解剖生理学 Ⅳ 主に脳神経 ○中枢神経…脳、脊髄 ○末梢神経…脳や脊髄に出入りする神経線維 ○脳―頭蓋骨内、出入りする神経=脳神経(12 対:嗅・視・動眼・滑車・三叉・外転・ 顔面・内耳・舌咽・迷走・副・舌下) ○脊髄―脊柱管内、出入りする神経=脊髄神経(31 対:頚 8・胸 12・腰 5・仙骨 5・尾骨 1) ●神経の伝わり方 刺激によって活動電位が発生し、軸索を通って先端まで伝えられる。軸索の先端はシナプス という接合部を作っている。 ○活動電位 ・静止電位(普段の状態)→刺激→閾値を超える(活動電位発生!)→Na⁺が細胞内へ(脱分 極)→オーバーシュート→K⁺が細胞外へ(再分極)→過分極→静止電位(普段の状態)へ ➡刺激が伝導していく ・静止電位(普段の状態)→刺激→閾値を超えない→静止電位(普段の状態)へ ➡刺激は伝導しない ★活動電位が発生するかしないかどちらか。強さは関係なし。(=全か無かの法則) 上記図の赤い線の部分では、次の刺激が来ても反応しない。(=不応期) ○ニューロン=樹状突起+細胞体+軸索(≒神経線維) ↓ 軸索には細胞が巻き付いているものもある=髄鞘(ミエリン鞘) ※巻き付いている細胞は、中枢と末梢で異なる。 ・中枢神経では希突起膠細胞(グリア細胞) ・末梢神経ではシュワン細胞 ・グリア細胞は髄鞘を作るほかにも、物質交換に役立つ星状グリア細胞、 異物を貪食する小グリア細胞などがある。 ○髄鞘がある神経(有髄神経)の場合、髄鞘がない部分(ランヴィエ絞輪)だけを 飛ぶように伝導していくので、跳躍伝導とよばれ、伝達速度が速い。 ○シナプス 神経伝達物質がシナプス小胞に入っており、刺激に応じて次の細胞へ神経伝達物質を放出 する。 ・神経伝達物質…アセチルコリン、ノルアドレナリン、セロトニン、ドーパミン、 γ―アミノ酪酸(GABA)などが代表的。 興奮または抑制させる作用をもつ。 ●神経系の区分 神経系 中枢神経 末梢神経 (脳神経 12 対、脊髄神経 31 対) 脳 脊髄 体性神経 自律神経 (大脳・ (頸髄・ (皮膚や筋などを支配) (内臓や血管などを支配) 間脳・ 胸髄・ 感覚神経 運動神経 小脳・ 腰髄・ (求心性神経) (遠心性神経) 中脳・ 仙髄) 交感神経 副交感神経 橋・延髄) ●灰白質と白質、皮質と髄質 ・灰白質:ニューロンの細胞体(神経細胞)が多く集まる。 ・白質 :神経線維(軸索・髄鞘や樹状突起など)が多く集まる。 ・ (網様体:細胞体と神経線維が混在) ・皮質:表層の部分。外側。 ・髄質:真相の部分。内側。 ★大脳では大まかに、外側(大脳皮質)が灰白質、内側(大脳髄質)が白質である。 ★脊髄では、外側が白質、内側が灰白質である。 ○脊髄の白質は、前索・側索・後索に分かれる。 前索:ただの通り道 側索:感覚神経(温痛覚、深部感覚) 後索:感覚神経(触圧覚、深部感覚) ○脊髄の灰白質は、前角(前柱)・側角(側柱)・後角(後柱)に分かれる。 前角:運動神経 側角:自律神経 後角:感覚神経 ●脊髄反射…脳の指令を待たずに脊髄だけで判断し体を動かす。 ①伸筋反射(伸展反射)…代表的なものは膝蓋腱反射。姿勢を保とうとする動き。 ②屈曲反射(逃避反射)…刺激から離れようとする反射。 熱いものを触って手を引っ込める動き。 ③内臓反射…内臓からの感覚が自律神経に伝えられ、反射的に平滑筋の収縮や 弛緩を起こす。驚かすことで心拍数を増加させる動き。 ●脳幹 ○脳幹の構造…延髄、橋、中脳からなる。 生命維持に必要不可欠な呼吸・心臓・消化などの中枢がある。 ○延髄…脊髄に続く長さ 3cm の円柱状。 腹側面に錐体という神経の通り道がある。 錐体の外側にオリーブという丸い隆起が存在する。 りょうけいか ○橋…延髄上部と橋の背側面に第四脳室の底にあたる菱形窩が広がっている。 ○中脳…背側面に 2 対の半球状の高まり(上丘、下丘)があり四丘体とよばれる。 ・上丘…視覚に関する反射中枢 ・下丘…聴覚に関する反射中枢 中央部には眼球運動に関する脳神経核と赤核および黒質という 錐体外路系の灰白質が存在する。 ○脳幹の機能 ①大脳皮質と脊髄の間を上行・下行する神経線維の通路 ②脳神経を出す神経核の存在する場所 ③意識・呼吸・循環など、生命維持に必要な機能の中枢 +内臓の諸機能を調節する中枢がある。 (簡単なもののみ。複雑なものは視床下部におまかせ) ・器官からの情報または脳の指令によって、自律神経に働きかける。 [1]循環中枢…心臓促進中枢、心臓抑制中枢、血管運動中枢=血圧の調節 [2]呼吸中枢…体内の酸素、二酸化炭素、pH から反射的に呼吸運動を調節 [3]消化に関する中枢…嘔吐中枢、嚥下中枢、唾液分泌中枢、 消化管の運動や消化液分泌調節中枢 [4]排尿中枢…仙髄にある排尿に関する中枢を支配=排尿反射を起こす +運動にかかわる調節機能 ①平衡感覚や資格などの情報を取り入れて、立つ・歩く・振り向く などの姿勢を反射的に調節。 ②歩行運動などの運動パターンの開始や停止を指令する。 ③眼球運動を反射的に調節する。 ○瞳孔反射…対光反射:光の量で瞳孔が縮小 輻輳反射:近くを見るときピントを合わせ、瞳孔を縮小 ●小脳 ○小脳の構造…左右の小脳半球、中間の虫部からなる。 上・中・下 3 対の小脳脚で中脳・橋・延髄と連結している。 ○小脳の内部…皮質と髄質からなる。 ・小脳皮質…3 層の規則的な構築をもつ灰白質。 (分子層・神経細胞層〔プルキンエ細胞層〕 ・顆粒層) ・小脳髄質…白質。内部にあるいくつかの灰白質は小脳核とよばれ、 その最大のものを歯状核という。 ○小脳の機能 運動系の統合的な調節を行う。 詳しく→大脳皮質運動野から骨格筋へ送られる指令と同じものが小脳に届き、同時に 内耳からの平衡感覚、脊髄からの体性感覚、骨格筋や腱からの情報を受け取る。 ↓ 2 つの情報の誤差を検出して、視床を介して大脳皮質に送り、 身体の平衡および運動・姿勢の制御を行う。 ●間脳 ○間脳の構造…視床と視床下部からなる。 中脳の前方に位置。左右の大脳半球にはさまれている。 第三脳室が挟まっている。 間脳の後上部には松果体、前下部には下垂体が突き出す。 ・視床…灰白質の核群。全身の皮膚感覚や深部感覚の線維、小脳からおこる 線維など、大脳皮質に向かう上行性伝導路は全て視床に集まり、 大脳皮質のそれぞれの部位に達する。 視床から大脳皮質にむかう経路を視床皮質路という。 視床皮質路のなかで、視覚野に向かう線維を視放線、 聴覚野に向かう線維を聴放線という。 ・視床下部…小さな核群。底部から突き出た漏斗の先に下垂体がぶら下がり、 その後方に灰白隆起、および丸い 1 対の乳頭体がある。 視床下部は全身の自律機能を調節する重要な中枢。 ○間脳の機能 ・視床…大脳皮質に向かう感覚系の神経経路の中継所であり、下位脳から大脳皮質 への中継も行う。視床の尾側部には、内側膝状体(聴覚の中継を行う)・ 外側膝状体(視覚の中継を行う)という 2 対の隆起がある。 ・視床下部…生命維持に必要不可欠な本能行動や、感情に駆り立てられる情動行動 を支配する場所。 体温調節中枢、性中枢、摂食・満腹中枢、飲水中枢、下垂体の内分泌 機能を調節する部位(室傍核、視索上核)などの自律機能の重要な 中枢がある。 ●大脳 ○大脳の構造…表面は神経細胞が集まる厚さ数 mm の灰白質で覆われていて、 大脳皮質とよばれる。 その下には神経線維の集まる白質が広がる。 さらにその内部には大脳基底核とよばれる灰白質のかたまりがある。 ・大脳皮質…多数の曲がりくねった溝がある。 前頭葉・頭頂葉・後頭葉・側頭葉の領域に区分される。 前頭葉と頭頂葉の間は中心溝により、 前頭葉と側頭葉の間は外側溝により、 頭頂葉と後頭葉の間は頭頂後頭溝により隔てられている。 発生過程と内部構造をもとに、 新皮質と古皮質の 2 つに分けられる。 ・新皮質…大脳半球の表面の大部分を占める皮質。 いくつかの領域は、感覚・運動など機能がはっきりしている。 (機能局在) 特定の機能と対応しない領域は連合野とよばれ、意識・思考・ 記憶・連想などの高次の精神活動を営む。 ・古皮質…大脳半球の内側で脳幹の周辺に位置し、辺縁皮質または辺縁葉 とよばれる。 嗅脳、帯状回、海馬などからなる。 ・大脳基底核…大脳半球の深部にある灰白質のかたまりで、尾状核・レンズ核・ 偏桃体の 3 群が区別される。レンズ核は、淡蒼球と被殻という 2 つの核に分かれている。被殻と尾状核はあわせて線条体とよばれ、 本来は同一の核が内包の神経線維によって隔てられたものである。 ・大脳の白質…大脳半球の内部を占める白質は、有髄線維の密な集まりで、 次の 3 つに大別される。 [1]交連線維-左右の大脳半球間を連絡するもの。脳梁が代表的。 [2]連合線維-同側の半球内で皮質の各部を連絡するもの。 [3]投射線維-大脳皮質を脳幹や脊髄などと結ぶ線維。 視床とレンズ核にはさまれた白質の領域を内包と いい、大脳皮質と連絡する運動・感覚の伝導路の 大部分がここを通過する。 ○大脳の機能 ◎新皮質の機能 ・体性運動野…随意運動の中枢。中心溝のすぐ前(中心前回)にある。 ・体性感覚野…体性感覚の中枢。中心溝のすぐ後(中心後回)にある。 ↑体部位局在 ↑機能局在 ★言語中枢 [1]運動性言語野(ブローカ中枢)…発語に必要な筋を支配。 →ここが障害されると運動性失語症になる。 (意味は理解できるが発語ができない) [2]感覚性言語野(ウェルニッケ中枢)…言葉の理解にかかわる。 →ここが障害されると感覚性失語症になる。 (発語はできるが相手の言葉が理解できない) ・高次機能については大脳半球に左右差があり、 言語中枢のある方(通常は左)を優位半球という。⇔ 劣位半球 ◎古皮質の機能 ・視床下部とともに本能行動や情動行動を支配する。 ・海馬は大脳皮質連合野からの情報を受け取り、記憶として蓄える。 ◎大脳基底核の機能 錐体外路系に属する中枢として、運動の調節を行う。 ・錐体路…延髄の錐体を通る。主に随意運動に関係。 ・錐体外路…延髄の錐体を通らない。主に不随意運動に関係。
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