脂肪抑制3D-T1TFEシーケンスにおけるhalf factorがmotion artifactに

脂肪抑制3D-T1TFEシーケンスにおける
motion artifact特性の基礎的検討
埼玉県済生会川口総合病院
○丸 武史 浜野 洋平 棹山 孔太郎 富田 博信
目的
脂肪抑制3D-T1TFEシーケンス(e-THRIVE) は2
方向のhalf fourierを用いるが,factorを変化させ
ることでmotion artifactが視覚的に変化している.
動体ファントムを使用し,half fourier factor
(位相方向:Ky,スライス方向:Kz)の変化による
motion artifactの特性について基礎的な検討を
行ったので報告する.
使用機器・撮像条件
• PHILIPS社製 Ingenia 1.5T omega HP
• ds head coil (15ch)
• 自作の動体ファントム
日本メディコ社製 MRI対応人工呼吸器 paraPAC 2D J VENTILATER
Gd希釈溶液と水を用いた自作ファントム
装置付属の品質管理ファントム
固定撮像条件
FOV(mm) : 250
matrix : 256×256
RFOV(%) : 100
Scan percentage(%) : 100
Slices : 40
Slisce thickness(mm) : 5.0(-2.5)
Slice orientation : transverse
Fold-over direction : AP
TR/TE(ms) : 4.4/2.1
FA(°) : 10
Innner loop : Z
Profile order : linear
WFS(pixels) : 0.4 (0.4/542.5)
Fat sup : SPAIR
実験方法
装置付属の品質
管理ファントム
人工呼吸器
静止画像
motion画像
動体ファントムを,静止した状態と呼吸をシミュレー
ション(呼吸間隔4秒(15回/分))した場合とでKy/kz を
1.0/1.0,1.0/0.8,0.8/1.0,0.625/1.0,0.8/0.8,0.625/0.8
と変化させ撮像を行い静止画像とmotion画像を得た.
検討項目① SD上昇率の測定
静止画像とmotion画像のファントム内にROI
(ファントム径の80%の面積)を設置し,SDを測
定した.また以下の計算式より,静止画像に対
するmotion画像のSDの上昇率を求め比較を
行った.
SD上昇率 =
motion画像のSD - 静止画像のSD
静止画像のSD
×100(%)
結果(1) SD上昇率
(%) 35
30
25
20
15
10
5
0
Ky/Kz
1.0/1.0
1.0/0.8
0.8/1.0 0.625/1.0 0.8/0.8 0.625/0.8
factorを用いるとSD上昇率が増加した.また,Ky=0.625のとき
最大となり,Kz factorに比べky factorの方がSD上昇率が大き
くなった.
検討項目② 視覚評価
Ky/Kz
1.0/1.0
1.0/0.8
0.8/1.0
0.625/1.0
0.8/0.8
0.625/0.8
ファントム内のmotion artifact
が目立たない順に順位づけ
検討項目①で得られたmotion画像に対し,MRI検査に
従事し3年以上の経験をもつ技師7名による視覚評価を
行った.視覚評価は順位尺度による正規化順位法を用
い,有意差検定を行った.
結果(2) 視覚評価
F
-1
D
E
C
-0.5
0
0.80
BA
0.5
0.91
0.83
0.55
1
試料 Ky/Kz
A:1.0/1.0
B:1.0/0.8
C:0.8/1.0
D:0.625/1.0
E:0.8/0.8
F:0.625/0.8
l.s.d(5%)=0.47
kz factorを変更しても有意差は認められなかった.ky
factorを変更するとそれぞれの試料に有意差が認め
られた.
結果 motion画像
Ky/Kz=1.0/0.8
0.625/0.8
motionによるゴーストアートファクトの間隔に変化
はないが,信号強度に差が生じている.
検討項目③ゴースト信号比、ゴースト雑音比の測定
Gd希釈溶液を満た
した耐圧チューブ
ゴースト領域の信号平均:Ig
ファントム領域の信号平均:S
ゴースト信号比=Ig/S
ゴースト雑音比=Ig/In
水
雑音の標準偏差:In
上記のファントムによるmotion画像を取得し,ゴース
ト信号比・ゴースト雑音比を求め比較を行った.なお,
撮像条件は先の実験方法と同様とした.
結果(3) ゴースト信号比、ゴースト雑音比
ゴースト信号比
1
ゴースト雑音比
140
0.9
120
0.8
100
0.7
0.6
80
0.5
60
0.4
0.3
40
0.2
20
0.1
0
0
1.0/1.0
1.0/0.8
0.8/1.0 0.625/1.0 0.8/0.8 0.625/0.8
1.0/1.0
1.0/0.8
0.8/1.0 0.625/1.0 0.8/0.8 0.625/0.8
ky:/kz
ky factorを用いると,ゴースト信号比およびゴースト雑音
比が増加した.artifactの信号が強いことが示された.
ky:/kz
考察(1) ky factorについて
• SD上昇率の増加,ゴースト信号比・ゴースト雑音比の増加
を認め,motion artifactが目立つ結果となった.
⇒k空間におけるエルミート対称によって,不均一性や不正
確性による誤差が相殺されず,誤差が増幅したためと考えら
れる
• ky factor=0.625のときSD上昇率は最大となり,視覚評価に
おいて有意にmotion artifactが増加した.
⇒factorを下げるとエルミート対称に頼る比率が高くなるため,
より誤差の増幅を招き,motion artifactが目立ったと考える.
考察(2) kz factorについて
• kz factorの変化による影響が少なかった
⇒スライス方向のfourier factorのために、XY平面
を構成するk空間への影響が少ないため
kz factorよりもky factorの方がmotion artifactを増
加させてしまうことが示唆された.
結語
• half fourier factorの変化によるmotion artifact
特性について理解できた.また,kz factorより
もky factorの方がmotionの影響が強いことが
示された.
• 今回のmotion artifactの評価はスライス方向
のmotionを含んでいないため,今後検討の
必要がある.