12(PDF:1602KB)

改定案
現行(手引き)
第6章 液状化の検討
6.1 液状化一般
第7章 液状化の検討
7.1 液状化一般
液状化及び流動化が生じると想定される場合は、施設への影響を適切に判定し耐震設計に取り
液状化及び流動化が生じると想定される場合は、施設への影響を適切に判定し耐震設計に取り
入れなければならない。
入れなければならない。
[解説]
[解説]
既往の震災事例によれば、ごく軟弱な粘性土層及びシルト質土層に生じる地震時の強度の低下と、
既往の震災事例によれば、ごく軟弱な粘性土層及びシルト質土層に生じる地震時の強度の低下と、
飽和砂質土層に生じる液状化及びこれに伴う地盤の流動化は、橋梁等構造物の耐震性に大きな影響
飽和砂質土層に生じる液状化及びこれに伴う地盤の流動化は、橋梁等構造物の耐震性に大きな影響を
を与えるため、これらについて地震時の安定性を判定することを規定した。
与えるため、これらについて地震時の安定性を判定することを規定した。
粘性土層及びシルト質土層の場合には、地震により繰返し変形を受けると強度が低下する場合が
ある。特に、表層の軟弱粘性土層、あるいはシルト質土層で鋭敏比が高い場合にこの傾向が認めら
粘性土層及びシルト質土層の場合には、地震により繰返し変形を受けると強度が低下する場合があ
る。特に、表層の軟弱粘性土層、あるいはシルト質土層で鋭敏比が高い場合にこの傾向が認められる。
れる。
また、神戸市ポートアイランドの北部では、表層から30~60mにN値が10~50の砂礫と粘土質の層が
また、神戸市ポートアイランドの北部では、表層から30~60mにN値が10~50の砂礫と粘土質の層
存在し、18~28mの間はシルト質粘土、その上にマサ土が埋立てられているが、兵庫県南部地震時に
が存在し、18~28mの間はシルト質粘土、その上にマサ土が埋立てられているが、兵庫県南部地震
は、シルト質粘土層でも地震動の減衰があり、上層のマサ土でも間隙水圧の上昇による土の繰返し軟
時には、シルト質粘土層でも地震動の減衰があり、上層のマサ土でも間隙水圧の上昇による土の繰
化により減衰が著しかったことが報告されている。マサ土のような特殊な土でも軟化という現象が見
返し軟化により減衰が著しかったことが報告されている。マサ土のような特殊な土でも軟化という
られたことから、液状化の検討は必要と判断される。
現象が見られたことから、液状化の検討は必要と判断される。
(1) 流動化
地震により液状化(間隙水圧が急激に上昇し、飽和した砂質地盤がせん断強度を失い、土構造に破
壊)が生じると、見かけ比重の重い構造物は沈下し、見かけ比重の軽い構造物は浮き上がる。また、擁
壁のように土圧に抵抗する構造物(抗土圧構造物)は土圧が増加するため前面に押され、基礎のように
水平抵抗を期待する構造物はその抵抗を失い大きく変位する。このため、水際線付近や傾斜した地盤
などで偏土圧を受ける構造物は、地盤が液状化することにより土圧が増加し、基礎構造物は抵抗を失
い、側方にあたかも地盤が流れ出すかのように大きく変形する。このように、砂地盤の液状化に伴い、
地盤が水平方向に移動することを流動化、あるいは側方流動という。
兵庫県南部地震では、埋立地の水際線付近に流動化が発生し、橋脚基礎に残留変位が生じた。この
橋脚では、地表面付近の液状化しない層(非液状化層)が、その下部に位置する液状化する土層(液状
化層)とともに移動し、フーチングに大きな力を及ぼしたものと考えられる。
このように、砂地盤の液状化により生じる流動化は、基礎構造物を大きく変形させ、橋桁の落下な
ど橋梁に大きな被害を与えることになる。
一方、側方流動による変位がある程度の精度をもって推定できる場合には、図-7.1.1に示すように、
基礎構造一地盤ばね系モデルに地盤変位を入力することにより耐震計算を行うことができる。
6-1
改定案
現行(手引き)
図-7.1.1 側方流動に対する耐震計算モデル
兵庫県南部地震では、側方流動によって建物、橋脚及び各種プラント施設の基礎構造に甚大な被害
が発生した。同様な基礎構造の被害は新潟地震においても報告されており、側方流動の可能性のある
地盤において構造物を建設する場合、側方流動地盤からの外力、すなわち土圧及び流動圧を考慮して
耐震設計を行うことが必要である。側方流動が地中構造物に及ぼす外力の特性については現時点では
不明な点もあり、今後の調査・研究に待つところが多いが、兵庫県南部地震による橋脚の残留変形の
逆解析及び既往の模型実験から、①液状化層より地中構造物に作用する流動圧は全上載圧の30%程
度以下であること、②液状化層上部に存在する非液状化層からの外力は最大で受働土圧(常時)に達
する場合があること、が示されている。
(2) 液状化により流動を起こす地盤
流動化は、(1)で述べたように液状化を起こす砂地盤の埋立地などの水際線付近や傾斜した地盤で生
じるが(図-7.1.2参照)、一般に、以下の2条件のいずれにも該当する地盤では、流動化が生じる可能
性があるとみなしてよい。
図-7.1.2
6-2
液状化により地盤流動を起こす地盤
改定案
現行(手引き)
a.臨海部において、背後地盤と前面の水底との高低差が5m以上ある護岸により形成された水際線
から100m以内の範囲にある地盤。
b.液状化する層厚5m以上の砂質土層があり、かつ、この土層が水際線から水平方向に連続して存
在する地盤。
ここで、護岸の背後地盤と前面の水底との高低差を5m以上としているのは、兵庫県南部地震の際に、
流動化により橋脚基礎に残留変位が生じた臨海部における護岸の背後地盤と前面の水底との高低差は
10m程度以上であったが、流動化が生じた箇所としては、それ以下の高低差の箇所もあったためであ
る。また、橋に影響を与える流動化が生じる可能性がある範囲としては、兵庫県南部地震の際に流動
化により橋脚基礎に残留変位が生じた範囲を参考に、水際線から100m以内としている(図-7.1.3参
照)。
図-7.1.3 水底との高低差及び水際線からの距離の取り方
兵庫県南部地震において側方流動によって大きな被害を受けた基礎構造物のほとんどは、護岸より
100m以内に位置するものであった。このため、側方流動による外力を考慮する領域は護岸線より100
m以内とし、かつ、図-7.1.4に示すように、護岸線からの距離により土圧を低減することとする。
図-7.1.4 護岸からの距離による土圧の低減
P''p=β・Pp ················································································· (7.1.1)
ここに、 P''p
6-3
:液状化層の設計土圧(kN/m)
β
:低減率(1-0.01x)
x
:護岸からの距離(m)
Pp
:非液状化層の常時受働土圧(kN/m)
改定案
現行(手引き)
液状化すると判定される層厚5m以上の砂質土層があることとしているのは、兵庫県南部地震の際に
流動化により橋脚基礎に残留変位が生じた箇所及び大きな地盤変位が生じた箇所における地盤条件を
参考にしているためである。また、流動化は広範な地盤の液状化に伴って生じる現象であるため、水
際線から基礎位置ごとの液状化の判定結果をもとに、水際線から100m以内であっても液状化すると判
定される土層が水際線から水平方向に連続的に存在しなくなる場合には、その背後の地盤については
基礎等に影響を与える流動化は生じないとみなしてよい。
基礎等に影響を与える流動化が生じる可能性がある場合には、単に構造物基礎を強化するだけでな
く、横剛性の大きい基礎形式の採用も含め、構造物全体として有害な影響を受けないようにすること
が重要である。なお、橋台基礎については、一般に流動化の影響を考慮しない。これは、橋台は背面
に土圧を受けるため偏土圧に抵抗するように設計される構造物であり、また、仮に流動化の影響を受
けても前面に押し出されるため、それが桁の落下に直接つながりにくいためである。また、橋梁に影
響を与える液化状が生じると判断される地盤にある橋台基礎では、地震時保有水平耐力法によってレ
ベル2地震動に対する照査を行う。
臨海部以外でも、昭和39年の新潟地震の際には新潟市の信濃川沿岸において液状化やそれに伴う流
動化により橋梁が被災したと考えられる事例があり、その経験を踏まえ、耐震設計に液状化の影響が
考慮されるようになった。その後、流動化により橋梁が大きな影響を受けたのは、兵庫県南部地震の
際の臨海部における事例が初めてである。河川部における流動化のメカニズムや構造物に与える影響
は、臨海部で生じた現象とは異なることが考えられるが、河川部についても偏土圧の影響が大きいと
考えられる直立式の低水護岸の背後の高水敷及び直立式の特殊堤の堤内地盤において、前記の条件a.
及びb.のいずれにも該当する場合には、臨海部に準じて、流動化の影響を考慮することが望ましい。
引用・参考文献
ⅰ)日本道路協会:道路橋示方書・同解説 Ⅴ.耐震設計編(2002)
ⅱ)日本水道協会:水道施設耐震工法指針・解説(1997年版)(1997)
ⅲ)岡原美知夫、和田克哉:杭基礎の設計施工ノウハウ、近代図書(1998)
6-4
改定案
現行(手引き)
6.2 水平地盤における液状化判定
7.2 水平地盤における液状化判定
液状化判定として、現在用いられている地盤の液状化判定法には、以下に示す3種類がある。
液状化判定として、現在用いられている地盤の液状化判定法には、以下に示す3種類がある。
設計レベルや構造物の規模・重要性に応じて、いずれかの方法で検討する必要がある。原則と
設計レベルや構造物の規模・重要性に応じて、いずれかの方法で検討する必要がある。原則と
して(1)の方法によるものとする。
して(1)の方法によるものとする。
(1) 一般の土質調査・試験結果をもとにした簡易な判定法
(1) 一般の土質調査・試験結果をもとにした簡易な判定法
(2) FL値や室内液状化試験結果を用いて、静的または動的解析を行う詳細な判定法
(2) 室内液状化試験や地震応答解析を行う詳細な判定法
(3) 模型振動台実験や原位置液状化試験を行う判定法
(3) 模型振動台実験や原位置液状化試験を行う判定法
[解 説]
[解 説]
これらの中で、設計時によく用いられている判定法は(1)、(2)である。特に、(1)は簡単に液状化判
これらの中で、設計時によく用いられている判定法は(1)、(2)である。特に、(1)は簡単に液状化判定
定ができ、精度もかなり高く、さらに必要な調査も標準貫入試験などのごく一般的なものですむた
ができ、精度もかなり高く、さらに必要な調査も標準貫入試験などのごく一般的なものですむため、
め、多くの基準類に取り入れられている。
多くの基準類に取り入れられている。
また、(2)は(1)よりもさらに精度よく判定できるが、特別な試験・解析が必要になるため、時間も
また、(2)は(1)よりもさらに精度よく判定できるが、特別な試験・解析が必要になるため、時間も費
費用もかかる。このため、構造物の重要性が高いなどの理由から、より詳細な判定が必要な場合に
用もかかる。このため、構造物の重要性が高いなどの理由から、より詳細な判定が必要な場合にのみ
のみ行われることが多い。ただし、数値計算ツールの発展と普及により、一次元地盤応答解析(全
行われることが多い。
応力解析)については比較的容易に行える環境が整ってきたことから、(1)の簡易判定法においても
同解析により地震時せん断応力を求めてもよい。
そこで、ここでは、(1)について述べ、(2)については「7.3 飽和した緩い砂礫地盤上のため池堤体の
液状化判定と安全性の検討」に示す。ただし、(3)については設計時に用いられることは少ない。
ここでは、(1)及び(2)について述べる。ただし(2)のうち、ため池に関する内容は「6.3 飽和した
緩い砂礫地盤上のため池堤体の液状化判定と安全性の検討」に示す。なお、(3)については設計時に
用いられることは少ないため、ここでは示していない。
簡易判定法
・FL値法
・粒度とN値による方法
簡易判定法※1
・粒度と N 値による方法
・FL 値法
PL 値の利用例
・PL 値法
より詳細な検討が必要
液状化する
液状化する
対策工の検討
詳細な判定法
・全応力解析
・有効応力解析
より詳細な検討が必要
液状化する
液状化する
詳細な判定法
・全応力解析
・有効応力解析
液状化しない
液状化しない
液状化しない
液状化しない
対策工の検討
PL 値マップの作成
対策工なし
図-7.2.1 液状化判定フロー図
対策工なし
広域の液状化危険度評価
図-6.2.1 液状化判定フロー図
※1 このほか、パイプラインの埋戻し土については、土地改良事業計画設計基準設計「パイプライ
ン」(2009年)において、地下水位、埋設深度、周辺地盤の条件による液状化判定の考え方が
示されている。詳細は、同設計基準「9.6.6 液状化の判定」を参照されたい。
6-5
改定案
現行(手引き)
(1) 簡易判定法
(1) 簡易判定法
簡易判定法で最も一般的な方法は、標準貫入試験結果から得られるN値を用いる方法である。そ
の中でも主な方法は、「粒度とN値による方法」と、「FL値法」の2種類である。
簡易判定法で最も一般的な方法は、標準貫入試験結果から得られるN値を用いる方法である。その
中でも主な方法は、「粒度とN値による方法」と、「FL値法」の2種類である。
また、FL値を深さ方向に重み付けして積分した値である「液状化指数(PL値)によって判定する方
法」もある。
また、FL値を深さ方向に重み付けして積分した値である液状化指数(PL値)によって判定する方法も
ある。
1) 粒度とN 値による方法
(2) 粒度とN値による方法
粒度とN値による方法は、粒度による判定を行い、次に等価N値と等価加速度による予測・判
定を行う方法で、図-6.2.3にそのフロー図を示す。
粒度とN値による方法は、粒度による判定を行い、次に等価N値と等価加速度による予測・判定
を行う方法で、図-7.2.3にそのフロー図を示す。
2
等価N値は各土層のN値を有効上載圧力が6.4kN/m 2の場合の同一の相対密度等の土層のN値に
等価N値は各土層のN値を有効上載圧力が65kN/m の場合の同一の相対密度等の土層のN値に
換算したものをいい、図-6.2.2に関係を図示する。等価加速度は地盤の地震応答計算により求まる
換算したものをいい、図-7.2.2に関係を図示する。等価加速度は地盤の地震応答計算により求まる最
最大せん断応力を用いて各土層について算出する。
大せん断応力を用いて各土層について算出する。
図-6.2.2 等価N値算定用チャート(直線は、相対密度等が一定の
図-7.2.2 等価N値算定用チャート(直線は、相対密度等が一定の
場合のN値と有効上載圧力の関係を表す)
場合のN値と有効上載圧力の関係を表す)
6-6
改定案
現行(手引き)
必要な土質定数
必要な土質定数
・N値
・均等係数Uc
・粒度分布図
・土の単位体積重量γt(kN/m3)
・細粒分含有率FC(%)
・地下水位
等価N値の算定
N-0.019(σ'V-65)
(N)65=
0.0041(σ'V-65)+1
(N)65 :等価N値
N
:土層のN値
σ'V :土層の有効上載圧
必要な土質定数
必要な土質定数
・N値
・均等係数Uc
・粒度分布図
・土の単位体積重量γt(kN/m3)
・細粒分含有率FC(%)
・地下水位
等価加速度の算定
αeq=0.7×
αeq
τmax
σ'V
g
τmax
σ'V
等価N値の算定
N-0.019(σ'V-65)
(N)65=
0.0041(σ'V-65)+1
×g
:等価加速度
:最大せん断応力(地盤応答解析による)
:有効上載圧力
:重力加速度
(N)65 :等価N値
N
:土層のN値
σ'V :土層の有効上載圧
・細粒分を多く含む場合のN値の
補正と予測・判定
細粒分(粒径が75μm以下の成
分)を5%以上含むものについて
は、等価N値補正を行い、補正後
の等価N値を用いて対象土層が
左図に示したⅠ~Ⅳのどの範囲
にあるかを判定する。
Ⅰ
液状化する
Ⅱ
液状化する可能性が大きい
Ⅲ
液状化しない可能性が大きい
等価N値の算定
αeq=0.7×
αeq
τmax
σ'V
g
τmax
σ'V
×g
:等価加速度
:最大せん断応力
:有効上載圧力
:重力加速度
・細粒分を多く含む場合のN値の
補正と予測・判定
細粒分(粒径が75μm以下の成
分)を5%以上含むものについて
は、等価N値補正を行い、補正後
の等価N値を用いて対象土層が
左図に示したⅠ~Ⅳのどの範囲
にあるかを判定する。
Ⅰ
液状化する
Ⅳ
液状化しない
図-6.2.3 港湾施設の技術上の基準の方法による液状化判定法
Ⅱ
液状化する可能性が大きい
Ⅲ
液状化しない可能性が大きい
Ⅳ
液状化しない
図-7.2.3 港湾施設の技術上の基準の方法による液状化判定法
6-7
改定案
現行(手引き)
2) FL値法
(3) FL値法
FL値法は、まず地盤内のある深さの液状化強度比(せん断応力で表した液状化強度と有効拘束圧
FL値法は、まず地盤内のある深さの液状化強度比(せん断応力で表した液状化強度と有効拘束圧
の比)Rを、N値や粒径等から求める。次に、その土に地震時に加わる繰返しせん断応力比Lを地表 の比)Rを、N値や粒径等から求める。次に、その土に地震時に加わる繰返しせん断応力比Lを地表
最大加速度などから推定して、両者の比をとって液状化に対する抵抗率(又は安全率とも呼ぶ) FLを次
最大加速度などから推定して、両者の比をとって液状化に対する抵抗率(又は安全率とも呼ぶ) FLを次
式で求める。
式で求める。
FL 
R Rma x

L Lma x ···············································(6.2.1)
FL 
ここに、 R、Rmax:液状化強度比
R Rma x

L Lma x
·············································· (7.2.1)
ここに、 R、Rmax:液状化強度比
L、Lmax:繰返しせん断応力比
L、Lmax:繰返しせん断応力比
算定の結果、FL≦1であれば液状化の可能性があり、FL>1であれば可能性が小さいと判断する。な
算定の結果、FL≦1であれば液状化の可能性があり、FL>1であれば可能性が小さいと判断する。な
お、ここでmaxと記す場合には、地震荷重のもとでの液状化強度比と繰返しせん断応力比を、記さな
お、ここでmaxと記す場合には、地震荷重のもとでの液状化強度比と繰返しせん断応力比を、記さな
い場合には一様振幅荷重のもとでの意味を表している。図-6.2.4に、FL値法の基本的なフロー図を
い場合には一様振幅荷重のもとでの意味を表している。図-7.2.4に、FL値法の基本的なフロー図を
示す。
示す。
「道路橋示方書 Ⅴ耐震設計編」におけるFL値法による判定フロー図を、図-6.2.5に示す。
「道路橋示方書 Ⅴ耐震設計編」におけるFL値法による判定フロー図を、図-7.2.5に示す。
土質調査
必要な土質定数の収集
・N値
・液性限界、塑性限界
・単位体積重量
・粒度分布等
土質調査
必要な土質定数の収集
・N値
・液性限界、塑性限界
・単位体積重量
・粒度分布等
液状化対象層の判定
・細粒分含有率
・平均粒径等
液状化対象層の判定
・細粒分含有率
・平均粒径等
繰返しせん断力比の算出
Lmax
液状化強度比の算出
Rmax
※
繰返しせん断力比の算出
Lmax
液状化強度比の算出
Rmax
※最大せん断応力Lmaxは、一次元地盤
応答解析によって求めてもよい。
FL値の算出
FL値の算出
FL>1
FL≦1
液状化する
図-6.2.4
FL>1
FL≦1
液状化しない
液状化する
FL値法による液状化判定法
図-7.2.4
6-8
液状化しない
FL値法による液状化判定法
改定案
現行(手引き)
必要な土質定数
・N値
・細粒分含有率FC(%)
・平均粒径D50(mm)、10%粒径D10(mm)
・塑性指数Ip
・土の単位体積重量γt(kN/m3)
・地下水位
必要な土質定数
・N値
・細粒分含有率FC(%)
・平均粒径D50(mm)、10%粒径D10(mm)
・塑性指数Ip
・土の単位体積重量γt(kN/m3)
・地下水位
液状化対象層
・沖積層
・地下水位が現地盤面から10m以内
・現地盤面から20m以内
・FC≦35%あるいはIp≦15
・D50≦10mmかつD10≦1mm
液状化対象層
・沖積層
・地下水位が現地盤面から10m以内
・現地盤面から20m以内
・FC≦35%あるいはIp≦15
・D50≦10mmかつD10≦1mm
動的せん断強度比
0.0882 Na/1.7
(Na<14)
RL=
0.0882 Na/1.7+1.6×10-6×(Na-14)4.5 (Na≧14)
〈砂質土〉
Na=C1・N1+C2
N1=170N/(σ'V+70)
1
(0%≦FC<10%)
C1= (FC+40)/50(10%≦FC<60%)
FC/20-1 (60%≦FC)
動的せん断強度比
地震時せん断応力比L
L=γdKhgσV/σ'V
γd=1.0-0.015x
σV=γt1hw+γt2(x-hw)
σ'V=γt1hw+γ't2(x-hw)
Khg=Cz・Khg0
Khg:地震時保有水平耐力法に用いる設
計震度
0.0882 Na/1.7
(Na<14)
RL=
0.0882 Na/1.7+1.6×10-6×(Na-14)4.5 (Na≧14)
〈砂質土〉
Na=C1・N1+C2
N1=170N/(σ'V+70)
1
(0%≦FC<10%)
C1= (FC+40)/50(10%≦FC<60%)
FC/20-1
(60%≦FC)
0
(0%≦FC<10%)
(FC-10)/18(10%≦FC)
〈礫質土〉
Na={1-0.36log10(D50/2}×N1
0
(0%≦FC<10%)
(FC-10)/18(10%≦FC)
〈礫質土〉
Na={1-0.36log10(D50/2}×N1
C2=
ここに、
RL :繰返し三軸圧縮強度比
N
:標準貫入試験から得られるN値
N1 :有効上載圧100kN/m 2相当に換算
したN値
Na :粒度の影響を考慮した補正N値
C1,C2 :細粒分含有率によるN値の補正
係数
FC :細粒分含有率(%)(粒径75μm以
下の土粒子の通過質量百分率)
D50 :平均粒径(㎜)
地震時せん断応力比L
L=γdKhgσV/σ'V
γd=1.0-0.015x
σV=γt1hw+γt2(x-hw)
σ'V=γt1hw+γ't2(x-hw)
Khg=Cz・Khg0
Khg:地震時保有水平耐力法に用いる設
計震度
C2=
FL値の算出
FL=R/L
R=CwRL
<タイプⅠ地震動>
Cw=1.0
<タイプⅡ地震動>
1.0
(RL≦0.1)
Cw= 3.3RL+0.67(0.1<RL≦0.4)
2.0
(0.4<RL)
FL≦1
液状化する
ここに、
RL :繰返し三軸圧縮強度比
N
:標準貫入試験から得られるN値
N1 :有効上載圧100kN/m 2相当に換算
したN値
Na :粒度の影響を考慮した補正N値
C1,C2 :細粒分含有率によるN値の補正
係数
FC :細粒分含有率(%)(粒径75μm以
下の土粒子の通過質量百分率)
D50 :平均粒径(㎜)
FL>1
液状化しない
図-6.2.5 道路橋示方書(H14.3)の方法による液状化判定法
FL値の算出
FL=R/L
R=CwRL
<タイプⅠ地震動>
Cw=1.0
<タイプⅡ地震動>
1.0
(RL≦0.1)
Cw= 3.3RL+0.67(0.1<RL≦0.4)
2.0
(0.4<RL)
FL≦1
液状化する
FL>1
液状化しない
ここに、
FL :液状化に対する抵抗率
R :動的せん断強度比
L :地震時せん断応力比
CW :地震動特性による補正係数
RL :繰返し三軸圧縮強度比
γd :地震時せん断応力比の深さ方向の
低減係数
Khg :レベル2地震動の地盤面における設計
水平震度
σV :全上載圧(kN/m2)
σ'V :有効上載圧(kN/m2)
x
:地表面からの深さ(m)
γt1 :地下水位面より浅い位置での土の単位
体積重量(kN/m3)
γt2 :地下水位面より深い位置での土の単位
体積重量(kN/m3)
γ't2 :地下水位面より深い位置での土の有効
単位体積重量(kN/m3)
hW :地下水位の深さ(m)
図-7.2.5 道路橋示方書の方法による液状化判定法
6-9
改定案
現行(手引き)
[参 考] FL値法による液状化判定の例
[参 考] FL値法による液状化判定の例
ここで、FL値法を用いて実際に液状化判定をしてみると、以下のとおりとなる。
ここで、FL値法を用いて実際に液状化判定をしてみると、以下のとおりとなる。
a.解析条件
a.解析条件
対象地盤の液状化判定用の諸定数を、図-6.2参1に示す。
対象地盤の液状化判定用の諸定数を、図-7.2参1に示す。
例として、タイプⅠ地震動の場合で、計算深度x=4.5mの地点について求める。
例として、タイプⅠ地震動の場合で、計算深度x=4.5mの地点について求める。
b.上載圧の算出
b.上載圧の算出
σV=γt1・hW+γt2(x-hW)
hW=0より、xは3mと1.5mに分けて計算する。
2
σV=γt2・x=18×3+19×1.5=82.5kN/m
σV=γt1・hW+γt2(x-hW)
σV=γt2・x=18×3+19×1.5=82.5kN/m2
σ'V=γ't1・hW+γ't2(x-hW)
σVと同様に、
σ'V=γ't1・hW+γ't2(x-hW)
σVと同様に、
σ'V=γ't2・x=8×3+9×1.5=37.5kN/m2
σ'V=γ't2・x=8×3+9×1.5=37.5kN/m2
図-6.2参1 液状化判定用の諸定数
c.動的せん断強度比Rの算出
図-7.2参1 液状化判定用の諸定数
c.動的せん断強度比Rの算出
以下に基本式を示す。
以下に基本式を示す。
R=CWRL
RL=
hW=0より、xは3mと1.5mに分けて計算する。
R=CWRL
0.0882 Na/1.7
(Na<14)
-6
4.5
0.0882 Na/1.7+1.6×10 ・(Na-14)
(14≦Na)
RL=
0.0882 Na/1.7
(Na<14)
-6
4.5
0.0882 Na/1.7+1.6×10 ・(Na-14)
(14≦Na)
ここで、砂質土の場合
ここで、砂質土の場合
Na=C1・N1+C2
Na=C1・N1+C2
N1=170N/(σ'V+70)
N1=170N/(σ'V+70)
6-10
改定案
1
現行(手引き)
(0%≦FC<10%)
1
C1= (FC+40)/50(10%≦FC<60%)
FC/20-1
0
C2=
(0%≦FC<10%)
C1= (FC+40)/50(10%≦FC<60%)
(60%≦FC)
FC/20-1
(0%≦FC<10%)
0
C2=
(FC-10)/18(10%≦FC)
(60%≦FC)
(0%≦FC<10%)
(FC-10)/18(10%≦FC)
FC=20%より(震度x=4.5mにおいて)
FC=20%より(震度x=4.5mにおいて)
C1=(20+40)/50=1.2
C1=(20+40)/50=1.2
N1=170×4/(37.5+70)=6.33
N1=170×4/(37.5+70)=6.33
C2=(20-10)/18=0.56
C2=(20-10)/18=0.56
Na=1.2×6.33+0.56=8.156
Na=1.2×6.33+0.56=8.156
RL=0.0882 8.156/1.7=0.193
RL=0.0882 8.156/1.7=0.193
よって、R=1.0×0.193=0.193
よって、R=1.0×0.193=0.193
d.地震時せん断応力比Lの算出
d.地震時せん断応力比Lの算出
Lを算出する基本式を、以下に示す。
Lを算出する基本式を、以下に示す。
L=γd・Khg・σV/σ'V
L=γd・Khg・σV/σ'V
γd=1.0-0.015x
γd=1.0-0.015x
Khg=Cz・Khg0(ただし0.3を下回る場合は0.3)
B地域
Cz=0.85
Ⅱ種地盤
Khg=Cz・Khg0(ただし0.3を下回る場合は0.3)
Khg0=0.35
B地域
Cz=0.85
よって、Khg=0.85×0.35=0.30
よって、Khg=0.85×0.35=0.30
いま、計算震度4.5mに対し、
いま、計算震度4.5mに対し、
γd=1.0-0.015×4.5=0.933
Khg0=0.35
γd=1.0-0.015×4.5=0.933
よって、L=0.933×0.30×82.5/37.5=0.616
よって、L=0.933×0.30×82.5/37.5=0.616
e.FL値の算出
FL 
Ⅱ種地盤
e.FL値の算出
R 0.193

 0.31
L 0.616
FL 
同様にして各層で求めた結果を、図-6.2参1に示す。これによると、表層より14mの範囲はFL
R 0.193

 0.31
L 0.616
同様にして各層で求めた結果を、図-7.2参1に示す。これによると、表層より14mの範囲はFL
<1となり、液状化するという結果になる。
<1となり、液状化するという結果になる。
引用・参考文献
ⅰ)日本道路協会:道路橋示方書・同解説 Ⅴ.耐震設計編(2002)
ⅱ)日本港湾協会:港湾の施設の技術上の基準・同解説(1999)
ⅲ)鹿島建設土木設計本部:(土木設計の要点)耐震設計法/限界状態設計法、鹿島出版会(1998)
6-11
改定案
現行(手引き)
3) 液状化指数(PL値)によって判定する方法
液状化指数 PL 値は、地盤の液状化の激しさの程度を表す指数で、岩崎ら(岩崎ら、1980)によ
り以下のように定義されている。
PL   1  FL W x dx
20
0
ただし、FL≧1.0 のときは、FL =0とする。
ここに、 PL :液状化指数
W(x):深さ方向重み関数 W(x) = 10-0.5 x
x :地表面からの深さ (m)
PL 値による液状化危険度判定区分(岩崎ら、1980)は以下の通りである。
PL >15
:液状化の危険性が極めて高い。液状化に関する詳細な調査と液状化対策
は不可避
5<PL ≦15
:液状化の危険性が高い。重要な構造物に対して、より詳細な調査が必要。
液状化対策が一般に必要。
0<PL ≦5
:液状化の危険度は低い。特に重要な構造物の設計に際しては、
より詳細な調査が必要。
PL =0
:液状化の危険性はかなり低い。液状化に関する詳細な調査は一般に不要。
PL値は、地盤のある深さの液状化のしやすさを表すFL値とは異なり、地盤の総合的な液状化の激
しさを表す指数であることから、中央防災会議や地域防災計画等による液状化危険度マップ等に用
いられる。土地改良施設に対しては、線上構造物における液状化危険箇所の評価等に活用されるま
た、設計時の流動力の算定の際に用いられる。
4) 詳細な液状化の検討方法
より詳細な液状化の検討方法として、地震応答解析等による方法を以下に示す。
6-12
改定案
現行(手引き)
地震応答解析を用いる詳細な予測方法は、表-6.2.1に示す、全応力解析法と有効応力解析法とに
大別される。近年は地盤の透水性を考慮し、過剰間隙水圧の消散まで考慮した表中の解析法(D)
が実際の場に適用されるようになった。
表-6.2.1 詳細な予測方法の種類と適用性
予測法の特徴
予測法の種類
地盤の透水を
(A) 考慮しない方
法
全 応 力
解
析
(B)
有効応力
解
析
地盤の透水を
考慮する方法
地盤の透水を
(C) 考慮しない方
法
(D)
地盤の透水を
考慮する方法
有効応力と土の応力-ひずみ関係
備
過剰間隙水圧
消散(透水)
考
考慮しない。
理論的には有効応力解析に劣
るが、手軽で運用実績も多い。
考慮する。
間接液状化や排水工法の効果
を確かめるときに有効なた
め、そのような場合に用いら
れている。運用実績はあまり
多くない。
過剰間隙水圧の上昇、消散による有効応
力の変化に関わらず、土の応力-ひずみ関
係は一定である。したがって、地震応答解
析と液状化解析とは別々に行われる。
過剰間隙水圧の上昇、消散による有効応力 考慮しない。
の変化に応じて土の応力-ひずみ関係を
時々刻々と変化させる。したがって、地震
応答解析に液状化解析も含まれる。
考慮する。
手間は(D)と大差ないが、(D)
の方がより精度の高い結果が
得られるので、ほとんど用い
られていない。
理論的に最も優れた方法であ
る。実際の場への適用が多く
なっている。
表-6.2.1及び表-6.2.2に、最近、実際の場に適用されている4種類の液状化解析法(動的解析法及
び静的解析法)を示す。
「有限要素法に基づく動的解析法」は地震動を入力して、過剰間隙水圧の発生、土の強度・剛性
低下をFEM動的応答解析により行うものである。FL値法と異なり、地震動の特性(振幅、周波数、
継続時間など)、土の力学特性や地層構成が地盤の状態(加速度分布、応力、ひずみ等)に及ぼす
影響が考慮される。
また、「有限要素法に基づく静的解析法」は、FLと細粒含有率FCから液状化後の剛性低下率
を求める。完全液状化しない非液状化層の剛性低下も可能である。比較的簡便であるが、地震動の
特性は反映されない。
その他、「流体力学に基づく永久変形解析法」などがある。これは、液状化層を粘性流体、非液
状化層を弾性体として解析する。取扱いは上記の手法と比較して簡便である。
6-13
改定案
現行(手引き)
表-6.2.2 各種変形解析手法の種類と特徴
有限要素法に基づく動的解析法
項目
地盤の透水を
考慮する方法
地盤の透水を
考慮しない方法
有限要素法に基づく静的解析法
・液状化判定によって地盤内のFL値の分布を求め、
・解析底面において入力地震動を設定する。小さな時
液状化すると判定された土については、FL値と細
間ステップごとに変位や土の応力、過剰間隙水圧、
粒分含有率から液状化後の低下した剛性を求め
ひずみ、強度、剛性などが地盤内のすべての地点に
る。非液状化層の剛性も低下させる。
おいて求まる。
〈長所〉
〈長所〉
・簡便である。
入力地震動
・地表面震度から求まる地盤内のせん断応力Lと土
・FL値に応じて土の剛性を徐々に低下させており、
~
の液状化抵抗Rの比から簡便に液状化の程度を予
FL<1.0で強度を一律に0とする、Δu法と比較し
過剰間隙水圧
測する液状化判定法(FL値法)とは異なり、地震動
て実際の土の特性を反映している。
の発生
の特性(振幅、周波数、継続時間など)、土の力学特
〈短所・課題〉
~
性や地層構成が地盤の状態(加速度分布、応力、ひ
・地震動の特性が考慮されない。
土の強度・剛性
ずみ)等に及ぼす影響が考慮される。
・剛性低下率の設定法が明確になっていない。
の低下
〈短所・課題〉
・工学的基盤面、あるいは地盤剛性が急増する地層ま
でを解析領域とするのが望ましいが、明確な基盤層
などがない場合には注意が必要。どこまでの層を解
析領域とするかによって、地盤内の加速度分布、ひ
いては堤防沈下量にある程度の違いが生じる。
盛土の沈下
・地震中に生じる土の強度・剛性の低下及び地盤に作
用する地震慣性力による地盤の変形が計算される。
〈短所・課題〉
・微小変形の仮定をしているため、堤防の沈下量が大
きいほど沈下量を過大に評価することになる。実際
の堤防は、最大でも堤体高さのおよそ7割程度まで
しか沈下しないが、この手法によると沈下量はいく
らでも大きくなり得る。この問題を解決するために
有限変形理論に基づくプログラムも研究目的に開
発されている。
・計算での土の応力-ひずみ関係は、およそ10~20%
以上の大ひずみレベルでの妥当性は検証されてい
ないので、地盤内のひずみが大きい場合には結果の
信頼性がやや落ちる。
・地盤の剛性が低下したことによって盛土が沈下
するものと考え、地盤剛性が低下した状態での
堤防沈下量を静的なFEMによって求め、これを
地震による沈下量とする。
〈長所〉
・比較的簡便である。
〈短所・課題〉
・地震動の特性が考慮されない。
・地盤に作用する地震慣性力が盛土の沈下に及ぼ
す影響が考慮されない。
・微小変形の仮定
解析中のいかなる時刻
でも圧密等による土の体
積変化が考慮される。
地震中・地震後
の圧密等による
沈下・変形
手法の特徴
〈短所・課題〉
〈短所・課題〉
非排水条件での解析であり、圧密による沈下は
非排水条件での解析で
簡易的にしか考慮されない。液状化層厚の3~
あり、圧密による沈下
5%程度の圧密沈下が生じるものと仮定し、これ
は考慮されない。液状
を加えたものを最終的な沈下量とするなどの対処
化層厚の3~5%程度の
が必要。
圧密沈下が生じるもの
と仮定し、これを加え
たものを最終的な沈下
量とするなどの対処が
必要。
地盤の剛性低下によって生じる盛土の沈下を比
原理的に実際の現象を最も忠実に表現しうる方法で
較的簡便に計算する方法である。
ある。
詳細な土の応力-ひずみ関係は考慮せず、FL等に
計算に用いられる土のモデルは様々な土の挙動を表
現しうるが、その反面、比較的多くのパラメータを決 よって剛性の低下率を決める。FL<1.0の場合にFL
める必要がある。パラメータを決めるためには標準貫 の値に応じて徐々に剛性を低下させる点で東畑モ
入試験以外のいくつかの試験が必要であり、また試験 デル、Δu法と異なる。
解析結果に及ぼす影響要因としては、地震前の
だけでは決まらないパラメータがあるので、パラメー
タ設定にはある程度の経験が必要。これが解析者によ 土の剛性と剛性低下率が極めて重要。
って結果が異なることの原因となる。その他、減衰や
境界条件の設定によっても結果が異なるが、これらの
決定に際しては、物理現象を十分考慮して決定する必
要がある。
6-14
改定案
現行(手引き)
流体力学に基づく永久変形解析法
・液状化判定によって液状化層と非液状化層を判別する。液
状化層の土を粘性流体、非液状化層の土を弾性体とする。
〈長所〉
・簡便である。
〈短所・課題〉
・地震動の特性の1つである継続時間の影響は考慮されるが、
その他の特性は考慮されない。
・液状化の程度による土の特性の変化が考慮されない(FL<1.0
では、土の特性はFL値によらず一定)。
・液状化層の土(粘性流体)の粘性、非液状化層(弾性体)の
弾性定数の設定法が明確になっていない。
・原則的に1層の液状化層しか考慮できないため、2層以上の
液状化層が存在する場合、その取扱いに工夫が必要。
・液状化層が粘性流体になったものとし、地盤が時間と共に
流動して盛土が沈下するものと考える。この手法では、十分
長い時間の後には、盛土は平衡状態(盛土の自重と盛土に作
用する浮力がつり合う状態)に達するまで沈下するが、50gal
以上の加速度が継続する時間を便宜的に有効継続時間とし、
その間に生じる変形を地震による変形とする。
〈長所〉
・簡便である。
・微小変形の仮定から生じる問題はない。
〈短所・課題〉
・地震動の特性が考慮されない(地震の継続時間は考慮され
ている)。
・地盤に作用する地盤慣性力が盛土の沈下に及ぼす影響は考
慮されない。
〈短所・課題〉
等体積条件での解析であり、圧密による沈下は考慮されな
い。液状化層厚の3~5%程度の圧密沈下が生じるものと仮
定し、これを加えたものを最終的な沈下量とするなどの対
処が必要。
簡便である。地震動の特性の中で、50gal以上の振動が継続す
る時間が考慮される。
解析結果に及ぼす影響要因としては、液状化層の減衰定数
と非液状化層の弾性定数が極めて重要。
6-15
改定案
現行(手引き)
表-6.3.3 液状化解析法(動的解析法その他)の種類
解 析 法
解 析 内 容
・過剰間隙水圧の上昇・消散過程を考慮
・土の構成式は有効応力に基づく弾塑性理論
・地震後の地盤の圧密に伴う沈下量の計算可能
有限要素法に基
づく動的解析法
(地盤の透水を
考慮する方法)
・土の構成式にはマルチスプリングモデル適用
・有効応力経路は液状化フロントパラメータを用いて制御
・残留変位、残留応力の予測可能
有限要素法に基
づく動的解析法
(地盤の透水を
考慮しない方法)
・地震によって液状化した層の剛性低下を考慮した静的FEM解析
・剛性低下率はFL値及び細粒分含有率FCの関数
・地震時慣性力は変形解析時には考慮しない
・過剰間隙水圧の消散は考慮できない
有限要素法
に基づく静
的解析法
・最小エネルギ原理に基づいて堤体・基礎地盤の変位量を算定
・液状化層は粘性液体として取扱う
・大変形の考慮可能
・過剰間隙水圧の消散は考慮していない
流体力学に基づ
く永久変形解析
法
(圧密沈下による寄与分は変形図中
に考慮されていない)
*上記の解析モデルは、すべて同一の条件(最大入力加速度210gal、地下水位GL.-1.8m)である。
6-16
改定案
現行(手引き)
引用・参考文献
ⅰ)日本道路協会:道路橋示方書・同解説 Ⅴ.耐震設計編(2002)
ⅱ)日本港湾協会:港湾の施設の技術上の基準・同解説(1999)
ⅲ)鹿島建設土木設計本部:(土木設計の要点)耐震設計法/限界状態設計法、鹿島出版会(1998)
ⅳ)日本道路協会:道路橋示方書・同解説 Ⅴ.耐震設計編(2002)
ⅴ)岩崎敏夫、龍岡文夫、常田賢一、安田進:地震時地盤液状化の程度の予測について、土と基礎、28(4)、pp.23-29、1980.
ⅵ)建設省河川局治水課:河川堤防耐震点検マニュアル(1995)
ⅶ)建設省土木研究所 動土質研究室:河川堤防の液状化対策工法設計施工マニュアル(案)(1997)
ⅷ)建設コンサルタンツ協会:河川堤防の地震時変形量の解析手法(2002)
6-17
改定案
現行(手引き)
7.3 飽和した緩い砂礫地盤上のため池堤体の液状化判定と安全性の検討
緩い砂礫層などの地盤上に築造されたため池の堤体や河川堤防等の盛土について、液状化の影
響を考慮した安全性の検討は、以下のような方法がある。
(1) 静的解析法(簡易解析法)
繰返し三軸圧縮試験結果から、液状化に対する抵抗率FLを用いて地盤内及び盛土内の過剰間
隙水圧を計算し、有効応力法を適用した安定計算法を組合わせて用いる方法である。
完全・不完全液状化を問わず、過剰間隙水圧の上昇が計算でき、土の強度低下を考慮した安定
計算法である。
この方法は、静的解析法で取扱いが容易である反面、力のつり合いのみしか評価しない。堤体
や地盤の残留変形は計算できないことから、液状化に対する精査は難しく、概略の盛土の安定性
を検討する簡易解析法といえる。
(2) 動的解析法(精査解析法)
地盤の動的な問題に、有効応力解析法を適用し、せん断変形に関する応力・ひずみ関係の構成
式と過剰間隙水圧発生に関するモデル化及び浸透方式を同時に組み込んだ、いわゆる連成問題を
解く精度の高い液状化解析方法である。
この方法は、地震動の接続時間、過剰間隙水圧の上昇や消散状況が把握でき、堤体や基盤内の
応力や変形、残留変形等が把握できる。ただし、地盤のモデル化や境界条件の取扱いには十分な
配慮が必要である。
[解 説]
飽和した緩い砂礫層などの地盤上に築造されるため池堤体の安全性の検討には、地盤が地震動に
よって完全に液状化しない場合でも、過剰間隙水圧の上昇によって有効応力となる拘束圧が減少し、
内部摩擦角成分が小さくなることにより、地盤強度Zfが減少することを考慮する必要がある。
Zf=C'+(σn-Δu)・tanφ' ······································ (7.3.1)
ここに、 C'
:粘着成分
σn
:拘束圧
Δu
:過剰間隙水圧
また、老朽ため池などでは、基礎地盤と同じ材料を用いて築堤されており、かつ重機などによる
締固めが十分なされておらず、N値が3~5程度という場合が多く見られる。
1995年の兵庫県南部地震によるため池堤体の被災は、基礎地盤や堤体の液状化や過剰間隙水圧の
上昇が主な原因で、堤体の貯水池内へのすべりや、基盤・堤体の全面崩壊が発生した。しかし、野
尻断層の近傍にあるにもかかわらず、地盤や堤体に液状化や過剰間隙水圧の上昇が発生しなかった
ため池では堤体がほとんど被災しなかった。
このことから、改良が十分期待できない地盤上にため池堤体が築堤される場合には、地震時にお
ける基礎地盤や堤体内部の液状化や過剰間隙水圧の評価を考慮した堤体盛土の安定性を検討するこ
とが必要と考えられる。
検討方法としては、上述のように簡易解析法としての静的解析法や、精査解析法である動的解析
6-18
改定案
現行(手引き)
法がある。どちらの方法を選択するかは、構造物の重要度や設計段階(基本設計、実施設計)に応じ
て行うものとする。検討に用いる地震動は、フィルダム構造物に対し、土木学会で示された「土
木構造物の耐震基準等に関する「第三次提言」」では、従来の耐震設計法(レベル1地震動)で安定
性が確保されているとしていることや、いまだ新しい評価法が提案されていないことから、現段階
ではレベル1地震動を対象とする。
(1) 静的解析法(円弧すべり法:Δu法)
対象地盤材料の繰返し三軸圧縮試験より、水平地盤の液状化判定に用いたFL値法を適用して
FL値を算定する。次に、過剰間隙水圧とFL値の関係を求め、飽和領域の基礎地盤及び堤体盛土内
に計算格子点を組んで各点の過剰間隙水圧分布を求めておく。過剰間隙水圧分布が求まれば、これ
らを既知点として、有効応力の考え方に基づき、円弧すべり法を実施して、安全率(FSmin)を算出
する。また、非常に概略的ではあるが、過去の地震被災事例の検証により得られた安全率と設定し
た沈下率(沈下量/堤高)の関係から、地震後に残留する変形量を求めることができる。ただし、
これは河川堤防の事例であることから、ため池、調整池に用いる場合は、算出した変形量はあくまで
参考とする目安であることに留意されたい。
a.円弧すべり法による地震時安定解析の概要
円弧すべり法(Δu法)による地震時安定解析から得られる解は、円弧すべり面を仮定した場合
の円弧中心点に対する抵抗モーメント(すべりに抵抗する力)と滑動モーメント(すべらせようとす
る力)の比で表される最小安全率(FSmin)である。
安全率(FSmin)=
抵抗モーメント
滑動モーメント
図-7.3.1 円弧すべり計算の概念図
滑動モーメントは、すべり面内の土塊の自重に起因する力であり、堤体・基礎地盤を含むすべり
土塊の重さに相当する力の円弧中心点に対するモーメントである。一方、抵抗モーメントは、すべ
り面に沿って作用する土のせん断抵抗力の円弧中心点に対するモーメントであり、円弧が通過する
各部分の土が実質的に発揮するせん断強度をそのすべり面上に合計したモーメントである。つまり、
堤防下の基礎地盤に液状化が懸念される飽和砂質土が存在する場合には、地震時に発生する過剰間
隙水圧の上昇分を考慮し、有効応力に対するせん断強度を用いて滑動モーメントを算出することが
必要となる。
ちなみに、この間隙水圧が全応力と等しくなり、有効応力が0になる現象を液状化と呼んでいる。
つまり、地震時の過剰間隙水圧の発生を考慮することにより、すべりに対する地盤のせん断抵抗力
を常時から低減する安定計算法が円弧すべり法(Δu法)である。
6-19
改定案
現行(手引き)
震度法による堤体及び基礎の安定解析の解析条件を、表-7.3.1に示す。
表-7.3.1 過剰間隙水圧を考慮した安定解析条件
項
目
解析上の方法
備
考
FLの分布
計算グリッド点
繰返し三軸圧縮試験データを利用
平面ひずみ条件の変換
過剰間隙水圧の分布
μ/σ'V
計算グリッド点
安田、龍岡らの方法を基本的に採用
初期せん断応力の影響
考慮しない
k0-繰返し三軸圧縮試験を用いれば、盛土内に発生
震度
レベル1地震動
液状化の判定に対しては、レベル1地震動における
設計水平震度に対応する加速度を採用する。
液状化発生時のため池堤体に作用する慣性力を求め
る設計水平震度は、必要に応じて液状化による応答
の減衰を考慮する場合もある。*
安全率の求め方
すべり面全体で求める。
円弧すべり法
(震度法)
修正フェレニウス法
(簡便法)
している初期せん断応力の考慮も可能。
地震力は、スライス底面中心に作用
*ため池などの盛土構造物の液状化の判定については、レベル1地震動を対象とする。また、基盤の液状
化発生時には基盤におけるエネルギ減衰も考えられるが、減衰の程度を事前に予測することは難しいこ
とから、設計水平震度(Khg=Cz・Khg0)をそのまま適用するものとする。
円弧すべり法で算出される最小安全率(FSmin)は、仮定した円弧すべり面において盛土をすべ
らせようとする滑動力とそのすべりを抑制しようとする抵抗力の比である。つまり、安全率の意
味するところは力学的平衡問題となり、盛土の破壊が生じるか否かを判断する指標となる(たと
えば、安全率が1.0を下回る場合には盛土が安定を失い、すべりが生じると判断される)。したが
って、円弧すべり計算結果から盛土の変形を直接的に評価することはできない。
変形量を推定する必要がある場合は、「河川堤防耐震点検マニュアル」に準じて概略推定する
ことは可能である。その中で、1964年新潟地震から1995年兵庫県南部地震の震度6の地震において
変状を生じた178地点の堤防盛土の事例から、円弧すべり計算の最小安全率と実測沈下量の関係を
調べ、図-7.3.2に示す最小安全率と沈下率(沈下量/堤高)の関係を示している。図-7.3.2の実線
は、過去の被害事例による沈下率の最大値を包含する線であり、以下に示す関係で与えられる。
0.8<FSmin≦1.0 沈下量=(堤高)×0.25
0.6<FSmin≦0.8 沈下量=(堤高)×0.50
FSmin≦0.6 沈下量=(堤高)×0.75
この関係によれば、Δuを考慮した円弧すべり計算で得られる最小安全率(FSmin)を用いて、
予想される最大の沈下量を経験的に算出することができる。
6-20
改定案
現行(手引き)
図-7.3.2 最小安全率(FSmin)と沈下率(沈下量/堤高)の関係(Δu法)
この手法は、地盤の強度低下を地震時の繰返し荷重によって発生する過剰間隙水圧(Δu)を
求め、有効応力の考え方に基づき地盤の強度低下を考慮した円弧すべり計算を実施して、算出さ
れた最小安全率(FSmin)と過去の被害事例の検証により設定した沈下率(沈下量/堤高)の関係
から地震後に残留する変形量を算出するものである。
ここで、円弧すべり計算における地盤のモデル化では地盤定数として地盤の強度定数となる内
部摩擦角φと粘着力Cを用いている。つまり、本手法では地盤の破壊に対する強度のみを考慮
していて、地盤に発生した応力に対する変形量や発生した過剰間隙水圧の消散に伴う沈下は考慮
されていない。
b.円弧すべり法による計算の手順
円弧すべり法(Δu法)を用いた液状化時の安定計算及び変形量の計算手順は、図-7.3.3に示す
とおりである。まず最初に、地盤のモデル化を行い、モデル化は堤体横断方向の二次元断面とす
る。液状化に対する抵抗率FLは、繰返し三軸圧縮試験から直接得られる液状化強度比RL若しく
はN値などの土質定数から推定する液状化強度比R L を用いて算定する。次に液状化判定で得
られた液状化に対する抵抗率FLから次式により過剰間隙水圧比Lu(Δu/σ' V)を計算する 1)。
Lu=FL-7
続いて、過剰間隙水圧を考慮した円弧すべり計算(Δu法)を行う。このとき、堤体にはテン
ションクラック(引張亀裂)が発生することを考慮する。これは、被災堤体の天端縦断方向に実
際にテンションクラックが生じる事例が多いこと、また、不明確な盛土の強度定数の影響を小さ
くすることに配慮したものである。最後に、得られた最小安全率(FSmin)から堤体の沈下率を
求めて、堤防の沈下量を算出する。
6-21
改定案
現行(手引き)
c.円弧すべり法の留意点
円弧すべり法については、無対策堤体の耐震点検に用いられる天端沈下量とFL値の関係は、
1)液状化に対する抵抗率FLと過剰間隙水圧比Lu(Δu/σ'V)の関係は、安田の方法によって、繰返し三軸圧縮試験結果か
ら直接求める方法もある。
地盤のモデル化
基礎地盤の液状化の判定
液状化に対する抵抗率FLの算出
河川堤防耐震点検マニュアル(案)による
過剰間隙水圧の算定
既往実験式
(FL~Δu/σ'Vの関係)*1
過剰間隙水圧比Δuを考慮した安定計算*2
最小安全率(FSmin)
最小安全率(FSmin)と沈下率の関係
堤防沈下量(沈下率×堤高)の算出
6-22
改定案
現行(手引き)
*1
*2
FL-7(FL>1.0)
1.0(FL≦1.0)
ここに、Lu :過剰間隙水圧比
σ'V :有効上載圧
Lu=(Δu/σ'V)=
FS=
Σ{c・l+(W-U0・b-Δu・b)cosα・tanφ}
ΣW・cosα
ここに、
c、φ :土の粘着力、内部摩擦角
ただし、c、φは一般的には有効応力に関する
せん断強度(cd、φdまたはc'、φ')であるが、粘
性土に関してはCu、φu=0とする。
W :分割細片の全重量
l :細片の底面の長さ
b :細片の幅
U0 :常時地下水による間隙水圧
Δu :地震動によって発生する過剰間隙水圧
R :すべり円弧の半径
α :細片底面(すべり面)中央を通る円弧法線と鉛
直線のなす角
図-7.3.3 円弧すべり法(Δu法)の手順
過去の被害事例の逆解析結果から得られたものであり、これらの検証事例には液状化対策工法が実
施されたものは含まれてはいない。このため、算出された安全率から液状化対策後の地震時変形量
を算出することはできないことに留意する。
d.円弧すべり法に必要な土質試験項目
液状化判定の対象となる砂質土については物理試験が必要となる他は、土の湿潤密度・強度定数
が設定できればよい。したがって、液状化判定と円弧すべり計算に必要となる事前の土質試験を列
挙すると、以下に示した試験となる。
・標準貫入試験(N値)
・粒度試験(細粒分含有率FC、平均粒径D50、10%粒径Dl0)
・液性限界・塑性限界試験(塑性指数Ip)
・湿潤密度試験(湿潤密度ρt)
・三軸圧縮試験(内部摩擦角φ、粘着力c)
なお、三軸圧縮試験の試験条件は、粘性土に対して非排水条件、砂質土に対しては排水条件を採
用する。
6-23
改定案
現行(手引き)
[参 考] 円弧すべり法による安定解析例
図-7.3参1に、安定解析例を示す。
最小安全率FSminは、格子のマス目に円弧の中心点をおき、繰返し中心点を移動させそれぞれのFs
を求めると、最小値Fs=1.096を得ることができる。
図-7.3参1 安定解析例(過剰間隙水圧計算時:Kh=0.20)
6-24
改定案
現行(手引き)
(2) 動的解析法(精査解析法)
動的解析を用いる詳細な予測方法は、表-7.3.2に示す、全応力解析法と有効応力解析法とに大別
され、近年は地盤の透水性を考慮し、過剰間隙水圧の消散まで考慮した表中の解析法(D)が実際
の場に適用されるようになった。
表-7.3.2 詳細な予測方法の種類と適用性
予測法の特徴
予測法の種類
地盤の透水を
(A) 考慮しない方
法
全 応 力
解
析
(B)
有効応力
解
析
地盤の透水を
考慮する方法
地盤の透水を
(C) 考慮しない方
法
(D)
地盤の透水を
考慮する方法
有効応力と土の応力-ひずみ関係
備
過剰間隙水圧
消散(透水)
考慮しない。
過剰間隙水圧の上昇、消散による有効応
力の変化に関わらず、土の応力-ひずみ関
係は一定である。したがって、地震応答解
析と液状化解析とは別々に行われる。
考慮する。
(非連成問題)
過剰間隙水圧の上昇、消散による有効応力 考慮しない。
の変化に応じて土の応力-ひずみ関係を
時々刻々と変化させる。したがって、地震
応答解析に液状化解析も含まれる。
(連成問題)
考慮する。
考
理論的には有効応力解析に劣
るが、手軽で運用実績も多い。
間接液状化や排水工法の効果
を確かめるときに有効なた
め、そのような場合に用いら
れている。運用実績はあまり
多くない。
手間は(D)と大差ないが、(D)
の方がより精度の高い結果が
得られるので、ほとんど用い
られていない。
理論的に最も優れた方法であ
る。実際の場への適用が多く
なっている。
表-7.3.3及び表-7.3.4に、最近、実際の場に適用されている4種類の液状化解析法(動的解析法及
び静的解析法)を示す。
LIQCA1)及びFLIP2)は地震動を入力して、過剰間隙水圧の発生、土の強度・剛性低下をFEM動的
応答解析により行うものである。FL値法と異なり、地震動の特性(振幅、周波数、継続時間など)、
土の力学特性や地層構成が地盤の状態(加速度分布、応力、ひずみ等)に及ぼす影響が考慮される。
また、FEM静的解析法であるALID3)は、FLと細粒含有率FCから液状化後の剛性低下率を求め
る。完全液状化しない非液状化層の剛性低下も可能である。比較的簡便であるが、地震動の特性は
反映されない。
さらに、流体力学に基づく永久変形解析法として東畑モデルがある。これは、液状化層を粘性流
体、非液状化層を弾性体として解析する。取扱いは簡便である。
表-7.3.3に示すように、前述の円弧すべり法( Δu法)も含めたこれらの解析法にはそれぞれ長
所、短所があり、目的に応じて解析法を選択する必要がある。
引用・参考文献
ⅰ)建設省河川局治水課:河川堤防耐震点検マニュアル(1995)
ⅱ)建設省土木研究所 動土質研究室:河川堤防の液状化対策工法設計施工マニュアル(案)(1997)
ⅲ)建設コンサルタンツ協会:河川堤防の地震時変形量の解析手法(2002)
注1)LIQCA(地震時液状化解析手法)(Coupled Analysis of Liquefaction)
2)FLIP(構造物被害予測プログラム)(Fine element analysis of Liquefaction Program)
3)ALID(液状化に伴う地盤や構造変形解析手法)(Analysis for Liquefaction-induced Deformation)
6-25
改定案
現行(手引き)
表-7.3.3 各種変形
項目
有限要素法に基づく動的解析法
LIQCA
FLIP
有限要素法に基づく静的解析法
ALID
・液状化判定によって地盤内のFL値の分布を求め、
・解析底面において入力地震動を設定する。小さな時
液状化すると判定された土については、FL値と細
間ステップごとに変位や土の応力、過剰間隙水圧、
粒分含有率から液状化後の低下した剛性を求め
ひずみ、強度、剛性などが地盤内のすべての地点に
る。非液状化層の剛性も低下させる。
おいて求まる。
〈長所〉
〈長所〉
・簡便である。
入力地震動
・地表面震度から求まる地盤内のせん断応力Lと土
・FL値に応じて土の剛性を徐々に低下させており、
~
の液状化抵抗Rの比から簡便に液状化の程度を予
FL<1.0で強度を一律に0とする、Δu法と比較し
過剰間隙水圧
測する液状化判定法(FL値法)とは異なり、地震動
て実際の土の特性を反映している。
の発生
の特性(振幅、周波数、継続時間など)、土の力学特
〈短所・課題〉
~
性や地層構成が地盤の状態(加速度分布、応力、ひ
・地震動の特性が考慮されない。
土の強度・剛性
ずみ)等に及ぼす影響が考慮される。
・剛性低下率の設定法が明確になっていない。
の低下
〈短所・課題〉
・工学的基盤面、あるいは地盤剛性が急増する地層ま
でを解析領域とするのが望ましいが、明確な基盤層
などがない場合には注意が必要。どこまでの層を解
析領域とするかによって、地盤内の加速度分布、ひ
いては堤防沈下量にある程度の違いが生じる。
盛土の沈下
・地震中に生じる土の強度・剛性の低下及び地盤に作
用する地震慣性力による地盤の変形が計算される。
〈短所・課題〉
・微小変形の仮定をしているため、堤防の沈下量が大
きいほど沈下量を過大に評価することになる。実際
の堤防は、最大でも堤体高さのおよそ7割程度まで
しか沈下しないが、この手法によると沈下量はいく
らでも大きくなり得る。この問題を解決するために
LIQCAでは有限変形理論に基づくプログラムも研
究目的に開発されている。
・計算での土の応力-ひずみ関係は、およそ10~20%
以上の大ひずみレベルでの妥当性は検証されてい
ないので、地盤内のひずみが大きい場合には結果の
信頼性がやや落ちる。
解析中のいかなる時刻
でも圧密等による土の体
積変化が考慮される。
地震中・地震後
の圧密等による
沈下・変形
手法の特徴
6-26
・地盤の剛性が低下したことによって盛土が沈下
するものと考え、地盤剛性が低下した状態での
堤防沈下量を静的なFEMによって求め、これを
地震による沈下量とする。
〈長所〉
・比較的簡便である。
〈短所・課題〉
・地震動の特性が考慮されない。
・地盤に作用する地震慣性力が盛土の沈下に及ぼ
す影響が考慮されない。
・微小変形の仮定
〈短所・課題〉
〈短所・課題〉
非排水条件での解析であり、圧密による沈下は
非排水条件での解析で
簡易的にしか考慮されない。液状化層厚の3~
あり、圧密による沈下
5%程度の圧密沈下が生じるものと仮定し、これ
は考慮されない。液状
を加えたものを最終的な沈下量とするなどの対処
化層厚の3~5%程度の
が必要。
圧密沈下が生じるもの
と仮定し、これを加え
たものを最終的な沈下
量とするなどの対処が
必要。
地盤の剛性低下によって生じる盛土の沈下を比
原理的に実際の現象を最も忠実に表現しうる方法で
較的簡便に計算する方法である。
ある。
詳細な土の応力-ひずみ関係は考慮せず、FL等に
計算に用いられる土のモデルは様々な土の挙動を表
現しうるが、その反面、比較的多くのパラメータを決 よって剛性の低下率を決める。FL<1.0の場合にFL
める必要がある。パラメータを決めるためには標準貫 の値に応じて徐々に剛性を低下させる点で東畑モ
入試験以外のいくつかの試験が必要であり、また試験 デル、Δu法と異なる。
解析結果に及ぼす影響要因としては、地震前の
だけでは決まらないパラメータがあるので、パラメー
タ設定にはある程度の経験が必要。これが解析者によ 土の剛性と剛性低下率が極めて重要。
って結果が異なることの原因となる。その他、減衰や
境界条件の設定によっても結果が異なるが、これらの
決定に際しては、物理現象を十分考慮して決定する必
要がある。
改定案
現行(手引き)
解析手法の特徴
流体力学に基づく永久変形解析法
円弧すべり法
東畑モデル
Δu法
・液状化判定によって液状化層と非液状化層を判別する。液 ・液状化判定によって地盤内のFL値の分布を求め、FL値に応
状化層の土を粘性流体、非液状化層の土を弾性体とする。
じて土の強度を低減させる(FL<1.0の液状化層は、強度
〈長所〉
=0)。
・簡便である。
〈長所〉
〈短所・課題〉
・簡便である。
・地震動の特性の1つである継続時間の影響は考慮されるが、 〈短所・課題〉
その他の特性は考慮されない。
・地震動の特性が考慮されない。
・液状化の程度による土の特性の変化が考慮されない(FL<1.0 ・液状化の程度による土の特性の変化が考慮されない
では、土の特性はFL値によらず一定)。
(FL<1.0では、土の特性はFLによらず一定)。
・液状化層の土(粘性流体)の粘性、非液状化層(弾性体)の
弾性定数の設定法が明確になっていない。
・原則的に1層の液状化層しか考慮できないため、2層以上の
液状化層が存在する場合、その取扱いに工夫が必要。
・液状化層が粘性流体になったものとし、地盤が時間と共に
流動して盛土が沈下するものと考える。この手法では、十分
長い時間の後には、盛土は平衡状態(盛土の自重と盛土に作
用する浮力がつり合う状態)に達するまで沈下するが、50gal
以上の加速度が継続する時間を便宜的に有効継続時間とし、
その間に生じる変形を地震による変形とする。
〈長所〉
・簡便である。
・微小変形の仮定から生じる問題はない。
〈短所・課題〉
・地震動の特性が考慮されない(地震の継続時間は考慮され
ている)。
・地盤に作用する地盤慣性力が盛土の沈下に及ぼす影響は考
慮されない。
・円弧すべり計算による安全率を求める。安全率と沈下量の
経験的な関係から沈下量を求める。
〈長所〉
・簡便である。
〈短所・課題〉
・液状化した地盤では、円弧すべり破壊が生じない。実際の
地盤変形領域と計算での円弧が対応しない。
・地震動の特性が考慮されない。
・地盤に作用する地震慣性力が盛土の沈下に及ぼす影響は考
慮されない。
・沈下量を求める際に用いる、安全率-沈下量の関係の相関
が低い。
〈短所・課題〉
過去の地震における被害事例解析結果をもとに、実際に生
等体積条件での解析であり、圧密による沈下は考慮されな じた堤防沈下量と計算から得られたFSの関係をもとに沈下
い。液状化層厚の3~5%程度の圧密沈下が生じるものと仮 量を決めているために、圧密による沈下も含まれている。
定し、これを加えたものを最終的な沈下量とするなどの対
処が必要。
簡便である。地震動の特性の中で、50gal以上の振動が継続す
極めて簡便である。沈下量の予測精度は低いが、数多くの
る時間が考慮される。
被害事例の上限をとるように沈下量と安全率の関係が設定さ
解析結果に及ぼす影響要因としては、液状化層の減衰定数 れているため、安全側の値を与える。
と非液状化層の弾性定数が極めて重要。
6-27
改定案
現行(手引き)
表-7.3.4 液状化解析法(動的解析法その他)の種類
解 析 法
解 析 内 容
・過剰間隙水圧の上昇・消散過程を考慮
・土の構成式は有効応力に基づく弾塑性理論
・地震後の地盤の圧密に伴う沈下量の計算可能
LIQCA
(動的FEM)
・土の構成式にはマルチスプリングモデル適用
・有効応力経路は液状化フロントパラメータを用いて制御
・残留変位、残留応力の予測可能
FLIP
(動的FEM)
・地震によって液状化した層の剛性低下を考慮した静的FEM解析
・剛性低下率はFL値及び細粒分含有率FCの関数
・地震時慣性力は変形解析時には考慮しない
・過剰間隙水圧の消散は考慮できない
ALID
(静的FEM)
・最小エネルギ原理に基づいて堤体・基礎地盤の変位量を算定
・液状化層は粘性液体として取扱う
・大変形の考慮可能
・過剰間隙水圧の消散は考慮していない
東畑モデル
(流体力学に基づ
く方法)
(圧密沈下による寄与分は変形図中
に考慮されていない)
*上記の解析モデルは、すべて同一の条件(最大入力加速度210gal、地下水位GL.-1.8m)である。
6-28
改定案
現行(手引き)
6.3 流動化の検討
7.4 流動化判定
流動化に対する設計は臨海部の水際線からの範囲及び液状化に対する抵抗率 FL値により流動
流動化に対する設計は臨海部の水際線からの範囲及び液状化に対する抵抗率 FL値による流動
化を判定し、対策を検討する。
[解
化を判定し、対策を考える。
[解説]
説]
流動化に対する設計は、図-7.4.1により行う。流動化は臨海部の水際線から100m以内の範囲になる
流動化に対する設計は、図-6.3.2により行う。流動化は臨海部の水際線から100m以内の範囲に
ある地盤で生じることから、この範囲にあるか否かを判定する。次に、護岸の背後地盤と前面の水底
との高低差が5m以上で、水際線から水平方向に連続して存在する砂質土層の FL値を計算する。FL
値が1.0以下の場合は流動化を生じる可能性があるとして、以下の検討を行う。
(1) 構造系の見直し
地盤で生じることから、この範囲にあるか否かを判定する。次に、護岸の背後地盤と前面の水底との
高低差が5m以上で、水際線から水平方向に連続して存在する砂質土層のFL値を計算する。 FL値が1.0
以下の場合は流動化を生じる可能性があるとして、以下の対策を考える。
(1)構造系の見直し
a.連続桁構造やラーメン構造など不静定構造を採用する。
a.連続桁構造やラーメン構造など不静定構造を採用する。
b.剛性の高い基礎構造物を採用する。
b.剛性の高い基礎構造物を採用する。
c.地震の慣性力に抵抗できる支承を採用する。
c.地震の慣性力に抵抗できる支承を採用する。
(2) 流動力の算定
(2)流動力の算定
流動力は、道路橋示方書・同解説(H14)に準じ、以下により算出するものとする。
流動力を算定し、流動力により生じる基礎の変位量が許容変位以下であることを照査する。この場
図-6.3.1に示す状態で流動化が生じた場合には、流動化の影響を考慮する範囲内の非液状化層及
合の許容変位量は、基礎の降伏変位の2倍とする。
び液状化層中に位置する構造部材に、それぞれ、式(6.3.1)及び式(6.3.2)による単位面積当り流動
力を作用させるものとする。この場合には、流動化の影響を考慮する必要のある範囲内の土層の水平抵
抗は考慮しないものとする。
qNL=cscNLKpγNLχ
(0≦χ≦HNL)………………………………(6.3.1)
qL=cscL{γNLHNL+γL(χ-HNL)}
(HNL<χ≦HNL+HL)………………………(6.3.2)
ここに、
qNL :非液状化層中にある構造部材に作用する深さχ(m)の位置の単位面積当りの流動力(kN/m2)
qL :液状化層中にある構造部材に作用する深さχ(m)の位置の単位面積当りの流動力(kN/m2)
cs :水際線からの距離による補正係数であり、表6.3.1の値とする。
cNL :非液状化層中の流動力の補正係数であり、式(6.3.3)による液状化指数PL(m2)に応じて、表
6.3.2の値とする。
20
𝑃𝐿 = ∫0 (1 − 𝐹𝐿 ) (10 − 0.5χ)𝑑χ……………………………………………(6.3.3)
cL :液状化層中の流動力の補正係数(0.3とする)
Kp :受動土圧係数(常時)
γNL :非液状化層の平均単位体積重量(kN/m3)
γL :液状化層の平均単位体積重量(kN/m3)
χ :地表面からの深さ(m)
HNL :非液状化層厚(m)
HL :液状化層厚(m)
FL :式(6.3.1)により算出する液状化に対する抵抗率であり、FL≦1の場合にはFL=1とする。
6-29
改定案
現行(手引き)
図-6.3.1 流動力の算定モデル
表-6.3.1 水際線からの距離による補正係数cs
水際線からの距離 s(m)
補正係数 cs
s≦50
1.0
50<s≦100
0.5
100<s
0
表-6.3.2 非液状化層中の流動力の補正係数cNL
液状化指数PL(m2)
補正係数 cNL
PL≦5
0
5<PL≦20
(0.2 PL-1)/3
20<PL
1
臨海部の水際線から
100m以内の橋脚基礎
FL≦1.0か
NO
非流動化
YES
流動化に対する対応
構造系の見直し
・不静定次数の多い構造
系の選定(連続桁構
造、ラーメン構造等)
・剛性の高い基礎構造の
採用
・支承のばね定数の見直
し
落橋防止システム
基礎の設計
流動力の算定
流動化に対する照査
基礎の変位≦許容変位
・流動化の影響を見込
んで桁かかり長を
算出
・落橋防止システム
を入念に設計
図-6.3.2 流動力の算定モデル例
6-30
改定案
現行(手引き)
(3) 基礎の変位量の照査
流動力を算定し、流動化により生じる基礎の変位量が許容変位以下であることを照査する。この場
合の許容変位量は、基礎の降伏変位の2倍とする。
(4) 落橋防止システムの設計
(3)落橋防止システムの設計
a.流動化の影響を見込んで、橋の上下部構造間に予想を超える大きな相対変位が生じないように橋
a.流動化の影響を見込んで、橋の上下部構造に予想を超える大きな相対変位が生じないように橋桁の
桁のかかり長を算出し、構造に考慮する。
かかり長を算出し、構造に考慮する。
b.橋桁が落橋しないように、橋桁のかかり長、落橋防止構造、変位制限構造及び段差防止構造を考
b.橋桁が落橋しないように、橋桁のかかり長、落橋防止構造、変位制限構造及び段差防止構造を考え
える。
る。
臨海部の水際線から
100m以内の橋脚基礎
FL≦1.0か
NO
非流動化
YES
流動化に対する対応
構造系の見直し
・不静定次数の多い構造
系の選定(連続桁構
造、ラーメン構造等)
・剛性の高い基礎構造の
採用
・支承のばね定数の見直
し
基礎の設計
流動力の算定
流動化に対する照査
基礎の変位≦許容変位
落橋防止システム
・流動化の影響を見込
んで桁かかり長を算
出
・落橋防止システムを
入念に設計
図-7.4.1 流動化に対する設計フロー
引用・参考文献
ⅰ)日本道路協会:道路橋示方書・同解説 Ⅴ.耐震設計編(2002)
ⅱ)岡原美知夫、和田克哉:杭基礎の設計施工ノウハウ、近代図書(1998)
ⅲ)日本道路協会:「道路橋」に関する地区講習会講義要旨(1996)
引用・参考文献
ⅰ)日本道路協会:道路橋示方書・同解説 Ⅴ.耐震設計編(2002)
ⅱ)岡原美知夫、和田克哉:杭基礎の設計施工ノウハウ、近代図書(1998)
ⅲ)日本道路協会:「道路橋」に関する地区講習会講義要旨(1996)
[参 考] 流動化
地震により液状化(間隙水圧が急激に上昇し、飽和した砂質地盤がせん断強度を失い、土構造に
破壊)が生じると、見かけ比重の重い構造物は沈下し、見かけ比重の軽い構造物は浮き上がる。また、
擁壁のように土圧に抵抗する構造物(抗土圧構造物)は土圧が増加するため前面に押され、基礎のよ
うに水平抵抗を期待する構造物はその抵抗を失い大きく変位する。このため、水際線付近や傾斜し
た地盤などで偏土圧を受ける構造物は、地盤が液状化することにより土圧が増加し、基礎構造物は
抵抗を失い、側方にあたかも地盤が流れ出すかのように大きく変形する。このように、砂地盤の液
状化に伴い、地盤が水平方向に移動することを流動化、あるいは側方流動という。
兵庫県南部地震では、埋立地の水際線付近に流動化が発生し、橋脚基礎に残留変位が生じた。こ
の橋脚では、地表面付近の液状化しない層(非液状化層)が、その下部に位置する液状化する土層(液
状化層)とともに移動し、フーチングに大きな力を及ぼしたものと考えられる。
このように、砂地盤の液状化により生じる流動化は、基礎構造物を大きく変形させ、橋桁の落下
6-31
改定案
現行(手引き)
など橋梁に大きな被害を与えることになる。
一方、側方流動による変位がある程度の精度をもって推定できる場合には、図-6.3.3に示すよう
に、基礎構造一地盤ばね系モデルに地盤変位を入力することにより耐震計算を行うことができる。
図-6.3.3 側方流動に対する耐震計算モデル
兵庫県南部地震では、側方流動によって建物、橋脚及び各種プラント施設の基礎構造に甚大な被
害が発生した。同様な基礎構造の被害は新潟地震においても報告されており、側方流動の可能性の
ある地盤において構造物を建設する場合、側方流動地盤からの外力、すなわち土圧及び流動圧を考
慮して耐震設計を行うことが必要である。側方流動が地中構造物に及ぼす外力の特性については現
時点では不明な点もあり、今後の調査・研究に待つところが多いが、兵庫県南部地震による橋脚の
残留変形の逆解析及び既往の模型実験から、①液状化層より地中構造物に作用する流動圧は全上
載圧の30%程度以下であること、②液状化層上部に存在する非液状化層からの外力は最大で受働
土圧(常時)に達する場合があること、が示されている。
(2) 液状化により流動を起こす地盤
流動化は、(1)で述べたように液状化を起こす砂地盤の埋立地などの水際線付近や傾斜した地盤で
生じるが(図-6.3.4参照)、一般に、以下の2条件のいずれにも該当する地盤では、流動化が生じる
可能性があるとみなしてよい。
図-6.3.4
液状化により地盤流動を起こす地盤
6-32
改定案
現行(手引き)
a.臨海部において、背後地盤と前面の水底との高低差が5m以上ある護岸により形成された水際線
から100m以内の範囲にある地盤。
b.液状化する層厚5m以上の砂質土層があり、かつ、この土層が水際線から水平方向に連続して存
在する地盤。
ここで、護岸の背後地盤と前面の水底との高低差を5m以上としているのは、兵庫県南部地震の際
に、流動化により橋脚基礎に残留変位が生じた臨海部における護岸の背後地盤と前面の水底との高
低差は10m程度以上であったが、流動化が生じた箇所としては、それ以下の高低差の箇所もあった
ためである。また、橋に影響を与える流動化が生じる可能性がある範囲としては、兵庫県南部地震
の際に流動化により橋脚基礎に残留変位が生じた範囲を参考に、水際線から100m以内としている
(図-6.3.5参照)。
図-6.3.5 水底との高低差及び水際線からの距離の取り方
兵庫県南部地震において側方流動によって大きな被害を受けた基礎構造物のほとんどは、護岸よ
り100m以内に位置するものであった。このため、側方流動による外力を考慮する領域は護岸線より
100m以内とし、かつ、図-6.3.6に示すように、護岸線からの距離により土圧を低減することとする。
図-6.3.6 護岸からの距離による土圧の低減
P''p=β・Pp ················································································ (6.1.1)
ここに、 P''p
:液状化層の設計土圧(kN/m)
β
:低減率(1-0.01x)
x
:護岸からの距離(m)
Pp
:非液状化層の常時受働土圧(kN/m)
6-33
改定案
現行(手引き)
液状化すると判定される層厚5m以上の砂質土層があることとしているのは、兵庫県南部地震の際
に流動化により橋脚基礎に残留変位が生じた箇所及び大きな地盤変位が生じた箇所における地盤条
件を参考にしているためである。また、流動化は広範な地盤の液状化に伴って生じる現象であるた
め、水際線から基礎位置ごとの液状化の判定結果をもとに、水際線から100m以内であっても液状化
すると判定される土層が水際線から水平方向に連続的に存在しなくなる場合には、その背後の地盤
については基礎等に影響を与える流動化は生じないとみなしてよい。
基礎等に影響を与える流動化が生じる可能性がある場合には、単に構造物基礎を強化するだけで
なく、横剛性の大きい基礎形式の採用も含め、構造物全体として有害な影響を受けないようにする
ことが重要である。なお、橋台基礎については、一般に流動化の影響を考慮しない。これは、橋台
は背面に土圧を受けるため偏土圧に抵抗するように設計される構造物であり、また、仮に流動化の
影響を受けても前面に押し出されるため、それが桁の落下に直接つながりにくいためである。また、
橋梁に影響を与える液化状が生じると判断される地盤にある橋台基礎では、地震時保有水平耐力法
によってレベル2地震動に対する照査を行う。
臨海部以外でも、昭和39年の新潟地震の際には新潟市の信濃川沿岸において液状化やそれに伴う
流動化により橋梁が被災したと考えられる事例があり、その経験を踏まえ、耐震設計に液状化の影
響が考慮されるようになった。その後、流動化により橋梁が大きな影響を受けたのは、兵庫県南部
地震の際の臨海部における事例が初めてである。河川部における流動化のメカニズムや構造物に与
える影響は、臨海部で生じた現象とは異なることが考えられるが、河川部についても偏土圧の影響
が大きいと考えられる直立式の低水護岸の背後の高水敷及び直立式の特殊堤の堤内地盤において、
前記の条件a.及びb.のいずれにも該当する場合には、臨海部に準じて、流動化の影響を考慮する
ことが望ましい。
引用・参考文献
ⅰ)日本道路協会:道路橋示方書・同解説 Ⅴ.耐震設計編(2002)
ⅱ)日本水道協会:水道施設耐震工法指針・解説(1997年版)(1997)
ⅲ)岡原美知夫、和田克哉:杭基礎の設計施工ノウハウ、近代図書(1998)
6-34
[原 理]
密
度
の
増
[方 法]
大
[具体的工法又は事例]
改定案
密 度 増 大 工 法
現行(手引き)
サンドコンパクションパイル工法
振動棒工法
6.4 液状化地盤の対策
7.5 液状化地盤の流動化対策
バイブロフローテーション工法
重錘落下締固め工法
土
液
バイブロタンバー工法
の
転圧工法
飽和した緩い砂礫地盤が地震時に液状化する場合、このような基盤上の構造物は、基盤の流動
状
飽和した緩い砂礫地盤が地震時に液状化する場合、このような基盤上の構造物は、基盤の流動
爆破工法
性
化
化やせん断破壊による転倒などに対し、安全性を検討するとともに、対策工を施す必要がある。
群杭工法
[解説]
そ
質
の
改
も
良
固
結
固
結
工
法
化やせん断破壊による転倒などに対し、安全性を検討するとともに、対策工を施す必要がある。
深層混合処理工法
注入固化工法
生石灰パイル工法
[解説]
事前混合処理工法
の
密
度
の
改
良
置
換
工
法
置換工法
を
ここで、飽和した緩い砂礫地盤上の橋脚基礎、ポンプ場の基礎及びパイプラインについての液状
防
化対策について概説する。
飽 和 度 の 低 下
ディープウエル工法
地下水位低下工法
対策について概説する。
排水溝工法
止
ここで、飽和した緩い砂礫地盤上の橋脚基礎、ポンプ場の基礎及びパイプラインについての液状化
一般的な液状化対策の方法を図-6.4.1に示す。液状化対策は、①液状化の発生を許容した上で被
有 効 応 力 の 増 大
ゴムバック等による側圧の増大
す
に応
関力
・
す
変
る形
条及
件び
間
の
隙
改水
良圧
る
柱状ドレーン工法
害を軽減する方法、②液状化の発生自体を防ぐ方法、の二つに分類される。①は、構造物の強化に
(グランベルドレーン工法)
対
(人工材料のドレーン工法)
よって対処する方法で、杭などの基礎や構造物自体の強化により破損の防止に当たるか、付帯構造
間 隙 水圧 の制 御 ・消 散
策
間隙水圧消散工法
周辺巻き立てドレーン工法
物の設置により最低限の供用性を確保する方法である。②は、地盤改良によって地盤の液状化強度
締固工・矢板工等の併用工法
間 隙 水 圧 の 遮 断
を増加させる方法である。
せ ん断
の制 御
[原変 形理]
排水機能付鋼材工法
せ ん断変 形制 御工 法
連続地中壁による工法
[具体的工法又は事例]
堅固な地盤による支持
杭基礎等
対 施液
策 設状
の化
(
構 被の
害発
造
を生
的
軽は
対 減許
杭基礎の強化
基
礎
の
強
布基礎の強化
化
護岸の強化
地中構造物の浮上がり防止用杭
浮 上 が り 量 低 減
地中構造物の重量増大
地 盤変位 への追 従
可とう継手による地盤変位吸収
策 すす
) るが
直接基礎におけるこま形基礎の設置
直接基礎のジオグリッドによる補強
液 状 化後 の変 位 の制 御
盛土に対するシートパイル締切工法
[原 理]
[方 法]
[具体的工法又は事例]
図4.5.2 液状化対策の原理と方法
密
度
の
増
大
密 度 増 大 工 法
サンドコンパクションパイル工法
振動棒工法
バイブロフローテーション工法
重錘落下締固め工法
土
液
状
化
バイブロタンバー工法
の
転圧工法
性
爆破工法
群杭工法
そ
質
の
改
も
良
固
結
固
結
工
法
注入固化工法
生石灰パイル工法
事前混合処理工法
の
密
を
防
度
の
改
良
飽 和 度 の 低 下
置
換
工
法
地下水位低下工法
止
す
る
対
策
に応
関力
・
す
変
る形
条及
件び
間
の
隙
改水
良圧
有 効 応 力 の 増 大
策 設状
の化
せ ん断変 形の制 御
軽は
周辺巻き立てドレーン工法
締固工・矢板工等の併用工法
間 隙 水 圧 の 遮 断
排水機能付鋼材工法
せ ん断変 形制 御工 法
連続地中壁による工法
図-6.4.1 液状化対策の原理と方法
杭基礎等
杭基礎の強化
基
礎
の
強
化
布基礎の強化
護岸の強化
害発
を生
排水溝工法
ゴムバック等による側圧の増大
間隙水圧消散工法
構 被の
的
ディープウエル工法
間 隙 水圧 の制 御 ・消 散
堅固な地盤による支持
(
置換工法
柱状ドレーン工法
(グランベルドレーン工法)
(人工材料のドレーン工法)
対 施液
造
深層混合処理工法
浮 上 が り 量 低 減
地中構造物の浮上がり防止用杭
地中構造物の重量増大
6-35
改定案
現行(手引き)
(1) 飽和した緩い砂礫地盤上の橋脚基礎の流動化対策
橋脚基礎の流動化の検討については、「道路橋示方書
(1) 飽和した緩い砂礫地盤上の橋脚基礎の流動化対策
V耐震設計編」第8章
地震時に不安定
となる地盤の影響 に準拠して、一般的には杭基礎を標準とする。
橋脚基礎の流動化の検討については、「道路橋示方書 V耐震設計編」第8章 地震時に不安定とな
る地盤の影響 に準拠して、一般的には杭基礎を標準とする。
流動化の影響は水平力として与えて、基礎の耐震性を検討する。
流動化の影響は水平力として与えて、基礎の耐震性を検討する。
流動化の影響を橋脚基礎に作用する水平力として取扱うモデルを、図-6.4.2に示す。このモデル
流動化の影響を橋脚基礎に作用する水平力として取扱うモデルを、図-7.5.1に示す。このモデルは、
は、兵庫県南部地震の際の臨海埋立地盤上の橋梁の被災事例の解析結果などをもとに求めたもので
兵庫県南部地震の際の臨海埋立地盤上の橋梁の被災事例の解析結果などをもとに求めたものである。
ある。図-6.4.2に示すモデルは、地表面付近に液状化しない土層(非液状化層)があり、その下部に
図-7.5.1に示すモデルは、地表面付近に液状化しない土層(非液状化層)があり、その下部に液状化す
液状化する土層(液状化層)がある場合で、この場合は、液状化層と非液状化層を流動化の影響を考
る土層(液状化層)がある場合で、この場合は、液状化層と非液状化層を流動化の影響を考慮する必要
慮する必要のある範囲として設計する。
のある範囲として設計する。
したがって、これとは条件が大きく異なる場合には、適宜、モデル化を修正することが必要であ
したがって、これとは条件が大きく異なる場合には、適宜、モデル化を修正することが必要である。
る。また、液状化層と非液状化層が互層状態で存在する場合について、流動化の影響を考慮する必
また、液状化層と非液状化層が互層状態で存在する場合について、流動化の影響を考慮する必要があ
要がある範囲の例を、図-6.4.3に示す。
る範囲の例を、図-7.5.2に示す。
また、流動化のメカニズムに関してはまだ未解明な部分が多いため、液状化すると判定された場
また、流動化のメカニズムに関してはまだ未解明な部分が多いため、液状化すると判定された場合
合の耐震設計も行い、いずれか厳しい方の結果を用いる。すなわち、橋に影響を与える流動化が生
の耐震設計も行い、いずれか厳しい方の結果を用いる。すなわち、橋に影響を与える流動化が生じる
じる可能性がある場合には、以下の3ケースについて耐震設計を行い、この中から最も影響の大きい
可能性がある場合には、以下の3ケースについて耐震設計を行い、この中から最も影響の大きいものを
ものを設計に用いる。
設計に用いる。
①流動化が生じると考えたケース
①流動化が生じると考えたケース
②液状化だけが生じると考えたケース
②液状化だけが生じると考えたケース
③液状化も流動化も生じないと考えたケース
③液状化も流動化も生じないと考えたケース
図-6.4.2 流動力の算定モデル例
図-7.5.1 流動力の算定モデル例
6-36
改定案
現行(手引き)
図-6.4.3 流動化の影響を考慮する必要がある範囲
図-7.5.2 流動化の影響を考慮する必要がある範囲
[参考] 橋梁における杭基礎の液状化対策について、現在実施中あるいは研究開発途上にある方法を
分類すると、表-6.4.1のように整理できる。ⅳ)
表-6.4.1 橋梁基礎の液状化対策の分類例
対策の基本的考え方
A.杭基礎の直接強化
B.杭基礎周辺の間接強化
C.橋全体系の間接強化
具体的な対策方法
新設
既設
1)杭本数の増加
○
○
2)杭径の増加
○
-
3)杭厚の増加
○
○
1)杭周辺の液状化発生防止(地盤改良等)
-
○
2)杭構造の剛性増加
○
○
1)支沓の免震化
○
○
2)桁の連続化
○
○
・「杭基礎の直接強化」とは、液状化による地盤反力の低減に対して、杭の本数、杭径あるいは
杭厚を増加させて、構造的な強化を行うことにより、液状化の影響を除去しようとするものであ
る。新設の基礎では設計時にあらかじめ構造強化されるが、既設基礎では補強により構造強化す
ることになる。既設杭の補強は増し杭が一般的であるが、既設鋼管に鋼管を巻立てることにより
補強している事例もある。既設杭については、桁下の狭矮な場所での施工の合理化が課題である。
・「杭基礎周辺の間接強化」は、杭自身には手を加えず、地盤改良により杭周辺の地盤を液状化
させないようにしたり、地盤改良体の支持機能付加により基礎の安定性を確保しようとするもの
である。液状化させないように地盤改良する場合は、経済的に厳しくなることが多いので、改良
範囲等を適切に設定するようにする。
・「橋全体系の間接強化」は、杭基礎あるいは周辺地盤には手を加えないで、支承や上部構造の
耐震性向上によって、間接的に液状化に対する安定性を向上させようとするものである。具体的
には、支沓の免震化や桁の連続性により、杭基礎への作用量を低減する方法が考えられる。
6-37
改定案
現行(手引き)
(2) 飽和した緩い砂礫地盤上のポンプ場(吸水槽)の流動化対策
(2) 飽和した緩い砂礫地盤上のポンプ場(吸水槽)の流動化対策
底版の杭基礎若しくは地盤改良工法により、流動化対策を行うことが多い杭基礎に対しては、橋
底版の杭基礎若しくは地盤改良工法により、流動化対策を行うことが多い杭基礎に対しては、橋脚
脚基礎と同様に「道路橋示方書 Ⅴ耐震設計編」第8章 地震時に不安定となる地盤の影響 に準拠
基礎と同様に「道路橋示方書 Ⅴ耐震設計編」第8章 地震時に不安定となる地盤の影響 に準拠する
するものとする。
ものとする。
液状化対策の基本的な考え方は、橋梁の基礎杭と同様である。地盤改良工法を用いる場合は、サ
地盤改良工法を用いる場合は、サンドコンパクション工法、グラベルコンパクション工法、サンド
ンドコンパクション工法、グラベルコンパクション工法、サンドドレーン工法などの圧密促進によ
ドレーン工法などの圧密促進による地盤の密度増加を目的とする工法が、液状化に対して有利である
る地盤の密度増加を目的とする工法が、液状化に対して有利であることが兵庫県南部地震の液状化
ことが兵庫県南部地震の液状化被害調査から明らかとなっている。
被害調査から明らかとなっている。
(3) 飽和した緩い砂礫地盤上のパイプラインの流動化対策
(3) 飽和した緩い砂礫地盤上のパイプラインの流動化対策
パイプラインの液状化対策は、以下の地震応答対策によることを基本とする。
パイプラインの場合、線状構造物であることから杭基礎や地盤改良工法を採用することは、コスト
の面で困難であることが多い。よって、液状化の可能性がある地盤を挟む形で緊急遮断設備(非常時
に緊急閉鎖が可能な制水弁と付属設備)を設置するとともに、想定変位以上の管の変位が発生した場合
表-6.4.2 パイプラインの地震応答対策
被災の内容
対策を考慮するポイント
対策例
は、継手は破損するが、管の他の部分は破壊しないようにする、等の対策が有利と考えられる。
【液状化の予想される飽和砂質土層】
・埋戻し土に対して行う対策
・ 埋戻し土の密度を高める。(厳密な管理を
行う)
・ 砕石など液状化抵抗力の高い材料を埋戻
し材料として使用する。
・ ソイルセメントなどの液状化しない材料
を埋戻し材として用いる。
・現地盤に対して行う対策
・ 地下水位を低下させる。
・ 地震時に発生する過剰間隙水圧を低く抑
えるためのドレーンを設置する。
・ 地盤改良等の対策を行う。
・管路に対して行う対策
・ 一体構造の管路の場合には地盤ひずみを
吸収する特殊管を採用する。
・ 伸縮可とう性が大きく離脱防止機構を持
った鎖構造継ぎ手の管路を使用する。
現地盤の液状化
【液状化の予想される埋戻し土】
・埋戻し土に対して行う対策
・ 埋戻し土の密度を高める。(厳密な管理を
行う)
・ 砕石など液状化抵抗力の高い材料を埋戻
し材料として使用する。
・ ソイルセメントなどの液状化しない材料
を埋戻し材として用いる。
・現地盤に対して行う対策
・ 地下水位を低下させる。
・管路に対して行う対策
・ 一体構造の管路の場合には地盤ひずみを
吸収する特殊管を採用する。
・ 伸縮可とう性が大きく離脱防止機構を持
った鎖構造継ぎ手の管路を使用する。
埋戻し土の液状
化
6-38
改定案
現行(手引き)
表-6.4.3 液状化が発生する
表-7.5.1 液状化が発生する
構造区分
地中構造物
地上構造物
構造区分
地中構造物
地上構造物
構造種別
パイプライン
ため池
構造種別
パイプライン
ため池・調整池
重要度
B種、C種
A種、(B種)
B種、C種
A種
重要度
B種、C種
A種
B種、C種
A種
目標とする構造物の
耐震性能
設定しない
致命的な損傷を
防止する
設定しない
対策工の評価を行う
目標とする構造物の
耐震性能
設定しない
対策工の評価はしない
設定しない
対策工の評価を行う
耐震設計で考慮する
地震動
液状化を考慮した
耐震設計を行わない
レベル1
耐震設計で考慮する
地震動
液状化を考慮した耐震
設計を行わない
レベル1
液状化を考慮した耐震
設計を行わない
レベル1
レベル2
液状化を考慮した耐震
(B種の場合、レベル1) 設計を行わない
①液状化の予想される飽
和砂質土層
・埋戻し土に対して行う
対策
・現地盤に対して行う対
策
・管路に対して行う対策
②液状化の予想される埋
戻し土
・現地盤に対して行う対
策
・管路に対して行う対策
(表-6.4.2参照)
液状化対策
・カウンターウエイト
・トレンチ(粘土など
の止水トレンチによ
り、液状化部、変位
拘束、トレンチの強
度期待)等
液状化の判定法
液状化の判定
・材料の強度、ねばり
の最大等
安定性の確認
・静的計算
FL値法を流用した
有効応力法による
安定計算
・動的応答解析(液状
化シミュレーショ
ン)
・エンドクロニック理
論
・マルチスプリングモ
デル等
対策工による処理
・カウンターウエイト
・トレンチ(粘土など
の止水トレンチによ
り、液状化部、変位
拘束、トレンチの強
度期待)等
・曲がり管、スラスト
ブロックにおける対
策工
・管周囲の液状化抑止
液状化対策
対策工による処理
備
考
安定性の確認
・静的計算
FL値法を流用した
有効応力法による
安定計算
・動的応答解析(液状
化シミュレーショ
ン)
・エンドクロニック理
論
・マルチスプリングモ
デル等
対策工による処理
B種、C種と同じ対策工
B種については、
以下の場合が該当
(可とう継手、緊急
遮断弁等の対策工を
行うことによって、
地震被害の影響を最
小限に留めることが
可能と判断される場
合)
液状化の判定法
B種、C種と同じ対策工
B種については、左記の ため池の液状化対策については、「ため池指針」
対策工が行われていない 改定に掛る検討結果をもとに、今後記載予定
場合が該当(レベル1地震
動のみ対象となる)
備
6-39
考
A種以外
A種以外
改定案
現行(手引き)
地盤を考慮した耐震設計方針
地盤を考慮した耐震設計方針
基
礎
基
杭基礎(橋梁、ポンプ場、頭首工)
C種
礎
杭基礎(橋梁、ポンプ場、頭首工)
ポンプ場
橋梁、頭首工
B種
A種
B種
AA種・A種
設定しない
健全性を損なわない
限定された損傷にとど
める
健全性を損なわない
限定された損傷にとど
める
液状化を考慮した耐震
設計を行わない
レベル1
レベル2
(タイプⅠ)
レベル1
レベル2
タイプⅠ
タイプⅡ
C種
ポンプ場
橋梁、頭首工
B種
AA種
B種
AA種
設定しない
健全性を損なわない
限定された損傷にとど
める
健全性を損なわない
限定された損傷にとど
める
液状化を考慮した耐震
設計を行わない
レベル1
レベル2
(タイプⅠ)
レベル1
レベル2
タイプⅠ
タイプⅡ
①表-4.2.12に準じて、 ①表-4.2.12に準じて、 ①表-4.2.12に準じて、 ①表-4.2.12に準じて、
低減させた土質定数
低減させた土質定数
低減させた土質定数
低減させた土質定数
を用いる。
を用いる。
を用いる。
を用いる。
ここで、FL値(液状 ②地震時保有水平耐力
ここで、FL値(液状 ②地震時保有水平耐力
化に対する抵抗率)
法
化に対する抵抗率)
法
は、道路橋示方書1)
は、道路橋示方書1)
に準じて、レベル2地
に準じて、レベル2地
震動に対して求めた
震動に対して求めた
値とする。
値とする。
②震度法
②震度法
(許容応力度法)
(許容応力度法)
①表-4.2.12に準じて、 ①表-4.2.12に準じて、 ①表-4.2.12に準じて、 ①表-4.2.12に準じて、
低減させた土質定数
低減させた土質定数
低減させた土質定数
低減させた土質定数
を用いる。
を用いる。
を用いる。
を用いる。
ここで、FL値(液状 ②地震時保有水平耐力
ここで、FL値(液状 ②地震時保有水平耐力
化に対する抵抗率)
法
化に対する抵抗率)
法
は、道路橋示方書1)
は、道路橋示方書1)
に準じて、レベル2地
に準じて、レベル2地
震動に対して求めた
震動に対して求めた
値とする。
値とする。
②震度法
②震度法
(許容応力度法)
(許容応力度法)
1)道路橋示方書1)では、
液状化判定はレベル2
地震動に対して行うも
のとしていることか
ら、土質定数の低減係
数はレベル2地震動に
対して求めた FL値をも
とに設定している。
2)震度法に用いる設計
水平震度は、各構造物
に対応するレベル1地
震動を用いる。
1)道路橋示方書1)では、
液状化判定はレベル2
地震動に対して行うも
のとしていることか
ら、土質定数の低減係
数はレベル2地震動に
対して求めた FL値をも
とに設定している。
2)震度法に用いる設計
水平震度は、各構造物
に対応するレベル1地
震動を用いる。
引用・参考文献
ⅰ)日本道路協会:道路橋示方書・同解説 Ⅴ.耐震設計編(2002)
ⅱ)岡原美知夫、和田克哉:杭基礎の設計施工ノウハウ、近代図書(1998)
ⅲ)地盤工学会:液状化対策の調査・設計から施工まで(1995)
ⅳ)地盤工学会:地盤工学・実務シリーズ 18 液状化対策工法(1995)
1)道路橋示方書1)では、
液状化判定はレベル2
地震動に対して行うも
のとしていることか
ら、土質定数の低減係
数はレベル2地震動に
対して求めた FL値をも
とに設定している。
2)震度法に用いる設計
水平震度は、各構造物
に対応するレベル1地
震動を用いる。
引用・参考文献
ⅰ)日本道路協会:道路橋示方書・同解説 Ⅴ.耐震設計編(2002)
ⅱ)岡原美知夫、和田克哉:杭基礎の設計施工ノウハウ、近代図書(1998)
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1)道路橋示方書1)では、
液状化判定はレベル2
地震動に対して行うも
のとしていることか
ら、土質定数の低減係
数はレベル2地震動に
対して求めた FL値をも
とに設定している。
2)震度法に用いる設計
水平震度は、各構造物
に対応するレベル1地
震動を用いる。