鳥取大学 大学院工学研究科 江草 真由美 ([email protected]) 天然の多糖:キチン・キトサン ・アセチルグルコサミンが連なった直鎖構造 ・甲殻類や昆虫の外皮を構成する多糖類 ・年間合成量は 1×109~1011トン キチン 脱アセチル化 キトサン ・高い親水性 ・高い反応性 ・ポリカチオン性 ・抗菌性 エビ・カニ殻の階層的な組織構造 キチンナノファイバー、タンパク質、炭酸カルシウムが階層的な組織化によりカニ殻を構成 *D. Raabe et al., Mater. Sci. Engin. A, 421 (2006) 143. ナノファイバー 繊維幅が1から100 nm,アスペクト比が100倍以上の繊維状の物質 ナノファイバー3大効果 超比表面積効果 表面積の拡大による分子認識性、吸着特性 ナノサイズ効果 ナノサイズによる光学特性、流体力学特性 超分子配列効果 高分子鎖の配列効果による力学的特性、電気的特性、熱的特性 キチンナノファイバー製造方法 乾燥カニ殻 (100 g) 除タンパク質 (2M NaOH,2days, reflux) 脱カルシウム (1M HCl,2days,r.t.) 脱脂, 脱⾊素 (ethanol, 6h, reflux) 酢酸 (pH 3) 解繊処理 (making nanofibers) (MKCA6-3; Masko Sangyo Co., Ltd.) 1% キチンスラリー キチンナノファイバーの特徴 従来のキチン ⽔に対して不溶、 沈殿を⽣じる キチンナノファイバー ⽔中に均⼀に分散 配合・成形が容易に 操作性が向上 SEM写真 紙漉で作成したキチンナノファイバー紙 キチン・キトサン利用の利点 キチンは豊富な天然資源であり、安定的に供給できる 例) 鳥取県境港 カニの水揚げ量 約8,000 t カニ殻量(カニ廃棄率50-70%) 4,000-5,600 t キチンナノファイバー量 1,200-1,680 t (カニ殻中キチン 30%) ナノファイバー(1%)分散液 120,000-168,000 L 高い生体適合性・生分解性によるヒト・環境に対する安全性 農業:土壌改良剤、成長促進剤 食品:健康食品、添加剤・防腐剤 医療:手術用糸、創傷治療 新技術の特徴 ・キチン・キトサンは一般の溶媒に不融・不溶 従来技術 ・溶解する場合、低分子化・誘導体化 新技術 ・ナノファイバー化により、溶媒に均一に分散できる ・高分子のキチン・キトサンをそのまま利用できる アグリビジネス関連市場 市場分野 2011年市場 規模 2020年市場 規模予測 伸長率 養液栽培関連プラン ト・システム市場 植物工場・湛液型栽培プラン ト ・NTF栽培プラント ・固形培 地栽培プラント 73億3,000万円 151億5,000万円 206.7% 栽培関連IT・ネット ワーク技術市場 環境制御装置 ・農業用 フィールドサーバ 17億4,000万円 44億2,000万円 254.0% 養液・施設栽培関 潅水/給液管理装置 ・栽培 用空調機器 ・植物育成用光 連装置・機器・ 源 ・固形培地 ・ガラス/ 資材市場 321億1,000万 円 387億円 120.5% 高付加価値型 アグリ資材市場 281億8,800万 円 303億4,500万円 107.7% 3億円 10億5,000万円 350.0% フィルムハウス 天敵農薬 ・微生物農薬 ・フェ ロモン剤 ・抵抗性誘導剤 ・ 被覆(コーティング)肥料 ・ 生分解性マルチフィルム 収穫・貯蔵関連市場 栽培/収穫ロボット ・貯蔵/ 鮮度保持機器システム 「アグリビジネスの現状と将来展望 2012」富士経済 キチン・キトサンナノファイバーの適用例 シードペーパー ロックウール 育苗、培養培地 ポット、セルトレー 果実袋 梱包資材 生分解性マルチフィルム 葉面散布 土壌散布 灌水 すき込み 包装資材 1、植物病原菌(カビ)に対する抗菌活性について 2、植物への影響について~免疫力の活性化 植物病害の病原体 カビ(菌類・糸状菌) 細菌 ウイルス ・・80% ・・10% ・・10% 日本ナシ黒斑病菌 (カビ) 矢印:胞子 矢頭:菌糸 表面キトサン化キチンナノファイバー キトサンの抗菌性は既知であるがキトサンシートは強度が弱い 表面キトサン化キチンナノファイバーの利用 キトサンの抗菌性を損なわずに強度を付与したシートの作成 中心:キチン→強度 表面:キトサン→抗菌性 ナノファイバー混合シートの植物病原菌 (カビ)胞子発芽に対する抗菌性検定 方法 ・スライドガラス上に表面キトサン化キチンナノファイバー(NF) 混合キトサ ンシート、対照区としてセルロース膜を置き、胞子懸濁液を滴下した。 ・湿室条件下に静置し、24時間後の胞子発芽について顕微鏡下で観察した。 ・100個あたりの発芽胞子を計測し、胞子発芽率を算出した。 材料:試験シート 病原菌胞子懸濁液 滴下 セルロース膜(対照区) 表面キトサン化キチンナノファイバー : キトサンシート 配合割合 0:10 (キトサンシート) 2: 8 5: 5 8: 2 10: 0 (ナノファイバーシート) 試験シート 日本ナシ黒斑病菌 セルロース膜(対照区) キトサン:NF, 5:5 キトサン:NF, 10:0 キトサン:NF, 8:2 キトサン:NF, 2:8 キトサン:NF, 0:10 100 μm 各種植物病原菌の胞子発芽率(%) 表面キトサン化キチンナノファイバー:キトサン 配合割合 供試菌 Alternaria alternate Japanese pear pathotype ニホンナシ黒斑病菌 A. brassicicola アブラナ科植物黒すす病菌 A. brassicae アブラナ科植物黒斑病菌 Bipolaris oryzae イネごま葉枯病菌 B. sorokiana イネ科斑点病菌 Botrytis cinerea 灰色かび病菌 Chalara spp. にんじん黒すす病菌 Colletortichum orbiculare ウリ類炭疽病菌 Corynespora cassiicola トマト褐色輪紋病菌 Fusarium oxysporum f. sp. lycoperisici トマト萎凋病菌 Penicillium sp. カンキツ緑かび病菌、青かび病菌 Pyricularia oryzae イネいもち病菌 セルロース膜 (対照区) 0:10 キトサン シート 2:8 5:5 8:2 10:0 NFシート 98.5±0.3 a 1.0±0.6 b 0.3±0.3 b 0b 0.5±0.5 b 62.3±8.5 c 92.3±1.7 a 0.3±0.3 b 0b 0b 1.8±1.2 b 0.3±0.3 b 87.0±0.7a 2.0±0.5b 0.5±0.4b 0b 8.3±2.0b 29.0±2.0b 95.0±1.0a 22.3±1.0b 2.3±0.4c 2.7±0.8c 9.3±1.1d 39.0±1.4e 98.0±0.5 a 3.3±0.6 b 3.8±0.6 b 4.5±1.8 b 1.3±0.6 b 16.5±2.3 c 99.8±0.4a 2.8±0.8b 1.0±0.6b 8.0±1.5b 23.0±2.0c 90.5±1.5a 65.8±4.8a 0b 0b 0b 0.5±0.5b 0b 86.3±1.8a 0.8±0.8b 0.3±0.3b 2.8±2.1b 10.0±3.5b 32.8±6.5c 93.0±1.2 a 3.5±1.2 b 6.8±2.8 b 3.0±0.6 b 1.8±0.9 b 31.3±6.2 c 91.7±1.4 a 0b 0b 0b 0b 0b 98.3±0.9a 1.0±0.4b 0.25±0.25b 0b 0b 1.8±1.2b 99.5±0.5a 2.0±1.5b 97.5±0.9b 99.3±0.5b 94.5±1.9b 94.8±1.0b 表中のアルファベットはTukeyの多重比較検定により同菌系の異符号間に5%レベルで有意差があることを示す ナノファイバーの利用: 金属ナノ粒子の足場としてのキチンナノファイバー AgNO3 キチンナノファイバー 紫外線照射 還元反応 金属ナノ粒子の足場 トマト褐色輪紋病菌 キチン膜 イネ科斑点病菌 銀ナノ粒子担持キチンNF キチンNF セルロース膜 日本ナシ黒斑病菌 100 μm ナノファイバー処理による病害防除試験 (植物の免疫力活性化) 方法 ・植物にキチンあるいはキトサンナノファイバー、蒸留水(対照区)を処理した。 ・24時間後に各病原菌胞子を接種した。 ・一定時間後に病徴を観察した。 ナノファイバー処理 土壌へ混合 葉面へ散布 ナノファイバー トマト萎凋病 (菌接種3週間後) 水処理(対照区) キチンナノファイバー 0.1% キトサンナノファイバー 0.1% イネいもち病 (菌接種1週間後) 水処理 (対照区) キトサンNF 0.01% キチンNF 0.01% キトサンNF 0.1% キチンNF 0.1% 実用化に向けた課題 メーカーとの共同研究開発 (試作品作製) ・被覆資材 ・養液栽培資材 ・防除資材 ・播種・育苗資材 ・天然性農薬 調査 抗菌性 病害防除効果 植物生長 ナノファイバーの量産化 鳥取大学による大量生産系の構築 キチン(パウダー)グレード、処理回数、 時間、消費エネルギーを考慮した 効率的な製造方法の検討 低コスト化 関連特許 キチンナノファイバーの製造方法 (特許第5186694号) ナノファイバー化したキチン・キトサンによる 植物の病害抵抗性誘導技術 (特願2013-227282) お問い合わせ先 鳥取大学 産学・地域連携推進機構 担当コーディネーター 山岸 大輔 TEL 0857-31-6094 FAX 0857-31-5474 e-mail [email protected]‐u.ac.jp
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