J-1500 による近赤外領域のCDスペクトル測定

CD application data
新しい CD 分析情報
260-CD-0022
Date
2014/11/27
J-1500 による近赤外領域の CD スペクトル測定
-酒石酸ニッケル, リモネンの測定はじめに
近赤外領域には金属錯体や金属タンパク質の d-d 遷移などに由来する CD スペクトル
(NIR-ECD)の他、O-H や C-H の振動遷移の倍音、結合音に由来する CD スペクトル (NIRVCD) が観測されます。金属錯体や金属タンパク質の NIR-ECD スペクトルは、中心金属の
まわりの立体配置や配位子の立体配座などの非常に細かい構造に敏感に反応することが知
られており、これら分子の構造解析に有効です 1)。NIR-VCD の分野においては、NIR-VCD
スペクトルを解釈するための理論や計算法が紹介されてきており、多くの実測データとの
比較が行われています 2)。
J-1500 円二色性分散計は光源と検出器を交換することにより近赤外領域 (~1600 nm) ま
での測定に対応可能な装置です。これにより主に生体試料で測定される紫外領域の ECD の
みならず、金属錯体などの NIR-ECD や振動遷移による NIR-VCD の測定が可能です。ここ
では J-1500 円二色性分散計を用いた、酒石酸ニッケル水溶液 3)とリモネン 2)の NIR-CD ス
ペクトル測定例を紹介します。
<Keywords>
NIR-ECD, NIR-VCD, 金属錯体
<サンプル調製>
1. 酒石酸ニッケル水溶液
0.24 M 硫酸ニッケル水溶液と 0.36 M 酒石酸ナトリウムカリウム水溶液を体積比 1:1 で混
合し、酒石酸ニッケル水溶液を調製しました。
2. リモネン
液体の(R)-(+)および(S)-(-)-リモネンをそのまま光路長 10 mm の円筒型セルに入れて測定
を行いました。
<測定条件>
1. 酒石酸ニッケル水溶液
光源:
UV/Vis:
キセノンランプ
検出器:
UV/Vis:
PMT 検出器
測定範囲:
UV/Vis:
235 - 940 nm
バンド幅:
UV/Vis:
1 nm
データ間隔:
UV/Vis:
0.1 nm
光路長:
UV/Vis:
10 mm
走査速度:
200 nm/min
レスポンス:
1秒
積算:
1回
ゲイン:
×100 (InGaAs 検出器のみ)
NIR:
NIR:
NIR:
NIR:
NIR:
NIR:
ハロゲンランプ(オプション)
InGaAs 検出器 (オプション)
940 - 1600 nm
16 nm
1 nm
0.5 mm
本社・工場 192-8537 東京都八王子市石川町 2967-5 TEL 042(646)4111 代表 FAX 042(646)4120
東京 03(3294)0341/北海道 011(741)5285/北日本 022(748)1040/西東京 042(646)7001/筑波 029(857)5721/
神奈川 045(989)1711/名古屋 052(452)2671/大阪 06(6312)9173/広島 082(238)4011/九州 092(588)1931
2. リモネン
光源:
測定範囲:
バンド幅:
走査速度:
積算:
ハロゲンランプ (オプション)
1100 – 1350 nm
16 nm
100 nm/min
16 回
検出器:
測定モード:
データ間隔:
レスポンス:
ゲイン:
InGaAs 検出器 (オプション)
CD/DC, UV single (Abs)
0.1 nm
2秒
×100
<測定結果>
1. 酒石酸ニッケル水溶液
酒石酸ニッケル水溶液の紫外領域から近赤外領域の CD スペクトルを Fig.1 に示します。
紫外可視領域と近赤外領域で光路長が異なるためモル楕円率(Mol. Ellip)に換算して表示し
ています。1400 nm 付近から長波長側においては H2O に由来する強い光吸収が現れますが、
1600 nm まで感度良く測定ができています。
300
200
0
Mol. Ellip.
-200
-400
-600
-700
235
500
1000
1600
Wavelength [nm]
Fig.1 酒石酸ニッケル水溶液の CD スペクトル
酒石酸ニッケル濃度 3): 0.1188 M, 溶媒: H2O
2. リモネン
Fig.2 に(R)-(+)および(S)-(-)-リモネンの C-H 振動遷移の 2 倍音に由来する CD スペクトル
と吸収スペクトルを示します。CD スペクトルのブランクはラセミ体のリモネンを用いて
います。また、吸収スペクトルでは常温で液体のリモネンに対してブランクとなる適切な
溶媒がないため、リモネンを光路長 10 mm と 2mm で測定を行い、その差スペクトル(光路
長 8mm に相当する吸光度)を 1.25 倍して 10 mm 光路長の吸光度に換算しています。1mdeg
以下の非常に微弱な CD 信号も高感度で測定可能です。
本社・工場 192-8537 東京都八王子市石川町 2967-5 TEL 042(646)4111 代表 FAX 042(646)4120
東京 03(3294)0341/北海道 011(741)5285/北日本 022(748)1040/西東京 042(646)7001/筑波 029(857)5721/
神奈川 045(989)1711/名古屋 052(452)2671/大阪 06(6312)9173/広島 082(238)4011/九州 092(588)1931
1
0.5
CD/DC [mdeg]
0
-0.5
-1
0.6
0.4
Abs
0.2
0
1100
1200
1300
1350
Wavelength [nm]
Fig.2 リモネンの CD スペクトル
(R)-(+)-リモネン
(S)-(-)-リモネン
<Reference>
(1) William A. Eaton, Graham Palmer, James A. Fee, Tokuji Kimura, and Walter Lovenberg, Proc.
Nat. Acad. Sci. USA, 68, 12, 3015-3020, (1971)
(2) Sergio Abbate, Ettore Castiglioni, Fabrizio Gangemi, Roberto Gangemi, and Giovanna Longhi,
CHIRALITY, 21, Issue 1E E242-E252, (2009)
(3) T. Konno, H. Meguro, T. Murakami, and M. Hatano, CHEMISTRY LETTERS, 953-956, (1981)
本社・工場 192-8537 東京都八王子市石川町 2967-5 TEL 042(646)4111 代表 FAX 042(646)4120
東京 03(3294)0341/北海道 011(741)5285/北日本 022(748)1040/西東京 042(646)7001/筑波 029(857)5721/
神奈川 045(989)1711/名古屋 052(452)2671/大阪 06(6312)9173/広島 082(238)4011/九州 092(588)1931