MMPI-2 臨床尺度群中の Psychopathic Deviate 尺度(Pd)と 内容・補助尺度群との関連 ○美濃由紀子1・牧野貴樹2・笠井翔太3 ( 東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科・2東京大学生産技術研究所・3西武文理大学看護学部) キーワード: MMPI-2 内容・補助尺度群 精神病質的逸脱尺度 Correlation of Psychopathic Deviate Scale (Pd) with content and supplementary scales in MMPI-2 Yukiko MINO1, Takaki MAKINO 2, and Shota KASAI 3 1 ( Tokyo Medical and Dental University, 2University of Tokyo, 3Bunri University of Hospitality) Key words: MMPI-2 Content /Supplementary Scales Psychopathic Deviate 1 目 的 MMPI-1 は 1939 年に北米で発表され,半世紀を経過した 1989 年に 補助尺度では,PK(Post traumatic Stress Disorder-Keane)が最も共通加 点項目が多く 11 個で,肯定 8 項目,否定 3 項目(11:8,3),次いで PS(Post 大改訂されて MMPI-2 となり面目を一新した。MMPI-1 には 10 個の traumatic Stress Disorder-Schlenger)(9:7,2),MDS(Marital Distress)(8:4, 臨床尺度が設定されており,そのまま MMPI-2 に受け継がれた。 4),MAC-R(MacAndrew Alcoholism-Revised)(7:4,3),Mt(College Maladju MMPI-2 では,これらの臨床尺度群の維持に加え,新たに内容尺度群 (Content Scales)15 個と補助尺度群(Supplementary Scales)18 個が創設 stment )(5:3,2),AAS(Addiction Acknowledgment)(3:2,1),A(Anxiety)(3:2, 1)となる。内容尺度群中の ANG(Anger)は Pd と大きな関与が予想さ された。MMPI-1 では多くの追加尺度が開発されたが,MMPI-2 では, れたが,尺度加点項目数 16 個の内,Pd と関係する項目は皆無であった。 このような追加尺度の中で有用なものとして 18 個の補助尺度群を公 認している。 内容尺度と補助尺度について,Pd の含有個数を比較すると補助尺 度群の方が内容尺度群よりも Pd 加点項目数が多い。したがって当然 MMPI-2 に受け継がれた臨床尺度の中に Pd (Psychopathic Deviate) 尺度がある。この尺度の高得点者は,反社会性人格障害と診断される のことながら,補助尺度の方が全体として考えた場合,各尺度共通加 点項目率も大きいようである(表1)。 考 者が多いことから,この尺度の加点項目がどのような内容尺度および 察 補助尺度の共通加点項目になって構成されているかを明らかにし,そ Pd は,社会・文化的背景には問題がなく,正常の知識を有し,深刻な の 関 連 性 に つ い て 探 る こ と は , 反 社 会 性 人 格 障 害 (Anti-social 神経学的あるいは精神医学的障害がないにも拘わらず,法的なトラブ Personality Disorder)の本質理解に資すると思われるので検討する。 ルを繰り返し,精神科を紹介された外来患者によって開発された尺度 方 法 であり,50 個の項目から構成されている。Pd の高得点者は,社会の価 研究対象は Pd 尺度の加点 50 項目と,内容尺度群 15 個と補助尺度群 値観や社会基準に合せることができず,非社会的,反社会的行動をと 15 個(妥当性の 3 尺度を除く)中の加点項目,延べ 932 項目である。ま ることがあり,家族との折り合いも悪く,自分の問題であるにも拘わ ず対象とする内容尺度および補助尺度群における加点項目の中から らず両親を責めるなど他罰的な傾向がある。 Pd に共通する加点項目があるかどうかを確認する。Pd を中心とした しかし,表1のように内容尺度群,補助尺度群の Pd 加点項目数の分 共通加点項目数を算定して,その総数が大きい内容・補助尺度を選び 析からは,PTSD 関連尺度 PK,PS の計 20 個,MDS の 8 個,MAC-R の 7 出す。どの内容尺度・補助尺度中のどの項目が共通加点項目となる 個と第 4 位までは補助尺度が占めている。それ以下も Mt,AAS,A と のかを瞥見したのち,選び出された内容・補助尺度における共通加点 補助尺度群の方が多い。内容尺度では FAM,DEP が各 6 個,WRK,APS 項目を類別比較することによって,Pd のもつ特徴を明らかにすると の各 3 個のみとなる。各尺度共通加点項目数の Pd 項目関与率を比較 共に反社会性との関連についても検討する。 し て も , 補 助 尺 度 群 で は MDS 57.5%,PK 23.9%,AAS 23.1%,PS 内容尺度群と補助尺度群について 15%,MAC-R 14.3% と な り , 内 容 尺 度 群 で は ,FAM 24%,DEP 内容尺度群は 1985 年 Butcher JN らによって創設され,1990 年に解 18.2% ,ASP 13.6%,WRK 9.1%となり,やはり補助尺度の方がまさって 説書が出版された。開発の第1ステップは,実験的小冊子である いる。補助尺度の PK,PS,MDS,Mt,A は,適応不能による不安状態を示 MMPI-AX 版(MMPI-2 の前身)の全項目文について,臨床心理学的に適 していると考え,内容尺度の FAM,WRK は,家庭・社会に対する反 切な独立の内容領域確定であった。最初 22 の内容領域(尺度)に振り 発,DEP は,現状に対する不満・抑うつと考えると,Pd の反社会性は 分けられたが,さらに各尺度妥当性の統計学的検証,尺度と相関関係 ASP に僅かに表現されるだけとなり,対人環境に対する不適応面の反 のない項目文の同定と削除,尺度と相関する項目文の同定と追加,変 映という Pd の本質が見えてくる。 Pd 尺度を反社会性で代表させるの 更された項目文を含む尺度の名称変更,改めて最終的統計学的調整を は必ずしも妥当ではないのかもしれない。 経 過 し て 15 個 の 内 容 尺 度 群 が 決 定 さ れ た 。 そ の 中 の 1 つ に ASP(Antisocial Practices)がある。 MMPI-1 の追加尺度群は,各臨床尺度の尺度間隙を埋め,テスト事例 表1.Pd 尺度加点項目数と内容・補助尺度共通加点項目数 内容尺度群(C) 補助尺度群(S) 共通加点 項目数 肯 定 否 定 各尺度加点 項目数 各尺度共通加点 項目数率(%) 個で,肯定 3 項目,否定 3 項目(6:3,3)で,DEP は(6:4,2)であった。次はだ PK(S) PS(S) MDS(S) MAC-R(S) FAM(C) DEP(C) Mt(S) AAS(S) ASP(C) WRK(C) A(S) 11 9 8 7 6 6 5 3 3 3 3 8 7 4 4 3 4 3 2 2 3 2 3 2 4 3 3 2 2 1 1 0 1 46 60 14 49 25 33 41 13 22 33 39 23.9 15.0 57.0 14.3 24.0 18.2 12.2 23.1 13.6 9.1 7.7 いぶ少なくなって WRK(Work Interference)(3:3,0),ASP(3:2,1)となる。 <参考> ANG(C) 0 0 0 16 0.0 の特徴を明確化したが,その中で 18 尺度が信頼性・妥当性があり,臨 床解釈に有用なものとして MMPI-2 の補助尺度群として採用されて いる。内訳は伝統的尺度として 4 個,追加尺度として 11 個,新妥当性 指標として 3 個が確定している。 結 果 Pd との共通加点項目の最も多かったものは,内容尺度では FAM(Fa mily Problems)と DEP(Depression)である。FAM は共通加点項目数 6
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