散薬抗がん剤による環境汚染対策―飛散防止と散薬分包機清掃法の検討- 永井 浩章、愛甲 祐太朗、廣瀬 佳未、高本 晃子、福田 兵庫県立こども病院 光次郎、中山 朝恵、赤松 淳司、籾井 規子、合田 佳奈、池田 泰志、福井 絵里佳、三輪 由美子、西本 哲男 薬剤部 【目的】 散薬抗がん剤の調剤では、周囲への飛散による環境汚染や調剤機器への残存による他患者 の薬剤への混入が問題となるが、その実態や対策についての検討は少ない。そこで 6-メル カプトプリン水和物散 10%(6-MP)調剤時の飛散防止対策と散薬分包機の清掃法について検 討した。 【方法】 [1]飛散防止対策:サンプリングシート(シオノギ分析センター)を設置し、業務時間内に 飛散した 6-MP を定量した。6-MP は安全キャビネット(BSC)内で秤量し、容器に入れて取出 し、散薬分包機で分包した。調剤時に使用する容器の蓋の有無による 6-MP の飛散量の違 いを検討した。 [2]分包機清掃法の検討:6-MP 100mg 分包後、清掃剤として倍散用結晶乳糖(乳糖 EFC)、 結晶乳糖、重曹のいずれか 10g で 2 回又は 4 回分包した。その後乳糖 EFC 10g を分包し、 その 1g 中に混入した 6-MP を定量し清掃効果を比較検討した。 【結果】 [1]蓋なし容器検討時の 6-MP の調剤量は 953mg/8 件で、6-MP 量(/100cm2)は、BSC 内 9931ng、 BSC 外 1677ng であり、調剤場所から離れた地点では検出限界(200ng)以下であった。蓋あ りの時 6-MP の調剤量は 1280mg/10 件で、6-MP 量(/100cm2)は、BSC 内 9480ng、BSC 外 580ng であった。 [2]乳糖 EFC 1g に混入した 6-MP は、清掃なし 408.3μg、乳糖 EFC×2 回 7.6μg、乳糖 EFC ×4 回 3.8μg、結晶乳糖×2 回 5.8μg、結晶乳糖×4 回 5.6μg、重曹×2 回 21.1μg、重 曹×4 回 21.1μg であった。 【考察】 [1] 6-MP の飛散は BSC、散薬分包機周辺でのみ検出された。蓋付容器の使用により BSC 外 の 6-MP の飛散は約 1/3 に低下し、飛散防止に有効であることが示唆された。 [2]今回検討した清掃剤全てで同等の清掃効果が得られたが、乳糖 EFC×4 回が最も清掃効 果が高かった。 【結論】 6-MP の飛散防止には BSC に加え蓋付容器を使用することが有効であり、散薬分包機を乳糖 EFC で清掃することが汚染防止に有効であることが明らかとなった。
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