カラムの内径を細くする ~セミミクロカラムへの移行

LC Technical Report
Vol.16
2014年01号
カラムの内径を細くする ~セミミクロカラムへの移行~
カラムには様々なサイズがあります。一般的なHPLCでは、内径4.6 mmのカラムが用いられます。内径の細いカラムを用いると、省溶媒化
や高感度化ができるため、内径3 mm以下のカラムの使用も増えてきています。ここでは、汎用カラムの内径4.6 mmからカラムの内径を
細くしたときの、利点と欠点、注意点を説明します。
Keywords カラム内径 カラム径 セミミクロカラム 流速 線速度 感度
試料負荷量 注入量
カラムの内径を細くする
カラムには様々なサイズがありますが、内径によって以下のように分
類できます(JIS K0124:2011より引用)。
内径
10 mm以上、50 mm未満
3 mm以上、10 mm未満
1 mm以上、3 mm未満
1 mm未満
名称
セミ分取カラム
汎用カラム
セミミクロカラム
ミクロカラム
4.6 mm I.D.
内径を細くすると、最適な移動相流速が小さくなります。
Fig.1は、同じLCシステムで移動相流速と理論段相当高さの関
係を示したものです。理論段相当高さは、1理論段数に相当する
カラム長さで、その値が小さいほど、カラム効率が良くなります。
Rs(3,4)=1.077
Flow rate: 1.0 mL/min
3.0 mm I.D.
Rs(3,4)=1.074
Flow rate: 0.4 mL/min
2.1 mm I.D.
Rs(3,4)=1.073
Flow rate: 0.2 mL/min
20
1.5 mm I.D.
18
理論段相当高さ(μm)
Area(5)=6490000
Area(5)=660000
■ 内径を細くしたときの利点 ~溶媒の削減~
1
2
2
4
6
Time (min)
―
―
―
―
14
12
10
4.6
3.0
2.1
1.5
mm
mm
mm
mm
I.D.
I.D.
I.D.
I.D.
0
1.0
(mL/min)
1.5
8
Rs(3,4)=1.068
10
■ 内径を細くしたときの利点 ~感度の向上、試料量の節約~
2.0
[Analytical conditions (Fig.1)]
Sample: Naphthalene (in CH3CN)
Fig.1 移動相流速と理論段相当高さの関係
Table 1 カラム内径と移動相流速
最適流速
5
Fig.2 移動相線速度を同じにしたときの分離度の比較
[Analytical conditions (Fig.1, Fig.2)]
Column: L-column2 ODS, 3 μm; Column size: 150 mm L.
Mobile phase: CH3CN/H2O (60/40)
Temp.: 40℃; Detection: UV 254 nm; Inj.vol. 1μL
System: Nexera (Shimadzu Co.) セミミクロ仕様
内径(mm) 断面積(mm2)
4
[Analytical conditions]
Sample: 1. Uracil; 2. Benzene; 3. Toluene; 4. Impurity; 5. Naphthalene
(in CH3CN)
最適流量
範囲
0.5
3
←
Flow rate: 0.1 mL/min
16
8
0
最適流速は、内径の断面積に比例します(Table 1)。
内径を細くして、最適流速で分析することで、分析からカラム洗浄
や移動相置換を含めた、一連の溶媒使用量が削減できます。
Fig.2は異なる内径の最適流速で分析したクロマトグラムです。異
なる内径の最適流速は、ほぼ同じ線速度(1 mm/sec)になりま
す。移動相線速度が等しければ、保持時間や分離度はほとんど
変わりません。
溶媒削減率※1
4.6
16.61
1.0 mL/min
―
3.0
7.07
0.4 mL/min
60%削減
2.1
3.46
0.2 mL/min
80%削減
1.5
1.77
0.1 mL/min
90%削減
内径を細くすると、感度が高くなります。Fig.2の試料溶媒や注入
量の影響が出ない分析条件において、同じ試料量では、内径
1.5 mmは4.6 mmの約10倍のピーク面積が得られました。
内径の断面積に応じて試料量は少なくできるので、試料量が制
限される分析ではセミミクロカラムが有効です。
カラム内径
10 μL 4.6 mm
10 μL 1.5 mm
試料量
1/10
1 μL
1.5 mm
Fig.3 内径とピーク感度の違い(イメージ)
※1 内径4.6 mmの移動相に用いる溶媒使用量を100%とする
■ 内径を細くしたときの欠点 ~試料濃度と注入量の制限~
内径を細くすると、試料負荷量が小さくなります。
Fig.4は、試料濃度と理論段数の維持率の関係をプロットしまし
た。試料負荷量を超えると理論段数は急激に低下します。この
分析条件では、内径2.1 mmの試料負荷量は4.6 mmの約
1/5になりました。
― 4.6 mm I.D.
Flow rate: 1.0 mL/min
65
*4.6 mm I.D.
50 μg, 100 μg
Inj.vol: 5 μL
― 3.0 mm I.D.
Flow rate: 0.4 mL/min
40
― 2.1 mm I.D.
20
― 1.5 mm I.D.
Flow rate: 0.1 mL/min
0.1
1
10
Injection mass (μg)
100
1000
[Analytical conditions (Fig.4, Fig.5, Fig.6)]
Column: L-column2 ODS, 3 μm; Column size: 150 mm L.
Mobile phase: CH3CN/20 mM H3PO4 in H2O (50/50)
Temp.: 40℃; Detection: UV 280 nm;
System: Nexera (Shimadzu Co.) セミミクロ仕様
[Analytical conditions (Fig.4)]
Inj.vol: 1 μL (in Mobile phase)
Sample: n-Propyl p-Hydroxybenzoic Acid
Fig.4 試料濃度と理論段数の関係※2
4.6 mm I.D.
2.1 mm I.D.
Flow rate: 1.0 mL/min
Flow rate: 0.2 mL/min
N(4)=47%
50 μg
N(4)=58%
N(4)=94%
10 μg
0
N(4)=96%
10 μg
1
2
3
2
4
Time (min)
N(4)=97%
4
0.1 μg
6
N(4)=79%
5 μL
1
1 μL
2
3
N(4)=100%
4
2
4
Time (min)
1
1 μL
6
0
2
3
N(4)=100%
4
2
4
Time (min)
6
[Analytical conditions]
Inj.mass: 0.5 μg (in Mobile phase)
Sample: 1. 4-Hydroxybenzoic Acid; 2. Methyl p-Hydroxybenzoic Acid;
3. Ethyl p-Hydroxybenzoic Acid; 4. n-Propyl p-Hydroxybenzoic Acid
Fig.6 注入量とピーク形状の比較※3
■ 内径を細くしたときの注意点
Flow rate: 0.2 mL/min
0
0.01
Flow rate: 0.2 mL/min
5 μL
0
1
2
3
L-column シリーズのカラムは、高度な充填技術により均一に充
填しています。理論上、カラムの内径にかかわらず、理論段相当
高さは同じです。しかしFig.1のように、同じLCシステムで比較した
場合、内径が細いほど、カラム効率が低くなってしまいます。これは
カラム容積に対して、フィルターや配管などの試料拡散の要因とな
るデッドボリュームの割合が大きくなるからです。そのため内径を細く
したときは、デッドボリュームを少なくする工夫をします。また内径の
細い方が、最適流速の範囲が狭いことも分かります。このため、低
流速での送液ポンプの正確性が再現性に影響します。さらにセミ
ミクロカラムは試料注入量が少ないため、注入の正確性も重要な
ポイントです。
システムの最適化は、「LC Technical report Vol.08 移動
相使用量の削減」も併せてご覧ください。
■ 参考 カラム圧力
移動相線速度が同じならば、カラム圧力は同じですが、LCシステ
ムの配管の影響があるため、理論値と異なることがあります。
N(4)=100%
2
4
Time (min)
4
6
[Analytical conditions]
Inj.vol: 1 μL (in Mobile phase)
Sample: 1. 4-Hydroxybenzoic Acid; 2. Methyl p-Hydroxybenzoic Acid;
3. Ethyl p-Hydroxybenzoic Acid; 4. n-Propyl p-Hydroxybenzoic Acid
25
カラム圧力(MPa)
理論段数の維持率(%)
80
2.1 mm I.D.
Flow rate: 1.0 mL/min
0
100
0.1 μg
4.6 mm I.D.
20
15
5
Fig.5 試料濃度とピーク形状の比較※2
試料負荷量を超えるとピークが歪みます(Fig.5)。不純物分析な
ど、主成分が高濃度の場合、主成分と不純物の分離度が不十
分になる場合があるので、試料濃度には注意が必要です。
内径を細くすると、注入量の影響を受け、ピーク形状が悪くなるこ
とがあります(Fig.6)。注入量はなるべく少なくします。
―
―
―
―
10
0
0
0.5
1.5
2.1
3.0
4.6
1.0
(mL/min)
mm
mm
mm
mm
1.5
I.D.
I.D.
I.D.
I.D.
2.0
[Analytical conditions]
Column: L-column2 ODS, 3 μm; Column size: 150 mm L.
Mobile phase: CH3CN/H2O (60/40); Temp.: 40℃
System: Nexera (Shimadzu Co.) セミミクロ仕様
Fig.7 移動相流速とカラム圧力の関係
※2 0.02 μgを注入したときの理論段数を100%とする
※3 1 μLを注入したときの理論段数を100%とする
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