専門科目 1(午前) 応用化学 27 大修 時間 9 時 30 分~11 時 00 分 注 意 事 項 1. 次の 2 題全部について解答せよ. 2. 解答は 1 題ごとに別々の解答用紙に記入せよ. 3. 各解答用紙に必ず問題番号および受験番号を記入せよ. 4. 解答用紙の裏面を使用する場合には,裏面を使用することを明記し,解答用紙上部の 氏名欄の裏に解答が重ならないようにすること. 1 1. 次の問に答えよ. (1) 熱力学に関する以下の問に答えよ.ただし,内部エネルギーU,エントロピーS,温度 T,圧力 p,体積 V,熱 q,定容熱容量 Cv という物理量,および気体定数 R を用いる. 1 mol の完全気体の温度が dT,体積が dV 変化したときの内部エネルギー変化 dU は, 全微分形式として d𝑈 = ( ① ) d𝑇 + ( ② )d𝑉 と書くことができる.さらに, d𝑈 = −( ③ )d𝑉 + d𝑞 であるから,これらの二つの式から, d𝑞 = ( ① )d𝑇 + ( ② ) + ( ③ ) d𝑉 が得られる.この式からエントロピー変化 dS は, d𝑆 = 1 ( ④ ) ( ① )d𝑇 + 1 ( ④ ) ( ② ) + ( ③ ) d𝑉 となる. 内部エネルギーU は,温度が一定のときは体積 V が変化しても変化しない.さらに定 容熱容量 Cv を用いると, d𝑆 = 𝐶! ( ④ ) d𝑇 + ( ③ ) ( ④ ) d𝑉 となる.右辺第2項に完全気体の状態方程式を適用すると, d𝑆 = 𝐶! ( ④ ) d𝑇 + ( ⑤ )d𝑉 となる.基準状態におけるエントロピーS(T0,V0)と,任意の状態におけるエントロピー S(T,V)の差は,温度と体積の関数として書き表すことができ, 𝑆 𝑇, 𝑉 − 𝑆 𝑇! , 𝑉! = ( ⑥ ) となる. (a) 空欄( ① )~( ⑥ )にあてはまる適切な代数を記せ. (b) 上記の文章において最後に得られたエントロピーの差を表す式をもとにして,1 mol の完全気体の温度を変えずに,体積 Vi から Vf に可逆的に膨張させたときのエ ントロピー変化を表す式を導け. 2 (2) 相転移に関する以下の問に答えよ. (a) 硫化炭素,ベンゼン, 水の沸点は,それぞれ–60.4℃,80.1℃,100.0℃であり,標 準モル蒸発エンタルピーは,それぞれ 18.7 kJ mol–1,30.8 kJ mol–1,40.7 kJ mol–1 で ある.この三つの物質の標準モル蒸発エントロピーを計算せよ.また,それぞれ の値を比較して得られる特徴を述べ,その理由をエントロピーの物理学的な意味 から述べよ. (b) 硫化水素,ベンゼンの標準モル融解エントロピーは,それぞれ 12.67 J K–1 mol–1, 38.00 J K–1 mol–1 である. (a)で求めた硫化水素とベンゼンの標準モル蒸発エントロ ピーは,それぞれの標準モル融解エントロピーより大きい理由を述べよ. (3) 化学工業プロセスに関する以下の問に答えよ. (a) 空欄( ① )~( ⑦ )にあてはまる適切な語句を記せ. ナフサは,原油の( ① )により分離して得られる.このナフサを高温で分解する のが( ② )であり,炭素―炭素結合の開裂により( ③ )が発生する.ここで生じ た( ③ )は,( ④ )を起こすか,あるいは他の分子の水素を引き抜くことによっ て( ③ )連鎖反応を継続する.( ③ )が( ④ )をする場合,( ⑤ )を生成し, 同時に炭素数が2だけ短くなった新しい( ③ )を与える.一方,固体酸であるゼオ ライトを触媒に用いてナフサを分解するのが( ⑥ )であり,このプロセスでは炭化 水素から( ⑦ )が発生する.この場合,( ⑦ )は,三級>二級>一級の序列で安 定なため,アルキル基の移動による異性化反応をおこしてより安定な二級または三級 ( ⑦ )となってから( ④ )する.このときには, 炭素数3以上のオレフィンが 主に生成する. (b) 以下の文章について問(i)~(iii)に答えよ. エチレンから酸化エチレンを合成する固体触媒プロセスでは,アルミナに担持した ( ① )が触媒として用いられる. ( ① )は, ( ② )を活性化する触媒活性成分で ある.アルミナは,触媒活性成分の( ③ )であり,触媒活性成分を安定化すること によって,触媒に長い( ④ )を与える役割をもっている. (i) 空欄( ① )~( ④ )にあてはまる適切な語句を記せ. (ii) 下線で示したプロセスでおこる化学反応の式を記せ. (iii) プロピレンから酸化プロピレンを合成するプロセスでは,下線で示したプロセ スと同じ触媒を用いることはできない.その理由を述べよ. 3 (c) プロピレンからアクリル酸を触媒的な酸素酸化反応で合成する以下の 2 段階プロ セスについて,問(i),(ii)に答えよ. (触媒 B) プロピレン + 酸素 → (中間体 A) + 酸素 → アクリル酸 (i) 中間体 A の化学式を記せ. (ii) 触媒 B を選択肢から一つ選べ. 触媒 B の選択肢: H-ZSM-5 ゼオライト,活性炭担持白金,Pd-Te,MoO3-Bi2O3, Fe2O3-CrO3,PdCl2-CuCl2,HRh(CO)(PPh3)3 4 2. 次の問に答えよ. (1) 分子軌道法に関する以下の問に答えよ.ただし,必要であれば次式を用いよ. ∞ n − ax ∫ xe ∫ ∫ ∫ 0 ∞ ∞ dx = n! a n +1 , ∞ −∞ −∞ −∞ f ( x, y, z )dxdydz = ∫ ∞ 0 π 2π 0 0 ∫∫ f (r ,θ ,φ )r 2dr sin θ dθ dφ (a) 水素分子イオン(H2+)の分子軌道を考える場合,水素原子 1s 軌道の原子軌道の一 次結合で近似するという方法がある. (i) 水素原子の 1s 軌道の波動関数は ψ = Ne – r a0 で表される.規格化定数 N を算出せ よ.ただし,r は原子核と電子の距離,a0 は Bohr 半径である. (ii) 原子軌道の一次結合により水素分子イオン(H2+)の分子軌道を表す場合,波動 関数ψ ± は次式で表される.ただし,A,B はそれぞれ水素原子 A,B の 1s 軌道の 原子軌道で, N ± は規格化定数である. ψ ± = N± ( A ± B) (複号同順) ψ+ ,ψ − で規定される電子の存在確率密度の 概略図をそれぞれ図示せよ.ただし,右図の ように横軸を原子 A と原子 B の結合軸とし, 確 率 密 度 (iii) ・ A 縦軸を確率密度とせよ. ψ + ,ψ − のどちらが反結合性軌道であるかを記せ.また,(ii) 度の図を用いて,反結合性の軌道であることを説明せよ. 5 ・ B で記入した確率密 (b) 酸素分子における分子軌道のエネルギー準位図を図1に示す.ただし,1s 軌道から 形成される分子軌道は記載していない. (i) 図1の分子軌道のうち,反 結合性軌道の記号をすべ て記せ. (ii) 図1を解答用紙に記載し, 基底状態の酸素分子 O2 の 電子配置を,スピンの向き を考慮した上下の矢印で 記入せよ.また,その配置 になる理由を述べよ. (iii) 基 底 状 態 に お け る O2 と O 2+ の う ち ど ち ら の 結 合 エネルギーが大きいか,そ れぞれの結合次数を求め 図1 酸素原子と酸素分子の軌道エネルギー 準位図 て説明せよ. 6 (2) 反応速度に関する以下の問に答えよ.ただし,以下の反応は定常的に進行しており, ラジカル中間体の変化量は無視できるほど小さいものとする. (a) 反応物 M1 は,以下の反応式に従い・M1 ラジカルの二量化により M2 を生成する.I はラジカル開始剤,・R ラジカルは I から生成するラジカルである.それぞれの反応 速度定数を矢印の上に示す. (i) M2 の生成速度を導出せよ.ただし,・M1 ラジカルが生成する二番目の式の反応は 非常に速いものとし,I の濃度[I]を変数とせよ. (ii) ・M1 ラジカルのみを捕捉する物質 S が存在する場合,M2 の生成速度を導出せよ. ただし,生成した・MS ラジカルは二量化反応に影響を与えないものとし,I の濃 度[I]と S の濃度[S]を変数とせよ. (b) M1 の重合反応が図2の反応機構により進行するものとする.ただし,・M1 ラジカル が生成する二番目の式の反応は非常に速いものとする. (i) 開始反応の速度定数を ki とする.また,成長反応および停止反応の速度定数 kp および kt は高分子鎖の長さに依存しないとする.成長反応における M1 の消費速 度を導出せよ.ただし,I の濃度[I]と M1 の濃度[M1]を変数とせよ. (ii) 高分子の平均の重合度(重合した M1 の数)を導出せよ.ただし,I の濃度[I]と M1 の濃度[M1]を変数と せよ. (iii) (ii) の結果は,開始反応 が速いとき(ki の値が大 きいとき)平均の重合 度が小さくなることを 示している.このこと を反応機構を用いて説 明せよ. 図2 M1 の重合反応の反応機構 7 専門科目 2(午後) 応用化学 27 大修 時間 13 時 30 分~15 時 00 分 注 意 事 項 1. 次の 2 題全部について解答せよ. 2. 解答は 1 題ごとに別々の解答用紙に記入せよ. 3. 各解答用紙に必ず問題番号および受験番号を記入せよ. 4. 解答用紙の裏面を使用する場合には,裏面を使用することを明記し,解答用紙上部の 氏名欄の裏に解答が重ならないようにすること. 1 1. 次の問に答えよ. (1) 下に示す合成スキームは,ある医薬品の合成法の一部を改変したものである.以下の 問に答えよ. C E H3O+ NO2 Cl O NaN3 加熱 H2O t-C4H9OH B D 1) NaH A 2) Br H SnCl2, H3O+ H3O+ G F (a) 化合物 A とアジ化ナトリウムを加熱すると生成する化合物 B に,酸性条件下で水 (H2O)を加えると化合物 C が得られた.化合物 B および C の構造式を記せ. (b) 化合物 B に中性条件下で t-C4H9OH を加えると化合物 D が得られた.化合物 D の 構造式を記せ. (c) 化合物 B に中性条件下で水(H2O)を加えると,化合物 C ではなく化合物 E が主 生成物となった.化合物 E の構造式を記せ.また,化合物 C ではなく化合物 E が 主生成物となる理由を述べよ. (d) 化合物 F〜H の構造式を記せ. (e) 化合物 G は化合物 C からも合成可能である.合成法を反応式で記せ. 2 (2) 含窒素複素環化合物に関する以下の問に答えよ. (a) ピロールのアンモニウムイオンの pKa は 0.4 と小さな値である.一方,ピリジンの アンモニウムイオンの pKa は 5.3,トリメチルアミンのアンモニウムイオンの pKa は 9.8 と大きな値を示す.これら三つのアンモニウムイオンの pKa が,このように 大きく異なる理由を述べよ. (b) 含窒素複素環化合物に対する求電子置換反応に関する次の問に答えよ. (i) ピロールおよびインドールに臭素を作用させたところ,対応するモノ臭素化体 A および B がそれぞれ位置選択的に得られた.A および B の構造式を記せ.ま た,これらの位置選択性が発現する理由を述べよ. Br2 A N H Br2 B N H (ii) (i) に示したようにピロールに対する求電子置換反応は容易に進行するが,ピリ ジンは求電子置換反応に対する反応性が低い.その理由を二つ述べよ. (c) 4-メチルオキサゾールにジフェニルアセチレンを加熱条件下反応させると,化合物 C を経由して二つの生成物 D および E が得られた.C〜E の構造式を記せ. N O Ph CH3 + 加熱 C Ph 3 加熱 D + E 2. 次の問に答えよ. (1) 次に示す反応に関する以下の問に答えよ. KMnO 4 H 3O+ EtOH A B 1) NaOEt 2) H 3O+ 1) O E D NaOEt C 2) H 3O+ (a) ナイロン 66 の原料にもなる化合物 A の構造を記せ. (b) 化合物 B の 1H NMR を測定すると4種類のプロトンが観測された.化合物 B の構 造式を記せ. (c) 化合物 C とエタノールの分子量の和が化合物 B の分子量と等しくなった.化合物 C の構造式を記せ.また,その生成反応の機構を記せ. (d) 化合物 D は単環性化合物であり,化合物 E は二環性化合物であった.化合物 D と E の構造式を記せ. (e) 化合物 B から C への変換は1当量の塩基を必要としたが,化合物 C から D への変 換は触媒量の塩基で進行した.この違いを反応機構をもとに述べよ. (f) 化合物 D から E への環化反応では,次に示す反応の生成物 F を経由して進行する. F の構造式を記せ. NH D F 4 + H 2O (2) 次の反応に関する以下の問に答えよ. CHO HCN H 3O+ A B (a) 化合物 A の構造式を記せ.立体化学は考慮しなくてよい. (b) 化合物 B はフェニル酢酸よりも小さい pKa を示した.化合物 B の構造式を記せ. また,フェニル酢酸より pKa が小さい理由を述べよ. (c) 酵素 x は A の R 体のみを B の R 体に変換する.この酵素 x を塩基性条件でラセミ 体 A と反応させたところ,A は完全に消費され R 体の B のみが得られた.化合物 A がすべて消費された理由を化学反応式を用いて説明せよ.ただし,酵素 x の反 応特異性は反応系の pH に依存しないものとする. (d) 下に示すように,化合物 C を酸性条件で加水分解すると化合物 A と D-グルコース が得られた.次の問に答えよ. C H 2O 酸触媒 A + HO HO CH2OH O OH OH D- グルコース (i) D-グルコースの鎖状構造を Fischer 投影式で記せ. (ii) 化合物 C は β-グルコピラノシドであった.化合物 C の構造式を記せ.ピラノ ース以外の立体化学は考慮しなくてよい. (iii) 化合物 C から化合物 A と D-グルコースが生成する機構を記せ. 5 専門科目 3(午後) 応用化学 27 大修 時間 15 時 30 分~17 時 00 分 注 意 事 項 1. 次の 2 題全部について解答せよ. 2. 解答は 1 題ごとに別々の解答用紙に記入せよ. 3. 各解答用紙に必ず問題番号および受験番号を記入せよ. 4. 解答用紙の裏面を使用する場合には,裏面を使用することを明記し,解答用紙上部の 氏名欄の裏に解答が重ならないようにすること. 1 1. 次の問に答えよ. (1) 次の元素について以下の問に答えよ. Li O F Mg Al Si P Cl K (a) O,F,Cl について,Pauling の電気陰性度が大きい順に並べて記せ. (b) 以下の各結晶と同じ原子配置をとり,上の元素から構成される化合物の化学式を一 つ記せ.また,それらの結晶構造の名称を記せ. (i) K2O (ii) Si (c) ハロゲンの単核オキソ酸について以下の問に答えよ. (i) Cl の一連の単核オキソアニオンを挙げ,それらのすべてについて,例にならっ て,電子対反発則から推定される構造を Cl 上の孤立電子対を含めて立体的に図 示し,Cl の形式酸化数を記せ. (例)SF4 の構造 S の形式酸化数:+4 (ii) Cl の単核オキソ酸の酸性の強さが形式酸化数とともに変化する理由を簡潔に述 べよ. (iii) F の安定なオキソ酸が存在しない理由を簡潔に述べよ. (d) LiF,KCl,MgO について,LiF に対する KCl と MgO の各格子エネルギーの比を求 めよ.ただし,Born−Landé の反発項は関数 B/rn,n = 9 で表されるものとし,各イ オンのイオン半径(Å)は下記の値とする. Li+ K 0.90 + Mg 1.5 2+ 0.86 F− 1.7 2− 1.3 Cl O 1.2 − 2 (2) ルビー結晶は α-Al2O3 の Al サイトを微量の Cr3+で置換した化合物で,赤色の固体レー ザー(ルビーレーザー)に用いられる.α-Al2O3 の結晶構造,結晶場およびルビーレー ザーについて述べた次の文章を読み,以下の問に答えよ. 化合物の結晶中で,アルミニウムは主に二つの配位様式をとる.例えば,窒化物の 結晶中では( ① )配位をとり,スピネル型構造や( ② )型構造の複酸化物の結晶 中では( ③ )配位をとる.α-Al2O3 の結晶構造はコランダム型であり,( ④ )充填 した酸化物イオンの( ⑤ )配位の空隙の( ⑥ )をアルミニウムが占める. 一般に遷移金属イオンが結晶場におかれた場合,その d 軌道はいくつかのエネルギ ー準位に分裂し,その差に相当する吸収ピークが観測される.この d-d 遷移に帰属さ れる吸収の強さは,スピン許容・禁制などの選択律で説明される.例えば, ( ⑦ )個 の d 電子をもつ Fe3+イオンが正八面体対称性をもつ結晶場におかれた場合, ( ⑧ )ス ピン配置のイオンは,( A )に対応する強い吸収を示すが,( ⑨ )スピン配置のイ オンはほとんど吸収を示さない. ルビー結晶中の Cr3+は( ⑩ )個の d 電子をもち, ( B )に対応する強い吸収を示 す.(ア)この遷移のエネルギーは,結晶格子の熱振動に大きく影響されるため,なだら かな吸収ピークとして観測される.一方,O2−の理想配置からのずれやスピン-軌道相 互作用などにより,スピン禁制の( C )の遷移に対応する弱い吸収を示す.(イ)この 遷移のエネルギーは,熱振動の影響をほとんど受けないため,鋭い吸収ピークとして 観測される. ( B )に対応する遷移によって励起 (ウ)ルビー結晶における誘導放出は, された電子が, ( C )の逆方向に対応する遷移によって基底状態に戻る過程で実現さ れる. (a) 空欄( ① )~( ⑩ )にあてはまる適当な語句や数字を記せ. (b) 空欄( A )~( C )にあてはまる光学遷移の基底状態と励起状態を例にならって 記せ.(例)e (1) t2 (0) {S = 1/2} → e (0) t2 (1) {S = 1/2} (c) 文章中の二つの下線部(ア)と(イ)の違いが現れる理由を簡潔に述べよ.ただし, 原子の熱振動による Cr−O 結合長の変化は等方的に起こり,Cr を中心とする配位多 面体の対称性は変化しないものとする. (d) α-Al2O3 の Al サイトを,Cr2+または Mn3+で置換した結晶では,ルビー結晶に比べて どのような効果が現れるか,配位環境や光学遷移の観点から予想される効果を簡潔 に記せ. (e) 文章中の下線部(ウ)について,電子遷移の過程を示すエネルギー準位図を描きつ つ,誘導放出が実現される理由を簡潔に述べよ. 3 2. 以下の問に答えよ. (1) 水分子に関する以下の問に答えよ. (a) 水の属する点群の指標表を以下に示す.ただし,主軸を z 軸とし,分子面に垂直な 軸を x 軸とする.水分子の属する点群を記せ. E C2 σ v(xz) σ v’(yz) h=4 A1 1 1 1 1 z x2, y2, z2 A2 1 1 –1 –1 Rz xy B1 1 –1 1 –1 x, Ry zx B2 1 –1 –1 1 y, Rx yz (b) 二つの水素の 1s 軌道からなる対称適合線形軌道 (SALC) をすべて図示せよ. (c) 図1に酸素の 2s 軌道,2p 軌道と二つの水素の 1s 軌道から組み立てられた水の分子軌道のエネルギ ー準位図を示す.HOMO (1b1) に関与する酸素の 原子軌道を記せ. (d) 2a1 および 1b2 の軌道には酸素と水素のどのような 原子軌道が寄与しているかを述べ,それぞれの分 子軌道を模式的に図示せよ. (e) 水の OH の伸縮振動には対称伸縮と非対称伸縮の 二つのモードがある.それぞれ既約表現を用いて 記せ. (f) ヒドロニウムイオン (H3O+) の構造を予測し,そ の属する点群を答えよ.また,ヒドロニウムイオ ンと等電子構造をもつ中性の化合物を一つ記せ. 4 図1. 水の分子軌道のエネルギー準位図 (2) 八面体型錯体 ML6 について以下の問に答えよ. (a) 6 個の配位子が σ 供与体として働くときの金属の d 軌道の分裂をエネルギー準位図 を用いて図示せよ. (b) 6 個の配位子のうち一つを一酸化炭素のような π 受容性の配位子に置換した場合の d 軌道の分裂パターンについて, (a) の場合からの変化の様子を図示せよ.また, そのように変化する理由を述べよ. (c) MA2B2C2 のように八面体型錯体が 3 種類の配位子によって構成されている場合につ いて,下に示す MA3B3 の例にならい,すべての異性体の構造を示せ.光学活性体が ある場合には,その鏡像異性体の構造も含めて示すこと. 例)MA3B3 の異性体の構造 (d) 右に示す 6 配位のチタン錯体について以下の問に答えよ. (i) この錯体の電子数(金属まわりの全電子数)を記せ. (ii) チタン上のメチル基のプロトンの NMR シグナルは 31 P とのスピン–スピンカップリングによって何重線として 観察されるか,各ピークの強度比とともに記せ.ただし, 49 Ti によるサテライトピークは無視してよい. (iii) d2 電子配置をもつチタン錯体は常磁性であることが多いが,このチタン錯体は 反磁性を示す.その理由を簡潔に述べよ. 5
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