第44号 [PDF:8863KB]

ISSN
2186 ― 1544
旭 川 大 学
短期大学部紀要
第 44 号 2014 年 3 月
【作 品】
作品「風に舞う」………………………………………………………………… 椎 名 澄 子
1
【論 文】
音楽運動療法とワロン
−往復書簡による対話から開かれた理論的基盤−……………………………勝 浦 眞 仁
5
五十嵐 路 子
余暇のかたち
− A 市近郊にある養護学校の子どもたちの余暇調査から−…………………勝 浦 眞 仁
佐 藤 貴 虎
ミズナ(Brassica rapa L. Japonica Group)の
生育および硝酸イオン濃度の季節変化…………………………………………和 島 孝 浩
19
33
近 藤 謙 介
村 山 議 顕
圖 師 一 文
松 添 直 隆
【報 告】
「にこにこランチ」活動報告
∼永山むつみ町内会および永山むつみ青空会に所属する高齢者との交流から∼
…………………………………………穂 積 幹 子
柴 山 祐 子
子どもの居場所づくりの評価に関する一考察…………………………………清 水 冬 樹
41
57
【作 品】
オペレッタ「白雪姫」付随音楽
Operetta White Snow Accompany Music…………………………………………島 崎 一 行
旭川大学短期大学部発行
67
椎名澄子
作品「風に舞う」
Dance in the Bew
椎名澄子
Sumiko SHIINA
旭川大学短期大学部幼児教育学科
椎名澄子
作品「風に舞う」
概
要 : 女性の優しさや清々しさを緩やかな風に
舞い踊る葉として表現
寸
法 : 280W×240D×640H(mm)
素
材 : ブロンズ
技
法 : 蝋型鋳造
設置先 : ライフコート西野(札幌市西区)
施工日 : 2013 年 11月22日
所蔵先 : 株式会社リョーワ
椎名澄子
作品「風に舞う」
概
要 : 女性の優しさや清々しさを緩やかな風に
舞い踊る葉として表現
寸
法 : 280W×240D×640H(mm)
素
材 : ブロンズ
技
法 : 蝋型鋳造
設置先 : ライフコート西野(札幌市西区)
施工日 : 2013 年 11月22日
所蔵先 : 株式会社リョーワ
椎名澄子
作品「風に舞う」
Dance in the Bew
椎名澄子
Sumiko SHIINA
旭川大学短期大学部幼児教育学科
音楽運動療法とワロン
−往復書簡による対話から開かれた理論的基盤−
Musico-kinetic Therapy with Wallon
with the children who need special support
勝浦 眞仁 五十嵐 路子
Mahito KATSUURA Michiko IGARASHI 旭川大学短期大学部 幼児教育学科
Abstract
The present study was undertaken in order to explore a new basis for Musico-kinetic Therapy
from the standpoint of “developmental psychology” advocated by Henri Wallon. In this paper,
an adult male with a developmental disorder will be discussed through “Epistolary Style”.
As a result of the study, we will suggest the following two points: 1) The experience of
“companionship” in clients gives rise to somesthesia. 2) The emotional ties between the clients
and the therapist are essential for the formation of “self”. In conclusion, Wallon’s theory gives us
a new perspective on Musico-kinetic Therapy.
抄録
本研究は、
発達障がいに関する発達臨床研究を行ってきた第1著者と、旭川で活動する「ミュージッ
ク・ワンダー・クラブ」の中心的なメンバーの1人として、数多くの実践を経験してきた第2著者が、
質的研究の1手法である往復書簡によって、ダイスケ(仮名)というある1人の成人男性のセッショ
ンについて対話を深める中で、音楽運動療法にワロンの発達心理学的観点から、新たな理論的基盤
を導入することを目指したものである。
往復書簡を通して、音楽運動療法の場においては、①「仲間」がいるがゆえに湧き起こる身体感
覚を捉えること、②ワロンの「融即」概念に見られる、情緒的絆が自己の形成に与える影響を捉え
ること、この2つの理論的視座が重要であることが浮かび上がってきた。具体的には、音楽運動療
法の場で〈クライアントの生の意味〉を掴んでいくために、かかわり手が「間身体的に掴んだこと」
を描き出していくこと、およびワロンの「融即」現象をはじめとした情緒的絆が、自他の共有とも
に自己形成、つまり「私」の萌芽につながっていくこと、この2点が私たちの音楽運動療法の理論
的基盤であることを示した。
− 5 −
勝浦 眞仁・五十嵐 路子
Ⅰ 問題と目的
1.問題の所在
旭川で活動を行っている「ミュージック・ワ
ンダー・クラブ(以下、
MWC と略記する)
」では、
自閉症や脳性まひなど、障がいのある子どもや
様が変わっていく実感は確かにあるものの、現
在行っている音楽運動療法を通して、心理面で
はどのようなことが育まれていくのか。その理
論的枠組みについては、これまで十分に吟味す
ることができていなかった。
成人を対象とした音楽運動療法に取り組んでい
る。音楽運動療法の提唱者で、MWC の活動を
支えている野田(2009)によると、音楽運動療
法とは「音楽とトランポリンによる快感刺激に
音楽運動療法での体験を通して、参加するク
ライアントの心はどのように育まれていくので
あろうか。そこで本稿では、音楽運動療法に、
発達心理の観点から理論的基盤を導入すること
よって、情動の変化を促すものである。楽しい
セッションは快感体験として記憶される。楽し
い記憶は新たな好奇心を生み、外界への関心が
めばえ、現在おかれた状況を観察・判断し、過
を試みる。
去の情報と照合するようになる。その結果、外
界へ意志や意欲が表出される。このくり返しに
中で、1年前の 11 月にダイスケとの出会いが
あった。ダイスケはコンガを叩くのが好きな成
より、心身の機能改善や発達・再学習を促す」
ものであるとしている。
人男性である。発達障がいを持つ 27 歳の男性
で、音楽運動療法に 10 年以上通っている。こ
第1著者の勝浦は、2年前から MWC の活動
に参加した。この活動に参加するクライアント
が、とても生き生きとした表情でそのセッショ
の2年間は、勝浦と一緒に、コンガを叩き合う
セッションを月に1回続けてきた。
ダイスケはコンガ以外の楽器には興味を示さ
ンを過ごしていることを目の当たりにし、音楽
には人を元気づける力があることを実感してき
た。また、この MWC の活動は様々に取り上
げられ、障がいを抱えるクライアントの様子が
ない。勝浦が連打してコンガを叩くと、その手
の動きを興味深そうに眺め、顔をできるだけ近
づけて、うれしそうな表情を浮かべる。その後
叩くのをやめると、ダイスケ自身がコンガを叩
実際に変化してきたことを示す報告も数多くあ
る(古川・寺田・青野ら,2001;古川・五十嵐・
寺田ら,2004;五十嵐・島田・寺田ら,2006)
。
くこともあれば、もっと叩いてほしかったのか、
勝浦の手を掴み、コンガの表面の方へ持ってい
こうとすることもある。ダイスケがコンガを叩
16 年にわたる MWC の地道な取り組みは、参
加する人たちの生活に楽しみを生み、その生活
の質を向上することに寄与してきたように思わ
き、続いて勝浦が叩くというように、順番にコ
ンガを叩き合うセッションを続けていくと、有
意味語はまだ出ないものの、ダイスケは気持ち
れる。
が高まってきたようで、かん高い声を上げる。
この MWC のメンバーの1人で、活動の中
心的な役割を担ってきた第2著者の五十嵐は、
子どもの主体性を尊重しながら、音楽を通して
その後、胸元のあたりで拍手をすることもあり、
そのときは、勝浦も彼と一緒に拍手をする。
このようなコンガを叩き合うセッションをダ
楽しい時間を何とか生み出していこうとして、
イスケと続けていく中で、ちょっとした彼の興
試行錯誤しながら療法に取り組んできた。そし
て、言葉の発達が促されたり、積極的に意思表
示を行えるようになったりと、言語面や身体面
味深い行動や発達的変容など、実に様々な気づ
きが第1著者には生まれてきた。このダイスケ
とのセッションは、ワロン理論との親和性が高
の発達については、感覚統合や脳科学的側面か
ら、心身機能が改善していく根拠があることを
確かめてきた(野田,2009)
。その一方、療法
の取り組みの中で、参加する子どもたちの有り
いと考えられる。ワロンをベースとする理論的
枠組みを音楽運動療法に導入することができれ
ば、私たちのセッションに新たな光を当てるこ
とができる。そこには大きな意義があると思わ
2.ダイスケ(仮名)との出会い
第1著者の勝浦が MWC の活動に参加する
− 6 −
音楽運動療法とワロン
−往復書簡による対話から開かれた理論的基盤−
れる。
よる対話という形式を採用した。
3.目的
本研究では、発達障がいに関する発達臨床研
究を行ってきた第1著者と MWC の活動の中
2.研究の手続き
往復書簡は当初から論文として公表すること
を目的としたやりとりであった。このことは、
心的なメンバーの1人として、数多くの実践を
経験してきた第2著者が、ダイスケというある
1人の成人男性のセッションについて対話を深
める中で、音楽運動療法にワロンの発達心理学
2名の著者が互いに宛てて手紙を送りながら、
同時に論文という形で公表された後の読者、特
に MWC で共に活動しているメンバーをも想
定していたという点において、私的なやりとり
的観点から、新たな理論的基盤を導入すること
を目的とする。
Ⅱ 方法
を事後的にまとめたものとは異なる。
具体的には、はじめに勝浦が論文執筆を前提
としてやりとりを提起し、五十嵐がその方針を
了解した。そして勝浦が音楽運動療法やダイス
1.研究対象と方法
本研究ではそれぞれ異なった背景をもつ2人
ケとのセッションについて手紙を書き、その後
往復書簡がメールでやりとりされた。最終的に
の著者が、各自のものの見方や研究・実践を振
り返りながら、往復書簡という媒体を用いて対
往復書簡がほぼ収束したと合意した時点でやり
とりを終えた。なお本研究で提示する往復書簡
話することを通じて、音楽運動療法について検
討した。具体的には、自閉症スペクトラムのあ
る子どもたちの発達臨床、そしてその質的研究
のやりとりは、分かりにくい表現や句読点の統
一といった微細な修正を除き、実際やりとりし
たものほぼそのままである。
にこれまで取り組んできた勝浦眞仁と、障がい
のある子どもに対する、リトミックなどの音楽
と動きを活かしたかかわりを研究してきた五十
嵐路子の2人が往復書簡を交わした。
また対話の中で対象となるダイスケについて
は、その家族に研究依頼を行い、プライバシー
保護の観点から、大意は失われないようにしつ
つも、仮名を用いるなど、若干の変更を加える
往復書簡では、勝浦と五十嵐の両者が、理論
的基盤を共同生起することを目指して、音楽運
動療法やダイスケのセッションについて、
「今、
ことで、個人が特定できないようにすることで
承認を得た。
感じていること」を現在進行形で語り合う記述
を行った。そして対話のプロセスをできるだけ
損なうことなく表現できる往復書簡という形式
は、質的研究の有力な表現方法の一手法と考え
られる(伊藤・矢守,2009;矢守,2009)
。な
お伊藤と矢守(2009)は、往復書簡がその有効
性を発揮するためには、往復書簡を交わす書き
手たちの関係性が、対話に必要な最低限の相互
理解が困難なほどに異質ではなく、また相互の
異質による学びが期待できないほど等質でもな
い中程度の関係性にある場合としている。勝浦
と五十嵐の関係性は、その有効性が発揮できる、
同じ現場において同じ臨床に取り組む当事者間
(伊藤・矢守,2009)として位置づけられる。
このような理由から、本研究では往復書簡に
− 7 −
勝浦 眞仁・五十嵐 路子
Ⅲ 結果と考察−往復書簡による対話
五十嵐先生
こんにちは。勝浦です。
今年の冬は例年にまして寒さが厳しい上に、雪の量も多いように感じます。日々、学生指導も大変です
が、この長い冬を何とか乗り越えていきたいものです。
さて、音楽運動療法について、往復書簡による試みを快諾してくださりありがとうございます。この活
動に参加してから、早いもので2年が経ちました。毎回、療法にかける皆さんの思いがこちらの胸に響い
てくるとともに、音楽が本当に苦手な私でも、温かく迎え入れてくださっていることに感謝しています。
療法活動を先生と共に振り返させていただき、音楽運動療法についての理解をより深めることができれ
ば幸いです。加えて、療法と親和性があると思われるワロンの観点から、この活動に理論的枠組みを導入
することができればと考えています。
ここまでの活動の中で、ダイスケくんと出会えたことは、様々な気づきを私にもたらしてくれたように
思います。普段の療法では、コンガを一緒に叩き合うことをしてきました。私が連打してとにかく叩きま
くると、彼はコンガの表面に顔を近づけて来て、その音と手の動きをとても興味深そうに眺めます。その
後、その動きを眺めているうちに、気持ちがだんだん高まってくると、手を叩いて喜んでくれるようになり、
時には歓声をあげながら、うれしそうな表情を浮かべてくれます。彼の笑顔を見ると、コンガを叩く私も
うれしくなります。先日(2014 年 1 月 19 日)の療法も、とても面白かったです。コンガや太鼓の活動に
とどまらず、初めて一緒にダンスをすることができ、とても楽しい時間になりました。ダンスをしたせい
か、翌日はふくらはぎ辺りが筋肉痛になってしまいました。体力不足ですね。しかし心地よい痛みでした。
今回の往復書簡では、私にとって大きな出会いとなっている、ダイスケくんとの音楽運動療法を振り返
り、彼についての理解をより深めていくことから始めていきたいと思います。ダイスケくんとの出会いは、
1 年前の 11 月でした。部屋に入室してきた彼は普段通り、コンガのところへ向かい、コンガに寄りかか
りながら、療法の開始を待っていたようなのですが、私の方をじっと見てくるのですね。初めて出会った
はずなのに、どうして私の方を見てくるのだろう、どうしたらよいものかと思っていたときに、荻野さん
が「先生(私)の方を見ているね。誘っているんじゃない。どうぞ、どうぞ、こちらへ」と言って、コン
ガの方に招待されたことが始まりになります。
どうしてダイスケくんは私に興味を持ったのでしょうか?それは未だに不思議に思うことがあります。
ダイスケくんについて、まず基本的なことがお伺いできますでしょうか。ダイスケくんが抱えている障が
いや、音楽運動療法に来るようになったきっかけ、これまでどのようなセッションが行われていたのか教
えていただければと思います。よろしくお願いします。
(2014 年 1 月 23 日 勝浦 眞仁)
勝浦先生
ご連絡ありがとうございます。
勝浦先生をミュージック・ワンダー・クラブの活動にお誘いしてから、もう2年になるのですね。
始めは先生のご専門分野からのいろいろなアドバイスを頂ければと思いお誘いしたのですが、い
つの間にかすっかり先生を療法の場に引っ張り込むような形になってしまい恐縮です。・・・とは
− 8 −
音楽運動療法とワロン
−往復書簡による対話から開かれた理論的基盤−
言え、毎回のダイスケくんと勝浦先生のセッションを見ることは私たちにとりましても大変楽し
みな時間です。それはダイスケくんの様々な表情を見ることができるからです。
思い返すと先生にはダイスケくんのご紹介をする前に、先ずダイスケくんとのコンガセッショ
ンを楽しんで頂く方が先行していて基本的な情報をお伝えしていなかったですね。今回は彼が初
めて音楽運動療法に訪れた頃のことをお話しましょう。
ダイスケくんは 1987 年 3 月 27 日生まれ、今年で 27 歳になる札幌在住の青年です。発達障が
いを持っており、普段は自分から進んで何かをしたいとか集団の中で活動を楽しむと言う事が殆
んど無い生活だったようです。そんなある日、旭川で行っている音楽運動療法の事をご両親が知
り、ダイスケくんが養護学校の中等部を終える頃に連絡を下さいました。実際に療法を受けるよ
うになったのは、高等部に入ってからの事ですが最初は場所や人にとても警戒心が強く、会場の
入口を入って直ぐに置いてあった椅子に御両親に隠れるように座り、一歩も前に出て来られませ
んでした。当時のカルテを振り返って見ると、
『両親と後方の椅子に腰掛けたまま動こうとしな
い』
、
『椅子に座ったままじっと下を向いて顔を上げない』と、ダイスケくんの様子が記されてい
ます。
それが私たちとダイスケくんとの出会いでしたが、この後毎月、根気良く旭川までの道のりを
通って下さった御両親に本当に感謝しています。最初の半年くらいは「天照大御神を天の岩戸か
ら引き出すが如く」の療法で、私たちは様々な楽器や曲をダイスケくんの前に提示し、あの手こ
の手でダイスケくんが何に興味を持ってくれるのかと必死でした。
そんな私たちの手探りの試みの中でダイスケくんはコンガに出会って行きます。ダイスケくん
を夢中にさせたコンガの魅力は一体何だったのか、コンガの音、形、触感それともコンガを叩く
動作そのもの?自分が始めて前向きに取り組める物と場所を見出したダイスケくんの表情はみる
みる変わり、毎月楽しみにミュージック・ワンダー・クラブに通ってくれる様になりました。
先生からお手紙を頂き、ダイスケくんの初診の頃からのカルテを引っ張り出し、当初の様子を
懐かしく思い返しておりましたら、すっかり返信が遅くなってしまいました。申し訳ございませ
ん。取り敢えずここまでにしてお送り致しますね。
ダイスケくんがコンガの何に魅了されたのか?1年前の 11 月にどうして勝浦先生に興味を
持ったのか?いろいろお話しを深める事ができそうです。楽しみにしています。
(2014 年 1 月 26 日 五十嵐 路子)
五十嵐先生
勝浦です。お手紙を読ませていただきました。
音楽運動療法の場が、ダイスケくんにとって居心地の良い場所になるまでには、かなりの試行
錯誤があったのですね。自分から進んでコンガのもとに歩んでいくダイスケくんしかこれまで見
ていなかった私にとって、療法開始当時は、ご両親に隠れるようにしている様子があったこと、
また椅子に座ったまま動こうとしないダイスケくんの姿があったことは、逆に想像がつきません。
先生をはじめ、ミュージック・ワンダー・クラブの活動に携わってきた皆さんや、ダイスケくんのご
両親が、懸命に、また愛情をもってかかわってきた積み重ねが、ダイスケくんの今につながっている
のだと思い、胸に迫るものがありました。また、その根気強いプロセスの中に、人を理解することの
本質があるようにも感じます。
さて、先生と私が同じ問いを持っていることにうれしく思いました。ダイスケくんはどうしてコン
− 9 −
勝浦 眞仁・五十嵐 路子
ガが好きなのか、その魅力はいったい何なのでしょうか。この問いは、今回の往復書簡の1つ目の大
きなテーマであるように思います。音楽運動療法の場では、そこにいる人たちの気持ちを高めたり、
また時には落ち着かせたりするなど、その旋律へと私たちを巻き込んでいく音楽の力をたしかに感じ
ます。しかし、それを言葉にするのはとても難しい。誰の目にもはっきりと分かる行動という形で表
れるものではなく、音楽に合わせて湧き起こってくる心地よい気分や、気持ちの高ぶりなど、それぞ
れの人の身体の中で生起してくる感覚的なもののため、表現することがなかなか大変です。しかし先
生の助けを借りながら、ダイスケくんがコンガにどうして惹かれるのかを議論する中で、音楽運動療
法の中で湧き起こる身体感覚を丁寧に捉えていくことができればと考えています。
ダイスケくんを夢中にさせるコンガの魅力とは何か。それは先生にご指摘いただいたように、
コンガの音、形、感触など、さまざまな可能性がありますね。もしかすると、1つに絞れるもの
ではなく、コンガを叩くという行為全体に興味があるのかもしれません。ダイスケくんと出会っ
た頃の私のメモでは、
「コンガを叩く手の動きをダイスケくんはじっくりと見ようとして、手の
方に顔を近づける」とあります。ダイスケくんと出会った当初の体験としては、コンガを叩く手
の動きそのものにダイスケくんは興味を持ってくれているのだと私は感じていました。私との出
会いを通して、ダイスケくんがうれしそうな表情をみせてくれること、そこにやりがいを感じて
いましたし、楽しい時間にしようと懸命にかかわっていました。
一方で、ダイスケくんは「音」をどこまで意識しているのだろう、と疑問に思うこともありま
した。コンガを連打して叩き上げると、ダイスケくんはとても喜んでくれますし、かかわってい
る私もうれしくなります。しかし、
「音」を楽しんでいるというよりも、連打している手の動き、
身体の動きに興味があるのではないか、とも思ったのです。というのも、2つあるコンガを叩く
リズムを変えてみても、あまり興味は示してくれているようには感じませんでした。また連打す
ることで生まれる音の大きさには、ダイスケくんも気づいてくれていて、大きな素振りで喜んで
くれます。しかし療法を重ねていっても、コンガを叩き合う、一本調子のセッションになってし
まい、
「音」遊びへと展開することに難しさを感じていました。ダイスケくんと私とが叩き合う
コンガを、療法の中に位置づけることがなかなかできず、全体で「音」を奏でているようにはなっ
ていないと感じられていたのですね。そもそも私自身、音楽が苦手で、リズム感がないところも
ありまして。ご迷惑をおかけしていたと思います。
ただ野田先生がいらっしゃって、ダイスケくんと私のコンガの叩き合いに入っていただいた回
がありました。私は無我夢中でコンガを叩いていて、普段通りにやったつもりだったのですが、
そのときは「音」が生まれ、リズムがとれていたようなのです!先生に「勝浦先生のリズムがよ
くなっていったのが分かりましたよ」っておっしゃっていただいて、うれしかったです。しかし
その半面、当の本人はコンガの叩き合い中でどんな変化が起きていたのか全く分からないでいた
のですね。いったい何が起きていたのでしょう??
だんだん様々な事が思い出され、思いつくままに書いてしまいましたが、五十嵐先生はダイス
ケくんと私が出会った頃の療法をどのように思われていたのでしょうか。また野田先生がいらっ
しゃった回の療法時には、先生はどのように見ていましたか。教えていただければ幸いです。
(2014 年 1 月 30 日 勝浦 眞仁)
勝浦先生
お手紙ありがとうございました。
− 10 −
音楽運動療法とワロン
−往復書簡による対話から開かれた理論的基盤−
勝浦先生が大粒の汗を流しながらダイスケくんと一緒にコンガを叩く中で、とても色々なこと
を感じていて下さっていたことが分かりました。先生が仰っていた「音楽運動療法の中で湧き起
こる身体感覚」という表現は、ダイスケくんのコンガを中心に展開するセッションではとても大
切なキーワードとなるように思えます。
療法を受けに来る方たちの中には非常に身体能力が高く、トランポリンの上で自在にジャンプ
を楽しむ方も居ますが、ダイスケくんは動く物に乗るのは大の苦手で、お父さんが押すソリさえ
も怖がって(?)乗っていられないとお聞きしています。身体は硬く、手足の動きも決して器用
ではありません。そんなダイスケくんが腕と手首の脱力をしながらコンガを連打する事は容易な
ことではないと考えます。それでも野田先生の動きを真似て、自分も一生懸命に連打したいと頑
張ってきました。
このような流れの中で、野田先生がいらっしゃらない自主療法の時、ダイスケくんが本当に嬉
しそうに全身を動かしたセッションがありました。実はそれが今回 1 月の療法で使った曲「ロシ
ア民謡 一週間」で、会場全体がダイスケくんと一体化した療法でした。当時、私たちはダイス
ケくんの療法がマンネリに陥り、只コンガを叩くのみになっていると感じ、会場全体を巻き込ん
で何かルールのある演奏ができないかと思案していました。それまで療法途中に入ってくるピア
ノは、ダイスケくんにとってはコンガの休憩タイムのような物でしたが、この「一週間」の曲は
短いソロフレーズのあと決まった歌詞「トゥリャ、トゥリャトゥリャ、トゥリャトゥリャ、トゥ
リャリャー」の tutti(全体奏)が必ずやって来るという形式の曲です。この tutti の部分がダイ
スケくんの感性にぴったりだったのか、とにかく彼はこの部分を待っていて飛び跳ねるという状
態でした。正に先日の勝浦先生とのセッションの時のようにダンスを踊っているようでした。こ
れは先生が仰る「療法の中で湧き起こる身体感覚」を刺激したことになるのでしょうか。
ダイスケくんと勝浦先生が出会った頃の療法を思い返してみると、先ずダイスケくんが勝浦先
生になぜ興味を持ったか、幾つか仮説を立ててみましょう。
一つ目、お姉さんと二人姉弟のダイスケくんは、日常生活の中で同年代の女の子に苦手意識を
持っていると言う事です。それにも拘らず、療法では MWC のスタッフはもとより、ボランティ
ア学生の殆どが女性と言う状態で、
勝浦先生の出現は彼にとって「仲間が居た!」と言う状況だっ
たかもしれません。
二つ目は、ダイスケくん自体がコンガを叩くことにかなり自信がついてきていて、そこに現れ
た新顔の男性スタッフの、少し優位に立ってコンガを一緒に叩きたい「僕教えてあげるよ!」と
いう表情も見えました。
三つ目は、勝浦先生から醸し出されるダイスケくんへのメッセージがとても優しくフレンド
リーだった。つまり言葉を交さずして会話が成立したような雰囲気のなかで成立したセッション
でした。
これらは、あくまでも私の推測でしかありませんが、今までのダイスケくんの療法を見てきて
感じるところです。
野田先生との療法は、やはり野田先生が叩くコンガのしっかりとしたリズムパターンが少し
ずつ型を変えながら、ダイナミックスやテンポも変化させて根底を流れていることで、ダイスケ
くんや勝浦先生の即興的な連打音がひとつのまとまった音楽に聞こえてきていたのかもしれませ
ん。勝浦先生が感じられたように、ダイスケくんも叩き終えた後に達成感のある表情をしていた
ようにも思えます。
私が感じたところをとりとめもなく書き綴ってしまいましたが、実際にダイスケくんと向かい
合ってコンガを叩いている勝浦先生は、また別の感覚をお持ちかもしれませんね。ダイスケくん
− 11 −
勝浦 眞仁・五十嵐 路子
は、あれほどコンガを叩くのを楽しみに毎月 MWC に参加していますが、決してひとりではコ
ンガを叩くことをしません。仲間(?)が必要なのです。それが前回の療法でのダンスの謂われ
かもしれません。先生はその辺はどのようにお考えですか?
(2014 年 2 月 4 日 五十嵐路子)
五十嵐先生
こんにちは。早くも2月になってしまいましたね。これからソチ五輪が始まり、テレビの前で
眠れない日々が続きそうです。実は前回のお手紙を送った後にも、違う意味で眠れない気分になっ
てしまいました。というのも、私の悩みばかりを書いてしまったという反省があったからです。
もっと理論的な立場で書けなかったものか、いったいどんな返信が送られてくるものやらと、気
を揉んでいました。しかし先生の返信を興味深く読ませていただき、音楽運動療法への理論的視
野が拓けてきた感があります。
ダイスケくんにとってMWCは特別な場なのだと思います。毎度のようにダイスケくんと私は
コンガを叩き合うセッションを続けてきたのですが、コンガを連打する身体の動き自体に彼は大
きな困難を伴っていたのですね。実はなかなか生まれえない時間を過ごしていたことに気付きま
した。また私は当初、障がいのある方々にとっての「余暇」として、MWCの活動を捉えてしまっ
ていました。しかし、音楽を通して楽しい時間を作りたいという皆さんの熱い気持ちを下支えに
して、それ以上の意味があるように感じ始めています。つまり、空いた時間の使い道なのではな
く、彼らの「ライフワーク」となる活動の場になっているのではないか、と。少なくともダイス
ケくんの場合は、私はそう思うのです。
ダイスケくんがなぜ私に興味を持ったのか、そのいくつかの可能性や、野田先生との療法のこ
とも教えていただき、やはり見えていなかったことが多々あるのだと改めて思いました。実践と
いうか、かかわりの渦中にいますと、なかなか分からないのですね。全体としていったい何が起
きているのか。渦の内側にいるからこそ、
「湧き起こる身体感覚」を感じていたのですが、渦の
外側からはどう見えるのか。前回の私のお手紙では、その面に対する不確かさを気にしていまし
た。五十嵐先生の立場は、その両側に配慮を巡らせながら、総体として音楽運動療法を捉えよう
としているのですから、なかなか大変なことです。先生に提示して頂いた、ダイスケくんが私に
興味をもった3つの仮説も、ダイスケくんの背景や関係性、また私のかかわり方を全体として捉
えているからこその気付きだと思います。そして、3つの仮説のどれか1つが正しいというので
はなく、そのどれもが有機的に関連して、ダイスケくんと私との、今ある関係性が生まれてきた
のでしょうね。それがまさに「縁」なのかもしれません。
先生からのお手紙で大変興味深かったのは、ダイスケくん1人では決してコンガを叩かないと
いうことです。
「仲間」が必要であるというご指摘は、実に示唆に富んでいます。
「
(特別な形でのゲーム遊びや統制された即興音楽療法を含む)非言語形式や準言語形式のコミュ
ニケーションは、自閉症児を、同じ人間としての仲間性や経験の共有に「有用」であるように移
行させていくのにもっとも効果的な手段である(pp.177)。」
これは、自閉症児に関わる仕事で成功している人々の大多数が同意していることとして、トレ
ヴァーセン(1998)が挙げていることの1つです。この観点からダイスケくんのセッションを考
− 12 −
音楽運動療法とワロン
−往復書簡による対話から開かれた理論的基盤−
えると、言葉を交わすわけではないのですが、コンガという楽器を用いたコミュニケーションは、
それを共に叩き合う人を身近に感じることができる手段だといえます。そして、その人と共有し
ているのが、
「湧き起こる身体感覚」だったのです。また逆に言えば、他者がいるからこそ身体
感覚がより湧き起こってくるとも考えられます。だからダイスケくんは 1 人では叩こうとしない、
共に叩く「仲間」を必要としているのではないでしょうか。
もう1つ考えていかなくてはならないのが、
「湧き起こる身体感覚」とはいったい何かという
問題です。そもそも身体って不思議です。音楽運動療法の場では、特にその不思議さを感じます。
夏に学会で発表するために、ダイスケくんとのセッションを録画したDVDを何度も繰り返し見
ていました。そのとき興味深かったのが、コンガの叩き合いが終わった後に、全く同じタイミン
グで、ダイスケくんと私が顔を見合わせながら、お互いに笑顔で拍手をし合う場面が何度もあっ
たのです。身体は、人それぞれにとってただ1つ必ずあるもので、間違いなくその人固有のもの
です。しかし動きを全く同期させる、ダイスケくんと私を見ていると、まるでダイスケくんの身
体で湧き起こっていたことを、私の身体でも感じているかのようなのです。ダイスケくんと私を
切り離しているはずの身体の境界が、療法の中ではかなり曖昧になってしまいます。この体験を
どのように捉えたらよいのか、その問いに立ち止まる中で出会ったのが、ワロンの「融即」(1956)
という概念でした。
ワロンによれば、自我(私)と他者との分離を前提にしつつも、そこでの分離はそれほど大き
いものではなく、自我(私)が他者とまったく別個のものと感じるにはいたっていないがゆえに
生まれる情緒的関係を「融即」と呼び、人生のあらゆる時期において、さまざまな感情や行動を
支える条件になるとしています。そして、この他者との結びつきである「融即」を通して、対と
しての他者が意識されるようになり、他者との境界が明確になっていく中で、自己が形成されて
くるとしています。この概念は、先のダイスケくんとのかかわりを表現する上で、私が実感して
きたこととかなり近いと考えられます。すなわち、ダイスケくんと私はそれぞれに違う身体を持
ちながらも、コンガを叩くお互いの身体の姿を重ねていくうちに、叩くことに面白さを感じる両
者の情緒的絆も共に生起してきたのではないでしょうか。この「融即」というワロンの概念が、
ダイスケくんとの音楽運動療法の理論的基盤になるのではないか、という直観があります。先生
はどのようにお考えになるでしょうか。
ここまでの療法を振り返ってみたのですが、
「いま、この瞬間に」、ダイスケくんと私や皆さん
との間で共有している身体感覚を何としても記述していかなくてはならないという思いを強くし
ています。その一瞬一瞬の積み重ねが、ダイスケくんの自己を形成していくのに、大きな意味が
あると考えられるからです。とても大変な作業になりそうですが、これまでの野田先生とのセッ
ションや「ロシア民謡 一週間」のセッションを詳細に振り返るとともに、1 回 1 回の療法をこ
れから噛みしめていく必要がありそうですね。これは1人でできることでは決してありません。
五十嵐先生はじめ皆さんとともに、複眼的視点で歩んでいきたいと思っています。
(2014 年 2 月 8 日 勝浦 眞仁)
勝浦先生
先日は研究会 i お疲れさまでした。研究会の前に先生から目の覚めるようなお手紙を頂き、直
ぐにもお返事をと思っていましたのに、年度末の残務整理に終われ今日になってしまいました。
− 13 −
勝浦 眞仁・五十嵐 路子
ワロンの「融即」の概念で音楽運動療法の中で起こっている事象を理論的にとらえようとする
先生の試みを私にも是非お手伝いさせて頂きたいと考えています。実はこの「融即」に関しては、
過去の療法の中で思い当たる事例がいくつかあります。
もう10年以上も前の療法に遡りますが、
小学校低学年の自閉症の男の子でした。なかなか「僕」
という一人称が出ない、つまり他者と自己の間の境界線が正に曖昧な少年だったと思います、野
田先生とのセッションの中で思い切り身体でぶつかり合いながら、ビーチボールを相手にぶつけ
ては「僕が痛い!」のか「野田先生が痛い!」のか、と言う事を繰り返すセッションがありました。
その時のトランポリン上で野田先生とその少年の間に何が起こっていたのか、私たちにはぼんや
りとしたイメージだけでしか把握できていなかったのですが、この療法の直後にこの少年に「僕」
という一人称がはっきりと定着したという事が起こりました。この事もまさに勝浦先生が仰って
いらしたワロンの「融即」で説明のつく事例ではないかと思うのです。
子どもたちが成長する過程において自己の確立は大切な節目となります。私たちも療法の中で、
子どもたちがひとつでも主体的に活動できる事を見出してほしいと願いながら関わりをもってき
ましたが、ノンバーバルコミュニケーションである音楽を通して身体的感覚を刺激し、そこから
自己の確立へと繋がる道筋があるとしたら、私たちにとっても画期的なことだと思うわけです。
ここにこそ音楽を使う意義がありますよね。
今まで私たちは音楽運動療法は「先ず音楽ありき!」と考え、音楽の選択と演奏には大変気を
配ってきました。音楽にはいろいろな力があります。例えば、その場全体の雰囲気を一瞬にして
変えるような空間をコントロールする力、子どもたちの実年齢と精神年齢のギャップを年齢相応
の J-pop などを聞いてもらうことで縮めていく力、安らぎを与える力、励ます力、その他いろい
ろなメッセージ性を音楽は持っています。今回、勝浦先生がご指摘下さった「沸き起こる身体感
覚を共有する」ということも音楽の力のひとつの大きな役割だと思えます。
ダイスケくんのセッションの中で「ロシア民謡 一週間」を選曲したことは、私たちにとって
はダイスケくんとのコンガの叩きあいが、何か規則性を持った音楽の形になるようにと考えた結
果で「ひょうたんから駒」のような話なのですが、この時のダイスケくんは本当に主体的に身体
を動かし表情も満面の笑顔で、今までに私たちが見たことのないダイスケくんの姿でした。ダイ
スケくんの前でコンガを叩いていた荻野さんやその後ろ側で円になって音楽と共に身体を動かし
手拍子していた私たちと一体になった瞬間だったかもしれません。これは勝浦先生の仰るように
時間をかけてゆっくりと過去の療法から見直していく必要がありそうです。大変な作業ですが、
楽しみな作業でもあります。どうぞよろしくお願い致します。
(2014 年 2 月 16 日 五十嵐路子)
− 14 −
音楽運動療法とワロン
−往復書簡による対話から開かれた理論的基盤−
Ⅳ 総括的考察
1.まとめ
本研究を通じて、音楽運動療法における以下
の2つの理論的基盤が明らかになった。それは
音楽運動療法の場において、
にこの身体的に共鳴・共振した現象が起きてい
たように思われる。とすれば、相手の情動や気
持ちの動きを勝浦自身が感じていた、体験し
ていたということもできるだろう。また五十
嵐が往復書簡の中で述べていたが、一体感を引
① 「仲間」がいるがゆえに湧き起こる身
体感覚を捉えること
② ワロンの「融即」概念に見られる、
き出すための音楽の選択と演奏とが、その場に
いる人たちに身体の共鳴を起こりやすくする大
きな要因であると考えられる。実際そこに「音
楽の力」がある。これらの理由から、その場で
情緒的絆が自己の形成に与える影響
を捉えること
この2つの理論的視座が重要であることが、
セッションを共にした人たちが何を感じていた
のか、その人の身体で湧き起こる感覚を捉える
ことが、私たちの音楽運動療法では欠かせなく
なってくる。
往復書簡による対話を通して浮かび上がってき
た。それぞれについて、ここでは考察をより深
しかし、セッションを共にしていた人の感じ
たことが、その対象者の情動や気持ちの動きと
めていくこととする。
全く同じものとしてしまってよいのかどうか、
疑問に思う向きもあるかもしれない。またダイ
(1)
「仲間」がいるがゆえに湧き起こる身体感
覚を捉える
ダイスケと勝浦が、互いにコンガを叩き合う
スケとのセッションにおいても、彼と時間を共
にしていたとしても、いったいどのような体験
をしているのか、筆者らに全く分からないこと
というセッションについて、筆者らは往復書簡
を通して対話を重ねてきた。その中で生まれて
きた重要な気付きの1つに、ダイスケは「仲間」
がいないとコンガを叩かないということがあ
は数多くある。よって、身体的共鳴現象が常に
起こるのかと問われれば、そうとも限らないし、
もしかすると、めったに起こることではないの
かもしれない。
る。1人でも叩くことができるコンガを、ダイ
スケ1人では叩かないことから、音楽運動療法
の場で、他者が共にいること、コンガを一緒に
こういった指摘に対して、私たちは謙虚に受
け止め、療法の中での感じ方や捉え方がなぜ生
まれたのか、常に自問自答していかなくてはな
叩くことには、彼なりに何らかの意味があると
いえる。しかし、ダイスケがそれを言葉で伝え
たり、何らかの形で表現したりすることは、い
らない。1回のセッションで、その場で感じら
れたことは大事にし、それを記述しつつも、し
かしそれを絶対的なものとは考えない柔軟さ
まの彼にとっては非常に難しい。では、彼がコ
は、療法に臨む者に必要である。そして、かか
ンガを叩く意味、音楽療法の場で他者が共にい
る意味に迫るには、どうすればよいのだろうか。
廣松(1972)は、かかわり合う二者の身体を
わりを積み重ねていく中で、それまでの感じ方
や捉え方、また分からなさも含めて検討してい
くことが、ダイスケをはじめとして、療法の対
振動数の等しい音叉になぞらえ、一方が鳴り響
象である一人の人間に対する理解の深まりにつ
けば他方が共鳴して鳴り響くというかたちで、
相手の情動や気持ちの動きを把握することがで
きるとして、それを一種の身体的共鳴現象とみ
ながっていくといえよう。
また鯨岡(1998)が「成りこみ」、すなわち
間主観的把握 ii の条件として述べているよう
なしている。往復書簡の中でも述べたように、
ダイスケと勝浦がコンガを叩き合ううちに、全
く同じタイミングで、お互いに向かい合いなが
ら拍手をするという現象が起こっていた。まさ
に、療法のクライエントに対して、その人とか
かわる人たちが「いつも、すでに」気持ちや関
心を向けようとする姿勢も欠かせない。その
意味で MWC は、ボランティアも含めて 10 名
− 15 −
勝浦 眞仁・五十嵐 路子
以上の人たちが1人のクライアントの療法に携
わっており、その対象者に気持ちや関心が向け
やすい場になっている。
ここまでの議論から、かかわり合う二者の身
体と身体の間に生まれる感じ方を掴んでいくこ
あるクライアントに対して、MWC の場では多
様な音楽のかたちを与える。そこからクライア
ントは、音楽と自由な空間の中に自分の居場所
を次第に見出していき、スタッフとの信頼をつ
ないでいく。このような場の雰囲気やかかわり
と、すなわち「間身体的に掴んだこと」に私た
ちが関心を注ぎ、継続的に把握していくことが、
他者と共にいる意味、音楽を奏でる意味など、
音楽運動療法の場で〈クライアントが営む生の
の中で、ダイスケはコンガと出会い、またコン
ガを叩き合う勝浦との出会いもあった。
そして、勝浦がコンガを叩き、続いてダイス
ケがコンガを叩くというセッションの中で、コ
意味〉iii を掴んでいく上で極めて重要になって
くるといえる。
(2)ワロンの「融即」概念に見られる、情緒
ンガを叩く人の違い、自他の違いを前提にしつ
つも、全く同じタイミングで互いに向かい合っ
て拍手をするように、コンガを叩くことの楽し
さや面白さを共有する瞬間があり、そこでは
的絆が自己の形成に与える影響を捉える
音楽療法をワロン理論から捉えた論考は、筆
自己と他者が一体化している現象が起こってい
る。すなわちワロンの「融即」と呼ばれる情緒
者らが知る限りにおいて、これまでほとんどな
い。しかしセッションの中で、自他の境界がか
的絆が、ダイスケとのセッションの中で起こっ
ていたと考えることができる。そして、この「融
なり曖昧になる瞬間を体験してきた筆者らから
すれば、ワロンの観点から音楽運動療法を捉え
直していく意義は大いにあると考えられる。そ
即」という現象を通して「私」が生まれてくる
こと、これは五十嵐の往復書簡で述べていたよ
うに、「僕」という1人称が生まれてきた事例
して五十嵐が往復書簡の中で、
「ノンバーバル
コミュニケーションである音楽を通して身体的
感覚を刺激し、そこから自己の確立へと繋がる
道筋があるとしたら、私たちにとっても画期的
も合わせて考えてみれば、その自己形成の道筋
を考えていく上で、「融即」という情緒的絆は、
音楽運動療法の理論的基盤として十分に考えて
いくことができる。
なことだと思うわけです。ここにこそ音楽を使
う意義がありますよね」と述べているように、
自己形成、つまり「私」を生み出していくこと
往復書簡という質的研究によって、音楽運動
療法の場で〈クライアントの生の意味〉を掴ん
に、私たちの音楽運動療法が大きな役割を果た
している可能性が見出されてきた。
自閉症スペクトラムや知的障がいのある子ど
でいくために、かかわり手が「間身体的に掴ん
だこと」を描き出していくこと、およびワロン
の「融即」現象をはじめとして、情緒的絆が、
もたちを中心に、発達障がいのある人たちが自
自他の共有とともに自己形成、つまり「私」の
己を形成していくことには大きな困難が伴って
いることは様々な観点から指摘されている(浜
田,1992;田中・都筑・別府ら,2007)
。自己
萌芽につながっていくこと、この2点を私たち
の音楽運動療法の理論的基盤として提示するこ
とができた。
が生まれにくいということは、すなわち対とし
ての他者も生まれにくく、自他が未分化の状態
のままであると考えられる。ダイスケのケース
においても、療法の当初は大変警戒心が強かっ
2.今後の課題
ダイスケという1人の成人男性の音楽運動療
法を出発点として、勝浦と五十嵐が往復書簡に
たようで、新しい環境や人の刺激にさらされる
ことなど、自己とは異なるものに対する拒否
を示していたことから、その不安感は大変大き
かったようである。この自他が未分化の状態に
よる対話を行い、そこから2つの理論的視座を
生み出してきた。この2つの視座を基に、ダイ
スケのこれまでの療法を丁寧に振り返るととも
に、これからの療法で彼の自己変容を捉えてい
− 16 −
音楽運動療法とワロン
−往復書簡による対話から開かれた理論的基盤−
くことが課題である。加えて、ダイスケの1事
例のみならず、他の事例との検証や比較の中で、
より厚みを増した理論的視座を生み出していく
ことも課題といえる。
浜田寿美男訳編、ワロン/身体・自我・社会 子どもの受け取る世界と子どもの働きかける世
界、ミネルヴァ書房、京都、1983
廣松渉、世界の共同主観的存在構造、勁草書房、
3.謝辞
MWC で共に活動をしているメンバーやクラ
イアントの方々、および活動を支えていただい
ている野田先生にお礼を申し上げる。またダイ
スケとの出会いや家族の方々の協力なしには、
音楽運動療法に対する理解を深めることができ
なかった。改めて深くお礼申し上げる。MWC
で出会えた方々との縁に感謝しつつ、ひとまず
東京、1972
鯨岡峻、関係発達論の構築 間主観的アプロー
チによる、ミネルヴァ書房、京都、1999
野田燎、脳と心を癒す 音楽運動療法入門、工
作舎、東京、2009
本稿を閉じることとする。
田中道治・都築学・別府哲・小島道生、発達障
害のある子どもの自己を育てる、内面世界の成
引用文献
長を支える教育・支援、ナカニシヤ出版、京都、
2007
古川宇一・寺田真澄・青野栄・荻野ひとみ・野
田燎、旭川における障害児への音楽運動療法導
入の試み(3)−セラピスト・ピアニストとし
ての資質̶、北海道教育大学附属教育実践総合
センター紀要、2、27 − 33、2001
C.Trevarthen ,K.Aitken ,D.Papoudi & J.Robert
(1998).Children with Autism 2nd edition
古川宇一・五十嵐路子・寺田真澄・立花トシ子・
Diagnosis and Interventions to Meet Their
Needs.(中野茂,伊藤良子,近藤清美訳,自閉
症の子どもたち−間主観性の発達心理学からの
アプローチ−,ミネルヴァ書房、京都、2005)
島田英子・荻野ひとみ・野田燎、旭川における
障害児への音楽運動療法導入の試み(4)−5
年間の継続的取り組みの成果̶、北海道教育大
矢守克也、「書簡体論文」の可能性と課題、質
的心理学研究、8、64 − 74、2009
学附属教育実践総合センター紀要、5、203 −
211、2004
五十嵐路子・島田英子・寺田真澄・荻野ひとみ、
結節性硬化症の少女 E の音楽運動療法の報告、
第 15 回日本意識障害学会プログラム・抄録集、
70、2006
伊藤哲司・矢守克也、
「インターローカリティ̶」
をめぐる往復書簡、質的心理学研究、8、43 −
63、2009
浜田寿美男、
「私」というもののなりたち、ミ
ネルヴァ書房、京都、1992
− 17 −
勝浦 眞仁・五十嵐 路子
i
平成 25 年度旭川地域生活研究会報告(2014 年 2 月 11 日)において、本研究の中間報告を口頭で行った。
ii
間主観的把握とは、対象となる人の思いや気持ちを、その人とかかわる人が分かることや感じられると
いった現象を指す。特別な技能を必要とすることではなく、人と人とが関わり合う中で、ごく日常に起
きている事象である。
iii 往復書簡の中で勝浦が、MWC はクライアントにとって「余暇」ではなく、「ライフワーク」となる活動
であることを述べた。つまり、クライアントの生活に楽しみをもたらす営みであり、そこでクライアン
トとセラピストが共に生きることに喜びを見出している。
〈クライアントが営む生の意味〉とは、このよ
うな楽しみや喜びなど、音楽運動療法の場でかかわり合う人たちに共有されている体験や情動を含意し
ている。
− 18 −
余暇のかたち
− A 市近郊にある養護学校の子どもたちの余暇調査から− Leisure for Childen with Special Educational Needs
With Particular Reference to the Questionnaire for Children in
Special Needs Schools at A city area.
勝浦 眞仁 佐藤 貴虎
Mahito KATSUURA Takatora SATO 旭川大学短期大学部 幼児教育学科
Abstract
Since the concept of “Lifelong learning” was advocated in 1965, “Leisure” has been one of
the key concepts underpinning many of its actions. This paper is especially concerned with the
relationship between leisure and children in special needs schools at A City area. In this paper,
we will address the following points from the questionnaire to parents who have the children in
special educational schools: (a) what is leisure for the children, (b) obstacles of leisure activities
for them. The paper concludes with suggestions about this topic.
抄録
本研究では、余暇を3つのかたちに分類し、①養護学校の子どもたちは日常生活の中で、どのよ
うな活動に余暇を見出しているのか、②日常生活の中で余暇を過ごしにくい現実があるならば、ど
のような要因が関連しているのか、これら2点について、A 市近郊の養護学校に在籍する保護者の
アンケート調査から明らかにすることを目指した。
その結果、余暇に対して満足しているとも、不満ともいえない、「どちらともいえない」人たちが
半数を占めているという興味深い結果が出てきた。その理由として、①デイサービス以外に選択肢
がない、②人の目を気にせず安心して遊べる場所が少ない、または施設環境が整っていない、③家
庭環境や仕事状況など日々の生活に精一杯で手が回らない、3つの要因があった。こういった要因
による「あきらめ感」のために、余暇を多様に過ごすことは難しく感じている現実が、本調査によ
り浮かび上がってきた。
− 19 −
勝浦 眞仁・佐藤 貴虎
Ⅰ 問題と目的
1 問題の所在 ̶障がいのある子どもたちの
目線から考える̶
障がいのある子どもたちにとって、余暇と
たち、これを「子ども主体型」とする。例えば、
好きなテレビ番組やDVDを見たい、音楽を部
屋で聞いていたい、といった子ども自らが望む
活動が挙げられる。ただし障がいのある子ども
たちの中には、1人でいることを好む傾向のあ
はどのような時間の過ごし方を意味しているの
であろうか。これまでの先行研究をレビューし
てみても、実はそこがはっきりと見えてこない
現状がある。余暇の定義として有名なものとし
る子もいるため、家でばかり過ごすことを不満
に思う保護者もいる。最後に、社会に提供され
ているプログラムに保護者や子どもたちが参加
するタイプの余暇がある。これを「社会資源活
ては、フランスの社会学者 J. デュマズディエ
(1972)の「個人が職場や家庭、社会から課せ
られた義務から解放されたときに、休息のため、
気晴らしのため、あるいは利得とは無関係な知
用型」とする。具体的には、キャンプや料理教
室といった、デイサービスやボランティア団体
等が企画したプログラムに、養護学校の子ども
たちが放課後や長期休業期間を利用して参加
識や能力の養成、自発的な社会参加、自由な創
造力の発揮のため、まったく随意に行う活動の
し、余暇を過ごす様子が数多く報告されている
(工藤・浅井・浅井ほか,2004;田代,1994)。
総体である」が挙げられる。また、余暇という
言葉はレジャー(leisure)の訳で、その語源は
この3つの余暇のかたちは、以下の図のように
表せる。
ラテン語の「オティム(Otim,何もしないこ
と、消極的な行為)
」とギリシャ語の「スコー
レ(schole,自己の教養を高める積極的行為)
」
<図−1 3つの余暇のかたち>
の両方の源流を持つといわれる(一番ケ瀬ら,
1994)
。しかし、障がいのある子どもたちにとっ
ての余暇は、休息や気晴らしなど「オティム」
の側面、あるいは自発的な知識獲得や社会参加
など「スコーレ」の側面、この両面を充足する
ものになりえているのであろうか。
この問題に取り組んでいく中で、障がいの
ある子どもたちの余暇に関する先行研究やア
ンケート調査を読み解いてみると(伊藤・菅
野・橋本ら,2007;由谷・渡部,2007;細谷,
①保護者提案型 ②子ども主体型 ③社会資源活用型
2011)
、3つの余暇のかたちが浮かび上がって
くる。それは第1に、保護者が我が子に余暇
の活動を提案するかたち、すなわち、保護者が
体験してみたいと考えていた活動を子どもに伝
え、我が子と共に参加するものがある。これを
「保護者提案型」
と呼ぶこととする。具体的には、
保護者が見に行きたいと思っていた映画に子ど
もと一緒に行くことや、買い物に我が子と一緒
に行くといった活動が挙げられる。保護者の意
思が子どものそれと一致すればよいものの、一
致しないときもある。次に、子ども自らが行い
たい活動を見つけ、その活動に余暇を見出すか
この3つのかたちの余暇の中で、③の社会資
源活用型の余暇が、これまでの先行研究におい
ては数多く取り上げられてきた。こういったプ
ログラムされた活動は、障がいのある子どもた
ちや保護者にとって、心の充実につながる時間
の過ごし方であったことは伺える。しかしこう
いった余暇活動の中には、ソーシャルスキルを
身につけることを目指したものや、生活機能を
改善することを目的としたものも見られる。障
がいがあるがゆえに、生活機能の訓練に重点が
置かれ過ぎてしまい、本来の余暇の機能とは乖
− 20 −
余暇のかたち
− A 市近郊にある養護学校の子どもたちの余暇調査から− 離してしまっていることに疑問が残る。またプ
ログラム化されていなくとも、図書館へ行った
り、カラオケに行ったりするなど、社会資源を
活用しながら、子どもたち自らが楽しく遊んだ
り、何かに夢中になって過ごしたりできる時間
目を設定した。そして、現在の余暇に対する
満足度を学年別(初等部、中等部、高等部 ii)、
に算出した。
また現在の余暇活動に対して、どのようなと
ころに満足し、また困難を見出しているのかに
は日常生活に生まれうるのではなかろうか。も
しその時間が確保しにくい現実があるとするな
らば、その困難の要因を明らかにする必要があ
ろう。
ついて、自由記述を基に分析を行った。
この現実的な余暇の過ごし方を、筆者らが子
どもたちに直接聞く試みは、現在、検討してい
る。しかし実際に子どもたちからインタビュー
をして、その内容から彼らの体験を読みとって
1 現在の余暇に対する満足度
3つの養護学校のアンケートを集計した結果
は以下の通りである。
いくことは、障がいの程度によってはなかなか
に難しいし、その方法もまだ未確立である。し
1 現在の余暇に対する満足度
3つの養護学校のアンケートを集計した結果
かし、子どもたちの最も身近にいる保護者が、
我が子の余暇をどこに見出しているのか、子ど
は以下の通りである。
Ⅲ 結果
もたちの現実に即した余暇の過ごし方を聞き出
していくことは可能であろう。そこで、保護者
にアンケート調査を実施し、障がいのある子ど
① 学年:初等部 59 名、中等部 48 名、高等
部 36 名、性別:男子 101 名、女子 42 名
② 障がい種別:知的障がい 110 名、肢体不
もたちの余暇の現実を浮かび上がらせることを
試みた。
2.目的
自由 49 名、聴覚障がい 2 名、視覚障が
い 3 名、 病 弱 2 名、 自 閉 症 47 名、 そ の
他 6 名 iii、ただし重複障がいを含む。
③ 満足度:(A:満足、B;困っている、C:
本研究では、①養護学校の子どもたちは日常
生活の中で、どのような活動に余暇を見出して
どちらともいえない、図− 2 にその結果
を示す。)
初等部:A 44% B 10% C 46%
いるのか、②日常生活の中で余暇を過ごしにく
い現実があるならば、どのような要因が関連し
ているのか、これら2点について、A 市近郊の
中等部:A 42% B 12% C 46%
高等部:A 47% B 14% C 39%
・余暇を最も一緒に過ごしたい集団:家族
養護学校に在籍する保護者のアンケート調査か
ら明らかにすることが目的である。
(62%)
・余暇を過ごすのに最適な人数:小集団(2
∼4人程度,55%)
Ⅱ 方法
A 市近郊にある3つの養護学校に在籍する保
護者を対象として、アンケート調査を行った i。
有効回答数は 143 名で、①学年と性別、②障が
<図−2:初等部・中等部・高等部における余
暇の満足度>
い種別、③余暇に対する満足度およびその理由
(自由記述)
、④余暇に最適な集団および人数、
⑤具体的な余暇の過ごし方の現状、⑥余暇に対
する要望(自由記述)
、の6点について質問項
− 21 −
勝浦 眞仁・佐藤 貴虎
2 自由記述の結果
初等部・中等部・高等部に分けて、自由記述
で書かれていたことを抜粋して示す。自由記述
の方がとても親切に息子の面倒を見てくれ、
大いにはしゃいでいました。
・実家(私の)に帰り、のんびりとしんせき
では、①余暇の現状、具体的には、a) 余暇に対
して満足している理由、b) 困っている・満足と
の家、おはか参りなどをしました。
ⅱ)子ども主体型
も不満ともいえない、と感じている理由、②今
後の余暇、具体的には余暇活動に対する要望、
の2点について質問した。
これらの記述を、3つの余暇のかたち、すな
・花火大会を少し離れた場所を選んで、楽し
みながら観ました。
・自宅で過ごすか、子どもの好きな場所に
出かける事が出来た(ショッピングモール、
わち、
ⅰ)保護者提案型 ⅱ)子ども主体型
ⅲ)社会資源活用型に分類すると、以下のよ
キャンプ、川遊び、温泉など)。
・デイサービスのない日は、海やお祭りや公
うな結果が得られた。
なお自由記述で重複している記述があった場
合には、より具体的な内容が書かれていた方を
記載している。また読みにくい表現でない限り、
修正せずに原文のまま抜粋している。
園へと、とにかく出かけていました。
ⅲ)社会資源活用型
・児童デイサービスを利用し、子供も楽しん
でいるようだし、親もその間少しラクなの
で、とても満足しています。デイサービス
<初等部>
① 余暇の現状
a) 余暇に対して満足している理由
事業所で借りている畑での栽培、収穫を経
験させてもらっているようで、楽しそうだ
なと思っています。
・家では0才と2才の弟がいるためなかな
ⅰ)保護者提案型
・家族で遊園地に行き、楽しかった。
・知人のご夫婦何組かと家族(主人なし)で
かマンツーマンで遊んであげることが難し
いので、デイサービスでお友達やスタッフ
と思いっきり遊ぶことができて楽しそうに
一泊ロッジに止まってスポーツの応援やド
ライブ、観光等を楽しんだとき、他の家族
通っています。
・障害児小3∼高3までが集まり日中活動を
− 22 −
余暇のかたち
− A 市近郊にある養護学校の子どもたちの余暇調査から− する会があって、運動・調理・畑作業・工
作学習や夏・冬休み各1回、貸切バスで遠
出見学旅行へ行きます。住んでいる地域に
はデイサービスが1つもないのでその代わ
りのような感じです。
かなか遊ぶ友だちがいないとさびしい思い
をすることもある。
・夏休みはデイサービスを週 3 日ほど利用し
た。入浴できるので、毎日汗だくの子ども
にとっては助かるのだが、学校のようにカ
・事業所でアットホームな雰囲気の中、子ど
もから大人の人達が集う中、平日の放課後
を楽しく過ごさせて頂いているからです。
リキュラムが組まれていないので、楽しみ
や刺激が少なそう。夏ならではの遊び(水
遊びや外出)を経験させてほしい。
・外に出て、散歩等に行くにも、暑くて、時間・
b) 困っている・満足とも不満ともいえない、
と感じている理由
ⅰ)保護者提案型
・父親の仕事休みが不定期なので、
「計画し
場所など、制限がある。下に姉妹がいるため、
満足できるくらいの付きっきり状態が難し
い。医療行為のできる、デイサービス事業
所が少なく、利用が困難。
てでかける」ということがなかなかできな
い。下の子が小さく保育園に通っているの
・夏休みなどは特に長く、デイサービスも利
用しましたが、利用しない日は公園などを
で、母親(私)と2人、のんびり過ごすこ
とが多い。でかけることができなくても、
利用しました。いろんな公園を探すのが大
変でした。
自宅で家族一緒の時間を過ごせることをう
れしく思う。
・連れていくだけで親の体力がなくなる。一
・自由に遊ばせることのできる場所がない。
周りの人に迷惑をかけないように常にそば
についていないとならないため人が少なく
緒に出掛けるのがむずかしい。
・周りの目が気になりゆっくり過ごせない
(出かけているとき)
。
・1学期の放課後はほとんどデイサービス
て自由に遊ばせてあげられる場所があれば
良いのですが。
・兄弟がいるので母1人で子どもを連れて出
かける事ができず、ヘルパーさんを利用で
で、 そ れ が な い 日 は 家 で D V D を 見 て い
ることが多く、もっと家の周りで遊んだり
家の中でもおもちゃで遊べるといいのにと
きたらなぁと思いました。親も同伴でなけ
れば外出はヘルパーさんだけでは低学年は
利用できないそうなので。
思っています(実際おもちゃは投げてしまっ
たり適切な遊び方ができないので)
。
ⅱ)子ども主体型
② 今後の余暇(余暇活動に対する要望)
ⅰ)保護者提案型
・友達と遊ぶ事ができるが、近くに遊び相手
・親など大人が付いていないと外へ遊びに行
がいない。
・下に妹がいるので外に遊びたいと言われて
もデイサービスが休みの日等困ります。医
けないので、一人で外へ遊びに行けるよう
になると幅が広がると思う。
・新聞などで近所のイベントが書かれてい
療行為がたくさんあるので。
て、行きたいなあ∼と思っていても、混ん
・急に登校がなくなり、生活の変化で不機嫌
になる。
・今年の夏は暑すぎてあまり外に出たがらな
でいるから。障害者トイレやスペースはな
いだろうから、とあきらめることが多いの
で、いけたらいいなと思います。
い
ⅲ)社会資源活用型
・子供と遊べる場所が少ない。安心して楽し
める場所がない。近くの公園に行ってもな
・夏休みに何も行けるところがなく、悩む。
姉も弟もいるので出かける所に悩む。沢山
遊んであげたいけれど、場所と手が足りな
い。
− 23 −
勝浦 眞仁・佐藤 貴虎
ⅱ)子ども主体型
・健康的に不安定なので、体調維持にかなり
のエネルギーが消費され、毎日の生活の他
に何かをするのが難しい(毎日の生活でいっ
ぱい、いっぱい)
。
楽しんだりもしたので、子どもたちのグルー
プ( 4 ∼ 5 人 位 ) と 同 じ く ら い の 人 数 の
学生さんグループと外出して、子どもたち
と(親の見える範囲で構わないので)一緒
に遊んでもらう機会などがあると、子ども
・デイを利用せず1日家にいて、出かける予
定もない日は自分でやりたいことをみつけ
ることができず、暇そうにただ座っている
ことが多いので、
「やらされている事」や「や
たちの楽しそうな様子や福祉施設(デイな
ど)とは違った関わり方などで親としてか
かわっていく上での気づきもあるので、う
れしく思います。
らなければならない事」ではない「やりた
い事」
、
「楽しみなこと」が増えていってほ
しいなと思います。
・公園など小さい子もいるとき、自分の子ど
・なかなか外出が難しいので、家族以外で過
ごせる場所、人との交流を大事にしたいと
考えています。主にデイサービスや訪問看
護で自宅に来ていただける方です。学年が
もを自由に遊ばすことが出来ない。
(ある場
所)は自分の子どもはとても大好きなとこ
上がるに伴い、体が大きくなり、外出の大
変さを感じています。屋内で簡易イベント
ろだが、遊ばしてあげられないのはかわい
そうだと思う。
がある。施設、場所があった方がいいな∼
と思います。
・長期間の休みだとストレスがたまるので、
なるべくストレスにならないように本人に
選んでもらい外出をします。外見だけでは
・小学生の間は色々とサービスも充実してい
ますが、中学校以降の過ごし方が課題です。
特に知的・肢体の障害があって重い子は受
障害とわかりづらい人がいっぱいいます。
もっと色々な人がもう少し理解してくれた
ら色々な場所にも行けるようになると思い
ます。
け皿が少ないです。少しでも外に出る機会
が多くなることを望みます。外国であるパー
ソナルアシスタントがあると親も安心して
預けられ本人も余暇を楽しめるのですが。
・地域の子ども達とふれあい理解してもら
い、公園などでみんなに見守られながら暮
らしていけたらと思います。
現実は厳しいです。
・子ども向けのサービスを専門にやってくれ
る事業所が近くにあれば嬉しいです。グルー
ⅲ)社会資源活用型
・休み中で先生も大変かと思いますが、珍
しい展示や催しがあるとき、一日でもいい
プホームのように家庭的なところならさら
に良いです。
ので、予定を組んでいくことがあればいい
<中等部>
なあと思います。校外学習で行くとしても、
色々な行事や予定と重なってしまい、結局
だめだったりするので、時間もゆっくりと
① 余暇の現状
a) 余暇に対して満足している理由
ⅰ)保護者提案型
れる休み中の方が、予定を立てやすいかな
・家族とは水族館や遊園地に行っています。
あと思います。
・デイサービスに行かなかったら、一日中親
と遊んだり、見ないといけなく、遊ぶのに
ⅱ)子ども主体型
・カラオケやボーリングに何度も行き、楽し
かった。
も困る。デイに行ったら、
利用料もかかるし。
・親もだんだん年をとって子どもと同じよう
に体を使って遊ぶのもなかなか大変になっ
てきますし、保護者同士でちょっとお話を
・パークゴルフをして楽しかったと言ってま
した。
・寄宿舎に入っているので、放課後はみんな
と楽しく過ごしている。
− 24 −
余暇のかたち
− A 市近郊にある養護学校の子どもたちの余暇調査から− ・お友達と海水浴に毎日のように行った。雨
の日はプールに行った。散歩買い物も行っ
た(歩かせるのが目的)
。沢山のお友達とB
BQなど沢山した。キャンプした。
ⅲ)社会資源活用型
れずがっかりです。
ⅱ)子ども主体型
・本人は DVD やテレビ、ゲームをしていれ
ば満足なようですが、外で遊ばなくなった
ので、体を動かすことが少なくなってしまっ
・放課後等デイサービスで平日は有効な時間
を過ごしている。夏休みや土日は、動物園
やプール、公園での散歩や運動などヘルパー
さんと行っています。
た。一緒に外出(映画、買い物、外食等)
は好きで、ついてきてくれるので、一緒に
楽しめることができるのは満足しています。
・公立小→養護学校に入学したが、まず、放
・毎日デイサービスに行き、キャンプや海水
浴の行事に参加しました。行く日を分かっ
ており事前準備もウキウキしていました。
・作業所のワークショップに参加したり、花
課後が長すぎると思った(学校にいる時間
が少なすぎということ)。予定のある放課
後は良いが、そうでない日は、自宅にいて、
TV を見たりとあまり刺激のない生活を送っ
火大会や遊園地に行ったりといろいろと楽
しんだから。
ている。
・本人は家で好きな事をして遊んでいたいの
・在宅訪問部なので、放課後や夏休みでは
ありませんが、校外学習で行った博物館や
ですが、親が仕事のため、デイサービスや
祖母の家でほとんど過ごしています。
科学館に先生方と訪問部のお友達と行けて、
楽しかったです。
・両親が仕事をしているため、小学1年生
・夏休み中の過ごし方について、中学生に
なると体も大きくなり、移動も大変なので、
介助の人手がない場合は、人混みのレジャー
から児童クラブにお世話になっています。
夏休みも間も午前中は宿題の時間を1時間
とってくれているため、そこで宿題を終わ
らせる事もできますし、夏は何かしらのイ
施設は避けるようになりました。もっとい
ろんなところへ連れて行ってやりたいとい
う気持ちはあるのですが、荷物もたくさん
になり。出かける前にあきらめてしまって
ベントや毎日B&Gプールを利用したりと、
両親が仕事でいない間でも満足に毎日楽し
く過ごすことができました。
います。
・行く場所が限られていまうので、外に出づ
らく家でゲームやパソコンをやらしてしま
う。
b) 困っている・満足とも不満ともいえない、
と感じている理由
ⅲ)社会資源活用型
ⅰ)保護者提案型
・本人の体力さえあれば、活動場所を広めた
・両親共働いているので事業所へ行く以外
は留守番ばかりで退屈していると思います。
事業所は少なく何か催し物があってもそこ
いとは考えているが、なかなか難しい。ま
た看護師が常駐している施設などが少ない
ため、デイサービスを探すのも苦労してい
へ連れて行くのは難しいです。本人に望む
る。
のは何かしたいことがもっとたくさんあれ
ば長い休みも楽しく過ごせるのではと思い
ます。
・近くの公園は普通の子たちが来るので、あ
まり行けない。近くに障がいの子たちの遊
ぶ場所がないと思う(あっても遠い場所と
・テレビの前でビデオを朝から晩までずーっ
と見ていて「散歩行こう」っていっても「ダ
メ」って言われます。そして今年の夏休み
は天候が悪くてプール(家庭用の)にも入
かですね)。
・夏休みなど長期休暇の場合、デイサービ
スなど受けられないことがあり、子ども 1
人家に置いたままにしたりすることがあり、
− 25 −
勝浦 眞仁・佐藤 貴虎
心配です。
・デイサービスを週 3 回利用しています。他
には何もない状態。長期の休みになるとひ
まを持て余してしまう事がある。
・学童で預かってもらえるところが限られて
くに散歩コース等、体を動かせる場所があ
ると良いと思う。
・地域の同世代の子どもたちと自然に接する
機会があると良いと思う。学校が違ったり
すると、どうしても孤立しがちなので(養
いる。子どもが少ないため、交流場もなく
親子2人で遊ぶことが多くマンネリ化して
しまう。行動範囲が限られてしまう。成長
してくると長期休みの過ごすところが自宅
護学校の子どもたちは)。
ⅲ)社会資源活用型
・中学部でも気軽に遊びに行ける場所(デ
イサービスでなくボランティアさんがいる)
で1人になってしまったりと楽しめる場所
が少なく、友人も少ないので遊びが減って
しまうこと。
親も予約しないで行けたら楽なのにと思い
ます。
・静かで涼しい所がなかなかないです。デ
パートは音がにぎやかだし、スーパーはクー
② 今後の余暇(余暇活動に対する要望)
ⅰ)保護者提案型
ラーが効きすぎです。
・夏休みなど、体を動かすことのできるサー
・地域の人と一緒に近所の散歩に行けるとう
れしい!
クルなどあればいいなと思います。
・養護学校はクラブ活動がないので、スポー
・沢山色々なところへ行って色々な経験をさ
せてあげたいなと思っています。好きなと
ころへ連れて行ってあげたいと思っていま
ツ活動があればよいなあ。体育館空いてい
るのにね。大学生ボランティアに来て指導
してほしいなあ。月 2 回でもいいから。障
すが、遠くて連れて行ってあげられない時
などがあるので、せっかく言ってくれたの
に連れて行ってあげられないのは親として
もつらい時があります。
がいがあっても取り組めるスポーツ。
・未就学児や小学校低学年ではあにので、親
がついて遊べる場所にも限度があり、特に
長期の夏休み等に子どもだけで遊べる場所
・小学校低学年まではうまく遊び過ごせる
が、それ以降になると親もついてなので子
ども同士に距離感がではじめ、いつまでも
(福祉関係の施設も含む)があると助かる。
うちの場合はパソコン、DVDで一日をす
ごしてしまいそうになるので、多少のお金
幼児遊びばかりとはいかず、居場所や過ご
す場所が少なくなっていくばかりです。大
きくなっても過ごしやすい場所が出来ると
はかかってもいいので。
ありがたいです。
① 余暇の現状
ⅱ)子ども主体型
・夏休みがちょっと長い気がします。近くの
公園で犬とかいると怖がって走っていきま
a) 余暇に対して満足している理由
ⅰ)保護者提案型
・学生のあいだは、長期休みになるので、両
す。動物と虫がこわいので、それが困って
親が一緒に過ごしてくれていたので、とて
います。
・自発的発声が少ないので、何をしたいの
か分からず、ぼんやりとしている事があり、
も助かりました。来年からは学校も卒業す
るので、長期休みがなくなり、少し大人の
生活になっていくと思います。動物園、図
家で何をして過ごすのがいいのかよく分か
らない。
・身体を動かすことが好きなので、休みに入
ると、そういう機会が少なくなるので、近
書館や温泉にもっと行けたらと思います。
・ドライブや野球観戦など親の思い出も出来
ました。
ⅱ)子ども主体型
<高等部>
− 26 −
余暇のかたち
− A 市近郊にある養護学校の子どもたちの余暇調査から− ・本やパソコンなど自分の好きなことをして
リラックスして楽しんでいる。アルパカ牧
場で手から餌をやったりふれあったりでき
るので喜んでいた。
ⅲ)社会資源活用型
本人的には満足しています。デイサービス
の利用もしています。将来のための集団行
動や指導に感謝をしつつ、子どものうちに
自由な時間をあたえてあげたい気持ちもあ
り複雑です。
・放課後はデイサービスでたくさん遊び、学
び、楽しく過ごしているようです。
・高等部 3 年生ですので、夏休み中は、施
設になれるため、日中1時支援を利用して、
・本人の体調や天候、家族の都合(仕事など)
との兼ね合いで、家で留守番することが多
いです。体調を崩すことは少なくてよいの
ですが、本人の楽しみが少ない気がするの
お仕事体験などをしました。
・父母の会の行事に参加したり、デイサービ
スで散歩したり、科学館に行ったりした。
・放課後デイサービスを使っている。夏休み
が、いつも気がかりです。
・本人は家にいての作業に満足している様子
ではあるが、もう少し外での遊びにも興味
を持つと他の楽しみを見つけてほしい。
は子どもは暇を持て余しているが、仕方の
ない事だと思う。
・だんだん成長するにつれて外出できる場所
が限られてしまう。なかなか障害者を理解
・地域の作業所や支援サービスを利用できて
おり、子どもにも合っていると思う。
してほしいと思っても、大きな子が子ども
の遊具で遊んだりするのもどうか?と声が
b) 困っている・満足とも不満ともいえない、
と感じている理由
出たり動きがオーバーで周りの人もびっく
りしてしまうと思うといけない。
ⅲ)社会資源活用型
ⅰ)保護者提案型
・体を使って遊べるところがない。一緒に活
動してくれる人が親しかいない。
・平日は母も仕事を持っているのでデイサー
・普段デイサービスを週 3 ∼ 4 回利用して
いますが、夏休み事業所が休み(お盆休み)
となる3∼ 4 日間が少し困ってしまいます。
2 か所使っていますが、どちらも休みが重な
ビスを利用しているが、それが本人は満足
しているのか?という意味でどちらともい
えないです。楽しめる場所というよう身体、
ることが多いです。
・楽しめる場所が少ない。
・デイサービスを利用することが多いのです
知的、共に重度のハンディを抱え、医療行
為も必要なため、どこへ行くのも大変です。
まずおむつ替えできるところがないです。
が、苦手な子もいるので、本人は楽しめな
い日もあるようです。
・地方に住んでいるので、日中一時等のサー
・一緒に出掛けると、周りの人から色々な目
ビスに制限があり、毎日使うことができな
で見られることがありなかなか楽しめない
方が多いですが、ドライブや実家やお祭り
など楽しめることもある。
い。自分で何かをして遊ぶことが出来ない
ため、親が仕事の時は何もすることがない。
ⅱ)子ども主体型
② 今後の余暇(余暇活動に対する要望)
・動物園にもあまり興味がなかったり、中・
高等部になると遊べるところが少ないよう
な気がします。プールへ行くにも、男性の
ⅰ)保護者提案型
・いつもと違ったことを親なしで出来る(体
験できる)としたらとても素晴らしいこと
ヘルパーさんが少ない。
・家で過ごすのが好きなので、本人からの
要求がなければ、部屋で好きなようにして
います。それではよくないと思うのですが、
で、うれしい事だと思います。本人の年齢
や成長に合った体験ができれば、親はうれ
しいです。
・夏休み中、仕事(共働き)なので、事業所
− 27 −
勝浦 眞仁・佐藤 貴虎
に預けることが多く、なかなかどこかに遊
びに出るのがむずかしい。それでも夏祭り
などになるべく一緒に行ったりするように
はしています。
・なるべく色々なことを経験させてあげた
・身体を動かす野球、サッカーなどの運動の
サークルがあればよいかなと思います。障
がいのある子どもたちの行けるところがな
かなかなく、残念です。
・体も大きくなり、家の中にこもりがちです。
いと思っていますが、大きな声を出したり、
じっとしていられなかったりすると周りの
目が今でも気になってしまいます。
ⅱ)子ども主体型
デイサービスの利用が中心です。デイサー
ビスがなければ、大変です。天気の良い日
は外に出て、お散歩するような週刊づけた
いですね。移動支援を利用するのも考えて
・長期休みの 25 日間は長すぎると感じる。
健常児のように、友だちと自由に遊んだり、
一人で宿題をできるわけではないので、仕
事をしている親にとってはデイサービスな
いこうと思います。
・学校と違って色々な年代の子ども、スタッ
フと仲間として安心できる事業所がもっと
増えると良いですね。
どを利用しないと働くこともできない。高
1 なのに公園で滑り台や遊具を小さいお子さ
Ⅳ 考察
んと利用するのもどうかと思うし、何をす
るにしても難しい年齢だなと感じる。
1 アンケートの調査結果より
・放課後と夏休みの過ごし方は、我が子に
とって別のような気がします。放課後は学
校帰りのくつろぎの時間、お風呂入浴、お
本稿では、養護学校の子どもたちは日常生活
の中で、どのような活動に余暇を見出している
のか、日常生活の中で余暇を過ごしにくい現実
ともだちとのまったり時間。夏休みは、放
課後とは逆でアクティブで外の時間があれ
ば、と思いましたが、なかなかできません
でした。夏休みなど大型休日の場合、何か
があるならば、どのような要因が関連している
のか、という2つの問題意識のもと、アンケー
ト調査を実施した。その結果、保護者には実に
様々な思いがあることが垣間見られた。
出かける機会やお友達と会える機会があれ
ばいいなと思います。
・高学年になるにつれ普通学級の子たちは部
まず A 市近郊にある養護学校の子どもたち
の余暇についての満足感が半数に満たない状況
であり、今後、地域間での利用状況の差も省み
活動、勉強と忙しくなるので、遊ぶという
か交流する機会が少なくなってしまう。
・もっともっとボランティアの人が個人と関
て、余暇活動の一層の充実が望まれる現状が明
らかになってきた。今のところ、デイサービス
を活用することに活路を見出している保護者は
わりを持てるシステムがあるとありがたい。
数多くいるが、年齢が大きくなるにつれて、日
サービスという形ではなく自然に地域で過
ごせることがベスト。
ⅲ)社会資源活用型
常生活での居場所が限定されていることも伺え
る。例えば、公園で子どもをのびのびと遊ばせ
てあげたいものの、年齢によっては、幼児期の
・様々なイベントや学校等主催の行事に保護
子どもたちと場を共にする違和感が生まれてく
者同伴という条件もたまに見かけます。子
どもの年齢によっては、親よりも同年代や
少し上の年代の参加者、又はボランティア
る。子どもたちの学年が上がっていく中でも、
保護者が周囲の目を気にすることなく、身体を
のびのびと動かせる日常的な活動を提供するこ
さんとのかかわりの方が、うまくいく場合
もあると思います。年代別の集団での様々
な経験をさせたいと思っていますが、なか
なかそういった事業所も少ないです。
とが、切実な課題として浮かび上がってきた。
またデイサービスを活用し、満足していると
いう記述も多く見られた。具体的には、放課後
− 28 −
余暇のかたち
− A 市近郊にある養護学校の子どもたちの余暇調査から− に料理や遊び等で週3回程度活用していること
や、長期休暇では乗馬や遊園地での遊びや、海
や花火大会等のお祭りへの参加を楽しみにして
いるといった記述が見られた。デイサービス以
外の日常での活動としては、パソコンや DVD、
た。
散歩やショッピングモールでの買い物、公園で
の遊び、ドライブといった活動を実際に行って
いる場合や、望まれていることが明らかになっ
た。一方で肢体不自由の子どもたちの場合、医
後の研究に向けた2つの課題が浮かび上がって
きた。1つには、「どちらともいえない」余暇
を過ごしている家庭を対象としたインタビュー
を実施し、その複雑な胸中を語ってもらうこと
療関係者や設備がいる場所でしか余暇を過ごせ
ず物足りなく感じていることや、初等部のとき
はまだしも、中等部、高等部と学年が上がるに
つれて、子どもたちも身体が大きくなってきて、
である。今後の余暇研究においては、余暇の具
体的な在り様を描き出す質的研究の可能性が高
まってくるように思われる。
もう1点は、身体を動かす活動を A 市近郊
保護者の体力ではついていけなくなってくるた
め、スポーツサークルや運動をする機会など、
で実施してみることである。特に身体の成長が
みられる中学・高校の生徒を中心に、彼らが元
地域で気軽に身体が動かせる活動を望む意見が
多数記載されていた。
気一杯に身体を動かすことができ、生き生きと
した活動を余暇の選択肢の1つとして地域に提
2 「どちらともいえない」余暇の現状
今回の調査で興味深い結果となったのは、満
供していく意義はあると思われる。その実践的
な取り組みをどのように行っていくのかを今後
の課題としたい。
足度について「どちらともいえない」と答えた
割合が、満足していると答えた割合とほぼ同程
度あったことである。デイサービスなどを活用
することで放課後や長期休みの時間の過ごし方
3.今後の課題
今回のアンケート調査をきっかけとして、今
謝辞
アンケート調査に協力してくださいました、
に大きな不満があるわけではないが、かといっ
て満足しているわけではない。
「満足」か「不満」
の2分法では表すことができない人たちが少な
保護者の方々ならびに学校関係者の方々に、心
よりお礼申し上げます。
からずいることが明らかになった。
その理由を自由記述から具体的に見てみる
と、以下の3つの要因が影響していると考えら
引用文献
れる。それは、①デイサービス以外に選択肢が
かって、東京創元社、東京、1972
ない、②人の目を気にせず安心して遊べる場所
が少ない、または施設環境が整っていない、③
家庭環境や仕事状況など日々の生活に精一杯で
一番ケ瀬康子・薗田碩哉・牧野暢男、余暇生活
論、有斐閣、東京、1994
J. デュマズディエ(中島厳訳)、余暇文明へ向
手が回らない、ことである。デイサービスを中
心に、余暇となる活動がないわけではなく、そ
れぞれの場で楽しむ子どもたちの姿はたしかに
ある。しかし、活動の選択肢の少なさや、障が
伊藤健・菅野敦・橋本創一、特別支援学校に
おける余暇支援と社会参加に関する実態調査、
発達障害支援システム学研究 6(2)、59 − 64、
いのある子どもたちに合わせた環境の未整備、
また家庭状況の忙しさ、
といった要因による「あ
きらめ感」のために、余暇を多様に過ごすこと
は難しい、その現実が本調査より明らかになっ
2007
由谷るみ子・渡部匡隆、知的障害養護学校にお
ける夏季休業中の余暇支援に関する検討:保護
− 29 −
勝浦 眞仁・佐藤 貴虎
者へのニーズ調査と余暇支援活動の事後評価か
ら、特殊教育学研究 45(4)
、195 − 203、2007
細谷一博、長期休業中における知的障害児の余
暇実態と保護者ニーズに関する調査研究、発達
障害支援システム学研究 10(1)
、11-17、2011
工藤昌人・浅井純子・浅井繁樹・山口佐知子・
小野幸子・古川宇一,地域における障害児の水
余暇に関するアンケート協力のお願い
私たちの研究グループでは、旭川近郊の養護
学校に在籍している児童・生徒の保護者の皆さ
んを対象に、「余暇」の過ごし方に関するアン
ケートを実施しています。
「余暇」とは、学校終了後の放課後や夏休み等
の長期休暇などにおける時間の過ごし方のこと
で、子どもたちが楽しく遊んだり、何かに夢
中になって過ごしたりすることのできる時間で
泳活動に関する一考察:旭川市の水泳サークル
「マーメイドキッズ」の活動から、情緒障害教
育研究紀要 22、41 − 56、2004
す。
今回、皆さんのお子様が、いま「余暇」をど
のように過ごしているのかについて、お伺いし
たくアンケートを作成いたしました。お忙しい
田代敏啓,障害者とスポーツ、情緒障害教育研
究紀要 13、105 − 110、1994
ところ、お手数おかけしますが、ご協力のほど
よろしくお願いいたします。なおこのアンケー
i
トで回収したデータは研究目的以外には利用す
ることはなく、個人が特定されることがないよ
アンケートでは、以下の用紙を活用した。
うにします。どうぞよろしくお願いいたします。
第 1 問:お子さんについてお伺いします(選択
肢がある場合には当てはまる方に○をしてくだ
さい)。
① 性別 ( 男子 ・ 女子 ) ② 年齢・学年 ( 歳・ )
③ 障がいの種別 : 重複障がいをお持ちの方は、
複数ご回答ください。
知的障がい・ 肢体不自由 ・ 聴覚障がい ・
視覚障がい ・ 病弱 ・ 自閉症
その他 ④ 療育手帳の有無 ( A ・ B ・ なし )
第 2 問:2013 年度 1 学期の放課後や夏休みの
過ごし方について、どう感じていますか(当て
はまる選択肢に○をしてください)。
① 満足している ② 困っている ③ どちらともいえない
第 3 問:第 2 問で、<①満足している>と回答
された方は、理由を自由に記述してください。
− 30 −
余暇のかたち
− A 市近郊にある養護学校の子どもたちの余暇調査から− またおススメのスポットがあれば教えてくださ
い。
(例;ボランティアの方と動物園に行き、
楽しかった)
。
第 4 問:第2問で、<②困っている>、<③ど
1 個別で 2 小集団で (2 ∼ 4 人程度 ) 3 5 ∼ 10 人程度 4 11 人以上
5 その他(
ちらともいえない>と回答された方は、理由を
自由に記述してください。またおススメできな
いスポットがあれば教えてください(例:楽し
める場所が少ない)
。
第1位 第2位 第3位 第 5 問:放課後の過ごし方や夏休みの活動の中
で、どのようなことを望みますか?
① 場所について(当てはまる番号に○をして
④ 活動内容について(当てはまる番号に○を
つけていただいた上で、具体例をお願いします。
具体例;パソコン、キャンプ、買い物など)
ください。複数回答可)
1 自宅 1 室内での遊び(具体例:
)
2 学区の小・中学校 3 児童館・公民館 2 屋外での遊び(具体例:
)
4 図書館
5 近所の公園、体育館 6 プール 3 趣味的な活動(具体例:
4 学習的な活動(具体例:
7 福祉関係の施設 8 養護学校
9 デパート・ショッピングモール 10 映画館 11 カラオケ
)
)
)
5 家事・作業的なこと(具体例:
)
6 自主サークルの活動、福祉団体主催の活動
12 その他(
)
② 一緒に過ごすグループについて(望む順番
に、第3位までつけて下さい)
1 近所の人たちと一緒に 2 家族で (具体例:
7 ちょっとした外出・旅行(具体例:
8 その他(具体例:
)
)
)
3 学区の子どもたちと一緒に
4 養護学校の子どもたちと一緒に 5 学校の先生と一緒に 6 ガイドヘルパー、ボランティアと一緒に
第6問:放課後の過ごし方や夏休みの過ごし方
について、感じていること、気になること、希
望・要望があれば、お書きください。
7 その他(
第1位 第2位 )
第3位
③ 一緒にいる人数について(望む順番に、第
3位までつけて下さい)
ii
初等部は小学 1 年生から小学 6 年生まで、中
等部は中学 1 年生から中学 3 年生まで、高等部
は高校 1 年生から高校 3 年生までをそれぞれ意
味している。
iii
その他に含まれるのは、ダウン症が 3 名、精
神的発達遅滞 1 名、運動機能低下 1 名、ブラダー
ウィリー症候群 1 名である。また療育手帳の有
− 31 −
勝浦 眞仁・佐藤 貴虎
無については、A:108 名、B:27 名、なし 2 名、
3 級 2 名であった。
− 32 −
ミズナ(Brassica rapa L. Japonica Group)の
生育および硝酸イオン濃度の季節変化
Seasonal Changes in the Growth and Nitrate Concentrations of Mizuna
(Brassica rapa L. Japonica Group) 和島孝浩 *・近藤謙介 **・村山議顕 ***・圖師一文 ****・松添直隆 ***
Takahiro WAJIMA*, Kensuke KONDO**, Noriaki MURAYAMA***,
Kazufumi ZUSHI****, Naotaka MATSUZOE***
* 旭川大学短期大学部生活学科食物栄養専攻
** 鳥取大学農学部附属フィールドサイエンスセンター
*** 熊本県立大学環境共生学部環境資源学科
**** 宮崎大学農学部植物生産環境科学科
Abstract
We investigated the effects of cultivation seasons on the growth and nitrate concentrations of
mizuna (Brassica rapa L. Japonica Group) by the fertilizer experiments through the four seasons
and the growth experiments at different temperatures (Low, Middle, High). Nitrogen fertilizer
amounts (kg 10 a-1) at fresh weight thresholds became as follows; Mizuna, spring: 25, summer: 7.8
~ 16, autumn: 16 ~ 25, winter: 19 ~ 29; Komatsuna (comparison plant), spring: 16, summer:
7.8, autumn: 33, winter: 39. Fresh weight of mizuna became the highest in winter and the lowest
in summer, although komatsuna became stable. Nitrate concentrations of both plants became
high in summer. In contrast, nitrate concentrations of both plants in winter did not increase so
much as summer in spite of the fact that fertilizer amounts became the highest. This was because
nitrate reductase activities became the highest by low temperature and decreased remarkably
by high temperature. Furthermore, nitrate concentrations of mizuna through the four seasons
increased up to twice of the values in standard tables of food composition in Japan, although
komatsuna became the same levels as the standard values. These results indicated that nitrate
concentrations of mizuna increased more easily than komatsuna through the four seasons.
Keywords: cultivation seasons, komatsuna, nitrate reductase activities, nitrogen fertilizer
amounts, temperature
− 33 −
和島孝浩・近藤謙介・村山議顕・圖師一文・松添直隆
緒言
窒素は植物の多量必須元素であるために,植
物は窒素源として硝酸イオンを吸収して蓄える
性質がある 1).食品中の硝酸イオンは,これま
でメトヘモグロビン血症や発癌性のニトロソ化
ン濃度に及ぼす影響を検討した.
合物の生成といった健康に悪影響を及ぼす危険
性が指摘されてきたが,現在では微生物の活動
によって硝酸イオンから還元された亜硝酸イオ
ンが原因物質であり,硝酸イオン自体は無害で
供試品種には,ミズナ‘京みぞれ’(タキイ
種苗),‘京しぐれ’(タキイ種苗)および‘夏
千緑’(中原採種場)を用いた.また,比較対
象としてミズナと同じアブラナ科のコマツナ
あると考えられている 2).しかしながら,硝酸
イオンは土壌溶脱性が高いために生産現場では
過剰施肥になり易く,環境問題とも関連する 3).
そのため,ホウレンソウやコマツナなどの主要
材料および方法
実験 1. 春,夏,秋および冬におけるミズナの
施肥量試験
‘味彩’(トーホク)を用いた.栽培は熊本県立
大学の圃場内(熊本市東区月出)のビニルハウ
ス内に設置した 6 列の砂栽培ベッド(培地:焼
砂 vs バーミキュライト= 5:3(v/v),幅:0.6
な野菜については硝酸イオン低減化マニュアル
(2006)が取りまとめられている 4).
m,長さ:4.5 m,深さ:0.7 m)において行った.
図 1 に砂栽培ベッドおよび施肥処理区の概要を
近年,品種改良や栽培技術の発達によって多
くの野菜が周年栽培されるようになったが,そ
示す.ミズナおよびコマツナは株間 10 cm,条
間 10 cm の 4 条千鳥植えとした.肥料には液
の成分は季節変化することが報告されている
5-8)
.野菜の成分は品種の他に,光,温度,水,
栄養素などの栽培環境の影響を受け,これらの
肥として大塚ハウス A 処方液(大塚アグリテ
クノ)を用いた.施肥および灌水は栽培ベッド
上に設置した 3 列のドリッパー間隔 10 cm の
要因が地域の気候や栽培時期と複合的に影響し
あうことによって成分が季節変化すると考えら
れる.辻村ら(2003)は,出回り期の長い野菜
の成分分析を行った結果,成分の季節変化が小
点滴ホース(ストリームライン 80,ネタフィ
ムジャパン)を用いて行った.一般的なミズナ
の窒素施肥量(ハウス秋蒔き,栽培日数 40 日)
は 10 kg 10 a-1 とされ,本実験で用いた砂栽培
さい野菜はセロリとピーマンのみであり,その
他多くの野菜については季節ごとの成分値を設
けることが望ましいとしている 6).
ミズナ(Brassica rapa L. Japonica Group)は京
ベッド(2.7 ㎡)当たりに換算すると 1 日当た
り 0.675 g となる.この量は大塚ハウス A 処方
液の 0.5 単位の約5L 分に相当する.したがっ
都の伝統野菜の一つであるが,近年,サラダな
どの生食用としての需要が増加し,小株採りの
周年栽培が主流となりつつある 9, 10).したがっ
て,1 日の最大施肥量を 5L に制限し,施肥処
理区は液肥濃度を 6 段階に設定した.即ち,大
塚ハウスの A 処方液の 0.5 単位を施肥する処理
区を標準施肥量区とし(以下,S 区とする),S
て,ミズナの生育および硝酸イオン濃度の季節
変化を把握することはミズナの硝酸イオン濃度
の低減化の上で重要である.Kondo et al.
(2008)
区の 1/4 倍,1/2 倍,2 倍,3 倍および 4 倍の濃
度の施肥処理区を,それぞれ,1/4S 区,1/2S 区,
2S 区,3S 区および 4S 区とした.施肥および
は先行研究として春においてミズナの施肥量試
灌水は基本的に毎日行うこととしたが,植物の
験を行っており,ミズナは同じアブラナ科のコ
マツナよりも硝酸イオン濃度が上昇しやすいと
報告している 11).そこで本研究では,春,夏,
状態や培地の乾燥程度によって処理量を調節し
た.また,1 回の施肥および灌水で栽培ベッド
底面から廃液が生じないようにした.播種は,
秋および冬におけるミズナの施肥量試験(実験
1),並びに,異なる気温(低温,中温および高
温)におけるミズナの生育試験(実験 2)を行い,
栽培時期の違いがミズナの生育および硝酸イオ
春作は 2008 年 4 月 14 日,夏作は 2007 年 7 月
31 日,秋作は 2007 年 10 月 18 日,冬作は 2008
年 1 月 9 日に行った.収穫は各栽培時期の S 区
の草丈が 25 cm に達した時点に行い,ミズナ
− 34 −
ミズナ(Brassica rapa L. Japonica Group)の生育および硝酸イオン濃度の季節変化
の最大葉長,葉色(SPAD 値)
,地上部の新鮮
重および硝酸イオン濃度を Kondo et al.(2008)
と同様の方法 11)によって測定した.
図 1 砂栽培ベッドおよび施肥処理区の概要
− 35 −
和島孝浩・近藤謙介・村山議顕・圖師一文・松添直隆
実験 2. 異なる気温(低温,中温および高温)
におけるミズナの生育試験
ミズナ‘京みぞれ’
(タキイ種苗)をグロー
スチャンバー内(FLI-2000A,東京理化器械)
の育苗スポンジ上に播種し,蒸留水を与えて
4 日(35 日 ), 秋 作 が 2007 年 10 月 18 日 ∼ 11
月 27 日(40 日),並びに,冬作が 2008 年 1 月
9 日∼ 3 月 26 日(77 日)となった.表 1 に各
栽培時期における日射量,平均気温,栽培日数,
施肥量および灌水量を示す.日射量は春作と夏
3 週間育苗した(日長:12 時間,気温:25℃
/15℃(明期 / 暗期)
)
.3 週間の育苗後,グロー
スチャンバー内に設置した循環式の湛液型水耕
栽培装置(定植数:9 個体,培養液量:30 L)
作が高く,平均気温は夏作が著しく高かったた
めに,季節変動は平均気温のほうが日射量より
も大きかった.栽培日数は冬作(77 日間)が
夏作(35 日間)の 2 倍以上となり,施肥量は
に定植して気温処理を 3 週間行った.気温処
理は 15℃ /15℃(明期 / 暗期)
,25℃ /15℃お
よび 35℃ /15℃の 3 段階に設定し,それぞれ,
15℃区,25℃区および 35℃区とした.培養液
栽培日数とともに増加したが季節変動は最も小
さかった.また,灌水量は夏作と冬作が多くなっ
た.これは,夏作の平均気温が高かったこと,
冬作の栽培日数が長かったことによるものであ
は大塚ハウス A 処方液の 0.5 単位を用い,1 週
間ごとに更新した.定植開始 3 週間後の明期開
る.図 2 に各栽培時期における施肥量試験の結
果を示す.両作物とも施肥量の増加にともなっ
始 3 ∼ 6 時間の間に収穫を行い,ミズナの最大
葉長,葉色(SPAD 値)
,地上部の新鮮重,硝
て全ての項目が上昇したが葉色は僅かに上昇す
る程度であった.新鮮重はミズナ 3 品種とも冬
酸イオン濃度および硝酸還元酵素(NADH 依
存型)の活性を測定した.硝酸還元酵素の活性
の測定は王子(1990)の方法 12)の一部を改変
作が最も大きく,春作と秋作が同レベルで続き,
夏作が最も小さかった.また,新鮮重は春作,
秋作および冬作では 3S 区まで増加したが,夏
して行った.
作では S 区または 2S 区で頭打ちになった.そ
れに対して,コマツナの新鮮重は春作の 2S 区
以上の施肥処理区が他の栽培時期に比べて若干
小さかったが,栽培時期を通じて安定して推移
結果および考察
実験 1. 春,夏,秋および冬におけるミズナの
した.一方,硝酸イオン濃度は両作物とも夏作
が著しく高く,その傾向は S 区以上の施肥処理
区で強かった.
施肥量試験
栽培期間は,春作が 2008 年 4 月 14 日∼ 5 月
24 日(40 日)
,夏作が 2007 年 7 月 31 日∼ 9 月
表1 各栽培時期の日射量 , 平均気温 , 栽培日数 , 施肥量および灌水量
栽培時期
春
夏
秋
冬
四季を通じた
変動係数
日射量
-2
平均気温 栽培日数
(MJ m )
20
21
12
12
(℃)
18
29
15
7.9
(d)
40
35
40
77
30
50
41
施肥量(kg10 a-1)
窒素施肥量
8.2
7.8
8.1
9.7
10
灌水量
総施肥量 (kL 10 a-1)
42
110
40
130
42
82
50
120
19
施肥量は標準施肥量区(S区)のものを示す.即ち,1/4 S区,1/2 S区,2S区,3S区お
よび4S区の施肥量は,それぞれ,表の数値の 1/4 倍,1/2 倍,2倍,3倍および4倍となる.
− 36 −
ミズナ(Brassica rapa L. Japonica Group)の生育および硝酸イオン濃度の季節変化
図 2 各栽培時期における施肥量試験の結果(■:1/4S 区,▲:1/2S 区,●:S 区,○:2S 区,△:
3S 区,□:4S 区)
.プロット点は平均値を,アスタリスク(*)は同一季節間において有意差
ありを示す(n=6, p < 0.05)
.グレー部分は S 区から 4S 区までの増加分を示す.
実験 2. 異なる気温(低温,中温および高温)
栽培時期の違いがミズナの生育および硝酸イオ
におけるミズナの生育試験
ン濃度に及ぼす影響
表 2 に異なる気温におけるミズナの生育試験
の結果を示す.葉長,葉色および新鮮重にお
いて気温処理による有意差は認められなかった
が,硝酸イオン濃度は気温とともに上昇する
傾向であった.一方,硝酸還元酵素の活性は
15℃区が最も高く,気温が上昇するにしたがっ
て低下する傾向であった.植物の硝酸同化は硝
酸還元酵素によって律速される 1).Dan et al.
(2005)は高温条件下においてコマツナおよび
ホウレンソウの硝酸イオン濃度は上昇するが,
その原因の一つとして硝酸還元酵素の活性の低
下を挙げている 13).以上のことから,ミズナ
も気温が高いと硝酸還元酵素の活性が低下する
ことによって硝酸イオン濃度が上昇すると考え
られる.
一般にミズナの生育適温は 15℃∼ 25℃とさ
れ,15℃以下では葉の伸長が緩慢になり,25℃
以上では葉が徒長して葉数の確保が難しいとさ
れる 14).実験 1 において,冬作の平均気温は
7.9℃と生育適温を約 7℃下回り,栽培日数は他
の栽培時期よりも著しく長くなったものの,草
丈 25 cm を確保する間に葉数が増加したため
にミズナの新鮮重は最も大きくなったと考え
られる.一方,夏作では平均気温が 29℃と生
育適温を約 5℃上回っており,葉が徒長して葉
数を確保できなかったために新鮮重は最も小さ
くなったと考えられる.実験 2 において,ミズ
ナの硝酸還元酵素の活性は 15℃区で最も高く,
気温が上昇すると硝酸還元酵素の活性が低下し
て硝酸イオン濃度は上昇した.このことから,
− 37 −
和島孝浩・近藤謙介・村山議顕・圖師一文・松添直隆
表 2 異なる気温におけるミズナの生育試験の結果
気温処理区
15℃区
19a
33a
4.5a
390b
27a
葉長(cm)
葉色(SPAD 値)
新鮮重(g)
硝酸イオン濃度(mg 100gFW-1)
硝酸還元酵素活性(nmol NO2-min-1gFW-1)
25℃区
23a
31a
6.5a
560ab
13b
35℃区
20a
29a
5.6a
690a
9.0b
数値は平均値,異なるアルファベットは有意差ありを示す(n=6, p < 0.05).
冬作では施肥量が最も多かったものの,硝酸還
元酵素の活性が活発化したために硝酸イオン濃
冬作が大きかったがミズナよりも安定して推
移した.硝酸イオン濃度は両作物とも夏作が高
度は夏作ほど上昇せずに秋作と同レベルであっ
たと考えられる.一方,夏作では高温によって
かった.五訂増補日本食品標準成分表(以下,
食品成分表とする)によると,新鮮重 100 g 当
硝酸還元酵素の活性が著しく低下して硝酸イオ
ンが蓄積したと考えられる.また,蒸散流が増
たりの硝酸イオン濃度はミズナが 200 mg,コ
マツナが 500 mg である 17).ミズナは‘京し
加すると水とともに土壌中の栄養素の吸収量は
増加する 15).夏作は灌水量が最も多かったこ
とから,蒸散流の増大によって硝酸イオンの吸
ぐれ’および‘夏千緑’の硝酸イオン濃度が全
ての栽培時期において食品成分表の値より高
く,四季を通じた 3 品種の平均値は 380 mg で
収量自体も増加したと考えられる.さらに,硝
酸同化過程においてはアミノ酸の合成のエネル
ギーや炭素骨格として光合成産物が消費される
16)
.夏作では S 区または 2S 区を境界線として
食品成分表の値の 2 倍近く高かった.一方,コ
マツナの硝酸イオン濃度は夏作および秋作にお
いて食品成分表の値より高かったが,四季を通
じた平均値は 570 mg と食品成分表の値と同レ
新鮮重が頭打ちになる反面,硝酸イオン濃度は
著しく上昇していることから,S 区または 2S
区以上の施肥処理区では吸収された硝酸イオン
ベルであった.Kondo et al.(2008)は春におい
てミズナはコマツナよりも硝酸イオン濃度が上
昇しやすいと報告しているが 11),本研究では,
はほとんど同化されずに蓄積したと考えられ
る.これらのことも夏作の硝酸イオン濃度が著
しく高かった原因として考えられる.
春だけでなく,夏,秋および冬においても,ミ
ズナはコマツナより硝酸イオン濃度が上昇しや
すいことが明らかとなった.この原因としては
ミズナの生育および硝酸イオン濃度の季節変化
前節で考察した生理的特性の他に作型の違いも
本研究結果から,新鮮重の閾値をとる施肥
量(kg 10 a-1)は,ミズナの場合は,春作では
25/130(窒素施肥量 / 総施肥量)
,夏作では 7.8
考えられる.本研究では小株採りのミズナを研
究対象としており,本研究の収穫時期はミズナ
にとっては本来ならば生育初期である.生育初
∼ 16/40 ∼ 80, 秋 作 で は 16 ∼ 25/86 ∼ 130,
期は植物の生育や代謝などが大きく変化しやす
冬作では 19 ∼ 29/100 ∼ 150 となった.一方,
コマツナの場合は,春作では 16/86,夏作では
7.8/40,秋作では 33/170,冬作では 39/200 と
い時期であるためにミズナの硝酸イオン濃度は
上昇しやすいのかもしれない.以上のことから,
栽培時期と施肥量は複合的に影響しあい,ミズ
なった.これらの施肥量における新鮮重および
硝酸イオン濃度をプロットして季節変化をみた
ものが図 3 である.新鮮重は,ミズナは 3 品
種とも夏作が最も小さく,冬作が最も大きかっ
ナの生育および硝酸イオン濃度は季節変化する
ことが明らかとなった.
野菜の硝酸イオン濃度の季節変化に関して
は,その需要の高さから主にホウレンソウに
た.一方,コマツナの新鮮重は春作が小さく,
おいて研究が進められてきた.Fujiwara et al.
− 38 −
ミズナ(Brassica rapa L. Japonica Group)の生育および硝酸イオン濃度の季節変化
図3 ミズナおよびコマツナの新鮮重と硝酸イオン濃度の季節変化.
プロット点は平均値を示す(n=6).
(2005)は,市販ホウレンソウの硝酸イオン濃
る有機酸類のプールが増加すると報告している
度は 7 月∼ 9 月に高く,1 月∼ 3 月に低いと報
告しており 7),本研究においてもミズナの硝
酸イオン濃度はホウレンソウと同様の季節変化
.したがって,今後はミズナの硝酸イオンと,
機能性成分(アスコルビン酸,β−カロテンな
ど)や呈味成分(糖,アミノ酸など)との関係
をすることが明らかとなった.Watanabe et al.
(1994)および吉田ら(2005)は,栽培時期に応
じた品種選定や施肥設計を行った場合,ホウレ
ンソウの硝酸イオン濃度に季節間差はほとんど
18)
を検討する予定である.
摘要
ミズナの生育および硝酸イオン濃度の季節変
みられないと報告している 5, 8).したがって,
ミズナも栽培時期に応じた品種選定や施肥設計
化を把握するために,春,夏,秋および冬にお
ける施肥量試験,並びに,異なる気温(低温,
などによって夏期の硝酸イオン濃度を低減でき
るものと考えられる.ちなみに,本研究で用い
中温および高温)における生育試験を行い,栽
培時期の違いがミズナの生育および硝酸イオ
たミズナ 3 品種の中では,
‘京みぞれ’が最も
硝酸イオン濃度が低かった.一方,Watanabe
et al.(1994)および吉田ら(2005)は前述の研
ン濃度に及ぼす影響を調べた.新鮮重の閾値を
とる窒素施肥量(kg 10 a-1)は,ミズナの場合
は,春作では 25,夏作では 7.8 ∼ 16,秋作で
究において,硝酸イオン以外の有用成分(糖,
アスコルビン酸,β−カロテンなど)の濃度は
夏期の方が低いとも報告している 5, 8).また,
Okazaki et al.(2008)は,ホウレンソウでは
体内の窒素濃度が上昇すると,糖のプールが減
少し,アミノ酸およびその中間代謝産物であ
は 16 ∼ 25,冬作では 19 ∼ 29 となり,比較対
象であるコマツナの場合は,春作では 16,夏
作では 7.8,秋作では 33,冬作では 39 となった.
ミズナの新鮮重は夏作が最も小さく冬作が最も
大きかったが,コマツナの新鮮重は栽培時期を
通じて安定した.一方,硝酸イオン濃度は両作
− 39 −
和島孝浩・近藤謙介・村山議顕・圖師一文・松添直隆
物とも夏作が高く,冬作は施肥量が最も多かっ
たにもかかわらずそれほど上昇しなかった.こ
れは,植物の硝酸還元酵素の活性が低温で最も
高く,気温の上昇とともに著しく低下したため
である.さらに四季を通じた硝酸イオン濃度は,
73-77,2005.
9)田中大三:ミズナ・ミブナ 基礎編 来歴
と野菜としての特徴,「農業技術体系 野菜
編」,農文協(東京),p 1-3, 2005a.
10)田中大三:ミズナ・ミブナ 基礎編 ミズナ・
コマツナは食品成分表の値と同レベルであった
がミズナは 2 倍近く高かった.以上のことから,
ミズナの硝酸イオン濃度は,四季を通じてコ
マツナよりも上昇しやすいことが明らかとなっ
ミブナの作型と系統・品種,「農業技術体系
野菜編」, 農文協(東京),p 9-13,2005b.
11)Kondo, K., Takeshita, A., Matsuzoe, N.:
Effects of fertilizer application rate on the
た.
キーワード:気温,コマツナ,栽培時期,硝酸
還元酵素の活性,窒素施肥量
growth and nitrate concentration in mizuna
(Brassica rapa L. Japonica group) and
komatsuna, J. SHITA. 20(4), 242-246, 2008.
12)王子善清:第 7 章 植物酵素取り扱い法 2.
引用文献
1)H.W.ヘルト(金井龍二 訳)
:第 10 章 窒素代謝関連酵素活性の測定法 1)硝酸還
元酵素,
「植物栄養実験法」,博友社(東京),
硝酸同化,
「植物生化学」
,丸善出版(東京)
,
p 223-249,2000.
p 256-261,1990.
13)Dan, K., Yamato, Y., Imada, S.: Effect of
2)J.リロンデル,J-L.リロンデル(越野正
義 訳)
:
「硝酸塩は本当に危険か 崩れた有
害仮説と真実」
, 農 文 協( 東 京 )
,pp 256,
growth temperature on nitrate content in
komatsuna and spinach, Kyushu Agri. Res.
67, 169, 2005.
2006.
3)間藤 徹:堆肥 vs 化学肥料 , 化学と生物,
45(6),426-429,2007.
4)野菜の硝酸イオン低減化マニュアル:独立
14)田中淳夫:ミズナ(キョウナ)この野菜の
特徴と利用,「新野菜つくりの実際 葉菜」,
農文協(東京),p 252-257,2001.
15)L.テイツ,E.ザイガー(編)(西谷和彦,
行政法人 農業・食品産業技術総合研究機
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5)Watanabe, Y., Uchiyama, S., Yoshida, K.:
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oleracea L.) grown in the summer and
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16)Miyajima, D.: Effects of concentration
of nutrient solution, plant size at harvest,
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889-895, 1994.
ascorbic acid and sugar concentrations in
6)辻村 卓,青木和彦,佐藤達夫:
「野菜のビ
タミンとミネラル」
,
女子栄養大学出版部(東
京)
,pp 159,2003.
leaves of hydroponically grown komatsuna
(Brassica campestris L. rapifera group), J.
Japan. Soc. Hort. Sci. 63(3), 567-574, 1994.
7)Fujiwara, T., Kumakura, H., Ohta, S.,
17)五訂増補日本標準食品成分表:文部科学省
Yoshida, Y., Kameno, T.: Seasonal variation
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commercially available spinach, Hort. Res.
(東京),2005.
18)Okazaki, K., Oka N., Shinano, T., Osaki,
M. and Takebe, M: Differences in the
(Japan), 4(3), 347-352, 2005.
8)吉田企世子,森 敏,長谷川和久:第 7 章 栽培時期の異なるホウレンソウの成分,
「野
菜の成分とその変動」
,学文社(東京)
,p
− 40 −
metabolite profiles of spinach (Spinacia
oleracea L.) leaf in different concentrations
of nitrate in the culture solution, Plant Cell
Physiol., 49(2), 170-177, 2008.
<報告>
「にこにこランチ」活動報告
∼永山むつみ町内会および永山むつみ青空会に所属する高齢者との交流から∼
A report of seminar activity that “NIKONIKO LUNCH”.
−A interaction of between students to the elderly people who belong to the Nagayama Mutsumi
neighborhood association and Nagayama Mtsumi Aozora society (a club for the elderly).−
穂積 幹子
Mikiko HOZUMI
柴山 祐子
Yuko SIBAYAMA
旭川大学短期大学部生活学科生活福祉専攻
旭川大学短期大学部生活学科食物栄養専攻
・はじめに
わが国では、他に類を見ないスピードで高齢化
が進行している。全人口に占める 65 歳以上人口
の割合(高齢化率)は、1950 年には総人口の 5%
高齢者の生きがいづくりが課題の一つとなると考
える。前者の希望を実現するにしても後者しても
「健康」がキーワードになろう。生涯健康である
に満たなかったが 1970 年に 7%を超え、さらに
1994 年にはその倍の 14%を超えた。そして、高
齢化率は上昇を続け、2012 年時点で 23.3%に達し
ことを望むニーズの高まりは巷に溢れている健康
食品やサプリメント等の商品の多さやマスメディ
アによる様々な健康法の紹介を見てもわかる。国
ている。1
この状況はさらに進行すると予測されており、
2030 年には 31.6%にまで達すると推計されてい
る。2
の医療・福祉の費用負担の増大も深刻な社会問題
である今日においては、病気になってからではな
く、日常の予防によって高齢者の心身の健康を維
持していくことの重要性が注目され政策にも反映
また、高齢化と同時に進行する少子化問題も深
刻であり、総人口の減少および 15 歳以上 65 歳未
している。健康で自立した生活を地域でいかに営
むことができるかが高齢者にとっての悩みでもあ
満の生産年齢人口の減少による経済的な弊害につ
いても併せて考えて行かなければならない課題で
ある。
旭川市においては 2013 年 3 月時点で 27.6% 3 と、
北海道 179 市町村における高齢化率の高さは 140
り、ニーズであろう。このニーズに応える為にも、
高齢者の 「 健康寿命 」 5 の延伸の阻害要因である
生活習慣病(食生活)やロコモティブシンドロー
ム(運動器症候群)の改善や認知機能の低下を防
ぐ取り組みが重要であると考える。そして、これ
位と下位にあるも、道内平均値の 26.3% を上回る
状況にある。4
今後、ますます進行する超少子高齢社会にあっ
ては、健康を保ちながらできる限り現役で働き続
らの取り組みの目的達成には、比較的自由な時間
を過ごす高齢者層の生活の拠点を置く地域の中で
同世代や異世代間の交流があり各々の自己実現が
可能であるように文化・スポーツ・遊び・学び・
けることを希望する高齢者の人材活用や、リタイ
ヤした後も身体的・精神的・社会的に健康と生き
がいを失わず元気に地域で生活し続けたいと望む
教育・福祉が融合し「コミュニティを一つの織物の
ように織り上げて行く」(薗田、西野(2003.3))6 活動が地域で醸成されていく事が必要であると考
1 国連において、高齢化率 7% 以上を高齢化社会、14% 以上を高齢社会、21% 以上を超高齢社会と定義さ
れている。
2 内閣府ホームページより (http://www.cao.go.jp/)
3 旭川市公式ホームページより(http://www.city.asahikawa.hokkaido.jp/files/kaigokourei/ikiiki/
genjo.htm)
4 北海道庁ホームページより(http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/khf/koureishajinkou.htm)
5 健康で自立して暮らすことができる期間
6 参考引用文献(財)日本レクリエーション協会編『楽しいをつくる∼やさしいレクリエーション実践∼』
(2003.3)における「レクリエーション基礎理論」執筆者
− 41 −
穂積 幹子・柴山 祐子
える。
以上の考えのもと、
「食」から地域の高齢者
の健康を考える柴山ゼミと、
「相互交流と介護
予防を目的としたレクリエーション」から地域
の高齢者の健康を考える穂積ゼミが協働し一つ
また、学生間の交流という点において、普段
の学びの中では、食物栄養専攻と生活福祉専攻
の学生間の学年単位、ゼミ単位での交流の機会
は全くない。今回の開催は、両専攻の学生の交
流で互いの専門領域を知るきっかけとなり、将
の取り組みを試みた。
・「にこにこランチ」の目的
「 にこにこランチ 」 活動の目的は次の五つで
来専門職として現場で活躍する上で不可欠とな
る他職種との連携・協働の実践を行うことで、
互いの職種を尊重できる人材になればと期待し
ている。
ある。
一つは、地域における見守り事業に貢献した
いという思いから、まずは地域住民の方達に学
生の事を知って頂き、学生達も地域で暮らして
そして、学生達が学んだ知識に基づき、調理
やレクリエーション活動を実践することで、自
分達自身が理解を深める事になる。更に、核家
族化が進行した現代の若者にとって、自分達の
いる高齢者の実情等を知る機会とする。
二つ目には、生活習慣病の予防・改善や介護
祖父母、それ以上の世代の方々との交流の機会
は貴重であり、かつての日本においては当たり
予防の視点に立ち、食生活の改善や心身機能・
生活の質の維持向上につながる活動を学生たち
前に家庭内で伝承されていた知識や技術を、こ
の機会に地域住民の方達から受け継ぐ機会にな
が普段学校で学んでいる知識を基に提案する。
三つ目は、地域の高齢者(特に独居の方)同
士の交流の機会を提供する。
ればと期待している。
地域住民の方達にとっては、食物栄養専攻の
学生が提供する昼食や寸劇、教員による講話「食
四つ目は、「 にこにこランチ 」 での交流を通
じ、学生達が地域で暮らす高齢者の特性を把握
し、関わり方を学ぶ機会とする。
五つ目は、地域の高齢者の方達が培って来た
に関する専門的な知識」を得て食生活を見直
すきっかけとなり「一次予防」(生活習慣を改
善して健康を増進し、生活習慣病等を予防する
こと)が可能になること を期待できる。また、
食を含めた生活の知恵や技術等を学生たちが学
び、それらを受け継いでいくこと。
以上の目的が達成されたならば、次のような
相互交流と介護予防を目的としたレクリエー
ションプログラムを楽しみながら実践すること
は、個々の参加者にとって ADL 8 の維持向上
効果が期待できると考えた。
まず、学生にとっては、ゼミ活動における地
域での体験を通し、学校での学びを深化させる
につながると共に、楽しいムードやフロー体験
(その活動に我を忘れて没頭するような経験)、
それらを通じて気晴らしや自己実現、自分が自
ことができるという効果である。食物栄養専攻
分であるということの確認を得る事等が挙げら
の学生にとっては、将来施設や病院に勤務した
際に食事を提供する対象者の一人となる高齢者
の特質等を知る手掛かりになる。生活福祉専攻
れる。また、レクリエーションによって、経験
的な学習、技術や知識の獲得、情緒面の発達な
ども期待される。生理的利益としては、規則正
の学生にとっては、介護現場で遭遇する多様な
しい運動が心臓病の発生率を低下させるような
生活歴や、生活基盤を背景とした多様な個性を
持つ介護サービス利用者の個別ケアについて考
え、実践する際の一助となる事を期待している。
心臓血管の変化を促したり、ストレスを減じた
りすることなどが明らかとなっている。更に、
このような町内会や老人会といった組織のメン
7 「一次予防」∼生活習慣を改善して健康を増進し生活習慣病等を予防すること、
「二次予防」∼健康診査
等による早期発見・早期治療、「三次予防」∼疾病が発症した後必要な治療を受け、機能の維持・回復を
図ること
8 ADL(Activities of Daily Living;日常生活動作 ):移動、食事、排泄、着替え、入浴など、毎日の生活を
送る上での基本的な動作
− 42 −
「にこにこランチ」活動報告
∼永山むつみ町内会および永山むつみ青空会に所属する高齢者との交流から∼
バーが集う集会への参加は、所属集団への帰属
意識が強まりコミュニティでの生活の満足度を
高めたり、まちづくりへの意識が積極的になる
などの効果も期待される。
し、地域の高齢者の健康づくりに対する関心を
高めることである。
国においては、これからの少子高齢化社会を
健康で活力あるものにするため、生活習慣病な
どを予防し、壮年期死亡の減少、「健康寿命の
・活動内容
上記の目的を持った活動を私達は学生の学
び舎のある永山地域で展開したいと考えた。ゼ
ミ生の中には永山地域が生活圏の者もおり、日
延伸等を目標」とする 21 世紀における国民健
康づくり運動「健康日本 21」を提唱し、広く
国民に呼びかけているところである。
健康づくりは、住民一人ひとりが正しい知識
頃よりお世話になっている地域の方達に学生た
ちが学んでいることを生かしてご恩返しになる
ような何かができないかとの思いがあったから
だ。そこで、ゼミ担当教員にて旭川市役所福祉
を持ち、自覚し、自らの意志で生活習慣の行動
変容を遂げなければ効果を上げることはできな
い。こうした個人の力と併せて、社会全体とし
ても、個人の主体的な健康づくりを支援してい
保健部に相談。永山地域での活動の可能性を模
索するところから始まった。その後永山地域内
くことが重要である。この点において国・地方
公共団体が重要な役割を担うことはいうまでも
にある永山むつみ町内会及び永山むつみ青空会
(老人クラブ)の方々の賛同が得られ、日程等
ないが、栄養学を学ぶ学生が中心となるボラン
テアなどの果たすべき役割も大きい。
具体的なプログラムの策定が両者の話し合いを
経て具体化していった。永山むつみ町内会は準
会員含めて会員数 1210 名程度(うち 77 歳以上
(2) 献立作成の目標
1 食当たりの目標栄養価、平均エネルギー
700 ㎉、たんぱく質 25g、脂質エネルギー 20 ∼
約 176 名)
、永山むつみ青空会は 60 歳以上の方
が入会しており、会員数は 124 名程の組織であ
る。9
「にこにこランチ」当日までの準備として、
25%、食物繊維 6.5g、塩分 3g 以下とする。
献立はきのこご飯(むつみ会館で収穫した枝
豆入り)、かぼちゃのそぼろ煮、なすとみょう
がのもみ漬け、ニラとたまごのスープ、さつま
永山むつみ町内会及び永山むつみ青空会(老人
クラブ)の協力を得て 65 歳以上の会員宅に案
内状が配布され、参加者募集及び参加人数の集
約がなされた。
タイムスケジュールについては、表1を参照
されたい。
いもの蒸しパンとした。
(3) 開催に向けての準備
1.安全で美味しい食事の提供目指す。
担当する 2 年生・教員は検便検査を行い、
手洗いなど徹底する。
2.参加された皆さんに喜んでいただける食事
各ゼミの活動の目的等を以下に紹介する。
を目指す。
・食物栄養専攻柴山ゼミの活動内容等について
(1)柴山ゼミの活動目的
「健康寿命」は、平均寿命から介護や病気で
季節の食材、ゼミで収穫した食材の活用を
する。
高齢者特有な骨粗しょう症・低栄養・食物
繊維等に注目し、献立を考える。
寝たきりの期間(自立した生活ができない期間)
を引いたものが健康寿命になる。つまり、何歳
まで自立して健康に暮らせるかの指標である。
食材の切り方、食べやすさを追求する。
盛付け時の色彩について検討する。
デザートは温かさを保つため、提供時間を
「高齢者と生活習慣病」と題した取り組みは、
健康寿命の言葉の意味や概念を学生たちが理解
考え手順を組み立てる。
以上の事柄を考慮しながら目標栄養価に
9 永山むつみ青空会会長より聴取
− 43 −
穂積 幹子・柴山 祐子
沿った献立を完成させる。
3.料理の試作開始、食材の分量を点検する。
試作は 2 年生と教員分 15 名分で調理し、
材料及び調味料の分量、更には料理の所要
時間など確認する。
にはすべての料理をデーブルに並べた。
13時より柴山ゼミ 2 年生による寸劇 「 桃太
郎の昔話 」 で高齢者への食育を行なった。赤・
緑・黄の 3 色に当日使用した食材を、壁に貼っ
た3色シートに貼り付け、食材に含まれている
4.会場の確認(器具・食器など)
作業動線、当日使用するガス釜・鍋・器材
を確認に行く。
5.材料の発注を行う
栄養素及びその働きと食の大切さを説明した。
その後、担当教員による「食と健康」10食品
群のチェックシート 10 を使った栄養のバラン
スについて講話を行った。(写真 3・4・5)
当日不足分が出ないよう再確認が必要。ま
た、生食材及び出来上がった料理の保存食
を忘れずに行う。
6.ゼミの収穫物の活用
(5)学生の感想
・普段、高齢者とのつながりがなかったが、こ
の様な機会が出来、貴重な経験となりました。
・高齢者の方達と普段接する機会がなかったの
当日まで保存が効く南瓜を使用する。
7.老人クラブからの収穫物が提供された。
で何を話したらいいのかわからなく戸惑って
いたが、高齢者の方達から積極的に話をして
さつまいも・枝豆の活用(枝豆は冷凍保存
されていた)
くれ会話も弾みました。
・食育「桃太郎の寸劇」は、高齢者の方々の笑
8.前日から当日までの流れについて作業工程
作成する。
以上の内容で進めた。
顔で緊張もほぐれ大成功となりました。
・パンフレットに掲載された献立を参考に、早
速家で作ってみると言ってくれたことが嬉し
(4)活動の流れ
平成25年9月27日15時、学校に食材が
搬入される。生食材は各50gの保存袋に入れ
冷凍庫に保存し、その他食材料の検収(品質・
く思いました。
・調理する会場が狭く感じました。今後学校な
どの施設で開催出来ればと思います。
(6)総括
鮮度・分量)を行った。28日当日は、学校か
ら会場に材料を運び入れ、主食・副食(小鉢と
汁物)
・デザート毎に担当が分かれ、作業を開
今日、孤独死などの問題をニュースでよく見
かけるが、今回行った活動により食を通して人
と人とのつながりが健康寿命への認識にとても
始した。きのこご飯は会場に設置されたガス釜
で炊き来上がり、老人クラブから提供された枝
豆をきのこご飯に混ぜ合わせた。南瓜は二度の
重要な役割を持っていることを学生、参加者が
共に歩み寄ることで学べたことは大きな成果だ
と考える。配布したパンフレットも好評で早速
試作で煮崩れを経験し、本番では煮崩れしない
実践するといった参加者も多くおり、学生たち
ようにと蒸し器で蒸し、あんを上からかけるよ
う作業工程を変更した。茄子とみょうがのもみ
漬けは茄子の量が多かったので、担当を変更し
もそのことに大きな達成感と今後の取り組みに
対する強い意欲を見せていた。
学生と参加者の交流は、一人ぼっちの高齢者
2 名から 4 名に担当者を増やし一気に茄子の切
がいない地域社会を目指すこと、そして、それ
り込みを行った。ニラとたまごのスープは卵の
殻が入らないよう丁寧に割り、溶いてからザル
で濾すことで安全な食事作りを徹底した。さつ
に対し食物栄養専攻にしかできない役割がある
のだということを学生だけではなく参加者に伝
わったこともまた、大きな成果だと考える。
まいもの蒸しパンは食後に提供する予定だった
が、時間よりも早く出来上がり、12時15分
10 食品群チェックシートは、「介護されたくないのなら、粗食はやめなさい」熊谷修(著書)より抜粋 − 44 −
「にこにこランチ」活動報告
∼永山むつみ町内会および永山むつみ青空会に所属する高齢者との交流から∼
・生活福祉専攻穂積ゼミの活動内容等について
(1)レクリーションプログラムの目的・主旨
上述の「にこにこランチの目的」の後部で述
べたレクリエーションの意義・目的を踏まえ、
穂積ゼミ(1年生)においては介護予防 11 の
視点に立ちレクリエーションプログラムを企画
した。なぜなら、住み慣れた地域での生活の継
続を可能にするには、福祉における制度や福祉
齢者が自ら活動に参加し、おのずと介護予防が
推進される地域コミュニティを構成することで
あり、一次予防事業を活用し、介護予防の推進
を図る地域づくりにある。
以上の様に、穂積ゼミの学生による地域の高
齢者の方々へのレクリエーションの支援が、学
生自身の学習と成長の為のみならず介護保険法
の改正の柱にもなった「明るく活力ある超高齢
社会」の実現に貢献することにも繋がると考え
サービスの充実、親類や地域住民相互の助け合
いの関係づくりはもとより高齢者自身の身体
面・精神面における生活能力も問われるからで
ある。
た。
(2)活動の内容
学生たちは、授業やゼミ活動等で学んだ内容
2006 年の介護保険法の改正の柱は、
「明るく
活力ある超高齢社会」を確立することである。
を応用し、資料等を調べ、話し合いによってプ
ログラムを構成した。その際、特に重視したの
これにより、新予防給付、地域支援事業の導入
がなされた。新予防給付の対象は要支援や要介
は「笑い」をいかに引き出し健康を増進させる
かという点であった。これはゼミ生の発案であ
護 1 など軽度の生活機能低下が認められる状態
の高齢者に対するものであり、要支援や要介護
状態となる恐れのある高齢者の生活機能の維
る。理由としては、笑いによって免疫力の高ま
りや血糖値コントロールが可能であるとの証明
が医学的にもなされているとの情報による。ゼ
持・向上や、生活機能の低下がない状態、つ
まり活動的な状態にある高齢者は地域支援事業
の対象となる 。介護予防は、高齢者の生活機
能の程度・状態に対応して対策が考えられてい
ミ生が自ら新聞記事 13 から調べ、発案。プロ
グラムを構成する上での基礎となった。種目は
アイスブレーキングとして手遊びの「鼻つまみ
耳つかみ」の他、新聞紙を丸めて棒状にした道
る。地域支援事業における介護予防事業は、活
動的な状態である高齢者を対象とし、できるだ
け長く生きがいを持ち、地域で自立した生活を
具を用い、曲に合わせて体を動かす「新聞棒体
操」、首に結んだ手拭いを後ろの座席の人にリ
レーして行く「手拭いリレー」、箱の中身の物
送ることができるようにすることを支援する一
次予防事業と、要支援・要介護に至るリスクの
高い高齢者を対象にした二次予防事業とで構成
などを目隠しをした者が触覚だけで言い当てる
「箱の中身当てゲーム」の4種であった。種目
を決める話し合いの中で、参加予定者が地域に
されている 12。二次予防事業は、生活機能の低
暮らすお年寄りであることや参加見込みの人数
下が疑われる状態、つまり、要支援・要介護状
態となる恐れのある高齢者に介護予防プログラ
ムを提供する取り組みであり、ハイリスクアプ
等が考慮され、12 種目程の候補の中からこの
4種が決定した。使用する新聞棒等の道具類も
ほとんどが手作りであった。メンバー6名の中
ローチとして位置づけられる。一方、一次予防
でそれぞれの演目の担当を決め、ルール説明や
事業が目指すものは、地域において介護予防に
資する自発的な活動が広く実施され、地域の高
運営の仕方を研究。練習時は参加して下さる方
達にいかに笑って頂くかを目標に、声の大きさ
11 介護予防とは「要介護状態の発生をできる限り防ぐ(遅らせる)こと、そして要介護状態にあってもそ
の悪化をできる限り防ぐこと、さらには軽減を目指すこと」と定義される。
(厚生労働省「介護予防マニュ
アル」)
12 ここで用いている「一次予防」「二次予防」は厚生労働省「介護予防マニュアル」による
13 北海道新聞 9 月 7 日記事「笑いの医学的効果に注目」
− 45 −
穂積 幹子・柴山 祐子
や表情、しぐさを含めた説明の仕方、運営の仕
方等について互いにアドバイスしながら切磋琢
磨し、練習が重ねられた。
にこにこランチを開催した地域である永山む
つみ町内会では、参加者 74 名中要介護認定を
・食事の時に仲良くなった方の近くに行くと「こ
こおいで!」と言われ、一緒にご飯を食べ、
色々話を聴かせてもらい「私の孫に似てい
る!」と言われ、可愛がってもらえて嬉しかっ
た。
受けている方は、アンケート結果から得られた
有効回答 56 名中 2 名 14 であり、歩行時に杖な
どの補助具を必要とする高齢者も数名見受けら
れたが、少数であり殆どが元気な高齢者であっ
・特に大人数の前だったので、大きな声で分か
りやすい進行が必要となった。その分乗り越
えた時の経験値は大きなスキルに代わると事
前から確信していた。そして、メンバーが色々
た。
参加者の反応であるが、学生達の思いが通じ
たのであろう。笑顔や笑い声が会場に溢れた。
また、
「新聞棒体操」に使用した新聞棒及び
な人の協力を得てより大きな声で生き生きと
立ち振る舞っていたので嬉しかった。
・参加者を前にして、介護予防の必要性を感じ
た。
体操の仕方がイラストを交えて手描きされたプ
リントは、
「自宅でも続けて体操して頂きたい」
(4)総括
との学生(発案者)の希望にて、参加者にプレ
ゼントさせて頂いた。
(写真 1・2)
今回の「にこにこランチ」でのレクリエーショ
ンの企画・運営に当たり、学生たちはそれぞれ
(3)学生の感想より
学生のレポートより、一部抜粋し要約したも
の課題に向き合うことで、周囲の協力を得なが
らそれを乗り越えようと努力する過程で成長が
見られた。また、メンバーの成長を喜ぶ声も聴
のを紹介したい。
・練習の時点で自分自身では気が付かない点を
アドバイスしてもらえてとても勉強になっ
た。
かれ、お互いに高め合う取り組みができたので
はないかと思う。また、参加者との交流を通じ
て、地域が抱えている課題や地域に暮らす高齢
者の実態等について知り、考えるきっかけとも
・昼食の時間に参加者から「とても楽しかった」
「家でも体操やるわね」などの声を掛けても
らい、とてもうれしかった。
なったようである。
住み慣れた地域での生活を可能にするには、
公助、共助の充実はもとより、高齢者自身の
・想像よりたくさん集まってくれたことに驚い
た。
・町内との関わりを大事にしている方が多いよ
うに思えた。
ADL や IADL15 の能力も問われる。学生たちは、
授業やゼミ活動等で学んだ内容を活かし、介護
予防の視点に立ち、プログラムを組み立て実践
することができた。
・ゲームや棒体操も楽しそうに行われ、とても
笑顔が多く見られたように感じた。
・今後も地域の人達との関わりを大切にし、明
・考察
「無縁社会」という言葉がマスメディアか
るく笑顔で健康に暮らしていただけるよう
ら発信され、現代日本のひずみが浮上したのは
に、役に立ちたいと思う。
・レクリエーションを行う時のチームワークに
欠けるところがあったように感じた。
2010 年のことである。「無縁社会」とは、社会
の中で孤立して生きる人が増加している現象を
表す造語である.日本はムラ社会を原型とし、
14 図 20 参照
15 IADL(Instrumental Activities of Daily Living; 手段的日常生活動作 ):ADL を基本に自立した社会生活を
送るための応用的な活動のこと。買い物や電話の使用、食事の準備、掃除、洗濯、乗り物の利用、服薬管理、
家計の管理などがある。
− 46 −
「にこにこランチ」活動報告
∼永山むつみ町内会および永山むつみ青空会に所属する高齢者との交流から∼
親族、地域社会、会社などで比較的濃密な人間
関係が形成されてきた。こうした関係は血縁、
地縁、社縁などと呼ばれ、しがらみとなる一方
で相互扶助の役割も果たしていた。ところが近
年、こうしたつながりが急速に失われ、社会か
た。買い物に出かける際は誰と一緒に行くかの
問いでは、一人で 29 名、家族と 31 名でした。
また、困っている時の相談相手を尋ねると娘、
息子、息子の嫁、夫と合わせ 46 名の方が答え、
多くの家庭に家族への信頼感を窺うことができ
ら孤立している人が増えている。背景には、核
家族化・非婚化・長寿化による単身世帯の増加、
雇用形態やライフスタイルの変化などがあると
され、家族がいても連絡を取り合わなくなり疎
た。日常で困っていることを訊ねると雪はねや
重い荷物を運ぶこと等の回答があり、日常生活
への援助が必要な方が多いこともわかり、この
ことから地縁がいかに重要であることを再認識
遠になったり、地域との交流が薄れたりし、病
気などの緊急時に SOS を発する対象を見つけ
られない人も多くいる事が明らかになってきて
いる。
できた。
次に生活習慣病の状況、現在病院に通院して
いるかの問いに、はいと答えた方は 48 名だっ
た。通院回数については月 1 回 26 名、月 2 回 6 名、
アンケート 16 の回収は当日の参加者 74 名中、
記入漏れなどを削除し、56 名から有効回答が得
疾患名は高血圧が 25 名と一番多く、糖尿病 4 名、
腰痛 5 名と生活習慣に関わる疾患が多かった。
られた。性別は男性 22 名、女性 34 名、年代は
70 ∼ 74 歳が最も多く 17 名、次いで 65 ∼ 68 歳
特に料理をすることが生活習慣病予防のための
重要な指標であるため、食事作りについて負担
16 名、75 ∼ 79 歳 15 名であった。永山に住んで
から何年ですかの問いでは、居住年数 30 年を超
える方達が半数以上を占め、同居人いる 41 名、
ですかという問いには、負担はない・ほとんど
ないと答えた方は 27 名、時々 11 名、負担があ
ると答えた人 10 名であった。料理をすること
いない一人暮らし 15 名、また、同居人は誰かの
問いには妻 23 名、夫 16 名であった。
親戚付き合いの頻度(血縁)は 30 名が 1 ヶ
月 1 回から毎日と答えられ、核家族化が進む中、
は脳を使う。それは、献立を考え買い物をする
ところから「どんな材料をどのくらい使おうか」
や「栄養のバランスはどうか」などと考えるこ
とがたくさんあるからである。調理の手順や盛
身近な血縁に頼っている傾向も見られ、親戚付
き合い内容は、相談ごと・病気・食事・御裾分
けなど日々関わりを持っていることもわかった。
付けなども同様である。出されたものを食べる
楽しみもあるが、週 4 ∼ 5 回は自分で作る、ま
た 1 日 2 回は作るなど、すべてを誰かに任せす
地縁にかかわる問い、近所付き合いについ
てあると答えた人 32 名(57%)
、ないと答えた
人 15 名、無回答 9 名だった。付き合う内容は、
ることは避け、認知症予防の観点からも料理作
りを積極的にすることが望ましい。そのために
は地域の中で健康づくり活動の一環として料理
相談 7 名、食事を一緒に 11 名、買い物趣味 17
教室など開き、作る楽しみを地域の高齢者に伝
名、お土産 26 名、冠婚葬祭 18 名と答え、町内
会などを通し日々交流を構築している印象をう
けた。現在の仕事、収入源では 56 名中 50 名が
えて行きたい。
参加された皆さんは、とても元気で、日々他
人との関わりがあることで地域の安心感を実感
無職、年金生活と答えている 17。高齢者の食材
調達について、買い物頻度を問うと、毎日 26 名、
週 3 回 22 名、週 1 回 16 名と、こまめに買い物
に出かけるなど、人々の健康意識の高さを感じ
しているように感じられた。つまり、そこで暮
らす高齢者のための支援は 「 一次予防 」 の段階
から進めていくことが大切で、今回の催しでそ
れを確信した。
16 本稿は柴山・穂積の共同制作による活動報告であるが、アンケートの実施及び集計に当たっては、穂積
ゼミの学生の協力を得たものである。本稿で紹介する調査結果は、学生により集計された結果より傾向
を把握した後、教員にて集計方法を見直し、再集計した結果である。
17 図 8.9 参照
− 47 −
穂積 幹子・柴山 祐子
日本の食事と疾病のかかわりを見ていくと、
減塩は最大の課題である。日本において、食べ
物に関する栄養素レベルの大規模コホート研究
では日本人の食生活の唯一の欠点が、食塩の摂
取が多いことがあげられる。2010 年度日本人
・今後の課題
今後の課題としては、まず第一に、可能なら
ば活動回数を年 2 回(前後期各 1 回ずつ開催)
にし、定例化することである。
「にこにこランチ」
で実施したアンケート調査の中には感想を自由
の食事摂取基準では 1 日あたりの食塩摂取の目
標量として、男性 9g、女性 7.5g 未満である。
日本人に一番多い胃がんや循環器疾患の最大
の原因である高血圧症も密接な関係とされてい
記述によって回答して頂いた項目があった。そ
の中には「大変楽しかった」「内容的に大変良
かった」「皆さんの元気な姿を見てこちらも元
気になった」「来てよかった」という感想が寄
る。塩分を減らし健やかな老後を送るためにも
食生活改善が最大のポイントとなるのである。
ちなみに、今回のアンケート調査においても
高血圧症で受診していると答えた人が 28 名と
せられた。また、次回を望む声が学生や教員に
複数寄せられた。
第二に、今回は初回ということもあり学生主
動で運営したが、次回以降は地域の方々から漬
一番多かった。長寿国と称されて久しい日本だ
が、4 人に 1 人が 65 歳以上という社会を迎え
物の漬け方等生活の中で培われた技能等を教わ
る機会を組み入れていく事を考えている。福祉
る。平成 12 年度版厚生白書では、
おおむね普通、
あるいは健康と思っている高齢者は増えてきて
施設で行なわれる各種行事の多くは施設によっ
て企画されたプログラムがあり、参加する利
いるが、寝たきり要介護高齢者の割合も横ばい、
または若干低下している傾向もみられ、今後の
取り組みによっては、さらに健康な高齢者が増
用者はボランティアや職員らによる余興を観覧
するという様な受け身的な参加になりがちであ
る。「にこにこランチ」においては主催者も参
えてくる可能性も示唆されている。ただ高齢に
なればなるほど若い年齢層よりは健康に関心が
ある傾向ではあるが、一方、脳血管障害、認知
症、心疾患、関節疾患、骨折による要介護状態
加者も双方が主体となりお互いの理解を深め、
知恵や知識を学び合う場としたいと考える。こ
れは「にこにこランチ」の目的の中の五番目に
掲げた項目を実現する為でもある。
などとなるリスクも高くなる。高齢者は特にメ
タボリックシンドロームやインスリン抵抗性、
また、やせ状態による低栄養などが死亡率を高
第三に、アンケート調査項目等内容や調査方
法の見直しである。実際にアンケート調査を実
施し、回答者の反応を窺った所、回答欄に記入
くする。高齢期において適切な体型を維持する
ことや、食事摂取が健康寿命を延ばす重要なポ
イントといえる。日頃から親戚、ご近所とのつ
する際に戸惑う様子が見られたり、回答時間が
十分でなかった為か無回答の項目が目立つ結果
となった。次回以降は質問項目を精選し項目を
ながりを強めることで、身体のちょっとした兆
減らす事や記入欄の工夫等を行い、回答者にわ
候を見逃すことがないよう地域の中での“健康
づくり運動”が重要だと考える。総務省による
と、平成 25 年 9 月、65 歳以上の高齢者は 3,186
かりやすい形に調査票を作り直す必要があると
考える。
万人 ( 総人口の 4 分の1) で過去最高になった。
・結 語
平均寿命が伸びるなかで、心身ともに健康で暮
らせる 「 健康寿命 」 をのばすための活動が今叫
ばれている。生活習慣病対策は一時の気まぐれ
今回の取り組みは、地域における見守り事業
に貢献したいとの思いから、生活学科生活福祉
専攻と食物栄養専攻が協力し、健康を食と身体
ではなく、生涯を全うするため、継続すること
が地域のボランティアに架せられた責務でもあ
る。
の両面からとらえ、人々が本来持っている免疫
力や治癒力を高め、自ら健康になる力の維持・
向上するための健康づくり活動を行ったことは
意義があったと考える。
− 48 −
「にこにこランチ」活動報告
∼永山むつみ町内会および永山むつみ青空会に所属する高齢者との交流から∼
・謝 辞
今回の活動に際して、旭川市役所福祉保健部
職員様、永山むつみ町内会及び永山むつみ青空
会会長、役員の方々に、ご理解とご協力を頂い
たこと、また、学生たちに貴重な学びの機会を
与えて下さった参加者の皆様に深く感謝申し上
げる。
また、調査に協力して下さった参加者の皆様、
調査時にアンケート用紙の配布や回答時の補助
等、学生達の協力を得たことも併せてここに感
謝する。
尚、アンケート調査票は、旭川大学保健福祉
学部大野剛志准教授の「農村高齢者の生活実態
調査̶東川町第三地区調査̶」
(2011.12)を参
考にさせて頂き作成した。ここに深謝致します。
参考引用文献
・(財)日本レクリエーション協会編『楽しい
をつくる∼やさしいレクリエーション実践
∼』,p17-20,(2003.3)
・健康日本 21 推進全国連絡協議会 13 年のあ
ゆみ Ⅲ活動のあゆみ 2 設立趣旨 18 ページ
・花王サステナビリティレポート 2013 超高齢
化社会に向けた健康寿命向上への取り組みよ
り引用
・21 世紀における国民健康づくり運動(健康日
本 21)推進より
・平成 12 年度版厚生白書の概要 HP 第2章
高齢者と健康 第1節 健康な長寿
・総務省統計局 HP 統計からみた我が国の高
齢者(65 歳以上)
・介護予防マニュアル改訂版 - 厚生労働省 HP
(www.mhlw.go.jp/topics/2009/05/dl/tp05011_1.pdf)
・住居広士編『介護福祉用語辞典』ミネルヴァ
書 ,p141,(2009.10)
・介護福祉士養成講座編集委員会編『介護の基
本Ⅰ』p33,(2013.2)
− 49 −
穂積 幹子・柴山 祐子
写真 1
写真 2
写真 3
写真 4
写真 5
− 50 −
「にこにこランチ」活動報告
∼永山むつみ町内会および永山むつみ青空会に所属する高齢者との交流から∼
表 1
第1回 にこにこランチ
プログラム
平成 25 年 9 月 28 日(土)11 時∼
於 永山むつみ会館(旭川市永山 10 条 11 丁目 9 − 7)
090-1306 − 0987
11:00 開会
ご挨拶
旭川大学短期大学部 生活学科食物栄養専攻教員 柴山 祐子
柴山ゼミ代表 林 美月
旭川大学短期大学部 生活学科生活福祉専攻教員 穗積 幹子
穗積ゼミ代表 上手 隼人
11:30 一緒にからだを動かしてみませんか?
穗積ゼミ学生と一緒に体と頭をリフレッシュ!
12:15 昼食
今日の献立の説明∼柴山ゼミ学生
献立
きのこご飯(むつみ会館で収穫した枝豆入り!),かぼちゃのそぼろ煮
なすとみょうがのもみ漬け,ニラとたまごのスープ
さつまいもの蒸しパン
13:00 食と健康についてのおはなし(柴山ゼミ)
デザートを召し上がりながらどうぞお聞き下さいませ!
13:30 おしゃべりタイム
学生達とちょっとおしゃべり
14:00 閉会
閉会の辞
永山むつみ町内会会長 槙納 長
永山むつみ青空会会長 鈴木 秀雄
(敬称略)
− 51 −
穂積 幹子・柴山 祐子
図表2. アンケート結果
− 52 −
「にこにこランチ」活動報告
∼永山むつみ町内会および永山むつみ青空会に所属する高齢者との交流から∼
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穂積 幹子・柴山 祐子
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「にこにこランチ」活動報告
∼永山むつみ町内会および永山むつみ青空会に所属する高齢者との交流から∼
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穂積 幹子・柴山 祐子
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<報告>
子どもの居場所づくりの評価に関する一考察
A study on possibility of making safe and comfortable place for children in North
Hokkaido
清水 冬樹
Fuyuki SHIMIZU
旭川大学短期大学部
はじめに
(1)これまでのゼミの活動
子ども子育て支援を展開していく上で、専門職
を含めた大人の子どもに対する関わり方につい
本ゼミではこれまで、子どもの権利を保障す
るまちづくりの指標である、子どもにやさしい
まち(Child friendly Cities)=CFC を参考とし
て、検討する必要があると考えたためである。
子どもは主体的な側面と依存的な側面を持ち合
わせている固有な存在でありながら、大人の側
ながら、旭川市をフィールドとして調査・研究
を実施してきた(清水 2011:2012:2013)
。
1 年目は,旭川市の次世代育成支援推進行動
が依存的な側面に重きを置いて関わっている現
状を先行研究から浮かび上がらせ、専門職だけ
ではなく、地域で暮らす大人たちがもつ子ども
計画(以下次世代育成計画と記す)と CFC と
へのまなざしを変化させていく必要性をしてき
の比較を行った。その結果、旭川市の子ども施
策の中で最も位置づけなければならない事項と
して、子ども参画の重要性や根拠を示した上で
した。この年は、旭川市で初めてプレーパーク
を開催した年でもあり、学生たちは日常的な親
子の姿をここで見ることができた。子どもに関
子ども施策を検討していく意義を指摘した 1。
わる大人の態度として、一緒に子どもと考えた
2 年目は、子どもにやさしいまちを実現する
ための方法論についての検討を行った。旭川市
における子ども施策として、次世代育成計画の
り、子どもの遊びを大人化しない関わりが重要
であったが、プレーパークにおける子どもと大
人の姿は、必ずしもそういったものではなかっ
ニーズ調査において、何らかの形で子育て支援
に関わりたいと考えている保護者が 3 割以上い
る実態を踏まえ、子どもや保護者がサービスの
享受者になるのではなく、公や専門職・専門機
た。このような地域における遊び場づくりを通
して、閉じやすい子どもと大人の関係性を顕在
化し、そのあり方についての啓発を試みていく
ことが、このようなプレーパークを通して実現
関との共助による子育て支援を展開することの
重要性について指摘をした。
3 年目は子ども参画を進めるための大人のあ
り方について言及をした。これは、共助による
する可能性は非常に高く、日常生活の中で子ど
もも大人も育っていく場所を作り出すべきと結
論づけた。
1
これらの項目は国連子どもの権利委員会における審査において指摘されている事項とも重なる。
− 57 −
清水 冬樹
(2)今年度のゼミの活動
今年度は、昨年度提起した、子どもの居場
所の意義について深く理解し、居場所づくりを
定着させるための条件を明らかにすることであ
る。
する文脈において居場所という言葉が使用され
てきたが、現在では不登校に限らない使われ方
がなされている。文部科学省が公表している「大
人と子どもの場所づくり」では、不登校の子ど
もだけでなく、子育て家庭のための居場所づく
先にも述べたように、閉じやすい子どもと
大人の関係性を顕在化させる手段として居場所
づくりには、その効果が期待できると考えられ
る。しかし、子どもたちの居場所はすでに地域
りや、障がいがある子どものための居場所づく
りなど、多様な居場所づくりの形が報告されて
いる。
実践の多様さは、研究においても同様である。
の中にいくつも存在をしている。学童クラブや
児童館、公園やショッピングモールなど、様々
な社会資源が子どもたちの居場所として考える
ことができる。居場所の質は別途検討するとし
居場所に関する研究は日が浅いものの一定の蓄
積があり、心理学や教育学、社会学、建築学など、
多様な学問領域からのアプローチがなされてい
る。例えば、中島ら(2010)は、
「居場所」は他
て、すでに多様な居場所が子どもたちの周りに
はあるにも関わらず、それらとは違う居場所づ
者から認められたり、他者から自由になって自
分を取り戻したりして得られるような「自分を
くりが、現在各自治体において展開され始めて
いる。なぜ、そういった実践が児童福祉施策や
確認できる場所」と定義する。中島らの定義は、
心理的なアプローチから居場所を定義づけてい
教育施策など、既存の枠組みを超えて展開され
ているのか、本報告では居場所づくりの意義を
明らかにする。そして、明らかとなった意義を、
る。
社会福祉領域における居場所の定義について
見ていくと、たとえば田中(2010)の研究がある。
試作的に居場所の評価、ないし指標として、本
年度関わることができたあさひかわこどもあそ
びねっと主催のプレーパークを評価し、旭川市
や道北地域における居場所づくりの可能性に検
田中はいくつかの先行研究を整理し、居場所に
ついて「社会福祉の立場から、居場所を生活と
の関連でとらえ、特定の人 (1 人あるいは少人数 )
との人間関係を通じて個人として理解され、無
討するのが、本報告の目的である。
2.居場所づくりの意義
条件に受容され、必要とする具体的な生活支援
が日常的、継続的に得られる場所」と定義づけ
ている。先に見た中島とは違い、生活者の暮ら
居場所づくりが展開されるようになってきた
背景について、これまで報告されている先駆的
な実践を整理しながら検討してみたい。
しの中で居場所というものがどのように位置づ
けられているかに、関心がある。
生活者の視点について、子どもの視点から検
討すると次のようなことが言える。子どもは大
(1)
「居場所」の操作的定義
居場所という言葉は近年多く使用されるよう
になった。公的な文章において居場所という言
人と違う固有性を持つ。一つは経済的なことに
ついては保護者に依存しなければならず、交通
手段についても子どもの生活圏外になると、保
葉が使われたのは、文部省が 1992 年に文部省
護者に依存することが必要となる。また、居場
初等中等教育局長通知(平成 4 年 9 月 24 日付
け文初中第 330 号)として通達された「登校拒
否問題への対応について」で見ることができる。
所に関する情報についても、そういった場所が
あるかどうかを知る方法は、大人に比べると限
られた手段しかない場合が多い。学校などで配
「(1)学校は、児童生徒にとって自己の存在感
を実感でき精神的に安心していることのできる
場所̶「心の居場所」̶としての役割を果たす
ことが求められること。
」とある。不登校に対
布された案内やリーフレット以外は保護者から
の情報提供によって知ったり、子ども自身がモ
バイル端末を使用して発見したりする場合が考
えられる。子どもの年齢によっては、必ずしも
− 58 −
子どもの居場所づくりの評価に関する一考察
そういった情報にアクセスしやすい状況という
わけではない。子どもの視点から立った居場所
とは、個人として必要とされたり、無条件に受
容されたりする場所という定義に加えて、子ど
も自身が距離的、経済的にアクセスしやすく、
められ、不登校の子どもの親は子どもと自分を
責める、生きづらさを抱える子どもたちとの出
会いがあったという(西野 2010)。そして、35
人にひとりが不登校の時代にあったとしても、
実際にわが子が不登校になると現実を冷静に受
その情報を入手しやすいという条件も加えられ
ることが必要であると考えられる。
また、田中が定義する居場所を解釈しようと
すると、家庭や学校も含まれると考えられる。
け止められなくなる親の姿を見て、子ども自身
が自分に対して否定的になっている。この悪循
環が子どもを学校に行きづらくさせており、家
庭でも学校でもない居場所づくりを始めた。
こ の 点 に つ い て、Oldenburg(1999) は Third
Place の概念が参考になる。Third Place とは、
家や職場・学校以外の第三の居場所を指し、代
表的なものにカフェ、公園などを挙げている。
西野はそういった子どもたちの特徴を「自己
肯定感が低い」と表現する。その自己肯定感を
回復させるために、失敗したことを受け止めら
れる人と場所の必要性を説く。また、子ども同
森田(2013)が示すように、子どもは成長して
いくとともに、保護者や学校といった一般的
士がつながる最も有効な手段として、食事作り
を挙げる(西野 2006)。食事をみんなで作り「お
に子どもに対する責任を持つ人々の後見から離
れ、少しずつ人間関係を広げていく。また、家
いしいよ」という言葉で、自分自身の必要性を
感じ取っていく。居場所づくりにおいて、こう
庭だけが子育ての責任を担うことは、育児不安
や子ども虐待などの現状を見ると、現実的に困
難な状況である。さらに、学校で起きているい
いった当たり前の日常を当たり前に作り上げて
いくことを大事にしながら実践を行っている。
同様のことは渡部 2 らも指摘する。静岡で子ど
じめや体罰の問題、教師自身の資質に関わる課
題など、家庭も学校もギリギリのところで子ど
もたちと関わっている。家庭や学校自体の負担
を軽減する意味でも、居場所をそういった場所
もの居場所づくりに取り組む渡部夫妻は、自分
たちの取り組みを「何気ない日常」を紡ぎ出す
ことだという。渡部夫妻が実践している居場所
は、後に指摘する冒険遊び場づくりであるが、
に設定するのは困難であると考えられる。
従って本報告において、子どもの居場所とは
「子どもたちの家庭や学校以外で生活圏内にあ
ここではプログラムを用意せず、遊ぶも遊ばな
いも子どもたちに委ねている。
居場所づくりの一つの形として、冒険遊び
り、距離的にも経済的にも子どもたちがアクセ
スしやすく、安心で安全な人との関係の中であ
りのままで過ごすことができ、他者のありのま
場づくりがある。これまで本ゼミで報告してき
た冒険遊び場づくりも遊び場づくりの一つであ
る。冒険遊び場づくりは、現在ヨーロッパでは
まの姿を認めることができる場所」と操作的に
イギリス、スウェーデン、デンマークを中心に
定義したい。
活発に行われている。1943 年にデンマークの
コペンハーゲンにおいて、エンドラップ廃材
遊び場が開設され、それが冒険遊び場の原型だ
(2)居場所づくりの実際
居場所づくりの実際として西野の実践をみて
とされている。遊び場の開園時に常駐するおと
いく。
西野は 30 年近く不登校の子どもの居場所づ
くりをしてきた。そのきっかけは、小学生の不
なとして、プレーリーダーが常駐している。日
本国内では「羽根木プレーパーク』」1979 年の
国際児童年を機に開設されたのが最初とされて
登校のケース、中学生の無理心中のケースなど
と出会う中で、周囲の無理解で苦しみ、追いつ
いる。羽根木プレーパーク大きな反響を呼び、
1980 年度以降の継続し、少しずつ全国で展開
2
詳しくは「NPO 法人ゆめまちねっと」を検索されたい。
− 59 −
清水 冬樹
されるようになってきている。平成 25 年 12 月
現在、300 ヶ所近くの冒険遊び場が全国におい
て展開されている。
天野(2010)は市民による冒険遊び場づくり
が日本で展開され始めている背景について、現
まう可能性がある。嶋村は続けてこう指摘する。
「子どもの豊かな遊びを阻害しているのは、遊
び場の要素と大人の姿勢を評価して得点にして
しまうことである。子どもの遊びには、大人に
遊びが理解されていないか、その場に関わる大
代の子どもの育ちに対する危惧を示しながら、
その必要性について指摘する。具体的には、
「切
れる」
「凶悪化」ではなく「おとなしすぎる」
「い
い子すぎる」子どもの急増し、子どもたち自身
人だけではコントロールできない要素がある。」
そして、子どもへの遊びへの公的な取り組みが
必要であることも述べられている。遊びが外注
化されるようになり、経済的な課題を背負って
が自分のいのちの重みを感じていないのではな
いかという。こうなってしまった背景には、
・子どもの行動を把握せず、問題行動が生
じることによって親、教師として社会的に
いる家庭の子どもたちと、そうでない子どもた
ちの遊びに格差が生じてしまう可能性を指摘し
ている。遊びはぜいたく品ではなく、どの子ど
もにとっても、等しく日常の中で豊かに遊ぶ環
問題視される
・自らの評価につながる「子ども包囲網」
に必死になる親や教師、子どもの安全、安
心の問題は利用される
境があることが大切である、と嶋村は指摘して
いる。
(3)居場所づくりの意義
・こどもは迷惑をかけつつ、人間関係を学
ぶ存在であるが、迷惑をかけるなと言われ
ながら育ち、人との関係を結ぶことが認め
先駆的な実践から、居場所づくりの意義とし
て、次のことが見えてきた。1つは、子どもの
育ちを回復することである。先駆的な実践は子
られない
・心配をかけることは最大級の迷惑であり、
子ども自身が何があっても親には相談でき
ない
どもの育ちに対する危惧が発端となっている。
具体的には体力の低下や、一昔前では考えら
れないような怪我が頻繁に起こっているといっ
た、見て取ることができる事柄だけでなく、自
・他人が下す自分に対する評価が自分自身
・他人から良く評価されるような自分を生
み出す、親や教師の喜ぶ「いい子」を演じ
己肯定感が低く、自分自身の存在を大切にする
ことが難しい、生きづらさを抱えている子ども
たちが回復することができる場所を作り上げて
ている
ということがあるのではないかと考察してい
る。
いるということである。
2 つ目は、西野や渡部夫妻が指摘する「何気
ない日常」を保障することである。成績不良で
このような子どもたちに対する育ちの危惧に
不登校になったり、家庭の経済的な問題でしん
対して、嶋村(2008:2009)はイギリスの事例
を紹介しながら、次のように遊び場づくりの必
要性について述べている。子どもの遊び場では、
どさをかかえたり、成績や体育など競うことか
ら排除された子どもたちが、親からも学校の先
生からも距離を置き、心を休める場所として機
大人の目から離れて遊び、子どもの遊びを大人
能をしているということであった。ありのまま
化しない環境が必要となる。大人の遊び化とは、
大人が「こうしたい」という思いで遊び本来の
目的を消してしまうことである。遊び場があっ
の自分を大事にできること、安易に世間の評価
をもちこまないこと、「産まれてきてくれただ
けで価値がある」まなざしを持った「ひと」が
ても大人が原因で子どもがその遊び場に近づか
ないということも、大人の遊び化によって起こ
りうる。子どもの生活圏に大人が大人の価値観
で関わることが、子どもたちの意欲を削いでし
いることなど、当たり前なことが、当たり前に
あることに価値がある。強制されるのではな
く、自分のペースで子ども自身が育つことがで
きる、何気ない日常を保障することが必要だと
− 60 −
子どもの居場所づくりの評価に関する一考察
考えられる。
3 つ目に、嶋村が指摘していた、どのような
子どもたちであってもアクセスすることができ
る場所であるということである。筆者が関わっ
た自治体の調査では、小学校低学年の多くが習
3.居場所づくりの視点を用いた分析
先述した2つの機能は独立しているのではな
く、絡み合いながら、居場所づくりでは機能し
ていると考えられる。本節では仮説的に、これ
いごとをしている理由として、学童保育の定員
が一杯であり、放課後の子どもの居場所がない
ことがあった(八千代市 2006)
。放課後の子ど
もの居場所を確保するために習いごとをしてい
らの2つの機能が、居場所づくりにおいて展開
されているのか、あるいは段階的に展開される
のか、次に実際にゼミで関わることができた居
場所づくりを参考に検証する。
る家庭が一定数いるのである。家庭の経済力の
問題は、子どもの生活に大きな影響を及ぼすこ
とはすでに様々な研究において明らかにされて
きているが、居場所に関しても家庭の経済力が
(1)旭川市内で行った 2 回の遊び場づくりの概
要
本年度は、あさひかわ こどもあそびねっと
影響を与えてしまっている可能性を見ることが
できる。経済的な課題が子どもたちの育ちに
(以下「ねっと」と記す)3 が主催するプレーパー
クへボランティアとして関わる機会を得ること
大きな影響を及ぼさない取り組みが必要とされ
る。
ができた。ねっと自体は、設立されて日が浅い
こともあり、居場所づくりのプロセスを時系列
2 つ目と 3 つ目は、子どもの視点に立った取
り組みとして1つにまとめることができる。先
駆的な実践の柱となっていることは、子どもた
で検証する上で有効であると考えられる。
ねっとが今年度実施した居場所づくりの概要
について表 1 に示す。開催場所の特徴を考慮し
ちの育ちの回復の場であり、子どもの視点に立
ち子どものことを捉え直す場だと考えられる。
て、内容には違いが見られる。それぞれの内容
は写真で示す。
表 1 ボランティアで関わることができた遊び場づくり
事業名
主催
プレーパーク in カムイの杜
伊ノ沢市民スキー・あそび体験事業
あさひかわ こどもあそびねっと
あさひかわ こどもあそびねっと
(平成 25 年度 旭川市市民の企画提案 (旭川市教育委員会委託事業)
による協働のまちづくり事業採択事業)
日時
2013 年 8 月 5 日、6 日
(夏)2013 年 8 月 15 日∼ 8 月 17 日
(秋)2013 年 10 月 14 日
参加人数
両日合わせて延べ 200 人以上
3
夏 3 日合わせて延べ 300 人以上
秋 250 人以上
この団体は、市内の保護者や保育関係者によって、旭川市における子どもの育ちを支えるための遊び場づ
くりを目的として作られた市民団体である。現在 10 名の構成員がおり、筆者が代表を勤めている。
− 61 −
清水 冬樹
<写真 1 カムイの杜 ウォータースライダー>
<写真 5 伊ノ沢市民スキー場 段ボールで作った家>
<写真 2 カムイの杜 かまど>
<写真 6 伊ノ沢市民スキー場 泥遊び>
<写真 3 カムイの杜 工作>
<写真 7 伊ノ沢市民スキー場 段ボールで作った家>
<写真 4 伊ノ沢市民スキー場 ガムテープを巻い
た男の子>
<写真 8 伊ノ沢市民スキー場 かまど>
− 62 −
子どもの居場所づくりの評価に関する一考察
(2)居場所づくりにかかわった学生たちによる
評価
ボランティアとして関わった学生による評価
についてエピソードを交えながら示す。
<その1> のにただただ感心を示し、「よく作ったね」「こ
れはすごいね」などと子どもたちを励ましてい
た。振り返ってみると、段ボールの作品を他の
子どもが作ったものと比べている保護者を見る
ことはなかった。ただただ、子どもたちの意欲
小学校 3 年生ぐらいの子どもの事例。工作の
場所で子どもが何かを作ろうとしていた。子
どもののこぎりの使い方がやや不慣れな姿を見
て、保護者が「気をつけなさい」
「何やってい
を受け止める姿が見受けられた。
るの」とやや厳しめの注意をしていた。子ども
が落ち込んでしまうのではないかと思って見て
いたが、その子はその子自身の「やりたい」と
いう意思をしっかりと持って、保護者の注意に
して、飽きるまで遊んでいたり、没頭・集中し
たりする姿が見られたということがある。8月
のカムイの杜公園のプレーパークで、2 日目は
午後から悪天候となり、雷が鳴り響き出した。
もめげずにもくもくと作品を作り上げていた。
カムイの杜公園の所長と筆者の判断で、ハザー
ドを避けるため、中止をすることとしたが、子
<その2>
様々な遊びが展開されている中で見受けられ
どもたちはまだまだ遊びたい様子であり、「何
でおわっちゃうんだよ」「まだ全然遊んでない
た光景である。例えば工作ののこぎりは決して
多くねっとが準備していた訳ではない。そのた
め、のこぎりを使いたいと子どもが思っても、
よ」と、かなり不満な様子が見受けられた。秋
の伊ノ沢市民スキー場においても、終了時間に
も関わらず工作から全く帰ろうとしない子ども
すぐに使うことができるとは限らない。保護者
や学生が「待っていようね」と口にする必要も
なく、子どもたちの中で自然と譲り合う姿が見
られた。そして、ノコギリを貸してもらった子
たちが多くいた。本来であれば、終わりの時間
は特段設けず、続けていきたい思いであったが、
伊ノ沢市民スキー場を管理している振興公社と
の協議で、今回は時間通り切り上げることを決
どもが「ありがとう」と言っていた場面がとて
も印象的だった。ウォータースライダーでも、
「順番に並ぼうね」と学生が口うるさく指摘す
<その4>
2 ヶ所のプレーパークに共通していたことと
めたという背景がある。
<その5>
る必要もなく、滑ることを楽しみにしながら並
んでいる姿が多く見られた。2 回のプレーパー
クは、その地域の子どもだけが来ている訳で
何に使うかは子どもに委ねるとして、ねっと
では様々な道具を 2 ヶ所のプレーパークに持参
した。
はなく、市内の至る所から子どもや保護者が訪
秋の伊ノ沢市民スキー場では、水を使う予定
れてきている。全部その場で友達になる。あり
がとうや貸してなどが自然と言えるようになる
など社会性が身につく。何かを見つけたことに
はなかった。しかし、振興公社が準備したポン
菓子の機械を使用後洗浄するために、水を使う
必要があった。水道自体はスキーロッジにあり、
よって輪ができるなど、遊びを共有することが
それを利用して、外で振興公社の方々がポン菓
できる。そういった姿をこの活動の中で多く目
にすることができた。
子の機械を洗浄していた。
洗浄した水は、そのまま外に流れていった。
子どもたちがその様子を見ており、たまたま近
<その3>
段ボールで家を作ったり、動物を作ったりし
て、
様々な遊びや作品が出来上がった。そういっ
た遊びや作品を見た保護者の多くは、できたも
くにあったスコップを片手に泥を掘り始めた。
水の量はなかなか多く、小さな川が出来上がっ
た。スコップの数も決して多くはなく、スコッ
プが当たらなかった子どもは、木を持ってきた
− 63 −
清水 冬樹
り素手で掘り始めたりした。掘り進めていくと、
冬眠をしていたカエルを見つけ、川で泳がせて
遊んでいた。筆者が、
「よくスコップ使って掘っ
たりするの」と聞くと、初めてやったといって
いた。思いつきから、遊びを作り出し、発展さ
つ力を十分に発揮し、育っていると評価をして
いた。また、子どもの遊ぶ環境を整えることで、
子どもたち自身が気づき、そういった行動を取
るようになっていったことから、人間関係に関
わる育ちを見ることができた。人間関係に関わ
せている姿が見られた。学生たちは、こういっ
た姿から、大人が子どもたちと遊ぼうとするこ
とはそれほど重要ではなく、子どもたちがやっ
てみたいと思う環境を準備することが重要だと
らず、カムイの杜公園の自然を生かしたトンボ
取りや、暑い季節に水で遊んだり、思い思いの
ものを廃材で作ったり色を塗ったりする姿から
も、子どもが育っていく姿が見られ、子どもた
いうことが理解できたという。また、こういっ
た遊びが発展していく場面では、必ず大人によ
る強制的な介入がないことにも気づいたようで
あった。
ちがすくすくと育つ役割を居場所づくりが担う
ことができる、ということについて学生たちは
理解することができたようであった。このよう
な、視覚的に把握することができる子どもの育
<その6>
ちについて、そこに関わった学生は評価を大変
しやすいものであった。
2 ヶ所のプレーパークでは火が使えるように
準備をした。カムイの杜ではあまり見受けられ
一方、居場所づくりの実践の中で強調され
てきた、回復していく場所と、子どもの視点に
なかったが、伊ノ沢市民スキー場では、火を囲
んで大人も子どももまったりと過ごす姿が見ら
れた。ねっとでいくつかあそぼうパンを準備し
寄り添った実践ということについて、学生から
感想を得ることは困難であった。例えば、こど
もたちが自信を持っている姿を見ることができ
ていったが、パンやマシュマロを焼く子どもや
大人もいれば、ただ火を囲んでぼーっとしたり
友達と話したりして、思い思いに過ごしている
様子でった。
「遊びなさい」とか「危ない」
「何
たか、という問いに対して、それは分からない
という返答であった。理由は先述した通り、そ
れまでの子どもたちの育ちが分からないためで
あった。また、誰もがアクセスしやすい場所だっ
やっているの」と急かされることなく、ありの
ままでいられることが、心豊かに過ごす大切な
条件だということに学生たちは気がついた。
たかどうかという問いに対して、2つの答えが
あった。1つはカムイの杜自体が、車でしか行
くことができず、子どもだけに来ることができ
(3)考察
学生の感想には、ノコギリを譲り合ったり、
る場所ではないという答えであった。もう1つ
は、どの子どもたちが困難を抱えているのかは
分からないということであった。
ウォータースライダーで順番を待ったりする姿
イベント的な遊び場づくりにおいて子どもた
など、子どもたちの人との関わり合いに関す
る姿を見て、子ども自身の人間観に関わる力が
育っているのではないか、というものがあっ
ちが得ることができるのは、「育ち」ではなく
「経験」だと考えられる。子どもが育っていく
姿は、一日の関わりで他者が理解することはで
た。あるいは、のこぎりが最初はうまく使うこ
きない。子ども自身も一日の遊びの中でしっか
とができなかった子どもが、だんだんとうまく
使うことができるようになったり、ウォーター
スライダーで思い通り滑ることができなかった
りと育つことができた、と実感できることは決
して多くはないのかもしれない。プレーパーク
のような場所で遊ぶことができた経験は、子ど
子どもが、だんだんとうまく滑ることができる
ようになり、笑顔が見られるようになったとい
うことも挙げられていた。こうした子どもたち
が遊ぶ姿から、学生たちは子どもたち自身が育
もたちのこれからの暮らしの中で、様々な形で
影響を及ぼすことが考えられる。時にこういっ
た経験が、子どもたちが大きくなったときに自
身となることもあるであろう。しかし、そういっ
− 64 −
子どもの居場所づくりの評価に関する一考察
た効果や評価は、一日や数日のイベントでは行
うことができない。居場所づくりにおいて強調
されてきた 2 つの視点は、継続的な関わりが可
能だからこそ実現できるものである。また、今
回ボランティアで関わった 2 つのプレーパーク
<参考文献>
天野秀昭(2010)
「遊びが育てる、人間の「根っこ」
( 子どもの生きづらさに寄り添って -- 支えるお
となたち )」『女性のひろば』379,58-62.
−(2009)「遊び場を創る 大いに遊べ ! 子ども
は、非常に多くの人々の協力を得ながら開くこ
とができた。保護者や地域の人々、カムイの杜
公園、旭川市教育委員会、子育て支援部振興公
社などである。そういった総合的な関わりが、
たち ( 特集 こどもが楽しい空間 -- 群れて遊ぶ )」
『Civil engineering consultant』244,16 − 9.
−(2007)「「遊育」、それはいのちの表出 ( 特
集 子どもの遊びの権利 ) -- ( 遊びの権利と遊育
継続的に実施する鍵となる。
今後の課題
居場所づくりは、教育的な側面からの評価は
実践 )」『子どもの権利研究』10,8-13.
文部省(1992)
『登校拒否問題への対応について』
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/
t19920924001/t19920924001.html 2014.2.18 アク
しやすいことが明らかとなった。そのため、教
育的な効果を打ち出した上で、子どもの居場所
セス .
森田明美(2009)「日本における子ども政策の
づくりを行うことは、市民に対して理解が得や
すい可能性がある。しかし、福祉的な側面は、
現状と課題」喜多明人、森田明美ら『子どもの
権利 : 日韓共同研究』日本評論社 .
今回の実践から評価することができなかった。
その原因として、今回実施した 2 回のプレー
パークがイベントであったこと、子どもたちの
中島喜代子、松岡留美(2010)「年齢段階別に
みた子と _ もの居場所に関する研究」『三重大
学教育学部研究紀要 自然科学・人文科学・社
日常生活に沿ったものではなかったこと、子ど
もたちがアクセスしにくい場所での開催であっ
たこと、継続性がないことが挙げられる。また、
居場所づくりは施策の枠組みを持った取り組み
会科学・教育科学』61,91-112.
西野博之(2010)「10 代の子どもとの生活 不
登校 --" 居場所 " はどこに「生まれてきてくれ
て、ありがとう」を届けたい」『婦人之友』104
ではないため、人件費や消耗品等の運営資金に
関する課題がある。この件について、本稿では
触れることはできなかったが、行政なり市民か
(9),72-9.
-(2008)「専門家のアドバイス「問題」を抱え
た子供と向き合う 7 つのコツ ( 特集「正しいお
らの資金提供を受けるとなると、居場所づくり
に関わる評価を明確にする必要がある。しかし、
評価は短期的に行うことが求められやすく、た
母さん」を、頑張りすぎないで )」『婦人公論』
93(22),40-3.
-(2006a)『居場所の力 生きているだけです
とえ期限付きの事業であったとしても、その期
ごいんだ』教育史料出版会 .
限の間で子どもたちの何を評価すべきか、決し
て明確に打ち出すことはできない。
一方で、評価が一人歩きしてしまうことも考
-(2006b)「不登校とフリースペースの歩み -「たまりば」から公設民営の「えん」へ ( 特集
子どもの居場所づくり -- いまとこれから ) -- ( 居
えられる。やはり本稿では触れることができな
場所づくり実践に学ぶ )」『子どもの権利研究 』
かったが、子どもの外遊びの重要性に関する認
識が高まりつつある中で、子どもの育ちの指標
が一人歩きし、外遊びの義務化が起こることも
8,35-8.
Ray Oldenburg(1999)”The Great Good Place:
Cafes, Coffee Shops, Bookstores, Bars, Hair
十分に考えられる。子どもたちの何気ない日常
を保障することの困難さが明確となったと考え
られる。
Salons, and Other Hangouts at the Heart of a
Community”Da Capo Press
嶋村仁志(2008)「社会で子どもの遊びに取り
組む -- この 10 年で変化した「子どもの遊び」
− 65 −
清水 冬樹
に対するイギリス社会事情 ( 後編 )」
『こども環
境学研究』3(3)87 − 3.
−(2007)
「社会で子どもの遊びに取り組む -この 10 年で変化した「子どもの遊び」に対す
るイギリス社会事情 ( 前編 )」
『こども環境学研
究』3(2)104- − 0.
-(2006)
「プレイワークと権利としての遊び支
援 ( 特集 子育ち・安心と子ども支援 ) -- ( 子育
ちと子ども支援 )」
『子どもの権利研究』9,12-6.
清水冬樹(2013)
「子どもとプレイワーカーの
関係性に関する一考察 : 旭川初のプレーパーク
実践からの考察」
『旭川大学短期大学部紀要』
43,71-81.
-(2012)「共助による子ども子育て支援のあり
方に関する研究 : 旭川市におけるヒアリング
調査を参考に」
『旭川大学短期大学部紀要』
42,49-58.
-(2011)
「子どもにやさしいまちづくりのため
の子ども調査の有効性に関する一考察 : 旭川市
後期次世代育成支援行動計画を参考に」
『旭川
大学女子短期大学部紀要』41,109-120.
田中礼子(2010)
「社会的養護の退所者か _ 居
場所に求めているもの」
『吉備国際大学研究紀
要 ( 社会福祉学部 )』20,87-97.
八千代(2006)
『
「次世代育成支援行動計画」策
定のための調査報告書』
− 66 −
オペレッタ「白雪姫」付随音楽
Operetta
White Snow
Accompany Music
島崎 一行
KAZUYUKI SHIMAZAKI
主催
旭川大学短期大学部幼児教育学科オペレッタ公演実行委員会
発表
2011年12月24日(於・旭川市民文化会館小ホール)
演奏
旭川大学短期大学部幼児教育学科学生有志(ピアノ島崎一行)
Instrumentation
4Keyboard harmanica Ⅰ
4Keyboard harmanica Ⅱ
4Keyboard harmanica Ⅲ
1Pianoforte
− 67 −
島崎 一行
A l l e gr e t t o
Ouver ture
− 68 −
オペレッタ「白雪姫」付随音楽
− 69 −
島崎 一行
− 70 −
オペレッタ「白雪姫」付随音楽
− 71 −
島崎 一行
M o d e ra t o
marciale
Finale
− 72 −
オペレッタ「白雪姫」付随音楽
− 73 −
島崎 一行
− 74 −
旭川大学短期大学部教員の研究業績および社会における活動一覧
平成 25 年度(2013 年 4 月 1 日から 2014 年 3 月 31 日まで)
[研究業績]
A)著書・論文・研究ノート・報告・作品
五十嵐路子:「音楽運動療法とワロン−往復書簡による対話から開かれた理論的基盤−」 旭川大学
短期大学部紀要第 44 号(共著,2014 年 3 月)
伊東 隆雄:(単著)
「看護助手という仕事」響き合う街で . 第 67 号 . やどかり出版 .2013.
勝浦 眞人:「音楽運動療法とワロン−往復書簡による対話から開かれた理論的基盤−」 旭川大学
短期大学部紀要第 44 号(共著,2014 年 3 月)
「余暇のかたち‐A 市近郊にある養護学校の子どもたちの余暇調査から‐」旭川大学短
期大学部紀要第 44 号(共著,2014 年 3 月)
佐藤 貴虎:「余暇のかたち‐A 市近郊にある養護学校の子どもたちの余暇調査から‐」旭川大学短
期大学部紀要第 44 号(共著,2014 年 3 月)
椎名 澄子:作品「風に舞う」株式会社リョーワ、2013 年 11 月
作品「風に舞う」旭川大学短期大学部紀要第 44 号、2014 年 3 月
島崎 一行:作品「オペレッタ「白雪姫」付随音楽 Operetta White Snow Accompany Music」
旭川大学短期大学部紀要第 44 号、2014 年 3 月
清水 冬樹:「母子世帯の生活問題の構造に関する研究」『子どもロジー』vol17.23-30. 北海道子ども
学会、2013 年 8 月
「母子世帯の自立支援プログラムにおける子ども支援に関する研究」『福祉社会開発研
究』6(入稿済み)
、2014 年 3 月
「道北地域における子どもの居場所づくりの可能性」旭川大学短期大学部紀要
第 44 号、2014 年 3 月
和島 孝浩:「ミズナ(Brassica rapa L. Japonica Group)の生育および硝酸イオン濃度の季節変化」
旭川大学短期大学部紀要第 44 号、2014 年 3 月
B)学会報告および学術講演
五十嵐路子:勝浦眞仁・五十嵐路子「音楽運動療法とワロン」平成 25 年度旭川地域生活研究会、北
海道教育大学旭川校、2014 年 2 月 11 日
− 75 −
勝浦 眞人:
「音を視覚的に見る世界」日本質的心理学会第 10 回大会ポスター発表(単独発表,
2013 年 8 月)
「音楽運動療法とワロン」平成 25 年度旭川地域生活研究会 口頭発表(共同発表,
2014 年 2 月)
「余暇に関する一考察 − A 市近郊の特別支援学校の調査を通して−」 平成 25 年度
旭川地域生活研究会 口頭発表(共同発表,2014 年 2 月)
「A 市近郊にある養護学校の子どもたちの余暇」日本発達心理学会第 25 回大会ポスター
発表(共同発表,2014 年 3 月)
佐藤 貴虎:佐藤貴虎・越智幸一「中学生におけるシャイネスと自己意識との関連」日本発達心理
学会第25回大会
勝浦眞仁・佐藤貴虎「A 市近郊にある養護学校の子どもたちの余暇‐日常生活にある
余暇活動とは‐」日本発達心理学会第25回大会
清水 冬樹:
「生活支援を基盤とした母子世帯支援のあり方に関する研究(その 2)就労支援を利用
している母親たちに対するアンケート調査結果の考察」、第 14 回日本子ども家庭福祉
学会全国大会(単独発表)立正大学、2013 年 6 月 1 日∼ 2 日
「母子世帯支援における保育課題」第 18 回北海道子ども学会研究大会(単独発表)北
星学園大学、2013 年 7 月 25 日
出村由利子:
「コスタリカ初の高齢者ケアワーカー養成プログラムに参加して」第 20 回 日本介護
教育学会 福岡大会にて報告、2013 年 8 月 29 日
増山 由香:「抱っこで食べることの意味−子どもと保育者の身体的関わりから−」 日本保育学会
第 66 回大会、中村学園大学、2013 年 5 月
自主シンポジウム「保育園における乳児期からの本当の食育とは何かを考える」日本
保育学会第 66 回大会、中村学園大学、2013 年 5 月
C)社会活動
「社会における活動」
A. 講演
五十嵐路子:「ひとりひとりを大切に育む保育のあり方について∼発達を支える近年の音楽療法の
実態∼」
:
(講演)苫小牧市法人保育園協議会職員研修会 苫小牧市労働福祉センター、
2013 年 11 月 27 日
「親子でリトミック」
:
(講演・実技)旭川市教育委員会主催家庭教育講座
フィール旭川 7 階、2014 年 3 月 12 日
伊東 隆雄:カウンセラー養成講座「心の病について」ときわ市民ホール、(① 2013 年 5 月 14 日②
5 月 28 日③ 10 月 8 日④ 10 月 22 日⑤ 11 月 19 日)
− 76 −
勝浦 眞人:
「サポートファイルにおけるエピソード記述の活用− 1 人ひとりを丁寧に育てるために
−」
東神楽町子育てサポートファイルシステム評価委員会研修 講師、2013 年 9 月
「エピソード記述を活かした特別支援」 東神楽町療育推進協議会第 2 回大会 講師お
よび助言者、2014 年 2 月
齋藤富美子:通所介護事業所北彩都介護職員研修会講師「経管栄養の理解とケアの留意点」、2013
年 11 月
佐藤 貴虎:平成25年10月 北海道私立幼稚園協会道北支部公開保育助言者(旭川・聖母幼稚園)
平成25年11月 平成 25 年度留萌振興局留萌管内子ども・子育て応援セミナー講師
平成25年11月 平成 25 年度旭川民間保育所相互育成会中堅保育士研修講師
平成25年11月 平成 25 年度たかす円山幼稚園保護者向け研修会講師
平成26年1月 北海道高等盲学校校内研修講師
平成26年1月 稚内市幼・保・小連絡協議会研修講師
平成26年3月 旭川市教育委員会家庭教育講座講師
椎名 澄子:「巨大コロリンアート de マイバッグをつくろう」(講義・実技)鷹栖高校(旭川大学に
て)
、2013 年 7 月 4 日
「巨大コロリンアート de マイバッグをつくろう」(講義・実技)上川中学校(旭川大学
にて)
、2013 年 10 月 11 日
清水 冬樹:
「母子世帯の就業支援に関するアンケート調査報告」しんぐるまざーずふぉーらむ全国
連絡会、しんぐるまざーずふぉーらむ東京事務所、2013 年 6 月
「健全育成論 生きづらさを抱えた子どもたちへのまなざし∼子どもの発達を支える
「遊ぶ」の意義∼」平成 25 年度道北地区児童館連絡協議会 児童厚生員研修会講師、
ときわ市民ホール、2013 年 10 月 26 日
柴山 祐子:百寿大学講座 出張講義「高齢者と食事」74 名、当日は旭川医師会看護専門学校学生
41 名見学、於 旭川市永山公民館、2013 年 6 月 市民講座及び女性講座 出張講義 「 ためして減塩食! 」50 名、於 東光公民館、2013
年6月
鷹栖町ななかまど大学 出張講座「高齢者と食事」約 80 名、於 鷹栖地区住民センター
2013 年 8 月 百寿大学講座 出張講座 「 高齢者と食事 」50 名、於 北星公民館、2013 年 9 月
にこにこランチ講演「低栄養を防ぐ " 10食品群チェックシート " で栄養バランスを」
於 永山むつみ会館 74 名、2013 年 9 月
上川地方農業委員会連合会中央部ブロック会研修会「高齢者と食事」、於 花月会館 30 名、2013 年 12 月 百寿大学講座 出張講義 「 高齢者と食事 」 於 愛宕公民館 40 名、2013 年 12 月
豊島 琴恵:平成 25 年 5 月 7 日 北海道士別翔雲高等学校 講義 高大連携授業 翔雲高校生
2 年 40 名
− 77 −
平成 25 年 6 月 18 日 旭川藤女子高等学校 講演 食育に関する講話 旭川藤女子高
等学校 PTA 旭川藤女子高等学校 2 学年 84 名
平成 25 年 7 月 25 日 旭川大学短期大学部調理室 講義・演習 アフリカ地域保健 担当官のための保健行政「乳幼児の栄養」 JICA・旭川医科大学 アフリカ地域研修
生 13 名
平成 25 年 7 月 31 日 東神楽町役場 講演 食育連鎖∼食を通じた心のつながり
東神楽町教育委員会 東神楽町食育推進委員対象
平成 25 年 8 月 8 日 東神楽町総合福祉会館 講義「味覚は目で感じる」東神楽町 教
育委員会 東神楽町高齢者大学あやめ学園 70 名
平成 25 年 8 月 9 日 コープさっぽろシーナ店 料理教室 米粉料理教室・レシピ
提案コープさっぽろ 組合員 20 名
平成 25 年 8 月 28 日 東川町立東川第二小学校 料理教室 お弁当づくり東川町立東
川第二小学校 児童 13 名
平成 25 年 9 月 10 日 東川町幼児センター 講演 「子供の五感をくすぐる食育のすす
め」
東川町地域子育て支援センター 父母 20 名
平成 25 年 9 月 16 日 北の恵み食べマルシェ会場およびフィール旭川審査員 ワンハンドフード・コンテスト第三次審査員 旭川市北の恵み食べマルシェ実行委員
平成 25 年 10 月 1 日 士別南小学校 研究協議および講演 「心を育む食育の在り方」
上川管内教育研究会 北部地区研究大会 栄養教諭 20 名
平成 25 年 10 月 2 日 東神楽町立東神楽小学校 講演および助言 食育の展開 上川
管内教育研究会 中部地区研究大会 栄養教諭 20 名
平成 25 年 10 月 5 日 旭川大学北辰会館 コーディネーター わかりやすいアレルギー
のお話し ウエルビーイングコンソーシアム 30 名
平成 25 年 10 月 16 日 深川経済センター 講演 管内給食担当者研修会 空知総合振興局保健環境部深川地域保健室 給食施設管理者・栄養業務および調理業
務担当者 70 名
平成 25 年 10 月 20 日 旭川大学短期大学部調理室 審査員 全国親子クッキング およびコンテスト道北大会 旭川ガス 親子 4 組出場
平成 25 年 10 月 30 日 釧路保健所 講演 「五感で感じる食育のすすめ」管内給食 担当者研修会 釧路保健所 給食従事者・栄養教諭 30 名
平成 25 年 11 月 9 日 美深町役場 料理教室・講演 町村職員健康教室 管内町村 総務課町村職員 20 名前後
平成 25 年 11 月 16 日 下川町役場 料理教室・講演 町村職員健康教室 管内町村
総務課町村職員 20 名前後
平成 25 年 11 月 20 日 東川町保健福祉センター 料理教室 東川町の食材をつかった
教室 JA ひがしかわ 20 名
平成 25 年 11 月 23 日 東川町保健福祉センター 料理教室・講演 町村職員健康教室
管内町村総務課町村職員 20 名前後
平成 25 年 11 月 27 日 東川町保健福祉センター 料理教室 牛乳・乳製品を使っ
た料理教室 東川消費者協会 東川町消費者協会・食生活改善推進委員 30 名
平成 25 年 11 月 30 日 当麻中学校 講演 子供の食育 当麻中学校 PTA 保護者 および教職員 20 名
− 78 −
平成 25 年 11 月 30 日 鷹栖町役場 料理教室・講演 町村職員健康教室 管内町村総
務課町村職員 20 名前後
平成 25 年 12 月 14 日 東神楽町役場 料理教室・講演 町村職員健康教室 管内町村
総務課 町村職員 20 名前後
平成 26 年 1 月 18 日 美瑛町役場 料理教室・講演 町村職員健康教室 管内町村総
務課町村職員 20 名前後
平成 26 年 1 月 25 日 当麻町農村改善センター 料理教室・講演 町村職員 健康教
室 管内町村総務課 町村職員 20 名前後
平成 26 年 1 月 29 日 当麻町農村改善センター 料理教室・講演 健康づくり 講習
会 当麻町健康推進委員会・当麻町健康推進員・保健師 15 名
平成 26 年 1 月 30 日 旭川市市民活動交流センター 講演 食農教育の実践について
旭川開発建設部 「わが村は美しく - 北海道」運動活動報告会 入賞団体および 一般
約 50 名
穗積 幹子:旭川市北星公民館女性学級ひまわり公開市民講座「傾聴とコミュニケーション」
旭川市北星公民館講座室、2013 年 9 月
百寿大学講座「もし家族が要介護者になったら」旭川市永山公民館、2013 年 11 月
百寿大学講座「もし家族が要介護者になったら」旭川市末広公民館、2014 年 1 月
旭川社会福祉協議会ボランティア養成講座「傾聴とコミュニケーション」旭川市 ときわ市民ホール、2014 年 3 月
増山 由香:保育実践セミナー「遊びの王様 ごっこ遊びの見方と援助の方法」講師、2013 年 5 月、
7 月、9 月、11 月
札幌市私立保育園連盟研修会 乳児保育研修「子どもと保育者の信頼関係を築くため
に」2013 年 8 月
札幌第 2 福ちゃん保育園 子育て講座「子どもとあそぼう」講師、2013 年 8 月
札幌市東区保育研修会「ごっこ遊びの見方と援助について」講師、2013 年 8 月
手稲あすなろ保育園 育児講演会「意欲を引き出す食事」講師、2013 年 8 月
北私幼南空知支部研修会「ごっこ遊びの見方と援助の方法」講師、2013 年 10 月
札幌市私立保育園連盟保育研究大会 第 2 分科会「子どもの発達援助」助言者・講師、
2013 年 10 月
小樽中央保育所 園内研修「子どもの発達と遊び環境」講師、2013 年 10 月
札幌北野保育園 園内研修「乳児の遊びと援助/幼児保育の基本」講師、2013 年 10 月、
11 月
琴似あやめ保育園「幼児クラスの遊び環境について」講師、2013 年 11 月
洞爺湖町保育所保育士研修会「子どもに寄り添う保育を考える」講師、2013 年 11 月
積丹町立びくに保育所 育児講演会「その子らしくあることの幸せ」講師、 2013 年
12 月
札幌第 2 福ちゃん保育園 園内研修「2 歳児クラスの保育と課題」講師、2014 年 1 月
札幌市大通夜間保育園 園内研修「就学前に育てておかなければならないこと」講師、
2014 年 1 月
保育創造セミナー東京 シンポジウム「保育園の食事を考える」助言者 2014 年 2 月
− 79 −
見陣 史恵:生活協同組合北海道高齢協 実務者研修教員講習会講師 2013 年 6 月 15 日
北海道留辺蘂高等学校高大連携講義 2013 年 6 月 17 / 7 月 11 日
公益財団法人介護労働安定センター介護福祉士受験講座講師 2013 年 8 月 18 日
旭川市立永山中学校福祉を学ぶ講義 2013 年 10 月 16 日
学校法人宝田学園旭川明成高等学校 介護職員初任者研修講師 2013 年 10 月 18 日
北海道剣淵高等学校生活福祉講師 2013 年 10 月 22 日
社会福祉法人しべつ福祉会つくも園 職員研修講師 2013 年 10 月 24 日
日本福祉介護教育センター 介護職員初任者研修講師 2013 年 11 月 12 日
公益財団法人介護労働安定センター介護福祉士模擬試験解説講師 2013 年 12 月 8 日
社会福祉法人北海道ハピニス職員研修会講師 2013 年 12 月 20 日
森重 正也:旭川市シニア大学大学院 出張講義「ワインは農産物」、於 旭川市まちなか市民
プラザ、2014 年 1 月
旭川市愛宕公民館クイーンズ倶楽部 出張講義「ワインで楽しむ知的好奇心の旅」、 於 旭川市愛宕公民館、2013 年 6 月 美唄市びばい市民カレッジ 出張講演「ふるさと産業“日本酒”って何?」、於 美唄市ピパオイの里、2013 年 8 月
和島 孝浩:「水俣病」を通して「フクイチ」を考えてみよう(2014 年 3 月 12 日)平成 25 年度食品
・環境衛生監視員研修会において講演、於 北海道上川総合振興局
B. 記事
清水 冬樹:北海道新聞「危ない 汚い 子どもを伸ばす」2013 年 11 月 8 日朝刊
豊島 琴恵:広報誌「マリンバンク」平成 26 年 1 月号から 3 月号 さかなの栄養について 北海道信用漁業協同組合連合会
見陣 史恵:北海道通信「北海道立留辺蘂高等学校高大連携の取り組みとして福祉科授業講義」
2013 年 7 月 29 日 C. その他
五十嵐路子:音楽運動療法実施(自閉症等の障がい児を対象とする音楽療法)
:あすなろ幼稚園ホール、月 2 回、2012 年 8 月∼ 2014 年 3 月 Children's Museum『万歳!こどものくに』開催
:子どもゆめ基金助成活動「体験の風をおこそう」運動
旭川市市民文化会館大会議室、2012 年 11 月 11 日 旭川市神楽公民館 木楽輪、2013 年 11 月 10 日
北私幼研究大会北ブロック大会 研究保育助言者
:大谷ひかり幼稚園、2013 年 10 月 19 日 ミュージック・ワンダー・クラブ(旭川音楽運動療法)代表
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<人間と音楽を考える>すずらんの会 副代表
伊東 隆雄:社会福祉法人旭川いのちの電話専門職
佐藤 貴虎:旭川市子ども子育て審議会委員
北海道幼稚園教諭養成連絡協議会実習委員会委員長
旭川市こども向け屋内遊戯場「もりもりぱーく」運営会議委員
旭川市「うぶごえのおくりもの」絵本選定委員
旭川市子ども・子育て審議会認可基準等専門部会長
旭川市通年制・季節・へき地保育所に関する懇話会座長
北翔大学北方圏学術情報センター生涯学習部門研究員
そらぷちキッズキャンプボランティア会員
がんの子どもを守る会会員
Make a Wish of Japan ボランティア会員
椎名 澄子:子ども芸術ネットワーク・アトリエココア札幌アートコーディネーター
東神楽町マスコットキャラクター選考委員
柴山 祐子:高齢者の健康維持・増進のための活動として「にこにこランチ」(食物栄養専攻柴山 ゼミ・生活福祉専攻穂積ゼミ合同企画)を企画・開催、於 永山むつみ会館、2013 年 9 月
第4回お漬けもの日本一決定戦 T −1グランプリ審査委員、2013 年 10 月
旭川市永山第2地区社会福祉協議会主催 「 ふれあいランチ 」 開催、於 永山あおぞら
会館 101 名、2013 年 10 月 旭川市永山第2地区社会福祉協議会主催 「 ふれあいランチ 」 開催、於 旭川市永山公
民館 108 名、2013 年 11 月 旭川市永山第2地区社会福祉協議会主催 「 ふれあいランチ 」 開催、於 旭川市永山公
民館 108 名、2013 年 12 月 清水 冬樹:日本子ども虐待防止学会国際広報委員会ソーシャルメディア部(2012 年より現在に至
る)
子どもの権利条約総合研究所、沿岸部基礎自治体が策定した復興計画における子ども
施策の位置づけに関する調査研究 5 月(子どもの権利条約総合研究所 HP に掲載済み、
URL:http://homepage2.nifty.com/npo_crc/katudou/tokusetu3.html)
平成 25 年度市民の企画提案による協働のまちづくり事業 市民提案型(50 万円)採
択『旭川市におけるプレーパークを通じた市民と行政の協働による子ども子育て支援
の実践』2013 年 5 月
あさひかわこどもあそびねっと主催、カムイの杜公園プレーパーク開催、2013 年 8 月
5 日∼ 6 日
旭川市教育委員会委託 伊ノ沢市民スキー場遊び体験事業、2013 年 8 月 15 日∼ 8 月
17 日
東京都世田谷区母子家庭自立支援実践プロジェクト 委員、2013 年 11 月より現在に
至る
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埼玉県飯能市 子ども子育てニーズ調査分析委託
NHK 復興プロジェクト「被災地のひとり親を考える」出演、2013 年 10 月
出村由利子:児童発達支援事業・放課後デイサービス「どれみ」における母親支援として毎月 1 回
母親とのおしゃべりサロン」を開催(2013 年 9 月開始)
豊島琴恵:旭川市食育推進会議委員 旭川市
「わが村は美しく - 北海道」運動調査委員 北海道開発局旭川開発建設部
東川町学社連携推進協議会企画委員 東川町教育委員会
東神楽町食育推進会議委員 東神楽町教育委員会
学校給食における米粉新メニュー導入検討委員会委員 旭川市
東旭川学校給食共同調理所建替整備懇談会委員 旭川市
旭川動物園売店飲食店運営事業者選定委員 旭川市
「ことちゃんの絶品食材見いつけた」 ケーブルテレビ 出演月 1 回 旭川ケーブル
テレビ・ポテト
旭川ガス料理教室 5 月・7 月・9 月・11 月・1 月・3 月 実施 旭川ケーブルテレビ・
ポテト
穗積 幹子:高齢者の健康維持・増進のための活動として「にこにこランチ」(食物栄養専攻柴山 ゼミ・生活福祉専攻穂積ゼミ合同企画)を企画・開催、於 永山むつみ会館、2013 年 9
月
増山 由香:東神楽町子ども・子育て支援事業計画策定委員会委員、2013 年 12 月∼ 2014 年 3 月
見陣 史恵:社会福祉法人いちもく会理事 / 評議員 2013 年 4 月
旭川市障がい者週間記念事業(おぴった)旭川大学短期大学部手話サークル「ド・レペ」
出演指導、2013 年 12 月 1 日 旭川西武特設フロアーにてクリスマスコンサート 旭川大学短期大学部手話サークル
「ド・レペ」出演指導、2013 年 12 月 21 日 公益財団法人社会福祉振興試験センター介護福祉士国家試験実地試験委員 2014 年 3 月
1 日 森重 正也:旭川食品産業支援センター 運営委員、∼ 2013 年 6 月
旭川食品産業支援センター 技術アドバイザー、2013 年 6 月∼
旭川市ふるさと推進協議会(永山地区)委員、2012 年 4 月∼
食育実践(小学校・学年別)
、於 永山東小学校(各学年・HR 教室)、地域栄養食材研
究会サークル活動、2013 年 9 月∼ 2013 年 12 月
(社)旭川ウェルビーイングコンソーシアム「科学技術コミュニケーション推進事業」
部会委員、2012 年 12 月∼
スイーツ共同開発&販売(ロワジールホテル旭川、地域栄養食材研究会サークル)、
於 旭川市SORAマルシェ(旭川空港ターミナルビル)、2013 年 10 月
「木の町あさひかわ」木育をすすめる会 会長、2013 年 12 月∼
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構成団体;北海道上川総合振興局(南部森林室)、旭川市(子育て支援部、環境部、
農政部)
、北海道森林管理局(旭川事務所、上川中部森林管理署)、
一般財団法人 日本森林林業振興会旭川支部、旭川地方森林整備事業協同組合
旭川道新文化センター「女性のためのワイン講座」講師(年 12 回講義)
2013 年 4 月∼
和島 孝浩:保育園における食育活動(2013 年 10 月 10 日)
ほたる保育園(旭川市)で行われた「鮭のちゃんちゃん焼きパーティー」において,
ゼミ学生と一緒に紙芝居による鮭の一生を上演した.
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旭川大学短期大学部紀要に関する規定
(趣 旨)
第 1 条 この規定は、旭川大学女子短期大学部(以下,「本学」という。)が発行する紀要に関し、
その手続きについて必要な事項を定める。
(投稿資格)
第 2 条 本学の紀要に投稿できる者は、本学の専任教育職、再任用教育職、特別任用教育職および
名誉教授とする。ただし、この項で定める者以外の者との共同執筆の場合には、この項に定める
者が筆頭著者であるものに限る。
2 前項の者以外の者であっても、本学教授会が特別に認めた場合には投稿することができる。
(投稿できる対象論文等)
第 3 条 紀要に投稿できるのは、他の学術誌等に掲載されていない論文、研究ノート、報告、作品、
書評および翻訳(以下、これらを「論文等」という。)とする。
2 論文等の原稿は、図表、注記等を含め 40,000 字(200 字詰原稿用紙 200 枚)以内とする。欧文
原稿の分量もこれに準じる。
3 前項の基準を越える場合には、
図書・紀要委員会(以下「委員会」という。)で調整することがある。
(発行時期および回数)
第 4 条 紀要の発行は、原則として年 1 回とし、その時期は 1 月とする。ただし、教授会の議を経
て臨時に刊行することができる。
(投稿申込み)
第 5 条 紀要に投稿を希望する者は、10 月末日までに別紙様式の「論文等投稿申込書」を委員会の
長宛に提出するものとする。
(原稿の提出期限等)
第 6 条 論文等投稿の申込みを行った者の原稿の提出期限は、11 月末日までとし、委員会の長宛に
提出するものとする。
2 原稿提出時には、先に提出した「論文等投稿申込書」のコピーを添付するものとする。
(投稿要領)
第 7 条 投稿する論文等の要領は別に定める。
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(論文等の査読)
第 8 条 投稿された論文等の掲載は、委員会が依頼した本学の当該専門分野の専門家の査読の結果
を受けて、委員会の議を経て決定する。ただし、本学に当該論文等について当該専門分野の専門
家がいない場合には、委員会は本学以外の関連する専門分野の者に査読を依頼することができる。
2 委員会は、投稿論文等に疑義がある場合には、当該論文等の投稿者に対して意見を求めること
ができる。
附 則
1. この規定は、平成 6 年 6 月 16 日より施行する。
2. 6 月 15 日以前に提出されたものについては、従前の例による。
3. 「短期大学部紀要への投稿要領について」は廃止する。
附 則
この規定は、平成 10 年 10 月 15 日より施行する。
附 則
この規定は、平成 18 年 6 月 15 日より施行し、平成 18 年 4 月 1 日から適用する。
附 則
この規定は、平成 20 年 12 月 18 日一部改正し、平成 20 年 4 月 1 日から適用する。
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旭川大学短期大学部紀要投稿要領
1 原稿は原則として、A 4 版 400 字詰横書原稿用紙または上質紙にワードプロセッサを用いて横
書きに書かれたものとする。ワードプロセッサを用いる際、原則的に和文の場合には、2段組 21
字× 41 行、欧文の場合には 42 字、41 行で書く。
2 論文等は原則として次の項目からなっているものとする。
表紙に表題、表題(英語)、著作名、著作名(英語)を書く。以下、Abstract、要約、緒言、方法、
結果、考察、文献等、和文抄録の順序で構成するが、必要に応じこれらを除いて書くこともできる。
謝辞等の記述は考察のあとに記載する。要約については、英語で書くことが望ましい。
3 論文等を提出する際、論文一部とコピー一部、計二部と共に、投稿申込書を添えて提出する。
その際、論文をテキスト形式で保存した CD・R 又はスティックメモリーを提出する。
CD・R には、論文表題、筆頭著者名、使用オペレーションシステム、使用ソフト名およびそのバー
ジョンを明記する。
4 単位は国際単位を用いる。
5 太字体にするものは波線 を、イタリック体にするものはアンダーライン を付け
る。
6 引用文献および参考文献は脚註を用いるか、尾註に一括して記載する。
7 図、表および写真(以下、図表等という)は図 1、図 2 等のように、表は表 1、表 2 等のように
通し番号を付ける。
8 図表等の挿入箇所は、本文中右空欄に矢印等を用い、図表等の番号を記入し明示する。
9 図表等は鮮明なもので、最終縮小倍率を考慮して大きさや太さを選ぶ。各図表類は図表ごとに
別紙にまとめ、すべての裏面に番号と筆頭著者名を書き、必要があれば図の上下、拡大または縮
小倍率も明記する。
10 特殊な図表や作品等を掲載する場合、筆頭著者に別途料金を請求することもある。
11 著作権が生じた場合、筆頭著者が全責任を負い、本委員会は一切関知しないので、論文等を書
く際には著作権に十分留意する。
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12 文献の書き方
原則的に、和文については以下の例を参考にし、欧文については MLA(Modern Language Association
of America ) 最新版に基づいて書く。
(雑 誌)
著者名、表題、雑誌名、巻、ページ、発行年
(単行本)
著者名、表題、書名、編集者名、発行社、発行地、発行年、ページ
(和文例)
1)村上和保:家庭用洗浄器の濾過能力に関する調査、日本家政学会誌、48、815-818(1997)
2)平成 9 年版、厚生白書「健康」と「生活の質」の向上をめざして、厚生省編、㈱ぎょ
うせい、東京(1997)
(欧文例;MLA style)
3)McCay. C. M, Maynard. L. A, Sperling G. and Varnes. L. L,(または McCay. C. M. et al.)
"Retarded Growth, life Span, Ultimete Body Size and Age Changes in the Albimo Rat After
Feeding Diets Restricted in Calorise, " J. Nutr. 18(1939):1 − 3.
4)Dublin. L. I, "Longevity in Respect and in Prospect,"Probems of Aging, Ed. Cowdry E. V.
(Baltimore: The Williams and Winkins, 1946),100 − 119.
5)Bogomolets. A. A, The Prolongation of Life (New York: Duel, Sloan and Pearce, 1946)
附 則
1. この要領は、平成 24 年 3 月 2 日より施行する。
2. 3 月 1 日以前に提出されたものについては、従前の例による。
3.「短期大学部への投稿要領について」は廃止する。
附 則
この規定は、平成 10 年 10 月 15 日より施行する。
附 則
この規定は、平成 18 年 6 月 15 日より施行し、平成 18 年 4 月 1 日から適用する。
附 則
この規定は、平成 20 年 12 月 18 日一部改定し、平成 20 年 4 月 1 日から適用する。
附 則
この規定は、平成 24 年 3 月 30 日一部改定し、平成 24 年 4 月 1 日から適用する。
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ISSN
2186 ― 1544
The Journal of Junior College,
Asahikawa University
Number 44 March, 2014
Contents
【Art】
Dance in the Bew……………………………………………………………………………Sumiko SHIINA
1
【Articles】
Musico-kinetic Therapy with Wallon
with the children who need special support …………………………………………Mahito KATSUURA
5
Michiko IGARASHI
Leisure for Childen with Special Educational Needs
With Particular Reference to the Questionnaire for Children in
Special Needs Schools at A city area. …………………………………………………Mahito KATSUURA
19
Takatora SATO
Seasonal Changes in the Growth and Nitrate Concentrations of Mizuna
(Brassica rapa L. Japonica Group)…………………………………………………………Takahiro WAJIMA
33
Kensuke KONDO
Noriaki MURAYAMA
Kazufumi ZUSHI
Naotaka MATSUZOE
【Note】
A report of seminar activity that “NIKONIKO LUNCH”.
−A interaction of between students to the elderly people
who belong to the Nagayama Mutsumi neighborhood association and
Nagayama Mtsumi Aozora society (a club for the elderly).− ……………………… Mikiko HOZUMI
41
A study on possibility of making safe and comfortable place for children
in North Hokkaido ……………………………………………………………………… Fuyuki SHIMIZU
57
Yuko SIBAYAMA
【Art】
Operetta
White Snow
Accompany Music
……………………………………………………………… Kazuyuki SHIMAZAKI
Published by
JUNIOR COLLEGE, ASAHIKAWA UNIVERSITY
ASAHIKAWA, HOKKAIDO, JAPAN
67
旭川大学短期大学部紀要 第 44 号
2014 年 3 月 31 日 印刷
2014 年 3 月 31 日 発行
編 集
旭川大学短期大学部
図 書 紀 要 委 員 会
発 行
旭川大学短期大学部
印 刷 藤
旭川市永山 3 条 23 丁目
電話 0166(48)3121(代)
田
印
刷
㈱
旭川市 3 条通 10 丁目右 9 号
電話 0166(26)2188