第 49 回日本理学療法学術大会 (横浜) 6 月 1 日(日)9 : 30∼10 : 20 ポスター会場(展示ホール A・B)【ポスター 神経!脳損傷理学療法 18】 1403 急性期脳血管障害症例に対する Short Form Berg Balance Scale を用いた退院 先の予測 岡 真一郎1),江頭 上田 智子5),中原 琢磨2),平田 公宏6) 大勝3),鶴貝 亮太3),中尾 佳隆3),下田 武良1),国徳 裕美4), 1) 国際医療福祉大学福岡保健医療学部理学療法学科,2)デイサービスセンターさざんか園, 高木病院リハビリテーション部,4)やながわ訪問看護ステーション, 5) みずま高邦会病院デイケアセンター,6)高木病院 脳神経外科,脳卒中科 3) key words Short Form Berg Balance Scale・脳血管障害・早期退院 【目的】近年,急性期病院では在院日数が短縮傾向にあるため,発症早期から退院先を予測することは,在宅復帰後および転院 後に必要なリハビリテーションサービスを検討する上で重要である。脳梗塞症例の在宅復帰の予測について,発症後 2 週時の Berg Balance Scale(BBS)は,カットオフ値が 40 点と報告されている(久保田ら,2010)。一方で,BBS は,測定項目が多く 時間がかかり疲労や体調の影響を受けることが指摘されている。Chou ら(2006)は,脳血管障害症例を対象に BBS を 7 項目 3 段階評価に簡略化した Short Form BBS(SFBBS)を提案している(2006)。SFBBS は,簡易的かつ短時間で評価が可能である が在宅復帰の予測についての報告は少ない。本研究の目的は,SFBBS による在宅復帰の予測について検討することとした。 【方法】対象は当院に入院した脳血管障害症例 55 名(脳梗塞(Cerebral Infarction : CI)37 名,脳出血(Cerebral Hemorrhage : CH)18 名)であった。調査項目は,年齢,在院日数,退院先(在宅復帰:H 群,転院:T 群)とした。評価項目は,発症後 2 週時および退院時の NIHSS,SIAS,BBS および FIM とした。SFBBS は BBS の下位項目 7 つで構成され 28 点満点である。 SFBBS の下位項目は,BBS の立ち上がり,Functional Reach Test,閉眼閉脚立位,床からものを拾う,左右の振り向き,継ぎ 足立位,片脚立位であった。SFBBS の各項目の得点は,BBS の 5 段階評価のうち 1 点から 3 点を 2 点とし,0 点,2 点,4 点の 3 段階評価とした。統計学的分析は,H 群と T 群の基本特性,在院日数の比較には対応のない t 検定,退院先の比較には χ2 検定 を用いた。また,2 週時における CI と CH の比較には対応のない t 検定を用いた。CI,CH における退院先の予測については, 従属変数を退院先,独立変数を 2 週時 BBS および 2 週時 SFBBS としてロジスティック回帰分析による在宅復帰の予測モデル を作成し,ROC 曲線から在宅復帰のカットオフ値を算出した。 【倫理的配慮,説明と同意】本研究は高木病院の倫理委員会の承認(承認番号 77! 2)を得た後に実施した。 【結果】 在院日数は CI27.2±13.6 日,CH38.6±15.4 日と CI が有意に短く,在宅復帰率は CI83.8%,CH38.8% と CI が有意に高かっ た(それぞれ p<0.01) 。2 週時の各評価は,H 群では有意差がなかったが,T 群では NIHSS では CI5.5±3.5 点,CH12.2±8.2 点と CH が有意に高く,SIAS は CI58.8±11.2 点,CH33.3±25.9 点,FIM は CI87.8±15.6 点,CH52.8±37.5 点とい ず れ も CH が有意に低かった(それぞれ p<0.05) 。ロジスティック回帰分析の結果,在宅退院の予測モデルのオッズ比は,2 週時 BBS の CI では 1.07(95% 信頼区間 1.01! 1.13) ,CH では 1.13(95% 信頼区間 1.03! 1.25) ,2 週時 SFBBS が CI では 1.12(95% 信頼区間 1.01! 1.23) ,CH1.23(95% 信頼区間 1.04! 1.49)であった(それぞれ p<0.01)。ROC 曲線を用いた在宅復帰のカットオフ値は,2 週時 BBS が CI では 45 点(感度 74.2%,特異度 83.3%) ,CH では 26 点(感度 71.0%,特異度 83.3%)であり,2 週時 SFBBS が CI では 21 点(感度 100.0%,特異度 81.8%) ,CH では 7 点(感度 100.0%,特異度 81.8%)であった。 【考察】 CH は,CI に対して入院期間が長く,自宅復帰率が低く,T 群における CH は CI と比較して重症で機能障害が重度であっ た。CH 後の脳浮腫は,発症 1 週から 2 週後が極期となり,正常構造の変形,頭蓋内圧亢進が生じるため,発症後 2 週では,脳 浮腫による機能障害が影響していたと考えられる。CI での在宅復帰のカットオフ値は,BBS が 45 点,SFBBS が 21 点であり, 転倒リスクのカットオフ値である BBS45 点,SFBBS23 点と近似していたことから,急性期病院からの在宅復帰には早期から高 いバランス能力が必要である。CH での BBS が 26 点,SFBBS が 7 点であった。基本動作レベルは立ち上がり,立位が取れる程 度であり,入院時の転倒インシデントのカットオフ値について,BBS29 点との報告もある(Maeda et al.2009) 。CH では脳浮腫 減少後の機能改善が見込めることから,転倒に対する予防策および在宅復帰を見据えたリハビリテーションプログラムを立案, 実施する必要がある。 【理学療法学研究としての意義】 急性期脳血管障害症例において,簡便かつ客観的な指標である SFBBS で退院先が予測できるこ とは,発症早期から退院先を見据えたリハビリテーションプログラム立案する上で重要である。
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