1 2014 年 5 月 26 日 総合科目 C「経済学を考える、経済学で考える」松島斉 2.3.完全競争 理想的市場仮説 価格の情報機能:価格を通じてコミュニケーション 価格がパレート最適への水先案内人 A 財の価格(単価): B 財の価格(単価): 交換比率: 交換手段としての「貨幣」: p A 10 円 pB 20 円 pB 20 2 :財 B1個で財 A2 個と交換できる pA 10 「欲望の二重一致」がなくても A 財を売って B 財買える みんなが財と貨幣の交換に応じる(Why?) 単価 10 円で、A 財販売店で A 財を 2 個売る:20 円の収入 単価 20 円で、B 財販売店で B 財を 1 個買う:20 円の支出 2 各消費者の所得(予算): M円 予算制約(Budget Constraint): 各財 h {1,..., H } を xh 単位消費したい。 しかし予算オーヴァーはご法度: H p1 x1 p2 x2 pH x H ph xh M h 1 初期保有量ベクトル ( y1 , y2 ,..., y H ) をもっている消費者の予算は H M p1 y1 p2 y2 pH y H ph yh h 1 予算制約は p1 ( x1 y1 ) p2 ( x2 y2 ) pH ( x H y H ) H ph ( xh yh ) 0 h1 財hに対する個別需要量: 財hに対する個別供給量: x h yh ( x h yh ) 3 Price Taker の仮定 各消費者は価格ベクトル ( p1 , p2 ,..., pH ) に対して、予算制約 H p x h 1 h H h M あるいは ph ( xh yh ) 0 h1 の範囲内で、自身の満足を最大にする消費量ベクトル ( x1 , x2 ,..., x H ) を決める Price Taker の仮定の真意: 与えられた価格ベクトル ( p1 , p2 ,..., pH ) は変えられない 所与の価格ベクトルの下では、予算制約の範囲内であれば、どの財についても いくらでも購入可能である(と、本人は思って ( x1 , x2 ,..., x H ) を決めると仮定) 4 プライステーカーの仮定下では pB 任意の財 A 財 B の限界代替率 は交換比率 に一致する! pA p p B ならば:財 B の購入を 減らして財 A を B 増やせば pA pA 予算の範囲内でまだまだ満足アップできる pB pB 減らせば ならば:財 B の購入を 増やして財 A を pA pA 予算の範囲内でまだまだ満足アップできる pB 成立! ⇒満足最大時は pA 5 Price Taker を、利潤を最大化する生産者にも仮定しよう 任意の財 A 財 B の限界変形率 は交換比率 pB に一致する! pA pB ならば: 財 B の生産を 増やして財 A を 減らせば、( pB PA ) 0 円さらに儲かる pA pB ならば: 財 B の生産を 減らして財 A を 増やせば、( PA pB ) 0 円さらに儲かる pA pB ⇒利潤最大時は 成立! pA 6 一物一価の法則: 「価格ベクトルは世界共通」を仮定しよう:Why? 店A 店B 10 円 11円 消費者 地域 A 地域 B 12 円 15 円 生産者 地域 A 12 円 商人 (Arbitrageur) 地域 B 15 円 全消費者、全生産者、全取引財について 限界代替率=限界変形率=価格(交換)比率 が成立! 7 需給均衡 問:価格ベクトル ( p1 ,..., pH ) はどのように決定されるか? 答:全ての財について 総需要(全員の需要の和)と総供給(全員の供給の和)が 一致するように決定される 例:各経済主体 i (初期保有ベクトル ( yi 1 ,..., yiH ) )が、プライステーカーとして、消費ベ クトル ( xi 1 ,..., xiH ) を決定: n (x ih yih ) 0 : 財hに対して超過需要発生:財hの価格 ph アップ (x ih yih ) 0 : 財hに対して超過供給発生:財hの価格 ph ダウン ⇒ ⇒ 需給均衡にて、はじめて、プライステーカーの要望が達成される パレート最適配分達成が可能! i 1 n i 1 8 完全競争 Price Taker の仮定 一物一価の法則 需給均衡 ⇒ 価格メカニズムが理想的に機能: パレート最適配分(限界代替率=限界変形率=価格比率)達成 全ての財について需給均衡: 一般均衡(別名「ワルラス均衡」) cf. 部分均衡(特定の財市場について需給均衡:後述) 9 Leon Warlas (1934~1910) 古い経済学者の中でも特に重要な人物の一人(実は数学苦手?) 10 価格の情報機能 「どこの誰が、どの財を、どれほど持っているか、必要としているか?」 は、詳しくはわからない。 しかし、一般均衡価格ベクトルは、 「経済全体として、各財が、どの程度利用可能か、必要とされているか」 という情報のエッセンスを 各経済主体に一律に提供してくれる ⇒各経済主体は、後悔なく、生産、消費、取引できる ⇒結果的にパレート最適になる 11 「価格の情報機能」と「交換比率としての価格」 経済計算論争 (1930年代ごろ) ワルラスの一般均衡は、単なる連立方程式を解く問題に過ぎない。 生産技術や消費者の選好についての情報が集まれば 交換比率としての価格は計算できる 「資本主義経済でできることは、社会主義でもできる」 ハイエクの反論 Hayek, F. A. (1945) ``The Use of Knowledge in Society," American Economic Review 価格は単なる交換比率ではない 価格は経済主体に必要情報を提供するコミュニケーション媒体なのだ! 12 Friedrich August von Hayek(1899/5/8~1992/3/23) ノーベル賞(1974) 「隷従への道」(1944) ハイエクの書いたヒットセラー 「社会主義はナチズムと同じ」ということを最初(?)に指摘した重要な本 但し、学術書ではないので、全てまともかどうかは要注意… (たとえば「設計主義はすべて悪である」など) 13 制度設計(メカニズムデザイン) 第4章「制度のこと」で解説予定… 経済主体に散在する私的情報は、いかにして、 価格や配分の決定に、適切に、反映されうるか? 優れた制度設計不可欠:インセンティブ (制度は「自生的に秩序付けられる(by Hayek)」わけではない) Leonid Hurwicz (ハービッチさん)(1917/8/21~ 2008/6/24) ノーベル賞(2000) 次回:完全競争をさらに詳しく
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