2.基本的回路の過渡現象 (1) - 熊本大学工学部電気システム工学科

「電気回路第三」講義資料 2014年度版
熊本大学工学部情報電気電子工学科
勝木 淳
2.基本的回路の過渡現象 (1)
2.1 考え方
2.2 RC回路(1階常微分方程式)
2.1 身近な過渡現象
◆ 一般
・車の急加速,急減速
・車などの懸架装置,ばね
・物体の衝突
・爆発現象
・ある系に新しいシステム(制度)を導入したとき
など.
◆ 電気関係
・スイッチON/OFF直後の回路現象
・落雷,および落雷による誘導電圧(サージ)
・静電気の放電
など.
過渡現象
回路のある状態から別の状態へ切換が行なわれる場合
(印加電圧または回路素子定数の変化、
← スイッチング、非線形素子、素子の劣化などによる )
はじめの回路の電圧や電流に一時的な変化 ⇒ 過渡現象
過渡現象を経て、回路は新しい状態の定常値となる。
ある回路の
定常状態
過渡現象
次の回路の
定常状態
負荷に直流電圧を印加する場合
直流定常回路
V
V
200
150
100
E
50
R
0
0
2
3
4
5
t
過渡現象を伴う回路
スイッチ
t=1
1
V
V
過渡現象
200
150
定常状態2
100
E
50
定常状態1
R
0
0
1
2
3
4
5
t
交流電圧を印加する場合
過渡現象を伴う回路
スイッチ
t=2
過渡現象
V
V
定常状態2
200
E1
定常状態1
150
E2
100
50
E3
0
-50
Z
-100
0
1
2
3
4
5
t
なぜ過渡現象が起きるのか?
例えば、スイッチON/OFF
t=0
v
E
i
Z
RLC回路における定常現象と過渡現象の比較
RLC回路
スイッチのある回路
回路の過渡現象の解法
エネルギーを蓄えるような素子(コン
デンサやコイル)を回路中に含んでい
ると、キルヒホッフの電圧則により得ら
れる回路方程式は微分方程式となる。
ayʹ′ʹ′ + byʹ′ + cy + d = 0
ただし、a, b, c, d は定数
過渡現象を解析する ⇒ 微分方程式を解く
v
R
微分方程式を解く
微分方程式
ayʹ′ʹ′ + byʹ′ + cy + d = 0
の解は次のように表される。
一般解(y) = 過渡解(yt) + 定常解(ys)
過渡現象の項:
ある時間の後に
常にゼロとなる
定常状態の項
定常解 (steady state term)
過渡解 (transient term)
解法
★ ヘビサイドの演算子法
・ d/dt = p とおいて代数演算
・ p の代わりに複素変数 s を用いてラプラス変換 ★ ミクシンスキーの演算子法
積分演算子と合成積を定義 代数演算
回路過渡現象の例
微分方程式の一般解(v) = 過渡解(vt) + 定常解(vs)
スイッチ
(t = t0)
v
R
E=100
vt
200
150
過渡解
100
v
200
一般解
50
0
150
vs
50
200
0
-50
t
-50
100
t0
t
150
定常解
100
50
0
-50
t
2.2 RC直列回路
右図において、時刻 t = 0 でスイッチ
を入れる場合を考える。
回路方程式は、
RC直列回路
(1) 自由振動(過渡解を求める)
回路に定常電源が無い場合の回路現象
右図の閉路方程式は、
q0
RC直列回路の自由振動
初期条件(t = 0 においてq = q0)から、
q = q0 e − t / τ
電流は
q0 −t / τ
dq
i=
=−
e
dt
RC
q, i
(2) 直流電圧を加えた場合
右図において、
dq q
R + =E
dt C
過渡項 qt は自由振動と同じ。
定常項 qs は t = ∞ のときのCの電荷量なので、
直流電源を含むRC直列回路
q = CE + (q 0 − CE)e − t /τ
dq
1
i=
=
(CE − q0 )e −t / τ
dt RC
q, i
CE
(CE − q 0 )
RC
q0
q(t )
i(t )
【問2.1】 右の回路において、スイッチSを閉じ
た後の過渡電流を求めよ。但し、e(t)
は電圧 E の直流電源とし、C の初期
電荷をゼロとする。
(3) 正弦波電圧を加えた場合
e(t ) = E sin(ωt + ϕ )
回路方程式は、
~
dq q
R + = E sin( ωt + ϕ)
dt C
一般解は、
q=
Em ω
R 2 + (1 ωC )2
cos(ωt + ϕ − θ ) + Ae −t /τ
1 ⎞
θ = tan ⎜
⎟ , τ = RC
⎝ ωCR ⎠
−1 ⎛
過渡解
定常解
電流は、
dq
i=
=
dt
Em
R 2 + (1 ωC ) 2
sin(ωt + ϕ − θ ) −
A
τ
e −t / τ
初期条件として、t = 0 において q = q0 とすると、
Em ω
A = q0 −
2
R + (1 ωC )
2
cos(ϕ − θ )
1 ⎞
⎟
⎝ ωCR ⎠
θ = tan −1 ⎛⎜
これを前ページの式に代入して
電流 i を求める。
# q0、φ、θの条件によって、
過渡項が現れない場合がある。
(A=0のとき)
RC直列回路に正弦波電圧を加えた
場合の電流
【問2.2】 右の回路における定常項を
導出せよ。
qs =
Em ω
2
R + (1 ωC )
2
⎛ 1 ⎞
∵θ = tan ⎜
⎟
⎝ ωCR ⎠
−1
e(t ) = E sin(ωt + ϕ )
cos(ωt + ϕ − θ )
~