ユニバーサルツーリズムに対応した観光地域づくりについて

ユニバーサルツーリズムに対応した
観光地域づくりセミナー
ユニバーサルツーリズムの促進
~地域での受入体制~
平成27年2月5日
国土交通省観光庁
ユニバーサルツーリズムとは
■ユニバーサルツーリズム
すべての人が楽しめるように創られた旅行であり、高齢や障がいの有
無にかかわらず、誰もが気兼ねなく参加できる旅行を目指している。
■ユニバーサルツーリズムの対象者
高齢者、障がい者、妊産婦、乳幼児、外国人等幅広であり、観光や移
動に際して困難を生じたり何らかの支援を必要とする層が対象とな
る。
旅行に行く
バリアがあっても旅行に行く層
(現在のユニバーサルツーリズム市場)
バリアが無く旅行に行く層
(制約が生じたときに旅行を諦めるか?
将来のユニバーサルツーリズム対象予備軍)
バリア
がない
バリア
がある
バリアがあり旅行に行かない層
(ユニバーサルツーリズムの対象)
バリアが無く旅行にも普段行かない層
旅行に行かない
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ユニバーサルツーリズムの現状と課題
■ユニバーサルツーリズムの現状と課題
○高齢者の増加
総人口に占める高齢者が増加
(2010年の23%から2040年には36%、2060年には40%となる見込み)
○受け手となる観光地
地域における一元的な相談窓口が少ない
←当セミナーで
お伝えする項目
○送り手となる旅行会社
ノウハウを持つ一部の旅行会社のみ取り組み
※受け手・送り手ともに認知度の向上も課題
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人口減少・少子高齢化の推移・予測
今後、人口減少が進み、2047年には1億人程度となる見通し。
少子高齢化が急速に進行しており、2060年には総人口の約40%が65歳以上になる見通し。
それにより、生産年齢人口は現在の2060年には現在の半分近くまで減少。
(人口:千人)
140,000
総人口
約1.28億人
120,000
65歳以上割合
約23%
100,000
15歳未満人口
15歳以上64歳以下人口(生産年齢人口)
65歳以上人口
総人口(2047年)
約1億人
総人口
約8700万人
80,000
65歳以上割合
生産年齢人口
60,000
約40%
約8200万人
40,000
生産年齢人口
約4400万人
20,000
2060
2011
2012
2013
2014
2015
2016
2017
2018
2019
2020
2021
2022
2023
2024
2025
2026
2027
2028
2029
2030
2031
2032
2033
2034
2035
2036
2037
2038
2039
2040
2041
2042
2043
2044
2045
2046
2047
2048
2049
2050
2051
2052
2053
2054
2055
2056
2057
2058
2059
2060
0
2010
2010
(年)
(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(中位推計))
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地域における対応
■旅行する際の阻害要因
・高齢者や障がい者が旅行に行かない或いは諦めている理由は?
・長い距離を歩くと疲れる
・他の人と同じペースで歩けない
・急な坂道や階段が多いところが苦手
・公共交通機関での移動や乗り換えが困難
・トイレに困る
・介助をしてくれる人がいない
・最初から行けないと思い諦めている
等の身体的・物理的なこと
・どこに問い合わせたらいいのかわからない
・対応してくれる地域や旅行会社を知らない
・バリアフリーに配慮した宿を知らない
等の情報に関すること
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地域における対応
■旅行に求めること
・高齢者や障がい者は旅行に何を求めるのか?
・温泉に入りたい
・美味しいものを食べたい
・眺望を楽しみたい
・自然を満喫したい
等の一般的なこと
加えて、
・バリアに関する情報(坂、段差等)
・車いすの貸出
・多目的トイレ
・バリアフリーの宿
・人的なサポート
等の自身の行動に照らしたこと
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地域における対応
■観光案内所等での対応
・観光案内所でよく行っていること
・地域の名物、食事どころ
・観光施設、観光スポット等の見どころ
・宿泊施設
・観光施設等の営業時間
・各施設等へのアクセス方法
等の相談や案内
・バリア&バリアフリーに関することは?
・エレベーターやエスカレーターの設置の有無
等のハードに関することは把握している案内所が多い
・段差の高さ
・坂道やスロープの角度や長さ
等のバリアに関する詳細な情報は把握していないことが多い
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地域において必要な取組
■地域での受入体制整備
・ところで、バリアがあることは悪いこと?
・観光地においては、物理的にバリアを取り払うことができない
ことも多々ある
・バリアを乗り越えることが旅の醍醐味になることも多い
・建物内においては極力バリアを取り払うことが望ましいが、
人によっては合わなかったり、病院や施設にいることを連想
させてしまう(例:手すりだらけ)こともある。
・よくある勘違い
・うちの宿はバリアフリー化をしていない(改修していない)か
ら、障がい者の受入はできない
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地域における必要な取組
■地域での受入体制整備
○大切なこと = 旅行者本人が何を楽しみたいのか
・行きたいところのそれぞれのバリア情報
⇒個別に調べたり問い合わせることは相当な負担
・障害の種類や体調、サポートする人の体力や技量はそれぞれ違う
⇒バリアの種類や程度も様々
それぞれの旅行者に合ったバリアを乗り越える工夫が求められる
これらを解決するためには?
地域の一元的な相談窓口
例: 伊勢志摩に代表されるような “バリアフリーツアーセンター“
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地域のバリアフリーツアーセンター
■バリアフリーツアーセンター(BFTC)とは
高齢者や障がい者を始めとした観光や移動に際して困難を生じたり何らかの支援を
必要とする方に対して、相談・問い合わせ等の対応を実施
BFTC
情報収集
地域内のバ
リア等の情
報収集・蓄
積
【バリア調査】
地方自治体、観光協会、宿泊・旅
行・交通事業者、福祉関係者 等
連携
情報発信
バリア及び
バリアフリ
ー情報の発
信
サポート
相談対応、
車いす等の
貸出、介助
者派遣
【情報発信】
アドバイス
バリアフリ
ーに関する
指導・アド
バイス
【相談対応】
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バリアフリーツアーセンターの事例
【伊勢志摩バリアフリーツアーセンター】
所在地:三重県鳥羽市 鳥羽一番街内
運 営:NPO伊勢志摩バリアフリーツアーセンター
【那覇空港しょうがい者・こうれい者観光案内所】
所在地:沖縄県那覇市 那覇空港内
運 営:NPOバリアフリーネットワーク会議
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バリアフリーツアーセンターの事例
【福島バリアフリーツアーセンター】
所在地:福島県福島市 JR福島駅西口観光案内所内
運 営:NPOふくしまバリアフリーツアーセンター
【佐賀嬉野バリアフリーツアーセンター】
所在地:佐賀県嬉野市 嬉野バスセンター内(観光協会・旅館組合併設)
運 営:佐賀嬉野バリアフリーツアーセンター(任意団体)
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ユニバーサルツーリズムに対応した一元的な相談センター
地域における一元的な相談窓口
機能が果たされているBFTC
カムイ大雪バリアフリー
ツアーセンター
一元的な相談窓口機能を果たす
取組を進めているBFC
H25年度または26年度に観光庁
が支援をしているBFTC
ゆみふりみやぎ
沖縄バリアフリーツ
アーセンター
松江/山陰バリアフリー
ツアーセンター
呉バリアフリー
ツアーセンター
ふくしまバリアフリー
ツアーセンター
秋田バリアフリーツア
ーセンター (準備中)
いわき自立生活センター
石川バリアフリー
ツアーセンター
東京(複数団体が活動)
トラベルフレンズ
とっとり
伊豆バリアフリーツ
アーセンター
チックトラベルセンター
ハートTOハート
ひろしまバリアフリーツ
アーセンター(準備中)
神戸ユニバーサルツー
リズムセンター
バリアフリーネット
ワーク九州会議
四国バリアフリー
ツアーセンター
佐賀嬉野バリアフリー
ツアーセンター
UDくまもと
かごしまバリアフ
リー相談センター
別府バリアフリー
ツアーセンター
伊勢志摩バリアフリー
ツアーセンター
※全ての相談センターを網羅
してはいない。この他に、
NPO等が独自に活動を行って
いる地域や、理念の違い等か
ら複数組織が活動している地
域が存在する。
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ユニバーサルツーリズムの必要性
■地域、高齢者・障がい者、観光業界の「三方よし」
○地域(まち)
・観光客の増加、まちづくりの推進、雇用創出
○高齢者・障がい者(ひと)
・旅行意識の芽生え、旅行選択肢の増加
等
等
○観光業界(しごと)
・旅行業者のみならず周辺産業を含めたUT市場の形成
等
高齢者は今後20年以上増加していくことが見込まれる成長市場
この成長市場を地域へ取り込み、地域の活力を増大させる
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ユニバーサルツーリズムの位置づけ
○観光立国推進基本法(抄)(平成18年12月20日法律第170号)
(観光旅行者の利便の増進)
第21条 国は、観光旅行者の利便の増進を図るため、高齢者、障害者、外国人その他特に配慮を要する
観光旅行者が円滑に利用できる旅行関連施設及び公共施設の整備及びこれらの利便性の向上、情報通信
技術を活用した観光に関する情報の提供等に必要な施策を講ずるものとする。
○観光立国推進基本計画(抄)(平成24年3月30日閣議決定)
ユニバーサルデザインの考え方に基づく観光の促進
観光産業だけでなく、地方自治体やNPO、他の産業等の幅広い関係者による協力のもと、高齢者や
障害者が安心して参加できるユニバーサルツーリズムを促進するため、関係者間において地域における
先進的な取組や課題解決に向けた取組を共有し、それぞれが段階的に向上していくための仕組みを平成
24年度に検討し、その普及に向けた取組を行う。
○観光産業政策検討会提言(抄)(平成25年3月)
ユニバーサルツーリズムへの対応
高齢者・障害者が暮らしやすい社会づくりの一環として、また、旅行需要の減少や余暇市場の縮小等
を踏まえた新たな需要創出の観点から、ユニバーサルツーリズムの普及・定着を図る必要がある。
○観光立国実現に向けたアクション・プログラム2014(抄)(平成26年6月)
オリンピック・パラリンピックを見据えた観光振興
2020年オリンピック・パラリンピックを見据え、また、社会の一層の高齢化を想定して、誰もが安心
して旅行を楽しむことができるユニバーサルツーリズムに対応した環境整備を進めることが必要であ
る。
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観光庁における取組
■ユニバーサルツーリズム促進事業
○地域の受入体制強化
平成25・26年度に地域の受入体制強化を図る取組を支援
◆平成H25年度
各地域が受入体制を強化していくためのポイントや手順を
STEP1~5に整理した「地域の受入体制強化マニュアル」を作成
STEP5
取組の発展
STEP4
取組の継続
STEP3
取組の開始
STEP2
組織の
立ち上げ
取組の検討
STEP1
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観光庁における取組
■ユニバーサルツーリズム促進事業
◆平成26年度
マニュアルを踏まえ『地域の一元的な相談窓口』の設立や事業
内容拡大等の動きを支援(5地域で実施中)
STEP1-2 秋田県 :秋田県旅館ホテル生活衛生同業組合
STEP3-4 広島県広島市(宮島を含む)
:㈱第一ビルサービス・(一社)広島まちづくり推進協議会
大分県別府市・大分市 :NPO自立支援センターおおいた
STEP4-5 石川県 :NPO石川バリアフリーツアーセンター
鹿児島県 :かごしまバリアフリー相談センター
⇒各地域の取組等をまとめた事例集を作成予定
その他に、旅行商品の供給促進の検討、ユニバーサルツーリズムに関連するマーケテ
ィングデータの整備等を実施中
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今後必要となる取組
■地域の課題としての認識
○今後伸びが期待される外国人と高齢者・障がい者
・訪日外国人は2014年は史上初の1300万人超え
⇒関心を持ちインバウンドに取り組む自治体は多い
・高齢者・障がい者は年々増加、特に高齢化率の進展は激しい
⇒受入に消極的或いは意識が向かない自治体が多い
■地域全体での取組
○高齢者・障がい者にとって快適なまちは地域の人にも快適なまち
・配慮の行き届いたハード・ソフトは地域にとっての財産・魅力
⇒“外”からの受入を地域の問題として捉える
・多様な関係者との連携構築、NPOとの共存
⇒NPO任せにせず、NPOから学び、NPOを大いに活用する
※NPOもバリアフリーの総合コンサル化を目指しスキルアップが必要
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知事による宣言
*出典:伊勢志摩バリアフリーツアーセンターホームページ
*出典:沖縄県ホームページ
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*出展:内閣府ホームページ
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地域に期待すること
■環境変化への対応
○超高齢社会、増加する障がい者
○東京オリンピック・パラリンピックの開催
○「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」の施行
■地域一体の受入体制
○利用者目線による対応
○地域の一元的な相談窓口の確立、それを支える仕組みの構築
重大さに気付いたときは既に手遅れ、今からなら間に合う
ユニバーサルツーリズムに対応していない地域は、
大きなマーケットを逃し、時代に取り残される
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