欧州連合(EU) 819 欧州連合(EU) European Union 通 Ⅰ 機関概要 1 設立目的 信 欧 州 域 内 の 経 済 的 統 合 を 目 指 し て 発 展 し て き た 欧 州 共 同 体 ( European Community: EC) を 基 礎 に 、 1993 年 11 月 、 「 マ ー ス ト リ ヒ ト 条 約 」 に 従 っ て 創 立された。超国家性を有する「欧州共同体・欧州原子力共同体」、政府間協力によ る「共通外交及び安全保障政策」「警察及び刑事事項における司法協力」という三 つ の 柱 の も と 、活 動 を 行 っ て き た が 、2009 年 12 月 1 日 の リ ス ボ ン 条 約 発 効 と と も に一本化された。 2 加盟国 2013 年 現 在 、 EU の 加 盟 国 は 28 か 国 で あ る 。 1951 年 調 印 の パ リ 条 約 に よ っ て 欧 州 石 炭 鉄 鋼 共 同 体( ECSC)が 創 設 、更 に 1957 年 の ロ ー マ 条 約 に よ っ て 欧 州 経 済 共 同 体( EEC)と 欧 州 原 子 力 共 同 体( EURATOM) が 設 立 さ れ て 以 来 、 EU( EC) は 6 度 に わ た っ て 拡 大 し て き た 。 ECSC、EEC、EURATOM を 設 立 し た 6 か 国( ベ ル ギ ー 、フ ラ ン ス 、ド イ ツ 、イ タ リ ア 、 ル ク セ ン ブ ル ク 、 オ ラ ン ダ ) は 「 原 加 盟 国 」 と 呼 ば れ る 。 ま た 1995 年 の 第 4 次 拡 大 ま で の 加 盟 国 を 「 EU15 か 国 」 、 2004 年 以 降 の 加 盟 国 を 「 新 規 加 盟 国 」 と呼ぶことがある。トルコ、マケドニア、クロアチア、アイスランド、モンテネグ ロ、セルビアが欧州理事会(Ⅱ-3(1)参照)によって加盟候補国として承認さ れ て お り 、ト ル コ 、ク ロ ア チ ア 、ア イ ス ラ ン ド は 、2005 年 か ら 交 渉 を 開 始 し て い る 。 ク ロ ア チ ア は 2013 年 7 月 1 日 に 正 式 に EU に 加 盟 し た 。 EU 拡 大 の 歴 史 原加盟国 第 1 次拡 第2次 第3次 第4次 第5次 第 6次 第7次 1981 年 1986 年 1995 年 2004 年 2007 年 2013 年 大 ( 1951 1973 年 年) EU15 か 国 ドイツ ベルギー 英国 アイルラ 新規加盟国 ギリシ スペイ オースト ャ ン リア ポルト フィンラ チェコ エスト ブルガ クロア リア チア ルーマ 820 欧州連合(EU) ンド フランス ガル ンド ニア デンマ スウェー キプロ ーク デン ス イタリア ニア ラトビ ア オランダ EU 加 盟 候 補 国 リトア トルコ ニア ルクセンブ マケドニア ハンガ ルク アイスランド リー モンテネグロ マルタ セルビア ポーラ ンド スロベ ニア スロバ キア 出所:各種資料より作成 Ⅱ EU の 組 織 1 3 本の柱構造の解消・統合 2009 年 12 月 の リ ス ボ ン 条 約 発 効 に よ り 、 ① 欧 州 共 同 体 と 欧 州 原 子 力 共 同 体 ( European Community: EC/ European Atomic Community: Euratom) 、 ② 共 通 外 交 及 び 安 全 保 障 政 策 ( Common Foreign and Security Policy : CFSP) 、 ③ 司 法・内 務 分 野 に お け る 協 力( Police and Judicial Cooperation in Criminal matters: PJCC) の 「 3 本 の 柱 」 は 廃 止 さ れ る こ と に な っ た 。 同 条 約 に よ り 、 EU は 法 制 定 が 可 能 な EC の 地 位 を 継 承 し 独 立 の 法 人 格 を 持 つ こ と に な っ た 。 こ の た め 、 法 の 中 で 使 用 さ れ て き た 「 共 同 体 ( Community) 」 と い う 言 葉 は す べ て 「 連 合 ( Union) 」 に 置 き 換 え ら れ 、 EU の 名 の も と で 国 際 条 約 に 調 印 で き る よ う に な っ た 。 2 EU の 立 法 過 程 ( 1 ) EU 法 の 種 類 EU 法 は 第 一 次 法 と 第 二 次 法 に 分 類 さ れ る 。 第 一 次 法 は EU を 基 礎 付 け る 条 約 、 第 二 次 法 は 、 条 約 に 法 的 根 拠 を も ち 、 そ こ か ら 派 生 す る 法 で あ る 。 EU 法 あ る い は 派 生 法 と 呼 ば れ る 。 第 二 次 法 ( 以 下 、 EU 法 ) は 適 用 範 囲 と 法 的 拘 束 力 の 強 弱 に よ っ て 、① 規 則( Regulation)、② 指 令( Directive)、③ 決 定( Decision)、④ 勧 告 ・ 意 見 ( Recommendation/Opinion) の 4 種 類 が 存 在 す る 。 欧州連合(EU) 821 EU 法 の 種 類 す べ て の 加 盟 国 を 拘 束 し 、直 接 適 用 性( 採 択 さ れ る と 加 盟 国 内 ①規則 の 批 准 手 続 を 経 ず に 、そ の ま ま 国 内 法 体 系 の 一 部 と な る )を 有 ( Regulation) する。 指 令 の 中 で 命 じ ら れ た 結 果 に つ い て の み 、加 盟 国 を 拘 束 し 、そ れ を 達 成 す る た め の 手 段 と 方 法 は 加 盟 国 に 任 さ れ る 。指 令 の 国 ② 指 令 ( Directive) 内 法 制 化 は 、既 存 の 法 律 が な い 場 合 に は 、新 た に 国 内 法 を 制 定 、 (「命令 」と 呼称さ 追 加 、修 正 す る こ と で な さ れ る 。一 方 、加 盟 国 の 法 の 範 囲 内 で 、 れるときもある) 指 令 内 容 を 達 成 で き る 場 合 に は 、措 置 を 執 る 必 要 は な い 。加 盟 国 の 既 存 の 法 体 系 に 適 合 し た 法 制 定 が 可 能 に な る 反 面 、規 則 に 比べて履行確保が複雑・困難になる。 特 定 の 加 盟 国 、企 業 、個 人 に 対 象 を 限 定 し 、限 定 さ れ た 対 象 に ③ 決 定 ( Decision) 対 し て は 直 接 に 効 力 を 有 す る 。一 般 的 法 規 と い う よ り は 、個 別 的かつ具体的内容を有する。 ④勧告・意見 EU 理 事 会 及 び 欧 州 議 会 が 行 う 見 解 表 明 で 、 通 常 は 欧 州 委 員 会 ( Recommendation が 原 案 を 提 案 す る も の で 、① ~ ③ と は 異 な り 法 的 拘 束 力 を 持 た /Opinion) ない。 出所:各種資料より作成 ( 2 ) EU 法 の 立 法 過 程 に お け る 決 定 手 続 EU 法 の 立 法 過 程 に お け る 決 定 手 続 に は 、 欧 州 議 会 の 関 与 の 程 度 に 応 じ て 、 ① 諮 問 の な い 立 法 手 続 、② 諮 問 手 続 、③ 協 力 手 続 、④ 通 常 決 定 手 続 の 4 分 類 が 存 在 す る 。 リスボン条約は通常決定手続が適用される範囲を拡大した。 ①諮問のない立 欧 州 委 員 会 の 提 案 後 、欧 州 議 会 の 諮 問 を 経 ず に 委 員 会 又 は EU 理 法手続 事会が決定する。 ②諮問手続 欧 州 委 員 会 の 提 案 後 、 欧 州 議 会 等 の 諮 問 を 経 て 、 EU 理 事 会 が 決 定する。諮問の意見には拘束力はない。 ③協力手続 単一欧州議定書によって導入された手続。欧州議会に対して、2 ( cooperation 度 の 諮 問 が 行 わ れ 、 欧 州 議 会 の 意 見 を 取 り 入 れ な い 場 合 は 、 EU procedure) 理事会は全会一致でなければ法案を採択することができない。 ④通常立法手続 マーストリヒト条約によって導入され、以前は「共同決定手続」 ( ordinary と 呼 ば れ て い た 。リ ス ボ ン 条 約 に よ り 名 称 が 変 わ っ た 。欧 州 議 会 legislative の賛成なしに法案が採択されないのが特徴(次図参照)。 822 欧州連合(EU) procedure) 出所:各種資料より作成 通常立法手続は以下のような過程をとる(下図も参照)。欧州委員会が欧州議会 と EU 理 事 会 に 提 案 を 提 出 す る 。 そ の 後 、 欧 州 議 会 で 第 一 読 会 が 開 か れ る 。 欧 州 議 会 の 意 見 を 受 け 、EU 理 事 会 は 欧 州 議 会 の 意 見 を 承 認 す る か 、し な い か を 決 定 す る 。 承 認 し な い 場 合 は 、 EU 理 事 会 は 「 共 通 の 立 場 」 を 採 択 し 、 そ れ を 欧 州 議 会 に 伝 え る。欧州議会では第二読会が開かれ、そこで承認、否決、修正が行われる。修正の 場 合 は 再 度 EU 理 事 会 に 伝 え ら れ 、 そ こ で 承 認 な い し は 否 決 が 行 わ れ る 。 否 決 さ れ た 場 合 に は 、 欧 州 議 会 と EU 理 事 会 か ら な る 調 停 委 員 会 が 開 催 さ れ 、 そ こ で 共 同 案 が出される。この共同案を、両者が承認すれば採択、否決すれば不採択に終わる。 通 常 決 定 手 続 に お い て は 、欧 州 議 会 と EU 理 事 会 は 、少 な く と も 1 回 は 提 案( 法 案 ) の審議に加わることができる。 共同決定手続 欧州委員会 提案 提案 EU 理 事 会 欧州議会 ・承認 修正等 →法案採択 第一読会 意見を受ける 第二読会 「共通の立場」の採択 ・承認 ・否認 →法案採択 →不採択 ・承 認 せ ず 意見を受ける ・修 正 ・承認 →法案採択 ・承 認 せ ず 調停委員会 ・欧州議会 ・ EU 理 事 会 共同案 ・承認 ・否認 →法案採択 →不採択 出所:各種資料より作成 3 EU の 主 要 機 関 欧州連合(EU) 823 EU に は 様 々 な 機 関 が 存 在 し て い る が 、 通 信 分 野 に お い て は 、 欧 州 理 事 会 、 欧 州 連 合 理 事 会 、欧 州 議 会 、欧 州 委 員 会 、司 法 裁 判 所 が 主 な も の と し て 位 置 付 け ら れ る 。 ( 1 ) 欧 州 理 事 会 ( European Council) * 「 EU サ ミ ッ ト 」又 は「 EU 首 脳 会 議 」と 呼 称 さ れ る こ と も あ る 。欧 州 連 合 の 全 体 的な政治指針と優先課題を決定する。これまで条約上の規定がなかったが、リスボ ン 条 約 に よ っ て 正 式 な 機 関 と し て 位 置 付 け ら れ 、 欧 州 理 事 会 議 長 ( い わ ゆ る 「 EU 大 統 領 」 ) と EU 外 務 ・ 安 全 保 障 政 策 上 級 代 表 ( 同 「 EU 外 相 」 ) が 新 設 さ れ た 。 メンバーは加盟国の元首・首脳と欧州委員会委員長、欧州理事会議長で構成され、 外務・安全保障政策上級代表も任務遂行に参加する。加盟国の元首・首脳は議題に 応じて各国閣僚の補佐を受けることができる(欧州委員会委員長の場合は同委員会 委員による補佐)。 会 合 は 最 低 年 2 回 、 原 則 4 回 開 催 さ れ る 。 更 に 、 2000 年 の リ ス ボ ン 欧 州 理 事 会 以降は、経済、雇用、結合政策の議論のために前述のものとは別個の欧州理事会が 毎年開催されている。また、国際問題に関しても共通外交・安全保障政策の共通戦 略 を 決 定 す る 。 理 事 会 開 催 後 、 そ の 結 果 は 議 長 総 括 ( presidency conclusions) と し て 発 表 さ れ る 。 こ れ は 、 そ の 時 期 に お い て EU が 抱 え る 問 題 、 今 後 EU が 取 り 組 むべき課題などに関して、欧州理事会の意見を集約したものである。 * 欧 州 理 事 会( European Council)は 、フ ラ ン ス・ス ト ラ ス ブ ー ル に あ る 欧 州 評 議 会( 審 議 会 ) ( Council of Europe )と 混 同 さ れ る こ と が あ る 。欧 州 評 議 会 は 、人 権 保 護 を 主 な 目 的 と す る EU 外の機関である。 ( 2 ) 欧 州 連 合 理 事 会 ( Council of the European Union) ①概要 EU の 主 た る 決 定 機 関 で あ る 。「 閣 僚 理 事 会 」又 は「 EU 理 事 会 」と 呼 称 さ れ る こ と も あ る ( 本 節 で は 呼 称 と し て 「 EU 理 事 会 」 を 用 い る ) 。 本 部 は ブ リ ュ ッ セ ル に 置かれ、特定の会議はルクセンブルクで開かれる。議長国は半年交代の輪番制で、 2012 年 前 半 は デ ン マ ー ク 、後 半 は キ プ ロ ス で あ る 。欧 州 議 会 と 立 法 機 能 及 び 予 算 権 限を共有し、共通外交及び安全保障政策と経済政策調整で中核的な役割を担う。 ②構成 加盟国の分野別閣僚(担当大臣)によって構成される。分野は 9 分野(一般事項 及 び 対 外 関 係 、経 済 財 政 事 項 、司 法 内 務 分 野 に お け る 協 力 、雇 用・社 会 政 策・健 康 ・ 消 費 者 事 項 、競 争 、運 輸・電 気 通 信・エ ネ ル ギ ー 、農 業・漁 業 、環 境 、教 育・若 者 ・ 文 化 ) あ り 、 そ れ ぞ れ の 理 事 会 を 総 称 し て EU 理 事 会 と 呼 ぶ 。 ③意思決定 EU 理 事 会 に お け る 意 思 決 定 の 方 法 に は 、全 会 一 致 、単 純 多 数 決 、特 定 多 数 決( a qualified majority vote ) が あ る 。 全会一致は、基本条約の改正や新しい共通政策の導入、新規加盟国の承認等、重 824 欧州連合(EU) 要 事 項 の 表 決 に 用 い ら れ る 。 欧 州 委 員 会 提 案 ( proposal) の 採 択 に は 、 原 則 と し て 特 定 多 数 決 が 用 い ら れ る 。リ ス ボ ン 条 約 で は 特 定 多 数 決 に 必 要 な 票 数 が 変 更 さ れ た 。 加盟国に割り当てられる加重投票数は、各国の人口を大まかに反映している。 加 盟 国 の 加 重 投 票 数 ( 合 計 345 票 ) 29 票 ドイツ、フランス、イタリア、英国 27 票 スペイン、ポーランド 14 票 ルーマニア 13 票 オランダ 12 票 ベルギー、チェコ、ギリシャ、ハンガリー、ポルトガル 10 票 オーストリア、スウェーデン、ブルガリア 7票 クロアチア、デンマーク、アイルランド、リトアニア、スロバキア、 フィンランド 4票 キプロス、エストニア、ラトビア、ルクセンブルク、スロベニア 3票 マルタ 出 所 : The Council of the European ( 3 ) 欧 州 議 会 ( European Parliament) EU 理 事 会 と 並 ぶ 、 EU の 主 た る 決 定 機 関 で あ る 。 議 員 の 任 期 は 5 年 ( 現 任 期 は 2009 年 7 月 ~ 2014 年 6 月 )。1979 年 以 来 、直 接 普 通 選 挙 で 選 出 さ れ て い る 。選 挙 方式は、加盟国別に異なっている。議席配分は、各国を一つの選挙区とし、定員は 各 国 の 人 口 に 配 慮 し た も の に な っ て い る ( 加 盟 国 別 の 議 席 票 は 下 表 参 照 ) 。 2009 年 6 月 の 欧 州 議 会 選 挙 で 736 名 が 選 出 さ れ た が 、2009 年 12 月 1 日 の 欧 州 連 合 条 約 および欧州共同体設立条約を修正するリスボン条約(リスボン条約)発効により定 数 が 変 更 さ れ 18 名 が 追 加 さ れ た が 、欧 州 議 会 で 承 認 さ れ る ま で 18 名 は オ ブ ザ ー バ ー参加となっていた。 欧州議会は、本会議はストラスブール(フランス)、一部の本会議、委員会及び 事務局支部がブリュッセル、事務局本部はルクセンブルクに置かれている。本会議 は 、原 則 と し て 8 月 を 除 く 毎 月 1 回( 2 回 の と き も あ る )、年 間 12 回( 各 4 日 間 、 予 算 審 議 を 含 む )開 催 し て い る 。そ の 他 、追 加 的 な 本 会 議 が 年 6 回( 通 例 各 2 日 間 ) ブリュッセルで開催されている。原則公開となっている。 本 会 議 で は 、各 委 員 会 で 討 議 さ れ た 法 案 な ど に つ い て の 報 告 書 が 審 議 さ れ る ほ か 、 EU 内 部 の 事 項 、 国 際 情 勢 な ど も 討 議 さ れ 、 決 議 ・ 勧 告 な ど が 採 択 さ れ る 。 委 員 会 は、具体的な政策を討議し、欧州議会としての意思決定のため準備を行う。各欧州 議 員 は 少 な く と も 一 つ の 委 員 会 に 所 属 す る 必 要 が あ る 。 常 任 委 員 会 は 、 EU 対 内 的 欧州連合(EU) 825 なもの(予算、環境・公衆衛生及び食品の安全性、域内市場及び消費者保護など) が 17、 外 交 事 項 、 開 発 、 国 際 貿 易 と い っ た 対 外 的 な も の が 3、 計 20 存 在 す る 。 こ のほかに暫定委員会が組織されることもある。 欧州議会は、かつては諮問機関としての位置付けだったが、条約の改正を重ねる こ と で そ の 権 限 を 拡 大 し て き た 。 現 在 、 EU 市 民 の 民 意 が 反 映 さ れ る 場 と し て 、 ① 立法権(Ⅱ-2(1)の項参照)、②予算に関する権限、③欧州委員会に対する監 督 、④ EU 理 事 会 に 対 す る 監 視 、そ の 他 欧 州 市 民 か ら の 請 願 の 検 討 、EU 機 関 に よ る 行政過誤に対する苦情を処理するオンブズマンの任命などの権限も有する。 欧 州 議 会 の 議 席 配 分 ( 合 計 765 議 席 ) ( 2013 年 8 月 時 点 ) 90 議 席 ~ ド イ ツ ( 99) 70 議 席 ~ フ ラ ン ス ( 74) 、 イ タ リ ア ( 73) 、 英 国 ( 73) 40 議 席 ~ ス ペ イ ン ( 54) 、 ポ ー ラ ン ド ( 51) 30 議 席 ~ ル ー マ ニ ア ( 32) 20 議 席 ~ オ ラ ン ダ( 26)、ベ ル ギ ー( 22)、チ ェ コ( 22)、ギ リ シ ャ( 22)、 ハ ン ガ リ ー ( 22) 、 ポ ル ト ガ ル ( 22) 、 ス ウ ェ ー デ ン ( 20) ブ ル ガ リ ア ( 18) 、 オ ー ス ト リ ア ( 19) 、 フ ィ ン ラ ン ド ( 13) 、 10 議 席 ~ ス ロ バ キ ア ( 13) 、 デ ン マ ー ク ( 13) 、 ア イ ル ラ ン ド ( 12) 、 リ ト ア ニ ア ( 12) 、 ク ロ ア チ ア ( 12) 10 議 席 未 満 ラ ト ビ ア( 9)、ス ロ ベ ニ ア( 8)、キ プ ロ ス( 6)、エ ス ト ニ ア( 6)、 ル ク セ ン ブ ル ク ( 6) 、 マ ル タ ( 6) 出 所 : European Parliament ( 4 ) 欧 州 委 員 会 ( European Commission) Tel. / Fax URL 所在地 + 32 2 299 9399 + 32 2 299 9499 http://ec.europa.eu/index_en.htm Rue de la Loi 200 B-1049 Brussels, BELGIUM Jose Manuel Durao Barroso( 委 員 長 / President) 幹 部 Neelie Kroes( 副 委 員 長 ・ デ ジ タ ル ・ ア ジ ェ ン ダ 担 当 委 員 / Vice President) 任 期 2014 年 10 月 31 日 ( 2010 年 2 月 10 日 発 足 ) ①概要 EU の 執 行 ・ 政 策 決 定 機 関 と し て の 機 能 を 担 い 、 主 に 以 下 を 所 掌 す る 。 ( ア ) EU の 政 策 ・ 法 案 の 提 案 EU の 諸 機 構 に お い て 唯 一 、法 案 提 出 権 を 有 す る 。EU 法 の 立 法 は す べ て 欧 州 委 員 826 欧州連合(EU) 会の提案に基づいて開始される。ただし、その提案に際しては、以下の三つの要件 を満たさなければならないとされている。 ・ 欧 州 の 利 益 ( European Interest) 欧 州 委 員 会 は 、個 別 部 門 の 利 益 、個 別 加 盟 国 の 利 益 で な く 、EU、欧 州 市 民 全 体の利益にとって最善であるとの判断を反映すること。 ・ 事 前 協 議 ( Advance Consultation) 欧州委員会は、最終提案を提示するに当たり、加盟国政府、産業界、労働組 合、関係利益団体及び技術的専門家の意見や助言を事前に求めること。 ・ 補 充 性 の 原 則 ( Principle Subsidiarity) 「マーストリヒト条約」において採用された原則で、各加盟国に任せておく場合 よ り も 効 果 的 で あ る 場 合 に 限 り 、 EU 法 を 提 案 す る こ と 。 また、政府間協力の分野においては、欧州委員会は個々の加盟国と同様に提案を 行う権限を有する。 ( イ ) EU 法 ( 条 約 、 条 約 の 規 定 に 基 づ く 決 定 等 ) の 公 正 な 適 用 の 監 督 欧州委員会は、条約違反を理由に加盟国をも提訴できる。また必要に応じて欧州 裁 判 所 に 司 法 判 断 を 仰 ぐ こ と も あ る ( 後 述 ) 。 更 に 、 EU の 競 争 ル ー ル 違 反 等 の 理 由で、個人や法人に罰金を科すこともできる。 ( ウ ) EU の 行 政 ・ 執 行 機 関 と し て 機 能 条 約 の 特 定 の 条 項 を 施 行 す る た め の 規 則 を 制 定 し 、 EU の 活 動 に 割 り 当 て ら れ た 予算の拠出を管理する。実施に当たっては、多くの場合、加盟国当局者で構成され る委員会の意見を求めなければならない。 (エ)競争法分野における立法 原則として、欧州委員会に立法権限は付与されていないが、競争法分野において は 、 立 法 権 を 有 し て い る 。 ま た 、 EU 理 事 会 に よ っ て 制 定 さ れ た EU 法 の 執 行 に 関 する規則を制定する。 ②組織 欧 州 委 員 会 は 、 職 員 約 2 万 名 を 擁 す る EU 最 大 の 機 関 で あ る 。 そ の 活 動 は 多 岐 、 広範囲にわたり、しかも各加盟国の国民に対して母国語で情報を提供する必要があ るため、多数の職員が翻訳業務に従事している。 2013 年 7 月 3 日 現 在 、 最 高 意 思 決 定 機 関 で あ る 委 員 会 は 28 名 の 委 員 で ( Commissioner、任 期 5 年 )で 構 成 さ れ 、加 盟 国 か ら 各 1 名 が 、欧 州 議 会 の 承 認 、 並びに欧州理事会の特定多数決を経て任命される。委員は、出身国から完全に独立 し て お り 、 い か な る 指 示 も 受 け て は な ら ず 、 EU 全 体 の 利 益 の た め に の み 職 務 を 遂 行することを義務付けられる。欧州委員会を譴責する権限を持つのは、欧州議会の みである。また、委員は、それぞれ一つ以上の政策領域に関して責任分野をもって いるが、その決定に関しては、委員全員が連帯責任を負う。委員長は、欧州理事会 欧州連合(EU) 827 の特定多数決により指名された者が欧州議会の承認を得て選任される。 欧 州 委 員 会 に は 28 名 の 委 員 の 下 に 、 各 総 局 ( Directorate-General) を は じ め と す る 部 局 が 設 置 さ れ て い る 。総 局 は 日 本 の 省 庁 に 相 当 す る 。2010 年 2 月 か ら の 第 二 次バローゾ委員会体制下では、電気通信・放送分野は「デジタル・アジェンダ」と し て ネ リ ー ・ ク ル ー ス ( Neelie Kroes) 副 委 員 長 ( 前 競 争 担 当 委 員 ) 、 競 争 政 策 分 野 は ホ ア キ ン ・ ア ル ム ニ ア ( Joaquin Almunia) 副 委 員 長 、 域 内 市 場 ・ サ ー ビ ス 分 野 は ミ シ ェ ル ・ バ ル ニ エ ( Michel Barnier) 委 員 が 担 当 し て い る 。 ( ア ) 通 信 ネ ッ ト ワ ー ク ・ コ ン テ ン ツ ・ 技 術 総 局 ( Directorate General for Communications Networks, Content and Technology : DG CONNECT) Tel. / Fax URL 所在地 + 32 2 299 9399 + 32 2 299 9499 http://ec.europa.eu/dgs/connect/index_en.htm BU25 02/095, B-1049 Brussels, BELGIUM 概要 2012 年 7 月 1 日 に 情 報 社 会 ・ メ デ ィ ア 総 局 ( Information Society and Media Directorate-General)か ら 組 織 の 変 更 を 行 っ た 。情 報 社 会 関 連 政 策 を「 現 実 の 場 で 」 展開し、生活の質の向上、競争強化と雇用の創出を実現するという役割を担ってい るほか、①情報通信技術を欧州市民の日常生活環境、ビジネス及び行政に融合する ための研究の促進、②市場に競争を導入し、アプリケーション及びコンテンツの発 展を促進するための規制枠組みの確立及び維持、③すべての欧州市民が情報社会に 参 画 し て 利 益 を 享 受 す る こ と を 可 能 に し 、促 進 す る た め の 施 策 へ の 援 助 を 担 当 す る 。 な お 、 DG CONNECT へ の 名 称 変 更 に 先 駆 け て 以 下 五 つ の 目 標 が 掲 げ ら れ た 。 ・創造的かつ実践的で価値向上をもたらす高度な研究開発をサポートする。 ・データの価値連鎖(バリューチェーン)を通じて創造性を育む。 ・クラウド・コンピューティングに代表されるデジタル商品やサービスの積極的 な利用及び公的アクセスを推進する。そして欧州単一市場を後押しする。 ・デジタル商品やサービスの安全性を確保し、急速に進歩する技術への人々の信 頼を育む。同時に日常生活で適切に技術を利用するスキルを身につけるように する。 ・開かれたインターネットをサポートし世界のパートナーと協調する。 ( イ ) 競 争 総 局 ( Directorate General for Competition) Tel. +32 2 299 4107 URL http://ec.europa.eu/competition/index_en.html 所在地 Jozef II straat 70 1000 Brussels, BELGIUM 概要 EU の 統 一 的 競 争 政 策 の 策 定 ・ 実 施 を 所 掌 す る 。 欧 州 単 一 市 場 に お け る 公 正 な 競 828 欧州連合(EU) 争を確保するため、競争法の違反事件を捜査するとともに、大規模な企業合併・買 収についても調査の上、必要に応じてその実施を阻止する権限が付与されている。 このほか、加盟国規制当局が通報する電子通信サービス網に関する市場評価結果等 を DG CONNECT と 共 同 で 検 証 し て い る 。 ( ウ )域 内 市 場・サ ー ビ ス 総 局( Internal Market and Services Directorate -General) e-mail URL 所在地 [email protected] http://ec.europa.eu/dgs/internal_market/index_en.htm Rue de Spa 2 1000, Brussels, BELGIUM 概要 域内市場における人、物、サービス、資本の完全な自由移動を保証した欧州単一 市 場 の 構 築 は 、 EU 最 大 の 成 果 と さ れ て い る 。 同 総 局 の 役 割 は 、 欧 州 単 一 市 場 が 効 率的に機能するよう欧州委員会の全般的政策を調整し、単一市場の重要分野におけ る同委員会の政策を策定、実施することである。 ( 5 ) 欧 州 連 合 司 法 裁 判 所 ( Court of Justice of the European Union ) EU 諸 条 約 を 含 め た EU 法 の 遵 守 を 確 保 す る た め 、 そ の 解 釈 、 適 用 及 び EU 諸 機 関 の す べ て の 行 為 に お い て 必 要 な 司 法 上 の 保 護 措 置 の 実 施 を 役 割 と す る 。 旧 EC 条 約では、司法機関は、欧州司法裁判所と第一審裁判所、並びに、第一審裁判所に付 属する司法委員会で構成されていたが、リスボン条約の発効により、それぞれ欧州 司 法 裁 判 所 、一 般 裁 判 所 、専 門 裁 判 所 へ と 名 称 が 改 正 さ れ た 。こ れ ら の 司 法 機 関 は 、 総称として欧州連合司法裁判所と呼ばれる。 ① 欧 州 司 法 裁 判 所 ( European Court of Justice: ECJ) EU 法 の 解 釈 を 行 う 最 高 裁 判 所 で 、ル ク セ ン ブ ル ク に あ る 。EU 法 に 関 し て 、普 通 裁判所としての機能のほか、憲法裁判所、行政裁判所、労働裁判所、国際裁判所と し て の 機 能 も 有 し て お り 、 加 盟 国 裁 判 所 の 要 請 に 応 じ 、 EU 法 上 の 争 点 の 解 釈 や そ の 妥 当 性 に つ い て 先 行 判 決 を 下 す こ と が で き る 。 更 に 、 加 盟 国 が EU 法 上 の 義 務 を 履行していないと認定し、同国がその判断に従わない場合、高額の罰金を科すこと も で き る 。 そ の ほ か 、 EU の 機 関 に よ る 措 置 の 無 効 を 求 め る 裁 判 に お い て 、 当 該 措 置の合法性について検討・判定することができる。 欧 州 司 法 裁 判 所 は 、 2013 年 8 月 現 在 、加 盟 国 の 合 意 に よ り 任 命 さ れ る 27 名 の 裁 判 官 及 び 7 名 の 法 務 官( Advocate General)* に よ っ て 構 成 さ れ る 。両 者 と も 任 期 は 6 年(裁判官は 3 年ごとに一部改選)で、在任中はその独立性が保障される。 訴訟審理は、裁判所の判断により小法廷、大法廷、最大法廷で行われるが、加盟 国 又 は EU の 機 関 が 要 求 し た 場 合 は 、13 名 の 裁 判 官 で 構 成 さ れ る 大 法 廷 に お い て 行 われなければならない。法務官は、同裁判所の業務遂行を補佐するため、同裁判所 に提訴された事件に関して、完全に公平、独立の立場から、理由を付した法的見解 を法務官意見として裁判所に提出することになっている。 欧州連合(EU) 829 * 法 務 官 制 度:欧 州 共 同 体 設 立 当 初 に 主 導 権 を 握 っ た フ ラ ン ス の 最 高 行 政 裁 判 所 で あ る 国 務 院 で 、 「法の代理人」として公正な立場から法理論を展開する政府委員制度を参考にして採用された。 ② 一 般 裁 判 所 ( uropean Court of First Instance : CFI) EU の 活 動 範 囲 拡 大 に 伴 う 欧 州 司 法 裁 判 所 へ の 訴 訟 件 数 急 増 に 対 処 す る た め 、 単 一 欧 州 議 定 書 が 改 定 さ れ 、 欧 州 司 法 裁 判 所 の 附 属 機 関 と し て 1989 年 9 月 に 発 足 し た。欧州司法裁判所と同様にルクセンブルクにあり、加盟国政府の合意によって任 命 さ れ た 27 名 の 裁 判 官 ( 任 期 6 年 ) か ら 構 成 さ れ て い る が 、 加 盟 国 の 数 よ り も 裁 判官の数が多くなることもある。また欧州司法裁判所と異なり、専属の法務官は任 命されておらず、法廷から要求があった場合に限り一般裁判所の長官が裁判官の中 から法務官を任命する。 一 般 裁 判 所 は 、 EU 諸 機 関 の 決 定 に 対 す る 個 人 及 び 法 人 か ら 提 訴 さ れ た す べ て の 事件を審理し、判決を下す。一般裁判所の判決については、法律上の争点に関する 事案に限り、欧州司法裁判所に上訴することができる。 [ European Commission] Ⅲ 現行の規制枠組みと手続 1 電子通信規制パッケージ(通信分野) 2009 年 12 月 に 通 信 規 制 に 関 す る 新 し い 規 則 と 指 令 が 公 布 さ れ た 。新 し い 規 則 に 伴 い 28 加 盟 国 の 電 子 通 信 規 制 団 体 の 代 表 者 か ら 構 成 さ れ る BEREC( 欧 州 電 子 通 信 規 制 者 団 体 ) が 設 立 さ れ た 。 BEREC 設 立 に か か る 規 則 以 外 の 2 指 令 は 、 既 存 の 通 信規制パッケージの各指令や規則の各条項の改正を規定したものである。 2009 年 に 採 択 さ れ た 電 子 通 信 規 制 に 関 す る 新 し い 規 則 ・ 指 令 名称 1 2 内容 BEREC( 欧 州 電 子 通 信 規 制 者 団 体 ) の 設 立 と 事 務 局 に 関 す る 規 則 ( 1211/2009) 「市民の権利」 ユ ニ バ ー サ ル ・ サ ー ビ ス 指 令 ( 2002/22/EC) 、 プ ラ イ バ 指令 シ ー 保 護 指 令 ( 2002/58/EC) 、 消 費 者 の 権 利 保 護 に 関 す ( 2009/136/EC) る法の執行機関間における協力に関する規則 ( No2006/2004) の 改 正 「よりよい規 3 制」指令 ( 2009/140/EC) 枠 組 み 指 令( 2002/21/EC)、ア ク セ ス 指 令( 2002/19/EC)、 認 可 指 令 ( 2002/20/EC) の 改 正 欧州委員会によれば、これらの指令の特徴は以下のとおりである。 ①消費者の権利の強化(番号ポータビリティの手続迅速化など) 830 欧州連合(EU) ②消費者のための情報の充実 ③新しいインターネットの自由の条項に基づくインターネット接続に関する市民 の権利の保護 ④オープンで「中立的」なインターネットの保障 ⑤ 個 人 情 報 の 漏 え い や SPAM に 対 す る 消 費 者 保 護 ⑥欧州共通緊急通報番号へのより良いアクセス ⑦各国通信規制機関の独立性の強化 ⑧通信市場におけるより公平な競争と一貫性のある規制の促進 ⑨通信市場のための競争条件を整備 ⑩競争の問題を乗り越えるための機能分離 ⑪欧州におけるブロードバンド・アクセスの促進 ⑫次世代網への投資と競争促進 2002 年 か ら 適 用 さ れ て い る 従 来 の パ ッ ケ ー ジ の 概 要 は 次 表 の と お り で あ る 。 「電子通信規制パッケージ」 枠 組 み 指 令 ( 2002/21/EC) 電 子 通 信 網 及 び サ ー ビ ス に 関 し 、EU 域 内 で 統 一 的 な 規 制 枠 組 み を 確 立 す る た め 、 各 国 規 制 団 体( NRA)の 権 限 及 び 所 掌 、事 業 者 間 紛 争 の 解 決 、市 場 分 析 手 続 、SMP 事 業 者 規 制 、 無 線 周 波 数 や 番 号 と い っ た 稀 少 資 源 の 管 理 等 を 規 定 。 特 に SMP 事 業 者 の 指 定 に つ い て は 、 従 来 市 場 シ ェ ア 25% 以 上 を 基 準 に し て い た の と は 異 な り 、 EU 競 争 法 の 概 念 に 適 合 さ せ て い る 。 認 可 指 令 ( 2002/20/EC) EU 域 内 で の 事 業 参 入 許 可 に 関 す る 手 続 ・ 条 件 の 調 和 ・ 簡 略 化 を 図 る た め 、一 般 認 可 に よ り 付 与 さ れ る 権 利 及 び 課 さ れ る 条 件 等 を 規 定 。な お 、従 来 も 一 般 認 可 制 度 の 採 用 を 優 先 さ せ て い た が 、各 加 盟 国 の 裁 量 下 に あ っ た た め 、大 多 数 の 加 盟 国 は 個 別 免 許 制 度 を 維 持 し た 。し か し こ れ が 国 境 を 越 え た サ ー ビ ス 等 の 発 展 の 妨 げ に な る こ と か ら 、本 指 令 で は 、希 少 資 源 の 無 線 周 波 数 及 び 番 号 の 割 当 て 以 外 は 一 般 認 可 に よる旨を規定。 ア ク セ ス 指 令 ( 2002/19/EC) 電 子 通 信 網 へ の ア ク セ ス ・ 相 互 接 続 に 関 す る 規 制 を EU 域 内 で 調 和 さ せ る た め 、 事 業 者 の 権 利・義 務 、SMP 事 業 者 の 義 務 等 を 規 定 。ア ク セ ス・相 互 接 続 の 条 件 は 、 当 事 者 間 の 完 全 な 商 業 的 交 渉 に よ る 。SMP 事 業 者 に 対 し 透 明 性 の 確 保 、非 差 別 性 、 会 計 分 離 等 の 義 務 を 課 す こ と を 各 国 NRA に 要 求 。 ま た 、 デ ジ タ ル テ レ ビ ・ サ ー ビ ス へ の ア ク セ ス を 提 供 す る 条 件 付 ア ク セ ス 事 業 者 に 対 し て は 、公 平 で 合 理 的 か つ 非 差別的条件でサービスを提供する義務を課している。 欧州連合(EU) 831 ユ ニ バ ー サ ル ・ サ ー ビ ス 指 令 ( 2002/22/EC) EU 域 内 に お け る 同 サ ー ビ ス を 確 保 す る た め 、そ の 定 義 、範 囲 、費 用 算 定 、財 源 、 関 連 す る 利 用 者 の 権 利 等 を 規 定 。定 義 及 び 範 囲 は 従 来 の 規 定 と 同 じ( 固 定 回 線 に よ る 音 声 電 話 、公 衆 電 話 、番 号 案 内 等 )で あ る が 、定 期 的 な 見 直 し を 予 定 し 、最 初 の 見 直 し は 施 行 後 2 年 以 内 に 実 施 。 NRA は 、 同 サ ー ビ ス 提 供 事 業 者 を 指 定 す る こ と が で き 、同 サ ー ビ ス 実 施 費 用 の 拠 出 は 、政 府 の 一 般 財 源 に よ る 補 償 又 は 基 金 に よ る 共 同 負 担 の い ず れ か と す る こ と が で き る 。ま た 、利 用 者 の 権 利 と し て 、再 販 売 価 格 規 制 、サ ー ビ ス 品 質 に 関 す る 情 報 公 開 、番 号 ポ ー タ ビ リ テ ィ 、優 先 接 続 、指 定 さ れ た ラ ジ オ 放 送 及 び テ レ ビ 放 送 を 伝 送 す る マ ス ト・キ ャ リ ー 義 務 等 を 関 連 事 業 者 に 課 すことを規定。 出 所 : European Commission 2 オ ー デ ィ オ ・ ビ ジ ュ ア ル ・ メ デ ィ ア ・ サ ー ビ ス ( AVMS) 規 制 分 野 オーディオ・ビジュアル・メディア・サービス指令 欧 州 議 会 は 、 2007 年 11 月 29 日 、 「 オ ー デ ィ オ ・ ビ ジ ュ ア ル ・ メ デ ィ ア ・ サ ー ビ ス( AVMS)指 令( 2007/65/EC) 」を 採 択 し た 。正 式 名 称 は 「 テ レ ビ 放 送 活 動 の 遂行に関し、加盟国において法律、規則、行政行為によって制定される規定の調整 に 関 す る 1989 年 10 月 3 日 付 け 理 事 会 指 令( 89/552/EEC)の 改 正 に つ い て の 2007 年 12 月 11 日 付 け 欧 州 議 会 及 び 理 事 会 指 令 」 。 加 盟 国 に は 2009 年 末 ま で に AVMS 指令を国内法に反映させることが義務付けられた。 AVMS 指 令 の 目 的 は 、今 日 的 な 競 争 促 進 の 枠 組 み を 、欧 州 の テ レ ビ 事 業 者 及 び そ れに類するサービスを提供する事業者に適用することであり、新しい広告コミュニ ケーション形態によってオーディオ・ビジュアル・コンテンツの資金確保のための 柔軟な規制を適用することである。配信に用いている技術に関係なく、欧州市場で オン・デマンド・サービスを行っているすべての企業が活動領域を形成することも できるとしている。 AVMS 指 令 は 、欧 州 に お け る テ レ ビ 及 び テ レ ビ 類 似 サ ー ビ ス( TV-like services) 提供者の規制による負担を軽減するとともに、広告の新たな形式を定めることによ って、柔軟性を高めることを目的としている。 テレビ及びテレビ類似サービスは、それぞれリニア・サービスとノンリニア・サ ービスとして区別される。 ・リニア・サービス:従来のテレビ放送、インターネット、移動電話などを通じ た、スケジュール化されたサービスであり、視聴者に対してコンテンツを一方 的 に 提 供 ( pushes) す る も の 。 ・ノンリニア・サービス:オン・デマンド・サービス。視聴者がネットワークか ら 引 き 出 す ( pulls) も の 。 一 方 、個 人 的 な 通 信( 注:e メ ー ル 、ブ ロ グ の よ う な 個 人 的 な ウ ェ ブ サ イ ト な ど )、 832 欧州連合(EU) 電子版の新聞、雑誌、オーディオ・ビジュアル・コンテンツの提供を主目的としな い ウ ェ ブ サ イ ト な ど は 、AVMS 指 令 案 の 適 用 範 囲 外 に な っ て い る( 他 の 法 に よ る 規 制はありうる)。 リニア・サービスには、現在テレビ放送に適用されているルールを適用するが、 ノンリニア・サービスに関しては、青少年保護、人種などに基づく憎悪助長禁止、 消費者をミスリードする広告(不正広告)の禁止など、基本的で最低限の原則のみ が適用されることとなる。 AVMS 指 令 は 、リ ニ ア ・ サ ー ビ ス に お け る 広 告 に 関 す る 従 来 の ル ー ル を 、よ り 簡 素 化 、 柔 軟 化 す る こ と を 求 め て い る 。 従 来 は 、 広 告 と 広 告 の 間 を 最 低 20 分 取 る こ と が 義 務 付 け ら れ て い た が 、AVMS 指 令 で は 広 告 挿 入 の タ イ ミ ン グ は 番 組 制 作 者 の 自 由 裁 量 と な る 。 し か し 1 時 間 番 組 に 対 し て 最 大 12 分 と い う 規 制 は 維 持 さ れ る 。 な お 、映 画 、子 ど も 向 け 番 組 、報 道 番 組 、ニ ュ ー ス な ど は 例 外 で 、広 告 の 間 隔 は 30 分以上空けることが義務付けられている。 更 に プ ロ ダ ク ト・プ レ ー ス メ ン ト( 番 組 内 で 商 品 を 使 用 す る 間 接 広 告 )に つ い て 、 今回初めて明確に定義し、原則禁止としつつも、それが認められるための枠組みを 定めている。プロダクト・プレースメントは、ニュース番組、時事問題、子ども向 け番組を除き、不正広告防止のため、プロダクト・プレースメントであることが明 確に認識できる場合に限り認められる。消費者は、番組の最初でプロダクト・プレ ースメントが利用されることを周知されることとなる。 プロダクト・プレースメントは、コマーシャルを飛ばして再生できる機能がつい た録画機の利用が広がったことで急成長している広告手法である。米国で急速に広 ま る 一 方 、 EU で は 多 く の 国 が 禁 止 し て い る こ と か ら 、 EU の 放 送 業 界 は 米 国 に 比 べて広告収入源で不利な立場に置かれていた。今回の部分的解禁で収入増加を目指 している。 また、子ども番組における食品・飲料の広告規制、オン・デマンドのオーディオ ビジュアル・メディア・サービスにおける少数者保護も指令に盛り込まれている。 3 違反手続 EU の 司 法 制 度 の 中 に は 、「 取 消 訴 訟 」、「 条 約 違 反 手 続 」、「 先 決 裁 定 手 続 」、 「 裁 判 所 意 見 」 が あ る が 、 本 節 で は 、 加 盟 国 が EU 法 執 行 の 義 務 を 履 行 し て い る か 否かを裁定する「条約違反手続」について記述する。 「 条 約 違 反 手 続 」は 、EU 法 を 履 行 確 保 す る た め の 手 段 と し て 、 「 EU 運 営 条 約( 旧 EC 条 約 ) 」 第 258 条 及 び 259 条 に て 規 定 さ れ て い る 。 258 条 は 欧 州 委 員 会 が EU 法 を 履 行 し な い 加 盟 国 を 訴 え る こ と を 規 定 し て お り 、 259 条 は 加 盟 国 が 他 の 加 盟 国 を 訴 え る こ と を 規 定 し て い る 。 通 常 は 、 258 条 に 基 づ き 、 欧 州 委 員 会 が 法 の 擁 護 者 として、履行義務違反の疑いがある加盟国を訴える。 欧州連合(EU) 第 258 条 第 260 条 (条約違反手続) (判決履行義務違反手続) ①公式通知書 ①公式通知書 ( formal letter) ( formal letter) ↓ ↓ ②理由付意見書 ②理由付意見書 ( reasoned letter) ( reasoned letter) ↓ ③司法裁判所への提訴 833 ↓(強制金額提示) ③司法裁判所への提訴 ( 強 制 金 ) 第 258 条 条 約 違 反 手 続 ( 258 条 ) と 判 決 履 行 義 務 違 反 手 続 ( 260 条 ) 出所:各種資料より作成 Ⅳ 政策動向 1 電子通信規制パッケージ見直しの動き (1)背景 2002 年 に 採 択 さ れ た 電 子 通 信 規 制 の 改 正 に 関 す る 法 案 に つ い て 、 2007 年 11 月 13 日 に 見 直 し 案 が 欧 州 委 員 会 に よ っ て 提 案 さ れ た 。同 案 は 、欧 州 議 会 等 に お け る 議 論 を 経 て 、 2009 年 12 月 18 日 、 欧 州 官 報 に 掲 載 さ れ 、 正 式 に 発 効 し た 。 こ れ に 対 し て 加 盟 各 国 の 国 内 法 制 化 の 期 限 は 2011 年 5 月 25 日 に 設 定 さ れ て い た が 、同 期 限 時 点 で 20 か 国 が 完 全 施 行 に 至 っ て お ら ず 、欧 州 委 員 会 は 規 制 へ の 遵 守 を 求 め る「 正 式 通 知 書 ( letter of formal notice) 」 送 付 し た 。 そ の 後 11 月 時 点 で も フ ラ ン ス 、 ド イ ツ 、 イ タ リ ア 、 ス ペ イ ン 等 を 含 む 16 か 国 が 国 内 法 制 化 に 至 っ て お ら ず 、 欧 州 委 員 会 は 「 理 由 付 き 意 見 書 ( reasoned opinions) 」 を 送 付 し て い る 。 2012 年 5 月 には国内法制化の未履行問題を欧州司法裁判所に付託した。同月時点で国内法制化 に至っていないのはベルギー、オランダ、ポーランド、ポルトガル、スロベニアの 5 か国である。 欧州委員会が欧州議会に提案した電子通信規制指令改正案(「通信改正パッケー ジ 」 ) に お い て は 、 EU 全 域 に お い て 、 す べ て の 市 民 が 安 価 な 通 信 サ ー ビ ス ( 移 動 電話、高速ブロードバンド、ケーブルテレビなど)を享受できる環境作りを目的と している。欧州委員会のスタッフワーキング文書(「インパクト・アセスメント」 SEC( 2007) 1472) 」 で は 改 正 案 の ね ら い と し て 以 下 を 挙 げ て い る 。 ①よりよい規制:電子通信における競争、投資及びイノベーションを強化・促進 し、利用者のニーズと利益を保証する。そして周波数(特にデジタル移行後の 834 欧州連合(EU) 跡地利用)の有効管理を実施 ②電子通信に関する単一市場形成の完成:効率的で一貫した規制を適用し、 European Telecom Market Authority ( ETMA) を 設 置 す る ③市民相互の連結の強化:消費者の権利保護、プライバシーと安全性の確保 またブロードバンド市場競争促進などに焦点を当てるため、欧州委員会は事前規 制 の た め の 競 争 評 価 の 対 象 と な る 市 場 を 示 し た 勧 告( Recommendation)を 発 表 し 、 事 前 規 制 の 対 象 市 場 を そ れ ま で の 18 か ら 7 へ と 半 減 さ せ た 。 こ れ は 、 近 年 に お け る競争の進展を考慮し、事前規制ではなく事後規制で対応する市場を増やすべきと の考え方に基づいている。一方、卸売ブロードバンド・アクセス市場など 7 市場に ついては、競争がまだ機能していないとして、今後更に欧州委員会と規制当局が努 力を傾注する必要があるとしている。 (2)共同(通常)決定過程における議論 2008 年 7 月 、 欧 州 議 会 の 産 業 研 究 エ ネ ル ギ ー 委 員 会 ( Industry, Research and Energy Committee: ITRE) と 域 内 市 場 消 費 者 保 護 委 員 会 ( Internal Market and Consumer Protection Committee: IMCO) は 、 欧 州 委 員 会 の 改 正 案 を 一 部 承 認 し たものの、懸案になっていた欧州統一の電子通信監督機関の設立に関しては、より 権 限 を 縮 小 し た BEREC ( Body of European Regulators for Electronic Communications) が 創 設 さ れ る こ と に な っ た 。 BEREC は 28 か 国 の 規 制 当 局 で 構 成 さ れ る 既 存 の 欧 州 規 制 機 関 グ ル ー プ ( ERG: European Regulators Group) を ベ ー ス と す る も の で あ る 。 BEREC は 欧 州 委 員 会 と と も に 、 各 国 規 制 機 関 の 規 制 案 に 関する意見を表明することができる。 2009 年 5 月 6 日 、 欧 州 議 会 は 欧 州 委 員 会 提 案 の 大 多 数 の 条 項 を 可 決 し た 。 し か し違法ダウンロードを繰り返す利用者のインターネット・アクセスを遮断する規定 に 関 し て 欧 州 議 会 と EU 理 事 会 の 間 で 見 解 が 割 れ た 。 欧 州 議 会 は イ ン タ ー ネ ッ ト ・ ア ク セ ス を 人 権 の 一 種 と し 、遮 断 に は 司 法 の 事 前 判 断 が 必 要 で あ る と し た の に 対 し 、 EU 連 合 理 事 会 は 行 政 判 断 で 遮 断 可 能 と し た 。そ の た め「 調 停 委 員 会( Ⅱ - 2( 2 ) 参 照 )」へ 法 案 は 送 付 さ れ た 。11 月 、調 停 委 員 会 に お い て は イ ン タ ー ネ ッ ト・ア ク セスを基本権であると明確化したが、遮断には事前・公正・公平な手続が必要とし ながらも司法判断は必要ないとした。 2 情 報 社 会 政 策 「 i2010」 か ら 「 デ ジ タ ル ・ ア ジ ェ ン ダ 」 へ ( 1 ) 背 景 ― ― 90 年 代 の EU の 問 題 意 識 と リ ス ボ ン 戦 略 90 年 代 、世 界 的 に 生 じ た 変 革 と し て 、① グ ロ ー バ リ ゼ ー シ ョ ン 、②( 情 報 通 信 分 野を中心とした)技術革新の二つを挙げることができる。しかし米国と比較した場 合 、 EU は 経 済 成 長 率 や 1 人 当 た り の GDP な ど の 指 標 で 劣 っ て い た 。 こ の よ う な 問 題 意 識 の も と 、 リ ス ボ ン 欧 州 理 事 会 ( 2000 年 3 月 開 催 ) で は 、 10 年以内に「より質の高いより多くの雇用と、より強い社会的な結束を伴って持続的 欧州連合(EU) 835 な成長ができるような、世界で最も競争力と活力を持つ、知識を基盤とした経済」 の構築を目指すリスボン戦略(宣言)が発表された。 同戦略は労働者の権利保障という欧州諸国の伝統を維持しつつ、グローバル化や 情報化という社会・経済環境に適切に対応することが必要とされており、単なる経 済 成 長 で は な く 、ICT 産 業 に 代 表 さ れ る「 知 識 経 済( knowledge-based economy)」 を構築し、専門職をより多く生み出し、付加価値のある製品の生産性向上を目標に 設定している。 リスボン戦略は、経済政策と社会・雇用政策の 2 本の柱で形成されている。この う ち 経 済 政 策 に お い て 、 「 eEurope - an information society for all ( す べ て の 人 の た め の 情 報 社 会 ) 」 が 主 な 戦 略 の 一 つ と し て 設 定 さ れ 、 「 eEurope2002 」 や 「 eEurope2005」 と い っ た 2000 年 代 前 半 の 欧 州 情 報 社 会 政 策 の 基 礎 に な っ た 。 ( 2 ) 欧 州 情 報 化 戦 略 「 i2010」 2005 年 、欧 州 委 員 会 は リ ス ボ ン 戦 略 に 基 づ く 情 報 社 会 政 策 と し て 、5 か 年 計 画 の 「 i2010」 を 掲 げ た 。 同 政 策 は 、 ① 単 一 の 欧 州 情 報 市 場 の 創 造 、 ② ICT 研 究 に お け るイノベーションと投資強化、③包括的な欧州情報社会の推進、という三つの主要 目標で構成されている。 ①単一の欧州情報市場の創造 情報社会は人びとの仕事、生活、コミュニケーションのあり方を大きく変える 転 換 点 に な る と い う 認 識 の も と 、そ れ ら に 対 応 す る 新 し い コ ン テ ン ツ 、サ ー ビ ス 、 ビジネスモデルを創造し、開かれた競争的な市場を欧州内部に構築する。 ② ICT 研 究 に お け る イ ノ ベ ー シ ョ ン と 投 資 強 化 ICT の 研 究 開 発 分 野 に お い て 、 欧 州 は 米 国 や 日 本 に 遅 れ て い る と い う 認 識 の も と、研究開発費の投資を強化する。 ③包括的な欧州情報社会の推進 ICT の 恩 恵 を 享 受 す る た め に 、す べ て の 市 民 が ICT を 利 活 用 で き る た め の 取 組 みを推進する。 出 所 : European Commission 2009 年 に 発 行 さ れ た「 Europe’s Digital Competitiveness Report( Annual Report 2009) で は 「 i2010」 の 成 果 報 告 が 行 わ れ て い る 。 同 報 告 書 で は 具 体 的 成 果 が 以 下 のように示されている。 ①インターネット利用者の増加 イ ン タ ー ネ ッ ト の 定 期 的 な 利 用 者 が 2005 年 の 43% か ら 2008 年 に は 56% に 増 加。高齢者や教育水準の低い者といった社会的弱者の利用も増加した。 欧州連合(EU) 836 ②ブロードバンド・インターネットの普及 利 用 者 は 1 億 1,400 万 人 と な り 、 欧 州 域 内 の 半 数 世 帯 、 及 び 80% の 事 業 所 に ブ ロ ー ド バ ン ド が 普 及 し た 。 う ち 4 分 の 3 は 最 大 通 信 速 度 2Mbps 以 上 で 接 続 し て い る。 ③ブロードバンドを利用した先端サービス 多 く の 利 用 者 が 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 、オ ン ラ イ ン 金 融 サ ー ビ ス 、コ ン テ ン ツ の 共有・生産に参加している。 ④ 移 動 電 話 普 及 率 が 100% 超 に 2004 年 に 84% だ っ た 移 動 電 話 の 普 及 率 は 2009 年 に は 114% に 達 し た 。こ の 間 、 通 話 等 に か か る 料 金 は 34.5% 低 下 し た 。 ま た ロ ー ミ ン グ 料 金 は 2005 年 比 で 70% 低下した。 ⑤パブリック・サービスの向上 欧 州 市 民 の 3 分 の 1、 並 び に 欧 州 に 拠 点 を 置 く 事 業 者 の 70% が 電 子 政 府 サ ー ビ スを利用している。 ⑥ ICT 調 査 ・ 研 究 の 成 果 ICT 調 査 ・ 研 究 は 欧 州 の 産 業 発 展 に 寄 与 し た 。 ⑦ ICT 政 策 の 活 性 化 加 盟 各 国 は ICT を 国 家 成 長 に お け る 重 要 政 策 と 位 置 付 け 、 ブ ロ ー ド バ ン ド の 普 及や e ヘルス、e ラーニング、e ビジネスといった取組みに力を注いでいる。 出 所 : European Commission ( 3 ) 「 Europe2020」 と 「 欧 州 デ ジ タ ル ・ ア ジ ェ ン ダ 」 欧 州 委 員 会 は 、 2010 年 3 月 3 日 、 今 後 10 年 間 の 欧 州 経 済 戦 略 「 Europe2020」 を 発 表 し た 。同 戦 略 に お い て 、欧 州 委 員 会 は 、成 長 の た め の 三 つ の 要 素 を 挙 げ 、EU 並びに各国家のレベルで具体的な行動の実施を決めた。 ①「スマートな成長」:知識、イノベーション、教育、デジタル社会の発展 ②「持続可能な成長」:競争を促進しつつ、資源の有効活用も促進する ③「包括的成長」:労働市場における雇用の創出、技能の習得及び貧困の撲滅 こ の 3 大 成 長 の 実 現 の た め に 、 「 5 大 目 標 」 ( 雇 用 、 R&D、 環 境 、 教 育 、 貧 困 ) が 設 定 さ れ て お り 、更 に 5 大 目 標 の 実 現 手 段 と し て 、七 つ の「 最 重 要 イ ニ シ ア チ ブ 」 が 設 定 さ れ て い る 。 同 イ ニ シ ア チ ブ の う ち 、 「 欧 州 デ ジ タ ル ・ ア ジ ェ ン ダ 」 ( The Digital Agenda for Europe、以 下 デ ジ タ ル・ア ジ ェ ン ダ )が ICT 分 野 に 対 応 し て い る 。 デ ジ タ ル ・ ア ジ ェ ン ダ は 「 i2010」 の 実 質 的 な 後 継 政 策 と な る 。 こ れ を 受 け 、2010 年 5 月 19 日 、欧 州 委 員 会 は デ ジ タ ル ・ ア ジ ェ ン ダ の 行 動 計 画 を記したコミュニケーションを発行した。その中では全体目標として、「超高速イ 欧州連合(EU) 837 ンターネットを基盤として、ヨーロッパ全体の『デジタル単一市場』を創設し、こ れにより持続可能な経済的、社会的便益を得ることが可能になること」を掲げてい る 。 ま た 、 目 標 実 現 の た め 2013 年 ま で に 、 す べ て の ヨ ー ロ ッ パ 人 が 高 速 イ ン タ ー ネットを利用可能にしなければならないとしている。 同行動計画に関して、欧州委員会は七つの優先課題をあげ、それぞれに対応する 障 害 要 因 や 重 要 ア ク シ ョ ン ( key action) を 挙 げ て い る 。 ①デジタル単一市場の創出 単 一 市 場 は 競 争 の 促 進 や コ ン テ ン ツ の 生 産・流 通 な ど で 市 場 や 市 民 に 利 益 を も た らす。しかし欧州では国内市場ごとに断片化した状態にある。 こ う し た 認 識 の も と 、単 一 市 場 の 創 出 に か か わ る 重 要 ア ク シ ョ ン と し て 以 下 の 四 つ が 挙 げ ら れ て い る 。( ア )各 種 関 連 指 令 に 基 づ き 、著 作 権 の ク リ ア ラ ン ス 、管 理 、 域 内 ラ イ セ ン ス 交 付 を 簡 素 化 す る 。( イ )電 子 決 済 の 断 片 化 を 解 消 し 、ユ ー ロ 単 一 支 払 地 域 を 確 立 す る 。 ( ウ ) 2011 年 に 電 子 署 名 指 令 を 改 正 し 、 相 互 運 用 に 適 合 し た 安 全 な 電 子 認 証 シ ス テ ム の 法 的 枠 組 み を 確 立 す る 。( エ )個 人 の 権 利 保 障 を 強 化 す る た め EU デ ー タ 保 護 規 制 枠 組 み を 見 直 す 。 ② 域 内 共 通 の ICT 標 準 の 設 置 と 相 互 運 用 の 改 善 インターネットはデバイスやアプリケーションの相互運用におけるアーキテク チ ャ と な る 。し か し 欧 州 で は 、標 準 化 、公 的 調 達 、官 民 連 携 な ど が 相 互 運 用 の 弱 点 となっている。 こ う し た 認 識 の も と 、本 課 題 に か か わ る 重 要 な ア ク シ ョ ン と し て 以 下 が 挙 げ ら れ て い る 。 ( オ ) 欧 州 の ICT 標 準 の 履 行 規 則 を 見 直 し 、 ICT 相 互 運 用 の 法 的 指 針 を 提起する。 ③インターネットの信頼性と安全の向上 インターネットの革新的なサービスは市民に恩恵をもたらすが、同時にウイル ス 、サ イ バ ー 犯 罪 、個 人 情 報 の 漏 え い と い っ た 様 々 な 危 険 に も 遭 遇 す る 。ま た 、性 的虐待や児童ポルノといった有害コンテンツもインターネットにはあふれている。 こ う し た 問 題 に 対 処 す る た め 、 EU は 「 コ ン ピ ュ ー タ 緊 急 対 応 チ ー ム ( CERT) 」 や「 Safer Internet プ ロ グ ラ ム 」( Ⅳ -( 4 )② 参 照 )な ど の 取 組 み を 行 っ て き た 。 デジタル・アジェンダにおいてもこうした取組みを推進していく。 本課題にかかわる重要なアクションとして以下の二つが挙げられている。(カ) 欧 州 ネ ッ ト ワ ー ク 情 報 セ キ ュ リ テ ィ 庁 ( ENISA) や CERT の 行 政 イ ニ シ ア チ ブ を 高 め 、ハ イ レ ベ ル の ネ ッ ト ワ ー ク・情 報 安 全 政 策 を 推 進 す る 。( キ )サ イ バ ー 攻 撃 に対応するため、サイバースペースの司法権確立に関する規則を設ける。 ④高速/超高速インターネット接続の拡大 欧州連合(EU) 838 高 速 / 超 高 速 の イ ン タ ー ネ ッ ト 接 続 は 雇 用 を 創 出 し 、経 済 を 活 性 化 さ せ る 。そ れ はネットワークを基盤とした知識経済の確立にもつながる。こうした前提のもと、 デ ジ タ ル・ア ジ ェ ン ダ で は 、ユ ニ バ ー サ ル・ブ ロ ー ド バ ン ド の 保 障 、次 世 代 網 の 普 及 、開 か れ た 中 立 的 な イ ン タ ー ネ ッ ト を 目 標 と し て い る 。本 課 題 は「 Europe 2020」 のブロードバンド戦略と共同歩調をとって進められる。 具 体 的 な 目 標 と し て 、 ま ず 、 2013 年 ま で に す べ て の 欧 州 市 民 が ブ ロ ー ド バ ン ド を 利 用 で き る こ と 、 次 い で 、 2020 年 ま で に ( ⅰ ) す べ て の 欧 州 市 民 が 最 大 通 信 速 度 30Mbps 超 の イ ン タ ー ネ ッ ト に 接 続 で き る こ と 、 ( ⅱ ) 50% 以 上 の 市 民 が 家 庭 で 最 大 通 信 速 度 100Mbps 超 の イ ン タ ー ネ ッ ト に 接 続 で き る こ と を 挙 げ て い る 。 本 課 題 に か か わ る 重 要 な ア ク シ ョ ン も 、( ク )Europe 2020 戦 略 と 共 通 の 枠 組 み を 設 け 、 EU 並 び に 加 盟 国 が ア ク シ ョ ン を 履 行 す る 、 と な っ て い る 。 ⑤最先端研究や技術開発への投資拡大 R&D( 研 究 開 発 活 動 ) へ の 投 資 は 重 要 で あ る が 、 EU は 米 国 等 と 比 べ る と R&D へ の 投 資 は 少 な い 。こ う し た 認 識 の も と 、欧 州 委 員 会 は 、研 究 開 発 活 動 の 包 括 的 戦 略 「 イ ノ ベ ー シ ョ ン の 統 合 」 ( Innovation Union) を 立 ち 上 げ た 。 こ れ は Europe 2020 戦 略 の 旗 艦 イ ニ シ ア チ ブ と 位 置 付 け ら れ て お り 、 そ の 中 で は 各 種 部 門 と 密 接 に 連 関 す る ICT 部 門 へ の 投 資 が 重 視 さ れ て い る 。 本 課 題 に か か わ る 重 要 な ア ク シ ョ ン と し て 、( ケ )民 間 投 資 比 率 の 増 大 、が 挙 げ られている。 ⑥市民のデジタル・リテラシー、スキル、社会的包摂の促進 デ ジ タ ル 時 代 は 市 民 に エ ン パ ワ ー メ ン ト や エ マ ン シ ペ ー シ ョ ン( 解 放 )を も た ら す 。 し か し 約 30% の 欧 州 市 民 は 依 然 と し て イ ン タ ー ネ ッ ト を 利 用 し て い な い 。 と り わ け 、65~ 74 歳 の 高 齢 者 、低 所 得 者 、低 教 育 者 の イ ン タ ー ネ ッ ト 利 用 率 は 低 い 。 彼 ら は リ テ ラ シ ー や ス キ ル が 欠 如 し て い る 傾 向 に あ り 、デ ジ タ ル 時 代 の 社 会・経 済 か ら 排 除 さ れ て い る 。こ う し た 認 識 の も と 、デ ジ タ ル・ア ジ ェ ン ダ で は デ ジ タ ル ・ リテラシーやスキルの向上、それによる社会的包摂の促進を目標として掲げてい る。 重 要 な ア ク シ ョ ン と し て は 以 下 の 二 つ が あ げ ら れ て い る 。( コ )欧 州 社 会 基 金 規 則 ( 2014~ 2020) に お け る デ ジ タ ル ・ リ テ ラ シ ー へ の 取 組 み を 優 先 す る 。 ( サ ) 「 欧 州 資 格 枠 組 み 」 や EU 共 通 の 電 子 履 歴 書 「 Europass」 と 連 携 し て 、 ICT 技 術 者 や ICT ユ ー ザ の 能 力 資 格 認 定 に 関 す る 環 境 を 整 え 、 ICT の 専 門 家 を 養 成 す る 。 ⑦ 欧 州 社 会 の 利 益 と ICT ICT を 高 齢 化 社 会 、気 候 変 動 、エ ネ ル ギ ー 消 費 の 削 減 、運 輸・交 通 の 効 率 化 と い っ た 社 会 問 題 へ の 対 応 の た め に 運 用 す る こ と も 重 要 な 課 題 で あ る 。こ う し た 問 題 の 解 決 は 欧 州 社 会 の 利 益 に つ な が る 。こ う し た 認 識 の も と 、本 行 動 計 画 で は 以 下 の よ 欧州連合(EU) 839 うな課題とアクションをあげている。 ( ⅰ ) 環 境 問 題 と ICT EU は 温 室 効 果 ガ ス を 2020 年 に 1990 年 比 で 20% 削 減 す る こ と を 目 標 と し て 掲 げ て い る 。ICT は 資 源 集 約 的 な 生 産 物 や サ ー ビ ス を 緩 和 す る 潜 在 性 を 持 ち 、エ ネ ル ギ ー 削 減 へ の 寄 与 が 見 込 ま れ る 。具 体 的 に は 、ス マ ー ト グ リ ッ ド や ス マ ー ト メ ー タ ー 、ゼ ロ エ ネ ル ギ ー 建 築 、ITS 高 度 道 路 交 通 シ ス テ ム な ど の ソ リ ュ ー シ ョ ン 実 行 を 促 進 し て い く 。 重 要 な ア ク シ ョ ン は 以 下 の と お り で あ る 。 ( シ ) 2011 年 に 、 エ ネ ル ギ ー 効 率 化 や 温 室 ガ ス 対 策 の 共 通 方 針 と 実 行 計 画 を ICT セ ク タ ー が 遵 守 し て い るか評価する。 ( ⅱ ) ICT を 基 盤 と し た 持 続 可 能 な ヘ ル ス ケ ア ICT は ケ ア の 質 を 改 善 し 、 医 療 コ ス ト を 削 減 し 、 ま た 自 立 し た 生 活 を 促 進 す る 。 こ う し た e ヘ ル ス サ ー ビ ス の 潜 在 性 を 最 大 限 に 引 き 出 す た め に 、相 互 運 用 や 加 盟 国 間 協 力 を 妨 げ る よ う な 法 的・組 織 的 障 壁 の 撤 廃 を 進 め て い く 。本 課 題 は EU と 加 盟 各 国 に よ る 共 同 プ ロ グ ラ ム 「 環 境 介 護 生 活 ( Ambient Assisted Living ) 」 と 連 携 している。 重 要 な ア ク シ ョ ン は 以 下 の 2 点 で あ る 。( ス )ヘ ル ス ケ ア に 関 す る 安 全 な オ ン ラ イ ン ・ ア ク セ ス の パ イ ロ ッ ト ア ク シ ョ ン を 実 行 す る 。 具 体 的 な 目 標 と し て 2015 年 ま で に 健 康 医 療 デ ー タ へ の ア ク セ ス を 提 供 し 、 2020 年 ま で に 遠 隔 医 療 サ ー ビ ス を 運 用 す る 。( セ ) 患 者 の 電 子 記 録 の 扱 い に 関 す る 共 通 見 解 を 2012 年 ま で に 提 出 す る。 (ⅲ)文化的多様性とコンテンツ・クリエイティブの促進 デ ジ タ ル メ デ ィ ア は 文 化 的 で ク リ エ イ テ ィ ブ な コ ン テ ン ツ の 普 及 を 促 し 、メ デ ィ ア の 多 様 化 を も た ら す 。し か し 、現 在 の ラ イ セ ン ス シ ス テ ム は 一 貫 し て お ら ず 、複 雑 で あ り 、文 化 的 遺 産 の デ ジ タ ル 化 の 障 害 に な っ て い る 。こ う し た 認 識 の も と 、権 利 ク リ ア ラ ン ス の 整 備 、 EU パ ブ リ ッ ク 電 子 図 書 館 プ ロ ジ ェ ク ト 「 Europeana」の 推 進 、 AVMS 指 令 の 遵 守 な ど に 取 り 組 ん で い く 。 本 課 題 に 関 す る 重 要 な ア ク シ ョ ン は 以 下 の と お り で あ る 。( ソ ) EU パ ブ リ ッ ク 電 子 図 書 館 プ ロ ジ ェ ク ト「 Europeana」と コ ン テ ン ツ の デ ジ タ ル 化 を 推 進 す る た め の 財 源 モ デ ル を 2012 年 ま で に 提 起 す る 。 (ⅳ)電子政府 電子政府サービスはすべての市民と事業者にコストのかからない良質なサービ ス を 提 供 し 、開 か れ た 透 明 な 政 府 を 実 現 す る 。既 に 欧 州 で は 質 の 高 い 電 子 政 府 サ ー ビ ス が 利 用 可 能 で あ る 。し か し 、電 子 政 府 サ ー ビ ス の 利 用 は 各 国 で 開 き が あ り 、市 民 の 利 用 率 も 低 い 。 2009 年 の EU 市 民 に よ る イ ン タ ー ネ ッ ト 経 由 の 電 子 政 府 利 用 は 38% に と ど ま っ て い る 。こ う し た 背 景 の も と 、EU で は 電 子 政 府 サ ー ビ ス の 拡 充 840 欧州連合(EU) につとめていく。 本 課 題 に 関 す る 重 要 な ア ク シ ョ ン は 以 下 の と お り で あ る 。 ( タ ) 2012 年 ま で に 電 子 ID と 電 子 認 証 の 相 互 承 認 協 定 を 理 事 会 決 定 及 び 議 会 決 定 と し て 確 立 し 、 す べ て の 加 盟 国 に EU 基 準 の 「 認 証 サ ー ビ ス 」 を 提 供 す る 。 ( ⅴ ) 高 度 道 路 交 通 シ ス テ ム ( ITS) 高 度 道 路 交 通 シ ス テ ム ( ITS) は 運 輸 ・ 交 通 の 円 滑 化 を も た ら す 。 本 課 題 に 関 し て は 、道 路 、鉄 道 、航 空 、海 運 ・水 路 ご と に プ ロ ジ ェ ク ト が 設 け ら れ て お り 、そ れ ぞれにアクションプランが設定されている。 出 所 : European Commission デジタル・アジェンダの進捗状況については、欧州委員会が毎年報告を行ってい る 。2012 年 6 月 の 報 告 で は 、デ ー タ 通 信 の 増 加 、モ バ イ ル 技 術 へ の 移 行 、モ バ イ ル サ ー ビ ス の 普 及 と い っ た 傾 向 が 確 認 さ れ る ICT 分 野 は 、 現 在 EU の GDP の 8% を 占 め 、 800 万 の 雇 用 を 抱 え る 重 要 な 領 域 で あ る 、 と 現 状 の 整 理 を 行 っ て い る 。 同 時 に、高速インターネットやオンライン・コンテンツが十分に提供されず、調査研究 や関連スキルの面でも課題が確認され、これらの問題が持続的な経済成長を妨げて いる、と指摘している。そして具体的な進捗状況を提示している。 ・ユ ビ キ タ ス な ブ ロ ー ド バ ン ド は ほ ぼ 達 成 さ れ た:欧 州 市 民 の 95% が ブ ロ ー ド バ ンドに接続可能である。 ・消費者や事業者はモバイルへと急速に移行している:モバイル・ブロードバン ド 契 約 は 2 億 1,700 万 に 達 し た 。 ・ 日 常 的 な イ ン タ ー ネ ッ ト 利 用 者 が 3 億 8,076 万 に : 欧 州 の 途 上 国 等 で 1,500 万 人が初めてインターネットに接続した。 ・電 子 政 府 が 推 進 さ れ 、公 共 サ ー ビ ス の 品 質 が 向 上 し た:ギ リ シ ャ 、ポ ル ト ガ ル 、 アイルランドで電子政府の推進が顕著であった。 以上のような成果が見られる一方で課題も示されている。 ・ 労 働 者 の 半 数 は 十 分 な ICT ス キ ル を 獲 得 し て い な い 。 ・オンライン・ショッピングは依然国内レベルにとどまる。 ・中小企業の電子商取引は滞っている。 ・研究開発は競争国に遅れをとっている。 ・通信事業者は消費者に高額のモバイル・ローミング料金を請求している。 (4)近年の政策動向 ①ネットワーク整備政策 欧 州 委 員 会 の 農 業 ・ 農 村 開 発 ( Agriculture and Rural Development ) 総 局 は 、 2009 年 3 月 3 日 、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 「 ル ー ラ ル エ リ ア に 近 代 的 ICT を 」 を 発 表 し 、 2010 年 ま で に 欧 州 に お け る ブ ロ ー ド バ ン ド 完 全 普 及 を 目 指 す 計 画 を 発 表 し た 。 資 金 源 と し て 、 地 域 格 差 是 正 の た め の 欧 州 構 造 基 金 ( Structural Funds) や 「 農 村 欧州連合(EU) 841 振興欧州農業基金」 ( European Agricultural Fund for Rural Development:EAFRD) を想定している。 欧 州 委 員 会 は 、2010 年 9 月 20 日 、デ ジ タ ル・ア ジ ェ ン ダ の 優 先 課 題 で あ る 高 速 ・ 超高速ブロードバンドの展開と普及を促進するための三つの補完的施策を採択した。 ( ア ) 「 次 世 代 ア ク セ ス ( NGA) 網 へ の 規 制 下 の ア ク セ ス に 関 す る 委 員 会 勧 告 」 は 、新 し い 光 フ ァ イ バ 網 へ の ア ク セ ス に 関 し 共 通 の 規 制 的 ア プ ロ ー チ を 設 定 し 、 加盟国規制機関に対し投資と競争の必要性のバランスをはかるよう義務付けて いる。 (イ)「5 年間の無線周波数政策プログラムを確立する欧州議会/欧州理事会決 定 に 向 け て の 委 員 会 提 案 」は 、2013 年 ま で に 無 線 ブ ロ ー ド バ ン ド 用 に 十 分 な 周 波数帯を確保することが重要とされている。 (ウ)「ブロードバンド・コミュニケーション」は、ブロードバンド目標の達成 に向けての枠組みを設定し、高速・超高速ブロードバンド網に対する政府/民 間投資の促進方策を示している。 また、欧州委員会では高速・超高速ブロードバンドの普及を図るために公的資金 の 投 入 を 行 っ て い る 。2011 年 1 月 に は 、EU の 国 家 補 助 ガ イ ド ラ イ ン に 基 づ き 、ブ ロ ー ド バ ン ド の 普 及 に 関 連 す る 公 的 基 金 の 補 助 申 請 20 件 の 承 認 を 発 表 し た 。 補 助 金 の 総 額 は 18 億 €超 に の ぼ り 、カ タ ル ー ニ ャ 、フ ィ ン ラ ン ド 、バ イ エ ル ン な ど の 地 域におけるブロードバンドの普及に充てられた。 そ し て 、 2011 年 10 月 に は 、 高 速 ブ ロ ー ド バ ン ド 網 の 敷 設 、 及 び ブ ロ ー ド バ ン ド 利 用 サ ー ビ ス に か か わ る プ ロ ジ ェ ク ト に 対 し て 、 2014 年 か ら 2020 年 の 間 で 約 92 億 €の 投 資 を 行 う 提 案 が 欧 州 委 員 会 か ら 発 表 さ れ た 。投 資 は 株 式 、債 券 、助 成 の 形 式 で 行 わ れ 、 民 間 投 資 の 補 完 、 並 び に 地 域 、 地 方 、 国 家 、 EU レ ベ ル の 公 的 基 金 の 補 助 を ね ら い と し て い る 。 な お 、 92 億 €の 投 資 の う ち 70 億 €は 高 速 ブ ロ ー ド バ ン ド の 基盤整備への利用を想定している。 欧 州 委 員 会 は 、 無 線 ブ ロ ー ド バ ン ド と し て LTE の 活 用 に も 期 待 し て お り 、 2004 年 か ら 2007 年 に か け 、 2,500 万 €の 研 究 投 資 を 行 っ て き た 。 2009 年 8 月 に は 、 LTE-Advanced に 関 す る 調 査 研 究 に 総 計 1,800 万 €を 投 資 す る 計 画 を 提 案 、 2010 年 1 月から調査研究が行われている。 ②モノのインターネット 2012 年 4 月 、欧 州 委 員 会 は 無 線 端 末 を 利 用 し た モ ノ の イ ン タ ー ネ ッ ト( Internet of Things)の 規 則 制 定 に 関 す る コ ン サ ル テ ー シ ョ ン を 開 始 し た 。モ ノ の イ ン タ ー ネ ットでは、電話、自動車、家電、衣類、食料品がスマートチップを通じて無線イン ターネットに接続されることで、データの収集や共有が可能になる。欧州委員会で は、適切な端末管理や情報蓄積を確保し、利用者の行動パターン、位置、性向に配 慮しながら、モノのインターネットの経済的・社会的な利益の潜在性を引き出すた 842 欧州連合(EU) め に 必 要 な 枠 組 み に つ い て 、 2012 年 7 月 ま で 意 見 募 集 を 行 っ た 。 現 在 、一 般 的 な 利 用 者 は イ ン タ ー ネ ッ ト に 接 続 可 能 な 端 末 を 2 台 保 有 し て い る が 、 2015 年 に は 7 台 ま で 増 加 し 、世 界 で 250 億 の 端 末 が 無 線 接 続 さ れ る と 予 測 さ れ る 。 そ し て 、 2020 年 に は 500 億 ま で 増 加 す る と 見 ら れ る 。 欧 州 委 員 会 は コ ン サ ル テ ー ションを通じて、プライバシー、セイフティ、セキュリティ、モノのインターネッ トをサポートする基盤の整備、倫理、相互接続性、ガバナンス、標準化について検 討 を 行 っ て い く 。コ ン サ ル テ ー シ ョ ン で 寄 せ ら れ た 意 見 は 、2013 年 夏 ご ろ に 提 示 す る予定の欧州委員会の勧告に反映される。なお、モノのインターネットの推進は、 デジタル・アジェンダでも優先課題と位置付けられている。 ③電子政府 欧州委員会は、欧州の競争力を強化し、各国の公共機関が限られた予算の中で費 用効率の高い公共サービスの提供を可能にし、また市民や企業にとっても容易かつ 高品質な公共サービスへのアクセスを実現するという観点から電子政府の推進に取 り組んでいる。 欧 州 委 員 会 は 、 2010 年 12 月 に EU 加 盟 各 国 の 公 共 機 関 と 協 力 し て 、 イ ン タ ー ネ ットを介した行政サービスの拡大及び改善のための「電子政府アクションプラン」 を 発 表 し た 。 本 プ ラ ン は 2006 年 に 発 表 さ れ た 電 子 政 府 に 関 す る 5 年 計 画 に 続 く も の で 、 2011~ 2015 年 の 具 体 策 が 提 案 さ れ て い る 。 ア ク シ ョ ン プ ラ ン は 次 の 四 つ の カテゴリーに分けられている。 ・サービス利用者の権限の強化(利用者の要求にかなうサービス設計、サービス の共同構築、公共セクター情報の再利用、透明性の改善、政策形成過程への市 民や企業の関与) ・ EU 域 内 市 場 ( 企 業 向 け の シ ー ム レ ス ・ サ ー ビ ス の 実 現 、 個 人 の 移 動 性 、 国 境 を越えたサービスの実行) ・公共手続の簡素化、効率化(電子調達の推進など組織運営の改善、行政の負荷 の改善、グリーン政府) ・電子政府に必要となる技術的条件の実現(仕様の公開と相互運用、電子署名指 令の改善など重要条件の準備) ま た 、デ ジ タ ル・ア ジ ェ ン ダ の 目 標 と 連 携 す る 形 で 以 下 の 目 標 が 掲 げ ら れ て い る 。 ・ 2015 年 ま で に EU 市 民 に よ る 電 子 政 府 サ ー ビ ス の 利 用 率 を 50% 、 企 業 に よ る 利 用 率 を 80% に 引 き 上 げ る 。 ・ 起 業 家 は EU 域 内 で あ れ ば 、 ど こ に お い て も 独 立 し た ビ ジ ネ ス を 運 営 で き る よ う に す る 。 ま た 、 市 民 に つ い て は EU 域 内 で あ れ ば ど こ で も 学 習 、 労 働 、 移 住 ができるよう主な公共サービスのオンライン利用を保証する。 電 子 政 府 の 進 捗 状 況 に 関 し て 、 欧 州 委 員 会 は 2011 年 2 月 に 「 欧 州 電 子 政 府 ベ ン チマーク報告書」を公表している。報告書によると、自動車登記、税金の申告、新 欧州連合(EU) 843 会 社 の 登 記 な ど 基 本 的 な 公 共 サ ー ビ ス 20 種 類 を オ ン ラ イ ン で 利 用 で き る 割 合 は 、 EU 全 体 平 均 で 2009 年 の 69% か ら 2010 年 に は 82% に 増 加 し た 。 基 本 的 公 共 サ ー ビスのすべてをオンラインで利用可能な国として、オーストリア、アイルランド、 イタリア、マルタ、ポルトガル、スウェーデンが挙げられている。また前年から大 き な 改 善 が 見 ら れ た 国 と し て 、ブ ル ガ リ ア 、イ タ リ ア 、ラ ト ビ ア が 挙 げ ら れ て い る 。 その他、会社設立の手続や職探しのオンライン化についても報告されており、前 者については、オーストリア、デンマーク、エストニア、アイルランド、スウェー デン、英国でサービスの提供が進んでいる。後者については専用ポータル等を提供 し て い る の は 46% に と ど ま っ て い る 。 な お 公 共 調 達 の 電 子 化 ( eProcurement) に つ い て は 70% の 公 共 機 関 で 導 入 さ れ て い る も の の 、改 善 の 余 地 が あ る と 指 摘 し て い る 。欧 州 委 員 会 で は 公 共 調 達 の 電 子 化 に よ り 、公 共 調 達 費 を 最 大 30% 削 減 で き る と 見積もっている。 ④クラウド・コンピューティング ク ラ ウ ド ・ コ ン ピ ュ ー テ ィ ン グ 産 業 は 、 2014 年 ま で に 欧 州 で 350 億 €の 収 入 を 生 み出すと予想されている。こうした成長性を踏まえて、デジタル・アジェンダを担 当するクルース副委員長は、クラウド・コンピューティングの推進に度々言及して いる。 2011 年 3 月 の ス ピ ー チ で は EU 諸 国 の 中 小 企 業 に と っ て 、 ク ラ ウ ド 利 用 は IT コ ストを削減し、資源の有効利用を図る最も有効な手段であることを主張した。その 際 、先 端 技 術 開 発 支 援 プ ロ グ ラ ム「 Seventh Framework Programme( 2007~ 2013)」 の枠組みでクラウド・コンピューティングに関する汎欧州レベルのプロジェクト支 援を行っていることを明らかにし、代表的な 3 例を紹介している。 ( ア ) RESERVOIR( 欧 州 ク ラ ウ ド の た め の 技 術 ) : ク ラ ウ ド ・ サ ー ビ ス 提 供 に おけるコンピューティング・リソースの平均化を図るため、利用の少ないコン ピューティング・リソースを、オン・デマンドベースで安価に配分するソフト ウェアの開発。 ( イ )OPTIMIS( 中 小 企 業 の ク ラ ウ ド 利 用 支 援 ):中 小 企 業 に よ る ク ラ ウ ド 上 の アプリケーション管理を支援するツールキットの開発。 ( ウ )CONTRAIL( コ ン ピ ュ ー テ ィ ン グ 基 盤 の 最 大 現 の 利 用 の た め の ク ラ ウ ド ): クラウド・サービス提供を希望する企業向けに、コンピューティング基盤の使 用キャパシティを最大化するメソッドの研究。 2011 年 5 月 に 欧 州 委 員 会 は 、 2012 年 中 に 提 示 す る 予 定 の 欧 州 ク ラ ウ ド ・ コ ン ピ ューティング戦略に向けて、クラウド・コンピューティングの最適発展方策に関す る コ ン サ ル テ ー シ ョ ン を 開 始 し た 。 コ ン サ ル テ ー シ ョ ン は 8 月 31 日 ま で の 期 間 、 オンラインで実施された。コンサルテーションでは以下の問題に関する意見が求め られた。 844 欧州連合(EU) ・データの保護及び法的責任の問題―特に国境を越えるデータについて― ・その他の法的・技術的障害 ・標準化及び相互運用性を確保するためのソリューション ・中小企業によるクラウド・サービスの利用 ・クラウド・コンピューティングの研究及び技術革新を促進する方法 こうした問題について産業界は、クラウド・コンピューティング・サービスに関 する首尾一貫した法的枠組みの作成が必要であるという要望書を欧州委員会に送付 した。具体的には、データ保護法案におけるクラウド・コンピューティングとの整 合性や中小企業のクラウド・コンピューティング導入促進の保証などを要請した。 2012 年 9 月 27 日 、欧 州 委 員 会 は 新 た な ク ラ ウ ド 戦 略「 欧 州 の ク ラ ウ ド ・ コ ン ピ ューティングの潜在力の解放」を公表した。戦略を通じて、経済分野におけるクラ ウ ド・コ ン ピ ュ ー テ ィ ン グ の 利 用 を 推 進 し 、250 万 の 新 た な 雇 用 創 出 と 、2020 年 ま で に GDP 換 算 で 年 間 1,600 億 €の 経 済 成 長 を 図 っ て い く 。 戦略には次のような重要アクションが盛り込まれている。 ・技 術 標 準 を 整 備 し 、相 互 運 用 、デ ー タ 可 搬 性 、可 逆 性 を 向 上 さ せ る 。2013 年 ま でには標準を作成する必要がある。 ・ ク ラ ウ ド 事 業 者 の 信 頼 証 明 に 関 す る EU 広 域 ス キ ー ム を 設 け る 。 ・ SLA( サ ー ビ ス 品 質 保 証 契 約 ) も 含 め 、 「 安 全 で 公 平 」 な ク ラ ウ ド ・ コ ン ピ ュ ーティング契約のモデルを発展させる。 ・クラウド市場を形成するために加盟各国と産業界は連携して公的セクターのバ イイング・パワー(購買力)を活用する。 ⑤国際ローミング料金規則 欧州委員会では、従来から国際ローミング料金の高額な費用及びその複雑性が問 題 視 さ れ 、2007 年 7 月 か ら 上 限 料 金 の 設 定 が 行 わ れ て い る 。こ の 料 金 体 制 は 、 「 Euro tariff( ユ ー ロ タ リ フ ) 」 と 名 付 け ら れ た 。 当 初 、音 声 通 話 の 上 限 料 金 は 、発 信 で 0.49€/ 分 、着 信 で 0.24€/ 分 と 設 定 さ れ た が 、毎 年 段 階 的 に 引 き 下 げ ら れ 、 2009 年 に は 発 信 0.43€と 着 信 0.19€に 、2010 年 7 月 1 日 か ら は 発 信 0.39€と 着 信 0.15€、 2011 年 7 月 か ら は 発 信 0.39€、 着 信 0.11€ と さ れ て い る 。2009 年 7 月 か ら は テ キ ス ト・メ ッ セ ー ジ に も 適 用 さ れ 、上 限 が 0.11 €と な っ た 。 以 前 の 料 金 の 3 分 の 1 程 度 に 低 下 し て い る と い う 。 2010 年 7 月 か ら は デ ー タ ・ ロ ー ミ ン グ 料 金 に も 上 限 を 設 け て い る 。 同 規 制 で は 、 EU 域 内 事 業 者 の サ ー ビ ス 加 入 者 が 、 自 国 外 で 携 帯 端 末 あ る い は コ ン ピ ュ ー タ を 介 してモバイル・インターネットに接続した場合、ローミング利用料金の上限は自動 的 に 50€/ 月 に 設 定 さ れ る 。事 業 者 は 利 用 者 の デ ー タ・ロ ー ミ ン グ 料 金 が 上 限 の 80% に到達した際には警告を与えなければならない。また、上限を超えた利用者が更に データ・ローミング利用を希望した場合でも、事業者はその月の間はモバイル・イ 欧州連合(EU) 845 ンターネット接続を遮断する義務が課せられている。なお同時に卸売データ・ロー ミ ン グ に も 上 限 が 設 け ら れ 、送 受 信 1MB 当 た り で 現 行 の 1€か ら 0.8€に 、2011 年 7 月 か ら は 更 に 0.5€に ま で 引 き 下 げ ら れ た 。た だ し 、欧 州 委 員 会 は 依 然 と し て 料 金 が 高 額 で あ る と 指 摘 し て い る 。ま た 、2007 年 に 設 け ら れ た 規 制 は 2012 年 6 月 末 が 有 効期限であるため、早急に新たな規制を設ける必要があった。 2012 年 3 月 28 日 、欧 州 連 合 理 事 会 、欧 州 議 会 、欧 州 委 員 会 の 3 者 は 、携 帯 ロ ー ミング料金の更なる引下げを行う規制案で合意した。規制案は、欧州域内移動時の モバイル通信サービスの利用に際して、ユーザに過剰な料金負担が発生しないこと を 目 的 と し て い る 。規 制 案 は 、2012 年 5 月 に 開 催 さ れ た 欧 州 議 会 本 会 議 で 賛 成 多 数 で可決・承認された。また、議会承認後に開催された欧州連合理事会においても採 択 さ れ 、 2012 年 7 月 1 日 に 発 効 し た 。 料 金 は 毎 年 段 階 的 に 引 き 下 げ ら れ る こ と と さ れ て お り 、 有 効 期 限 は 2022 年 6 月 30 日 ま で と な っ て い る 。 新規則では、競争の導入と消費者の選択肢の増加を進める構造的措置を導入する こ と で 携 帯 ロ ー ミ ン グ 料 金 の 高 額 化 を 抑 制 し て い く 。 2014 年 7 月 1 日 以 降 、 利 用 者は海外において、自国で契約している事業者とは別のローミング・サービスを選 択することが可能になる。併せて、いわゆる「ビル・ショック」(想定外の料金高 額 請 求 ) を 防 ぐ た め 、 域 外 に 滞 在 す る 加 入 者 に 対 し 、 デ ー タ 受 信 料 が 50€、 あ る い は本人が申し出た上限以上に達した場合にはテキスト・メッセージや e メール等で 警告を発する措置も実施されることになる。 公衆モバイル通信網への卸売りによるアクセスについても条件設定を行う。加え て、競争事業者がローミング・サービス市場に参入できるよう、卸売料金の上限と 小売り料金の間に妥当なマージンを設定する。そのほか、料金の透明性向上や料金 に関する情報提供の改善についても規定が設けられる。 携帯ローミング料金 小売上限価格(付加価値税別) 現行 2012年 7月 2013年 7月 2014年 7月 1日 以 降 1日 以 降 1日 以 降 設定なし 0.7€ 0.45€ 0.2€ 通 話 料 金 ( 1分 当 た り ) 0.35€ 0.29€ 0.24€ 0.19€ 着 信 料 金 ( 1分 当 た り ) 0.11€ 0.08€ 0.07€ 0.05€ SMS( 発 信 )( 1通 当 た り ) 0.11€ 0.09€ 0.08€ 0.06€ デ ー タ ( 1MB当 た り ) 携帯ローミング料金 卸売上限価格(付加価値税別) 現行 デ ー タ ( 1MB当 た り ) 0.5€ 2012年 7月 2013年 7月 2014年 7月 1日 以 降 1日 以 降 1日 以 降 0.25€ 0.15€ 0.05€ 846 欧州連合(EU) 通 話 料 金 ( 1分 当 た り ) 0.18€ 0.14€ 0.1€ 0.05€ SMS( 発 信 )( 1通 当 た り ) 0.04€ 0.03€ 0.02€ 0.02€ 出 所 : 欧 州 議 会 プ レ ス リ リ ー ス ( 2012 年 3 月 28 日 ) 国 際 電 話 料 金 の 例 ( 2013 年 8 月 現 在 ) 国名 通信事業者 国 際 電 話 料 金 /分 ポルトガル Vodafone 0.465€ スペイン Movistar 0.65€ イタリア TIM 0.35€ フランス Orange 0.35€ ベルギー Belgacom 0.97€ 英国 Vodafone 1.19€ ドイツ T-mobile 0.48€ ドイツ O2 0.75€ ハンガリー Telenor 0.35€ 出 所 : 欧 州 議 会 プ レ ス リ リ ー ス ( 2013 年 8 月 6 日 ) 2013 年 7 月 、 デ ジ タ ル ・ ア ジ ェ ン ダ 担 当 委 員 で あ る Neelie Kroes 副 委 員 長 は 、 2014 年 7 月 か ら 2022 年 6 月 の 期 間 に ロ ー ミ ン グ 料 金 の 上 限 を 3 セ ン ト /分 と す る こ と を 提 案 し て お り 、2013 年 7 月 時 点 の 10 セ ン ト /分 と 比 べ る と 70 パ ー セ ン ト の 削 減 に な る は ず で あ っ た が 、 2013 年 8 月 に こ れ が 廃 案 に な っ て い る 。 ⑥プライバシー保護 2012 年 1 月 、欧 州 委 員 会 は オ ン ラ イ ン の プ ラ イ バ シ ー 権 と 欧 州 デ ジ タ ル 経 済 の 加 速 化 の 強 化 を 目 的 と し て「 1995 年 EU デ ー タ 保 護 指 令 」の 包 括 的 な 改 正 を 行 う こ と を 発 表 し 、 改 正 案 ( 「 EU デ ー タ 保 護 規 則 」 案 ) を 提 出 し た 。 改 正 の キ ー ポ イ ン ト は以下のとおりである。 ( ア ) EU 域 内 に お け る 規 制 の 単 一 化 ・ 簡 素 化 ・「指令」から「規則」への変更 ・事業者による行政手続等の簡素化 ・ EU 加 盟 国 の デ ー タ 保 護 当 局 間 の 協 力 メ カ ニ ズ ム の 創 設 (イ)個人データ保護ルールの強化 ・「忘れられる権利」の規定導入:データ管理者がユーザからネット上の個人 データの削除要請を受けた場合、データを扱う第三者に当該要請を通知する義 務が課せられる ・「データ持ち運びの権利」:市民は自身の個人データのコピーをデータ管理 者から取得できる。また、自身の個人データを別のアプリケーションに移行 させる権利を持つ 欧州連合(EU) 847 ・「プライバシー・バイ・デザイン」原則:リスクが生じる可能性がある個人 データの扱いに際して影響評価を実施する ・悪影響を及ぼす可能性がある事案が認められた際には企業や団体は速やかに データ保護当局に通知 (ウ)グローバルな課題への対応 ・ EU 域 外 の 事 業 者 が EU 市 場 で 活 動 し 、 市 民 に 物 品 ・ サ ー ビ ス の 提 供 を 行 う 場合にデータ保護規則を適用するための規定を整備 ・ EU 域 内 か ら 域 外 へ の 個 人 デ ー タ の 転 送 に 関 す る ル ー ル の 明 確 化 ・ 簡 素 化 (エ)その他 ・制裁の導入:独立データ保護機関の権限を強化する。データ保護規則に違反 し た 場 合 は 最 大 100 万 €の 制 裁 金 を 科 す 、 あ る い は 企 業 に 対 し て 全 世 界 で の 売 上 高 の 2% に 相 当 す る 課 徴 金 を 科 す ⑦ネットワークの安心・安全に向けた取組み 欧 州 連 合( EU)は 、2009 年 か ら 、イ ン タ ー ネ ッ ト の 安 心・安 全 政 策 で あ る「 Safer Internet」 の 新 プ ロ グ ラ ム を 開 始 し て い る 。 期 間 は 2009 年 か ら 2013 年 の 5 年 間 、 予 算 は 5,500 万 €で あ る 。 新 「 Safer Internet」 で は 、 ネ ッ ト 上 の 違 法 ・ 有 害 情 報 に 対処すること、安心・安全に関する意識向上活動、安心・安全に関する様々な知見 をまとめたナレッジ・ベースの構築、政策への青少年の意見の導入などが主要テー マとなっている。 2012 年 5 月 に は 、欧 州 委 員 会 は 青 少 年 が デ ジ タ ル 世 界 の 便 益 を 十 分 か つ 安 全 に 得 るために必要なデジタル技能とツールを提供する計画を作成した。現在、青少年の 75% が イ ン タ ー ネ ッ ト を 利 用 し て お り 、う ち 約 3 分 の 1 は 移 動 電 話 か ら 利 用 し て い る。しかし、インターネットはもともと大人向けにデザインされており、オンライ ン上で弱い立場にある青少年を守る対策の必要性を欧州委員会は指摘している。こ うした問題意識に基づき作成された新戦略では四つの行動目標が提示された。 ・創造的な教育向けオンライン・コンテンツの制作を促し、年齢に適したコンテ ンツへのアクセスを提供するプラットフォームを開発する。 ・青少年のデジタル・メディア・リテラシー及びオンライン上での自己責任能力 を 育 む た め 、 EU 域 内 の す べ て の 学 校 で オ ン ラ イ ン の 安 全 に 関 す る 啓 発 及 び 教 育を強化する。 ・オンラインへの参加を保護するために必要なツールを青少年とその保護者に与 え、青少年にとって安全な環境を創出する。一例として、オンラインの有害コ ンテンツや行動を報告するメカニズム、年齢に適したプライバシー設定の透明 性確保、扱いやすいペアレンタル・コントロールが挙げられる。 ・革新的な技術ソリューションの研究及び利用を促進し、オンライン上に散見さ れる青少年の性的虐待要素を撲滅する。 848 欧州連合(EU) 電 Ⅰ 監督機関 1 欧州委員会 波 ( 1 ) 電 波 政 策 グ ル ー プ ( Radio Spectrum Policy Group : RSPG) 2002 年 7 月 に「 Decision( 2002/622/EC)」に よ り 、電 波 政 策 事 項 、政 策 手 法 の 調整並びに無線周波数の利用及び効率的な使用に関する調和のとれた状態について 欧 州 委 員 会 を 支 援 し 助 言 す る こ と を 目 的 と し て RSPG が 設 立 さ れ た 。 ( 2 ) 無 線 周 波 数 委 員 会 ( Radio Spectrum Committee: RSC) 2002 年 3 月 に「 Decision( 676/2002/EC)」に 基 づ き 、電 波 の 効 率 的 な 利 用 の た めに加盟国間の調和を確保し、技術的導入法案の採択について欧州委員会を補佐す る た め 、 RSC が 設 立 さ れ た 。 2 EC、 CEPT 及 び ETSI の 関 係 新たに調和標準を作成する場合等において、関係機関のアクションは次図のとお りである。 ETSI 相互連絡 要請 システム参考文書 CEPT 要請 EC ERO ECC Harmonized 調和標準 standard InfoSoc InfoSoc (spectrum) (spectrum) 要請 RSC (Equipment) RSPG report 報告 Enterprise Enterprise 指令 TCAM 指令 各国の主官庁 :周波数の割当 各国の主官庁:周波数の割当て 出所:各種資料より作成 出所:各種資料より作成 周 波 数 関 連 事 項 に つ い て は 、欧 州 委 員 会 は 、調 和 さ れ た 周 波 数 提 案 に つ い て CEPT へ mandate( 要 請 )を 発 出 す る こ と が で き る 。CEPT は 、要 請 に 対 し ECC( Electronic Communications Committee ) で 検 討 し 報 告 書 ( report) を 発 出 す る 。 欧 州 委 員 会 欧州連合(EU) 849 で は 、 そ の 検 討 結 果 に 基 づ き RSC と 協 力 し て 周 波 数 の 調 和 案 を 準 備 し 、 欧 州 委 員 会 と し て の 決 定 ( Decision) を 行 う 。 そ の 決 定 に よ る 周 波 数 割 当 て は EU 全 体 に 適 用される。一方、技術的事項(周波数関連事項を除く)については、欧州委員会か ら 発 出 さ れ た 要 請 に 基 づ き 、 ETSI で 検 討 し 、 そ の 結 果 を system reference document( シ ス テ ム 参 考 文 書 : 新 シ ス テ ム を 構 築 す る 場 合 や 、 既 存 の CEPT の 周 波 数 を 変 更 す る 場 合 に 作 成 さ れ る ETSI の 技 術 報 告 書 ) に よ り 、 欧 州 委 員 会 に 報 告 する。欧州委員会では周波数事項と同様な手順で技術的調和案を準備し、欧州委員 会としての決定を行う。 Ⅱ 規制枠組み EU の 電 波 関 連 の 規 制 の 枠 組 み は 、 以 下 の と お り 。 ① Radio Spectrum Decision( 676/2002/EC): 2003 年 4 月 24 日 発 効 、2009 年 12 月 16 日 修 正 無線周波数の効率的な使用に関して調和した状態を確保するために、欧州委員会 が 技 術 的 な 導 入 法 案 を 採 択 す る こ と を 定 め て い る 。 本 規 定 に 基 づ き RSC が 設 立 さ れた。 ② R&TTE 指 令 ( 1995/5/EC) : 2000 年 3 月 9 日 発 効 無線設備及び無線機器を市場に出荷し、自由に移動し、サービスに供するための 規制の枠組みを定めている。 ③ 認 可 指 令 ( 2002/20/EC) : 2002 年 4 月 24 日 発 効 、 2009 年 11 月 25 日 修 正 認 可( authorization)に か か る 規 則 及 び 条 件 を 調 和 さ せ 、か つ 簡 素 化 す る こ と に よ り 、EU 全 域 に お い て 電 子 通 信 ネ ッ ト ワ ー ク 及 び サ ー ビ ス の 提 供 を 促 進 し 、EU 単 一市場を成立するための規則を定めている。 ④ 枠 組 み 指 令 ( 2002/21/EC) : 2002 年 4 月 24 日 発 効 、 2009 年 11 月 25 日 修 正 EU 内 で の 調 和 の 取 れ た 統 一 的 な 枠 組 み を 確 立 す る た め 、 各 国 の 規 制 機 関 の 権 限 及び所掌、無線周波数や番号等希少資源の管理等を定めている。 ⑤ RSPG 設 立 決 定 ( 2002/622/EC) : 2002 年 7 月 27 日 発 効 Ⅲ 電波政策の動向 1 免許制度 (1)免許手続 各加盟国の免許手続は、「認可指令」により、差別的でないこと、客観的である こ と 、公 平 で あ る こ と( proportionate)等 特 定 の EU 規 則 の 要 求 条 件 に 従 わ な け れ ばならないとされている。また、同指令では、周波数や国の電話番号計画の中での 番 号 に つ い て は 、 個 別 の 権 利 ( granting of specific right) を 与 え る こ と は 引 き 続 き必要であるとして認めるが、一般認可(免許不要局等)を原則とし、個別の使用 権(免許)を例外としている。 850 欧州連合(EU) (2)免許不要局制度 EU の 免 許 不 要 局 の 枠 組 み と し て 、 「 認 可 指 令 ( 2002/20/EC) 」 に お い て 、 簡 素 な 認 可 制 度 と し て 届 出 ( Notice) を 推 奨 し て お り 、 「 R&TTE 指 令 ( 1999/5/EC) 」 において、無線設備等の基準認証手続を定めている。 具 体 的 に は 、「 EC 決 定 2006/771」に お い て 、免 許 不 要 と な る SRD( Short Range Device)等 の 無 線 機 器 の 周 波 数 及 び 出 力 制 限 値 等 に つ い て 規 定 し て お り 、2010 年 5 月 に 、 「 EU 決 定 2010/368」 に よ り 追 加 修 正 し て い る 。 ま た 、 「 ERC 勧 告 70-03」 に お い て 、SRD( Short Range Device)の 共 通 周 波 数 割 当 て に つ い て 勧 告 し て い る 。 ( 3 ) WAPECS の 導 入 欧 州 委 員 会 は 、2006 年 7 月 に 、WAPECS( Wireless Access Policy for Electronic Communications Service) に 関 す る 要 請 を CEPT に 発 出 し 、 最 終 報 告 書 ( CEPT 報 告 書 019) が 、 2007 年 12 月 に 提 出 さ れ た 。 同 報 告 書 に よ れ ば 、 下 記 の 周 波 数 帯 が WAPECS の 導 入 に 適 し て お り 、 最 も 制 限 を 加 え る こ と が 少 な い 技 術 的 条 件 と し て ブ ロ ッ ク エ ッ ジ マ ス ク ( BEM) * に よ る 手 法 を 提 案 し て い る 。 ① 470-862MHz、② 880-915MHz/925-960MHz、③ 1710-1785MHz/1805-1880MHz、 ④ 1900-1980MHz/2010-2025MHz/2110-2170MHz 、 ⑤ 2500-2690MHz 、 ⑥ 3.4-3.8GHz 欧 州 委 員 会 で は 、 こ れ を 受 け て 、 3.4-3.8GHz 帯 及 び 2500-2690MHz 帯 に つ い て は 、 そ れ ぞ れ 「 EC 決 定 ( 2008/411/EC 及 び 2008/477/EC) 」 と し て WAPECS に よる周波数割当てを各国に義務付けている。 * 送 信 電 力 密 度 と ブ ロ ッ ク( 通 信 事 業 者 に 与 え ら れ て い る 周 波 数 帯 域 全 体 )エ ッ ジ か ら の 乖 離 周 波数との関係を示している。 2 周波数再分配制度 周 波 数 取 引 に つ い て は 、「 枠 組 み 指 令( 2002/21/EC)」第 9 条 の 3 に お い て 、加 盟国は周波数取引の導入が認められており、英国、イタリア、オランダ等では周波 数 取 引 を 法 制 化 し て い る が 、実 用 例 は 、英 国 に お け る 29GHz 帯 の FWA 等 で 周 波 数 取 引 が 行 わ れ て い る だ け で あ る 。 こ の よ う な 状 況 を 踏 ま え て 、 2010 年 11 月 の 枠 組 み 指 令 の 修 正 に よ り 、 同 指 令 第 9b 条 に お い て 、 「 周 波 数 の 移 転 又 は 賃 貸 が で き る 規定の策定を各国の義務とし、欧州委員会として、移転又は賃貸の周波数帯を確保 すること」という条文が追加されている。 3 基準・認証制度 EU 理 事 会 と 欧 州 議 会 は 、 1999 年 3 月 に 「 R&TTE 指 令 ( 1999/5/EC) 」 を 採 択 しており、無線設備等の基準認証手続を定めている。 こ れ に よ り 、 EU に 技 術 基 準 へ の 適 合 性 を 製 造 会 社 等 の 供 給 者 自 身 が 宣 言 す る こ と ( 自 己 適 合 宣 言 : declaration of conformity ) が 可 能 と な っ た 。 公 衆 電 気 通 信 回 線 に 接 続 さ れ る 端 末 機 器 に つ い て は 、 第 三 者 機 関 ( Notified Body: NB) の 関 与 を 欧州連合(EU) 851 伴わない自己適合宣言が可能となり、一方、無線周波数を利用する無線機器につい て は 、「 R&TTE 指 令 」の Annex Ⅲ 、Ⅳ 、Ⅴ に 規 定 さ れ て い る 第 三 者 機 関 の 関 与 を 伴う自己適合宣言が可能となっている。 具体的には、供給者は無線設備及び通信端末機器に関し、供給者若しくは試験所 で 試 験 を 行 い 、そ の 後 第 三 者 機 関 で 、「 R&TTE 指 令 」の Annex Ⅲ 、Ⅳ 、Ⅴ に 規 定 されている各プロセスに対応した作業を行った後、最終的に供給者が自己適合宣言 を 行 い 、 基 準 に 適 合 し て い る こ と を 表 示 す る CE マ ー ク を 当 該 機 器 に 付 け て 市 場 に 出荷することとなっている。 な お 、 Annex Ⅲ 、 Ⅳ 、 Ⅴ の い ず れ を 採 用 す る か は 供 給 者 が 選 択 で き る 。 内容 Annex Ⅱ 第三者機関が関与しない自己適合宣言 Ⅲ 第三者機関による試験方法の確認・選定 Ⅳ Ⅴ 4 適用機器 公衆電気通信回線に接続 される端末機器 無線設備及び通信端末機 器 第三者機関による試験報告書を含む技術構 無線設備及び通信端末機 成ファイルの評価 器 第三者機関による品質保証システムの評価 無線設備及び通信端末機 と認定 器 周波数分配制度 EU と し て 単 一 市 場 を 実 現 す る た め 、EU 域 内 の 周 波 数 分 配 に 関 す る 調 和 政 策 と し て、加盟国は下記の 2 項を課されている。 ①国内に独立の周波数管理機関を設置し、周波数管理機関は、年に 1 度、国内周 波数割当計画を欧州委員会に提出すること ②域内共通の周波数分配を国内に適用すること ま た 、具 体 的 な 周 波 数 帯 の 分 配 に つ い て EU と し て 加 盟 各 国 に 勧 告 し て お り 、2010 年 6 月 に は 、 790-862MHz 帯 を デ ジ タ ル テ レ ビ 転 換 後 の 再 利 用 と し て 、 2013 年 ま でに電子通信サービスとして利用可能とすることを加盟国に求めている。 更 に 、 「 Europa2020」 及 び 「 欧 州 デ ジ タ ル ・ ア ジ ェ ン ダ 」 の 目 標 達 成 の た め の ワイヤレスブロードバンド実現のために、周波数政策を求めた「5 か年無線周波数 政 策 プ ロ グ ラ ム( Radio Spectrum Policy Programme:RSPP)」Decision 案 が 2010 年 9 月 に 欧 州 委 員 会 か ら 提 案 さ れ 、 2011 年 12 月 EU 閣 僚 が 同 案 を 承 認 し 、 2012 年 2 月 に は 欧 州 議 会 も 同 案 を 承 認 し た 。 RSPP に お い て は 、 次 の こ と が 加 盟 国 に 求 められている。 ① 2013 年 初 め ま で に 10MHz 以 上 の ブ ロ ッ ク の 周 波 数 割 当 て の 実 現 852 欧州連合(EU) ② 2020 年 ま で に 、EU 全 市 民 に 30Mbps 以 上 の ブ ロ ー ド バ ン ド を 実 現 す る た め の 周波数割当てを実現 ③ 2012 年 初 め ま で に 、900/1800MHz 帯 、2.5-2.69GHz 帯 、3.4-3.8GHz 帯 を ワ イ ヤレスブロードバンドへ開放 ④ 2013 年 初 め ま で に 、 790-862MHz 帯 を 電 子 通 信 サ ー ビ ス の 利 用 に 確 保 ⑤ 790-862MHz、880-915MHz、925-960MHz、1710-1785MHz、1805-1880MHz、 1900-1980MHz、 2010-2025MHz、 2110-2170MHz、 2.5-2.69GHz で の 周 波 数 取引きを可能とする な お 、2012 年 世 界 無 線 通 信 会 議( WRC-12)に お い て EU は 、700MHz 帯 を 移 動 体 通 信 サ ー ビ ス に 利 用 す る こ と を 決 定 し て い る 。ま た 2012 年 11 月 5 日 の EU プ レ ス リ リ ー ス に よ る と 、 欧 州 委 員 会 は 2 GHz 帯 ( 1920-1980MHz と 2110-2170MHz の ペ ア )を 統 一 自 由 化 す る 決 定 を 行 い 、加 盟 国 に 対 し て 2014 年 6 月 30 日 ま で に 周 波数帯を空けるよう義務付けている。 5 電波利用料制度 EU 加 盟 国 の 電 波 利 用 料 制 度 は 、国 に よ り 異 な っ て い る が 、EU に は 、 「認可指令」 に電波利用料に関する次のような規定がある。①行政手数料として、行政コストを 超える規制機関の活動費(例えば、調和及び標準化コスト及びマーケット分析コス ト)を賄うために課すことができること、②無線周波数資源の使用の最大化を図る 手段として使用料金を課すことができること、③使用料金は、革新的なサービスの 展 開 や 市 場 に お け る 競 争 を 妨 げ る も の で あ っ て は な ら な い ( 前 文 第 32 項 ) を 挙 げ ることができる。 6 電波の安全性に関する基準 EU は 、 1999 年 7 月 に 「 EU 勧 告 ( 1999/519/EC) 」 に お い て 、 国 際 非 電 離 放 射 線 防 護 委 員 会 ( ICNIRP) ガ イ ド ラ イ ン の 公 衆 曝 露 制 限 値 を 加 盟 国 で 適 用 す る よ う 勧 告 し た 。 ま た 、 こ の 勧 告 に 基 づ き 欧 州 電 気 標 準 化 委 員 会 ( CENELEC) は 移 動 電 話 端 末 に 関 し て EN 50360: 2001( 製 品 規 格 ) と EN 62209-1: 2006( 測 定 方 法 に 関 す る 規 格 ) を 策 定 し て 、 制 限 値 へ の 適 合 を 要 求 し て き た 。 2010 年 に は EN 62209-1: 2006 を 置 き か え る EN 62209-2: 2010 が 策 定 さ れ た が 、こ れ に 対 応 す る 製 品 規 格 は 2011 年 12 月 現 在 、最 終 の 投 票 段 階 に あ る 。ま た 基 地 局 に 関 し て は 同 じ く CENELEC 規 格 の EN 50308 と EN 50401 に よ り 、ICNIRP ガ イ ド ラ イ ン の 参 考 レベルへの適合が要求される。 更 に 、2004 年 5 月 に は 、「 EU 指 令( 2004/40/EC)」に よ り 、ICNIRP ガ イ ド ラ インの職業的曝露制限値を加盟国で適用するよう指示した。
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