世界の豊かな生活環境と 地球規模の持続可能性に貢献する アクア・イノベーション拠点の概要 2014年2月24日 拠点プロジェクトリーダー (株)日立製作所 インフラシステム社 上田 新次郎 1 水資源の現状 u 世界人口 65億人 Ø飲料水(生活用水含む) が得られない 11億人(内、アジア 7億人) Ø衛生設備 (下廃水・屎尿処理)がない 24億人(内、アジア 19億人) 現在の世界的な水の不足状況 (出典:IWMI Report 2006) 淡水化・再利用の 造水市場 中国 米国 カリブ海諸国 インド 渇水のない地域 物理的渇水地域(水資源使用率>75%) 物理的渇水に近い地域(同上>60%) 経済的渇水地域(同上<25%,貧困地域) 評価なし 北アフリカ スペイン 中東 オーストラリア 人口増加・大都市への集中、環境汚染等で問題は益々深刻化 Copyright 2014 Toray Industries, Inc. All Rights Reserved. 2 人口の増加と水処理技術の進化 120 世界の人口 (億人) ④膜処理 100 80 ③急速ろ過法 60 ②微生物処理 40 20 0 ①緩速ろ過法 自然の浄化作用 1700年 1800年 1900年 2000年 2100年 人口の急速な増加等で、自然の浄化作用では「水量」と「水質」の確保が困難 高品質・高速処理・省エネプロセスの膜処理技術は、21世紀の必須技術 Copyright 2014 Toray Industries, Inc. All Rights Reserved. 3 多様な水循環システム 都市部,開発地域 水環境負荷の増大 砂漠 or 遠隔地 風力 Sea FPSO かん水淡水化 海水淡水化 油水分離 システム 太陽光発電 P 排水 RO 浄水場 地下水 (かん水) 商業 & 工業地域 複合施設 アクア・イノベーション地冷 修景 施設 膜分離活性汚泥 システム 水再生 プラント P 再生水 膜分離活性汚泥 農業地帯 システム 再 生 水 工場 かんがい 住居地域 RO リサイクル 品 汚泥 RO 再生水 産業廃水処理 プラント 廃水 世界の人々がいつでも十分な水を手に入れられる社会 レイバキャンプ 膜分離活性汚泥 システム リゾート地 / 島嶼地域 RO 地下水 膜分離活性汚泥 建設サイト (かん水) システム 自然の水循環システムを考慮し、 P 造水・水循環システムの革新を目指す 4 本拠点が目指すもの ・世界で11億人余が安全な飲料水にアクセスできない ・農業用水が十分に確保できない等で9億人余が食糧不足 ・工業用水・資源開発用水の確保と、排水の循環利用化が必要 ・水の偏在化:需要と供給のバランスが取れていない ・海水・かん水等からの造水の低コスト化、省エネ化 ・水圏有用資源の採取の重要性と、国際競争の激化 ・既存の人為的な水循環システムは自然循環 を考慮していない ・地域の水循環はその周囲の地域の水循環と の相互関係の上に成り立つオープンシステム 解決すべき課題 産業・社会に必要な水を造る技術 【課題1】 在来/非在来型資源開発における随伴水処理と再利用化 ・無機塩や有害物質の分離、オイル回収、他 【課題2】 かん水等の利用技術の確立と有用物質の分離 ・重金属と水の分離、LiとNa,K,Ca等との分離、他 【課題3】 省エネ等による海水淡水化の超低コスト化 ・省エネルギー化、大量処理、維持管理コストの大幅低減 【課題4】 水関連科学技術の高度化 ・分離現象の分子論的メカニズムの解明、等 自然循環と融合した水循環システムの設計・評価 【課題5】 土地利用・地下水循環を含む統合的な水循環の解析・予測・シミュレーション技術の開発 社会実装の推進 【課題6】 世界の豊かな生活環境と地球規模の持続可能性に貢献する造水・ 水循環システムの社会実装推進 ・ロバスト造水・水循環システム、実装上の社会課題の解決 5 社会実装の姿 v 住宅 河川 生活用水 自然の 水循環 農業用水 地下水 かん水処理場 浄水場 工場 下水処理場 再利用 排水 再利用 海水淡水化プラント 海水 農地・田 湖沼 工業用水 排水 カーボン膜処理モジュールの革新 ・ロバスト(動作温度範囲、過酷な水質) ・高効率 ・高物質選択性 自然循環と融合した水循環システムの設計・評価 ・省エネ、高ロバスト、高物質選択性の造水・ 水循環システムの構築 ・地域のニーズに合わせた革新的水システム ソリューションの提供 ・環境、歴史、文化を重視した地域水システムの プランニング・実装 6 O&G(在来型)海上生産プラントの現状と課題 石油随伴水:石油生産時に 随伴して発生 する油濁水。 油井操業経過 に伴い,年々 水量増加。 プラットフォーム 三相セパレータ 石油プラント 油水分離 ガス Injection 海洋放流 地下注入 油 課題 本開発成果による解決策 地下注入による地下水汚染 ナノカーボン膜実用化による水質向上 脱塩処理によるInjection水質確保 従来技術であるRO膜より,ロバストかつ低コストな ナノカーボン膜適用 重金属,有機物,高塩分随伴水処理 革新的なカーボン吸着技術確立で,特定物質を選択除去 有用物質の分離・回収も期待 油井内の石油随伴水の挙動不明 JAMSTECシミュレーション技術による随伴水循環状況解明 7 海水淡水化プラント~逆浸透(RO)膜 供給水 分離機能層 架橋芳香族ポリアミド 200 nm 海水淡水化プラント内部 支持層 ポリスルホン 45 μm 圧力容器 ポリエステル不織布基材 100 μm RO膜エレメント 透過水 Copyright 2014 Toray Industries, Inc. All Rights Reserved. 複合RO膜 8 水処理用膜の種類と開発する技術 1 nm 分離対象物質 膜の種類 大きさ 10 nm 1㎛ 10 ㎛ 高分子 イオン・低分子 トリハロメタン 0.1 ㎛ 農薬・有機物 コロイド タンパク・多糖類 粘土 ウィルス 1価イオン RO (逆浸透) バクテリア 多価イオン NF (ナノろ過) 海水・かん水の淡水化 下水・廃水再利用 UF (限外ろ過) 硬水の軟水化 有害物質の除去 膜の用途 Copyright 2014 Toray Industries, Inc. All Rights Reserved. 大腸菌 クリプトスポリジウム MF (精密ろ過) 病原性微生物の除去 下水・廃水浄化 RO膜の前処理 9 イノベーションを駆動する革新的なカーボン技術 現状:既存技術の延長では 多様な水源から水を造り、 世界中の人々に十分な 水を提供することは困難 <解決すべき技術的課題> ◆耐久性、耐熱性、耐薬品性、 表面特性の向上が必要 ◆分離時の省エネルギー化が必須 ナノ構造新炭素体 本拠点では、カーボン等の 材料特性を活かして分離膜 技術を革新 (例、高耐久性、耐熱性耐 薬品性、 すべり特性、低 ファウリング機能等) 水・物質分離用デバイス化 期待される革新的機能 ◆海水や油を含む水など、 世界の多様な水源に対応 ◆長寿命、メンテナンス低減 ◆流束、造水量の飛躍的増大 ◆資源採取への応用 自立型の造水・水循環システム として世界展開 ( ) g <参考> 既存の逆浸透膜(RO膜) 0.3~0.4nmの孔 RO膜 基材 ×ポリアミド等の高分子で構成 されるため、耐久性、耐薬品性、 耐熱性(限界35~40℃)が脆弱 ×膜厚があるため流路抵抗大 ×油や水生生物等で目詰まり 流路となる炭素ナノ孔 を精緻に制御 10 革新的な物質分離機能を示すカーボン技術のシーズ例 従来の1000倍の速度で色素分子を除去することができ、多くの有機溶 媒は、約1nmの流路を高速で粘性透過する。ダイヤモンドの約7分の1 の高強度かつ化学的に安定な多孔性DLC膜は、水処理、超低硫黄ガソ リンの製造、化成品の高純度化などの、幅広い用途が期待できる。 J = Ɛr 2∆P/8μd N N Rejection: 94.4 % Flux: 51.4 L/m2h (80 kPa) DLC膜 ろ過速度1000倍! 多孔性DLC膜による色素の高速分離 エタノール中のアゾベンゼンの除去 超薄膜のカーボン膜により高流速で特定物質分離を確認。ナノカーボン材料のポテンシャルを実証 11 海と空と陸の「水」大循環と予測 陸表層の水環境を予測し, 水と熱を取り出す,放出する。 大域水環境を予測し, 水と熱を貯蓄する,放出する。 海の環境を予測し、水 と熱を 取り出す,放出する 地下水系環境を予測し, 水と熱を貯蓄する,放出する 1215 統合的な水循環解析・予測・シミュレーション 【革新性①】 ・地表・地下・空・海統合水循環モデル ・グローカルシミュレーション・制御 空 10/12 【革新性②】 ・人-社会・経済-環境・生態系複合シス テムの統合シミュレーション 地下 海 ・統合モデルの構築 ・データ同化 都市 スーパーコンピュータ 人-社会・経済-環境・生態系複合システムの例 (食) 13 連携・融合関係と開発成果の出口 信州大学 カーボン構造制御 サイエンスを基本に ナノカーボン膜形成 要素技術開発 NIMS カーボン空孔制御 薄膜形成 理化学研究所 高度情報科学技術研究機構 昭和電工、北川工業 炭素原料 ナノカーボン膜用工業原料 実用的薄膜形成技術 複合膜モジュール生産 東レ 薄膜形成技術 複合膜技術 モジュール化技術 日立製作所 膜処理ユニット技術 水処理システム技術 革新的水システム トータルソリューション 提供 東レ他 膜モジュール 分離デバイス 単位プロセス 水関連科学 地表・地下・空・海 「水」循環モデル JAMSTEC、東京大学 ソニーCSL、中央大学 JAXA 自然と共生した水管 理システムプロトタイ プ構築 水循環の解析・予測・シミュレー ションシステム 自然と人が共生する社会のグラ ンドデザイン 14 統合効果と成果の実装により目指す社会 目指すべきビジョン 世界の人々が豊かな生活を送るためには 『世界中の人々がいつでも十分な水を手に入れられる社会』を構築する 即ち、多様な水源から水を造り、それを循環して、世界中の人々に十分な水を提供する その実現には オールジャパン体制で、世界屈指の技術の融合によってイノベーションを創出して課題を解決 中核拠点が構築する世界屈指技術 ◆ナノカーボン等素材技術 ◆淡水化モジュール技術 ◆淡水化プラント・システム技術 ◆トータルソリューションの提供 サテライト拠点が構築する世界屈指技術 ◆統合水モデリング・シミュレーション技術 ◆グローカル水循環最適制御技術 【統合効果の例】 ・世界屈指の水処理技術を活用し、流域や地域の特性に適応したトータルな水循環システムの構築 ・水利用システムの導入に対する環境影響評価と環境保全に向けたトータルシステム提案 統合効果により 革新的な『造水・水循環システム』を社会実装 『世界中の人々がいつでも十分な水を手に入れられる社会』を実現 15
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