高橋脚 (High-pier)設計施工事例とコスト縮減について ― ML 工法と

コ−03
高 橋 脚 (High-pier) 設 計 施 工 事 例 と コ ス ト 縮 減 に つ い て
― ML 工 法 と NOP キ ャ リ ィ 工 法 に よ る 鉄 筋 組 立 省 力 化 ―
函館開発建設部
江差道路事務所
○秋本
光雄
作田
均
近藤
優
1.橋梁諸元
まえがき
見 市 川 橋 は 一 般 国 道 277 号 雲 石 道 路 事
見市川橋の橋梁諸元を以下に示す。ま
業の一環として新ルートに架橋するもの
た、橋梁一般図を図- 2 に示す。
で、2 級河川見市川水系見市川上を跨ぐ
構 造 形 式 : 3 径 間 連 続 PC ラ ー メ ン
橋 長 268m の 長 大 橋 で あ る 。 本 橋 の P1 橋
箱 桁 橋 (橋 長 268.0m)
脚 は 高 さ 53m の 高 橋 脚 で 構 造 形 式 に 外 面
有 効 幅 員 : 8.5m( 車 道 3.25m、 路 肩 1.0m)
リ ブ 付 鋼 管 ・ コ ン ク リ ー ト 合 成 構 造 (以
支 間 長 : 78.0 + 125.0 + 63.0m
下 、 「 ML 工 法 」 又 は 「 ML 断 面 」 と 示 す )
平 面 線 形 : R=500m
を 採 用 し た 。 ML 工 法 は 優 れ た 耐 震 性 能
縦 断 線 形 : i=3.0 ~ 5.9 %
とコスト縮減効果が期待され、北海道内
下 部 構 造 : ( A1・ A2) 枕 梁 式 橋 台 、 深 礎 杭
で 8 件の施工実績が確認されたが高さ
基 礎 (φ 3000 × 2 本 )
50m 超 の 施 工 事 例 は 数 少 な い 。 ま た 、 鉄
(P1) 柱 式 橋 脚 h=53m 、 直 接 基
筋 組 立 の 急 速 施 工 が 期 待 で き る NOP キ
礎 、 ML 工 法
ャ リ ィ 工 法 を 併 用 し 、工 期 短 縮 を 試 み た 。
(P2) 柱 式 橋 脚 h=29m 、 直 接 基
近 年 の 鉄 筋 コ ン ク リ ー ト 構 造 (以 下 、「 RC
礎 、 ML 工 法
工 法 」 又 は 「 RC 断 面 」 と 示 す ) は 耐 震 性 能
2.工事概要
要求水準引上げによる鋼材量増加で配筋
P1 橋 脚 は 前 年 度 に 底 版 と 柱 5m 分 を 施
作業量とそれに伴うコンクリート打設の
工しているため、その部分と上部施工分
難易度が増大しており、鉄筋組立省力化
( 脚 頭 部 ) を 除 い た 高 さ 42m 分 の 橋 脚 柱 を
は品質確保のみならず安全性に大きく貢
本 年 度 施 工 し た 。 ま た 、 P2 橋 脚 は 新 規
献する。
施 工 で あ る た め 脚 頭 部 を 除 い た 高 さ 23m
本 文 は P1、 P2 橋 脚 で 採 用 し た ML 工
分の橋脚柱と底版を施工した。施工状況
法の設計施工事例を紹介し、工期短縮及
を写真- 1 に示す。なお、橋台及び上部
びコスト縮減効果について報告する。
工は本年度不施工である。
P2 橋 脚
P1 橋 脚
図- 1
事業箇所及び見市川橋位置図
Mitsuo Akimoto, Hitoshi Sakuta, Yutaka Kondou
写真- 1
施工状況
図- 2
橋梁一般図
側 面 図 (左 )及 び 断 面 図 (右 )
3.設計概要
P2 橋 脚 に 慣 性 力 の 負 担 が 偏 る の は 望 ま
3-1
し い 形 で は な い た め 、 P1、 P2 橋 脚 の モ
支間割
架橋地点は鳥獣保護区域の指定と見市
ーメントバランスを最大限均等化させる
川下流域が保護水面に指定された箇所で
ことが課題であった。
あるため、工事による騒音及び濁水を可
3-3
能な限り発生させない必要があった。そ
ML 工 法 の 採 用
P1、P2 橋 脚 と も に ML 工 法 を 採 用 し た 。
のため橋梁の支間割は河川への影響が一
P1 橋 脚 は 30m 超 の 高 橋 脚 と し て 一 般 的
番 高 い P1 橋 脚 位 置 が コ ン ト ロ ー ル ポ イ
か つ 経 済 的 な 形 式 で あ る RC 中 空 断 面 と
ン ト と な っ た 。 P1 橋 脚 位 置 は 施 工 時 の
ML 断 面 と の 比 較 と し 、 P2 橋 脚 は RC 充
床掘線が現況河川の常時水位線に入らな
実 断 面 と ML 断 面 の 比 較 と し た 。 各 断 面
く、かつ橋脚柱が計画河川流下断面
を 図 - 3、 4 に 示 す 。 P2 橋 脚 は ML 断 面
( HWL) 内 に 入 ら な い 位 置 と し た 。 河 川 敷
にすることで鋼材を有効に配置できるた
の 地 質 構 成 は 表 層 か ら 約 7m 下 に 支 持 層
め 、 橋 軸 方 向 断 面 寸 法 を 500mm 縮 小 す
として良質な安山岩層があり、その上を
る こ と が 可 能 と な り 水 平 力 の P2 橋 脚 へ
透水係数の高い河床堆積物が覆ってい
の 偏 り を 改 善 で き た 。動 的 解 析 結 果 で は 、
る。橋脚基礎形式の選定は河床堆積物の
橋 脚 基 部 に 発 生 す る 断 面 力 (曲 げ モ ー メ
止水と騒音対策をセットで考慮し、薬液
ン ト ) が 約 12%低 減 す る 結 果 と な っ た 。
注入による止水+直接基礎形式とした。
た。橋全体系の耐震性能向上のためには
1000
ML断面(P2橋脚)
6000
2100
RC断面(P2橋脚)
6000
1950
軸方向鉄筋D51
6000
5500
3000
1250
1950
橋軸方向
震時で耐震性能 1 を確保する断面となっ
P1 橋 脚 工 法 別 柱 断 面
1250
いため、上部架設最大張出し時の施工地
1000
5000
3000
図- 3
た時に発生する断面力に対し、レベル 1
体系における地震時の分担断面力が少な
6000
4000
橋軸直角方向
初期断面は橋全体系を設計振動単位とし
か ら 決 定 さ れ た 。 一 方 、 P1 橋 脚 は 橋 全
1000
橋
軸
方
向
橋 脚 に 大 き く 偏 る 。 そ の た め P2 橋 脚 の
地震時による耐震性能 1 を確保すること
RC断面(P1橋脚)
1950
1000
め 、 橋 軸 方 向 の 地 震 時 慣 性 力 (レ ベ ル 1
地 震 時 ) は 橋 脚 高 さ が 低 く 剛 性 の 高 い P2
6000
2100
1250
P1、 P2 橋 脚 は 24m の 高 低 差 が あ る た
1250
本橋の特徴
5000
2500
3-2
ML断面(P1橋脚)
1950
橋軸直角方向
図- 4
P2 橋 脚 工 法 別 柱 断 面
3-4
θ pa=θ py+( μ φa -1) ・φ y・ Lp
非線形静的解析
本橋は動的特性が塑性化や非線形性が
複数箇所に生じる橋としてレベル 2 地震
φ u = μ φa ・ φ y
(式 - 1)
(式 - 2)
こ こ に 、 θ py : 降 伏 回 転 角
時の耐震性能 2 の照査を非線形動的解析
φ y :降伏曲率
に よ り 行 う が 、 動 的 解 析 に 先 立 ち ML 断
Lp
:塑性ヒンジ長
面における塑性ヒンジの発生位置と降伏
に至る過程、破壊形態の確認を非線形静
的解析により行った。レベル 2 地震時に
おける橋全体系の終局限界は複数の塑性
ヒンジのうちどれか一つが終局限界に達
した時点と定義し、各水平震度における
図- 5
P2 橋 脚 塑 性 ヒ ン ジ 部 M-θ 関 係
降伏限界及び終局限界に至る過程の確認
非 線 形 動 的 解 析 に よ る ML 断 面 P2 橋
と地震時保有水平耐力の照査を行った。
脚 塑 性 ヒ ン ジ 部 の 最 大 応 答 回 転 角 は RC
ML 工 法 に よ る 耐 震 設 計
断 面 と 比 較 し て 下 端 部 で 約 4%、 上 端 部
3-5
非線形動的解析による耐震性能 2 の照
で 約 70%大 き く な り 、 エ ネ ル ギ ー 吸 収 が
査は、上部構造慣性力作用位置における
より向上した結果となった。
変位と塑性ヒンジ部の回転角に基づいて
3-6
行った。設計及び要求される性能は、道
路橋示方書
1)
の規定によるものとし、外
面 リ ブ 付 鋼 管 ・鉄 筋 コ ン ク リ ー ト 合 成 構
造 橋 脚 設 計 ・施 工 指 針
2)
(以 下 、 「指 針 」と
主要材料の設計
設計で使用した主要材料規格値を表-
2 に示す。
本橋脚では橋脚基部に大きい軸力が発
生するため、通常橋梁下部コンクリート
2
と し て 使 用 さ れ る 設 計 基 準 強 度 24N/mm
示 す )を 随 時 参 考 と し た 。
ML 工 法 と RC 工 法 の 設 計 上 の 大 き な
で は レ ベ ル 1 地 震 時 に お い て 、 P1 橋 脚
違いを下記に示す。
で 施 工 地 震 時 、 P2 橋 脚 で 完 成 地 震 時 に
①せん断力はコンクリート、帯鉄筋及び
発生する応力度が許容応力度を上回る結
中 間 帯 鉄 筋 (以 下 、 両 鉄 筋 を 表 す と き は
果 と な っ た 。 ML 工 法 で は 軸 方 向 鉄 筋 を
「横 方 向 鉄 筋 」と 示 す )の 負 担 分 に 加 え て
多段配筋しないことを基本としているた
鋼管も負担する。
め、鋼材量増加による発生応力度対策は
②非線形動的解析時の塑性ヒンジ部にお
さらに軸方向鉄筋径を増加させる結果と
い て 許 容 曲 率 塑 性 率 μ φa が 表 - 1 の よ
なる。そこでコンクリート設計基準強度
うに一義的に定められており、許容回転
30N/mm2 を 使 用 し 、 コ ン ク リ ー ト 負 担 量
角 θ pa ( 式 - 1) 及 び 終 局 曲 率 φ u ( 式 - 2)
を上げることで対策を行った。
鋼 管 の 配 置 は P1、 P2 橋 脚 と も に 作 業
が比較的大きくとれる。
P2 橋 脚 下 端 塑 性 ヒ ン ジ 部 に お け る M
性 、 経 済 性 を 考 慮 し 、 φ 1500 × 4 本 と
-φ関係から求めた M -θ関係を図- 5
した。鋼管厚は断面力に応じて鉛直方向
に示す。
に変化させた。最小鋼管厚は指針より鋼
表- 1
ML 工 法 の 許 容 曲 率 塑 性 率
耐震性能\地震動
2
(B 種 の 橋 )
タイ プⅠ
μ φa =6.0
管 直 径 1500mm / 150mm = 10mm で あ る 。
タ イフ ゚Ⅱ
軸方向鉄筋/鋼管断面積比は合成構造と
μ φa =12.0
し て 機 能 す る 25%~ 100%程 度 を 目 安 と
し 、 結 果 、 P1 橋 脚 基 部 で 64%、 P2 橋 脚
同じ鋼管の接続は現場溶接とし、裏当て
基 部 で 41%の 配 置 と な っ た 。 横 方 向 鉄 筋
リングを使用した半自動セルフシールド
は橋脚上下端部塑性ヒンジ長の 4 倍区間
ア ー ク 溶 接 (ノ ー ガ ス タ イ プ )で 行 っ た 。
と鋼管厚変化部を段落し位置とみなし、
現場溶接作業前に鋼管の錆び、汚れを除
P1、 P2 橋 脚 と も に じ ん 性 補 強 部 と し て
去するため素地調整を行った。
全 高 に わ た り 150mm 間 隔 で 配 置 し た 。
表- 2
主要材料規格値
主要材料
規
より先行することから柱コンクリートの
鉛直性は鋼管立込みの精度が大きなウエ
格
設 計 基 準 強 度 σ ck=30N/mm
コンクリート
鋼管の立込みが足場を除き全ての作業
2
イ ト を 占 め た 。 50t 吊 タ ワ ー ク レ ー ン で
軸 方 向 鉄 筋 SD345D41( 主 要 ヒ ゚ ッ チ 125mm 間 隔 )
鋼管を吊上げながら鋼管に付属している
横 方 向 鉄 筋 SD345D25( 鉛 直 方 向 150mm 間 隔 )
立込み用フックに特殊加工した間隔保持
外 面 リ フ ゙ SKK490 φ 1500 t=10 ~ 18mm( P1)
鋼材で 4 箇所仮止めを行い、4 台の油圧
SKK490 φ 1500 t=10 ~ 23mm( P2)
ジャッキにて微調整しながら本止めを行
付鋼管
っ た ( 写 真 - 2) 。 微 調 整 は 直 角 2 方 向 か
4.施工概要
4-1
ML 工 法 の 概 要
らトランシットで視準し上下連携しなが
ら鉛直性を確保した。
ML 工 法 は 鋼 管 1 本 分 高 さ ( 1 ロ ッ ト 、
最 長 12m) 毎 に 下 記 に 示 す 工 程 を 繰 り 返
し、橋脚柱を構築していく工法である。
以 下 、 施 工 概 要 は 主 に P1 橋 脚 に つ い
て示す。
①足場設置
② 鋼 管 立 込 み (最 下 端 部 の み 架 台 設 置 有 )
写真- 2
③ 軸 方 向 鉄 筋 の 配 置 (ガ ス 圧 接 継 手 )
④横方向鉄筋の配置
4-4
⑤型枠設置
⑥ コ ン ク リ ー ト 打 設 ・養 生 ・ 型 枠 脱 型
鋼管立込状況
NOP キ ャ リ ィ 工 法 に よ る 配 筋
横方向鉄筋の配筋は所定の鉄筋間隔確
保 と 急 速 施 工 性 に 優 れ た NOP キ ャ リ ィ
コ ン ク リ ー ト の 1 回 打 設 高 さ (1 リ フ
工 法 に て 行 っ た 。 NOP キ ャ リ ィ 工 法 は 地
ト ) = 6m と し て い る た め 、 1 ロ ッ ト に 対
上で配筋した横方向鉄筋をクレーンで吊
し④~⑥の工程を 2 リフト行った。
上げ、軸方向鉄筋と結束する特許工法で
4-2
ある。施工方法の概略を下記に示す。
施工管理基準
鋼管の垂直精度は指針に基づき±
①
地 組 用 の 組 立 枠 ( H100) 制 作 と キ ャ リ
30mm 以 内 と し た 。 ま た 北 海 道 開 発 局 道
ィの設置及びクレーン吊込み用の吊枠
路 工 事 仕 様 書 よ り P1、 P2 橋 脚 柱 中 心 間
( H100) 制 作 と キ ャ リ ィ の 設 置 。
距 離 ± 30mm を 規 格 値 と し て 躯 体 の 垂 直
②
管理を行った。
す る ( 写 真 - 3) 。 中 間 帯 鉄 筋 は 所 定 の 主
4-3
鉄筋にフックを通すため、正確に墨出し
鋼管の立込み
鋼管厚変化部の溶接は確実な継手構造
とするため、工場溶接で行った。板厚が
地組用キャリィに横方向鉄筋を配筋
して帯鉄筋と結束する。
③
地組した横方向鉄筋をクレーン吊込
み 用 キ ャ リ ィ に 引 っ 掛 け ( 写 真 - 4) 、 軸
用 と 10 段 用 の 2 種 類 あ る )
方向鉄筋最上端から挿入し所定の位置ま
②地組するための広い作業スペースが必
で吊り下ろし、結束する。
要である。
③断面によっては中間帯鉄筋に自重によ
地組用キャリィ
地 組 用 枠
るたわみが生じ、対処が必要である。
④軸方向鉄筋が 2 段配筋だと横方向鉄筋
の挿入がしづらくなり、作業性が低下す
る。
⑤賃料及び特許料がかかるため、橋脚基
数、高さ等の現場条件によっては割高に
写真- 3
横方向鉄筋の地組
なる場合がある。
本工事では広い作業スペースを有して
クレーン吊 込 用 キャリィ
いたため、コンクリート 1 回打設高さ分
( 1 リ フ ト = 6m) と し て 6 段 用 を 7 セ ッ ト
地組し、クレーンで順次挿入した。
中間帯鉄筋は地組した際、中央付近で
大きなたわみが生じていたため、クレー
クレーン吊 込 用 吊 枠
写真- 4
横方向鉄筋の移し替え
中間帯鉄筋は作業性の向上から図- 6
ンにて挿入後、中間帯鉄筋が互いに交差
す る 部 分 に 軸 方 向 に 段 取 り 筋 ( D13) を 配
置してたわみを防止した。
のように重ね継手なしの配筋が可能とな
定 尺 12m の 軸 方 向 鉄 筋 を 立 ち 上 げ る と
っ た 。 こ れ に よ り 図 - 3、 4 の ML 断 面
ランダム方向にしなりが生じ、クレーン
と 比 較 し 、 P1 橋 脚 で 約 8t、 P2 橋 脚 で 約 9t
による横方向鉄筋の挿入がしづらくな
の鉄筋加工量が減少した。
る。そこで軸方向鉄筋の組立は写真- 5
ML断面(P1橋脚 重ね継手無し)
6000
のように柱 4 角と中間帯鉄筋配置箇所の
み先行して行い、1 リフト分の横方向鉄
筋をキャリィで挿入し仮結束した後、残
5000
りの軸方向鉄筋を立ち上げ本結束した。
図- 6
4-5
NOP キ ャ リ ィ 併 用 ML 断 面
NOP キ ャ リ ィ の 適 用 性
NOP キ ャ リ ィ 工 法 は 垂 直 壁 で ク レ ー ン
性能範囲内であればどのような構造体に
も適用できるが、下記に示す点で注意が
必要である。
クレーン吊 込 用 キャリィ
写真- 5
4-6
軸方向鉄筋との仮結束
型枠の設置
① キ ャ リ ィ の フ ッ ク 間 隔 は 150mm の み
型枠は写真- 6 のように型枠材を地組
し か な い 。 (フ ッ ク 段 数 は 1 セ ッ ト 6 段
して大型パネルを製作し、クレーンで吊
り上げて設置した。大型パネルの寸法は
を許容するが、ひび割れ幅が過大となら
橋 脚 柱 の 幅 × 1 リ フ ト 高 さ (6m) を 4 面 分
な い よ う に 制 限 し た い 場 合 」 の 1.0 以 上
製作し、転用した。
( ひ び 割 れ 発 生 確 率 85%以 下 ) と し た 。 温
度解析は橋脚柱 4 分の 1 断面に対し二次
元 FEM 解 析 、 応 力 解 析 を CP 法 に よ り 行
っ た 。 そ の 結 果 、 無 対 策 で も 材 齢 12.5 日
に 最 小 値 γ cr=1.1 を 記 録 し 目 標 値 を 達 成
する結果となったが、圧送空気によるパ
イ プ ク ー リ ン グ を 実 施 し 、 最 小 γ cr=1.2
( ひ び 割 れ 発 生 確 率 60%) 値 を 確 保 し た 。
写真- 6
4-7
大型パネルの製作
コンクリート打設
パ イ プ ク ー リ ン グ は φ 1500mm の 鋼 管
内 4 本と写真- 8 のように断面中央付近
コンクリートポンプ車のブーム仕様は
に φ 300mm の ク ー リ ン グ パ イ プ 3 本 を 配
最 大 地 上 高 さ が 36m 程 度 で あ る た め 、 P1
置して行った。鋼管内のクーリングは鋼
橋脚の施工では配管打設の必要があっ
管内に流入した水抜きのため設置した横
た。4 リフトまでをコンクリートポンプ
断管を利用して下から上への圧送空気に
車 ( 吐 出 量 110m3/h) に よ る ブ ー ム 打 設 、 5
より行った。コンクリートかぶりが最も
リ フ ト 目 か ら は 配 管 打 設 ( 写 真 - 7) と し
薄くなる橋軸方向面と鋼管との間はひび
た 。 輸 送 管 は 呼 び 寸 法 125A( 5B) 、 水 平
割れが最も懸念されたため、写真- 9 の
換 算 距 離 205m、 最 大 圧 送 負 荷 は 約 6.8MPa
ように鋼管と軸方向鉄筋との間にメッシ
である。輸送管は躯体に先埋めしたコン
ュ筋を配置した。
クリートアンカーで確実に固定しポンプ
車からの圧送に耐えられる構造とした。
輸 送 管 ( 125A)
写真- 8
写真-7
4-8
パ イ プ ク ー リ ン グ ( φ 300)
コンクリート打設状況
温度ひび割れの検討
部 材 厚 が 50cm を 超 え る た め 、 マ ス コ
写真- 9
ンクリートとして検討を行った。ひび割
れ発生の照査はコンクリート標準示方書
3)
4-9
メッシュ筋配置
パイプクーリングの効果
に基づいてひび割れ指数により行い、
P1、 P2 橋 脚 と も に パ イ プ ク ー リ ン グ
目 標 と す る 安 全 係 数 γ cr は 高 い 水 密 性
を行った箇所でのひび割れ発生は確認で
を 要 求 し な い こ と か ら 「ひ び 割 れ の 発 生
きなかった。しかし、底版上面から柱短
辺長の高さまで鋼管内にコンクリートを
常に効果的であった。
充 填 す る 区 間 に お い て は 0.2mm 以 下 の ひ
な お 、 P2 橋 脚 の 鋼 管 設 置 ( 実 績 ) に つ
び割れが数本確認された。これは柱コン
いては、第 1 ロットからの施工であるた
クリート打設と同日に鋼管内コンクリー
め、架台設置を含めた日数とした。
ト打設を行ったため、断面中心温度と表
がコンクリートの引張強度を上回ったた
め発生したと考えられた。鋼管内充填部
施工日数(日)
面温度の差が顕著となり、内部拘束応力
のコンクリートは後打ち施工が効果的と
180
160
140
120
100
80
60
40
20
0
RC工法(中空)
思われる。
鋼 管 の 偏 心 量 δ は
max=29mm、 δ
ML工法
図- 7
出来型計測結果
P1 橋 脚 で δ
min=13mm、 P2 橋 脚 で δ
max=24mm、 δ min=1mm、 P1・ P2 橋 脚 柱 中
心 間 距 離 は +2mm と 規 格 値 を 満 足 す る 結
果 と な っ た 。 P1 橋 脚 鋼 管 の 偏 心 量 が 比
施工日数(日)
4-10
足場工
型枠工
鋼管設置
鉄筋工
コンクリート工
ML工法(実績)
P1 橋 脚 施 工 日 数
180
160
140
120
100
80
60
40
20
0
足場工
型枠工
鋼管設置
鉄筋工
コンクリート工
RC工法(充実)
較的大きいのは、前年度との施工誤差が
ML工法
図- 8
生じたためである。
ML工法(実績)
P2 橋 脚 施 工 日 数
5.工期短縮
5-1
施工日数の試算
P1、 P2 橋 脚 の 施 工 日 数 に つ い て 、 ML
表- 3
工種
単位
鉄筋工
t
335
148
鋼管設置
t
0
73
1460
920
1510
1290
工種について、各工法の施工数量/標準
た も の で あ る 。 表 - 3、 4 は 各 工 法 の 施
2
m
型枠工
掛 m
足場工
表- 4
工種
P2 橋 脚 主 要 工 種 数 量 表
3
RC( 充 実 )
ML 工 法
m
828
759
鉄筋工
t
203
85
鋼管設置
t
0
67
550
530
750
730
コンク リー ト工
は 実 施 工 日 数 (実 績 )と の 比 較 を 行 う た
め 、 P1 橋 脚 は 柱 42m 分 、 P2 橋 脚 は 柱 23m
結 果 、 RC 工 法 と 比 べ ML 工 法 を 採 用 し
2
単位
工数量である。施工日数の比較について
分の本年度施工数量から算出した。その
ML 工 法
999
7、 8 は 工 程 上 ク リ テ ィ カ ル パ ス と な る
実 際 に 要 し た 実 施 工 日 数 (実 績 )を 比 較 し
RC( 中 空 )
777
コンク リー ト工
に 休 日 補 正 と し て 1.2 を 掛 け た 日 数 と 、
3
m
工 法 と RC 工 法 と の 比 較 を 行 っ た 。 図 -
日当り作業量から算出した標準施工日数
P1 橋 脚 主 要 工 種 数 量 表
型枠工
足場工
2
m
掛 m
2
た 総 施 工 日 数 は P1 橋 脚 約 30%( P2 橋 脚
26%) 、 NOP キ ャ リ ィ を 併 用 し た ML 工 法
( 実 績 ) で は P1 橋 脚 約 47%( P2 橋 脚 32%)
の施工日数短縮につながった。
5-2
施工日数短縮による効果
本工事における工期短縮効果を下記に
示す。
ML 工 法 で の NOP キ ャ リ ィ 工 法 の 適 用
① P2 橋 脚 柱 コ ン ク リ ー ト 打 設 は 全 高 、
性は相性が良く、急速施工をする上で非
冬 期 間 を 想 定 し て 寒 中 コ ン ク リ ー ト (防
寒 養 生 +材 料 加 熱 ) と し て い た が 最 終 リ
表- 6
フトのみの寒中施工となった。
P2 橋 脚 工 法 別 施 工 金 額 表
RC( 充 実 )
ML 工 法
② P1 橋 脚 は 温 度 ひ び 割 れ が 発 生 し や す
コンク リー ト
18,240
15,750
くなる冬期前に完成することができ、結
鉄筋
31,710
11,810
果としてひび割れの発生を抑えることが
鋼管
0
16,930
できた。
型枠
3,360
3,210
③供用日数を大幅に短縮し、足場賃料や
足場
2,870
2,780
現場管理費を低減することができた。
合計金額
56,180 ( 千 円 )
50,480 ( 千 円 )
④夏期及び冬期を含め、高所でかつ狭い
足場での作業量が減少し安全性が大きく
あとがき
鋼 管 を 使 用 す る 高 さ 30m を 超 え る 高 橋
向上した。
脚 の 施 工 法 は ML 工 法 の 他 に PCaF - ML
6.コスト縮減
コ ス ト 試 算 結 果 を 表 - 5、 6 に 示 す 。
工法やハイブリッドスリップフォーム工
コ ス ト 試 算 で は P1、 P2 橋 脚 と も 柱 完 成
法等があり、どの工法を採用するかは現
時全高分の各工種数量に施工単価を掛け
場条件により判断する必要がある。いず
て 直 接 工 事 費 で 算 出 し た 。 な お NOP キ
れの工法も基本的には施工の省力化とコ
ャリィ工法による施工日数短縮効果及び
ス ト ダ ウ ン を 図 る こ と で あ り 、 か つ RC
継手無しで得られた鉄筋量削減はキャリ
構造と同等以上の耐震性能を確保するこ
ィ の 賃 料 (特 許 料 含 む )、 吊 り 枠 加 工 費 等
と に あ る 。 今 後 、 高 橋 脚 に 限 ら ず ML 工
で相殺されるとみなし、コスト縮減試算
法の普及が進むと思われるが、本報告が
の対象外とした。
参考になれば幸いである。
試 算 結 果 か ら 、 RC 工 法 と 比 較 し ML
最 後 に 今 回 の 報 告 に 際 し 、 設 計 ・施 工
工 法 で は P1 橋 脚 約 7%、 P2 橋 脚 約 10%の
会社にご協力をいただきましたことに深
コスト縮減になり、鉄筋量の減少がコス
く感謝の意を表します。
ト縮減に大きく貢献した結果となった。
な お 、 ML 工 法 は 旧 日 本 道 路 公 団 と
(株)大林組が特許権を有する「鋼管・
[参 考 文 献 ]
1)
道 路 橋 示 方 書 ・同 解 説 V 耐 震 設 計 編
H14.3
コンクリート複合構造橋脚」の範囲に属
す る た め 柱 部 分 の コ ン ク リ ー ト 体 積 1m3
2)
(社 ) 日 本 道 路 協 会
外 面 リ ブ 付 鋼 管 ・コ ン ク リ ー ト 合 成
当 り 1,500 円 を 計 上 す る 必 要 が あ り 、 コ
構 造 橋 脚 設 計 ・施 工 指 針 ( 案 )
ンクリートに特許料を含めて試算した。
H15.4
表- 5
P1 橋 脚 工 法 別 施 工 金 額 表
3)
三 井 住 友 建 設 (株 )
コ ン ク リ ー ト 標 準 示 方 書 [施 工 編 ]
RC( 中 空 )
ML 工 法
コン クリー ト
17,180
24,450
[工事データ]
鉄筋
53,270
22,930
工 事 名 : 一 般 国 道 277 号 八 雲 町 見 市 川 橋
鋼管
0
21,920
型枠
11,740
7,470
工
足場
5,770
4,930
請 負 者 : 中 山 ・ 菱 中 ・ 中 塚 JV
87,960 ( 千 円 )
81,700 ( 千 円 )
合計金額
2002 年 制 定
(社)土木学会
橋脚外一連工事
期 : 平 成 19 年 3 月 ~ 平 成 20 年 3 月
設 計 者 : 中 央 コ ン サ ル タ ン ツ (株 )