今回は多発性骨髄腫(ミエローマ)と皮膚癌(最も悪性のはメラノーマ)で す。ミエローマとメラノーマでややこしいのですが、私にはどちらにも苦い経 験があります。35年前、大学病院に45歳男性の患者さんが肺炎で紹介されて入 院、尿中には大量のベンスジョーンズ蛋白が出ており、腎機能はすでに半分以 下、骨髄・血液・尿の検査でミエローマ(IgGλ型)と診断しました。肺炎は治 しましたが、腎機能が更に悪化、程なく亡くなられました。また、29年前に当 院に45歳女性の患者さんが、左肺と右肺の間の縦隔というところの巨大腫瘤で 紹介されて来、なんとこれがメラノーマでした。すでに肺と肝臓に沢山転移し ており、化学療法(ケモ)をしましたがあまり効かずに亡くなられました。メ ラノ−マは殆どが皮膚や眼にできますが、日本人には非常に珍しく、更に珍し いのが、消化管、特に珍しいのが縦隔です。いずれももっと早く受診していた だければ打つ手もあったのではと悔やまれます。チェックしましょう。 呼吸器内科医師 坂東 憲司 皮膚癌 多発性骨髄腫 ●顔のシミだと思っていたら赤くてカサカサしてきた。 ● 60歳以上である。 (日光角化症) YES NO YES NO ● 腰痛や肋骨の痛みがなかなか治らない。 ●顔のテカテカしたほくろと思っていたら崩れてきた。 (基底細胞癌) YES NO ● 貧血(ヘモグロビンの値が低い)を指摘された。 YES NO ●股や陰部の湿疹と思っていたが塗り薬で治らない。 (パジェット病) YES NO ● 腎機能の低下(クレアチニンの値が高い)を指摘さ れた。 YES NO YES NO 皮膚科 部長 安藤佳洋 血液内科 医師 武岡康信 皮膚癌では「ほくろのがん」といわれるメラノーマ 多発性骨髄腫は「血液のがん」のひとつです。形質 (悪性黒色腫)が有名ですが、その他にも多くの種類が 細胞という血液の細胞がガンとなり、骨の中の骨髄で あります。皮膚の角化細胞が癌化するボーエン病・有 増殖します。骨髄では血液が造られています。形質細 棘細胞癌、毛包由来の細胞が癌化するとされる基底細 胞は本来、感染症から体を守る働きをしています。異 胞癌、汗腺が癌化するとされるパジェット病、放置す 常なタンパク質(Mタンパク)がつくられ、腎臓を障害 ると有棘細胞癌になる可能性のある日光角化症などが することがあります。そのため骨髄腫では、骨の痛 あります。メラノーマ以外の皮膚癌は初期の段階では み・貧血・感染症・腎機能低下などがみられます。60 適切な治療により転移することなく根治できます。 歳以上の方に多く年齢とともに増加するため、高齢化 皮膚の異常は見たり、触ったりして自分でチェック に伴い血液内科の中で最も多い病気の一つとなってい できます。今までなかった黒い・茶色い・赤い病変が ます。最近では様々な薬剤での治療により治療成績が できて大きくなってきたら、塗り薬で治らなくなって 向上しています。 きたら、近くの皮膚科専門医に診てもらいましょう。
© Copyright 2024 Paperzz