4E01-4E08 理論・計算

4E01
モデル空間量子モンテカルロ法による高精度計算
(神戸大システム情報) ○大塚 勇起, 天能 精一郎
High accuracy calculations using the model space quantum
Monte Carlo method
(Kobe Univ.) Yuhki Ohtsuka and Seiichiro Ten-no
【序】 励起状態のポテンシャル曲面や多核金属錯体のように擬縮重電子状態を持つ系を精密に計算
するためには、多参照理論が必要である。参照関数として、主に Complete Active Space Self-Consistent
Field (CASSCF)波動関数が用いられるが、含まれる電子配置の個数は、Active Space の大きさに対して
階乗的に増加するため、計算することのできる系のサイズが限定される。異なるアプローチとして、配置空
間の量子モンテカルロ法[1,2]がある。これらの方法では、CASSCF 法で取扱うことよりも大きな active
space から、モンテカルロ法によって重要な電子配置を選択することが可能である。しかしながら、これらの
理論は射影法に基づくため、擬縮重状態に応用すると精度が急速に落ちることが知られている。この問
題を解決するために、モデル空間モンテカルロ法(MSQMC 法)[3]は提案された。Effective Hamiltonian
の対角化によって、完全縮重や擬縮重を伴う励起状態を計算可能である。プログラムは既に並列化され
ており、モデル空間(P-空間)に含まれる電子配置は、MPI によって各ノードに分配され、ウォーカーに関
する計算は、MPI/OpenMP によって並列化されている。さらに、イニシエーター法[4]の導入により、精度
を落とさずに重要ではないウォーカーを消去することによって計算の高速化を行った。今回は、MSQMC
法を使用して、様々な励起状態のポテンシャル曲線の計算を行った。
【理論】 MSQMC 法では Configuration Interaction(CI)波動関数を仮定する。配置空間は、Löwdin の分
割法を用いて、電子状態を特徴づける P-空間と、それ以外の Q-空間に分けられ、シュレーディンガー方
程式は以下のように書くことができる
 H PP

 H PQ
H PQ  CP 
 CP 
  = E  
H QQ  CQ 
 CQ 
(1)
係数のベクトルである CP と CQ は、トランスファー行列( TQP )によって以下のように関係づけられる。
CQ = TQP CP
(2)
トランスファー行列によって CQ をシュレーディンガー方程式から取り除くことができる。
H eff
PP C P = EC P
(3)
ここで、 H は Effective Hamiltonian であり、以下のように書かれる。
eff
PP
eff
H=
H PP + H PQ TQP
PP
(4)
MSQMC 法では、(5)式のようなトランスファー行列の虚時間発展を、配置空間の量子モンテカルロ法を使
用してシミュレーションを行い、定常状態になったとき、目的のトランスファー行列が得られる。
dτTQP (
dτ
)
= - (τ-H QQ - EI QQ ) TQP (
)
H QP
(5)
目的の状態のエネルギー E が方程式に含まれているため(Energy dependent partitioning)、定常的な E
が得られるまで、(3)式と(5)式の計算を繰り返す。
【計算結果と考察】 図1に、イニシエーター近似を用いた MSQMC 法(i-MSQMC)による O2 分子のイオ
ン化状態のポテンシャル曲線と、Rydberg-Klein(RK)法よる結果[5]との比較を示す。2つの方法による7つ
の状態のポテンシャル曲線の形状は、1~3.0Å にわたって良く一致した。RK 法では、 c 4 Σ u− 状態の曲線
は、平衡構造付近しか提案されていないが、今回の計算で、 b 4 Σ g− 状態と同じ O(1D)+ O+(4S0)に解離する
ことが解った。また、励起状態の計算では、幾つかの状態で、初期の P-空間には含まれていない Rydberg
励起の電子配置の寄与が計算中に大きくなり、その配置を P-空間に移動させることによって、自動的に
Rydberg 状態の計算を行うことができた。当日は、他の系への応用例を紹介する予定である。
28
28
RK
Potential energy (eV)
26
i-MSQMC
26
24
24
22
22
20
20
X Pi
Π gg
2tet
2
A Pi
Π uu
2tet
2
∆ Delta
2tet
g
g
2
2
18
18
−
2tet
Σ gSigma g 4tet
1Pi
u
a 4Π
u
16
16
14
14
−
4tet
Sigma
gb 4Σ
g
12
12
−
4tet
uc 4 ΣSigma
u
10
0.5
1.5
2.5
3.5
10
Internuclear distance (Å)
図 1.
0.5
1.5
2.5
3.5
Internuclear distance (Å)
i-MSQMC 法と RK 法による O2 分子のイオン化状態のポテンシャルカーブ
[1] Y. Ohtsuka and S. Nagase, Chem. Phys. Lett. 463, 431 (2008).
[2] G. H. Booth, A. J. W. Thom, and A. Alavi, J. Chem. Phys. 131, 054106 (2009).
[3] S. Ten-no, J. Chem. Phys., 138, 164126, (2013).
[4] D. Cleland, G. H. Booth, and A. Alavi, J. Chem. Phys. 132, 041103 (2010).
[5] F. R. Gilmore, J. Quant. Spectrosc. Radiat. Trasfer 5, 369 (1965).
4E02
量子モンテカルロ法を用いた多原子分子の非調和振動解析
(横市大院・生命ナノ) ○藤岡 蔵、北 幸海、立川 仁典
Anharmonic vibrational analysis of polyatomic molecules
with quantum Monte Carlo method
(Yokohama City University) ○ Osamu Fujioka, Yukiumi Kita, Masanori Tachikawa
【序論】 第一原理計算における分子の構造解析及び振動解析は、赤外・ラマン分光法
により得られた振動スペクトルを帰属する際に必要不可欠な解析手法であり、分子構造の
決定に重要な役割を担っている。しかしながら、一般的に良く用いられる基準振動解析
では、振動ポテンシャルに調和近似を用いるため、ポテンシャルの非調和性や振動モード
間のカップリング等を無視してしまう。特に、水素を含む系に対しては、 そのような問
題から振動数を誤って評価してしまう問題が知られている [1−3] 。このような問題を解決す
るために、当研究室ではこれまでに、量子モンテカルロ (QMC) 法の一つである Reptation
Monte Carlo (RMC) 法 [4] に、Multi-Product (MP) 展開法 [5] を組み合わせた、新しい量子モ
ンテカルロ法 (RMC+MP 法) の開発を行ってきた [6] 。本研究では、ポテンシャルの非調和
性と振動モード間のカップリングを精密に考慮した高精度振動状態解析を実現することを
目的に、RMC+MP 法による振動状態解析の精度検証を行った。具体的には、多原子分子
の代表例である H2 O 分子とその同位体である D2 O、HOD 分子、H2 CO 分子の振動状態へ
RMC+MP 法を適用し、基本振動数、回転定数の計算、及び存在確率密度の解析を行った。
【計算方法】 時間依存 Schr¨odinger 方程式の虚時間発展を利用した QMC 法では、任意
の試行波動関数 ΨT に虚時間プロパゲータを作用させることにより、系の正確な固有状態
Ψ0 を抽出する。仮想的な分配関数 (Z0 ≡ hΨ0 |Ψ0 i = limβ→∞ hΨT |e−βHˆ |ΨT i) を導入し (ここで
β は虚時間、Hˆ はハミルトニアンである) 、十分長い虚時間発展 (β → ∞) を行うことで、
原理上、系の正確な波動関数とエネルギー固有値を求めることができる。RMC 法では、
分配関数中の虚時間プロパゲータを短時間分解した後、短時間近似によって得られる分配
関数を用いる。例えば、RMC 法の二次の短時間近似を用いた分配関数は以下のように表
される。
 N−1

∫
∫
N−1
∏
∏

dτ


Z0 =
· · · ΨT (q0 ) 
(1)
g(qi , qi+1 ; ∆τ) ΨT (qN ) ×
e− 2 {ε(q j )+ε(q j+1 )} dq0 · · · dqN
i=0
j=0
ここで N は虚時間プロパゲータの分割数、∆τ(= β/N) は虚時間ステップを表す。 式 (1) の
ˆ
g は |ΨT |2 に従う分布を生成する短時間プロパゲータ、ε(q) ≡ Ψ−1
T (q) HΨT (q) で表される局
所エネルギーを含む項は、生成したパス {q0 , q1 , · · · , qN } の重み因子である。また、十分長
い虚時間発展後のパスの中央 (qN/2 ) は正確な分布 |Ψ0 |2 に対応することから、存在確率密
度等のハミルトニアンと非可換な物理量の解析が可能となる。
【計算の詳細】 本研究では、分子の振動回転ハミルトニアンとして Watson ハミルトニ
アン [7] を用いた。多次元ポテンシャルエネルギー曲面 (PES) は、分子軌道計算プログラ
ム Gaussian09 を用いて、H2 O 分子に対して CCSD(T)/aug-cc-pVTZ レベル、H2 CO 分子に
対しては MP2/cc-pVTZ レベルで算出した。QMC 計算における試行波動関数には、平均
場近似に対応する以下の Vibrational self-consistent field(VSCF) 形式と、
Nbasis
 (
))
( (i)
ν
2
∏
∑


αn (Qi − Q(i)

c )

VSCF
(i) (i) 
(i)
(i) (i)


Ψ
(Q; C, α, Qc ) =
(2)
cn ϕn  , ϕn = Nn Hn exp −

2
i=1 n=0
∑ CSF
VSCF 配置の線形結合をとった Vibrational configuration interaction(VCI) 形式 (ΨVCI = Nj=1
c j ΨVSCF
)
j
(i)
(i)
の 2 種類を用いた。ここで式 (2) の Nn 、Hn はそれぞれ規格化因子、エルミート多項式を
(i)
(i)
表す。本研究では VSCF 波動関数に対して展開係数 c(i)
n 、軌道指数 αn 、基底関数中心 Qc
を、VCI 波動関数に対して CI 係数 c j を変分パラメータとし、線形最適化法 [8] により最適
化した。
RMC+MP 計算では全虚時間長 β = 3.0 × 10−3 [1/K] の虚時間発展シミュレーションを
行った。このとき、虚時間プロパゲータには 12 次の Multi-Product 展開を用いた。物理量
の解析方法について、全エネルギーは mixed estimator に基づく期待値を算出した。
【結果と考察】 Table 1 に、基準振動解析 (NMA) と初期試行波動関数を VCI 波動関数と
した RMC+MP 計算 (RMC VCI) による同位体を含む水分子の基本振動数と対応する実験
値 [9] を示す。また H2 O 分子の文献値として、Yagi らが開発した Dircet VCI 法による計算
値 [10] と実験値からの平均絶対誤差 (MAD) を示した。
H2 O 分子に関して、NMA による基本振動数は実験値を大きく過大評価しており、その
MAD は 137cm−1 と大きな値になった。一方、ポテンシャルの非調和性と振動モード間の
カップリングをより精密に取り込める RMC+MP 法を適用することで、基本振動数は大き
く改善し、MAD は約 3cm−1 となった。また、D2 O、HOD 分子のような同位体分子に対し
ても、RMC+MP 法を適用することで、基本振動数の実験値をより定量的に再現すること
が分かった。他の分子の計算結果や詳しい解析結果については、口頭発表にて報告する。
Table 1: Fundamental frequencies for water molecule including isotopes[cm−1 ]
Molecule
H2 O
Molecule
D2 O
Molecule
HOD
Method / mode
NMA
RMC VCI
Direct VCI[10]
Expt.[9]
Method / mode
NMA
RMC VCI
Expt.[11]
Method / mode
NMA
RMC VCI
Expt.[12]
HOH bend.
1641
1591(1)
1604
1594.59
DOD bend.
1200
1175(1)
1178.33
HOD bend.
1437
1401(1)
1403.3
OH sym. stretch.
3838
3662(1)
3666
3657.05
OD sym. stretch.
2767
2676(1)
2671.69
OD stretch.
2826
2725(1)
2723.66
OH asym. stretch.
3942
3753(1)
3745
3755.97
OD asym. stretch.
2888
2785(1)
2788.02
OH stretch.
3892
3709(1)
3707.47
MAD
137
3(1)
9
—
MAD
72
3(1)
—
MAD
106
2(1)
—
——————————————
[1] K. Yagi, et al., J. Chem. Phys. 113, 1005 (2000). [2] K. Yagi, et al., J. Chem. Phys. 127, 034111 (2007). [3]
A. B. McCoy, et al., J. Chem. Phys. 123, 064317 (2005). [4] S. Baroni, et al., NIC Series, 10, 75 (2000). [5] S.
A. Chin, et al., arXiv:08009.0914v2 (2009). [6] Y. Kita, et al., In preparation. [7] J. K. G. Watson, Mol. Phys. 15,
479 (1968). [8] U. Toulouse, et al., J. Chem. Phys. 126, 084102 (2007). [9] D. F. Smith, Jr., et al., Spectrochimica
Acta, 28A, 474 (1972). [10] K. Yagi, et al., Theo. Chem. Acc. 118, 681 (2007). [11] W. S. Benedict, et al., J.
Chem. Phys. 21, 1301 (1953). [12] W. S. Benedict, et al., J. Chem. Phys. 3, 660 (1953).
4E03
量子モンテカルロ法によるシクロヘキサシランの分子間相互作用評価 (北陸先端科学技術大学院大学*) ○本郷研太*,前園涼* Molecular interactions of cyclohexasilane dimers: a quantum Monte Carlo study
【緒言】 (JAIST*) ○Kenta Hongo*, Ryo Maezono*
近年、半導体デバイス形成の新しい手法として、液体プロセス[1]が注目を集めている。フォトリ
ソグラフィーを用いた従来プロセスにおいては、真空プロセスや大掛かりな装置が必要であること、
気体原料の扱いにくさ、原料の使用効率が悪く廃棄物が大量に発生すること等が問題とされる。液体
プロセスは、真空プロセス不要で、材料の利用効率が高く、機器の小型化・低コスト化を可能とする
産業的利用価値の高いものであり、注目度の高い次世代のプロセス技術である。液体プロセスにおい
ては、液体シリコンと呼ばれるシクロペンタシラン、及び、シクロヘキサシランを前駆体液として、
ナノ・インプリントされた基板上に塗布し、焼成することでデバイスが構成される。この際、前駆体
液の基板への濡れ性制御がプロセスの重要な鍵となる。適正な濡れ性を損なうと、前駆体液は基板上
に濡れ拡がらず、ナノ・インプリントに流れ込まないためデバイスを構成することが出来ない。濡れ
性制御は現在、経験的・発見的な溶液調製に依存しているが、その微視的機構を解明し、指導指針を
得る事は、液体プロセスを汎用化させ、資源効率を高める上でも重要な課題である。 液体の微視的状態を知るためには、密度汎関数法(DFT 法)に基づく第一原理分子動力学法、または、
経験的分子力場を用いた古典分子動力学法計算が必要となる。当該シミュレーションの正否は、当該
分子間相互作用の大域的記述に優れた密度汎関数や力場の選択にかかっている。しかしながら、非共
有結合型分子間相互作用の典型的な研究対象である、水分子やベンゼン分子などとは異なり、本研究
で対象とする環状シリコン分子系については、先行研究事例に乏しく、分子間相互作用の大域的な様
相については、殆ど知られていない。そのため、密度汎関数や力場の選択指針となるような、参照計
算結果が必要となる。本研究では、そのような参照計算を実施するために、計算精度と計算コストの
両面でバランスの取れた手法である、第一原理量子モンテカルロ(QMC)法[2]を採用する。QMC 法は、
分散力の取扱い信頼性の高い手法として知られており、最近では、生体分子系や分子結晶多形におけ
る分散力記述に成功している[3,4,5]。本研究では、いくつかの典型的な密度汎関数に対して、シクロ
ヘキサシラン二量体のポテンシャルエネルギー曲線を求め、それらの結果を QMC 計算による曲線と
比較することで、第一原理分子動力学法計算に供する最良の密度汎関数を探索する。また、本研究で
は、QMC 計算との精度比較として、MP2 法、及び、CCSD(T)法についても、計算可能な基底レベル
で計算を実施し、それらの complete basis set (CBS) 極限[6]を評価する。 【計算方法】 本研究は、液体状態の第一原理分子動力学法での使用を見据えた密度汎関数を見いだすことが目的
である。液体中では無数の二量体配置が実現されているが、現実的な計算時間でエネルギー評価を行
うために、本研究では、分子間相互作用の評価に関する先行研究で考慮されているような、典型的な
二量体配置(図 1)に対して、DMC 法、DFT 法、MP2 法、及び、CCSD(T)法によりポテンシャルエネ
ルギー曲線を評価する。本研究の DMC 法では CASINO プログラム[2]、DFT/MP2/CCSD(T)法では
Gaussian09 プログラム[7]を使用して計算を実施した。
本研究の DMC 計算では、節固定近似[2]に供する試行節
は、B3LYP 計算で得られたコーン・シャム軌道から構築し
たスレーター行列式にジャストロー因子を乗じた試行関数
を採用している。試行節生成のための B3LYP 計算では、
Burkatuzki-Fillippi-Dolg(BFD) の擬ポテンシャルを利用
し、それに随伴するガウス型基底として VTZ 基底関数を用
いている[8]。本研究のジャストロー因子は、1 体、2 体、3
体項までを含み、各項は 8 次の多項式として与えられてい
る。このジャストロー因子に含まれる変分パラメータは、
分散最小化法[2]により最適化されてる。DMC の計算条件
は次の通りである:目標ポピュレーション数は、1024 であ 図 1:本 研究で 計算対 象とす るシク
る。平衡化ステップ数を 1000 ステップとして、統計蓄積 ロヘ キサシ ラン二 量体配 置 ステップ数は、8×104 ステップとした。
本研究で実施した DFT 計算で性能評価対象とした交換相関汎関数は、SVWN (LDA)、PBE (GGA)、
B3LYP といった標準的な汎関数に加えて、分散力用途に開発された汎関数である、M06-2X、及び、
B3LYP-GD3 である。DMC 法との比較のために、BFD 擬ポテンシャル/VTZ 基底関数を用いており、
basis set superposition error (BSSE) 補正[9]を全計算で考慮している。本研究で採用した VTZ 基底関
数は、CBS 極限からの誤差として、ポテンシャルエネルギー曲線につき、最大で 0.2 kcal/mol 以下の
誤差となっており、十分な計算精度を与えている。
本研究の MP2 計算では、cc-pVXZ (X = D,T)、及び、aug-cc-pVXZ (X = D,T) の基底レベルで計算
を実施し、それぞれに対して CBS 補正[6]を行った。2つの基底系で、得られた CBS 補正の結果は非
常に一致しており、MP2 に対する本研究の CBS 補正は十分な精度が得られていると考えられる。本
研究の CCSD(T)計算では、計算コストの点から、cc-pVDZ 基底でのみ計算可能であったため、Hobza
らによる経験的な CBS 補正スキーム[10]を採用している。
【結果と考察】 本研究の各種計算手法により、Type-A 二量体配置に対して得られたポテンシャルエネルギー曲線
(二量体間距離依存性)を図2に示す。各種汎関数に関するパネル(左)から、B3LYP では結合状態が全
く再現されていないことが分かる。それに対して、PBE と LDA では結合状態が見られるが、それら
の平衡分子間距離と結合エネルギーは、B3LYP-GD3 や M06-2X と比較して大きく異なる。平衡位置
での分子間距離とエネルギー値について、M06-2X と B3LYP-GD3 を比較すると、それほど大きな違
いは見られないが、遠方でのポテンシャルエネルギー曲線の振る舞いが大きく異なる。パネル(中)にお
いて、B3LYP-GD3/M06-2X と MP2/CCSD(T)を比較すると、B3LYP-GD3 の方が MP2/CCSD(T)の結
果に近いポテンシャルエネルギー曲線を与えている。ただし、本研究の CCSD(T)/CBS 計算では、Hobza
らによる経験的な CBS 補正[10]を使用しており、計算精度の信頼性に疑問が残る。この点を確かめる
ために CCSD(T)と DMC を比較したところ、両者は、化学的精度の範囲内で一致することが分かった
(パネル(右))。以上の結果から、本研究で実施した B3LYP-GD3 は当該系における Type-A 二量体配置
のポテンシャルエネルギー曲線を非常に良く再現することが分かり、今後は、第一原理分子動力学計
算に供する汎関数として利用する予定である。Type-A 以外のその他の二量体配置に対して得られたポ
テンシャルエネルギー曲線、及び、CBS 補正に関する詳細については、当日に発表する。
0
5
10
LDA/VTZ
GGA/VTZ
B3LYP/VTZ
B3LYP GD3/VTZ
M06 2X/VTZ
4
5
6
7
8
R [Å]
9
2
2
0
0
2
4
11
B3LYP GD3/VTZ
M06 2X/VTZ
MP2/CBS
CCSD(T)/CBS
6
8
10
E(Type A) [kcal/mol]
E(Type A) [kcal/mol]
E(Type A) [kcal/mol]
5
4
5
6
7
8
R [Å]
9
10
11
2
4
B3LYP GD3/VTZ
MP2/CBS
CCSD(T)/CBS
DMC
6
8
4
5
6
7
8
9
10
11
R [Å]
図 2:( 左)SVWN/PBE/B3LYP/B3LYP-GD2/M06-2X、(中 )M06-2X/B3LYP-GD3/MP2/CCSD(T)、
(右 )B3LYP-GD3/MP2/CCSD(T)/DMC によ るポテ ンシャ ルエネ ルギー 曲線( Type-A 配置 ) 【参考文献】 Shimoda, T, et al., Nature, 2002, 440, 783-786.
R. J. Needs, M. D. Towler, N. D. Drummond, P. Lopez Rvos, J. Phys.: Condens. Matter 2010, 22,
023201.
[3] Hongo, K.; Cuong, N. T.; Maezono, R. J. Chem. Theory Comput. 2013, 9, 1081–1086.
[4] Hongo, K.; et. al., J. Phys. Chem. Lett. 2010, 1, 1789–1794.
[5] Watson, M. A.; Hongo, K.; Iitaka, T.; Aspuru-Guzik, A. Advances in Quantum Monte Carlo; Chapter 10,
pp 101–117.
[6] Truhlar, D.G. Chem. Phys. Lett. 1998, 294, 45-48.
[7] Frish, M.J.; et. al., Gaussian 09 Revision A.1; Gaussian, Inc.: Wallingford, CT, 2009.
[8] Burkatzki, M.; Filippi, C.; Dolg, M. J. Chem. Phys. 2007, 126, 234105:1-8.
[9] Jansen, H.B.; Ros, P.; Chem. Phys. Lett. 1969, 3, 140-143; Boys. S.F.; Bernardi, F. Mol. Phys. 1970, 19,
553-566.
[10] Jurecka, P.; Hobza, P. Chem. Phys. Lett. 2002, 365, 89-94.
[1]
[2]
4E04
分子振動を考慮した多原子分子への陽電子吸着に関する
理論的解析
(横市大院・生命ナノ)北 幸海,山田 裕里佳,立川 仁典
Theoretical investigation of the binding of a positron to polyatomic
molecules including the effect of molecular vibration
(Yokohama City Univeristy) Yukiumi KITA, Yurika Yamada, Masanori TACHIKAWA
【 緒 言 】 陽電子 (e+) は電子と同質量・同スピンおよび電荷+1 を持つ電子の反粒子であり、
電子との衝突により、2〜3個の光子を放出しながら対消滅を起こす。物質中に入射された
陽電子は対消滅を起こす前に、原子・分子のイオン化や励起、電子と陽電子から成る水素様
原子であるポジトロニウム形成、そして原子・分子との一時的な束縛状態である陽電子化合
物形成など、様々な反応を起こす事が示唆されている[1]。
近年、カルフォルニア大学サンディエゴ校の Surko らは、入射エネルギーを制御した低速
陽電子を用いた対消滅率測定実験を行い、アルカン、アルデヒド、ケトン、ニトリルなど様々
な分子の陽電子束縛エネルギー(陽電子親和力, PA)を報告している[2,3]。振動 Feshbach 共
鳴を利用した彼らの実験では、分子の振動励起状態に吸着した陽電子の束縛エネルギーを測
定していると考えられている。一方、第一原理計算を用いたこれまでの理論的解析では、分
子の平衡構造のみを対象としており、そのため振動励起状態への陽電子吸着機構など、陽電
子吸着に対する分子振動の効果は十分明らかになっていない。
そこで本研究では、陽電子親和力に対する分子振動の効果を明らかにすることを目的に、
幾つかの分子に対して振動励起状態における陽電子親和力の理論的解析を行った。具体的に
は、電子と陽電子を同時に量子力学的に取り扱うことが可能な第一原理多成分分子軌道
(MC_MO) 法と、量子モンテカルロ (QMC) 法に基づいた分子の非調和振動計算を組み合わ
せ、陽電子化合物に含まれる全粒子を量子力学的に取り扱うことができる新規解析手法を開
発・実装し、様々な振動状態における振動平均陽電子親和力(後述)の解析を行った。
【 方 法 】 本研究で解析した振動平均陽電子親和力は以下で定義される:
PAνA ≡ ∫ PA A (Q) × ψ νA (Q) dQ,
2
+
PA A (Q) = E A (Q) − E [A;e ] (Q).
ここで Q は基準振動座標、 ψ νA は分子 A の規格化された振動の波動関数(振動量子数 v)、
+
PA A (Q) は座標 Q における分子 A の陽電子親和力、 E A と E [A;e ] は分子 A とその陽電子化合
A
[A;e + ]
物[A;e+]の全エネルギーである。本研究では、 E を Hartree-Fock (HF) 法により、 E
を1
電子、1 陽電子、および 1 電子-1 陽電子励起配置のみを考慮した配置間相互作用法 (CISD) [4]
により計算した。
振動の波動関数 ψ νA の解析には、変分モンテカルロ (VMC) 法と Reptation Monte Carlo
(RMC) 法[5]という2つの QMC 法を用いた。VMC 法は、変分パラメータを含む試行波動関
数を用いて物理量の期待値をモンテカルロ積分によって算出する方法である。本研究では平
均場近似に対応する試行波動関数を仮定し、Umrigar らによって提案された励起状態にも適用
可能なエネルギー最小化法[6]を用いて、振動基底および励起状態における試行波動関数の最
適化を行った。RMC 法は、時間依存 Schrödinger 方程式の虚時間発展を利用した QMC 法の1
つであり、任意の初期試行波動関数を系の正確な固有状態へと射影する方法である。一般的
に良く知られた拡散モンテカルロ法とは異なり、RMC 法では系のエネルギー固有値だけでな
2
く、確率密度分布 Ψ 0 を直的算定することが可能である。
【 結 果 と 考 察 】分子振動を考慮した陽電子親和
47
-model (R2= 0.603)
力の解析例として、直線分子である HCN 分子の
µ-model (R2= 0.974)
45
µ, -model (R2= 0.999)
結果を示す。様々な振動状態における陽電子親
和力を解析した結果、まず振動基底状態におけ
CN 伸縮振動・CH 伸縮振動モードの基音準位で
はそれぞれ、38 meV・41 meV・43 meV となっ
PAv (meV)
る陽電子親和力は約 40 meV、そして変角振動・
43
41
39
た。つまり、振動基底状態における陽電子親和
力と比較して、変角振動の振動励起は陽電子親
和力を低下させ、CN, CH 伸縮振動の振動励起は
陽電子親和力を増加させることがわかる。また
倍音準位など高次の励起状態を含めた系統的な
解析から、最も陽電子親和力を増加させる振動
は、CH 伸縮振動モードであることが明らかにな
った。陽電子親和力に対する分子振動の効果を
37
35
35
37
39
41
43
45
47
PALRA (meV)
Fig. 1 The results of linear regression analysis (LRA) for
the vibrational averaged positron affinity (PAν) with the
absolute dipole moment (μν) and/or isotropic
dipole-polarizability (αiso,ν) as independent variables. The
horizontal axis means PA value estimated with LRA
analysis (PALRA).
より詳細に解析するために、各振動状態におい
て振動平均された永久双極子モーメントと双極子分極率を説明変数とした回帰分析の結果を
図 1 に示す。図の縦軸は HCN の各振動状態における振動平均陽電子親和力を、横軸は回帰分
析によって得られた予測値を意味している。双極子モーメントのみ(図中μ-model)あるい
は分極率のみ(図中α-model)を説明変数とした場合、R2 値はそれぞれ 0.974, 0.603 となった。
このことより、振動励起状態における陽電子親和力の変化は、主に永久双極子モーメントの
変化に起因していると考えられる。さらに双極子モーメント・分極率の双方を説明変数とし
た場合(図中μ,α-model)、R2 値は 0.999 まで改善した。以上のことから、HCN の振動励起
状態への陽電子吸着は、永久双極子モーメントおよび誘起双極子モーメント(陽電子の作る
電場によって生じる分極)によって完全に説明できることがわかった。
当日はその他の分子の結果や、陽電子親和力に対する H/D 同位体効果等についても報告を
行う予定である。
[1] 陽電子計測の科学 (日本アイソトープ協会, 1993). [2] J. R. Danielson, J. J. Gosselin, and C. M. Surko, Phys. Rev.
Lett. 104, 233201 (2010). [3] J. R. Danielson, A.C.L. Jones, M.R. Natisin, and C. M. Surko, Phys. Rev. Lett. 109, 113201
(2012). [4] M. Tachikawa et al., Phys. Chem. Chem. Phys., 13, 2701 (2011). [5] S. Baroni and S. Moroni, Phys. Rev. Lett.,
82, 4745 (1999). [6] J. Toulouse and C. J. Umrigar, J. Chem. Phys. 126, 084102 (2007).
[7] Y. Kita, et al., J. Chem. Phys.
131, 134310 (2009).
4E05
HFB法により静的電子相関を考慮した分子構造最適化計算
(北大院・理)○小林正人,武次徹也
Molecular geometry optimizations by the HFB method
that takes account for static electron correlation
(Faculty of Science, Hokkaido Univ.) ○Masato Kobayashi, Tetsuya Taketsugu
【緒言】
密度汎関数理論や Hartree-Fock (HF)波動関数を出発点とする単参照電子状態理論では、軌
道の擬縮退に伴って生じる静的電子相関を取り込むことができない。静的電子相関は、遷移
金属を含む分子やビラジカル、平衡構造から離れた構造では本質的に大きな寄与をもつ。静
的電子相関を取り込む手法としては、多配置 SCF 法をベースとした理論が現在の主流である
が、近年準粒子の平均場理論である Hartree-Fock-Bogoliubov (HFB)法[1]を電子状態計算に応用
することにより、静的電子相関を効果的に記述する方法の開発が進められており、注目が集
まっている[2]。最近我々は、解析的 HFB エネルギー勾配を導出することに成功し[3]、HFB
法による構造最適化計算が可能となった。本研究では HFB エネルギー勾配の導出について紹
介し、そのパフォーマンスを主にビラジカルの構造最適化計算で検証したので報告する。
【HFB エネルギーとエネルギー勾配】
閉殻系の HFB エネルギーは、空間軌道を用いて次式によって与えられる[2]。
EHFB ( )  2 h P 




 2

      P P


  K  K   2  N   S  P 


(1)

ここで P は HF 法で用いられるものと同じ一体の密度行列で、K はペア行列と呼ばれる。ζ は
Staroverov と Scuseria [2]によって導入された静的電子相関の強さを制御するパラメータであ
る。(1)式のエネルギーを P と K に関して変分的に求めるのが HFB 法である。これらの行列要
素は、以下の一般化固有値方程式を解いて得られる準粒子軌道から求める。
 F Δ   Xi 
 S 0   Xi 

   
   i
 0 S   Yi 
 Δ F   Yi 
ここで、 F  h   S     2     

 P は化学ポテンシャル
(2)
Λ でシフトされた
Fock 行列、        K  は対電子場行列である。具体的に P と K は、 P  YYT 、

K  XY によって求めることができる。
T
(1)式の HFB エネルギーを原子座標で微分し、(2)式と準粒子軌道の直交条件を用いると、
HFB エネルギー勾配は以下のように表すことができる[3]。
S
EHFB ( )
 (H-F force)  2 W 
Q
Q

(3)
ここで第 1 項は Hellmann–Feynman (H-F)力であり、第 2 項が原子中心の基底関数展開により
生じる Pulay 力、W はエネルギー重み付き密度行列である。
【HFB エネルギー勾配を用いた一重項ビラジカルの構造最適化】
表 1 にシクロブタンの開環反応中間体として考えられている一
Fig. 1. Structure of C4H8.
重項テトラメチレン C4H8 (図 1)の 4 種類の停留点
[trans 極小(TM)、
trans 解離遷移状態(TF)、gauche 極小(GM)、gauche 解離遷移状態(GF)]の最適化構造を示す。
遷移状態構造(TF と GF)では、UHF は CAS に比べて 20 pm 程度解離した構造を与えてしま
う。HFB 法も、ζ が大きい場合には解離した構造を与えるが、ζ = 0.7 程度で CASSCF とよく
一致した構造となることがわかった。
Table 1. Optimized bond lengths (in pm) for TM, TF, GM, and GF structures of C 4H8 (cc-pVTZ).
CASSCF
HFB
Structure
UHF
(4,4)
ζ = 1.0
0.8
0.7
0.65
C1–C2
TM
149.3
147.9
149.8
148.7
148.1
147.4
TF
141.7
143.7
144.6
141.6
142.7
143.9
GM
149.5
148.5
149.7
148.8
148.4
148.0
GF
141.8
143.7
144.7
141.5
142.4
143.4
C2–C3
TM
TF
GM
GF
155.4
196.2
155.2
196.2
161.9
178.5
160.4
178.8
157.5
192.0
157.5
191.6
156.8
186.6
156.2
186.9
158.0
177.0
157.0
177.8
159.5
171.1
157.8
172.5
表 2 に 3 種類の一重項ベンザイン C6H4 の最適化構造を示す。o-ベンザインの C1–C2 距離は、
RHF では CASSCF よりも 3 pm 以上短く、UHF では 7 pm 以上長くなってしまう。HFB 法も ζ
= 1.0 では C–C 距離を全般に過大評価するが、ζ = 0.8 では CASSCF とよい一致を示すことが
わかった。HFB 法は CASSCF 法のように活性空間を指定する必要はなく、また計算コストも
非常に少ないので、ζ を適切に設定する方法が確立されれば、本手法は静的電子相関が重要な
寄与を果たす分子の構造を推定する強力な手法になり得ると考えている。
Table 2. Optimized bond lengths (in pm) for singlet o-, m-, and p-benzynes.
Molecule
Method
R(C1–C2) R(C2–C3) R(C3–C4)
o-benzyne
HFB (ζ = 1.0)/6-311G**
141.3
143.8
143.1
HFB (ζ = 0.8)/6-311G**
127.1
138.9
139.2
CASSCF(8,8)/aANO a)
125.1
140.0
139.1
a)
m-benzyne
HFB (ζ = 1.0)/6-311G**
HFB (ζ = 0.8)/6-311G**
CASSCF(8,8)/aANO a)
143.8
138.6
137.5
p-benzyne
HFB (ζ = 1.0)/6-311G**
HFB (ζ = 0.8)/6-311G**
CASSCF(8,8)/aANO a)
143.1
138.5
137.8
R(C4–C5)
142.5
140.5
142.0
143.1
138.4
137.9
143.1
139.5
139.6
144.0
140.2
140.9
Ref. [4]
[1] J.-P. Blaizot and G. Ripka, Quantum Theory of Finite Systems (MIT Press, Cambridge, 1985).
[2] V.N. Staroverov and G.E. Scuseria, J. Chem. Phys. 117, 11107 (2002).
[3] M. Kobayashi, J. Chem. Phys. 140, 084115 (2014).
[4] C.J. Cramer, J.J. Nash, and R.R. Squires, Chem. Phys. Lett. 277, 311 (1997).
4E06
多極小ポテンシャルを考慮した精密振動解析法・プログラムの開発
(首都大学東京)
○岩瀬響、北山清章、間宮正輝、橋本健朗
Developing theory and program of precise vibrational analysis for the systems with
multi-minima on the potential energy surface
(Tokyo Metropolitan Univ.) ○Hibiki Iwase, Kiyoaki Kitayama, Masaki Mamiya,
Kenro Hashimoto
【序】近年、非調和振動解析の理論とプログラムは急速に発達しているが、多極小ポテンシ
ャル、大振幅振動、高励起状態の取り扱いは未だ困難である。近似ハミルトニアンを作り有
限要素法などでシュレーディンガー方程式を数値的に解く方法もあるが、分子ごとの工夫が
必要となり、結合を考慮できるモード数も計算量の増大のために現実的には3モードまでに
限られる。本研究では、単モード関数の積で全振動波動関数を近似し実効ポテンシャルを通
じて全モード間の相互作用を取り込む VSCF-VCI 法に基づきつつ、基底関数と座標の改良で
問題解決に取り組んだ。
【方法】
(基底関数)VSCF-VCI 法では、通常一つの極小での調和振動子の波動関数の線形結
合で単モード関数を近似する。複数極小に渡る波動関数、高励起状態の波動関数の記述には、
局所的に広がる基底関数が望まれる。我々は、DVR 基底を採用した。
(座標)一般に、分子の振動変位を原子座標の変位の直交変換である基準座標で近似する。
𝑁
𝑁
𝑄𝑘 ≅ ∑ ∑ 𝐿𝑎𝑖,𝑘 √𝑚𝑖 ∆𝑎𝑖 ≡
(1)
𝑄𝑘 ,
∑ ∑ 𝐿𝑎𝑖,𝑘 𝐿𝑎𝑖,𝑙 = 𝛿𝑘𝑙
𝑖=1 𝑎=𝑥,𝑦,𝑧
(1)
𝑖=1 𝑎=𝑥,𝑦,𝑧
𝑄𝑘 は振動の内部座標、𝑘は振動を表す添え字、𝑁は総原子数、𝑖は原子の添え字、𝑚𝑖 は𝑖番の原子
の質量、𝑎は直交座標系の軸を表す添え字である。対角化された慣性モーメントテンソルを用
いれば、回転の内部座標も平衡構造近傍では、次式の直交座標で近似できる。
𝑅𝛼 ≅
1
𝑁
𝑒𝑞
(1)
∑ √𝑚𝑖 𝜀𝛼𝛽𝛾 𝛽𝑖 √𝑚𝑖 ∆𝛾𝑖 ≡ 𝑅𝛼
𝑒𝑞
𝑖=1
√𝐼𝛼𝛼
𝑒𝑞
(2)
𝑒𝑞
𝐼𝛼𝛼 は平衡構造での慣性モーメントテンソル、𝛽𝑖 は平衡構造の𝑖番の原子の位置、𝛼, 𝛽, 𝛾は慣性主
軸を表す添え字、𝜀𝛼𝛽𝛾 は完全反対称テンソルである。非調和性の強い大振幅振動や高励起状態
では、平均構造がポテンシャルの平衡構造から大きくずれ上述の座標は適切でなくなる。我々
は振動の内部座標に含まれる回転の変位の非線形結合を、次式で考慮しこの問題を克服した。
3𝑁−6
𝑄𝑘 ≅
(1)
(1)
𝑄𝑘
+ ∑
∑
𝜕 2 𝑄𝑘
(1)
(1) |
𝜕𝑄𝑙 𝜕𝑅𝛼 𝑒𝑞
𝑙=1 𝛼=𝑎,𝑏,𝑐
(1) (1)
𝑄𝑙 𝑅𝛼
(3)
回転の変位を𝑅𝛼 ≅ 0と近似する事で、従来の振動解析と同様に振動の基準座標を変数に取る事が
出来るが、振動のハミルトニアンは、補正項を加えて次のように修正される。
3𝑁−6
̂𝑣𝑖𝑏
𝐻
1
≅ ∑ 𝑃𝑘 2 + 𝑉
2
𝑘=1
1
+
2
3𝑁−6
∑
𝜕 2 𝑄𝑘
( ∑
(1)
(1)
𝜕𝑄𝑚 𝜕𝑅𝛼
𝛼=𝑎,𝑏,𝑐
𝑘,𝑙,𝑚,𝑛=1
|
(4)
𝜕 2 𝑄𝑙
(1)
(1)
𝜕𝑄𝑛 𝜕𝑅𝛼
𝑒𝑞
| ) 𝑄𝑚 𝑃𝑘 𝑄𝑛 𝑃𝑙
𝑒𝑞
𝑃𝑘 及び𝑄𝑘 とは調和振動子近似での運動量演算子と位置演算子、𝑉は非調和ポテンシャルである。
展開係数を数値微分で求めることで、分子に依存せずに内部座標を得ることが出来る。分子
を平衡構造から基準座標軸上で微小変化させた構造における内部座標を次のように展開する。
3𝑁−6
(1)
±∆𝑄𝑙
𝑄𝑘(0±∆𝑄(1)) ≅ ∑ 𝑐𝑘𝑚
𝑙
(1)
±∆𝑄𝑙
(1)
𝑄𝑚 + ∑ 𝑐𝑘𝛼
𝑚=1
(1)
(5)
𝑅𝛼
𝛼=𝑎,𝑏,𝑐
これを用い、中央差分近似によって内部座標の高次展開係数を得ることが出来る。
【結果と考察】開発した方法を H3O+分子イオンに適用した結果と、従来の振動解析に DVR
基底を用いた結果を表 1 に示した。ポテンシャルは MP2/aug-cc-pvtz で計算した力の定数行
列から数値微分で得た四次テイラー展開の関数を用いた。座標原点は傘反転振動の遷移状態
に取った。従来法では、傘反転振動のトンネル分裂を再現出来ない。また、e1 モードの振動
数が変角、伸縮とも大きく過小評価される。内部座標を補正する事により、これらの問題は
解決された。実験値との相対誤差はν2 の 1+の振動数を除いて 5%以内となった。
今回の VCI の結果を詳しく見ると、O-H 伸縮(a1)の振動数を約 100 cm-1 過大評価している。
ポテンシャルの展開次数の不足、O-H が伸びた構造での電子状態計算精度の不足が原因と考
えられる。また O-H 伸縮とのモード結合があるν3 及びν2 の 1+の振動数もやや高くなって
いる。一方、平均構造を取ると O-H 結合長が短く評価される為、傘反転及び変角の運動量が
小さくなり、ν2 の 1-とν4 の振動数がやや低く計算されている。
表 1.
H3O+分子イオンの振動数(cm−1)
従来法
実験
v2
01+
1-
v4
0
0
0
v1
0
0
0
v3
0
0
0
0+
1
0
0
0+
0-
0
0
1
1
0
0
0+
0
0
1
56
526
954
1626
1639
3390
3491
3519
3536
V-SCF
874
1253
2940
1582
1585
3429
4303
3550
3588
V-CI
SDT
808
936
2735
1557
1559
3498
4230
3373
3410
内部座標補正
V-SCF
83
325
1391
1616
1618
3444
3527
3661
3693
V-CI
SDT
59
567
933
1625
1630
3506
3593
3595
3608
左四列は振動量子数を表す。ν2 は傘反転振動、ν4 は O-H 変角、ν1 は O-H 伸縮(a1)、ν3
は O-H 伸縮(e1)。
4E07
分子集積構造の量子化学探索
(量子化学探索研究所 1, 東北大院理 2, 和歌山大学 3) ○大野公一 1, 2, 山門英雄 3
Quantum Chemical Exploration of Molecular Aggregates
(Institute for Quantum Chemical Exploration1, Tohoku University2: Wakayama University3)
Koichi Ohno1, 2, Hideo Yamakado3
【序】分子集積構造の性質や機能は分子の集まり方で多様に変化する。このため分子集積構
造の理論的予測が重要であるが、自由度が高く相互作用が微妙で計算に時間がかかるため、
困難な課題となっている。GRRM 法[1]を用いると各原子組成に可能な構造を自動的に調べら
れるが、分子集積構造に広く応用するには計算量を大幅に減らす工夫が必要である。今回、
分子集積構造の自動探索を効率的に行う方法を検討しその目処が立ったので報告する。
【方法】計算量を大幅に減らすため、次の2つの方針を採用した。
(1)構造変化の探索範囲
を限定、(2)重要な分子間相互作用を損なわないように電子状態計算のレベルを抑制。
分子集団の構成原子数は、各分子の原子数 N(atom)と総分子数 M(mol)の積、NM であり、全
自由度は、3NM-6 である。ここで、分子構造を固定し、分子の配向と並進だけを考慮すると、
自由度は 6M となり、探索の自由度が大幅に減少する。ただし、分子集団の形成に伴う分子
構造の変化が大きいときはその構造変化をどのように考慮するかが課題となる。また、平衡
構造からずれるとエネルギーが急激に増加するペナルティー関数を付加したポテンシャル面
を用いる方法もありうるが、どの程度元の分子構造からの変化を許容するか、ペナルティー
関数の設計が重要であり、平衡点からのずれをほとんど起こさせないようにすると、分子構
造を固定する方法と実質的に同じ結果になる。本研究では、全原子の運動の自由度を制限せ
ずに GRRM 法を適用する方策を用いた。探索の初期構造は、各分子構造を保ったまま位置と
配向をランダムに発生させた。各初期構造からは、全原子可動にし、構造最適化後、非調和
下方歪み追跡(ADDF)を行った。大きな ADD の n 番目までに限定して探索する LADDF 法
[LADD=n]を用い、LADDF の適用で得られた構造のうち結合の切断・解離や組換えが生じた
構造は捨て、分子が集積した構造のみさらに LADDF による探索が継続されるようにした。
電子状態計算の計算レベルを上げ過ぎると、計算量が増えすぎて、実質的に探索が実施で
きなくなる。適切なレベルを決めるため、2量体ないし数量体のテスト計算をいくつかの計
算レベルで実施し、妥当な電子状態計算レベルを選定した。
【結果・考察】 ホルムアルヒド(HCHO)と
水(H2O)について検討した結果を以下に示す。
HCHO
ホルムアルデヒド分子クラスターの
構造探索は、2量体の最安定構造の理論的吟
味がごく最近行われる[2]など、難しい課題と
なっており、多量体について、いくつかの構
造の計算結果を比較する報告はあるが、系統
的な探索例はほとんどない。2量体について、
完全基底外挿法を用い CCSD(T)レベルで行わ
れた計算結果によると、最安定構造は2分子
図1 HCHO 分子2量体(左上:垂直型、左下:
平面型)および4量体(右:S4 型)
の分子面が互いに垂直な関係にある Cs 構造(図1左上、以下垂直型とよぶ)であり、その次
に安定な構造は2分子が同一平面にある C2h 構造(図1左下、以下平面型とよぶ)で、その
エネルギー差はわずか 0.3-0.4 kcal/mol となっている。CCSD(T)レベルで多量体構造の探索を
行うことは困難であるため、数 kcal/mol 以内で2量体の垂直型と平面型を探索でき多量体構
造の探索に適用できそうな計算レベルを調査した。GRRM 法でよく利用されている DFT 法
(B3LYP/6-31G*など)では2量体構造が探索されなかった。これは、ホルムアルデヒド2量
体では、分散力による分子間力が重要であるためと考えられる。分散力の効果を改良した DFT
法として M062X/6-31G を試したところ図1の2量体が正しく得られることが確認された。ま
た、RHF/6-31G 及び MP2/6-31G も図1の2量体を与えた。ただし、RHF の場合は、LADDF
を適用しても結合の切断・組換を行う経路に沿う探索がかなり多いのに対し、MP2 の場合は、
結合の切断・組換はほとんど起こらず分子の配向が変る経路が優先的に探索される。また、
RHF では、水素結合力による多量体の形成が強調されることがわかった。4量体の探索結果
として、RHF、MP2、M062X のいずれからも、図1右の S4 構造が求められた。この構造は、
最近結晶構造解析[3]で求められた4量体ユニットに相当する。4量体の隣接2分子間の関係
は、2量体の垂直型になっており、平面型を基本とするシート構造にはなっていない。4量
体の場合にも平面型2量体を含む構造が探索されているが、垂直型を基本とする S4 構造より
かなりエネルギー的に不利になることが見いだされた。
H2O 水分子クラスターについては、以前8量体構造の
探索を RHF レベルで行った[4]。本研究では、RHF に加
え MP2 による探索も行い、より大きな12量体の探索
を試みた。RHF/6-31G/LADD=5 で 8542 個の分子集積構
造が得られた。そのうち最も安定なものから 10kJ/mol
以内に10個あまりの構造があり、その主なものは、
図2左のような6角柱型4個、図2右のような四角柱
型3個であり、その他は四角ないし六角が崩れた変則
型であることが見いだされた。RHF/6-31G/LADD=2 で
は、4247 個の分子集積構造が得られ、LADD=5 の場合
図2 水分子12量体(左上:6角柱型
と比べると得られた構造は半減したが、一番安定なも
上面、左下:6角柱型側面、右上:四角
のから 14 番目まで LADD=5 の結果とまったく同じであ
柱型上面、右下:四角柱型側面)
り、探索に要した時間は LADD=5 で 90 日であったものが LADD=2 では 36 日となって、LADD
のパラメータ値の選択で大幅に探索時間を短縮できることがわかった。
【結論】GRRM プログラムの option を適切な電子状態計算レベルと組み合わせることによっ
て分子集積構造の理論探索を効率的に行うことができることを確認した。今後、本研究で検
討した結果を踏まえて、大規模な並列計算環境を利用し、分子を構成要素とする結晶構造の
理論的予測を推進することに期待がもたれる。
[1] K. Ohno, S. Maeda, Chem.Phys.Lett. 384, 277 (2004); S. Maeda, K. Ohno, J.Phys.Chem.A 109, 5742 (2005); K. Ohno, S.
Maeda, J.Phys.Chem.A 110, 8933 (2006).
[2] G. A . Dolgonos, Chem. Phys. Lett. 585, 37 (2013).
[3] T.S. Thakur et al. Phys. Chem. Chem. Phys. 13, 14076 (2011).
[4] S. Maeda, K. Ohno, J. Phys. Chem. A, 111, 4527 (2007).
4E08
電子動力学と化学反応論
(東大院総合文化) 高塚和夫
Electron dynamics and theory of chemical reactions
(Univ. Tokyo) Kazuo Takatsuka
序
基底状態や低い励起状態にある分子の電子状態は,量子化学(分子の定常電子状態理論)
の偉大な発展によって,大きな分子も含めて,
「化学をする為の方法」として定着してきてい
る.化学動力学は,量子化学が与えるポテンシャルエネルギー曲面の上を運動する原子核の
時間依存過程(速度過程)を究明する.以上は,20 世紀の化学を支えた Born と Oppenheimer
による分子描像である.
しかし,昨今,数十アト秒の幅を持つパルスレーザーが出現し,分子内時間スケールが 100
-10-1 フェムト秒である価電子の時間変動が直接観測できる時代に入っている.そうなると,
空間に定常状態として止まっている電子状態描像がこの領域の実験状況に対応できなくなる
のは明らかである.また,強いレーザー場の中での電子状態は,
「共鳴状態間を確率的に遷移
する」というものではなく,波束状態として意図的に改変できるものなのである.一方,こ
のような「ダイナミカル」な電子は,高い励起状態に持ちあげられる事が普通であり,原子
核とも強く非断熱相互作用をしたり,飛び出してイオン化したりする.従って,このような
超ボルン・オッペンハイマー領域(レーザー場があっても無くても)の分子科学は,新しい
理論体系を必要とする.
本講演では,超ボルン・オッペンハイマー化学の理論的枠組みを著者らの研究に基づいて
議論する.その目的は,もちろん,最先端の超高速時間分解実験に対応して研究を進めるた
めの理論的土台を提供することであるが,一方で,
「非断熱動的電子論」の立場から化学反応
論を再構築し,ボルン・オッペンハイマー近似の枠組みの中では考えることができなかった
化学反応等の研究を展開することである.本講演では,むしろ後者の視点「電子動力学によ
る化学反応論」を強調したい.
理論的枠組
超ボルン・オッペンハイマー化学の理論的枠組みを構築するに当たって,以下の観点から
理論化学の体系を検討する.
1)ボルン・オッペンハイマー近似の妥当性と適用限界 [1]
2)ポテンシャル面上の原子核運動の多体量子動力学(漸近理論,WKB 理論を超えて)[2]
3)ボルン・オッペンハイマー近似の破れの典型的現象としての非断熱遷移について
あ)非断熱遷移の直接観測の可能性の理論と実験,および電子・原子核の量子力学的
entanglement による波束分岐 [3,4]
い)非断熱過程の外場による制御 [5]
う)電子移動型非断熱過程からの誘導輻射(量子力学的非線形強制振動による発光:分
子の同定,特徴的な光源,分光学的手法の一つとして)[6]
4)非断熱電子動力学理論
あ)電子動力学としての分子の電子散乱の理論
[7]
い)電子波束の量子論と非断熱過程による分波(分岐)[8]
う)原子核運動の経路の非断熱遷移による分岐 (Path-branching representation) [8]
え)レーザー場中の分子への拡張 [8]
お)電子励起状態や波束状態からの電子イオン化 [9]
お)特徴的な現象と新しい化学的研究対象
応用 このような理論的枠組みから,新しい化学反応論の展開,新しい現象の発見,新し
い化学領域の開拓,従来の化学的な物の見方の正しい再検討・再評価,などが可能になって
いる.これらのそれぞれの状況に応じた,分子科学的に興味深い応用例を,講演の中で示し
たい.
文献
[1] “On the validity range of the Born-Oppenheimer approximation: a semiclassical study for all-particle
quantization of three-body Coulomb systems”
S. Takahashi, K. Takatsuka, J. Chem. Phys. 124, 144101 (14 pages) (2006).
[2] “Towards many-dimensional real-time quantum theory for heavy particle dynamics. II. Beyond
semiclassics by quantum smoothing of singularity in quantum-classical correspondence”
K. Takatsuka, S. Takahashi, Phys. Rev. A 89, 012109 (12 pages) (2014)
[3] “Pump-probe photoionization study of the passage and bifurcation of a quantum wave packet across an
avoided crossing”
Y. Arasaki, K. Takatsuka, K. Wang, V. McKoy, Phys. Rev. Lett. 90, 248303 (4 pages) (2003)
[4] “Time-resolved photoelectron spectroscopy of wavepackets through a conical intersection in NO2”
Y. Arasaki, K. Takatsuka, K. Wang, V. McKoy, J. Chem. Phys. 132, 124307 (10 pages) (2010)
[5] “Monitoring the effect of a control pulse on a conical intersection by time-resolved photoelectron
spectroscopy”
Y. Arasaki, K. Wang, V. McKoy, K. Takatsuka, Phys. Chem. Chem. Phys. 13, 8681-8689 (2011)
[6] “Communication: Induced photoemission from nonadiabatic dynamics assisted by dynamical Stark
effect”
[7] “Theory of Electronically Inelastic Scattering of Electrons by Molecules”
K. Takatsuka, V. McKoy, Phys. Rev. A 30, 1734-1740 (1984)
[8] (a) “Fundamental approaches to nonadiabaticity: Towards a chemical theory beyond the
Born-Oppenheimer paradigm”
T. Yonehara, K. Hanasaki, K. Takatsuka, Chemical Reviews, 112, 499-542 (2012)
(b) “Nonadiabatic chemical dynamics in intermediate and intense laser fields”
K. Takatsuka, T. Yonehara, Adv. Chem. Phys. 144, 93-156, (2009)
(c) “Exploring dynamical electron theory beyond the Born-Oppenheimer framework: From chemical
reactivity to non-adiabatically coupled electronic and nuclear wavepackets on-the-fly under laser field”
K. Takatsuka, T. Yonehara, Phys. Chem. Chem. Phys. (Perspective) 13, 4987-5016 (2011)
Y. Arasaki, S. Scheit, K. Takatsuka, J. Chem. Phys. 138, 161103 (4 pages) (2013)
[9] “On the electron wavepacket dynamics of photoionizing states”
K. Takatsuka, J. Phys. B47, 124038 (2014)