DDW-Japan 2001 Kyoto DDW-Japan ランチョンセミナー 潰瘍性大腸炎での 活動期治療の工夫とより良い 緩解維持療法を求めて 日時:2001年10月17日(水) 場所:国立京都国際会館 RoomA 第2会場 CONTENTS 〈座 長〉 日比紀文 先生 (慶應義塾大学医学部内科学 炎症性腸疾患センター) 演題1 ステロイド抵抗性・依存性潰瘍性大腸炎の内科的治療の工夫……………2∼3 浜松医科大学 光学医療診療部 花井洋行先生 演題2 潰瘍性大腸炎の重症難治例に対する内科治療とその限界…………………4∼5 東京女子医科大学 消化器内科 飯塚文瑛先生 演題3 緩解導入しえた難治例に対する緩解維持療法の工夫………………………6∼7 慶應義塾大学病院 消化器内科 長沼 誠先生 総合討論………………………………………………………………………8∼11 総合討論まとめ……………………………………………………………………11 慶應義塾大学医学部内科学 炎症性腸疾患センター 日比紀文 先生 ステロイド抵抗性・依存性潰瘍性大腸炎 の内科的治療の工夫 浜松医科大学 光学医療診療部 潰瘍性大腸炎(UC)の治療目標は症状と粘膜炎症の 1.ス テ ロ イド 抵 抗 症 例 に GMCAP がど の 程 度 有 効 か? 緩解導入と長期緩解維持にある。その治療は薬物治療 が主体でペンタサ、サラゾピリンといった抗炎症剤と 花井洋行 先生 2.ステロイド依存症例にも有効か、ステロイド離脱は 可能か? ステロイドが基本的治療薬である。これらの治療で緩 解導入出来ない場合には CyA(Cyclosporin A)の静注 3.効果の低い症例はどんな特徴を有するか? 療法が試みられている。しかし、ステロイドも CyA も 4.GMCAP をいつ、どのように用いるべきか? その副作用が問題となる。 効果の評価として臨床症状の改善を Rachmilewitz の また、緩解導入に成功してもステロイドの tapering CAI で4以下となったものを緩解とし、CAI は4以下ま の際に再燃したり、漫然とステロイドの長期服用を強 でにはならなかったが DAI, Matts の activity index いられて副作用に苦しんでいるステロイド依存性の患 も共に改善したものを有効とした。 者には combination therapy としていろいろな工夫 GMCAP の施行の仕方は全例2クールを行い、激症 例、重症例の一部は一週間に2回行い、それを3週間続 が必要となる。 これらの場合に、免疫抑制剤の上手な利用や白血球 除去療法が新しい治療として注目を集め、効果をあげ 行した。2クール目は保険適応内の残りの5本のカラ ムを一週間に1回ずつ用いた。 ている。顆粒球・単球除去療法(GMCAP)を56名の 患者に試みた。内訳は男性29例、女性27例、平均年 ステロイド抵抗性症例 齢32.8歳。全大腸炎型46例、左側大腸炎型10例。再 ステロイド強力静注療法、PSL60mg/day 以上を1 燃緩解型33例、慢性持続型13例、急性激症型6例で 週間以上、または経口 PSL30mg/day 以上を2週間以 ある。 上投与しても充分な効果が認められない患者31例に 以下の4項目に対して重症例、激症例、難治例の潰 GMCAP で緩解導入を試みた。強力静注無効例の場 瘍性大腸炎の GMCAP の効果の可能性と限界を探っ 合、1クールでは35.7%のみの緩解導入率であるが2 てみた。 クール後には71.4%の患者が緩解導入に成功してい る。全体では80.6%が緩解導入されている。 表1 表2 GMCAPの“臨床経過別”効果 CAIの変化 Acute fulminating 17.8→3.4 N:6 Relapsing -remitting N:33 12.6→2.6 Chronic continuous 12.1→3.6 N:13 2 GMCAPの“ステロイド反応別”効果 CAIの変化 緩解導入率 Mattsの変化 緩解導入率 Mattsの変化 83.3% (5/6) 90.9% (30/33) 69.2% (9/13) 3.9→2.3 1.6 3.6→1.9 1.7 3.3→2.5 0.8 iv Steroid N:14 Refractory N:31 oral N:17 Steroid Dependent N:18 Steroid Naive N:7 16.7→3.2 12.7→2.4 10.9→1.8 9.8→0.3 71.4% (10/14) 88.2% (15/17) 90.9% (15/18) 85.7% (6/7) 4.0→2.3 1.7 3.5→2.2 1.3 3.3→1.9 1.4 3.4→1.9 1.5 ステロイド依存性症例 要約として ステロイドが有効ではあるが減量中に再燃した18名 1.ステロイド抵抗症例に対して GMCAP の使い方を に緩解導入とステロイドの減量ないしは離脱を目的と 工夫すれば CyA の静注療法に比して遜色のない効 して用いた。維持療法はステロイドから6MPまたは 果を得ることが可能であった。 AZA への replacement を試みた。15名(83.3%)が 2.ステロイド依存症例の緩解導入にも有効であり、緩 緩解導入され、現在、3例がステロイド離脱が可能とな 解維持療法の仕方によってステロイド離脱も可能で っている。10名が PSL10mg/day 以下に減量できた ある。 が2名が再燃(緩解導入後平均観察期間8.8ヶ月)して 3.GMCAP の効果は重症度に規定されるというより いる。18例の再燃時の平均 PSL は17.2mg/day で緩 は慢性持続型の臨床経過の長い type に効果が低 解導入成功例の現在の PSL 平均使用量は6.0mg/day い傾向が認められた。 4.GMCAP は重症、激症例にも副作用が少なく、十分 である。 効果があるがそれ以前の段階で用いるとさらに緩 解導入を高めると同時に、早い効果が得られる。 ステロイド未使用例 7名のステロイド治療を拒否する患者にステロイド GMCAP と免 疫 抑 制 剤 の combination therapy 等 の使用を一切行わないでいきなりこの GMCAP 治療を の 内 科 的 治 療 の 工 夫 により UC の natural history を 行った。6例緩解導入に成功し、1例が有効であった。 変えうるか否かは興味のあるところであるが、さらな この緩解導入に成功した6例は全て1クール目で緩解 る長期観察が必要と考える。 導入されている。しかし、1名が再燃している。 表3 表5 評 価 GMCAPの“重症度別”効果 CAIの変化 Fulminant N:9 21.0→2.7 Severe N:29 14.3→3.9 Not severe N:18 7.1→0.7 GMCAPによる改善効果をClinical Activity Index (CAI)1)、Ulcerative Colitis Disease Activity Index (DAI)2)、Mattsの内視鏡的重症度分類3)、および臨床 的重症度分類4)で検討した。CAIが4以下となったもの をremissionとし、CAIは4以下には達しなかったがCAI、 DAI、Mattsの全てが改善したものをeffectiveとした。 緩解導入率 Mattsの変化 88.9% 4.0→1.9 2.1 (8/9) 75.9% (22/29) 94.4% (17/18) 3.7→2.4 1.3 1)Rachmilewitz D Br Med J; 298: 82-86, 1989 2)Sandborn WJ AM J Gastroenterol; 88: 640-645, 1993 3.1→1.6 1.7 表4 3)Matts SGF Quart J Med; 120: 393, 1961 4)厚生省特定疾患難治性炎症性腸疾患障害調査研究班 1994 図1 GMCAPのステロイド反応別緩解導入率 6MP,AZAを使用するときの注意 1. 薬効を認めるまでに時間がかかる。 NEJM No.of Month No.of Patients Cumulative per Cent(%) ≧1 2 3 4 5 ≧6 4 19 5 5 2 6 10 56 68 81 85 100 ステロイド抵抗性 % 100 Total n:31 90 70 60 22.6 50 40 41.5 30 2. 6MPを非活性物質に代謝する酵素TPMTに 遺伝子多型がある。正常 89%, hetero 11%, 酵素欠損(AR)0.3% Clin Pharmaco Ther 5.9 88.2 6.2 80.6 80 ステロイド依存性 n:18 強力静注無効例 経口PSL無効例 n:14 n:17 7.0 71.4 23.5 ステロイド未使用 n:7 11.1 22.2 83.3 14.3 14.3 85.7 85.7 61.1 21.4 47.1 35.7 20 10 0 2 1 クール クール 1 2 1 2 1 2 :緩解導入例 1 2 :有効例 3 潰瘍性大腸炎の重症難治例に対する 内科治療とその限界 東京女子医科大学 消化器内科 飯塚文瑛 先生 ら GCAP やサイクロスポリン持続静注療法の併用が加 <難治性潰瘍性大腸炎の分類> 難治例は、治療薬への反応と臨床経過から A ∼ C に分 わり、また表 1 の B,C 例の慢性活動期に対し6 MP、ア 類される。当科に1994年(ステロイドパルス療法開始 ザチオプリンなどの免疫抑制薬の併用が基本治療とな 年)から2002年までの8年間に IVH が必要で入院した症 っている。 ( 表 2、3) 例84例中、48例が難治例でこれらの症例の経時的変化 を検討すると、ある時点で B,C であった例も、次の再燃 で B から A へ、C から B や A へ移行している。 (表 1) <治療への反応> GCAP が登場してから、脱血の危険、困難な大出血 当科における重症難治性潰瘍性大腸炎(急性期)の基 例を除いて、先ず GCAP が施行されている。ステロイ 本治療(2000∼2001年)を表に示す。現在の厚生省班 ドパルスは、GCAP 施行の困難例や無効例と、より重 会議治療指針では、重症例の治療は強力静注療法1∼2 症者に行うようになり、その有効率は、GCAP 併用前後 週で軽快しなければ、手術を選択することが勧められ で50%から30%へと低下。GCAP を選択しなかった ている。当科では、8年前から手術にいたる前の治療法 症例の多くがステロイド抵抗例、不応例となっている。 として、1994年からステロイドパルス療法、1997年か これらの症例には、サイクロスポリン持続静注療法が施 表1 表3 ステロイド 難治性潰瘍性大腸炎の分類 免疫抑制薬 A.プレドニン div p.o A:ステロイド抵抗症例 絶食、抗生剤、 プレドニゾロン1mg/kg静注療法に 速やかに反応しない症例(重症) サイクロスポリン持続注入 4mg/kg/日 持続DIV×1∼2週 血中濃度 400∼600ng/ml 漸減法:活動度と治療の反応に応じて 10mg/1∼2週 ∼30, 40mg/日 5mg/2∼4週 ∼20, 30mg/日∼ * B:ステロイド依存症例 *ACTH, Cortisol測定 緩解導入に際し、 ステロイド漸減でプレドニゾロン内 服30∼20mg/日で増悪する症例(中等症) C:ステロイド離脱困難例 慢性持続期* B.メチルプレドニンパルス 6-MP 30∼50mg/日 アザチオプリン 50∼100mg/日 サイクロスポリン 50∼200mg/日 劇症、重症急性期 1g/日×3日→悪化ならA×4日 C.プレドニゾロン注腸 緩解導入後のステロイド漸減でプレドニゾロン内服 10mg/日∼中止で再燃する離脱困難症(軽症) 表2 40∼10/20mg *ステロイド依存症 ベタメタゾン坐薬 1.0mg/個 0.5mg/個 表4 重症難治性UC(急性期)の治療2001 スコア:0∼9 UC TPN+広域抗生剤+5-ASA PSL 1mg/kg DIV メチルPSLパルス 1g/日×3日/週 or 内視鏡的活動度 =A+B+C PSL 1.5mg/kg DIV GCAP サイクロスポリン 4mg/日持続DIV 手術 *1週以内に治療効果を評価し、次の治療を予定する 4 重症急性期 重 症 1mg/kg/日∼ 中等症 0.8∼0.5mg /kg/日∼ スコア 3 2 1 0 A 易出血性 3+ 2+ + − 深さ 3+ 2+ + − − + 2+ 3+ B 潰瘍 密度 C 血管像 行され、7/10例が有効。ステロイド依存例から抵抗 坦化している。図 2 は、同症例の1年後の再燃時 GCAP 例となった難治例には、現在どの内科治療への反応も 開始が遅れ、再燃後6週目からとなると、反応が悪く、 不良という症例がある。 5回終了後も PP 部は発赤、腫脹を認めた。 < IVH 時のステロイド大量投与に際しての注意点> <GCAP の有効性の判定−2回治療終了後、 3週目に可能> ①蛋白異化を軽減する為、カロリー、窒素を通常体重あ 内視鏡所見を表 4 の評価法(Iizuka’ s CSAI) 0−9点の たり必要量の1.6∼1.7倍投与。②耐糖能異常にインスリ 10段階法を用い、経時変化を数量化して示す。図 3 の ン投与で対処。③感染症併発の予防のため、広域抗生剤 ように、有効例は、その兆しが3週目に判定可能な患者 (抗嫌気性菌、抗好気性菌)の投与で腸内菌を死滅させる。 が多かった。 ④絶食時の胃酸分泌亢進に対して H2 blocker PPI を用 いる。⑤情動不安を軽減すべく、精神安定剤を併用。 < GCAP5 回より 10 回の方がより緩解導入率が高い> 再燃防止効果はないが急性期活動期を充分に抑えた <ステロイドの漸減法とそれに有用な併用療法> 症例の方が緩解期間が長い。 ステロイド依存例が再燃しにくい漸減方法。全身投与 の長期多量を減らし、局所療法、GCAP、免疫療法の併用 をうまく行う。 <相対的手術適応> 年2回以上の再燃が2年以上続く頻回再燃例、長期間 活動性が続く症例は、大出血や colitic cancer( 未分 < GCAP は、再燃の急性期に行う。タイミングが大事> 図 1 の写真は、ステロイド増量後4日目から GCAP 化、進行が速い、慢性活動期型では、発見困難な為)を 併発する前に手術を考慮する必要がある。 を 併 用し 有 効 。7 週 終 了 後 、pseudopolyp (PP)が平 図1 図3 図2 Colonoscopic Scoring Activity Index (CSAI) Changes in CSAI of patients with UC (n=8) associated with GCAP therapy 9 Case 1 8 Case 2 Case 3 7 Case 4 6 Case 5 5 Case 6 4 Case 7 3 Case 8 2 1 Baseline 3 weeks 7 weeks CSAI = colonoscopic scoring activity index 5 緩解導入しえた難治例に対する 緩解維持療法の工夫 慶應義塾大学病院 消化器内科 長沼 誠 先生 重症潰瘍性大腸炎の治療法としては従来のステロイド強 ヶ月緩解維持が可能で、現在最高で約2年の緩解維持が 力静注療法以外にステロイド動注・パルス療法、さらにシ 可能な症例が存在している。一方3例が肝機能障害、発 クロスポリン持続静注療法や白血球・顆粒球除去療法の 熱、発疹のため中止を余儀なくされたが、薬剤の中止、適 有効性が近年報告され、従来手術適応であった重症例で 切な治療によりすべて改善した副作用であった。 も緩解導入される症例が増えてきた。しかしステロイド減 近年シクロスポリンAにより緩解導入された症例に対 量中に再燃するステロイド依存例に対する治療法や、緩解 し、その後緩解維持療法として6-MP、アザチオプリンの 導入された後の維持療法についてはいまだ確立されたも 有用性が確認されてきている。花井先生のデータでも顆 のがない。 粒球除去療法後の6-MP、アザチオプリンによる緩解維 我々の施設ではステロイド離脱困難例・緩解維持に対し 持率は高いようなので、今後ステロイドのみならずこれら 1.6-MP、アザチオプリン、2.顆粒球除去療法、3.メサラ 免疫統御療法による緩解導入後の治療法として検討され ジン注腸、などの治療をおこなっている。これら3種の治 てもよい薬剤と思われる。また炎症性腸疾患に対して免 療法の有用性と問題点について検討した。 疫抑制剤を使用する際の注意点を以下に示す。 (1)潰瘍性大腸炎に対する6-MP、アザチオプリンは緩解 1.6-MP、アザチオプリン 維持・ステロイド減量効果に対して効果を発揮するのであ 潰瘍性大腸炎に対する6-MP、アザチオプリンのステロ って、重症例・激症例に対して効果は期待できない。した イド減量効果、緩解維持効果については、クローン病のよう がって重症例に他の治療が効果がない場合に本治療を試 な meta-analysis はないが、欧米のRCT(Randomized みても効果がないばかりか、手術のタイミングを遅らせ Controlled Trial)で有効性が報告されている。潰瘍性 ることにもなり、むしろ害になることに注意する必要があ 大腸炎に対して、現在6-MP/AZA は保険外適応の薬剤で る。 あるが、本邦でも有効性を確認するために、ヒューマンサ (2)治療効果がみられない場合、投与量が少ないのか、他 イエンス事業による多施設共同研究による AZA の緩解維 の治療を考慮する必要があるのかを判断する必要がある。 持効果を検討した。その結果26例中22例が6ヶ月治療継 最近6-MP の代謝産物である6-TG を測定することが、投 続可能であったが、うち20例90%の症例が少なくとも6 与量の増量、薬剤の変更をする上で有効であることがク 表1 表2 ステロイド依存例・ 緩解維持に対する治療の工夫 1 免疫抑制剤(6-MP・AZA) 多施設共同研究(ヒューマンサイエンス事業)による 潰瘍性大腸炎に対するAZAの緩解維持効果 AZA 50mg/day Remained 22 Relapse 2 26 Patients 2 顆粒球・単球吸着療法 Remission 20 (6 months) Withdrew 4 (1 mo., 2 mo.) 3 5-ASA(ペンタサ)注腸療法 3 Patients : Side effects 1 Patient : Patient demanded to discontinue the study 6 ローン病では報告されているが、潰瘍性大腸炎では否定 たところ、シクロスポリンは約半数の症例で緩解導入が 的な論文もあり、一定の見解は得られていない。 可能であったが、顆粒球除去療法は80%の症例で効果が (3)免疫抑制剤の治療期間の設定については、study は ないことが示された。したがってこのような内視鏡像を ないので難しい問題であるが、我々の施設では患者さん 呈する症例は GCAP は効果が期待できないことが考えら の結婚・出産などを考えながら中止時期を検討している。 れた。 (4)副作用の問題は保険外適応の薬剤であることより、患 3.メサラジン注腸 者さんに充分説明をする必要がある。 すでに欧米では遠位潰瘍性大腸炎に対する有用性が報 告されているが、我々の施設では経口ステロイドやステ 2.顆粒球除去療法 顆粒球除去療法が昨年2000年4月より重症・難治性潰 ロネマ抵抗例やステロイド依存例に対してメサラジン注 瘍性大腸炎に対して保険適応となり、多くの施設で活動 腸を試みている。経口ステロイド減量中に再燃した5例中 性潰瘍性大腸炎に用いられているが、緩解維持やステロ 4例でメサラジン注腸によりステロイドの再増量を防ぐこ イド依存例に対する有効性については不明である。我々 とができた。また注腸前ステロイド減量困難であった14 はステロイド離脱困難例に対して本治療を用いた。8例全 例は、注腸をきっかけに全例ステロイドの減量が可能とな 例治療前の経口ステロイドが10mg 以上の症例で、血便・ った。 下痢などの症状を有する症例であったが、本治療により 以上当院にて行っているステロイド依存例・離脱困難例 8例中5例が週1回、計5回の段階で緩解導入が可能であ に対する治療について紹介した。今後、ひとりでも多くの り、全例でステロイド減量が可能であった。 患者さんが長期緩解維持できるよう治療の工夫をしてい しかし内視鏡的に縦走潰瘍を形成する症例、広範な粘 きたいと考えている。 膜脱落がある症例について、本治療法の有用性を検討し 表3 表5 縦走潰瘍や広汎な粘膜欠損を認める UCに対するCsA及びGCAPの効果 潰瘍性大腸炎に対し6-MP/AZAを 使用する際の注意点 1 緩解維持・ステロイド減量効果に対し威力を発揮する →重症例・激症例に対しては効果は期待できない Remission 20% deep ulcer Unchanged 80% 2 治療効果がみられない場合 →投与量が足りないのか、6-MP/AZAに抵抗例なのか 代謝産物(6-TG)の測定? 3 いつまで投与を行うのか →決まった見解はない(一生?3-4年) GCAP CsA 8% wide-ranged mucosal defect Responded 44% Remission 50% 4 副作用の問題 表4 表6 ステロイド依存例に対するGCAPの効果 メサラジン注腸の効果 症例 罹病 期間 過去4Wの ステロイド量 結果 ステロイド量 の推移 治療目的 1 53F 2 23F 3 40F 4 36F 5 50F 4 4 5 4 10 300 600 320 600 375 Remission Remission Remission Remission Remission 10→5 20→4 10→5 20→5 10→5 経口PSL 減量中に再燃 5 6 27F 7 28M 8 35M 4 4 8 375 450 720 Responded Responded Responded 12.5→7.5 15→7.5 25→10 注腸前1ヶ月以上 PSL減量困難 14 ステロネマ抵抗性 14 結 果 → → → 注腸により再増量せず 4 全例でPSL減量可能 著効 2例 有効 10例 7 DDW-Japan 2001 ランチョンセミナー 総 合 討 論 日比教授 では、20分間総合討論をしたいと思います。 大きく4つに分けさせて頂きます。 (1) まず、ステロイド抵抗例 同じだという考えもありまして、パルスを選ぶ意味はあるのか、 に対して、特に重症な症例に対してどんな治療法を選んでいく という考えもあるかと思うのですが。 か。そして、GCAP を使う場合の使い方、 1クールなのか 2 クー 長沼先生 ルなのか。 (2)2番目の問題は、ステロイド依存例、これに対する 択肢だと思うのですけども、投与経路が違うという意味では、む steroid sparing effectをねらう場合に、 どういう方法を選ぶべきか。 しろ動注療法、あるいは、最初からCyAという選択肢があって (3)3 番目、これはちょっと時期尚早かもしれませんが、白血球 も良いのではないか。その方が早く手術のタイミング等が解る ステロイドに関して言いますと、パルスも一つの選 除去療法というものが、ステロイド療法に変わりうる治療法にな のではないかと思います。 るのか。 (4)4番目は、緩解維持療法。何が一番緩解維持療法に 日比教授 確かに保険適応の問題がありますけども、CyAが許 最適か。白血球除去は果たして緩解維持に使えるのかどうか。 されるのであれば全てCyAですか? という4つの問題について順番に討論したいと思います。 長沼先生 いえ、データには示してないのですが、副作用の問 (1)では、まず 1 番目の問題ですが、結局ステロイド抵抗例 題もやはり考えていかなければいけません。ですから、今、示 というのは、いろんな意見はあるでしょうけれども、5 日間強力 したデータでGCAPが最初から効かないと予測されるような症 静注療法をやって、改善のみられないものとしますと、普通は 例が、うちではありますので、そういう重症な症例に限って CyA 手術をすべきだという考え方ではあります。 を使うべきだと考えます。 その際に他に何か選択肢はあるかということで、いろいろな 日比教授 花井先生、いかがですか? 考え方が出て参りましたが、花井先生は重症例を含めてGCAP、 花井先生 はい、今回はどこまでGMCAPで可能かという例を 飯塚先生は強力静注後、パルスか GCAP がダメであれば CyA 出したのであって、ステロイド抵抗例の重症、劇症例に対して を考える。長沼先生は緩解維持が中心でしたが、どちらかとい CyAよりも良いわけでなくCyAに比して遜色はないという結果 うと重症例はCyA、中等症以下だったらGCAPというところかと です。使い方では、お示ししたような効果を出します、というこ 思います。では最後はみなさん結論は同じだと思いますが手術 とです。 へのタイミングを考えなければいけない。ただ、だらだらステロ CyA の切れ味の良いことは、私も7 割という緩解導入率を持 イドでひっぱればいいものではない、ということかと思います。 っているので存じています。ですから短期に勝負をしなければ まず、花井先生の御意見で、重症例でもGCAPを使って頻回に いけないという時には、GMCAPを1週間に2回を3週間位やる やれば大丈夫だということでしたが、飯塚先生いかがですか? と言う方法を取ります。ただ、CyA に関しては基本的に副作用 飯塚先生 の問題があります。ある報告では自己免疫疾患の患者にCyAを 私の経験からも、ステロイド依存症になっていない 症例であれば、早期にGCAPを行えば効く可能性があると思い 使う前後で、腎生検をやって 21%に尿細管障害、間質性腎炎、 ます。重症例では、脱血が困難でなく循環動態が安定している 細動脈萎縮などが生じるという報告があります。 症例において、ステロイド治療に併用する、という条件がつくと 日比教授 それがその患者の予後にどの位影響を与えるかということは 分かりませんが。それともう一つは易感染性の問題という点と、 思います。 大出血の症例は、手術の絶対的適応になってしま 一般市中病院でなかなか広がっていかない治療法であるとい いますけれども、常に出血が続いていて、貧血がある症例はパ う点です。しかし、GMCAP は副作用がほとんど無く、ステロイ ルスをやりますか。 ド抵抗性の重症例、劇症例に対してもこの位の効果があるとい 飯塚先生 パルスもしくは、大量ステロイドで副作用を起こしや う意義は大きいと思います。CyA が効くことは十分承知してお すい症例についてはいきなりCyAという治療もあります。 ります。 日比教授 日比教授 CyAは一般の病院では、血中濃度が測れないので 先生としては PSL に抵抗する症例に関しては、 すがその場合はどうしましょう? GCAPなどの白血球除去療法を積極的に行うということでよろ 飯塚先生 しいでしょうか。例え重症例であろうと…。 血中濃度がある一定区域値内にないといけない治 療なので、濃度が測れないところでの治療は無理です。 8 日比教授 一般的な考え方としてパルスというのは強力静注と 花井先生 今回お示ししたように、1週間に2回∼3回位を3 週 位やっていいのであれば、充分効果があると思います。 いつかはステロイド抵抗例へと変遷してゆく、そのサイクルにな 日比教授 だから、手術はまだその時点では考えない? ってしまいます。 花井先生 その方の病歴やバックグラウンドによります。 日比教授 確かにステロイドを維持療法で使用するというのは 日比教授 個人差はあるけれども、いわゆる教科書的に5日間 ほとんど行わなくなってきた。5 − ASA 製剤の、サラゾピリンと 強力静注を行い、無効であってもそこですぐ手術ではないとい かペンタサで十分コントロールできればいいんですが、ステロ うことですか? イド依存例というのはなかなか難しいと思います。ステロイドの 花井先生 はい、大量出血等あれば別ですが。 少量、15mg 位でいいのだけど、減らしていくとダメだという場 日比教授 合の steroid sparingをはかるには、免疫抑制剤が一つの選択 会場の方で、すぐ手術という方はいらっしゃいませ んか?飯塚先生、如何ですか? 肢ですが、このような場合、白血球除去療法は花井先生のご経 飯塚先生 今これだけ新しい治療の選択肢が出てきて患者さ 験ではいかがですか。LCAPの方では、症例数が少なくて結局 んたちも情報を知っている段階で、強力静注5日間が無効なの 差が出なかったんですね。もう少し症例数があれば、差が出た で、即手術、と言って納得される方はかなり少ないだろうと思い かもしれませんが、どうでしょう? ます。また、CyAを絶対に選べないのは、腎不全の方や妊娠希 花井先生 望の女性ということです。 ということなのですが、基本的には、今、7例に対して2週間に1 日比教授 白血球除去療法は妊娠とは関係ないと思いますか? 度の維持療法を行っています。7例の観察期間の平均は7ヶ月 飯塚先生 くらいになると思いますが、全例現時点で緩解維持が続いてお 循環動態さえ良ければあまり副作用が無く、どなた 維持療法における白血球除去療法の効果はどうか にも使えると思います。 ります。ステロイドが全くフリーになった人もいますし、ただ、1 日比教授 年後の再発をみてみないと、分からないのですが。 大体その様な考え方になっていますね。白血球除 去療法はまだ海外にはありませんから、日本だけですが。ステ 日比教授 可能性は有り得るということですね。 ロイド抵抗例に対しては、白血球除去療法か CyAを試み、無効 花井先生 その中に 6-MP を併用している人もいます。また であれば手術を考慮すると結論してよいでしょうか。 6MP 単独群もfollowしています。もう少し、併用例と単独例と 2 番目にステロイド依存例ですね。依存例に対して一番ポイ 比較出来るくらいの症例が集まればそれなりの結論が出ると思 ントになるのは、steroid sparing effectがあるかどうかというこ います。 とですが、その選択肢として何があるか?まず長沼先生から。 日比教授 もう一つ先生は全例 2 クールやられるということで 長沼先生 若い女性や妊娠希望とか、そういう条件がなければ すか?以前、ペンタサでもそうだったのですが、当初の常用量の 6-MP/AZAというのは特に少量であれば副作用、特に重篤な 1.5 倍使わなければならないということになりました。それと同 副作用も頻度は多くないですし、コストも高くないので色々な意 じように白血球除去療法は、全て 2 クールの方が良いというこ 味で、6-MP / AZAは良いのではないでしょうか。あと、顆粒球 とになるのですか? 除去療法も回数がもう少し多ければ、うまくいく症例もあります 花井先生 臨床所見が改善し、CAIが0か1,2になっても、内視 のでそういうチョイスもあると思います。 鏡所見がそれにつれて、みな良くなるかといえばそうではない 日比教授 飯塚先生どうですか? わけですね。内視鏡所見の良くなるところまで、できる限り 飯塚先生 6-MPによって起きた白血球や血小板の減少症例と GMCAPをやってみたいと。 か、骨髄抑制の副作用の症例が出たり、たまたまかもしれませ 日比教授 んが 6-MPを 1 年間続けた後に colitic cancer が発見された症 塚先生もそうですか? 例があったりと、malignancyを併発し易くならないか、あるいは 飯塚先生 強い副作用を起こさないかという事についてはまだまだ疑問が 30mgくらいで再燃してしまう症例の場合、GCAP5 回だけでは あり、多くの症例を長期間経過観察しないと安全に使えると言 ステロイドの減量も充分でなく、治癒効果も不充分です。目標 い切れません。 としては、ステロイドを5mgぐらいまで漸減すること。ステロイド 日比教授 長期間使用でも安全であるとの成績を示している を漸減しながら内視鏡的治癒像に近づけるには、最低2クール のは、Mount Sinai病院のグループだけですが、花井先生いか 必要。2クール行うと、患者さんも私達も有効と思える症例が増 がですか? えています。 というとすべて 2 クールになってしまいますか。飯 そうですね。ステロイド依存例で、ステロイド 20 ∼ はい、私も基本的に維持療法は 6MP/AZA を主に 日比教授 長沼先生も同じですか? やっております。ステロイドの維持療法というのは、効くから使 長沼先生 ほぼ同じですが、うちで先程示した症例、依存例 8 いたくなるのですけれどステロイド依存症を助長する。そして、 例は、5回の段階のデータです。ステロイドが完全に切れていな 花井先生 9 10 いです。実際に後5回追加して、ステロイドが離脱できている症 待は持ちます。大量のステロイドで依存するようになってからで 例があるわけです。 はGCAPを2 クールやっても効き難いです。 日比教授 では、本当は、ずっと続けてやってもいいということ 日比教授 長沼先生どうですか? ですか。何か、他に御意見ありますか。飯塚先生いかがですか? 長沼先生 中等症までの症例に関しては単独でいけるのでは 飯塚先生 うちの患者さんでは、肘静脈からの脱血がそんなに ないかと思います。重症に関しては症例が少ないので何ともい 簡単でなく、鎖骨や内頚静脈から行ったり、非常に血管が細く えませんが否定的です。 て、ダブルルーメンを入れて行う等という症例が少なくないの 日比教授 少し御意見が違うと思いますが、これから症例を増 で、そういう患者さんは、長期間頻回に行いたいとは望まれな やしてみないと結論は出ないでしょう。治療開始時には週 3 回 いと思います。 治療を 2 週連続でやっても良いとか、そういう考えも出てくるか 日比教授 はい、花井先生どうぞ。 と思うのですが。 花井先生 そのずっとやるということに関しては、いわゆるon 長沼先生 もう少し使える条件、例えば最初の 1 週間は 3 回と demand therapy、もうひとつの選択肢に入るのではないかと か集約的に出来ればよいとは思うのですが、今の保険適応条 思います。基本的に患者さんは、最近お腹が張り出したとか、 件の週一回治療では効果発現まで待てるのか難しいと思いま 時々腹痛がするとか悪くなるなということを分かっている方が す。実際、花井先生の症例で良くなっている症例が多いので今 かなりいるわけですね。あと最近は便中カルプロテクチンがそ 日勉強させて戴きましたが、我々の経験では、効果発現まで時 れを予測できるとか、いろんなデータがありますけども on 間がかかると思います。 demand therapyという治療の仕方も有望な選択肢になり得る 日比教授 そうですね。効果発現までの時期ですよね。CyA等 と思っています。 はすごく早いですものね。 日比教授 そうですね。これからいろいろな患者さんで経験し 飯塚先生はどちらかというと長沼先生よりですかね。GCAPの て頂いて、本当にそういう風な治療法ができればいいと思いま 使い方ですけども、CyAとどちらを選ぶかというと? すね。ステロイド依存例についてはこういった御意見ですが何 飯塚先生 重症度が強ければ、CyAが即有用になりますし、妊 かありませんか。3番目ですが、GCAP療法はステロイドに代用 娠希望の女性だったらCyAは使えないというようなポイントで治 できるというかステロイドを使おうとする症例で患者さんがいや 療方法を選択すると思いますが、何回も述べましたが急性活動 がったら、白血球除去療法をやってしまうというような考え方で 期なら、その症例に2回行えば効くか効かないの判断が可能で ですが、まず花井先生どうでしょうか。 すが、依存例でステロイドが減らせないという慢性中等症から 花井先生 1年前の、大腸肛門病学会総会の時に、日比先生か 軽い炎症を取るには、効果判定に 3 週間∼ 10 週間かかると思 ら、これはステロイドが入っているから効いたのではないか、と います。 いうご指摘がありました。それならステロイドナイーブの重症例 日比教授 花井先生ご経験からいって、GCAPは最初の2回や はどうだろうとステロイド使用前の7人に対して検討し、100%の れば効果が予想できるということですか。 有効率と6 人が緩解導入に成功した訳です。ステロイドより先 花井先生 に GMCAP をやるのが良いと決めつけているわけではないの 週間以内です。つまり2 ∼3週間なんとかしのげば、2 クール目 です。ステロイドをさんざん使用した場合よりも効果が早く出る まで GMCAP が続行できれば、8 割の緩解導入が可能というこ し、緩解導入も高いという結果だったわけですが、もしそうなら とです。その2週間をどう対応するか、それが1週間に1本では 経口ステロイドで充分効果が出ない時点、つまり強力静注より 少し無理があり、手をこまねいてみないというわけにはいかな 先にGMCAPを用いても良いのではないかと思います。やはり いです。 もう少し効きやすいところで使ってみたい。その方が、効果が 日比教授 これで、白血球除去療法がだいたい緩解導入の療 上がるのではないかなという思いはあります。 法としてどこに位置付けられるかと、皆様イメージして頂いたと 日比教授 確かにステロイドが入っていて、それにプラスの作 思うのですが、最後に一番良い緩解維持療法は何か。もちろん 用はあるのかと思いますけれども、飯塚先生いかがです?ステ ペンタサ・サラゾピリンで緩解維持が出来ればいい、または、な ロイドの代わりに使うということは。 しで緩解維持が出来ればよいわけですが、なかなか難しい症 飯塚先生 例も多い。お一人ずつ御意見を頂きたいと思います。 はい。私どもの所では、ステロイド依存症になって 4 例がオペにまわっていますが、その 4 例とも2 ∼3 長期間経過した慢性期の方が多く転院されて来るのですが、そ 花井先生 うならないうちに早くGCAP治療を始められていたら、もう少し おいておくべきは、やはり維持療法の過程でステロイド漬けに ステロイドが漸減できて、予後が良くなるのではないかという期 しないこと。患者さんの個人個人の背景に違いがあるのです 緩解維持療法において医師が、特に内科医が頭に が、やはりステロイド抵抗性に移行してしまう前から、オペのタ を使うなりサラゾピリンの坐薬を使うなり、そしてペンタサの注 イミングをいつも考慮しておくべきだと思います。 腸を自己作成しなくても患者さんが使えるようにすると良いで 日比教授 ステロイドをだらだら使わないとことですね。その場 すね。あるいは、ペンタサ・サラゾピリンの量を増やすなりして、 合のステロイドを使わないための方法ですけども、どう致しまし 増悪時に直ちに自己対応できるように指導します。また、その患 ょうか? 者さんの病態に向いたステロイドの漸減方法やスケジュールを 花井先生 これからは、免疫抑制剤 6-MP/AZA の少用量と白 あらかじめ呈示しておくなど治療内容を良く理解してもらうこと 血球除去療法というのがひとつの方法になっていくだろうと思 が大事だと思います。 います。 日比教授 日比教授 たぶん、これから先生のご経験では白血球除去療 長沼先生。 長沼先生 お二人と同じなのですが、とにかくステロイドをだら 法による緩解維持の効果、steroid sparingも同様でしょうが、 だら使うような治療法はやめるべきで、また、副作用がなるべく 何らかの結論が出てくるだろうと考えて宜しいでしょうか。今の 少ない治療を選ぶべきだと思います。 ところ他にはないですね。 日比教授 皆さん、ステロイド漬けはやめましょう、ということで 花井先生 すね。花井先生に何度も強調して頂いたと思いますけども、ス はい。 日比教授 それから、飯塚先生。 テロイド漬けだけはもうそろそろやめなければいけないと、医者 飯塚先生 はい。一つには、悪くなり始めにすぐ自分で対応で も患者さんもステロイドに依存してはいけないということですね。 きるように、指導します。下部の再燃であればステロイドの坐薬 総合討論 まとめ 慶應義塾大学医学部内科学 炎症性腸疾患センター 日 比 紀 文 先生 今回のセミナーのまとめと致しましては、 ③ステロイド治療を拒否する患者に対して、白血球除去療法 ①ステロイド抵抗例に対しては、白血球除去療法かCyAを試 を first choiceとして使用可能かという点については、集約 み、無効であれば手術を考慮する。 的に治療できれば可能性は多いにあると思います。ステロイ ②ステロイド依存例に対して重要となるのは、steroid sparing ド漬けにならぬ様、再燃症例に対しては、強力静注療法の前 effectがあるかどうかということで、免疫抑制剤(6MP/AZA に試みるのも一法かも知れません。 の少量投与)が一つの選択肢です。また、各先生のご意見か ④維持療法については、医師も患者さんもステロイド漬けに ら、白血球除去療法でも1クールでは難しいが、2クール実施 ならないよう心がけることが第一。白血球除去療法を維持療 することで steroid sparing effect の可能性を示唆するデータ 法として用いることについては、今後さらに経験を積んでい も出ていますので、今後多くの症例を重ねて検討する必要が けば結論が出てくると思われます。今後、益々の治療の工夫 あると考えます。 に期待を致します。 11
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