日本機械学会[No.147-1]北陸信越支部 第51期総会・講演会 講演論文集 [2014.3.8 富山県射水市] 0801 分子動力学法による異原子バンプと基板の界面特性評価 Evaluation of interface properties between a bump of different atom and substrate using molecular dynamics ○ 平澤 勇気(長岡技科大院) 正 古口 日出男(長岡技科大) Yuki HIRASAWA, Graduate School of Nagaoka University of Technology, 1603-1 Kamitomioka, Nagaoka, Niigata Hideo KOGUCHI, Nagaoka University of Technology, 1603-1 Kamitomioka, Nagaoka, Niigata Key Words: Molecular Dynamics, Interface, Elastic constants, Interface stress 1. 緒言 本研究では,分子動力学法を用いてナノメートルの異方 性異材接合体の界面特性および界面端部の特異応力場の特 性について調べる.二つの異なる材料からなる異原子バン プと基板の接合体における原子応力の分布を調べ,界面上 の原子応力分布と Stroh 形式を用いた特異性オーダの解析 との比較を行う. 2. 分子動力学法 本研究では分子動力学(MD)法を用いて解析を行う.MD 法では原子の動きを以下のようなニュートン運動方程式に より求める. ∂E α m a = F = αβ ∂γ α α α 1 ∂2 Eα , Ωα ∂εij∂ε kl σ ijα = a ∂γ a , Ωα ∂εij α dijkl = a ∂2γ a Ωα ∂εij∂ε kl (3) ここで,a はレイヤー厚さである. 4. 界面特性を考慮した特異性固有値の算出方法 異材界面角部の特異応力場は,角部の特異点を原点とし て,特異点からの距離 r とすると次式で表される. { τ xy = k xy r − λΙ − ( L − r ) − λΙ } (4) ここで,k xy は応力集中の大きさを示すスカラー, λΙ は特 異性のオーダ,L は界面の長さである. 次に,界面特性を考慮した特異性固有値 λ は以下のよう に求められる (3).K は材料定数と角度から成る 6×6 の行列 ! −1 # G 2(2) # #" + ) −1 , = !"G1(1)G1(0) ) - $ ! & # A2 &− 1− λ −1+ λ pˆ*1 (θ1 ) pˆ*1 (θ 0 ) & #" B 2 % $$ 1−λ −1+λ pˆ*2 (θ1 ) pˆ*2 (θ 2 ) 0 && && 1− λ −1+ λ 0 pˆ*2 (θ1 ) pˆ*2 (θ 2 ) && %% 0 $ A2 & B 2 &% (5) ' ' 0 ) + ) p* + ) ) ( ,=( , ) ) 0 ) 0 ) * - * ここで,p*は変位の固有ベクトル,<>は 3×3 の対角行列, Ak と Bk は Stroh 固有ベクトルによって与えられる材料 k の 行列,p*k は Stroh の固有値,¯は共役複素数を表す (4).θi は 図 1 における角度を表す.Gk(s)は 6×6 の行列であり式(6)で 定義される. " % A Ak ' ) 0 % , " 0 H ' (6) G k (s) = Ωk $ k − + H10 − 21s λ . Ωk $ $ Bk Bk ' * - $# A k A k '& # & ここで, は応力場の代表寸法であり,本研究では 1nm と する.Ωk, H10k, H21k は次式となる. # cosθ % Ωk = % −sin θ % 0 $ ! k (a) # d1111i 1 H10 k = # 0 # k (a) #" d3111i 1 ∂Eα (2) Ωα ∂εij ここで,Ωα は原子 α に対するボロノイ多面体の体積であり, εij はひずみテンソルである.原子レベルの界面応力 τ ijα ,原 α 子界面弾性係数 dijkl は,界面エネルギ γ α を界面ひずみで微 分した次式で得られる. τ ijα = ! K K $' ) * 1 2 &( p K =# #" K 3 K 4 &%) * 0 ! 1−λ −1+λ # pˆ*1 (θ1 ) pˆ*1 (θ 0 ) # 0 #" (1) α は原子 α の原子質量, aα は原子 α の加速度, ここで,m Fα は α 原子 α に加わる力, E は原子 α のもつポテンシャルエネル ギ, γ αβ は原子 α,β 間の距離を表す. 本研究では式(1)のポテンシャルエネルギに GEAM ポテ ンシャル (1)を用いた. 3. 原子界面応力,界面応力,界面弾性係数 原子レベルの不連続構造体における有効な弾性係数とし α て原子弾性係数 Cijkl ,原子応力 σ ijα がある.原子弾性係数,原 子応力は式(2)で表される (2). α Cijkl = であり,次式で求める. H 21k ! k (a) # da1111i =# 0 # k (a) # da3111i " sin θ cosθ 0 0 0 1 & ( ( ( ' k (a) $ 0 d1131i & 0 0 & k (a) & 0 d3131i &% 0 τ k (a) a11i 0 $ k (a) da1131i & 0 & & k (a) & da3131i % (7) (8) (9) 式(3)より得られる原子レベルの界面応力 τ ijα ,原子界面弾 α 性係数 dijkl を用いて,式(8),(9)は求められる.次式を解くこ とで,特性異固有値 λ を求める. K 3 p* = 0, K 3 = 0 (10) 6・ 2 固有値解析結果と MD 法における界面上の応力比較 開き角 70°において, 6・1 節より得られた結果と式(10)を 用いて固有値解析を行った.固有値解析により得られた Au と Cu の固有値 λⅠ について近似した結果を図 4 に示す.MD 法により得られた界面上の応力分布 τxy および式(4)による 結果を図 5 に示す. 式(4)はそれぞれ λⅠ に図 4 の式,kxy は 0.985 を適用している.図 5 より,MD 法の結果と固有値解析 により求めた結果が良く一致していることが分かる. 他の開き角の結果については講演時に報告する. 5. 解析条件 接合体として図 2 のような Γ2 を界面とし,異材界面角部 を有するモデルを用いた.Γ1 と Γ3 の外向き法線方向に 100MPa の力を加える. Γ4 は y 方向変位を固定する.また,界 面は[100]になるような結晶構造を持つ.解析に用いたモデ ルの厚さは約 2nm とし,材料 1 の開き角 ω は 70°, 90°, 130° と変え,モデル全体の原子数は 14,000~16,000 個である.1 ス テップを 1fs とした.計算中の温度変化は 0K から計算を始 め 25,000 ステップで 0.5K までに上げ,その後 75,000 ステッ プから 100,000 ステップまでに 0K に下げ,150,000 ステッ プまで計算した.z 方向に周期境界条件を設定した. Material1, 2 はそれぞれ金(Au), 銅(Cu)を用い,界面は整合 界面になるようにした. Au : λΙ Cu : λΙ 0.48 -0.000113 0.0172exp(-6.46r)cos(-4.26r)-0.561r +1.00 -0.000319 0.115exp(-5.24r)cos(-2.56r)+1.72r -1.28 0.47 1-λΙ Fig.1 Wedge model 0.46 0.45 0.44 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 r , nm Fig.4 The order of stress singularity λⅠ Interface edge of Au and interface Interface edge of Cu and interface -λ -λ Fitting curve of Au : 0.985{r Ι-(11.43-r) Ι} 2 Atomic stress τxy , GPa - λΙ - λΙ Fitting curve of Cu : 0.985{r -(11.43-r) } 1 0 -1 -2 0 Fig.2 Model for analysis Atomic interface elastic modulus d1111 , N/m 0 -5 Interface edge of Au and interface Interface edge of Cu and interface -73.5exp(-8.70r)cos(5.90r)+10.7r -0.0226 -10.9 -0.0218 -5623exp(-15.6r)cos(-4.15r)+10.8r -11.0 -15 0 1 2 3 4 5 r , nm Fig.3 Distribution of interface elastic modulus d1111 along the interface 4 6 8 10 12 r , nm 6. 解析結果 6・ 1 原子界面応力,原子界面弾性係数 開き角 70°において MD 解析により得られた Au と Cu の 原子界面弾性係数 d1111 について近似した結果を図 3 に示す. 図 3 より界面端 y≒1.5nm 以内で異なる傾向を示すことがわ かる.τ11, d1131, d3131 においても同様の傾向を得る. -10 2 6 Fig.5 Distribution of stress τxy along the interface 6. 結言 MD 法により,Au と Cu の接合モデルにおいて原子界面応 力,原子界面弾性係数を求めた.MD 法による結果と Stroh 形 式を用いた固有値解析により得られた結果の比較を行い, 良く一致していることを示した. 参考文献 (1) X.W.Zhou. et al., Atomic scale structure of sputtered metal multilayer, Acta materialia., 49 (2001), pp. 4005-4015. (2) Izumi, S. et al., The atomic level evaluation of the interface stress and interface elastic constants for semiconductor materials, Transactions of the Japan Society of Mechanical Engineers, No.03-06 (2003), pp. 1- 6 (3) Koguchi, H., Analysis for Stress singular fields near a wedge corner in 2D joints considering interface stress and interface elasticity, ASME 2012 International Mechanical Engineering Congress & Exposition (IMECE2012), Technical Paper (Reviewed paper), IMECE2012-86097. (4) Ting T. C. T., Anisotropic Elasticity: Theory and Applications, Oxford University Press, (1996), pp.134-263.
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