MLCCよくある質問: TDK ESD対策コンデンサガイド 摘要 破壊の原因にもなるESD(Electro-Static Discharge、静電放電) は、 外界との接触からもシステム自体の内部からも生じる可能性があり ます。 電子回路の保護はユーザの関心事項であり、様々なテスト が行われています。モジュールレベルでESD要求を満たしつつ、サ イズやコストなどの設計最適化も行う、というのが設計エンジニアの 課題です。この資料では、ESD関連のよくある質問にお答えすると ともに、ESD保護用のコンデンサの適切な選び方についてもご紹介 します。 2006 年 3 月 TDK ESD対策コンデンサガイド Q1. ESDとは何ですか? A1. ESDは、ごく短時間の制御されない高電圧ス パイクです。ESDの一般的な例は、カーペットの 上を歩いているとき人体に蓄積する静電気です。 その場合は物や他の人に触れると放電します。通 常のESDは数千ボルト単位で、電気回路に重大 な損害をもたらす可能性があります。 ESDは人間の接触やマシンインターフェースの接 触でも発生します。この2つの原因は工業用ESD モデルの基本です。 Q2. どうすればESDを防止できますか? A2. ESDを防止するための最も一般的な場所は、 回路のインターフェース部にあります。これはモジ ュールとシステムの他の部品をコネクタで連結す る箇所です。設計エンジニアは通常、セラミックコ ンデンサをコネクタピンと通信ピンにおいてESD防 止コンデンサとして使用します。モジュール全体 はモジュールレベルのESD要件に適合しますが、 コンデンサは部品レベルのESD要件を満たす必 要がある場合とない場合があります。モジュール レベル要件の保証に必要な部品レベルの要件は 設計エンジニアが決定するので、最終顧客の問 題はほぼモジュールレベルの要件となります。 Q3. ESDモデルとはどんなものですか? A3. ESD モ デ ル に は 、 CDM ( Charged Device Model 、 帯 電 デ バ イ ス モ デ ル ) 、 MM ( Machine Model 、 マ シ ン モ デ ル ) 和 HBM ( Human Body Model、人体モデル)があります。そのうちコンデン サの試験や評価に最も多く使用されているのは HBMです。 Q4. CDMとは何ですか? A4. CDMは最も軽視されるモデルの1つです。こ のESD事象は、デバイスが管や袋、あるいは類似 の物から滑り落ちるとき発生します。デバイスを接 地するときも発生する場合があります。一般的な 放電回路は4pFまたは30pFコンデンサから成りま す。 Q5. MMとは何ですか? A5. MMはHBMと似ています。このモデルはHBM のワーストケースとして日本で生まれました。マシ ンモデルは、金属のフレームやツールのような導 電体からの放電をシミュレートします。その一例が 自動テスタのピンにあります。 一般的な放電回路は200pFコンデンサからなり、 抵抗は含まれず、500nH直列インダクタから放電 します。 Q6. HBMとは何ですか? A6. HBMは最も古くからある一般的なESDです。 Mil-Std 1686のセクション5.2.1.1に記載さていると おり、ESD損害の主な供給源は人体であり、HBM 規格でモデル化されています。これは人体モデ ルと呼ばれていますが、実際には人体や帯電デ バイスからESDS(ESD sensitive、ESD敏感性)デ バイスへの放電です。これは一般に指先からデバ イスへの放電として表されます。 図に示した等価回路には、帯電したコンデンサ CO があります。スイッチを入れると、CO はRX から DUT*(CX)に放電します。 * DUT: Device Under Test、被試験デバイス このモデルは、MIL-STD 883 method 3015(CO = 100pF、RX = 1.5kohm)に準拠しています。IEC 61000-4-2(CO = 150pF、RX = 330 ohms)もよく使 用されます。AEC-Q200の場合はCO = 150pF、RX = 2kohmです。そのほか、HBM ESD試験には無 数のバリエーションがあります。 2006 年 3 月 Q7. 工業用に認められたESD試験仕様にはどの ようなものがありますか? A7. 工業用や特定顧客用のESD試験仕様は無 数にあります。仕様には部品レベルのものとモジ ュールレベルのものがあります。その中で最も一 般的なものは、Mil-Std 883 method 3015、 JESD22-A114、AEC-Q200です。 これらの仕様は、放電回路内の値、ESD電圧レベ ル増分、試験ごとのESDパルス(ストライク)数、極 性の順序、充電/放電の順序など、パラメータが 異なります。 これらの仕様の多くには、ESD感度を示すESDレ ベル分類体系がそれぞれあります。たとえば車載 用AEC-Q200は、最大25kVのESD試験を使用す る、レベルの高い仕様の1つです。 Q9. ESD対策に適したコンデンサを選択するには どのような方法がよいですか? A9. TDKは実験によって、設計エンジニアがESD 対策コンデンサに最適な値を決定する上で役立 つ3つの重要なパラメータを突き止めました。それ は電圧破壊、静電容量、DCバイアスです。 Q10. Vbdとは何ですか? A10. Vbd(Voltage BreakDown,電圧破壊)は、コ ンデンサの電圧レベル強度を定量化するための 試験方法です。部品が壊れるまでDC電圧を固定 電圧傾斜率(100v/s)でコンデンサに印加します。 これによってコンデンサが耐えられる最大持続電 圧を測定しますが、最大ESD電圧レベルが直接 分かるわけではありません。 Q8. TDKは通常、ESDの試験をどのように行って いますか? A8. 最も一般的な顧客要件を踏まえ、標準の ESD試験方法としてAEC-Q200に準拠しています。 既存ファミリーの認証はこの方法で行います。 AEC-Q200は6kVから開始し、後は進行樹形図に 基づく漸進的な電圧試験スケールに従います。 理想的な状況では、6kV、12kV、16kV、25kVと進 行します。各電圧レベルで充電/放電が極性ごと に1回行われます。各電圧で未使用の部品を使 います。なお、ESD試験で正確な結果を得るには、 正しく完全な放電が重要です。 Vbd試験要結果の例 最高合格レベルが試験対象部品のESD区分レベ ル(ESD感度)を表します。この区分レベルは、設 計エンジニアが用途に合ったコンデンサを決定す る上で役に立ちます。 Q11. 静電容量(DUT)効果とは何ですか? A11. DUT効果とは、ESD試験回路の被測定コン デンサ(DUT)で測定された実効電圧です。 2006 年 3 月 節点分析によると、DUT(CX)の測定電圧(VX)の 関係は以下のように表されます。 電源電圧(VO)と充電コンデンサ(CO)を一定に保 つと、測定電圧(VX)とDUTコンデンサ(CX)は反 比例します。つまり、選択するCXの容量が高いほ どVXは低下します。 DUT効果を説明するため、たとえば1000pFコンデ ンサ(CX)のESD要件が4kV(VO)の場合を見てみ ましょう。また、AEC-Q200試験方法を使用し、CO = 150pFと仮定します。DUT効果の関係を見ると、 4kVを印加した場合、CX はわずか521.7V(VX )で す。 Q12. DCバイアスとは何ですか? A12. DC電圧をセラミックコンデンサに印加すると、 実効静電容量は定格容量と異なる場合がありま す。DCバイアスは通常、静電容量の定格比で表 されます。 DCバイアスは主に誘電体に起因します。当然、 他の設計係数や構造係数も影響します。C0Gの ようなClass I誘電体の場合、変化は比較的わず かです。X7RやX5RのようなClass II誘電体の場合、 静電容量は微増した後すぐに減少に転じます。 Class II誘電体の場合は通常、DCバイアスが-10% ~-70%です。 印加電圧を上げると実効静電容量は減少します。 DCバイアスは反復可能であり、定格電圧を超え ない限り、コンデンサの性能や寿命に悪影響を及 ぼしません。 Q13. これらのパラメータはESD対策コンデンサを 選択する上でどのように役立ちますか? A13. 最初のステップは、どの程度のESD対策が 必要かを確認することです。モジュールレベルの 要件が12,000Vであるからといって部品要件も 12,000Vであるとは限らないことに留意してくださ い。多くの場合、最終顧客はモジュールレベルの ESD要件を設定し、それに適合するために必要な 部品レベルの要件を設計エンジニアに任せま す。 ESD試験の評価だけでコンデンサの容量を選択 するのは最善とは言えません。Vbd、DUT、DCバイ アスの影響を調べないと、保護回路の設計が過 剰あるいは過小になる恐れがあります。 まず、DUT(CX)の測定電圧(VX)の関係を思い出 してください。 前述のようにClass II MLCCの場合、DCバイアス は静電容量を70%も減らします。これをワーストケ ースと仮定すると、 上の関係から、コンデンサ(CX )の実際の測定電 圧(VX)が分かります。したがって、電圧破壊レベ ル(Vbd)がVXより大きいコンデンサを選択します。 Vbd > VX、そこで たとえば以前と同様にCO = 150pF、CX = 1000pF、 VESD = 12kVと仮定すると、最小Vbdは4000Vとなり ます。CXとして選択した1000pFコンデンサのVbdレ ベルは、最低でも4000Vです。 Q10.のVbdチャートを見るとこのコンデンサのVbdレ ベルは平均値が4520V、最小値が4080V、したが って選択条件を満たしています。 2006 年 3 月 Q14. 部品のESDの評価はどうすれば改善できま すか? A14. TDKが部品の設計を評価し、ESD性能が 改善するように再設計できる場合もあります。これ にはいくつかの方法があります。 簡単な方法は、層厚の増大と活性領域や層数の 変更によって構造を変えることです。原材料の粒 度の微細加工や誘電体の変更によって改善でき る場合もあります。顧客の個別要求に促されて ESD性能を改善した場合、カスタム部品となること をご理解ください。 カスタム部品は多くの場合、コストが高くリードタイ ムが長引きます。そのため設計エンジニアはカス タム部品の使用を検討する前に、回路のニーズと 本書に記載する設計上の注意事項をよく調べて から、どの程度のESD感度が本当に必要かを決 定することが重要です。設計要件を満たす部品が ほかにも提供されている場合が多くあります。 Q15. ESDの詳細が分かるリソースにはどのような ものがありますか? A15. ESDやESD試験要件の詳細が分かるリソー スは多数あります。本書で使用する参考資料のほ とんどは、工業試験方法を中心としています。以 下の仕様やWebサイトをご覧ください。 Mil-Std 1686 Mil-Std 883 method 3015 JESD22-A114 AEC-Q200 ESD-DS5.2-1996 ESDS5.2-1994 ESD-STM5.1-1998 ESDS5.3.1-1996 www.esda.org www.keytek.com 2006 年 3 月
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