限界に挑戦!高性能1石トランジスタ・アンプの製作

あの教科書の定番「エミッタ接地型」を
低雑音 / 広帯域 / 安定化!
限界に挑戦!高性能1石トランジスタ・アンプの製作
脇澤 和夫(Kazuo
教科書には基本的な回路がいくつも掲載されてい
ますが,その回路の実用例はあまり見かけません.
でも「教科書は教科書だ,実用回路は別物なんだ」
とは思わないでください.教科書に書かれている回路
は基本であり,決して無意味ではありません.
皆さんは,どんな教科書にも載っているあのトラ
ンジスタ 1 個の基本回路「エミッタ接地増幅回路」
を実際に作ってみたことがあるでしょうか?トラン
ジスタや抵抗,コンデンサなど,現実の部品は定数
も特性も理想的ではありません.周辺回路からはた
くさんの雑音が飛び込んできます.
本章では,この超定番 1 石アンプを例にして,高
性能化と実用化の要点を紹介します.
理想形に近づけていくことが「技術」であり,そこ
で得られるものが「技能」です.きちんと動く高性能な
回路は,部品の種類や定数が適切なだけではなく,実
装や組み立てもよくできているものです.本稿が若い
電子回路エンジニアの役に立つことを期待しています.
トランジスタの増幅作用を引き
出すバイアス抵抗(R 1, R 2 )
+12V
カップリング・
コンデンサ(C 2 )
コレクタ抵抗(R 5 )
R5
4.7k C 4 1μ
R1
入力
C 2 1μ
VR 1
50k
R2
33k
入出力ゲイン調整用のアッテネータ
(半固定抵抗器)
R4
C3
2.7k
100μ
エミッタ抵抗(R 4)
AC100V
(60Hz)
センタ・
タップ
時間
D2 1N4002
全波整流された正弦波の
周波数は120Hz(関西)
C1
図 1 本章の例題(1 石アン
プ①)
D3 1N4002
電子回路の教科書でおなじみ
D4 1N4002
電圧
+12V
1000μ
25V
平滑用コンデンサ(C 1 )
の「エミッタ接地増幅回路」
を例に,実用化の過程の一部
全波整流回路(D1∼D4)
始終を紹介する.無信号時コ
レクタ電流は 1.38 mA
(b)電源回路(全波整流平滑回路)
● 教科書の回路はここまで高性能化できる
本章では,どんな教科書にも載っているトランジス
タ 1 石のエミッタ接地増幅回路
(以下,1 石アンプ)を
手に入れやすい部品だけで作りました
(設計の過程は
Appendix を参照)
.電源回路も必要なので合わせて
作りました
(図 1,写真 1).
雑音やゲインの周波数特性などのアナログ性能をチ
2015 年 5 月号
ューニングしたり,基板化したり,シールドしたりし
た結果,ひずみはあまり良くありませんが,良い性能
のアンプに仕上がりました.
▶ビフォー(1 石アンプ①)
●
3
4
7
バイパス・
コンデンサ
(C 3 )
(a)1石アンプ回路
D1 1N4002
2
6
Vout
Tr1
2SC2458
(東芝)
1
5
カップリング・
コンデンサ(C 4 )
出力
100k
Vin
Wakizawa)
イントロダクション
第7章
実用化の
一部始終
ゲイン周波数特性
(− 3 dB カットオフ周波数)
:
56 Hz ∼ 58 kHz
(図 2)
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