2015/1/9 内部モデル(順モデル) • どのような操作をすれば,どのような結果が 得られるかを表現する脳内のモデル 知覚心理学 – 運動指令から,運動結果を計算する変換関数 6.知覚と行動 ブレインサイエンスシリーズ17 「脳と運動」丹治 順著 共立出版 順モデルの働きを示す実験結果 くすぐりーくすぐられ関係の操作 • どうして自分でくすぐるとくすぐったくないの? – (仮説1)自分でくすぐろうとすると感覚入力経路が閉じられてしまうから – (仮説2)順モデルが働き,予想できてしまうから 順モデル 順モデルと予測キャンセル説 • 自己運動による感覚信号を,予測的に抑制 するのに利用される a. 右手の操作から予想されるとおりに棘が左手をくすぐる b. 右手の操作から棘が動くまでに時間遅れを挿入する c. 右手の操作に対し,棘が動く軌道を90度回転させる 適切なモデルの選択 – 私たちは,これまでの経験から多数の道具や対象に関す る順・逆モデルを獲得している→運動に関する知識 – 運動指令の遠心性コピーが予測器を通って感覚 フィードバックの予測信号として出力され,実際の 感覚フィードバック信号と相殺しあう⇒予測キャン セル説 良いシステム • 眼球運動による視界のずれを知覚しない理由 – 眼には眼を⇒1.4眼 – 「わが身をつねって人の痛みを知れ」は不可 悪いシステム 逆モデルを利用し て運動指令を出す 順モデルが 働くから びっくりする 1 2015/1/9 適切なモデルを提供すること 適応的運動学習:プリズム順応 • 「誰のためのデザイン?―認知科学者のデザ イン原論」 by Donald A. Norman 残効 – ユーザはシステムを操作する際、何らかの概念 モデル(メンタルモデル)を形成する • 経験・学習・訓練などに基づく – 適切な概念モデルをユーザに提供することがデ ザインにおいて非常に重要である • ユーザの経験に合っていること 回転マウス学習とプリズム順応の違い • 左右反転めがね Sekiyama et al., 2000 – イメージや体性感覚の左右と,視覚空間の左右 が食い違う • 残効 プリズム順応後、プリズムを除去しても 順応の影響が残り、反対方向にずれが生じ る(数十秒以上)。回転マウス学習ではほとん ど生じない。 • 両手間転移効果 右手で回転マウスの使用 を学習したら、左手でもすぐに上手に扱える ようになる。右手でプリズム順応しても左手で は順応していない。 装着後2,3日目 空間座標系 • プリズム学習→運動学習の性格が強い. 虚像 – 体で覚える – それぞれの効果器,やり方,速度別に運動技能 が蓄積される • 回転マウス学習→道具の入出力特性の学習 という性格が強い – 頭で覚える – 複数の内部モデルを取り換えて使うことができる 身体座標系 a) 手が見える場合 b) 手が見えない場合 空間 座標系 (始点) 2 2015/1/9 5)体性感覚(somatic senses) • 触覚、固有感覚、温度感覚、痛覚など – 固有感覚(proprioception) ラバーハンド錯覚 • 触覚の皮膚上の位置づけが頼りないことを示す • 体の位置や動きに関する感覚 • 筋紡錘や腱に受容器がある • 身体座標系 • 体性感覚受容器からの信号は、身体座標系や 皮膚座標系から空間座標系内に位置づけられ る⇒時々刻々の身体像 • 身体像:脳の中に再構成された、空間座標系の 中で身体が占める領域 • 体性感覚は、空間座標系において意識される ついたて • ラバーハンド上に触覚を感じる←視覚を通して, 空間座標系に触刺激位置を定位している 右手と左手の時間順序判断 実際に刺激を受ける 受容器は指で,交差 されていない • 皮膚の上に感じられる触覚も、実は空間内に 再構成された身体像に割り当てられている • 身体像は道具を持てば変わり、身体の限界 に縛られない • 触刺激をスティックの先の空間位置に定位する⇒身 体像に取り込むことができる⇒ロボットアームなど クロスモーダル知覚の成立要因 • クロスモーダル知覚が生じるための要因に関 する3つの法則 1. 空間の法則:複数のモダリティの刺激に対する 受容野が重なっているほど,クロスモーダル知 覚の作用も大きい バイモーダルニュー ロンの視覚刺激に 対する受容野 6)脳による運動のコントロール • 身体を動かすのは,約400個の骨格筋 – 筋肉を伸縮させ、関節角を変化させる – 特定の組み合わせの筋群が適切な時間関係で 協調して伸縮した時,初めて意味のある運動が 引き起こされる 2. 時間の法則:刺激が時間的に同期しているほど, クロスモーダル知覚が生じやすい 3. 逆有効性の法則:刺激強度が弱く,閾値に近い ほど,クロスモーダル知覚の効果量が大きい 3 2015/1/9 • 脊髄や脳幹の運動細胞の活動 ⇒神経線維(運動神経)⇒骨格 筋の伸縮を調節 • 1個の運動細胞・運動神経・支配 される多数の筋繊維をまとめて, 運動単位という. • 1つの筋肉につながる複数の運 動細胞の集団を運動細胞プール と呼ぶ. • 筋収縮の強さを決める要因 ① 運動細胞プールの中の何個の細 胞が活動するか ② 個々の細胞がどのくらい強く活動 するか リモコンのボタン 一次運動野はより上位のボタン • 運動細胞の活動は,2種類の入力により調節 される ① 筋肉や関節・腱・皮膚などに存在するセンサー の出力信号(体性感覚信号) ② 大脳皮質運動野などの脳からの出力情報(運 動指令) • 大脳皮質の一次運動野 に弱い電流刺激を与え ると運動が誘発される. • 体部位局在性または体 部位再現 – 再現のされ方に一定の順 序がある. – 支配領域により担当部位 の広さが異なる. – 光,音,触覚刺激に対するボタン押し反応課題 刺激の立ち上 がりでそろえる ボタン押しを基 準とする – ハンドルの動き開始の50ミリ秒前に筋活動開始, その80ミリ秒前に一次運動野の細胞活動開始 4 2015/1/9 運動に関係する脳領域 – 一次運動野には,筋肉への運動指令を空間座標 系でコードする細胞と,身体座標系でコードする 細胞の2種類が存在する • これらの細胞群の間の座標系の変換には,小脳が関 与する – 運動前野:空間座標系において,触覚をもとに軌 道を調節する – 補足運動野:複数の動作を順序良く組み合わせ て実行する 7)連続的運動学習 • ピアノを弾く、漢字を書く、暗証番号を入力す る、その他、日常行動のほとんどが連続的運 動である – 学習するときは、注意を必要とするが、学習後は ほとんど自動的に行うことができる – 実行するための神経コードが脳に作られる ⇒系列的手続きの記憶 連続運動学習のステージ 直列反応時間課題(SRT課題) 1. 学習初期:直近の感覚情報に誘導されたぎこち なく遅いパフォーマンス • 繰り返し条件:8ブロック×10試行の系列×10回 • ランダム条件:8ブロック×100試行 – 1回の練習でパフォーマンスはかなり向上する 2. 学習中期:感覚と運動の関係の学習(再構築)に より実行速度が増加する – – パフォーマンスの向上は遅い 練習しなくてもパフォーマンスが向上する期間がある (Nissen & Bullemer, 1987) * 3. 学習後期:素早い自動化した巧みなパフォーマ ンス – 長い遅延期間をおいても実行できる 連続的運動学習における注意の影響 ランダム条件 • 単一課題繰り返し条件 • 二重課題繰り返し条件 • 二重課題ランダム条件 繰り返し条件 – 第1ブロックの6回目から系列の学習による成績 の向上が見られた. – 3ブロック目までに半分以上の実験参加者が繰り 返しに気づいていた 二重課題 ランダム条件 二重課題 繰り返し条件 単一課題 繰り返し条件 5
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