファントムの形状やコイルの感度領域の問題が あげられるからである。 5段階のスケール ①-20%以下 ②-20%~-10% ③-10%~+10% ④+10%~+20% ⑤+20%以上 グレースケールマップでの評価について 信号が不均一となる領域を視覚的に評価できる利点がある反面、どの程度よいのかを 数値的に評価することができない。 そこで、IECではグレースケールマップにヒストグラム評価を追加する。これにより 数値的な情報をえることができる。1) ⇒条件を満たせば均一性の評価を グレースケールマップで行ってもよいっていうこと ※今回の検証は感度領域を知るための検証であるために、数値的な評価はなくてもよいと判断した。 2 2014/11/21 方法2 結果 棒状ファントム T1値測定 棒状ファントムでの性能評価 棒状ファントムの場合、汎用のためにコイル形状に合っていないため、コ イル中心の測定や評価のみになってしまうと考える。 手関節専用コイルは手関節形状よりくびれ部分が一番感度よく作られてい るために棒状ファントムでも対応は可能との認識もできる。 メーカー作成のために長期にわたり同一ファントムでの測定が可能である ため再現性がよい。 四角形の棒状ファントムである。こちらもNEMAを基準として測定、自作 ファントムと同様に評価し、評価を行う際に使用ができるか検討を行う。 均一性の評価には、グレースケールマップの作成をし、矩形での評価を簡 易化できるか検討をおこなう。 撮像条件 SpinEcho FOV:12cm Slice :5.0mm TR:2500ms TE:15ms 室温22±2℃ matrix:256×256 NEX:1.0 BW:31.25 TI:50~1500 T1 value=100.4 Fig.19 Fig.18 撮像条件 SpinEcho FOV:12cm Slice :5.0mm TR:2500ms TE:20~200ms 室温22±2℃ matrix:256×256 NEX:1.0 BW:15.63 T2値測定 棒状ファントム 成分 CuSo4.5H20 T2 value=93.99 Fig.16 Fig.17 Fig.20 Fig.21 結果 差分法によるSNR測定 SNR=Mean/(Std.Dev/√2) 結果 均一性測定 スパン(⊿)=(Smax-Smin)/2 中央値(𝑆)=(Smax+Smin)/2 不均一度(N)=100×⊿/𝑆=100×(Smax-Smin)/(Smax+Smin) Sag 均一度(U)=100-N Table5 Table4 Scan Slice SNR Trs Sag3 Scan Slice ⊿ 𝑺 N U Trs 307.35 Sag 174.494 Trs 115.438 265.813 43.428 56.572 Cor 269.188 Sag 114.375 141.063 81.081 18.919 Cor 124.938 141.25 88.452 11.548 Cor Fig.22 Fig.23 コイル中心の測定のために、コイル形状に沿ったファントムよりもSNRがよく なったと考える。Trsに関してはオリジナルファントムと同様に3sliceにて検討 したが、コイルの85%領域と満たしていないために検討は行わなかった。 Trs3 均一性測定における均一性の値が小さいことについて 感度領域の狭さとコイル形状にあると考えている。 信号値が小さくとも目視できる限りは、ROIを設定する必 要があるとおもう。 つまりは感度領域が極端に狭いということである。 Fig.24 Cor ⇒では、グレースケールでの表示はどうか? 結果 Fig.25 考察2 ⇒では、グレースケールでの表示はどうか? コイル中心の測定ということであれば問題はないと思う。 しかし、今回のような感度領域の設定や均一性を評価するという ことであるとCorやSagに範囲不足が生じ、このファントムでは、コ イル内部のすべてが評価ができない。 ファントムについて 中心部分の測定であれば棒状ファントムでの測定は可能であるが、棒 状ファントムでは測定できない領域があるため、専用ファントムでの 性能評価を行う必要があると考える。 Best Fit!! ※信号を取得でき、なおかつ良好な感度がある限り、すべてを評価する必要性があると考える。 Best Fit? Fig.31 Fig.29 自作ファントム Fig.26 Cor Fig.27 Sag2 Fig.28 Trs1 Fig.30 棒状ファントム Fig.32 Fig.33 3 2014/11/21 方法3 結果と考察 他部位への応用 他部位への応用 手関節専用コイルではあるが、性能評価を通し、他部位への使用方法を検 討する。ファントムの感度領域の狭さや形状より手指や足趾を考える。 性能評価の結果、感度領域が狭いのは確かであるが、中心から近位側でも 撮像が可能ということがわかったため、中心に撮像物がなくとも撮像がで きる。 コイル形状により、撮像が限られてくると考える。 グレースケールマップの結果より、コイル両側面の信号取得域が中心より あきらかに強いため、感度ムラを起こす可能性がある。 以上のことをふまえ、本研究の同意を得られた 健常ボランティアの撮像をおこなった。 今後の課題 MRIにおいて円筒形、球形ファントム以外の形状ファントムにおけ る性能評価の方法と検証 他コイルとの比較検討 空間分解能の評価 SNRや均一性測定においてNEMA法を用いた際に 75%以上のROIがあればよいという考え方がある。 円筒形で、コイル中心で計測を前提にしたもので あるので感度が悪いということはなしで考えている ため仕方がないのだが・・・ または、感度領域を知ったことにより、ファントム 形状を感度のないところは省くといったことをやった 方がよいのか検証を行いたいと思う。 Fig.37 約85% Fig.38 約78% 手関節専用コイルではあるが、性能評価を通し、他部位への使用方法を検 討する。形状より手指や足趾を考える。 足趾に関しては、コイル形状により、足趾が挿入できなかったため検証を 行わなかった。 Fig.34 Trs Fig.35 Fig.36 今回の検証では感度ムラが示指と小指に発生してしまった。また、コイル 形状により、示指~小指への撮像しかできず、制限があると感じた。 まとめ 自作ファントムに関しては、測定が簡易的にできるかどうかを考え なければよくできたと思う。 円筒形、球形以外のファントムの性能評価の仕方に関してはさらな る検討が必要と考える。 メーカーがいう、棒状ファントムでの性能評価は、あくまでもコイ ル中心で性能評価が行えるということであり、今回のような感度領 域の評価には向かないため、やはり専用形状のファントムが必要と 考えた。 応用としての使用であるが、工夫があれば足指への対応もできそう である。しかし、そのままの使用であると示指、中指、環視、小指 の指先での使用が現実的であると思う。 研究や検証を進めていくうちに多くの課題が残ったことに対して研 究をまとめられなかったことが残念である。しかし、さらなる研究 課題として今後も研究を進めていきたいと思う。 さまざまな課題が見つかった検証であるが、1つ1つ解決をしていき、よりよい検査に つなげていきたいと思う。 謝辞 参考文献等 発表に際し、 群馬県立県民健康科学大学 診療放射線学部 林則夫先生にも大変お世話になりました。 この場をお借りしてお礼を申し上げます。 1)放射線技術学スキルUPシリーズ 標準MRIの評価と解析 発行所 株式会社オーム社 監修者 日本放射線技術学会 2)群馬県立県民健康科学大学 平成26年度第1回 MRI講習会 講習テキスト 3)群馬県立県民健康科学大学 平成26年度第1回 MRI講習会 測定結果解析、変換ソフト 4)考えるMRI撮像技術 専門技術者を目指す技師のための一歩進んだ 診療技術 出版社 文光堂 5)放射線技術学シリーズ MR撮像技術学 発行所 株式会社オーム社 監修者 日本放射線技術学会 4
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